特許第6405332号(P6405332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405332
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】スラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   E04B5/40 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-61132(P2016-61132)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-172264(P2017-172264A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2017年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(72)【発明者】
【氏名】栗山 誠司
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−226192(JP,A)
【文献】 特開平09−317030(JP,A)
【文献】 特開平08−035291(JP,A)
【文献】 実開昭60−102304(JP,U)
【文献】 特開平08−061325(JP,A)
【文献】 実公昭39−016074(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0184373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/40
E04B 1/41
E04C 5/00 − 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブの下側面を形成するための鋼製型枠板に設けられた貫通孔に挿通可能な軸杆と、この軸杆に昇降自在に遊嵌させた座板と、前記軸杆の上端側の張出し部材と、この張出し部材と前記座板との間で前記軸杆に遊嵌されて前記座板を下向きに付勢するスプリングと、前記軸杆の下端に設けられた抜け止め手段とを備え、この抜け止め手段は、前記軸杆から横側方に延出する横向き延出部材によって構成され、この延出部材は、前記軸杆の傾動を伴って前記貫通孔を上から下向きに貫挿可能なものであって、前記軸杆が鋼製型枠板に対して垂直に起立した状態では、前記スプリングの付勢力で下降する前記座板と前記延出部材との間で鋼製型枠板を挟持するように構成された、スラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項2】
前記延出部材は、前記軸杆と一体のもので、当該軸杆の下端部の横側方への曲げ加工により構成されている、請求項1に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項3】
前記軸杆の上端側の張出し部材は、当該軸杆の上端側から遊嵌可能な板体と、前記軸杆の上端に螺嵌されて前記板体を受け止めるナットとから構成されている、請求項1又は2に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項4】
スラブの下側面を形成するための鋼製型枠板に設けられた貫通孔に挿通可能な軸杆と、この軸杆に昇降自在に遊嵌させた座板と、前記軸杆の上端側の張出し部材と、この張出し部材と前記座板との間で前記軸杆に遊嵌されて前記座板を下向きに付勢するスプリングと、前記軸杆の下端に設けられた抜け止め手段とを備え、この抜け止め手段は、長さ方向が前記軸杆と略平行な第一向きと、長さ方向が前記軸杆に対し略直交する第二向きとに切換え自在に前記軸杆に軸支された可動部材から成り、前記第一向きにある可動部材は、前記軸杆と共に前記貫通孔を上から下向きに貫挿可能であり、前記第二向きにある可動部材は、前記スプリングの付勢力で下降する前記座板との間で鋼製型枠板を挟持するように構成された、スラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項5】
前記座板には、上側に張り出し且つ両端が解放された巾広突出台部が形成され、この巾広突出台部に設けられた貫通孔に前記軸杆が挿通されている、請求項1〜4の何れか1項に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項6】
前記可動部材は、長さ方向の中間部が前記軸杆に軸支された1本の可動部材から成る、請求項4に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項7】
前記可動部材は、前記第一向きと第二向きとの間の略90度の範囲内でのみ回転自在に軸支されている、請求項6に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項8】
前記可動部材の前記軸杆に対する軸支位置が、この可動部材の長さ方向の中央位置より一端側に変位している、請求項7に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項9】
前記可動部材は、長さ方向の一端部が前記軸杆に、前記第一向きと第二向きとの間の略90度の範囲内でのみ回転自在に軸支されている、請求項4に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【請求項10】
前記可動部材は、前記第一向きから一側方へ略90度回転する第一可動部材と、前記第一向きから他側方へ略90度回転する第二可動部材とから成る、請求項9に記載のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブの下側面を形成するための型枠板として、デッキプレートやフラットデッキと称される鋼製型枠板を使用する場合に、築造されたスラブから当該鋼製型枠板が剥離脱落するのを防止するための脱落防止用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デッキプレートやフラットデッキと称される鋼製型枠板を、スラブの下側面を形成するための型枠板として使用することにより、スラブ築造後に当該鋼製型枠板を解体除去するのではなく、スラブと一体に結合しておいて残すことが出来る。この場合、築造されたスラブから当該鋼製型枠板が剥離脱落するのを防止する必要が生じるが、この鋼製型枠板の脱落防止手段として、当該鋼製型枠板の側辺を、当該スラブを支持する柱や壁の築造空間内に、所定ののみ込み代だけ入り込ませておくことが、基本的に知られている。しかしながら、鋼製型枠板の長さ(巾)と築造されるスラブの長さ(巾)との関係で、必要なのみ込み代が確保できない場合には、他の脱落防止対策が必要になる。又、築造するスラブの長さ(巾)が鋼製型枠板を複数枚接続しなければならない程大きい場合には、鋼製型枠板の側辺どうしが隣接する中間部を仮設サポートで支持することになって、この仮設サポートで支持される鋼製型枠板の側辺に対しても、他の脱落防止対策が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような他の脱落防止対策が必要になった場合、特許文献を開示することは出来ないが、鋼製型枠板の周辺など、適当な箇所の上面(スラブ築造空間側)に、築造されるスラブ内に埋め込まれて鋼製型枠板の脱落防止用具となる金物を、溶接しておくことが考えられている。しかしながら、溶接作業が必要であることに起因する種々のデメリットがあり、改善が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具を提案するものであって、第一発明に係るスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、スラブ(2)の下側面を形成するための鋼製型枠板(1)に設けられた貫通孔(14)に挿通可能な軸杆(6)と、この軸杆(6)に昇降自在に遊嵌させた座板(7)と、前記軸杆(6)の上端側の張出し部材(8)と、この張出し部材(8)と前記座板(7)との間で前記軸杆(6)に遊嵌されて前記座板(7)を下向きに付勢するスプリング(9)と、前記軸杆(6)の下端に設けられた抜け止め手段(10)とを備え、この抜け止め手段(10)は、前記軸杆(6)から横側方に延出する横向き延出部材(11)によって構成され、この延出部材(11)は、前記軸杆(6)の傾動を伴って前記貫通孔(14)を上から下向きに貫挿可能なものであって、前記軸杆(6)が鋼製型枠板(1)に対して垂直に起立した状態では、前記スプリング(9)の付勢力で下降する前記座板(7)と前記延出部材(11)との間で鋼製型枠板(1)を挟持するように構成されている。
【0005】
又、第二発明に係るスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具は、スラブ(2)の下側面を形成するための鋼製型枠板(1)に設けられた貫通孔(14)に挿通可能な軸杆(16)と、この軸杆(16)に昇降自在に遊嵌させた座板(7)と、前記軸杆(16)の上端側の張出し部材(8)と、この張出し部材(8)と前記座板(7)との間で前記軸杆(16)に遊嵌されて前記座板(7)を下向きに付勢するスプリング(9)と、前記軸杆(16)の下端に設けられた抜け止め手段(10)とを備え、この抜け止め手段(10)は、長さ方向が前記軸杆(16)と略平行な第一向きと、長さ方向が前記軸杆(16)に対し略直交する第二向きとに切換え自在に前記軸杆(16)に軸支された可動部材(18)から成り、前記第一向きにある可動部材(18)は、前記軸杆(16)と共に前記貫通孔(14)を上から下向きに貫挿可能であり、前記第二向きにある可動部材(18)は、前記スプリング(9)の付勢力で下降する前記座板(7)との間で鋼製型枠板(1)を挟持するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
上記第一発明の脱落防止用具では、スプリングの付勢力に抗して座板を軸杆上端側の張出し部材に接近させるように上昇移動させて、軸杆下端の延出部材を前記座板から下方に十分に離すと共に、軸杆を倒した状態で、当該延出部材を鋼製型枠板に設けられた貫通孔に上から差し込み、この貫通孔に対する延出部材の挿入の進みに伴って軸杆を垂直姿勢に戻し、当該延出部材の全体を鋼製型枠板の下側に移動させる。この後、又は軸杆を垂直姿勢に戻す過程で、前記座板を解放して、当該座板をスプリングの付勢力で降下可能な状態にすれば、鋼製型枠板の上に当接した座板に対し、鋼製型枠板から垂直に起立した軸杆がスプリングの付勢力で押し上げられる。この結果、鋼製型枠板の下側に入り込んだ前記延出部材が鋼製型枠板の下側に圧接し、この延出部材と前記座板が、スプリングの付勢力で鋼製型枠板を挟みつけることになり、軸杆が鋼製型枠板から垂直に起立した状態で固定される。
【0007】
上記第二発明の脱落防止用具では、可動部材を軸杆に対し前記第一向きに切り換えることが出来るように、スプリングの付勢力に抗して座板を軸杆上端側の張出し部材に接近させるように上昇移動させ、係る状態で前記第一向きに切り換えた可動部材を軸杆下端部と共に、鋼製型枠板に設けられた貫通孔に上から差し込み、鋼製型枠板の下側に移動した前記可動部材を、軸杆に対して前記第二向きに切り換える。この後、又は可動部材を鋼製型枠板に設けられた貫通孔に差し込む過程で、引き上げていた前記座板を解放して、当該座板をスプリングの付勢力で降下可能な状態にすれば、鋼製型枠板の上に当接した座板に対し、鋼製型枠板を垂直姿勢で貫通している軸杆がスプリングの付勢力で押し上げられる。この結果、鋼製型枠板の下側に入り込んだ前記第二向きの可動部材が鋼製型枠板の下側に圧接し、この第二向きの可動部材と前記座板が、スプリングの付勢力で鋼製型枠板を挟みつけることになり、軸杆が鋼製型枠板から垂直に起立した状態で固定される。
【0008】
以上のように本発明の脱落防止用具は、鋼製型枠板に所定の直径の貫通孔を設けておくだけで、現場で組み付けなければならない他の補助部品を使用することなく、極めて簡単な操作で、鋼製型枠板の上側に突出する状態に取り付けることが出来る。この鋼製型枠板の上側に突出する部分、即ち、軸杆上端側の張出し部材や、スプリングなどが、鋼製型枠板の上側に築造されるスラブ内に埋没し、鋼製型枠板の剥離脱落を効果的に防止することになる。しかも、鋼製型枠板の上側に突出する部分は、上からの押し下げ力を受けたとき、その全体がスプリングの付勢力に抗して縮小するように変形することになり、又、横向きに外力を受けたときも、その外力の作用方向によっては、その全体が容易に傾動し得るので、鋼製型枠板上を作業者が歩行する型枠組立て作業中に作業者が、鋼製型枠板の上側に突出する部分を踏み付けたり、運搬中の部材を鋼製型枠板の上側に突出する部分の上に落したりして、この脱落防止用具を損傷させ、所期の脱落防止効果が得られなくなったり、作業者が鋼製型枠板の上側に突出する部分に蹴躓いて、怪我を負うようなことも少なくなる。又、特に第一発明によれば、スプリングと座板以外に可動部材がなく、構造が極めてシンプルで安価に実施することが出来る。
【0009】
尚、上記第一発明を実施する場合、前記延出部材(11)を、軸杆(6)の下端部の横側方への曲げ加工により構成された、当該軸杆(6)と一体構造とすることにより、より一層構造がシンプルになり、非常に安価に実施することが出来る。又、前記軸杆(6)の上端側の張出し部材(8)は、当該軸杆(6)の上端側から遊嵌可能な板体(8b)と、前記軸杆(6)の上端に螺嵌されて前記板体(8b)を受け止めるナット(8a)とから構成し、組立て時に、前記軸杆の上端側から前記座板、前記スプリング、前記板体をこの順に前記軸杆に遊嵌させ、最後に前記ナットを軸杆の上端部に螺嵌させることが出来るようにするのが、この脱落防止用具の組立てを容易にする点で望ましい。
【0010】
上記の第一発明と第二発明の何れの実施においても、前記座板(7)には、上側に張り出し且つ両端が解放された巾広突出台部(12)を形成し、この巾広突出台部(12)に設けられた貫通孔(14)に前記軸杆(6,16)を挿通させるように構成することが出来る。この構成によれば、座板に設けられる軸杆挿通用貫通孔の位置が、当該座板の鋼製型枠板に対する当接面より高くなり、使用状態における前記軸杆の姿勢を、鋼製型枠板に対し垂直な起立姿勢で安定させることが容易になる。
【0011】
又、上記第二発明を実施する場合、前記可動部材(18)は、長さ方向の中間部が前記軸杆(16)に軸支された1本の可動部材(18)から構成すれば、この可動部材が前記第二向きになったとき、軸杆の下端部が倒立T字状になり、スプリングの付勢力で軸杆が上方に引き上げられて鋼製型枠板に垂直起立姿勢で固定されるときの安定性が増し、鋼製型枠板の上側に突出する部分全体を所期の形態に確実に保持させることが出来る。この場合、前記可動部材(18)は、前記第一向きと第二向きとの間の略90度の範囲内でのみ回転自在に軸支することにより、第一向きから第二向きに回転させた可動部材が、当該第二向きを通り越して元の第一向きに戻ってしまう恐れが無くなり、この脱落防止用具の取付けが一層簡単容易に行える。更に、この場合、可動部材(18)の前記軸杆(16)に対する軸支位置を、この可動部材(18)の長さ方向の中央位置より一端側に変位させておけば、当該可動部材の両端から軸支位置までの長さが長い部分に働く重力で、可動部材が自然に第二向きに付勢保持されることになり、この脱落防止用具の取付け時の取り扱いが容易になる。
【0012】
勿論、前記可動部材(21,22,26)は、長さ方向の一端部が前記軸杆(16)に、前記第一向きと第二向きとの間の略90度の範囲内でのみ回転自在に軸支されているものであっても良い。この構成によれば、使用材料が少なくなり、安価に実施することが出来るだけでなく、重力によって当該可動部材が自然に第二向きに付勢保持されることになり、この脱落防止用具の取付け時の取り扱いが容易になる。この構成を採用する場合は、前記可動部材として、前記第一向きから一側方へ略90度回転する第一可動部材(21)と、前記第一向きから他側方へ略90度回転する第二可動部材(22)とを設けることにより、2本の可動部材(21,22)が重力で第二向きに付勢保持されるだけでなく、2本の可動部材(21,22)が第二向きに切り換えられたとき、軸杆(16)の下端部が左右対称形の倒立T字状となるように構成すれば、鋼製型枠板に垂直起立姿勢で固定されるときの安定性が増し、鋼製型枠板の上側に突出する部分全体を所期の形態に確実に保持させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは、本発明の脱落防止用具が取り付けられた鋼製型枠板の使用状態を示す縦断側面図、図1Bは、その要部の拡大側面図、図1Cは、その要部の拡大正面図である。
図2図2Aは、脱落防止用具の平面図、図2Bは、同脱落防止用具の拡大一部縦断側面図、図2Cは、同脱落防止用具の使用方法を説明する一部縦断側面図である。
図3図3Aは、同脱落防止用具の第一変形例を示す、使用状態での一部縦断側面図、図3Bは、同脱落防止用具の第二変形例を示す、使用状態での一部縦断側面図である。
図4図4は、本発明の第二実施例における脱落防止用具を説明する図であって、図4Aは、同脱落防止用具の鋼製型枠板への取付け直前の状態を示す一部縦断側面図、図4Bは、図4Aの右側面図である。
図5図5Aは、同脱落防止用具の鋼製型枠板への取付け完了時の状態を示す一部縦断側面図、図5Bは、図5Aの右側面図である。
図6図6は、本発明の第三実施例における脱落防止用具を説明する図であって、図6Aは、同脱落防止用具の鋼製型枠板への取付け直前の状態を示す一部縦断側面図、図6Bは、図6Aの一部縦断右側面図である。
図7図7Aは、同脱落防止用具の鋼製型枠板への取付け完了時の状態を示す一部縦断側面図、図7Bは、図7Aの右側面図である。
図8図8は、図7Aの要部の拡大横断平面図である。
図9図9は、本発明の第四実施例における脱落防止用具を説明する図であって、図9Aは、同脱落防止用具の鋼製型枠板への取付け直前の状態を示す一部縦断側面図、図9Bは、同脱落防止用具の鋼製型枠板への取付け完了時の状態を示す一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第一実施例を、図1A図2Cに基づいて説明すると、1は鋼製型枠板であって、スラブ2の下側面を成形する水平型枠となっている。3は垂直型枠であって、スラブ2を支持する壁など4の垂直側面を成形するもので、合板などから成る型枠板3aの外側に固着された枠材の内、上端の水平枠材3bの上に鋼製型枠板1の側辺が載置支持されている。5は本発明による脱落防止用具であって、鋼製型枠板1の上面の周辺部など、所定の箇所に取り付けられている。
【0015】
脱落防止用具5は、軸杆6、この軸杆6に昇降自在に遊嵌させた座板7、軸杆6の上端側の張出し部材8、この張出し部材8と座板7との間で軸杆6に遊嵌されて座板7を下向きに付勢する圧縮コイルスプリング9、及び軸杆6の下端に設けられた抜け止め手段10を備えている。この抜け止め手段10は、軸杆6の下端部を斜め横側方に曲げ加工して形成された、軸杆6と一体構造の延出部材11から構成されたもので、この延出部材11と軸杆6との間の挟角は、90度よりも大きい。座板7は、円形金属板の中央部に、両端が座板7の両側に開放されるように直径方向に沿って形成された、縦断面台形の巾広突出台部12を備えたもので、この巾広突出台部12(座板7)の中心位置には、巾広突出台部12から上方に突出する筒壁部13aが形成されるバーリング加工によって、軸杆6が挿通される貫通孔13が設けられている。張出し部材8は、軸杆6の上端に形成された螺軸部6aに螺嵌するナット8aと、このナット8aの内側で軸杆6に外嵌された、円形金属板などから成る板体8bとによって構成されている。圧縮コイルスプリング9は、座板7と板体8bとの間で軸杆6に遊嵌されたもので、図2Bに示すように、所期圧縮応力により座板7を、延出部材11で受け止められる下降限位置で付勢保持する。
【0016】
座板7は、軸杆6の外径と貫通孔13(筒状壁部13a)の内径との差が小さく、貫通孔13(筒状壁部13a)の長さが長いほど、軸杆6に対する揺れが少なくなり、軸杆6の軸心方向に直線的に滑動出来ることになるので、延出部材11の先端側から座板7を軸杆6に嵌合させることは困難になる。従ってこの実施例では、軸杆6の上端に、貫通孔13内に挿入可能な外径の螺軸部6aを形成し、この螺軸部6a側から、座板7、圧縮コイルスプリング9、及び板体8bを嵌合させ、最後にナット8aを螺軸部6aに螺嵌させている。前記ナット8aは、カシメなどにより螺軸部6aに固着しておくのが望ましい。
【0017】
鋼製型枠板1には、現場の所定位置に水平に架設されている状態で、脱落防止用具5の取付け位置に、延出部材11を含む軸杆6の外径よりも適当に大きい取付け用貫通孔14が設けられている。この取付け用貫通孔14に脱落防止用具5を取り付けるのであるが、図2Cに示すように、圧縮コイルスプリング9の付勢力に抗して座板7を軸杆6に沿って張出し部材8のある側へ移動させ、当該座板7と延出部材11との間の間隔を広げる。この状態で脱落防止用具5を倒して、延出部材11の先端を取付け用貫通孔14内に上から下向きに差し込む。後は、座板7から手を離して解放した状態で、延出部材11を取付け用貫通孔14内に挿入しながら、軸杆6を鋼製型枠板1に対し垂直姿勢に向けて起立させる。この結果、図1B,Cに示すように、圧縮コイルスプリング9の付勢力によって座板7を延出部材11の方に押し下げるので、軸杆6と延出部材11との間の入隅部が取付け用貫通孔14の内周縁に当接する状態で、延出部材11と座板7とが圧縮コイルスプリング9の付勢力で鋼製型枠板1を挟持し、軸杆6が鋼製型枠板1に対して垂直に起立する姿勢で当該鋼製型枠板1に固定される。
【0018】
上記のようにして鋼製型枠板1の各所定位置に、当該鋼製型枠板1の上側のスラブ2の築造空間側に突出する状態で脱落防止用具5が取り付けられたならば、当該鋼製型枠板1の上側のスラブ2の築造空間内に配筋とコンクリートの打設を行い、スラブ2を築造する。この結果、脱落防止用具5の鋼製型枠板1から上方に突出する部分がスラブ2内に埋設されて、鋼製型枠板1がスラブ2から剥離脱落するのを、脱落防止用具5のスラブ2内に埋設されている部分がアンカーとなって阻止することになる。具体的には、鋼製型枠板1に作用する下向きの重力は、張出し部材8の板体8bによって受け止められるが、座板7の巾広突出台部12の内側空間内にもコンクリートが流入して硬化するので、この座板7の巾広突出台部12も、鋼製型枠板1の剥離脱落防止に寄与している。
【0019】
尚、軸杆6の下端の延出部材11は、鋼製型枠板1に設けられる取付け用貫通孔14に上から挿入して、最後に軸杆6を、鋼製型枠板1に対し垂直な起立姿勢に保持出来るものであれば、その構造や形状は問わない。例えば、図3Aに示すように、軸杆6に対し直角横向きに折曲された延出部材11であっても良いし、図3Bに示すように、先端が略上向きになるU字形に曲げられた延出部材11であっても良い。
【0020】
本発明の第二実施例を図4A図5Bに基づいて説明すると、この第二実施例の脱落防止用具15は、先の実施例に示されたものと同一のものに同一符号を付して示すと、一端に頭部16aが一体成形された軸杆16、軸杆16に遊嵌されて頭部16aの内側に隣接する板体8b、軸杆16に昇降自在に遊嵌された座板7、この座板7と板体8bとの間で軸杆16に遊嵌された圧縮コイルスプリング9、及び軸杆16の下端に支軸17によって軸支された可動部材18から構成され、この可動部材18が前記抜け止め手段10となっている。
【0021】
可動部材18は、軸杆16の直径と略同一巾の帯状板から成り、軸杆16の下端から頭部16aに向かって、軸杆16の中心部に切欠形成された切欠き凹部19内に遊嵌された状態で、この可動部材18の長さ方向の中央位置より一端側に寄った位置で支軸17によりシーソー運動自在に軸支されている。前記切欠き凹部19は、軸杆16の下端側と一側面側とに開放されたもので、図4Aに示すように、可動部材18が、その一端長部18aが切欠き凹部19内に入り込んで側壁部19aに当接する、第一向きになったとき、可動部材18の他端短部18bが軸杆16の下端から当該軸杆16の延長方向に突出し、この第一向きの可動部材18を、その一端長部18aが切欠き凹部19内から出てゆく方向に支軸17の周りで略90度回転したとき、図5Aに示すように、他端短部18bが切欠き凹部19の側壁部19aの下端段面19bに当接して、可動部材18が、軸杆16に対してT字状になる第二向きとなるように構成されている。
【0022】
この第二実施例に係る脱落防止用具15を鋼製型枠板1に取り付けるときは、図4Aに示すように、可動部材18を第一向きに切り換えることが出来る高さまで座板7を軸杆16に対して上昇移動させた状態で、支軸17の周りに可動部材18を第一向きまで回転させ、この第一向きの可動部材18と共に軸杆16を、鋼製型枠板1に設けられた取付け用貫通孔14に上から下向きに挿通させる。鋼製型枠板1の下側に、第一向きの可動部材18が軸杆16と共に突出したならば、可動部材18を軸杆16に対し支軸17の周りで第二向きまで回転させるが、可動部材18は、重力により一端長部18aが降下する方向に付勢されているので、第一向きの可動部材18を第二向きに簡単容易に切り換えることが出来る。
【0023】
この可動部材18が第二向きに切り換えられるのに伴って、座板7から手を離して、当該座板7を圧縮コイルスプリング9の付勢力で軸杆16に沿って降下し得る状態にすれば、図5A及び図5Bに示すように、座板7が圧縮コイルスプリング9の付勢力で鋼製型枠板1の上面に圧接する反力で、軸杆16が展開姿勢の可動部材18と共に鋼製型枠板1に対して上昇移動し、展開姿勢の可動部材18と座板7との間で鋼製型枠板1が、圧縮コイルスプリング9の付勢力で挟持され、軸杆16が鋼製型枠板1に対して垂直な起立姿勢で固定されて、先の実施例において説明したように、鋼製型枠板1の剥離脱落防止効果が得られる。
【0024】
本発明の第三実施例を図6A図8に基づいて説明すると、この第三実施例の脱落防止用具20は、先の2つの実施例に示されたものと同一のものに同一符号を付して示すと、軸杆16、軸杆16に遊嵌されて頭部16aの内側に隣接する板体8b、軸杆16に昇降自在に遊嵌された座板7、この座板7と板体8bとの間で軸杆16に遊嵌された圧縮コイルスプリング9、及び軸杆16の下端に軸支された第一可動部材21と第二可動部材22から構成され、この両可動部材21,22が前記抜け止め手段10となっている。両可動部材21,22は、軸杆16の直径と略同一程度の巾の帯状板から成るもので、軸杆16の下端から所要長さの範囲にわたって形成された切欠き凹部23内に、互いに重なった状態で遊嵌されて、一端部が共通の支軸24によって軸支されたもので、各可動部材21,22には、その互いに対面しない外側面から突出する凸部21a,22aがプレス加工により一体成形されている。
【0025】
前記切欠き凹部23は、両可動部材21,22が、それぞれの凸部21a,22aを含めて、互いに重なった状態で入り込める内巾を有するものであるが、軸杆16の下端部における切欠き凹部23の内巾は、切欠き凹部23の内側面の突出段部23a,23bによって、狭められている。而して、第一可動部材21は、図6A及び図6Bに示すように、その遊端の外側角部21bが切欠き凹部23の上端の一端出隅部23cに当接する第一向きから、外側へ支軸24の周りに略90度回転したとき、図7A図8に示すように、その凸部21aが切欠き凹部23の突出段部23aに当接する第二向きで受け止められるように構成され、同様に第二可動部材22も、図6A及び図6Bに示すように、その遊端の外側角部22bが切欠き凹部23の上端の他端出隅部23dに当接する第一向きから、外側へ支軸24の周りに略90度回転したとき、図7A図8に示すように、その凸部22aが切欠き凹部23の突出段部23bに当接する第二向きで受け止められるように構成されている。換言すれば、各可動部材21,22は、それぞれの略全体が切欠き凹部23内に入り込んだ第一向きから、互いに反対方向(互いに離間する方向)へのみ支軸24の周りに略90度回転可能であって、この支軸24の周りに略90度回転することにより、軸杆16の下端から略直角横向きに突出する第二向きに切り換えられる。
【0026】
この第三実施例に係る脱落防止用具20を鋼製型枠板1に取り付けるときは、図6A及び図6Bに示すように、両可動部材21,22を第一向きに切り換えることが出来る高さまで座板7を軸杆16に対して上昇移動させた状態で、支軸24の周りに両可動部材21,22を第一向きまで回転させ、この第一向きの両可動部材21,22と共に軸杆16を、鋼製型枠板1に設けられた取付け用貫通孔14に上から下向きに挿通させる。鋼製型枠板1の下側に、第一向きの両可動部材21,22が軸杆16と共に突出したならば、第一可動部材21を軸杆16に対し支軸24の周りで左方(右方)へ略90度回転させると共に、第二可動部材22を軸杆16に対し支軸24の周りで右方(左方)へ略90度回転させて、両可動部材21,22を第二向きに切り換えるが、各可動部材21,22は、重力により第一向きから第二向きの方向に付勢されているので、第一向きの各可動部材21,22を第二向きに簡単容易に切り換えることが出来る。
【0027】
これら可動部材21,22が第二向きに切り換えられるのに伴って、座板7から手を離して、当該座板7を圧縮コイルスプリング9の付勢力で軸杆16に沿って降下し得る状態にすれば、図7A図8に示すように、座板7が圧縮コイルスプリング9の付勢力で鋼製型枠板1の上面に圧接する反力で、軸杆16が第二向きの可動部材21,22と共に鋼製型枠板1に対して上昇移動し、第二向きの両可動部材21,22と座板7との間で鋼製型枠板1が、圧縮コイルスプリング9の付勢力で挟持され、軸杆16が鋼製型枠板1に対して垂直な起立姿勢で固定されることになって、先の実施例において説明したように、鋼製型枠板1の剥離脱落防止効果が得られる。
【0028】
本発明の第四実施例を図9A及び図9Bに基づいて説明すると、この第四実施例の脱落防止用具25は、先の各実施例に示されたものと同一のものに同一符号を付して示すと、軸杆16、軸杆16に遊嵌されて頭部16aの内側に隣接する板体8b、軸杆16に昇降自在に遊嵌された座板7、この座板7と板体8bとの間で軸杆16に遊嵌された圧縮コイルスプリング9、及び軸杆16の下端に軸支された1つの可動部材26から構成され、この可動部材26が前記抜け止め手段10となっている。この可動部材26は、軸杆16の直径より少し狭い巾の帯状板から成るもので、軸杆16の下端から所要長さの範囲にわたって形成された切欠き凹部27内に、一端部が支軸28によって軸支されたものである。切欠き凹部27は、上向きに回転した可動部材26が軸杆16の長さ方向と略平行な第一向きで切欠き凹部27内に入り込んだときに、当該可動部材26の一側辺に当接する側壁部27aと、この第一向きにある可動部材26が、前記側壁部27aから離れる方向に支軸28の周りに略90度下方へ回転して、軸杆16の下端部から直角横向きに突出する第二向きになったとき、この可動部材26の支軸28で支持される基端部の側辺に当接して、当該可動部材26が前記第二向きを超えて先端が垂れ下がる方向に回転するのを阻止する段面27bとを備えている。
【0029】
この第四実施例に係る脱落防止用具25を鋼製型枠板1に取り付けるときは、図9Aに示すように、可動部材26を第二向きから第一向きに回転させることが出来る高さまで、座板7を軸杆16に対して上昇移動させ、支軸28の周りに可動部材26を、切欠き凹部27の側壁部27aに当接する第一向きまで回転させ、この第一向きの可動部材26と共に軸杆16を、鋼製型枠板1に設けられた取付け用貫通孔14に上から下向きに挿通させる。鋼製型枠板1の下側に、第一向きの可動部材26が軸杆16と共に突出したならば、可動部材26を、支軸28の周りで切欠き凹部27内から外側へ略90度回転させて、切欠き凹部27の段面27bで受け止められる第二向きに切り換えるが、この可動部材26は、重力により第一向きから第二向きの方向に付勢されているので、第一向きの可動部材26を第二向きに簡単容易に切り換えることが出来る。
【0030】
可動部材26が第二向きに切り換えられるのに伴って、座板7から手を離して、当該座板7を圧縮コイルスプリング9の付勢力で軸杆16に沿って降下し得る状態にすれば、図9Bに示すように、座板7が圧縮コイルスプリング9の付勢力で鋼製型枠板1の上面に圧接する反力で、軸杆16が第二向きの可動部材26と共に鋼製型枠板1に対して上昇移動し、第二向きの可動部材26と座板7との間で鋼製型枠板1が、圧縮コイルスプリング9の付勢力で挟持され、軸杆16が鋼製型枠板1に対して垂直な起立姿勢で固定されることになって、先の実施例において説明したように、鋼製型枠板1の剥離脱落防止効果が得られる。
【0031】
尚、第二実施例〜第四実施例では、軸杆6の上端側の張出し部材8を、軸杆16に一体成形された頭部16aと板体8bとで構成したが、第一実施例の張出し部材8と同一のものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のスラブ用鋼製型枠板の脱落防止用具は、コンクリート打設によってスラブを構築するときに、スラブの下側面の型枠として鋼製型枠板を使用し、この鋼製型枠板を解体除去するのではなくスラブと一体の構造物として残す場合に、不測に鋼製型枠板がスラブから剥離脱落するのを防止する手段として活用出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 鋼製型枠板
2 スラブ
3,15,20,25 脱落防止用具
6,16 軸杆
6a 螺軸部
7 座板
8 張出し部材
8a ナット
8b 板体
9 圧縮コイルスプリング
10 抜け止め手段
11 延出部材
12 巾広突出台部
13 貫通孔
14 取付け用貫通孔
16a 軸杆の頭部
17,24,28 支軸
18,21,22,26 可動部材
18a 一端長部
18b 他端短部
19,23,27 切欠き凹部
19a,27a 側壁部
19b 段面
21a,22a 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9