(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
先ず、
図1を用いて、第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100について説明する。
図1は第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100を示す図であり、このうち(a)及び(b)は伸縮性配線基板100を厚み方向に切断した切断端面図、(c)は平面図である。なお、
図1(a)は
図1(b)及び
図1(c)のA−A線に沿った切断端面図であり、
図1(b)は
図1(a)及び
図1(c)のB−B線に沿った切断端面図である。
【0017】
本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、伸縮性基材10と、伸縮性基材10の第1主面11上または第2主面12上の少なくとも一方に形成されている伸縮性配線部20と、伸縮性基材10よりも面内剛性が高い補強基材30と、補強基材30の第1主面31上または第2主面32上の少なくとも一方に形成され伸縮性配線部20と導通している引出配線部40と、補強基材30の第1主面31上または第2主面32上の少なくとも一方に形成されているエラストマー層50と、を備えている。補強基材30が伸縮性基材10の一部領域10aに重なっているとともに、伸縮性基材10の他部領域10bが補強基材30から露出し、且つ、伸縮性配線部20が他部領域10b上から一部領域10a上に亘って延在している。そして、一のエラストマー層50と伸縮性基材10とが相互に積層及び接合されている。
【0018】
このように構成された伸縮性配線基板100によれば、引出配線部40が形成されているため、当該引出配線部40を用いて伸縮性配線基板100を外部機器(不図示)に対して電気的に接続することができる。ここで、引出配線部40は補強基材30に形成されているため、引出配線部40を外部機器に対して接続する際における引出配線部40の変形を抑制することができる。よって、伸縮性配線基板100と外部機器との接続を容易に実現することが可能となる。
更に、補強基材30の一方の主面に形成されているエラストマー層50と、伸縮性基材10とが、相互に積層及び接合されているため、当該エラストマー層50と伸縮性基材10との接合強度(密着強度)を極めて高いものとすることができる。よって、伸縮性基材10とエラストマー層50との界面における剥離の発生を抑制できる。
【0019】
以下、伸縮性配線基板100について、より詳細に説明する。
【0020】
伸縮性基材10は、フィルム状(薄膜状)に形成された可撓性且つ絶縁性のものであり、面方向における伸縮性を有している。
伸縮性基材10は、単層構造であっても良いし、多層構造(2層以上の構造)であっても良い。
伸縮性基材10は、2つの主面(第1主面11及び第2主面12)を有している。
図1において、第1主面11は上側の面、第2主面12は下側の面である。
伸縮性基材10は、補強基材30によって覆われている一部領域10aと、補強基材30によって覆われていない(補強基材30から露出している)他部領域10bと、を有している。
【0021】
伸縮性配線部20は、導電性を有し、電気信号や電流を伝送する機能を有する。
伸縮性基材10の第1主面11上または第2主面12上の少なくとも一方には、それぞれ所望の数(本数)の伸縮性配線部20が形成されている。本実施形態の場合、伸縮性基材10の第1主面11上に複数本の伸縮性配線部20が形成されている。
伸縮性配線部20のパターン形状は特に限定されず、また、伸縮性配線部20の延在の仕方は、直線状、折れ線状、曲線状のいずれでもよい。
各伸縮性配線部20は、伸縮性基材10の他部領域10b上から一部領域10a上に亘って延在している。
【0022】
補強基材30は、フィルム状(薄膜状)、板状ないしは薄片状に形成されている。補強基材30は、伸縮性基材10の一部領域10aを覆う平面形状に形成されている。なお、伸縮性基材10の具体的な平面形状は特に限定されない。
上述のように、補強基材30の面内剛性は、伸縮性基材10の面内剛性よりも高い(大きい)。ここで、面内剛性とは、ヤング率(E)と断面二次モーメント(I)との積(E・I)である。したがって、補強基材30の面内剛性が伸縮性基材10の面内剛性よりも高いとは、必ずしも、材料特性としてのヤング率が、伸縮性基材10よりも補強基材30の方が大きいことを意味するものではなく、伸縮性基材10よりも補強基材30の方が、曲げ荷重に対して変形しにくいことを意味する。すなわち、例えば、補強基材30の方が伸縮性基材10よりも厚いことによって曲げ変形しにくい場合も含まれる。よって、補強基材30の材料は、伸縮性基材10の材料と同じであってもよい。また、伸縮性基材10よりも補強基材30の方が、面内方向の引張り応力に対して変形しにくいともいえる。
補強基材30は、絶縁性であることが好ましい。
【0023】
補強基材30は、2つの主面(第1主面31及び第2主面32)を有している。
図1において、第1主面31は下側の面、第2主面32は上側の面である。
補強基材30の第1主面31は伸縮性基材10の第1主面11と対向している。より詳細には、補強基材30の第1主面31と伸縮性基材10の第1主面11とは、エラストマー層50及び引出配線部40を間に挟んで互いに対向している。
補強基材30は、伸縮性基材10によって覆われている一部領域30aと、伸縮性基材10によって覆われていない(伸縮性基材10から露出している)他部領域30bと、を有している。
【0024】
エラストマー層50は、薄層状に形成された絶縁性のものである。
エラストマー層50は、単層構造であっても良いし、多層構造(2層以上の構造)であっても良い。
上述のように、エラストマー層50は、補強基材30の第1主面31または第2主面32の少なくとも一方に形成されている。本実施形態の場合は、補強基材30の第1主面31上にエラストマー層50が形成されている。
【0025】
例えば、
図1(a)に示すように、エラストマー層50は、補強基材30の第1主面31に対して直に形成されている。
なお、
図9に示すように、補強基材30の第1主面31には、易接着コート層60が形成されていても良く、この場合、エラストマー層50は、易接着コート層60を介して、補強基材30の第1主面31に形成されている。
エラストマー層50は、第1主面31の全面を覆っていることが好ましい。
【0026】
引出配線部40は、導電性を有し、電気信号や電流を伝送する機能を有する。
補強基材30の第1主面31上または第2主面32上の少なくとも一方には、それぞれ所望の数(本数)の引出配線部40が形成されている。本実施形態の場合、補強基材30の第1主面31上に複数本の引出配線部40が形成されている。
引出配線部40のパターン形状は特に限定されず、また、引出配線部40の延在の仕方は、直線状、折れ線状、曲線状のいずれでもよい。
各引出配線部40は、補強基材30の他部領域30b上から一部領域30a上に亘って延在している。
したがって、各引出配線部40の一部分は、伸縮性基材10によって(伸縮性基材10の一部領域10aによって)覆われており、各引出配線部40の他の部分は、伸縮性基材10によって覆われていない(伸縮性基材10から露出している)。
【0027】
また、各伸縮性配線部20の一部分は、エラストマー層50及び補強基材30によって(補強基材30の一部領域30aによって)覆われており、各伸縮性配線部20の他の部分は、エラストマー層50及び補強基材30によって覆われていない(エラストマー層50及び補強基材30から露出している)。
【0028】
本実施形態の場合、引出配線部40と補強基材30との間にエラストマー層50が介在しており、エラストマー層50の一方の面に引出配線部40が接している。
すなわち、エラストマー層50における補強基材30側とは反対側の面(
図1(a)におけるエラストマー層50の下面)に引出配線部40が形成されている。
このような構成により、補強基材30に対する引出配線部40の一体性を良好にすることができる。すなわち、引出配線部40が補強基材30に対して直に形成されているのではなく、エラストマー層50を介して補強基材30上に形成されているため、引出配線部40を下地層であるエラストマー層50に対して密着性良く形成することができる。
【0029】
エラストマー層50と伸縮性基材10とは相互に積層され、且つ、エラストマー層50における伸縮性基材10側の面(補強基材30側とは反対側の面)と、伸縮性基材10の第1主面11とは、相互に接合されている。
より詳細には、エラストマー層50と伸縮性基材10とは、それらの間に伸縮性配線部20または引出配線部40が介在している部分については、伸縮性配線部20または引出配線部40を介して隔てられているが、それ以外の部分の大部分については、エラストマー層50と伸縮性基材10とが相互に面接合されている(
図1(b)参照)。
【0030】
伸縮性配線部20と引出配線部40とは、互いに同層に配置されている。
各引出配線部40は、例えば、伸縮性配線部20と1対1で対応しており、対応する伸縮性配線部20に対して接合されることによって、当該対応する伸縮性配線部20と導通している。
より詳細には、引出配線部40と伸縮性配線部20とは、部分的に相互にオーバーラップしており、そのオーバーラップした部分において引出配線部40と伸縮性配線部20とが相互に接触し導通している。引出配線部40と伸縮性配線部20とが相互にオーバーラップして接触している部分を接続部101と称する。すなわち、接続部101は、引出配線部40の一端部と、当該引出配線部40と対応する伸縮性配線部20の一端部と、が相互に接合されることによって構成されている。
なお、接続部101は、補強基材30及びエラストマー層50と、伸縮性基材10と、の間に挟み込まれており、伸縮性配線基板100の外面には露出していない。
【0031】
引出配線部40における接続部101とは反対側の端部(他端部)は、伸縮性配線基板100の外面に露出し、外部端子42を構成している。
また、伸縮性配線部20における他端側の少なくとも一部分は、伸縮性配線基板100の外面に露出しており、端子を構成している。
【0032】
ここで、伸縮性配線部20において、伸縮性基材10の一部領域10aに配置されている部分は、伸縮性基材10とエラストマー層50とによって挟み込まれており、周囲全周がエラストマー層50または伸縮性基材10によって包囲されている。
換言すれば、伸縮性配線部20において、伸縮性基材10の一部領域10aに配置されている部分は、当該部分の延在方向軸周りの全周が、エラストマー層50または伸縮性基材10によってくるまれた埋設部22となっている。
このような構成により、伸縮性配線部20の埋設部22をエラストマー層50と伸縮性基材10との間において安定的に保持できるため、伸縮性配線部20の剥離に起因する不具合や電気特性の変動を抑制できる。
【0033】
更に、伸縮性配線部20と引出配線部40との接続部101も、伸縮性基材10とエラストマー層50とによって挟み込まれており、周囲全周がエラストマー層50または伸縮性基材10によって包囲されている。すなわち、接続部101も、エラストマー層50または伸縮性基材10によってくるまれている。
このような構成により、接続部101をエラストマー層50と伸縮性基材10との間において安定的に保持できるため、接続部101における導通不良を抑制できるとともに、エラストマー層50または伸縮性基材10からの接続部101の剥離に起因する不具合や電気特性の変動を抑制できる。
【0034】
更に、引出配線部40において、補強基材30の一部領域30a上の部分は、伸縮性基材10とエラストマー層50とによって挟み込まれており、周囲全周がエラストマー層50または伸縮性基材10によって包囲されている。
換言すれば、引出配線部40において、伸縮性基材10の一部領域10aに配置されている部分は、当該部分の延在方向軸周りの全周がエラストマー層50または伸縮性基材10によってくるまれている埋設部41となっている
このような構成により、引出配線部40をエラストマー層50と伸縮性基材10との間において安定的に保持できるため、引出配線部40の剥離に起因する不具合や電気特性の変動を抑制できる。
【0035】
ここで、エラストマー層50と伸縮性基材10とは、相互に熱融着されている。このため、エラストマー層50と伸縮性基材10との相互の界面が実質的に存在しない場合があり得る。その場合、伸縮性基材10とエラストマー層50とを合わせた部分を、一体の伸縮性基材と捉えることができる。そして、この伸縮性基材においては、エラストマー層50と伸縮性基材10とが重なって構成された部分の厚みが、他の部分の厚みよりも大きい。
このため、本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、以下のようにも定義される。
すなわち、伸縮性配線基板100は、伸縮性配線部20が形成されている伸縮性基材と、伸縮性配線部20と導通している引出配線部40が形成されている補強基材30と、を備え、補強基材30が伸縮性基材の一部領域10aに重なっているとともに、伸縮性基材の他部領域10bが補強基材30から露出し、且つ、伸縮性配線部20が他部領域10bから一部領域10aに亘って延在しており、伸縮性基材の一部領域10aの厚さが、伸縮性基材の他部領域10bの厚さよりも大きい。
【0036】
ここで、補強基材30にコネクタ(不図示)が設けられ、コネクタとしてのコシの強さを持たせるために、補強基材30におけるコネクタ端子の反対面側に所定の厚みの補強フィルム(補強部材)が積層されているとする。この場合、コネクタをハンドリングしたり外部機器のコネクタに挿抜したりすると補強基材30に大きな曲げ変形が生じる。このような事情に対し、補強基材30の配置領域(つまり一部領域10a)において伸縮性基材が厚くなっていることにより、コネクタが大きく曲げ変形した際にも、伸縮性基材における補強基材30側とは反対側の面(第2主面
12)には、曲げの影響が及びにくくなる。つまり、コネクタが大きく曲げ変形した際においても、伸縮性基材の下面(第2主面
12)における変形量を抑制することができる。
【0037】
また、伸縮性基材10とエラストマー層50とを合わせた部分が一体の(界面がない)伸縮性基材となっている場合は、埋設部22は、その延在方向軸周りの全周が、当該伸縮性基材にくるまれていることになる。また、接続部101も、当該伸縮性基材にくるまれている。更に、埋設部41も、その延在方向軸周りの全周が、当該伸縮性基材にくるまれている。
【0038】
伸縮性配線基板100において、伸縮性基材10の他部領域10bと対応する領域は、面方向に伸縮容易な伸縮領域であり、伸縮性基材10の一部領域10aと対応する領域は、伸縮領域よりも面内剛性が高い補強領域である。
【0039】
このような伸縮性配線基板100の伸縮領域及び補強領域のうち、伸縮領域は、主として生体に貼付されることにより生体や皮膚の動きに柔軟に追従し、補強領域は、図示しない外部機器との機械的、電気的接続を簡便かつ高信頼で達成する機能を奏する。
【0040】
次に、
図2を用いて、第1の実施形態に係る伸縮性配線基板の製造方法を説明する。
図2は第1の実施形態に係る伸縮性配線基板の製造工程を示す工程図である。なお、
図2各図は、
図1(a)における切断位置に相当する位置での切断端面図である。
【0041】
先ず、
図2(a)に示すように、補強基材30を準備し、補強基材30にエラストマー層50と引出配線部40とを形成する。
すなわち、先ず、熱可塑性エラストマーを溶剤に分散させた塗布剤を補強基材30の一方の主面(第1主面31a)に塗工し、当該溶剤を揮発させて当該塗布剤を乾燥させることによって、第1主面31aにエラストマー層50を形成する。エラストマー層50は、第1主面31aの全面を覆うように形成されていることが好ましい。
次に、
図2(b)に示すように、エラストマー層50における補強基材30側とは反対側の面に引出配線部40を形成する。なお、引出配線部40は、エラストマー層50を部分的に覆うように形成される。すなわち、引出配線部40はエラストマー層50の全面を覆ってはいない。
【0042】
このように、補強基材30に引出配線部40とエラストマー層50とを形成する工程は、熱可塑性エラストマーを溶剤に分散させた塗布剤を補強基材30に塗工し、溶剤を揮発させ塗布剤を乾燥させることによってエラストマー層50を形成する工程と、エラストマー層50上に引出配線部40を形成する工程と、を含む。
ここで、塗布剤(インク)を塗布及び乾燥することにより作製するため、エラストマー層50は、(溶剤が脱離することにより)多孔質状に形成される。このため、エラストマー層50の上に引出配線部40を形成する際に、引出配線部40(例えば、シルクスクリーン印刷により形成される)の形成に用いられる導電性ペーストの溶剤が、多孔質状のエラストマー層50に容易に浸透する。よって、引出配線部40の印刷解像度が良好となり、エラストマー層50に対する引出配線部40の密着性も良好となる。また、補強基材30に対するエラストマー層50の密着性も極めて良好になる。
【0043】
以上により、補強基材30と、エラストマー層50と、引出配線部40と、を含んで構成された第1積層体91が作製される。
【0044】
また、第1積層体91を作製する一方で、
図2(c)に示す第2積層体92を作製する。
すなわち、伸縮性基材10を準備し、伸縮性基材10の一方の主面(第1主面11)に伸縮性配線部20を形成する。伸縮性配線部20は、伸縮性基材10の第1主面11を部分的に覆うように形成される。すなわち、伸縮性配線部20は第1主面11の全面を覆ってはいない。
以上により、伸縮性基材10と、伸縮性配線部20と、を含んで構成された第2積層体92が作製される。
なお、第1積層体91と第2積層体92とを作製する順序は、どちらが先でもよいし、第1積層体91と第2積層体92とを並行して作製してもよい。
【0045】
次に、第1積層体91と第2積層体92とを互いに位置合わせして重ね合わせ、第1積層体91と第2積層体92とを相互に接合する。すなわち、第1積層体91と第2積層体92とを熱圧着(加熱及び加圧)することにより、エラストマー層50と伸縮性基材10とを相互に熱融着させる。また、この際に、伸縮性配線部20の一端部と引出配線部40の一端部とが相互に熱圧着されて、接続部101が形成される(
図2(d)〜
図2(e))。
以上により、伸縮性配線基板100を製造することができる。
【0046】
このように、本実施形態に係る伸縮性配線基板の製造方法は、補強基材30に引出配線部40とエラストマー層50とを形成する工程と、伸縮性基材10に伸縮性配線部20を形成する工程と、補強基材30と伸縮性基材10とを加熱および加圧してエラストマー層50と伸縮性基材10とを熱融着する工程と、を備える。
【0047】
以下、伸縮性配線基板100の各構成要素の詳細について説明する。
【0048】
<伸縮性基材>
(材料)
伸縮性基材10の材料としては、熱可塑性のエラストマーを用いることができ、このエラストマーとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレンゴム等が挙げられる。
伸縮性基材10の材料となるエラストマーは、伸縮性基材10に十分な伸長性を付与しうる程度に高柔軟なものが好ましい。
伸縮性基材10の伸長性は、特に限定されないが、例えば、200%以上(引っ張り方向に2倍以上の伸長性)であることが好ましく、500%以上(同5倍以上の伸長性)であることが更に好ましい。
伸縮性基材10は、伸縮性配線部20の形成に用いられる導電性ペーストに含まれる溶剤の浸透及び吸収が容易な性質であることが好ましい。このようにすることにより、伸縮性配線部20を印刷形成する場合の解像性を良好にすることが可能となる。
伸縮性基材10は、ポーラス体(多孔体)であることが好ましく、これにより、伸縮性基材10の透湿性を良好にすることができるとともに、伸縮性基材10に対する溶剤の浸透及び吸収が容易となる。
【0049】
(厚み)
伸縮性基材10の厚みは、特に限定されないが、伸縮性基材10のより良好な柔軟性を実現するために、100μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
なお、伸縮性基材10の厚みは、3μm以上であることが、製造容易性の観点から好ましい。
また、伸縮性基材10によって伸縮性配線部20を良好に保持できるように、伸縮性基材10の厚みは伸縮性配線部20の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0050】
(透湿性)
伸縮性基材10の透湿性は、特に限定されないが、例えば、(1000g/m
2)/24h以上であることが好ましく、(2000g/m
2)/24h以上であることが更に好ましい。人体のように皮膚から発汗する生体に伸縮性配線基板100を貼り付けて用いる場合には、伸縮性基材10がこのように好ましい透湿性を有することによって、発汗による蒸れを低減することができる。
【0051】
(加工性)
伸縮性基材10を例えば80℃以上で加圧処理することにより、伸縮性基材10が軟化して融着性を発現し、他材との密着性が得られることから、伸縮性配線基板100の作製時に接着剤等を使用しなくても伸縮性基材10と他材(本実施形態では、主としてエラストマー層50)との接着が可能となる。
【0052】
<伸縮性配線部>
(材料)
伸縮性配線部20は、所定の導電ペーストをパターニングすることにより、伸縮性基材10上に形成されている。より詳細には、導電ペーストのパターニング後(例えば印刷後)に、加熱処理によって導電ペーストが含有する溶媒を揮発させて当該導電ペーストを乾燥させることによって、伸縮性配線部20を形成することができる。
伸縮性配線部20の形成に用いられる導電ペーストは、樹脂成分をバインダとし、それに導電性フィラーを混合することにより構成されている。この樹脂成分としては、ガラス転移温度を低く抑え、弾性率を低下させたものが好ましい。
バインダとしては、典型的には熱可塑性のものが用いられる。
導電性フィラーは、特に限定されないが、典型的には銀(Ag)が用いられ、その他の材料としては、銅(Cu)やカーボン等も採用可能である。
導電ペーストのパターニングの手法は特に限定されないが、スクリーン印刷等が好適に用いられる。
【0053】
(厚み)
伸縮性配線部20の厚みは、特に限定されないが、伸縮性配線部20の良好な導電性を実現する観点から、10μm以上であることが好ましく、15μm程度とすることがより好ましい。
また、印刷によってパターニングする場合の加工面からは、伸縮性配線部20の厚みは50μm以下であることが好ましく、このようにすることにより、工程安定性を確保しながら配線形成が可能である。
【0054】
(伸長時の電気特性)
伸縮性配線部20は、当該伸縮性配線部20が伸長していない初期長さに比して1.5倍の長さに伸長した状態でも、配線としての導電性を確保しうる程度の電気特性を有していることが好ましい。
なお、伸縮性配線部20の初期長さとは、伸縮性配線基板100に引張り力が作用しておらず、伸縮性配線基板100が平坦となっている状態での伸縮性配線部20の長さである。
【0055】
<補強基材>
(材料)
補強基材30の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド(PI)などを好適に用いることができる。
【0056】
(厚み)
補強基材30の厚みは、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることが更に好ましい。
補強基材30は、例えば、伸縮性配線基板100の接続対象となる外部機器に搭載されたコネクタ部品に嵌入されるコネクタケーブルの基材となる。この場合、補強基材30の厚みを上述のように設定することにより、コネクタケーブルをコネクタに嵌入する際に補強基材30が適度な剛直性(コシ)を呈するようにできる。補強基材30の厚みは、3μm以上であることが好ましい。更に、補強基材30の厚みは、伸縮性基材10の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0057】
(付加処理)
補強基材30上にエラストマー層50を製膜する際に、エラストマー層50と補強基材30との良好な密着性を担保するため、エラストマー層50が形成される補強基材30の主面には、予め易接着処理が施されていることが好ましい。
易接着処理としては、コロナ処理(補強基材30がPETにより構成されている場合等に好ましい)、プラズマ処理(補強基材30がPIにより構成されている場合等に好ましい)、易接着コート層60(
図9)の形成、等が挙げられる。
図9に示すようにエラストマー層50の下地として易接着コート層60が形成されている場合、引出配線部40の形成に用いられる導電性ペーストに含まれる溶剤が易接着コート層60を介して容易にエラストマー層50に浸透できるように、易接着コート層60も透湿性のものであることが好ましい。易接着コート層60は、例えば、接着剤を補強基材30に塗工及び乾燥させることによって形成することができる。易接着コート層60を構成する接着剤は、熱可塑性であることが好ましい。
また、その他の易接着処理として、補強基材30の主面を補強基材の主面を機械的または化学的に粗化する(粗し加工を施す)ことも挙げられる。
【0058】
<エラストマー層>
(材料)
エラストマー層50の材料としては、熱可塑性のエラストマーを用いることができ、このエラストマーとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレンゴム等が挙げられる。このエラストマーは、熱硬化性のものであってもよいし、熱可塑性のものであってもよい。
エラストマー層50は、引出配線部40の形成に用いられる導電性ペーストに含まれる溶剤の浸透及び吸収が容易な性質であることが好ましい。このようにすることにより、引出配線部40を印刷形成する場合の解像性を良好にすることが可能となるとともに、エラストマー層50に対する引出配線部40の密着性も良好にすることができる。
エラストマー層50は、ポーラス体(多孔体)であることが好ましく、これにより、エラストマー層50に対する溶剤の浸透及び吸収が容易となる。
エラストマー層50の材料としては、例えば、伸縮性基材10の材料と同種のものを採用することができる。
エラストマー層50は、例えば、当該エラストマー層50の材料を液状態で補強基材30の主面上に均一に塗工されて製膜される。
なお、エラストマー層50が2層以上の構造の場合は、少なくとも、最も補強基材30に近い層は、当該層の材料を液状態で補強基材30の主面上に均一に塗工されて製膜されるが、他の層は、熱圧着などにより積層されていても良い。
【0059】
(透湿性)
エラストマー層50の透湿性は、特に限定されないが、例えば、(1000g/m
2)/24h以上であることが好ましく、(2000g/m
2)/24h以上であることが更に好ましい。エラストマー層50がこのように好ましい透湿性を有することによって、引出配線部40の形成に用いられる導電性ペーストに含まれる溶剤がエラストマー層50に対して容易に浸透し、引出配線部40を印刷形成する場合の解像性を良好にすることが可能となる。
【0060】
(加工性)
エラストマー層50を例えば80℃以上で加圧処理することにより、エラストマー層50が軟化して融着性を発現し、他材との密着性が得られることから、伸縮性配線基板100の作製時に接着剤等を使用しなくてもエラストマー層50と他材(本実施形態では、主として伸縮性基材10)との接着が可能となる。
特に、エラストマー層50の材料を伸縮性基材10の材料と同種とすることにより、エラストマー層50と伸縮性基材10との接合性を極めて良好にすることができる。
【0061】
(厚み)
エラストマー層50の厚みは、特に限定されないが、50μm以下とすることが好ましく、25μm以下とすることがより好ましく、10μm以下とすることが更に好ましい。
上述のように補強基材30がコネクタケーブルの基材となる場合、エラストマー層50は補強基材30とともにコネクタケーブルの基材となる。この場合、エラストマー層50の厚みを上述のように設定することにより、コネクタケーブルの基材としての剛直性(コシ)を確保しつつも、コネクタケーブルの基材の不要な厚み増加を避けることができる。
一方、エラストマー層50と補強基材30との良好な接合性を確保するために、エラストマー層50の厚みは、3μm以上であることが好ましい。
なお、エラストマー層50の厚みは、伸縮性基材10の厚みよりも小さいことが好ましい。このようにすることにより、引出配線部40及び伸縮性配線部20を間に挟んでエラストマー層50と伸縮性基材10とを熱圧着する際に、引出配線部40及び伸縮性配線部20の意図しない沈み込み(エラストマー層50に対する沈み込み)を抑制することができる。その結果、引出配線部40と伸縮性配線部20とを同層に維持しやすく、引出配線部40と伸縮性配線部20との接続部101における接続強度を十分に確保することができる。
ここで、コネクタの規格の1つとして、厚みが300μm±30μmというものがある。この規格では、引出配線部40及び伸縮性配線部20がエラストマー層50に対して30μmよりも深く沈んだ場合は、規格外となってしまう。そこで、エラストマー層50の厚みを、例えば50μm以下に設定することにより、コネクタが規格外となってしまうことを抑制することができる。
【0062】
<引出配線部>
(材料)
引出配線部40は、所定の導電ペーストをパターニングすることにより、補強基材30上に形成されている。より詳細には、導電ペーストのパターニング後(例えば印刷後)に、加熱処理によって導電ペーストが含有する溶媒を揮発させて当該導電ペーストを乾燥させることによって、引出配線部40を形成することができる。
引出配線部40の形成に用いられる導電ペーストは、樹脂成分をバインダとし、それに導電性フィラーを混合することにより構成されている。この樹脂成分としては、ガラス転移温度を低く抑え、弾性率を低下させたものが好ましい。
バインダとしては、典型的には熱可塑性のものが用いられる。
導電性フィラーは、特に限定されないが、典型的には銀(Ag)が用いられ、その他の材料としては、銅(Cu)やカーボン等も採用可能である。
導電ペーストのパターニングの手法は特に限定されないが、スクリーン印刷等が好適に用いられる。
なお、引出配線部40の材料は、伸縮性配線部20の材料と同種のものを用いてもよいし、他の一般的な熱硬化性導電性ペーストであってもよい。
【0063】
(厚み)
引出配線部40の厚みは、特に限定されないが、引出配線部40の良好な導電性を実現する観点から、10μm以上であることが好ましく、15μm程度とすることがより好ましい。
また、印刷によってパターニングする場合の加工面からは、引出配線部40の厚みは50μm以下であることが好ましく、このようにすることにより、工程安定性を確保しながら配線形成が可能である。
【0064】
(構成上の特徴)
引出配線部40と伸縮性配線部20とは、接続部101にて熱圧着により融合一体化されている。
伸縮性配線基板100が外部機器に接続される際には、伸縮性配線基板100において外部端子42を含む部分が、外部機器側のコネクタ部品に嵌入する。このため、外部端子42は、耐摩耗性の良好なカーボンペーストを用いて形成されていることも好ましい。
【0065】
〔第2の実施形態〕
次に、
図3を用いて、第2の実施形態に係る伸縮性配線基板100について説明する。
図3は第2の実施形態に係る伸縮性配線基板100を示す図であり、このうち(a)は伸縮性配線基板100を厚み方向に切断した切断端面図、(b)は平面図である。なお、
図3(a)は
図3(b)のA−A線に沿った切断端面図である。
本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、以下に説明する点で、上記の第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100と同様に構成されている。
【0066】
本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、上記の第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100の構成に加えて、伸縮性カバー基材70を備えている。
伸縮性カバー基材70は、フィルム状(薄膜状)に形成された可撓性且つ絶縁性のものであり、面方向における伸縮性を有している。
伸縮性カバー基材70は、単層構造であっても良いし、多層構造(2層以上の構造)であっても良い。
【0067】
伸縮性カバー基材70の一方の面71(
図3(a)における下面)は、伸縮性基材10の他部領域10bにおける第1主面11に対して接合されている。これにより、伸縮性配線部20における他部領域10b上の部分は、伸縮性カバー基材70によって覆われている。
【0068】
伸縮性カバー基材70には、各伸縮性配線部20における他部領域10b上の部分のうち、一部分(端子部21)を露出させる開口72が形成されている。各伸縮性配線部20の端子部21は、開口72を介して伸縮性配線基板100の外面に露出している。
図3(a)に示される例のように複数の端子部21に共通の開口72が伸縮性カバー基材70に形成されていてもよいし、各端子部21について個別の開口72が伸縮性カバー基材70に形成されていてもよい。
なお、各伸縮性配線部20における他部領域10b上の部分のうち、端子部21を除く部分は、伸縮性カバー基材70によって覆われており、したがって、伸縮性カバー基材70によって保護されている。
【0069】
伸縮性カバー基材70の一端部73は、伸縮性基材10とエラストマー層50とに挟まれている。より詳細には、伸縮性カバー基材70の一端部73の一方の面(
図3(a)における下面)は、伸縮性基材10の第1主面11に対して接合されており、一端部73の他方の面(
図3(a)における上面)は、補強基材30の第1主面31に対して接合されている。
【0070】
このように、本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、補強基材30の第1主面31上に形成されているエラストマー層50と、エラストマー層50を介して補強基材30の第1主面31上に形成されている引出配線部40と、伸縮性基材10の第1主面11上に形成されている伸縮性配線部20と、伸縮性カバー基材70と、を備えている。そして、補強基材30の第1主面31と伸縮性基材10の第1主面11とが、エラストマー層50及び引出配線部40を間に挟んで互いに対向しており、エラストマー層50と伸縮性基材10の第1主面11とが相互に接合されている。また、伸縮性カバー基材70の一方の面71は、伸縮性基材10の他部領域10bにおける第1主面11に対して接合されている。伸縮性カバー基材70には、他部領域10b上の伸縮性配線部20を部分的に露出させる開口72が形成されている。そして、伸縮性カバー基材70の一端部73がエラストマー層50と伸縮性基材10とに挟まれている。
【0071】
伸縮性カバー基材70の一端部73がエラストマー層50と伸縮性基材10とに挟まれていることにより、伸縮性基材10からの伸縮性カバー基材70の剥離、並びに、エラストマー層50からの伸縮性カバー基材70の剥離が好適に抑制されている。よって、伸縮性配線基板100が伸長した際にも、伸縮性カバー基材70の剥離が抑制される。
【0072】
なお、伸縮性カバー基材70とエラストマー層50との界面、並びに、伸縮性カバー基材70と伸縮性基材10との界面が実質的に存在せず、伸縮性カバー基材70とエラストマー層50とが一体化している場合もあり得る。この場合、伸縮性基材10、伸縮性カバー基材70及びエラストマー層50を合わせた部分を、一体の伸縮性基材と捉えることができる。
【0073】
次に、
図4を用いて、本実施形態に係る伸縮性配線基板の製造方法を説明する。
【0074】
先ず、開口72が形成された伸縮性カバー基材70を準備する一方で、第1の実施形態と同様の第2積層体92を準備し、伸縮性カバー基材70と第2積層体92とを互いに位置合わせして重ね合わせ、相互に接合する。すなわち、伸縮性カバー基材70と第2積層体92とを熱圧着(加熱及び加圧)することにより、伸縮性カバー基材70と伸縮性基材10とを相互に熱融着させる(
図4(a)〜
図4(b))。
【0075】
また、第1の実施形態と同様の第1積層体91を準備し、この第1積層体91と
図4(b)の工程で得られた積層体とを互いに位置合わせして重ね合わせ、相互に接合する。すなわち、第1積層体91と
図4(b)の工程で得られた積層体とを熱圧着(加熱及び加圧)することにより、エラストマー層50と伸縮性基材10とを相互に熱融着させるとともに、エラストマー層50と伸縮性カバー基材70の一端部73とを相互に熱融着させる。また、この際に、伸縮性配線部20の一端部と引出配線部40の一端部とが相互に熱圧着されて、接続部101が形成される(
図4(c)〜
図4(d))。
以上により、本実施形態に係る伸縮性配線基板100を製造することができる。
【0076】
<伸縮性カバー基材>
以下、伸縮性カバー基材についてより詳しく説明する。
(材料)
伸縮性カバー基材70の材料としては、熱可塑性のエラストマーを用いることができ、このエラストマーとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレンゴム等が挙げられる。
伸縮性カバー基材70の材料となるエラストマーは、伸縮性カバー基材70に十分な伸長性を付与しうる程度に高柔軟なものが好ましい。
伸縮性カバー基材70の伸長性は、特に限定されないが、例えば、200%以上(引っ張り方向に2倍以上の伸長性)であることが好ましく、500%以上(同5倍以上の伸長性)であることが更に好ましい。
伸縮性カバー基材70は、ポーラス体(多孔体)であることが好ましく、これにより、伸縮性カバー基材70の透湿性を良好なものとすることができる。
伸縮性カバー基材70の材料は、伸縮性基材10の材料と同種であることが好ましい。
【0077】
(厚み)
伸縮性カバー基材70の厚みは、特に限定されないが、伸縮性カバー基材70のより良好な柔軟性を実現するために、100μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
なお、伸縮性カバー基材70の厚みは、3μm以上であることが、製造容易性の観点から好ましい。
また、伸縮性カバー基材70によって伸縮性配線部20を良好に被覆できるように、伸縮性カバー基材70の厚みは伸縮性配線部20の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0078】
(透湿性)
伸縮性カバー基材70の透湿性は、特に限定されないが、例えば、(1000g/m
2)/24h以上であることが好ましく、(2000g/m
2)/24h以上であることが更に好ましい。人体のように皮膚から発汗する生体に伸縮性配線基板100を貼り付けて用いる場合には、伸縮性カバー基材70がこのように好ましい透湿性を有することによって、発汗による蒸れを低減することができる。
【0079】
(加工性)
伸縮性カバー基材70を例えば80℃以上で加圧処理することにより、伸縮性カバー基材70が軟化して融着性を発現し、他材との密着性が得られることから、伸縮性配線基板100の作製時に接着剤等を使用しなくても伸縮性カバー基材70と他材(本実施形態では、主として伸縮性基材10及びエラストマー層50)との接着が可能となる。
【0080】
〔第3の実施形態〕
次に、
図5を用いて、第3の実施形態に係る伸縮性配線基板100について説明する。
図5は第3の実施形態に係る伸縮性配線基板100を示す図であり、このうち(a)は伸縮性配線基板100を厚み方向に切断した切断端面図、(b)は平面図である。なお、
図5(a)は
図5(b)のA−A線に沿った切断端面図である。
本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、以下に説明する点で、上記の第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100と同様に構成されている。
【0081】
本実施形態の場合、伸縮性配線基板100は、エラストマー層50の第2主面32上に形成されているエラストマー層50(以下、第2のエラストマー層52)を備えている。
なお、本実施形態では、エラストマー層50の第1主面31上に形成されているエラストマー層50を第1のエラストマー層51と称する。
【0082】
本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、第2の実施形態と同様の伸縮性カバー基材70を備えている。
本実施形態の場合、伸縮性カバー基材70の一方の面71(
図5(a)における下面)は、伸縮性基材10の他部領域10bにおける第1主面11と、第2のエラストマー層52と、に対してそれぞれ接合されている。すなわち、伸縮性カバー基材70は、伸縮性基材10の他部領域10bと、補強基材30と、を覆っている。
よって、本実施形態でも第2の実施形態と同様に、伸縮性配線部20における他部領域10b上の部分は、伸縮性カバー基材70によって覆われている。
【0083】
このように、本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、補強基材30の第1主面31上に形成されている第1のエラストマー層51と、補強基材30の第2主面32上に形成されている第2のエラストマー層52と、第1のエラストマー層51を介して補強基材30の第1主面31上に形成されている引出配線部40と、伸縮性基材10の第1主面31上に形成されている伸縮性配線部20と、伸縮性カバー基材70と、を備えている。
また、補強基材30の第1主面31と伸縮性基材10の第1主面11とが、第1のエラストマー層51及び引出配線部40を間に挟んで互いに対向しており、第1のエラストマー層51と伸縮性基材10の第1主面11とが相互に接合されている。
伸縮性カバー基材70の一方の面71は、第2のエラストマー層52と、伸縮性基材10の他部領域10bにおける第1主面11と、に対してそれぞれ接合されている。
そして、伸縮性カバー基材70には、他部領域10b上の伸縮性配線部20(つまり端子部21)を部分的に露出させる開口72が形成されている。
【0084】
伸縮性カバー基材70が、伸縮性基材10に対してだけでなく、補強基材30上の第2のエラストマー層52に対しても接合されているので、伸縮性カバー基材70の剥離が抑制される。
【0085】
次に、
図6を用いて、本実施形態に係る伸縮性配線基板の製造方法を説明する。
【0086】
先ず、第1積層体91及び第2積層体92を準備する。本実施形態における第1積層体91は、補強基材30の第2主面32上に形成された第2のエラストマー層52を有する点で、第1及び第2の実施形態における第1積層体91とは相違している。
なお、補強基材30の第2主面32上に第2のエラストマー層52を設ける方法としては、予め製膜された第2のエラストマー層52をラミネート(熱プレス)法により第2主面32に接合する方法を採用することができる。また、第1主面31に対するエラストマー層50(第1のエラストマー層51)の形成は、第2主面32に第2のエラストマー層52を接合した後で、第1の実施形態で説明した方法により行うことができる。
次に、第1積層体91と第2積層体92とを互いに位置合わせして重ね合わせ、相互に接合する。すなわち、第1積層体91と第2積層体92とを熱圧着(加熱及び加圧)することにより、第1のエラストマー層51と伸縮性基材10とを相互に熱融着させる。また、この際に、伸縮性配線部20の一端部と引出配線部40の一端部とが相互に熱圧着されて、接続部101が形成される(
図6(a)〜
図6(b))。
【0087】
次に、開口72が形成された伸縮性カバー基材70と、
図4(b)の工程で得られた積層体と、を互いに位置合わせして重ね合わせ、相互に接合する。すなわち、当該積層体と伸縮性カバー基材70とを熱圧着(加熱及び加圧)することにより、伸縮性カバー基材70と第2のエラストマー層52とを相互に熱融着させるとともに、伸縮性カバー基材70と伸縮性基材10の他部領域10bとを相互に熱融着させる(
図6(c)〜
図6(d))。
以上により、本実施形態に係る伸縮性配線基板100を製造することができる。
【0088】
〔第4の実施形態〕
次に、
図7を用いて、第4の実施形態に係る伸縮性配線基板100について説明する。
図7は第4の実施形態に係る伸縮性配線基板100を示す図であり、伸縮性配線基板100を厚み方向に切断した切断端面を示す。
本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、以下に説明する点で、上記の第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100と相違し、その他の点では、上記の第1の実施形態に係る伸縮性配線基板100と同様に構成されている。
【0089】
本実施形態に係る伸縮性配線基板100は、伸縮性配線部20が形成されている伸縮性基材10と、伸縮性配線部20と導通している引出配線部40が形成されている補強基材30と、を備えている。補強基材30が伸縮性基材10の一部領域10aに重なっているとともに、伸縮性基材10の他部領域10bが補強基材30から露出し、且つ、伸縮性配線部20が他部領域10bから一部領域10aに亘って延在している。そして、伸縮性基材10の一部領域10aの厚さが、伸縮性基材10の他部領域10bの厚さよりも大きい。
【0090】
また、引出配線部40は、補強基材30における伸縮性基材10側とは反対側の主面(第2主面32)上に配置されている。
伸縮性配線基板100は、伸縮性基材10よりも面内剛性が高い補強フィルム80を更に備えており、補強フィルム80は、伸縮性基材10の一部領域10aにおける補強基材30側とは反対側の主面(第2主面12)上に設けられている。
補強フィルム80の材料は、材質は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはフッ素樹脂などの、低摺動性、耐食性かつ高強度の合成樹脂を用いることができる。補強フィルム80の厚みは、補強基材30の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0091】
また、本実施形態の場合、伸縮性配線部20の一端部が伸縮性基材10の中に埋設されている。
本実施形態の場合、引出配線部40と伸縮性配線部20とを導通させるため、補強基材30から伸縮性基材10の内部に亘って貫通孔93aが形成されており、この貫通孔93a内に埋め込まれた導電性材料によって接続導体43が構成されている。この接続導体43を介して、各引出配線部40がそれぞれ対応する伸縮性配線部20と導通している。
【0092】
また、伸縮性配線部20において、伸縮性基材10の一部領域10aに配置されている部分は、当該部分の延在方向軸周りの全周が伸縮性基材10にくるまれた埋設部22となっている。
【0093】
ここで、補強基材30にコネクタ(不図示)が設けられている場合、コネクタをハンドリングしたり外部機器のコネクタに挿抜したりすると補強基材30に大きな曲げ変形が生じる。このような事情に対し、補強基材30の配置領域(つまり一部領域10a)において伸縮性基材10が厚くなっていることにより、コネクタが大きく曲げ変形した際にも、伸縮性基材10における補強基材30側とは反対側の面(第2主面32)には、曲げの影響が及びにくくなる。つまり、コネクタが大きく曲げ変形した際においても、伸縮性基材10の下面(第2主面32)における変形量を抑制することができる。
よって、伸縮性基材10からの補強フィルム80の剥離を抑制することができる。
【0094】
次に、
図8を用いて、本実施形態に係る伸縮性配線基板の製造方法を説明する。
【0095】
先ず、
図8(a)に示す第1積層体93と
図8(b)に示す第2積層体92とを準備する。
【0096】
第1積層体93を作製するには、先ず、補強基材30の第1主面31上にエラストマー層50を形成する。次に、補強基材30とエラストマー層50とを厚み方向に貫通する貫通孔93aを形成する。次に、貫通孔93aに導電性材料を充填することにより、貫通孔93a内に接続導体43を形成する。なお、各貫通孔93aは、各伸縮性配線部20の一端部と対応する位置に形成される。
【0097】
第2積層体92については、第1の実施形態の第2積層体92と同様である。ただし、説明の便宜上、本実施形態における第2積層体92が備える伸縮性基材の符号は、伸縮性基材13とする。
【0098】
次に、第1積層体93と第2積層体92とを互いに位置合わせして重ね合わせ、相互に接合する。すなわち、第1積層体93と第2積層体92とを熱圧着(加熱及び加圧)することにより、エラストマー層50と伸縮性基材13とを相互に熱融着させる。これにより、エラストマー層50と伸縮性基材13とが融合一体化して伸縮性基材10となる(
図8(c))。なお、伸縮性基材10は、部分的に(
図8(c)における左側の部分において)厚くなる。また、各接続導体43が対応する伸縮性配線部20の一端部と接触し、各接続導体43が対応する伸縮性配線部20と導通される。
【0099】
次に、補強基材30の第2主面32に引出配線部40を形成する。これにより、各引出配線部40が、それぞれ接続導体43を介して、対応する伸縮性配線部20と導通される。
【0100】
次に、補強基材30の第1主面31に補強フィルム80を固定する。
以上により、伸縮性配線基板100を製造することができる。
【0101】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)伸縮性基材と、前記伸縮性基材の第1主面上または第2主面上の少なくとも一方に形成されている伸縮性配線部と、前記伸縮性基材よりも面内剛性が高い補強基材と、前記補強基材の第1主面上または第2主面上の少なくとも一方に形成され、前記伸縮性配線部と導通している引出配線部と、前記補強基材の前記第1主面上または前記第2主面上の少なくとも一方に形成されているエラストマー層と、を備え、前記補強基材が前記伸縮性基材の一部領域に重なっているとともに、前記伸縮性基材の他部領域が前記補強基材から露出し、且つ、前記伸縮性配線部が前記他部領域上から前記一部領域上に亘って延在しており、一の前記エラストマー層と前記伸縮性基材とが相互に積層及び接合されている伸縮性配線基板。
(2)前記引出配線部と前記補強基材との間に前記エラストマー層が介在しており、前記エラストマー層の一方の面に前記引出配線部が接している(1)に記載の伸縮性配線基板。
(3)前記エラストマー層の透湿性が(1000g/m
2)/24h以上である(2)に記載の伸縮性配線基板。
(4)前記エラストマー層の厚みが、前記伸縮性基材の厚みよりも小さい(2)又は(3)に記載の伸縮性配線基板。
(5)前記エラストマー層は、易接着コート層を介して、前記補強基材の主面に形成されている(1)から(4)のいずれか一項に記載の伸縮性配線基板。
(6)前記補強基材の前記第1主面上に形成されている前記エラストマー層と、前記エラストマー層を介して前記補強基材の前記第1主面上に形成されている前記引出配線部と、前記伸縮性基材の前記第1主面上に形成されている前記伸縮性配線部と、伸縮性カバー基材と、を備え、前記補強基材の前記第1主面と前記伸縮性基材の前記第1主面とが、前記エラストマー層及び前記引出配線部を間に挟んで互いに対向しており、前記エラストマー層と前記伸縮性基材の第1主面とが相互に接合されており、前記伸縮性カバー基材の一方の面は、前記伸縮性基材の前記他部領域における前記第1主面に対して接合されており、前記伸縮性カバー基材には、前記他部領域上の前記伸縮性配線部を部分的に露出させる開口が形成されており、前記伸縮性カバー基材の一端部が前記エラストマー層と前記伸縮性基材とに挟まれている(1)から(5)のいずれか一項に記載の伸縮性配線基板。
(7)前記補強基材の前記第1主面上に形成されている第1の前記エラストマー層と、前記補強基材の前記第2主面上に形成されている第2の前記エラストマー層と、前記第1のエラストマー層を介して前記補強基材の前記第1主面上に形成されている前記引出配線部と、前記伸縮性基材の前記第1主面上に形成されている前記伸縮性配線部と、伸縮性カバー基材と、を備え、前記補強基材の前記第1主面と前記伸縮性基材の前記第1主面とが、前記第1のエラストマー層及び前記引出配線部を間に挟んで互いに対向しており、前記第1のエラストマー層と前記伸縮性基材の第1主面とが相互に接合されており、前記伸縮性カバー基材の一方の面は、前記第2のエラストマー層と、前記伸縮性基材の前記他部領域における前記第1主面と、に対してそれぞれ接合されており、前記伸縮性カバー基材には、前記他部領域上の前記伸縮性配線部を部分的に露出させる開口が形成されている(1)から(5)のいずれか一項に記載の伸縮性配線基板。
(8)伸縮性配線部が形成されている伸縮性基材と、前記伸縮性配線部と導通している引出配線部が形成されている補強基材と、を備え、前記補強基材が前記伸縮性基材の一部領域に重なっているとともに、前記伸縮性基材の他部領域が前記補強基材から露出し、且つ、前記伸縮性配線部が前記他部領域から前記一部領域に亘って延在しており、前記伸縮性基材の前記一部領域の厚さが、前記伸縮性基材の前記他部領域の厚さよりも大きい伸縮性配線基板。
(9)前記引出配線部は、前記補強基材における前記伸縮性基材側とは反対側の主面上に配置され、当該伸縮性配線基板は、前記伸縮性基材よりも面内剛性が高い補強フィルムを更に備え、前記補強フィルムは、前記伸縮性基材の前記一部領域における前記補強基材側とは反対側の主面上に設けられている(8)に記載の伸縮性配線基板。
(10)前記伸縮性配線部において、前記伸縮性基材の前記一部領域に配置されている部分は、当該部分の延在方向軸周りの全周が前記伸縮性基材にくるまれた埋設部となっている(8)又は(9)に記載の伸縮性配線基板。
(11)前記伸縮性配線部と前記引出配線部との接続部が、前記伸縮性基材にくるまれている(10)に記載の伸縮性配線基板。
(12)補強基材に引出配線部とエラストマー層とを形成する工程と、伸縮性基材に伸縮性配線部を形成する工程と、前記補強基材と前記伸縮性基材とを加熱および加圧して前記エラストマー層と前記伸縮性基材とを熱融着する工程と、を備える伸縮性配線基板の製造方法。
(13)前記補強基材に前記引出配線部と前記エラストマー層とを形成する工程は、熱可塑性エラストマーを溶剤に分散させた塗布剤を前記補強基材に塗工し、前記溶剤を揮発させ前記塗布剤を乾燥させることによって前記エラストマー層を形成する工程と、前記エラストマー層上に前記引出配線部を形成する工程と、を含む(12)に記載の伸縮性配線基板の製造方法。