(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る車両表示装置の概略構成を示す正面図である。
図2は、実施形態に係る車両表示装置の概略構成を示す部分断面図である。
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8は、実施形態に係る装飾部品製造方法の流れを説明する模式図である。
図9、
図10、
図11、
図12は、実施例に係る車両表示装置に適用される文字板に関する測定データの一例を示す線図である。
図13、
図14、
図15は、変形例に係る車両表示装置に適用される文字板を示す正面図である。
【0015】
本実施形態に係る車両表示装置用装飾部品としての装飾部品1は、
図1、
図2に示すように、車両に搭載される車両表示装置100に適用される。車両表示装置100は、いわゆる車載メータを構成するものであり、例えば、車両のダッシュボードに設けられたインストルメントパネルに搭載され、車両の運転に供される情報として当該車両に関する種々の情報を表示する。車両表示装置100は、車両に関する情報を表示する表示部101と、表示部101を含む当該車両表示装置100の各部に組み込まれた装飾部品1とを備える。そして、車両表示装置100は、装飾部品1の表面の模様を組み合わせることで、斬新な視覚効果を実現したものである。
【0016】
なお、
図1に示す車両表示装置100の幅方向とは、典型的には、この車両表示装置100が適用される車両の車幅方向に相当する。以下の説明では、車両表示装置100の幅方向において、当該車両表示装置100の前面に向かって左側(
図1中左側)を幅方向左側、向かって右側(
図1中右側)を幅方向右側という場合がある。また、
図2に示す車両表示装置100の奥行き方向とは、典型的には、この車両表示装置100が適用される車両の前後方向に相当する。また、車両表示装置100の前面側とは、車両の運転席と対面する側であり、典型的には、当該運転席に座った運転者によって視認される側である。一方、車両表示装置100の背面側とは、奥行き方向において前面側とは反対側であり、典型的には、インストルメントパネルの内部に収容される側である。
【0017】
表示部101は、車両に関する種々の情報を表示するものである。ここでは、表示部101は、一例として、車両に関する情報として、車速を表示する速度計102、冷却水の温度を表示する水温計103、走行用動力源の出力回転数を表示する回転計104、燃料残量を表示する燃料計105、シフトポジションを表示するシフト表示部106、方向指示器(ウインカ)の動作状態を表すターン表示部107、積算走行距離を表す積算走行距離表示部108等を含んで構成される。表示部101は、車両表示装置100の各部を収容する筐体109内に配置されると共に各種情報の表示面が奥行き方向前面側に露出する。筐体109は、樹脂材料等によって構成される。筐体109は、例えば、奥行き方向背面側に配置される背面ケース110と、背面ケース110の奥行き方向前面側に配置される中間ケース111と、中間ケース111の奥行き方向前面側に配置される見返し112とを含んで構成され、これらによって区画される空間部内に表示部101が配置される。そして、筐体109は、見返し112に形成される開口112a(
図2参照)を介して各表示部101の表示面が奥行き方向前面側に露出する。ここでは、表示部101は、速度計102の表示面内に水温計103の表示面が組み込まれており、同様に、回転計104の表示面内に燃料計105の表示面が組み込まれている。表示部101は、筐体109内において、速度計102、及び、水温計103が幅方向右側に配置される一方、回転計104、及び、燃料計105が幅方向左側に配置され、さらに、シフト表示部106、ターン表示部107、及び、積算走行距離表示部108がこれらの間に配置される。
【0018】
例えば、
図2に示すように、速度計102は、筐体109内に配置される配線板113に内機114が固定される。内機114は、指針115の駆動源であるモータ114aを含んで構成され、当該モータ114aから指針115の回転軸116が突設される。水温計103、回転計104、燃料計105も速度計102とほぼ同様の構成である。見返し112は、配線板113や内機114等を覆い、上記のように開口112aから各表示部101の表示面を奥行き方向前面側に露出させる。なお、車両表示装置100は、当該表示部101の奥行き方向前面側が筐体109に取り付けられる透明カバーによって保護されている。
【0019】
装飾部品1は、車両表示装置100において、奥行き方向前面側に露出し運転者を含む乗員の視界にはいりうる部分の化粧部材となるものである。装飾部品1は、例えば、表示部101、ここでは、速度計102、水温計103、回転計104、燃料計105等に組み込まれる各文字板117に適用される。文字板117は、速度計102、水温計103、回転計104、燃料計105等において見返し112の開口112aから奥行き方向前面側に露出する表示面を構成するものである。文字板117は、指針115によって指し示される目盛の装飾、当該目盛に対応して付された計測値に関する様々な図柄、記号、文字列(表示する物理量の単位「km/h」、「×1000r/min」、「F」、「H」等の文字列、車速を表す「0」、「20」等の複数の文字列、回転数を表す「0」、「1」等の複数の文字列)等の装飾を含んで構成される。
【0020】
なお、車両表示装置100は、速度計102、及び、当該速度計102の表示面に組み込まれた水温計103の文字板117と、回転計104、及び、当該回転計104の表示面に組み込まれた燃料計105等の文字板117とを備える、各文字板17は、図柄、記号、文字列等以外はほぼ同様の構成であるので、以下の説明では共通の説明とする。
【0021】
本実施形態の装飾部品1として構成される各文字板117は、
図1に示すように、奥行き方向前面側の表面、すなわち、車両の運転席と対面し運転席に座った運転者等によって視認される側の面が表示面を構成する。そして、各文字板117は、当該表示面に形成される複数の第1溝11によって第1領域10に第1模様12による装飾が施され、当該表示面に形成される複数の第2溝21によって第2領域20に第2模様22による装飾が施されている。
【0022】
具体的には、各文字板117は、第1領域10と、第2領域20とを備え、全体として、中心軸線C1を中心とした略円形状に形成される。ここでは、第1領域10、第2領域20は、共に略円形状に形成される。第1領域10は、中心軸線C1を中心とした略円形状の領域であり、各文字板117において、それぞれ速度計102、回転計104の表示面によって構成される。ここでは、中心軸線C1は、速度計102、回転計104の指針115の回転軸線と一致している。第1領域10は、複数の第1溝11によって第1模様12が形成される。第2領域20は、中心軸線C1とは異なる中心軸線C2を中心とした略円形状の領域であり、各文字板117において、それぞれ水温計103、燃料計105の表示面によって構成される。ここでは、中心軸線C2は、水温計103、燃料計105の指針115の回転軸線と一致している。中心軸線C2は、中心軸線C1に対して幅方向右側でかつ鉛直方向下側にずれた位置に設定される。その上で、当該中心軸線C2を中心とした第2領域20は、第1領域10内に包含されて設けられる。言い換えれば、第2領域20は、略円形状に形成される第1領域10の一部がくり抜かれたような略円形状に形成される。さらに言い換えれば、第2領域20は、その全周が第1領域10によって囲われている。第2領域20は、複数の第2溝21によって第2模様22が形成される。
【0023】
そして、第1領域10の第1模様12と第2領域20の第2模様22とは、典型的には異なる模様であり、ここでは、異なる種類の目付模様である。本実施形態の第1領域10は、微細な複数の第1溝11が予め設定される基準点(例えば、中心軸線C1上の点)、あるいはその近傍から外側に向けて放射状に延在することで形成される放射目付模様であり、旭光模様とも呼ばれる場合がある。一方、第2模様22は、微細な複数の第2溝21が予め設定される基準点(例えば、中心軸線C2上の点)を中心として同心円環状、あるいは、渦巻き環状に延在することで形成されるスピン目付模様である。
【0024】
本実施形態の複数の第1溝11と複数の第2溝21とは、複数の第2溝21の最大深さが複数の第1溝11の最大深さより深い。つまり、第2模様22は、第1模様12を形成する第1溝11より最大深さが深い第2溝21によって形成される。ここで、第1溝11、第2溝21の最大深さとは、典型的には、それぞれ、ピーク(高い方の頂点)に対するボトムの深さのうちの最大のものに相当する。また、本実施形態の第1模様12を構成する複数の第1溝11、及び、第2模様22を構成する複数の第2溝21は、樹脂材料を成形する金型の成形面から当該樹脂材料の表面に転写された転写溝である。ここでは、装飾部品1として構成される各文字板117は、それぞれ合成樹脂を成形金型によって一体成形することで、各表示面を含む全体が一体で形成され、当該成形金型の成形面の形状に応じて表面に第1溝11、第2溝21が転写されることで第1模様12、第2模様22が形成される。
【0025】
以下、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8の模式的な断面図を参照して、装飾部品1として構成される文字板117の製造方法である装飾部品製造方法、及び、当該文字板117の詳細な構成について具体的に説明する。以下で説明する装飾部品製造方法は、作業員が種々の装置、機器、治具等を用いて手作業で行うものとして説明するが、これに限らず、例えば、種々の製造装置によって自動で実行するものであってもよい。
【0026】
まず、作業員は、成形溝形成工程として、
図3に示すように、成形金型200の成形面201に複数の成形溝202を形成する。成形金型200の成形面201は、装飾部品1として略円形状に形成される文字板117の各部の表面を成形する面である。文字板117を成形する成形金型200は、成形面201に、文字板117の各部を成形する部分と共に複数の成形溝202が形成される。成形溝202は、複数の第1溝11を成形する複数の第1成形溝203と、複数の第2溝21を成形する複数の第2成形溝204とを含んで構成される。複数の第1成形溝203は、成形面201において第1領域10を成形する領域に形成され、第1模様12に応じた第1成形模様205を構成する。複数の第2成形溝204は、成形面201において第2領域20を成形する領域に形成され、第2模様22に応じた第2成形模様206を構成する。
【0027】
ここでは、複数の第1成形溝203と複数の第2成形溝204とは、複数の第1溝11と複数の第2溝21との関係と同様に、複数の第2成形溝204の最大深さRt12が複数の第1成形溝203の最大深さRt11より深くなるように形成される(Rt12>Rt11)。ここで、第1成形溝203、第2成形溝204の最大深さとは、上述の第1溝11、第2溝21の最大深さと同様に、それぞれ、ピーク(高い方の頂点)に対するボトムの深さのうちの最大のものに相当する。成形金型200は、例えば、当該成形金型200の成形面201の形状情報等を含む加工情報に基づいて種々の加工機械を用いて文字板117の各部に対応した基本的な形状が形成され、その後、治具等を用いて成形面201に複数の成形溝202が形成される。
【0028】
より詳細には、例えば、複数の成形溝202は、成形面201において、第1領域10を成形する領域に複数の第1成形溝203が形成された後に、第2領域20を成形する領域に複数の第2成形溝204が形成される。複数の第1成形溝203は、例えば、成形面201を研磨具によって研磨することで第1成形模様205に応じた方向性、ここでは、放射目付模様に応じた方向性を有して形成される。第1成形溝203は、例えば、所定の軌道で駆動するルータの先端に設けられた砥石等の研磨具によって、成形面201を所望の模様、ここでは、放射状の放射目付模様の方向に沿って研磨することで、当該放射目付模様を構成するように方向性を有して形成される。同様に、複数の第2成形溝204は、例えば、成形面201を研磨具によって研磨することで第2成形模様206に応じた方向性、ここでは、スピン目付模様に応じた方向性を有して形成される。第2成形溝204は、例えば、所定の軌道で駆動するルータの先端に設けられた砥石等の研磨具によって、成形面201を所望の模様、ここでは、円環状のスピン目付模様の方向に沿って研磨することで、当該スピン目付模様を構成するように方向性を有して形成される。ここで用いる砥石等の研磨具は、複数の第2成形溝204の最大深さRt12が複数の第1成形溝203の最大深さRt11より深くなる粗さ、仕様等であればよい。ここではまず、複数の第1成形溝203は、第1領域10を成形する領域に加えて第2領域20を成形する領域にも形成される。その上で、複数の第2成形溝204は、第2領域20を成形する領域に当該複数の第1成形溝203に重ねて形成される。この場合、成形面201に形成される複数の成形溝202は、上述したように、複数の第2成形溝204の最大深さRt12が複数の第1成形溝203の最大深さRt11より深く(Rt12>Rt11)形成されることで、第2領域20を成形する領域において、先に形成される第1成形溝203よりも、後に形成される当該第2成形溝204をより深い成形溝202とすることができる。これにより、成形面201に形成される複数の成形溝202は、第1領域10に包含される第2領域20を成形する領域において、第1成形溝203を消して第2成形溝204をより明瞭に形成することができる。
【0029】
次に、作業員は、光硬化樹脂塗布工程として、
図4に示すように、成形面201に装飾部品1を構成する樹脂材料(合成樹脂)として光硬化樹脂30を塗布する。光硬化樹脂30は、露光することで硬化する樹脂であり、より詳細には、露光することで硬化度が変化する樹脂である。光硬化樹脂30は、例えば、紫外線を照射することで硬化するUV(Ultraviolet、紫外線)硬化インクを用いることができ、例えば、所望の文字板117の色彩に応じて、白色インク、着色インク、透明インク等を適宜用いることができる。ここでは、光硬化樹脂30は、透明のUV硬化インクを用いる。この光硬化樹脂塗布工程では、光硬化樹脂30は、比較的に硬化度が低く流動性が高い未硬化の状態で成形面201に塗布され、成形面201上に当該未硬化の光硬化樹脂30による液体層を形成する。これにより、光硬化樹脂30は、流動性が高く優れた転写性(言い換えれば、成形面201の形状に対する追従性)を確保することが可能となる。
【0030】
次に、作業員は、基材設置工程として、
図5に示すように、光硬化樹脂塗布工程にて成形面201に塗布された光硬化樹脂30上に、装飾部品1を構成する樹脂材料(合成樹脂)として光を透過する光透過樹脂31によって形成された基材32を設置する。光透過樹脂31によって形成された基材32は、例えば、光を透過する透明生地のポリカーボネート製シートを用いることができる。作業員は、板状に形成された基材32を成形面201に塗布された光硬化樹脂30上に載置させる。
【0031】
次に、作業員は、露光転写工程として、
図6に示すように、基材32を成形面201側に押圧しながら光硬化樹脂30に対して露光し光硬化樹脂30を硬化させ、光硬化樹脂30を成形面201によって成形することで光硬化樹脂30の表面(成形面201と接する面)に複数の第1成形溝203、及び、複数の第2成形溝204を転写する。光硬化樹脂30に対して露光する光源としては、光硬化樹脂30に紫外線を照射可能な発光素子であるUV−LED(Light Emitting Diode)300を用いることができる。UV−LED300は、基材32を挟んで、成形面201上に塗布された光硬化樹脂30と対向する位置に配置される。UV−LED300から照射される紫外線を含む光は、光透過樹脂31によって形成された基材32を透過し、成形面201上に塗布された光硬化樹脂30に照射される。UV硬化インクによって構成される光硬化樹脂30は、紫外線が照射され露光されることで硬化し、このとき、基材32と共に成形面201側に押圧されながら成形面201によって成形されることで表面に複数の第1成形溝203、及び、複数の第2成形溝204が転写される。装飾部品1として構成される文字板117は、当該成形金型200の成形面201に形成された第1成形溝203、第2成形溝204が表面に転写されることで、第1模様12を構成する複数の第1溝11、及び、第2模様22を構成する複数の第2溝21が成形される。
【0032】
次に、作業員は、離型工程として、
図7に示すように、複数の第1成形溝203、複数の第2成形溝204に応じた第1溝11、第2溝21が形成された光硬化樹脂30の表面と成形金型200の成形面201とを境界として、成形金型200を光硬化樹脂30側から外し離型する。成形面201から光硬化樹脂30の表面に転写された複数の第1溝11と複数の第2溝21とは、複数の第2溝21の最大深さRt2が複数の第1溝11の最大深さRt1さより深くなるように形成されている。上述の光硬化樹脂塗布工程、基材設置工程、露光転写工程、及び、離型工程は、樹脂材料を成形面201によって成形することで表面に複数の第1溝11、及び、複数の第2溝21が転写された装飾部品1を成形する成形工程に相当する。
【0033】
次に、作業員は、印刷工程として、
図8に示すように、基材32の裏面(光硬化樹脂30とは反対側の面)に接するように暗色系のインク、例えば、黒インク33を印刷する。装飾部品1として構成される文字板117は、基材32の裏面に黒インク33によって、上記図柄、記号、文字列等に対応した形状が中抜きされた印刷が施されることで、上記図柄、記号、文字列等が描かれる。以上で、装飾部品製造方法を終了する。
【0034】
上記の装飾部品製造方法によって製造される装飾部品1として構成される文字板117は、
図8に示すように、表面(車両の運転席と対面する側の面)側から順に、光硬化樹脂30、光透過樹脂31によって形成された基材32、及び、黒インク33の3層構造を構成する。第1層目の光硬化樹脂30は、成形金型200の成形面201によって成形されることで、成形面201の第1成形溝203、第2成形溝204が転写され、第1模様12を構成する複数の第1溝11、及び、第2模様22を構成する第2溝21が形成される層である。つまり、第1溝11は、第1成形溝203が光硬化樹脂30の表面に転写されて形成された転写溝であり、第2溝21は、第2成形溝204が光硬化樹脂30の表面に転写されて形成された転写溝である。第2層目の光透過樹脂31によって形成された基材32は、表面側に第1層目の光硬化樹脂30が被着され、裏面側に第3層目の黒インク33が被着される基礎部を構成する層である。第3層目の黒インク33は、上記図柄、記号、文字列等が描かれる層である。文字板117は、黒インク33によって車両情報に関する図柄、記号、文字列等の中抜きされた部分が光を透過する部分となり、例えば、背面側に設けられた光源が点灯することで、文字板117の奥行き方向背面側から光が照射され、各中抜きされた部分において当該照射された光が透過され、これにより、中抜きされた部分に応じた図柄、記号、文字列等が点灯表示される。一方、文字板117は、光源が消灯されることで、各中抜きされた部分に応じた図柄、記号、文字列等が消灯される。そして、文字板117は、光硬化樹脂30の表面側に入射した光が第1溝11、第2溝21で反射することで、運転者等が視認可能な第1模様12、第2模様22が形成され、第2溝21で反射しなかった光は黒インク33による平坦な面に吸収される。
【0035】
以上で説明した装飾部品1(文字板117)によれば、車両に関する情報を表示する車両表示装置100に設けられ複数の第1溝11によって第1模様12が形成された第1領域10と、第1領域10内に包含されて設けられ複数の第2溝21によって第2模様22が形成された第2領域20とを備える。また、以上で説明した車両表示装置100によれば、車両に関する情報を表示する表示部101と、表示部101に設けられた上記装飾部品1(文字板117)を備える。
【0036】
したがって、装飾部品1、車両表示装置100は、第1領域10に形成された第1模様12と、当該第1領域10内に包含される第2領域20に形成された第2模様22とを組み合わせたことによる相乗効果によって新奇で斬新な視覚効果を実現することができる。
【0037】
ここでは、以上で説明した装飾部品1(文字板117)、車両表示装置100によれば、第1模様12は、複数の第1溝11が放射状に延在することでいわゆる放射目付模様として形成され、第2模様22は、複数の第2溝21が同心円環状、あるいは、渦巻き環状に延在することでいわゆるスピン目付模様として形成される。したがって、装飾部品1、車両表示装置100は、第1模様12である放射目付模様の中に第2模様22であるスピン目付模様を付した新奇な装飾を実現することができる。この場合、装飾部品1、車両表示装置100は、第1領域10に包含された第2領域20に付された第2模様22が同心円環状、あるいは、渦巻き環状に延在することで形成されるスピン目付模様であることから、例えば、上記のように同一部材、同一平面上に第1領域10、及び、第2領域20を形成する場合に、第1領域10内の第1模様12を形成した後に当該第1領域10に包含された第2領域20内の第2模様22を研磨具等によって形成しやすい模様とすることができる。ここでは、装飾部品1、車両表示装置100は、第1模様12、第2模様22が成形面201から転写される模様である構成において、成形面201に、第1領域10内の第1模様12を成形するための第1成形模様205を形成した後に、第2模様22を成形するための第2成形模様206を研磨具等によって形成しやすい模様とすることができる。この結果、装飾部品1、車両表示装置100は、製造工程の複雑化を抑制しつつ、第1領域10の第1模様12と第2領域20の第2模様22との境界、ここでは、第1模様12、第2模様22を成形するための第1成形模様205と第2成形模様206との境界を明瞭にすることができる。
【0038】
さらに、以上で説明した装飾部品1(文字板117)、車両表示装置100によれば、複数の第1溝11と複数の第2溝21とは、複数の第2溝21の最大深さRt2が複数の第1溝11の最大深さRt1より深い。ここでは、装飾部品1、車両表示装置100は、成形面201において、第2溝21を成形する第2成形溝204の最大深さRt12が第1溝11を成形する第1成形溝203の最大深さRt11より深く形成される。これにより、成形面201に形成される複数の成形溝202は、第1領域10に包含される第2領域20を成形する領域において、第2成形溝204を第1成形溝203より明瞭に形成することができる。つまり、上記成形金型200は、成形面201に第1成形溝203、第2成形溝204を順次形成した上で、第1領域10に形成される第1模様12を成形する第1成形模様205と、第1領域10に包含された第2領域20に形成される第2模様22を成形する第2成形模様206とを明瞭に区別して形成することができる。さらに詳述すれば、上記成形金型200は、成形面201に対して第1成形溝203を形成した後に形成される第2成形溝204の最大深さRt12をより深くしているので、第2領域20を成形する領域において、当該第1成形溝203に後から重ねて形成される当該第2成形溝204によって第1成形溝203を消し、第2成形模様206を明瞭に形成することができる。この結果、成形面201によって成形された文字板117は、第2成形溝204が転写されることで形成される第2溝21の最大深さRt2が、第1成形溝203が転写されることで形成される第1溝11の最大深さRt1より深くなり、第1領域10に包含される第2領域20において第2溝21を第1溝11より目立たせて形成することができ、ひいては、当該第2領域20において、第2溝21によって構成される第2模様22を明瞭に目立たせることができる。この結果、装飾部品1(文字板117)、及び、車両表示装置100は、第2領域20において第2溝21によって構成される第2模様22をより視認しやすくすることができる。
【0039】
ここで、
図9、
図10は、実施例1に係る装飾部品1として文字板117を実際に作製し、3D測定レーザー顕微鏡を用いて当該文字板117の表面を撮影した測定データの一例であり、当該文字板117の表面のプロファイルデータ(輪郭データ)の一例である。
図9、
図10中、横軸は、撮影された文字板117の表面の任意の方向における位置を表し、縦軸は当該表面位置における表面の高さを表す。ここでは、同等の粗さの砥石(研磨具)を用いて、成形面201に複数の第1成形溝203を形成した後に複数の第2成形溝204を形成した成形金型200を作製し、当該成形金型200を用いて文字板117を実際に作製し、当該文字板117の表面を撮影した。
図9は、第1溝11によって第1模様12が形成された第1領域10のプロファイルデータ、
図10は、第2溝21によって第2模様22が形成された第2領域20のプロファイルデータを表す。この場合、放射目付模様とスピン目付模様とのルータ軌道の相違に起因して、第2成形溝204の最大深さRt12が第1成形溝203の最大深さRt11より深くなり、ひいては、第2溝21の最大深さRt2が第1溝11の最大深さRt1より深くなるように構成される。ここでは、第1溝11の最大深さRt1が0.971[μm]、第2溝21の最大深さRt2が2.711[μm]であり、第2溝21の最大深さRt2の方がより深く形成されている。
【0040】
一方、
図11、
図12は、実施例2に係る装飾部品1として文字板117を実際に作製し、3D測定レーザー顕微鏡を用いて当該文字板117の表面を撮影した測定データの一例であり、当該文字板117の表面のプロファイルデータ(輪郭データ)の一例である。ここでは、上記よりも粗い砥石(研磨具)を用いて、成形面201に複数の第1成形溝203を形成した後、上記と同等の粗さの砥石(研磨具)を用いて、複数の第2成形溝204を形成した成形金型200を作製し、当該成形金型200を用いて文字板117を実際に作製し、当該文字板117の表面を撮影した。
図11は、第1溝11によって第1模様12が形成された第1領域10のプロファイルデータ、
図12は、第2溝21によって第2模様22が形成された第2領域20のプロファイルデータを表す。この場合、放射目付模様とスピン目付模様とのルータ軌道の相違と砥石の粗さの相違とに起因して、第1成形溝203の最大深さRt11が第2成形溝204の最大深さRt12より深くなり、ひいては、第1溝11の最大深さRt1が第2溝21の最大深さRt2より深くなるように構成される。ここでは、第1溝11の最大深さRt1が1.730[μm]、第2溝21の最大深さRt2が1.499[μm]であり、第1溝11の最大深さRt1の方がより深く形成されている。
【0041】
上記実施例1に係る文字板117と上記実施例2に係る文字板117とを並べて目視にて見比べたところ、実施例2に係る文字板117は、第2領域20内において第1模様12を構成する第1溝11が若干消えきらずに残っていた一方、第2溝21の最大深さRt2の方がより深く形成されていた実施例1に係る文字板117は、第2領域20内において第1模様12を構成する第1溝11がほぼ視認できず、第2溝21によって構成される第2模様22をより視認しやすくすることができることが明らかであった。
【0042】
さらに、以上で説明した装飾部品1(文字板117)、車両表示装置100によれば、複数の第1溝11、及び、複数の第2溝21は、樹脂材料、ここでは、光硬化樹脂30を成形する成形金型200の成形面201から当該光硬化樹脂30の表面に転写された転写溝である。したがって、装飾部品1、車両表示装置100は、例えば、装飾部品1に対して、第1模様12、第2模様22を構成する第1溝11、第2溝21を直接加工するような場合と比較して品質のバラツキを低減し生産性を向上することができる。例えば、装飾部品1(文字板117)、及び、車両表示装置100は、装飾部品1を1つ1つ機械加工するような場合と比較して作業工数を抑制し製造コストを抑制することができる。
【0043】
また、装飾部品1(文字板117)、及び、車両表示装置100によれば、上記の装飾部品製造方法によって、光を透過する光透過樹脂31によって形成された基材32と、基材32上に設けられ露光することで硬化する光硬化樹脂30とを備え、第1領域10は、光硬化樹脂30に対して露光し光硬化樹脂30を硬化させながら当該光硬化樹脂30を成形金型200の成形面201によって成形することで、成形面201に形成された複数の第1成形溝203が光硬化樹脂30の表面に転写されることによって形成される第1溝11により第1模様12が形成され、第2領域20は、光硬化樹脂30に対して露光し光硬化樹脂30を硬化させながら当該光硬化樹脂30を成形面201によって成形することで、成形面201に形成された複数の第2成形溝204が光硬化樹脂30の表面に転写されることによって形成される第2溝21により第2模様22が形成される。したがって、装飾部品1、及び、車両表示装置100は、光硬化樹脂30の流動性が高く優れた転写性を確保した状態で、光硬化樹脂30の表面に複数の第1成形溝203、及び、複数の第2成形溝204を転写し、第1溝11、及び、第2溝21を形成することができる。この結果、装飾部品1(文字板117)、及び、車両表示装置100は、成形面201に形成された第1成形溝203、及び、第2成形溝204を、装飾部品1を構成する光硬化樹脂30の表面に忠実に転写し、複数の第1溝11、及び、複数の第2溝21を精度よく形成し、ひいては、第1模様12、第2模様22を精度よく形成することができる。
【0044】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両表示装置用装飾部品、及び、車両表示装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
以上の説明では、装飾部品1として構成される文字板117や成形金型200は、第1模様12、第1成形模様205が放射目付模様であり、第2模様22、第2成形模様206がスピン目付模様であるものとして説明したがこれに限らず、他の模様であってもよい。
図13に示す変形例に係る装飾部品(車両表示装置用装飾部品)1Aとして構成される文字板117Aは、第2領域20にかえて第2領域20Aを備える。第2領域20Aは、第1領域10内に包含されて設けられ複数の第2溝21Aによって第2模様22Aが形成される。当該第2模様22Aは、いわゆる放射目付模様である。つまり、装飾部品1Aとして構成される文字板117Aは、放射目付模様である第1模様12が形成された第1領域10内に、放射目付模様である第2模様22Aが形成された第2領域20Aが包含されている。
図14に示す変形例に係る装飾部品(車両表示装置用装飾部品)1Bとして構成される文字板117Bは、第1領域10にかえて第1領域10Bを備える。第1領域10Bは、複数の第1溝11Bによって第1模様12Bが形成され、第2領域20を包含する。当該第1領域10Bは、いわゆるスピン目付模様である。つまり、装飾部品1Bとして構成される文字板117Bは、スピン目付模様である第1模様12Bが形成された第1領域10B内に、スピン目付模様である第2模様22が形成された第2領域20が包含されている。
図15に示す変形例に係る装飾部品(車両表示装置用装飾部品)1Cとして構成される文字板117Cは、第1領域10にかえて上記第1領域10Bを備え、第2領域20にかえて上記第2領域20Aを備える。つまり、装飾部品1Cとして構成される文字板117Cは、スピン目付模様である第1模様12Bが形成された第1領域10B内に、放射目付模様である第2模様22Aが形成された第2領域20Aが包含されている。これらの場合であっても、装飾部品1A、1B、1C(文字板117A、117B、117C)は、新奇で斬新な視覚効果を実現することができる。
【0046】
以上の説明では、装飾部品1、1A、1B、1Cは、表示部101に組み込まれる各文字板117、117A、117B、117Cに適用されるものとして説明したがこれに限らず、車両表示装置100において、奥行き方向前面側に露出し運転者を含む乗員の視界にはいりうる部分の他の化粧部材に適用されてもよい。装飾部品1、1A、1B、1Cは、見返し112や速度計102、回転計104等の周りに設けられる環状化粧部材(リング部材)等に適用されてもよい。
【0047】
以上の説明では、第1領域10、10B、第2領域20、20Aは、共に略円形状に形成されるがこれに限らず、異なる形状でもよい。また、第1模様12、12Bの基準点が位置する中心軸線C1は、速度計102、回転計104の指針115の回転軸線と一致し、第2模様22、22Aの基準点が位置する中心軸線C2は、水温計103、燃料計105の指針115の回転軸線と一致しているものとして説明したがこれに限らず、中心軸線C1、C2と各回転軸線とがずれていてもよい。
【0048】
以上の説明では、複数の第1溝11、11Bと複数の第2溝21、21Aとは、複数の第2溝21、21Aの最大深さRt2が複数の第1溝11、11Bの最大深さRt1より深いものとして説明したがこれに限らず、最大深さRt2が最大深さRt1以下の深さであってもよい。
【0049】
以上の説明では、第1溝11、11B、及び、第2溝21、21Aは、光硬化樹脂30を成形する成形金型200の成形面201から当該光硬化樹脂30の表面に転写された転写溝であるものとして説明したがこれに限らず、例えば、樹脂材料の表面に直接形成された切削溝であってもよい。また、第1領域10、10B、第2領域20、20Aは、必ずしも樹脂材料の表面に設けられるものでなくてもよく、例えば、金属材料の表面に第1溝11、11B、第2溝21、21Aが直接切削されることで構成されてもよい。
【0050】
以上の説明では、光透過樹脂31によって形成された基材32は、例えば、光を透過する透明生地のポリカーボネート製シートを用いるものとして説明したが、これに限らず、光を透過する透明生地の樹脂材であれば他のものでもよい。
【0051】
以上の説明では、第1領域10、10B、第2領域20、20Aは、同一部材、同一平面上に形成されるものとして説明したがこれに限らず、それぞれ別個の部材に形成され、第1領域10、10B内に第2領域20、20Aが包含されるように各部材を相互に嵌め合うことで構成されてもよい。