(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投与後の病毒性H.ソムニ感染が、別のウシ科の動物によってウシに伝播される自然感染であり、前記別のウシ科の動物は少なくとも1つの病毒性H.ソムニ株に感染している、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細な説明
本発明は、微生物(例えば細菌、例えばH.ソムニ)の弱毒化に必要とされるヌクレオチド配列及び遺伝子、当該ヌクレオチド配列によってコードされる生成物(例えばタンパク質、抗原、免疫原、エピトープ)、そのようなヌクレオチド配列、生成物、微生物を製造する方法、及び、例えばワクチン若しくは免疫原性組成物を調製するため、又は免疫学的応答若しくは免疫応答を誘引するための前記の使用、又はベクターとしての(例えば発現ベクター(例えばin vitro若しくはin vivo発現ベクター)としての)前記の使用を提供する。
微生物のヌクレオチド配列及び遺伝子で同定された変異は、新規かつ非自明の弱毒変異体を生じる。これらの変異体は、高度の免疫原性を有する生弱毒免疫原性組成物又は生弱毒ワクチンの製造に有用である。
変異の同定は、新規かつ非自明のヌクレオチド配列及び遺伝子の他に、当該ヌクレオチド配列及び遺伝子によってコードされる新規かつ非自明の遺伝子生成物を提供する。
ある実施態様では、本発明は、H.ソムニ又はH.ソムニによって引き起こされる疾患に対して安全かつ効果的な免疫応答を畜牛で提供することができる弱毒H.ソムニ株を提供する。
ある特徴では、本発明は、ヌクレオチド配列又は遺伝子に弱毒化変異を含む細菌を提供し、ここで前記変異は遺伝子によってコードされるポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性を改変し、当該細菌の弱毒化病毒性をもたらす。
特に、本発明は、弱毒H.ソムニ株及び前記を含むワクチン(それらは動物で免疫原性応答を誘引する)、特にウシで応答を誘引し、誘発し又は刺激する弱毒H.ソムニ株を包含する。
問題の個々のH.ソムニ弱毒株は、病毒株と対比して遺伝子に変異を有する。開示の変異を有する株の他に、開示の病毒遺伝子内に任意の数の変異を有する弱毒株を本発明の実施に用いることができることは理解されよう。
【0009】
別の特徴では、新規な弱毒H.ソムニ株は、H.ソムニに対する、及びH.ソムニにより引き起こされる感染/疾患に対する安全で効果的なワクチンに処方される。
ある実施態様では、弱毒H.ソムニ株は、H.ソムニに対する、又はH.ソムニにより引き起こされる疾患に対してウシで安全かつ効果的な免疫応答を提供することができる。
具体的な実施態様では、弱毒株は、それ以外には遺伝的に類似する病毒株と対比して、1つ又はいくつかの病毒遺伝子を欠いている。ある実施態様では、弱毒株は、グリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質(HSM_1160)及びリポタンパク質(HSM_1714)を欠くか及び/又は発現しない。当該株の弱毒化表現型にまた寄与しうる欠落遺伝子には、マルチ銅オキシダーゼ3型(HSM_1726)及びTetRファミリー転写調節因子(HSM_1734)が含まれる。より具体的な実施態様では、弱毒株は、PTA-121029の名称でATCCに寄託された株と同じである。
ある実施態様では、当該株は鼻内又は皮下に投与できる。
別の特徴では、本発明は、開示の弱毒H.ソムニ株を含む免疫学的組成物を包含する。当該組成物はさらに、医薬的又は獣医的に許容できるビヒクル、希釈剤又は賦形剤を含むことができる。
ある実施態様では、当該組成物は、その後の病毒性H.ソムニチャレンジに対してウシで安全かつ防御的な免疫応答を提供できる。
【0010】
さらに別の実施態様では、当該組成物は、遺伝的に操作された天然に存在しない、安全かつ効果的なワクチン処方物での使用に適切な弱毒H.ソムニ株を含むことができ、前記株は、変異して(完全欠失を含む)それらの同族遺伝子生成物を発現する能力を除去された少なくとも以下の遺伝子を有する:HSM_0270、HSM_0338、HSM_0377、HSM_0598、HSM_0708、HSM_0749、HSM_0953、HSM_1160、HSM_1191、HSM_1257、HSM_1426、HSM_1616、HSM_1624、HSM_1728、HSM_1730、HSM_1734、HSM_1736、HSM_1737、HSM_1741、HSM_1793及びHSM_1889。具体的な実施態様では、操作されたH.ソムニ株は、TK#4と対比して同一の弱毒表現型を有する。
関連する実施態様では、当該組成物は、遺伝的に操作された天然に存在しない、安全かつ効果的なワクチン処方物での使用に適切な弱毒H.ソムニ株を含むことができ、前記株は、変異して(完全欠失を含む)それらの同族遺伝子生成物を発現する能力を除去された十分な数の以下の遺伝子を有する:HSM_0270、HSM_0338、HSM_0377、HSM_0598、HSM_0708、HSM_0749、HSM_0953、HSM_1160、HSM_1191、HSM_1257、HSM_1426、HSM_1616、HSM_1624、HSM_1728、HSM_1730、HSM_1734、HSM_1736、HSM_1737、HSM_1741、HSM_1793及びHSM_1889。具体的な実施態様では、操作されたH.ソムニ株は、TK#4と対比して同一の弱毒表現型を有する。
別の実施態様では、当該組成物は、遺伝的に操作された天然に存在しない、安全かつ効果的なワクチン処方物での使用に適切な弱毒H.ソムニ株を含むことができ、前記株は、変異して(完全欠失を含む)その同族遺伝子生成物を発現する能力を除去された少なくとも以下の遺伝子を有する:HSM_0077、HSM_0270、HSM_0708、HSM_0975、HSM_1191、HSM_1257、HSM_1448、HSM_1542、HSM_1571、HSM_1624、HSM_1714、HSM_1726、HSM_1728、HSM_1730、HSM_1734、HSM_1736、HSM_1737、HSM_1741及びHSM_1793。具体的な実施態様では、操作されたH.ソムニ株は、TK#42と対比して同一の弱毒表現型を有する。
関連する実施態様では、当該組成物は、遺伝的に操作された天然に存在しない、安全かつ効果的なワクチン処方物での使用に適切な弱毒H.ソムニ株を含むことができ、前記株は、変異して(完全欠失を含む)その同族遺伝子生成物を発現する能力を除去された十分な数の以下の遺伝子を有する:HSM_0077、HSM_0270、HSM_0708、HSM_0975、HSM_1191、HSM_1257、HSM_1448、HSM_1542、HSM_1571、HSM_1624、HSM_1714、HSM_1726、HSM_1728、HSM_1730、HSM_1734、HSM_1736、HSM_1737、HSM_1741及びHSM_1793。具体的な実施態様では、操作されたH.ソムニ株は、TK#42と対比して同一の弱毒表現型を有する。
【0011】
別の実施態様では、当該組成物は、遺伝的に操作された天然に存在しない、安全かつ効果的なワクチン処方物での使用に適切な弱毒H.ソムニ株を含むことができ、前記株は、変異して(完全欠失を含む)その同族遺伝子生成物を発現する能力を除去された少なくとも以下の遺伝子を有する:HSM_0268、HSM_0270、HSM_0274、HSM_0598、HSM_0708、HSM_0749、HSM_0938、HSM_1022、HSM_1160、HSM_1191、HSM_1212、HSM_1257、HSM_1542、HSM_1571、HSM_1667、HSM_1728、HSM_1730、HSM_1736、HSM_1737、HSM_1741、HSM_1793及びHSM_1889。具体的な実施態様では、操作されたH.ソムニ株は、TK#34と対比して同一の弱毒表現型を有する。
関連する実施態様では、当該組成物は、遺伝的に操作された天然に存在しない、安全かつ効果的なワクチン処方物での使用に適切な弱毒H.ソムニ株を含むことができ、前記株は、変異して(完全欠失を含む)その同族遺伝子生成物を発現する能力を除去された十分な数の以下の遺伝子を有する:HSM_0268、HSM_0270、HSM_0274、HSM_0598、HSM_0708、HSM_0749、HSM_0938、HSM_1022、HSM_1160、HSM_1191、HSM_1212、HSM_1257、HSM_1542、HSM_1571、HSM_1667、HSM_1728、HSM_1730、HSM_1736、HSM_1737、HSM_1741、HSM_1793及びHSM_1889。具体的な実施態様では、操作されたH.ソムニ株は、TK#34と対比して同一の弱毒表現型を有する。
出願人らが
十分な弱毒化遺伝子欠失セットを開示した今では、これら遺伝子欠失のどの部分的組合せが類似の又は同等の弱毒H.ソムニワクチン株を生成するために
必要であるかを決定するために非定型的作業が残されているだけであることは当業者には理解されよう。
【0012】
別の実施態様では、当該組成物はさらに、H.ソムニ以外のウシ病原体に随伴するか又は由来する少なくとも1つの追加の抗原を含むことができる。
ある実施態様では、当該少なくとも1つ以上の追加の抗原は、H.ソムニ、ウシ呼吸器複合疾患(BRDC)、ウシ呼吸器シンシチアルウイルス(BRSV)、ウシウイルス性下痢、(BVD)、ウシパラインフルエンザ3(PI3)、伝染性ウシ鼻気管炎(IBR)、ウシヘルペス-1(BHV-1)、ブルータング病ウイルス(BTV)、又はウシに感染し病気若しくは病気に対する感受性を引き起こしうる任意の他の病原体に対して免疫応答を畜牛で誘引することができる。
別の特徴では、本発明は動物をワクチン免疫する方法を提供し、前記方法は、弱毒H.ソムニ株を含む開示の免疫学的組成物の少なくとも1つを投与する工程を含む。
ある実施態様では、当該H.ソムニワクチンはさらにアジュバントを含む。具体的な実施態様では、アジュバントは、全細菌及び/又は細菌(クロストリジウム(clostridium)、H.ソムニ、マンヘイミア(Mannheimia)、パスツレラ(Pasteurella)、ヒストフィルス(Histophilus)、サルモネラ(Salmonella)、大腸菌(Escherichia coli)又は前記の組み合わせ及び/又は変種を含む)を含む。いくつかの実施態様では、アジュバントは、当該動物のIgM、IgG、IgA及び/又はその組合せの産生を高める。
別の実施態様では、本発明は弱毒ヒストフィルス・ソムニ(H.ソムニ)株を提供し、前記は、H.ソムニ又はH.ソムニによって引き起こされる疾患に対してウシ科の動物で安全かつ効果的な免疫応答を提供することができる。ここで、前記弱毒株は、参照病毒性H.ソムニ株と対比して、そのゲノム配列において最小数の病毒因子コード遺伝子を欠き、当該弱毒株にウシ科動物で感染を惹起させない。
【0013】
ある実施態様では、参照病毒株は、配列番号:2に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードするゲノムDNA配列を含む。他の実施態様では、弱毒株は、配列番号:1、3、4又は5に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードする。具体的な実施態様では、弱毒株は、配列番号:1、3、4又は5に示される配列をそのゲノムに有する弱毒株によって発現される任意の病毒因子遺伝子のレベルにほぼ等しいか又は低いレベルで(検出不能レベルを含む)対応する病毒遺伝子を発現する。
具体的な実施態様では、弱毒株は、H.ソムニ2336株と対比して、H.ソムニ#4株が欠く遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%を欠く。この実施態様では、2336株は、配列番号:6に示す配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードするゲノム配列を含み、#4株は、配列番号:1に示す配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードする。
具体的な実施態様では、弱毒株は#4単離株(すなわちTK#4)であり、前記は、PTA-121029の名称でATCCに寄託されている。別の実施態様では、弱毒株は#42単離株(すなわちTK#42)であり、前記はPTA-121030の名称でATCCに寄託されている。
別の特徴では、本発明は、本明細書に記載する弱毒株のいずれかを含む免疫学的組成物を提供する。ある実施態様では、当該組成物は弱毒株を含み、前記は、配列番号:1、3、4又は5に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードする。
ある具体的な実施態様では、弱毒株は、配列番号:1に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードする。関連する実施態様では、弱毒株は、配列番号:1に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の全てをコードする。
ある実施態様では、弱毒株は、配列番号:4に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードする。関連する実施態様では、弱毒株は、配列番号:4に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の全てをコードする。
さらに別の実施態様では、弱毒株は、配列番号:3に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードする。関連する実施態様では、弱毒株は、配列番号:3に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の全てをコードする。
さらにまた別の実施態様では、弱毒株は、配列番号:5に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の少なくとも約99%をコードする。関連する実施態様では、弱毒株は、配列番号:5に示される配列がコードする遺伝子と同じ遺伝子の全てをコードする。
【0014】
ある実施態様では、免疫学的組成物はさらに、医薬的に又は獣医的に許容できるビヒクル、希釈剤又は賦形剤を含む。
具体的な実施態様では、免疫学的組成物はウシ科の動物で防御免疫を誘引することができ、前記は、病毒性H.ソムニ株へのその後の暴露に対してウシを防御する。
別の実施態様では、免疫学的組成物はさらに少なくとも1つ以上の追加の抗原を含み、前記は、ウシ科の動物で病原体特異的免疫応答を誘引することができる。具体的な実施態様では、少なくとも1つ以上の追加の抗原はウシ科の動物で十分な免疫応答を誘引して、当該抗原が由来した病原体へのその後の暴露から動物を防御する。したがって、ウシPI3抗原が免疫原性組成物の成分として含まれる場合は、当該組成物は防御免疫応答を誘引するはずである。
別の実施態様では、追加の抗原はウシ科の動物で免疫応答を誘引することができ、前記は、ウシ呼吸器複合疾患、BRSV、BVD、PI3、又はウシ科の動物で感染し病気若しくは病気に対する感受性を引き起こしうる任意の他の病原体へのその後の暴露に対して動物の免疫応答を強化するであろう。例えば、BRSV抗原は病毒性BRSVへのその後の暴露に対して防御を提供するであろう。
別の特徴では、本発明はウシ科の動物をワクチン免疫する方法を提供し、前記方法は、本明細書に開示する免疫学的組成物の少なくとも1用量をウシ科の動物に投与する工程を含む。
【0015】
“抗原”又は“免疫原”とは、宿主動物で特異的な免疫応答を誘発する物質を意味する。抗原は、全生物(死滅、弱毒又は生);生物のサブユニット又は部分;免疫原性特性を有する挿入物を含む組換えベクター;宿主動物に対して提示されたとき免疫応答を誘引することができるDNA片又はフラグメント;ポリペプチド、エピトープ又は前記の任意の組み合わせを含むことができる。また別には、免疫原又は抗原は毒素又は抗毒素を含むことができる。
“タンパク質”、“ペプチド”、“ポリペプチド”及び“ポリペプチドフラグメント”という用語は、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では互換的に用いられる。ポリマーは直鎖でも分枝でもよく、改変されたアミノ酸又はアミノ酸アナローグを含むことができ、さらにアミノ酸以外の化学的成分によって中断されていてもよい。前記用語はまた、天然に若しくは介入により(例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化)、又は任意の他の操作若しくは改変(例えば標識又は生物活性成分との結合)によって改変されたアミノ酸ポリマーを包含する。
【0016】
本明細書で用いられる“免疫原性又は抗原性ポリペプチド”という用語には、いったん宿主に投与されると、当該タンパク質に対して液性及び/又は細胞性型免疫応答を惹起できるという意味で免疫学的に活性なポリペプチドが含まれる。好ましくは、タンパク質フラグメントは、完全なタンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するものである。したがって、本発明のタンパク質フラグメントは、少なくとも1つのエピトープ又は抗原性決定基を含むか又は本質的に前記から成るか又は前記から成る。本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質又はポリペプチドは、タンパク質の完全長配列、そのアナローグ、又はその免疫原性フラグメントを含む。“免疫原性フラグメント”とは、1つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載の免疫学的応答を誘引するタンパク質のフラグメントを意味する。そのようなフラグメントは、当業界で周知の多数のエピトープマッピング技術を用いて同定できる。例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed., 1996。例えば、線状エピトープは、例えば固相で多数のペプチド(タンパク質分子の複数の部分に対応する)を同時に合成し、前記ペプチド(ペプチドは当該支持体に結合している)を抗体と反応させることによって決定できる。そのような技術は当業界で公知であり、例えば以下に記載されている:U.S. Pat. No.4,708,871;Geysen et al., 1984;Geysen et al., 1986。同様に立体的エピトープは、アミノ酸の空間配座を例えばX-線結晶学及び二次元核磁気共鳴で決定することによって容易に同定される。例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols(上掲書)。T.パルバ(T. parva)のタンパク質に特に適用できる方法は、PCT/US2004/022605(参照によりその全体が本明細書に含まれる)に完全に記載されている。
【0017】
本明細書で考察するように、本発明は抗原性ポリペプチドの活性なフラグメント及び変種を包含する。したがって、“免疫原性又は抗原性ポリペプチド”という用語はさらに、前記ポリペプチドが機能して本明細書に規定する免疫学的応答を生じるかぎり当該配列への欠失、付加及び置換を予想する。“保存的変化”という用語は、アミノ酸残基の別の生物学的に類似する残基との入れ替え、又は核酸配列のヌクレオチドの入れ替えであって、コードされるアミノ酸が変化しないか又は別の生物学的に類似する残基であるような入れ替えを意味する。これに関して、特に好ましい置換は概して性質が保存的、すなわち1つのファミリー内で生じる置換であろう。例えば、アミノ酸は以下のように概ね4つのファミリーに分割される:(1)酸性:アスパラギン酸及びグルタミン酸;(2)塩基性:リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非荷電極性:グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは時に芳香族アミノ酸として分類される。保存的変化の例には以下が含まれる:ある疎水性残基(例えばイソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニン)の別の疎水性残基のための代用、又はある極性残基の別の極性残基のための代用(例えばアルギニンのリジンのための代用、グルタミン酸のアスパラギン酸のための代用、又はグルタミンのアスパラギンのための代用など)、又はあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による同様な保存的入れ替え(その生物学的活性に大きな影響を与えないであろう)。参照分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが当該タンパク質の免疫原性に実質的に影響しない小さなアミノ酸置換を有するタンパク質は、したがって当該参照ポリペプチドの定義内にある。これらの改変によって生じるポリペプチドの全てが本明細書に含まれる。“保存的変化”という用語はまた、非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸の使用を含むが、ただし当該置換ポリペプチドに対して得られた抗体がまた当該非置換ポリペプチドと免疫反応することを条件とする。
【0018】
“エピトープ”という用語は、特異的なB細胞及び/又はT細胞が応答する抗原又はハプテン上の部位を指す。前記用語はまた、“抗原決定基”又は“抗原性決定部位”と互換的に用いられる。同じエピトープを認識する抗体は、1つの抗体が別の抗体とある標的抗原との結合を阻止する能力を示す簡単な免疫アッセイで同定することができる。
組成物又はワクチンとの“免疫学的応答”は、宿主内における問題の組成物又はワクチンとの細胞性及び/又は抗体媒介免疫応答の発達である。通常、“免疫学的応答”には以下の作用の1つ以上が含まれる(ただしそれらに限定されない):問題の組成物又はワクチンに含まれる1つの抗原又は複数の抗原に特異的に誘導される抗体、B細胞、ヘルパーT細胞及び/又は細胞傷害性T細胞の産生。好ましくは、宿主は治療的又は防御的な免疫学的応答を示し、したがって、新規な感染に対する耐性が強化され、及び/又は当該疾患の臨床的重篤度が軽減するであろう。そのような防御は、感染宿主によって通常示される症状及び/又は臨床徴候の軽減又は欠如、より迅速な回復期間、及び/又は感染宿主におけるより低いウイルス力価によって示されるであろう。
“動物”によって哺乳動物、鳥類などが意図される。本明細書で用いられる動物又は宿主には哺乳動物及び人間が含まれる。動物は以下から成る群から選択できる:ウマ科の動物(例えばウマ)、イヌ化の動物(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科の動物(例えばライオン、トラ、イエネコ、ヤマネコ、他の大型のネコ、並びにチーター及びオオヤマネコを含む他のネコ科の動物)、羊類(例えばヒツジ)、ウシ科の動物(例えば畜牛、仔ウシ、去勢雄牛、雄牛)、ブタ類(例えばブタ)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー及びヒクイドリ)、霊長動物(例えば原猿類、メガネザル、サル、ギボン、類人猿)イタチ、アザラシ、及び魚類。“動物”という用語はまた、全ての発育期(新生期、胚性期及び胎児期を含む)の個々の動物を含む。
【0019】
特段の説明がなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、本開示が属する業界の業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。単数用語、“a”、“an”及び“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示さないかぎり複数の対応語を含む。同様に、“or”という語は、文脈が明らかにそうでないことを示さないかぎり“and”を含むことを意図する。
本開示、特に請求項及び/又はパラグラフでは、例えば“comprises(含む)”、“comprised”、“comprising”などという用語は、米国特許法で前記が帰属する意味を有することができ、例えば、“includes(含む)”、“included”、“including”などを意味することができる。さらに、例えば“consisting essentially of(本質的に〜から成る)”及び“consists essentially of”という用語は、米国特許法で前記が帰属する意味を有し、例えば、前記は明白に列挙されていない成分を許容するが、先行技術で見いだされている成分又は本発明の基礎的若しくは新規な特徴に影響を及ぼす成分は排除する。
【0020】
組成物
本発明は、弱毒H.ソムニ株及び医薬的又は獣医的に許容できる担体、賦形剤又はビヒクルを含むことができるH.ソムニワクチン又は組成物に関し、前記は、動物で応答を誘引、誘発又は刺激する。
“核酸”及び“ポリヌクレオチド”という用語はRNA又はDNAを指し、前記は、直鎖若しくは分枝、一本鎖若しくは二本鎖、又は前記のハイブリッドである。前記用語はまたRNA/DNAハイブリッドを包含する。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマー。ポリヌクレオチドは、改変ヌクレオチド(例えば、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチドアナローグ)、ウラシル、他の糖類及び連結基(例えばフルオロリボース及びチオレート)及びヌクレオチドブランチを含むことができる。ヌクレオチドの配列は、ポリマー化の後で、例えば標識成分との結合によってさらに改変することができる。この定義に含まれる改変の他のタイプは、キャップ、天然に存在する1つ以上のヌクレオチドのアナローグによる置換、並びにタンパク質、金属イオン、標識成分、他のポリヌクレオチド又は固相にポリヌクレオチドを結合させるための手段の導入である。ポリヌクレオチドは化学的合成によって入手するか、又は微生物から誘導することができる。
“遺伝子”という用語は、生物学的機能と密接に関連するポリヌクレオチドの任意のセグメントを指すために広く用いられる。したがって、遺伝子は、ゲノム配列の場合のようにイントロン及びエクソンを含むか、又はcDNAの場合のように単にコード配列を含むか、及び/又はそれらの発現のために必要な調節配列を含む。
【0021】
“単離された”生物学的成分(例えば核酸又はタンパク質又は細胞内小器官)は、当該成分が天然に存在する生物の細胞中の他の生物学的成分(例えば他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、タンパク質並びに細胞内小器官)から実質的に分離されてあるか、又は精製されてある成分を指す。“単離”されてある核酸及びタンパク質は、標準的な精製方法で精製された核酸及びタンパク質を含む。前記用語はまた、化学的合成と同様に組み換え技術によって調製された核酸及びタンパク質を包含する。
“保存的変化”という用語は、あるアミノ酸残基の生物学的に類似する別の残基による入れ替え、又は核酸配列のヌクレオチドの入れ替えであって、コードされるアミノ酸残基が変化しないか又は別の生物学的に類似する残基であるような入れ替えを意味する。これに関して、特に好ましい置換は、上記に記載したように性質がおおむね保存されているであろう。
“組換え体”という用語は、天然では存在しないか又は天然では見いだされない編成で別のポリヌクレオチドと連結されている半合成又は合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
“異種”は、ある存在物が比較されている当該存在物の残りのものと遺伝的に別個であるものに由来することを意味する。例えば、あるポリヌクレオチドは遺伝子操作技術によって異なる供給源に由来するプラスミド又はベクターに配置することができ、前記は異種ポリヌクレオチドである。その天然のコード配列から除去され、当該天然の配列以外のコード配列に作動できるように連結されたプロモーターは異種プロモーターである。
本発明のポリヌクレオチドは、追加の配列、例えば、同じ転写ユニット内の追加のコード配列、制御配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、5'UTR、3'UTR、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、同じ又は異なるプロモーターの制御下の追加の転写ユニット、クローニング、発現、相同性組換え及び宿主細胞の形質転換を可能にする配列、並びに本発明の実施態様を提供するために所望することができる任意の構築物を含むことができる。
【0022】
使用方法及び製品
本発明は以下の実施形態の方法を含む。ある実施態様では、弱毒H.ソムニ株及び医薬的又は獣医的に許容できる担体、賦形剤又はビヒクルを含む組成物を動物に投与する工程を含む、動物をワクチン免疫する方法が開示される。この実施態様のある特徴では、動物はウシである。
本発明のある実施態様では、プライム-ブーストレジメンを用いることができ、前記は少なくとも1回の一次投与及び少なくとも1回のブースター投与を含み、少なくとも1つの共通のポリペプチド、抗原、エピトープ又は免疫原を使用する。典型的には、一次投与で用いられる免疫学的組成物又はワクチンは、ブースターとして用いられるものと性質が異なる。しかしながら、同じ組成物を一次投与及びブースター投与として用いることができることは特記される。この投与プロトコルは“プライム-ブースト”と呼ばれる。
プライム-ブーストレジメンは、少なくとも1回のプライム投与及び少なくとも1回のブースト投与を含み少なくとも1つの共通のポリペプチド及び/又はその変種又はフラグメントを用いる。プライム投与で用いられるワクチンは後のブースターワクチンとして用いられるものと性質が異なってもよい。プライム投与は1回以上の投与を含むことができる。同様に、ブースト投与は1回以上の投与を含むことができる。
哺乳動物である標的種のための組成物の用量体積、例えば畜牛又はウシの組成物(細菌抗原をベースにする)の用量体積は、概して約0.1から約2.0mL、約0.1から約1.0mL、及び約0.5mLから約1.0mLである。
【0023】
ワクチンの有効性は、最後の免疫から約3から5週間後に動物(例えばウシ)をH.ソムニの病毒性の異種株でチャレンジすることによって試験することができる。動物は、鼻内、気管内、及び/又は経気管でチャレンジすることができる。鼻孔、気管、肺、脳及び/又は口由来サンプルをチャレンジ前及びチャレンジ後に収集することができ、さらにH.ソムニ特異的抗体の存在について分析することができる。
プライム-ブーストプロトコルで用いられる本発明の弱毒ウイルス株を含む組成物は、医薬的又は獣医的に許容できるビヒクル、希釈剤又は賦形剤中に含まれる。本発明のプロトコルはH.ソムニから動物を防御し、及び/又は感染動物で疾患の進行を予防する。
多様な投与は好ましくはワンショット投薬であるが、複数投薬も1から6週間離して実施できよう。好ましい時間間隔は2から3週間であり、1年に1回のブースターもまた想定される。ある実施態様では、組成物は、約5から約6週齢の仔ウシに投与される。別の実施態様では、仔ウシは約3から約4週齢でありうる。
本明細書の開示は例示として提供され、本発明は前記例示に限定されないことは当業者には理解されるべきである。本明細書の開示及び当業界の知識から、当業者は、投与回数、投与ルート及び各注射プロトコルで用いられるべき用量を煩雑な実験を全く実施することなく決定することができる。
【0024】
本発明の別の実施態様は、H.ソムニに対する免疫学的又は防御的応答を動物で誘引又は誘発する方法を実施するためのキットであり、前記キットは、弱毒H.ソムニ免疫学的組成物又はワクチン、及び当該動物で免疫応答を誘引するために有効な量でデリバリーする方法を実施するための指示を含む。
本発明の別の実施態様は、H.ソムニに対する免疫学的又は防御的応答を動物で誘発する方法を実施するためのキットであり、前記キットは、本発明の弱毒H.ソムニ株を含む組成物又はワクチン、及び当該動物で免疫応答を誘引するために有効な量でデリバリーする方法を実施するための指示を含む。
医薬的又は獣医的に許容できる担体又はビヒクル又は賦形剤は当業者には周知である。例えば、医薬的又は獣医的に許容できる担体又はビヒクル又は賦形剤は、0.9% NaCl(例えば食塩水)溶液又はリン酸緩衝液でありうる。本発明の方法のために用いることができる他の医薬的又は獣医的に許容できる担体又はビヒクルには、ポリ-(L-グルタミン酸)又はポリビニルピロリドンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。医薬的又は獣医的に許容できる担体又はビヒクル又は賦形剤は、弱毒細菌の投与を容易にする任意の化合物又は化合物の組み合わせでありうる。用量及び用量体積はここでは一般的な記述として考察され、当業者はまた、本開示の記述と当業界の知識とを併せて、煩雑な実験を全く実施することなくそれらを決定することができる。
【0025】
本開示の結果はアジュバントを使用することなく得られたが、当該免疫学的組成物及びワクチンはさらに適切なアジュバントを含むか又は本質的に適切なアジュバントから成りうる。本発明の実施で使用される適切なアジュバントは以下である:(1)アクリル酸若しくはメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸とアルケニル誘導体のポリマー、(2)免疫刺激配列(ISS)、例えば1つ以上の非メチル化CpGユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチド配列(Klinman et al., 1996; WO98/16247)、(3)水中油エマルジョン、例えば以下の文献の147ページに記載のSPTエマルジョン(“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”,M. Powell, M. Newman, Plenum Press 1995)及び同書の183ページに記載のエマルジョンMF59、(4)第四アンモニウム塩を含む陽イオン脂質、例えばDDA、(5)サイトカイン、(6)水酸化アンモニウム又はリン酸アンモニウム、(7)サポニン、又は(8)本出願に引用及び参照により取り込まれたいずれかの文書で考察された他のアジュバント、又は(9)前記の組み合わせ若しくは混合物。
ある実施態様では、アジュバントには粘膜基底層からの吸収改善を促進するものが含まれる。いくつかの例には以下が含まれる:MPL、LTK63、毒素、PLG微粒子、及びその他のいくつかのもの(Vajdy, M. Immunology and Cell Biology (2004) 82, 617-627)。ある実施態様では、アジュバントはキトサンでありうる(Van der Lubben et al. 2001;Patel et al. 2005;Majithiya et al. 2008;US Patent Serial No. 5,980.912)。
【0027】
本発明を以下の非限定的な実施例によってこれからさらに詳しく述べる。
実施例
多数のH.ソムニ病毒因子が文献に報告されている。単一病毒因子が当該病原体の役割を支配しているようには思われないが、その代わりにいくつかの因子が協調してある単離株を病毒性にしているように思われる。以下のいくつか病毒因子が同定された:
DR2(血清に対する耐性に必要とされるIbpAドメイン内の保存された細胞傷害性Ficモチーフを含むダイレクトリピート)、
hsst-I(CMP-Neu5Ac-β-Gal-α-(2-3)-シアリルトランスフェラーゼ(リポオリゴ糖(LOS)のシアリル化は抗体結合を阻害することが示された))、
lob2b(LOS合成に必要とされるグリコトランスフェラーゼをコードする)、
nanリアーゼ(N-アセチルニューラミネートリアーゼ(シアル酸代謝に関与する))、
nanエピメラーゼ(N-アセチルマンノサミン-6-ホスフェート-2-エピメラーゼ(炭水化物の輸送及び代謝に関与する)、
luxS(AI-2クオラムセンシングに関与する)、及び
uspE(バイオフィルム形成で細胞運動性及び凝集のために必要な普遍性ストレスタンパク質)。
50の単離株をスクリーニングのために選択した。単離株選択の基準は、この実験の開始の約1年以内に単離されている必要があること、及び多様な地理的位置に由来するか又は高い遺伝子型多様性の可能性がある特別な問題を有する事例に由来する必要があることであった。この目的は、野外のH.ソムニの指標となる直近の単離株を考察し、さらに可能なかぎり多様性を試しスクリーニングすることであった。問題の病毒因子の各々について規定されたPCR反応の実施に加えて、単離株をそれらの増殖及びコロニーの外観について評価した。PCR反応は1%アガロースゲルで可視化した。増殖、コロニーの外観、及びPCRの結果を基準にして単離株を選別した後、動物モデルを特定して問題の単離株の評価に用いた。
【実施例1】
【0028】
H.ソムニマウスチャレンジモデルの開発
増殖、地理的多様性、及び配列情報を基準にして、21単離株をマウスでの評価のために選別した(表1)。
表1:天然に存在するH.ソムニワクチン候補のために評価した単離株
【0029】
-80℃で保存した単離株をコロンビア(Columbia)+5%ヒツジ血液寒天プレート(CSB)(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)上にストリーキングした。前記プレートを5%CO
2下に37℃でインキュベートした。増殖18時間後に、前記プレートを2mL DPBSで洗浄し、得られた溶液を追加のDPBSで希釈し、培養とFBS(RTに予め加温)を1:1で混合して、最終濃度5x10
8 CFU/用量から1x10
9 CFU/用量を得た。FBSを添加した後、培養をRTで5分間インキュベートして、H.ソムニの病毒因子をアップレギュレートさせ、続いて氷上に置いた。
単離株あたり10匹のマウス(18−20g NSA: CF-1マウス(Harlan Sprague Dawley))を含む各グループに、それぞれ割り当てた単離株の0.5ccを腹腔内(IP)注射した。10匹のマウスのコントロールグループにはDPBS+FBSを投与した。マウスケージ(1ケージに10匹マウス/単離株相当)の各々の上部にフィルタートップを置いた。単離株を希釈してプレートし、さらにプレートを5%CO
2下に37℃で2日間インキュベートした。プレートをカウントし、各単離株について実際のCFU/用量を決定した。加えて、5匹のマウスに2336又はTK#33単離株をSQ注射して、この投与ルートがIPルートの可変性選択(病毒性査定について)となるか否かを決定した。チャレンジ後に死亡率についてマウスを毎日観察した。
ほとんどの単離株が中等度から上位8log CFU/用量を示した。SQによる方法はマウスのチャレンジには良くない方法であることが立証された。単離株TK#4、TK#24、TK#14、コントロール及び2336は最も低いパーセント死亡率をもたらし、一方、単離株TK#1、TK#2、TK#21、TK#28及びTK#30は最も高いパーセント死亡率をもたらした(表2)。
【0030】
表2:18−20gのマウスを平板増殖単離株でチャレンジしたときのパーセント死亡率
【0031】
チャレンジモデル:2つの実験を実施して、理想的なCFU/用量及びマウスのためのチャレンジ培養調製物を決定した(チャレンジ培養調製物は、以前の実験の場合よりワクチン接種-チャレンジ実験でより大量となるであろう(すなわち、ワクチン接種とチャレンジとの間の3週間の成長を考慮するからである))。最初の実験のために、40匹のマウス(25−30g NSA: CF-1マウス(Harlan Sprague Dawley))を用いた。H.ソムニ単離株TK#21をCSBA上にストリーキングでプレートした。5%CO
2下に37℃で約24時間増殖させた後、単離株を追加のCSBAでローニングし、同じ条件下で18−20時間増殖させた。各プレートを2mlのDPBSで洗浄し、液体を収集した。最初のプレート洗浄からの希釈物は、CFU/用量を変えた2つの別の溶液を作るために作成された。各希釈物とFBSを1:1で混合し、最終濃度が低8logから低9log/用量の範囲のチャレンジ液を得た。コントロール液は、DPBSとFBSを1:1で用いて作成した。全FBS添加培養を室温で5分間接種し、続いて氷上に置いた。マウスを0.5ccでIPチャレンジし、チャレンジ後に死亡率をモニターした。チャレンジ培養を希釈しプレートして最大死亡率に必要な理想的CFU/用量を決定した。
チャレンジ培養物TK#21を平板で増殖させマウスが成長し(25−30g)、ワクチン接種後3週間のマウスの予想サイズに見合うようにしたとき、最大パーセント死亡率は5.7x10
8 CFU/用量で達成された。
【0032】
表3:25−30gのマウスを平板増殖単離株でチャレンジしたときのパーセント死亡率
最後のチャレンジ実験は、30匹のマウス(25−30g NSA: CF-1マウス(Harlan Sprague Dawley))を用いて実施し、平板でのチャレンジ培養物の増殖(文献では一般的に行われている)とブロスでの増殖との間の違いを比較した。上記と同様に、単離株TK#21を冷凍貯蔵庫から取り出し、追加のプレートにローニングした。ブロス培養のためには、プレートを2mLのコロンビアブロスで洗浄し、50μLを25mLの予め加温したコロンビアブロスに添加した。培養洗浄物を添加した後で当該培養を激しく振盪し、続いて37℃及び250rpmに設定したシェーカーに置いた。増殖をモニターし、添加された全液を用いて最終チャレンジ培養が中等度8log/用量を含むであろうと概算されたときに培養を停止させた。さらにまた、チャレンジ培養は、ブロス培養とほぼ同じ濃度にDPBSで希釈した培養を用いて上記のようにプレート洗浄によって調製された。ブロス培養及び平板培養の両方をFBSと1:1に混合し、氷上に置く前に5分間室温でインキュベートした。各方法に付き11匹のマウスを平板洗浄物又はブロスの0.5ccでIPチャレンジし、10匹のマウスをコロンビアブロス及びDPBSの等部分混合物(続いてFBSと1:1で混合)を投与されるコントロールとして供した。チャレンジ後に死亡率についてマウスをモニターし、さらに希釈及びプレート接種を実施してCFU/用量を決定した。
マウスをブロス増殖#21単離株でチャレンジしたとき、平板増殖させた同じ単離株と比較して25−30gマウスでより高い死亡率が得られた(表4)。この結果は、特に、文献が病毒性チャレンジ実験で使用するためにH.ソムニをブロスで増殖させることを当業者に奨めなかったことを考慮するとき予想外であった(Berghaus et. al., 2006;Geertsema et. al., 2008;Gershwin et. al., 2005)。
表4.25−30gマウスを平板/ブロス増殖単離株でチャレンジしたときのパーセント死亡率
【0033】
130匹のNSA:CF-1マウス(18−20g)を業者(Harlan Sprague Dawley)から購入した。H.ソムニの5単離株(TK#42、TK#14、TK#4、TK#24及びTK#34)をワクチン候補として以前の実験から選択した。これらの単離株を貯蔵庫から取り出し、CSBAにストリーキングし、37℃及び5%CO
2で約24時間インキュベートした。単離株を新しいCSBAに移し、プレート表面にローニングし、約18時間増殖させた。このプレートを2mLのコロンビアブロスで洗浄した。単離株TK#42及びTK#34のためには、プレート洗浄物の100μLを25mLのコロンビアブロスに添加し、TK#4、TK#14及びTK#24のためには、プレート洗浄物の50μLをコロンビアブロスに添加した(前記は、これら単離株の増殖を含む以前の実験に基づく)。
培養物は37℃及び200rpmでインキュベートした。単離株の増殖をモニターし、さらに培養をインキュベーションから取り出し、約1x10
8 CFU/用量を含むようにコロンビアブロスで希釈し、さらに前記の1:10の希釈物を作成して、各単離株について別のワクチン(1x10
7 CFU/用量と概算される)を作成した。コントロールグループには無菌的コロンビアブロスを接種し、別のコントロールグループには市場で入手できるSOMUBAC(商標)(Zoetis:水酸化アルミニウムアジュバントを添加した不活化ヒストフィルスワクチン(Kalamazoo, MI))でワクチン免疫した。
各ワクチンは調製後には氷上で維持し、各グループは10匹のマウスを含んでいたが、ただしコロンビアコントロールグループは6匹のマウスを含んでいた。ワクチンは0.5ccとしてSQでデリバーした。ワクチン接種後、当該ワクチンを希釈し、実際のCFU/用量を決定するためにプレート接種した。マウスは副反応及び/又は死亡について毎日モニターした。各ワクチンに含まれる内毒素は、以下のキットで測定した(Limulus Amebocyte Lysateキット(Lonza, Allendale, NJ))。
ワクチン接種から19日後にマウスをH.ソムニ単離株TK#21でチャレンジした。当該野生型は上記と同じようにブロス増殖のために準備したが、ただし150μLのプレート洗浄物を、75mLの予め加温したコロンビアブロスをそれぞれに含む2つのフラスコの各々への接種に用いた。フラスコを37℃及び250rpmでインキュベートした。培養をインキュベーションから取り出して希釈し、さらに中等度8log/用量を含むように室温のFBSを1:1に混合した。培養をFBSとともに5分間室温でインキュベートし、さらに氷上に置いた。当該チャレンジ生成物は、CFU/用量が我々の概算と一致したか否かを決定するために、チャレンジ前及びチャレンジ後に希釈プレート接種した。マウスには当該チャレンジ培養の0.5ccをIP投与し、死亡について毎日モニターした。
SOMUBAC(商標)(Zoetis:水酸化アルミニウムアジュバント添加不活化ヒストフィルスワクチン)並びに8logの単離株TK#34及びTK#22をワクチン接種されたマウスは、赤い注射部位反応を生じた。全ての単離株(TK#22を除く)は、コントロールグループと比較してチャレンジ前のマウスにある程度の防御を提供した。単離株TK#4は両ワクチン用量で有効であったが、単離株TK#34は8logで最良であり、単離株TK#24及びTK#42は7logで最良であった。両用量で、単離株TK#14はある程度の防御を提供したが、他のものよりも低かった(表5)。8logの単離株TK#24及び8logのTK#42は、10匹のうち1匹のマウスをワクチン接種後のチャレンジ前に死亡させた。
【0034】
表5:低病毒単離株でワクチン接種し高病毒単離株でチャレンジしたマウスのパーセント死亡率
*EU/用量=内毒素単位/用量;EU/用量は8logワクチンについてのみ決定された。
【実施例2】
【0035】
H.ソムニ仔ウシチャレンジ
ワクチン候補を試験する前に、仔ウシのチャレンジモデルを開発する必要があった。この実験のために、20頭のホルスタインの雄仔ウシを用いた。仔ウシは、単離株TK#21又は153-3(H.ソムニによる疾患と確認された仔ウシから入手)のどちらかを用いて54日齢でチャレンジした。チャレンジ培養物は、両方とも上記と同様なブロスで調製した。チャレンジ培養のCFU/用量を概算するために、以前に確立した標準曲線(y=-5x10
-8x+92.017(x=CFU/mL;y=%T(540nm)))を用いて、各単離株について最終チャレンジ濃度(約2.5x10
8CFU/用量)を達成するために必要な希釈を決定した。培養物はEBSSで希釈し、続いて1:1の比でFBSを添加し、その後培養を室温で5分間インキュベートした。このチャレンジ培養物を、チャレンジ用量チェースのための追加のEBSSと一緒に氷上に置いた。各単離株につき4頭の仔ウシの各々に、20ccのチャレンジ物を経気管投与し、さらに60ccのEBSSで肺へのチェースを実施した。非チャレンジコントロールとして4頭の動物を維持し、前記にはEBSSとFBSの1:1を投与した。チャレンジ培養を希釈し、チャレンジ前及びチャレンジ後にプレートに接種して実際の投与CFUを決定した。臨床徴候は、毎日以下のように同じ人間が格付け及び報告を行った:
表6:仔ウシのチャレンジにおける臨床徴候格付け基準:
各カテゴリーについて決定した格付けを合計することによって、総臨床スコアを各動物について算出した。動物が死亡した場合、又は安楽死基準に適合した場合には、剖検を実施して肺臓を取り出した。担当獣医師は%表面積病巣について肺臓を格付けし、さらに組織を分析に付した。4日後に、残りの動物を安楽死させ、上記のように剖検を実施した。肺病巣は逆正弦変換し、“JMPのフィットYバイX”機能を用いて分析し、平均をスチューデントt検定で分けた。
24頭のホルスタインの雄仔ウシを5つの囲いに分け、各囲いはワクチン接種のために5頭の動物及び非ワクチン接種コントロールとして供するために4頭の動物を収容する。加えて、当該チャレンジモデルの非チャレンジグループの4頭の動物は、仔ウシワクチン接種-チャレンジ実験がその後の週でチャレンジが予定されている場合、生かしたまま維持され、それらは別の囲いで維持された。チャレンジモデルのコントロールと称されるこれらの動物は、チャレンジ動物と同じ畜舎にいるが囲いは同じではないことが、これら動物をチャレンジしたときに結果に影響を及ぼすか否かを観察するための補足実験コントロールであった。ワクチンは、単離株TK#28、TK#42、TK#4及びTK#34を用い、マウスの場合のように調製した。ワクチン培養は、FBSを添加しないで上記のチャレンジ培養と同様に調製した。ワクチンは5x10
8CFU/用量を含むように概算し、用量は2ccで、仔ウシの各鼻孔に1ccを投与した。
ワクチンを希釈し、ワクチン接種前及び接種後にプレート接種して実際のCFU/用量を決定した。動物の健康状態をワクチン接種後にモニターした。鼻スワッブ及び血液サンプルを、-17日目(到着の1日後)、0日目(ワクチン接種日、仔ウシの齢=35日齢)、14日目、21日目、及び33日目(チャレンジ日)に動物から収集した。鼻スワッブは細菌培養のために以下の検査業者(Newport Laboratories Diagnostic Lab)に付託し、血液サンプルは血清検査の可能性のために維持した。4頭のコントロール動物を加えた全動物を、概算して5x10
9CFU/用量を有する上記と同じものでチャレンジした。臨床徴候、剖検、肺病巣、細菌培養、マイコプラズマ(Mycoplasma)PCR、及び統計解析を、総臨床スコアとともに上記のように実施し、肺病巣もまたJPMのフィットYバイXで解析した。
【0036】
チャレンジ実験については、実際のプレート接種CFU/用量は、予想の概算2.5x10
9又は2.5x10
8CFU/用量に非常に近かった。単離株TK#21でチャレンジされた動物には、9logグループについては3.9x10
9CFU/用量、及び8logグループについては2.9x10
8CFU/用量が投与された。単離株153-3でチャレンジされた動物には、9logグループについては1.8x10
9CFU/用量、及び8logグループについては1.7x10
8CFU/用量が投与された。
9logのTK#21単離株でチャレンジされた動物では、他のいずれのチャレンジグループよりも多くの臨床徴候が観察された(表7)。加えて、より重度の肺病巣が、他のいずれのグループよりもTK#21単離株でチャレンジされた動物で観察された(
図1)。肺病巣を有する仔ウシの大半で、肺組織からH.ソムニが回収された。この実験を通して、P.マルトシダ(P. multocida)が鼻スワッブ及び肺組織から回収されたが、動物は
チャレンジ後までは肺炎の臨床徴候を示さなかったので当該症状に寄与した原因とは思われなかった。さらにまた、動物の多くが肺組織でM.ボビス(M. bovis)について陽性が確認され又は疑われた。予想されたとおり、M.ボボクリ(M. bovoculi)は検出されなかった。
表7:チャレンジモデル実験中の臨床徴候格付け合計の平均
*死亡前の動物から入手した最後の格付けより。
ワクチン接種に用いられた細菌の実際の濃度は概算の5x10
8CFU/用量に近かった。H.ソムニは、2から3頭の動物で、それぞれワクチン接種後14、21及び33日目に収集された鼻スワッブで回収された。当該鼻スワッブは、H.ソムニが21−33日間(或いはそれ以上)鼻孔で生存しうることを示した(表8)。
表8:単離株TK#28、TK#42、TK#4及びTK#34の鼻内ワクチン接種仔ウシに投与された細菌の濃度及び内毒素並びに実験を通してワクチン接種動物から回収されたH.ソムニ単離株の数
【0037】
チャレンジ時に各仔ウシに投与されたTK#21単離株の濃度は7.39x10
9CFU/用量であった。このチャレンジは、ワクチンの有効性の決定において及び最も効果的なワクチン候補を決定するために効果的であった。臨床徴候及び肺病巣パーセントは、TK#4単離株が最も有効なワクチンであり、TK#34単離株は有効性が最も低くく、一方、単離株TK#28及びTK#42はその中間であることを示している(表9;
図2)。H.ソムニは実験の全仔ウシの肺臓から回収され、例外は3頭の仔ウシであり、そのいずれも単離株TK#4をワクチン接種されていた。このことは、肺病巣を有する動物の死亡及び/又は疾患の原因はチャレンジ単離株に帰することができることを示している。この実験中に、P.ムルトシダが、数頭の仔ウシの鼻孔から回収され、実験が進行するにつれ増加した。チャレンジ後、P.ムルトシダは28頭の仔ウシの9頭の肺組織から回収され、M.ボビスは3頭の動物の肺臓で検出された。ワクチン接種は、P.ムルトシダ又はM.ボビスの有無とは相関しないように思われる。加えて、チャレンジモデルのコントロールは、この実験のコントロール動物と比較したとき、チャレンジに対して感受性のようではなかった。チャレンジモデルコントロールはチャレンジ動物と同じ畜舎に収容されていたので、それらは以前の暴露から何らかの免疫を獲得していたかもしれない(表9)。
表9:鼻内にワクチン接種されH.ソムニ野生型でチャレンジされた動物の臨床スコア
*死亡前の動物から入手した最後の格付けの平均臨床スコアである。異なる文字を有する臨床スコアはスチューデントt検定にしたがえば有意に相違する。
考察
本マウスモデルのデータは仔ウシで得られた結果と良好な相関性を示したので、本発明者らはウシのワクチン/チャレンジ候補の選別のための新規で有用なツールを提供した。TK#21単離株は、その病毒性及び結果の再現性のゆえに優れたチャレンジ単離株である。理想的なチャレンジ用量は、経気管投与するときは、ウシでは中等度又は高log/用量辺りのように思われる。
鼻内ワクチンとして用いられるとき、TK#4単離株は、その後のH.ソムニチャレンジに対して有意に防御性であった(5頭の仔ウシのうち4頭)。臨床徴候及び肺病巣は非ワクチン接種動物と有意に相違した。単離株TK#28及びTK#42は、ワクチン接種仔ウシである程度の防御を誘発したが、その有効性はより低かった(5頭の仔ウシの2頭)。
【実施例3】
【0038】
病毒性及び非病毒性H.ソムニ単離株の比較ゲノム分析
上記で考察したように、多様なH.ソムニ単離株がマウス及び畜牛で種々のレベルの病毒性を有していた。特に、TK#4は畜牛の鼻内ワクチン候補として有望性を示した(実施例2)。加えて、TK#21は、畜牛及びマウスに対して高度に病毒性のチャレンジ単離株であることを立証した(前記は、文献に記載されたチャレンジ単離株(2336及びHS91)に典型的な表現型を保有する)。この病毒性に影響する因子の理解を深めるために、さらに最近獲得した単離株が古いものと同様のままであるかを決定するために、H.ソムニの8単離株を全ゲノム配列決定に付託した。4つの遺伝子(グリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質、リポタンパク質、マルチ銅オキシダーゼ3型、及びTetRファミリー転写調節因子)が、TK#4では失われ、TK#21には存在していることが判明した。さらにまた、最近単離されたH.ソムニは、2336(1985年に単離された野生型)に存在する211から316遺伝子を欠いていた。HS91(1991年の単離株)は、2336と比較したときわずかに15遺伝子を欠いていた。これらのデータは、TK#4の遺伝子型はその非病毒性表現型に寄与していること、及びH.ソムニ集団内に時間の経過中に遺伝的浮動が存在することを提唱している。これらの結果は、TK#4の弱毒化の遺伝的説明、並びに従来のワクチン及びチャレンジ株が天然の遺伝的浮動に応答して有効性を維持することが必要であることを示している。
種々の病毒性に対する遺伝的及び分子的基礎を理解するために、9-要因比較ゲノム分析を、GenBank単離株2336に対してTK#4、TK#21、TK#34、TK#28、TK#42、HS91、2336(少なくとも文献によれば高度に病毒性の株)、129PT(GenBankの既知の非病毒株)、及び153-3(中等度に病毒性の株)間で実施した。この分析はまた、可能な遺伝的浮動に関する我々の理解を改善し、さらに病毒性/非病毒性メカニズムに必要とされる遺伝子の輪郭を明らかにするであろう。
【0039】
材料と方法
配列決定のためのサンプル調製:
8つのH.ソムニ単離株を、全ゲノム配列決定に有益でありうる単離株多様集合として同定した(表10)。これらの単離株は多数の場所から得られ、広範囲の病毒性を有し、異なる年に動物から単離された。これらの単離株を全てコロンビアブロス(BD Ref# 294420;Lot# 0292713(Franklin Lakes, NJ))で増殖させ、増殖後に10%グリセロールを添加し、前記培養を超低温バイアル(Fisher Scientific Cat.# 10-500-26(Waltham, MA))で下記施設(Newport Laboratories Research and Development facility(Worthington, MN))の-80℃フリーザーで凍結した。単離株をフリーザーから取り出し、コロンビアヒツジ血液寒天プレート(CSBA;BD Ref# 22165/221263;Lot# 2227132 2012 11 13(Franklin Lakes, NJ))にストリーキング接種した。前記プレートを5% CO
2下の37℃で一晩インキュベートした。24−26時間後に、プレートをインキュベーターから取り出し、追加のCSBAのローニングに用い37℃及び5% CO
2下で一晩増殖させた。16−18時間インキュベートした後、予め加温した2mLのコロンビアブロスで前記プレートを洗浄し、100μLから150μLを用いて各培養について25mLのコロンビアブロスのブロス培養を開始した(各接種量のために1フラスコを使用)。ブロス培養は200rpmで振盪してパーセント透過(%T)(540nm)をモニターし、培養が15−20%Tに達するまでモニターを続けた。前記ブロス培養をインキュベーターから取り出し、1.5mLの培養を同じ微量遠心分離管で3回、各回2分間、15,000rpmで回転させることによって沈殿させ、さらに製造業者の推奨にしたがい(わずかに修正を加えた)、細菌ゲノムDNA精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg, MD)を用いてゲノムDNAを単離した。DNAは3組ずつとして、各培養3組ずつの回転ペレットから抽出した。推奨DNA抽出プロセスに加えた修正は、DNAを100μLのTEに再懸濁し、前記を37℃で15分インキュベートしてDNAペレットの溶解を促進しDNAせん断を生じないことであった。3つの抽出物を続いてプールし、1%アガロース上で比較し、定量し、さらに純度をナノドロップ(Nanodrop)でチェックした。アイダホ大学中核施設(University of Idaho core facility(Moscow, ID))での配列決定のために必要なDNA総量を提供するために、DNA量を計算した。
【0040】
表10:比較ゲノム分析のために用いられたH.ソムニ単離株リスト
高品質読取りデータフィルタリング及び配列カバー範囲:
NCBIデータベースの129PT(アクセッション#CP000436)を2336(アクセッション#CP000947)と比較するために、野外単離株と類似するアプローチを用いることが必要であった。したがって、偽読取りデータを、ART読取り模擬ソフトを用いて129PTから作成した(http://www.niehs.nih.gov/research/ resources/software/biostatistics/art/)。以下のコマンドラインを用いてARTを実行した:art_illumina -i Hs129PT.fasta -p -l 250 -f 60 -m 500 -s 10 -na -o Hs129PT_sim(前記は以下と等価である:-p=paired、-l=250bp、-f=60xカバー範囲、-m=DNAフラグメントの平均サイズ、-s=DNAフラグメントサイズの10標準偏差)。続いて、SeqyCleanを用いIllumina TruSeqアダプターにより全単離株の読取りデータを品質についてフィルター処理した(SeqyCleanはアイダホ大学が開発した読取りデータクリーニングプログラムである(当所ウェブサイトで入手できる))。前記プログラムは、シークエンシングアダプター及び低品質読取りデータ(20未満のQ-値を有する5以上の塩基を含む)を除去し、したがって塩基読み取り中のエラーを排除し正確さを高めた。
読取りデータのマッピング:
ゲノムDNAの結果を、NCBIデータベースの2336(アクセッション#CP000947)に対してボータイ2標準パラメーターを用いてマッピングした。MARQ<10のためのカスタムスクリプトを利用するフィルタリングを用いて、多重マッピングされた読取りデータを除去した。同一単離株は95%を超えるアラインメント率を有することが期待される。
遺伝子カバー範囲:
Samtoolsを用い、2336参照に対して各位置についてマッピングカバー範囲を計算した。前記を用いて、各遺伝子についてカバー範囲を有する塩基のパーセンテージを計算した。80%未満の塩基を含む遺伝子は、その対応する単離株について存在しないとみなした。2336の失われた遺伝子について2つの分析を実施した。第一の分析は、HS91(2336と類似の時期)、TK#21、TK#4、153-3及、及び129PTを比較した。第二の分析は、TK#34、TK#42、2336(我々の2336がデータベースとマッチしているかを確認するため)、TK#28、及び129PTを比較した。
病原性アイランド(PI)及び組み込み型接合型成分(ICE):
HS91、TK#21、TK#4、153-3及び129PTの完全ゲノムの配列決定の結果を2336と比較した。病原性アイランド(PI)及び組み込み型接合型成分(ICE)をフランキングシグナチャー配列様リコンビナーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ヘリカーゼ、及びファージリピートを基準にして検索した。これらの推定的シグナチャー配列クラスターを含むゲノム領域を潜在的PI又はICEとして認定した。
結果
当該クリーン化配列は、全ての単離株についてほぼ100xのカバー範囲を有していた。このカバー範囲はみなし(called)塩基の品質における信頼を我々に与えた(表11)。
【0041】
表11:未加工読取りデータの品質及び各配列決定単離株の概算塩基カバー範囲
アラインメントは単離株と参照株との相違を明らかにした。GenBank 2336単離株はNewport研究所で配列決定された2336ゲノムと99.67%同一であり、我々のマップ依拠ゲノム間比較の有効性及び正確性を示した。そこから、2336に対する他の単離株の類似性の比較によって、HS91に対する2番目に高い類似性がもたらされた。さらにまた、参照比較としてデータベースの2336を用いて、NCBIデータベースの共存129PT(アクセッション#CP000436)のアラインメントを実施した(表12)。
表12:GenBank 2336(アクセッション#CP000947)とアラインメントを実施した配列決定データのパーセンテージ。単離株は最高から最低のアラインメント率で列挙されている。
*アクセッション#CP000436
単離株の中で、129PTは、2336野生型と比較して多くの病毒遺伝子及び病毒関連遺伝子を欠いていた。より最近に得られた単離株は、2336野生型と比較したとき、合計して古い単離株より多くの遺伝子を欠いていた(表13)。
表13:NCBIデータベースの2336(アクセッション#CP000947)と配列比較された各単離株について存在又は欠落していると概算される遺伝子の数
*アクセッション#CP000436
2336と比較して第一及び第二の分析で欠落している遺伝子を比較したとき、129PT(共存株)は、他の比較単離株のいずれよりも多くの病原性及び/又は病毒性関連遺伝子が欠落していた。129PTでは、HS91、TK#21、TK#4、153-3、及び129PTから集積した47の総欠失遺伝子のうち合計して44が欠落していた(表14)。129PTではまた、TK#34、TK#42、2336、TK#28、及び129PTから集積した47の総欠失遺伝子のうち合計して44が欠落していた(表15)。単離株2336は、NCBIデータベースに存在するただ1つの同定病原性関連遺伝子を欠落していることが判明した。この遺伝子はYadAドメイン含有タンパク質である(表15)。
【0042】
ワクチン候補のTK#4は、分析を実施した単離株の可能な47の欠落遺伝子のうち合計23を欠いていた。この候補株は、ヘマグルチニン/溶血素の結合及び付着遺伝子、YadAドメイン含有タンパク質(合計5つのリピートが欠失)、及びヘマグルチニンドメイン含有タンパク質を欠いていた。TK#4はまた、トランスフェリン結合タンパク質(鉄取り込み用)及びマルチ銅オキシダーゼ3型(宿主に貯蔵された金属を取り込む能力を提供する)を欠いていた。宿主でのコロニー形成に必要な遺伝子(例えばグリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質(鼻咽頭でのコロニー形成)及びペプチダーゼS8/S53スブチリシンケクシンセドリシン)もまたTK#4から失われていた。さらにまた、薬剤耐性又はストレス因子への応答に必要な遺伝子が欠失し、前記には、TetRファミリー転写調節因子の2つのアイソフォーム、アセチルトランスフェラーゼ3、MarRファミリー転写調節因子の2つのアイソフォーム、小多剤耐性タンパク質、MarRファミリー転写調節因子、及びストレス感受性制限系タンパク質が含まれる。最後に、TK#4は、宿主の防御を回避する病原体の能力に影響を与えるいくつかの遺伝子(例えばリポオリゴ糖シアリルトランスフェラーゼ、リポタンパク質、及びAbiファミリータンパク質(前記はバクテリオシンからの自己免疫に必要とされる))を欠いていた(表14)。
2336と比較して、高度に病原性のTK#21もまた、TK#4での欠失が判明した同様な病毒遺伝子(TK#4の23の欠失遺伝子のうち19)を欠いていたが、ただしグリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質、リポタンパク質、マルチ銅オキシダーゼ3型の1つのアイソフォーム、及びTetRファミリー転写調節因子の1つのアイソフォームは除かれる。TK#21が欠きTK#4が有していたただ1つの遺伝子は、YadAドメイン含有タンパク質の1つのリピートであった(表14)。
HS91は2336と高度に類似し、公開文献によれば同等に病毒性であった。病因性において潜在的に役割を果たしうる病毒遺伝子又は病毒関連遺伝子のいずれもHS91では欠失は見いだされなかった(表14)。
153-3単離株は、TK#4での欠失が判明した潜在的病毒遺伝子の多くを欠いたが(TK#4で欠失した23のうち14)、TK#4では存在したいくつかの追加の遺伝子が欠失していた(全単離株にわたって認定された合計47のうち23が欠失)。TK#4に加えて、153-3は、繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質、アドへシン、YadAドメイン含有タンパク質の10リピート(TK#4の5リピートと比較して)、グリコシルトランスフェラーゼファミリータンパク質、及びアセチルトランスフェラーゼを欠いていた。TK#4が欠くが153-3では存在していた遺伝子は、ストレス感受性制限系タンパク質、ヘマグルチニンドメイン含有タンパク質、グリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質、リポオリゴ糖シアリルトランスフェラーゼ、Abiファミリータンパク質、マルチ銅オキシダーゼ3型の1つのアイソフォーム、TetRファミリー転写調節因子の1つのアイソフォーム、及びペプチダーゼS8/S53スブチリシンケクシンセドリシンである(表14)。
【0043】
第二の分析の3つの細菌の単離株は古い単離株よりも多くの欠失遺伝子を有していた。TK#34は、最近の単離株のうちで最も多くの遺伝子を欠いていた(47のうち22)。これらの遺伝子には以下が含まれる:繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質、ヘマグルチニン/溶血素様タンパク質、アドへシン、ストレス感受性制限系、YadAドメイン含有タンパク質の6リピート、トランスフェリン結合タンパク質、ヘマグルチニンドメイン含有タンパク質の2つのアイソフォーム、グリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質、TetRファミリー転写調節因子、lob1タンパク質、MerRファミリー転写調節因子の2つのアイソフォーム、マルチ銅オキシダーゼ3型、小多剤耐性タンパク質、MarRファミリー転写調節因子、及びペプチダーゼS8/S53スブチリシンケクシンセドリシン。TK#34で欠失する22遺伝子のうちで、TK#42は12を欠くことが判明した。これらには以下が含まれる:ヘマグルチニン/溶血素様タンパク質、YadAドメイン含有タンパク質の5リピート、TetRファミリー転写調節因子の1つのアイソフォーム、MerRファミリー転写調節因子の2つのアイソフォーム、マルチ銅オキシダーゼ3型の1つのアイソフォーム、小多剤耐性タンパク質、及びMarRファミリー転写調節因子。TK#34にもまた存在しない12遺伝子に加えて、TK#42はまた、YadAドメイン含有タンパク質の1リピート、グリコシルトランスフェラーゼファミリータンパク質、病毒関連タンパク質D(VapD)、アセチルトランスフェラーゼ3、リポタンパク質、マルチ銅オキシダーゼ3型の別のアイソフォーム、及びTetR転写調節因子の別のアイソフォームを欠いていた。TK#42に存在しない遺伝子はいずれもTK#28にも存在せず、例外はなかった(表15)。
【0044】
表14:2336(アクセッション#CP00947)と比較したとき、HS91、TK#21、TK#4、153-3及び129PTの分析ゲノムの1つ以上で欠失している、病毒性に必要な遺伝子
【0045】
表15:2336(NCBIデータベースのアクセッション#CP00947)と比較したとき、TK#34、TK#42、2336、TK#28、及び129PTの分析ゲノムの1つ以上で欠失している、病毒性に必要な遺伝子
【0046】
7つの推定PI及びICEが全ゲノム集積から認定された
第一のものは、HSM_R0009からほぼHSM_0254(約28kb)の間に存在するが、目覚ましい病毒、病毒関連、又は薬剤耐性遺伝子はこの場所に存在するようには思われない。HS91及び2336はここに存在する遺伝子の全てを含んでいたが、TK#21、TK#4、153-3、129PT及びTK#34は、このPI又はICEに位置する遺伝子の大半を欠くようにみえる。TK#42及びTK#28はこの第一のPI又はICEの部分を有する。
第二の場所は、HSM_0319からHSM_0348(約41kb)の間に存在し、この場所にはYadAドメイン含有タンパク質の2つのリピートがあり、その1つはTK#21、TK#4、153-3及び129PTでは欠落し、さらに他方は153-3及び129PTで欠落していた。
第三のPIはHSM_0638からHSM_0692(約45kb)の間に存在した。単離株153-3、129PT及びTK#34はこの潜在的PI又はICEの遺伝子の多くを欠くが、いずれも推定病毒、病毒関連又は薬剤耐性遺伝子として認定されなかった(なぜならば、このPIの遺伝子の多くは単に仮定的タンパク質として認定されたからである)。
第四のPIの場所はHSM_0847とHSM_0923(約73kb)の間に存在した。繰り返せば、この領域内で病毒因子は認定されなかったが、TK#21、TK#4、153-3、129PT及びTK#34はこの領域内で見いだされた遺伝子の大半を欠いていた。
第五のPIの場所はHSM_1115とHSM_1167(約51kb)の間にあった。TK#4はHSM_1129からHSM_1146及びHSM_1149からHSM_1167を欠き、この欠損領域はグリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質を含む。129PT単離株はHSM_1131からHSM_1167を欠き、TK#34はHSM_1129からHSM_1144及びHSM_1149からHSM_1167を欠くが、他の単離株はここに存在するこれら遺伝子の大半を有する。さらにまた2成分応答調節因子がHSM_1124に存在し、前記は細菌の感覚の支援に関わり多種多様な環境に応答することができる。
六番目の推定的PI又はICEはHSM_1615からHSM_1719(約101kb)に由来する。この領域にはAibファミリータンパク質、アシルトランスフェラーゼ3、FhaBタンパク質、繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質、Lob1タンパク質、アシルトランスフェラーゼ、及びリポタンパク質が存在する。TK#21、TK#4、153-3、129PT、TK#28、TK#42及びTK#34はこれらのいくつかを欠き(表14及び15)、そのことはそれら単離株の種々の病毒性レベルに潜在的に影響を与える。
最後の潜在的PI又はICEはHSM_1860からHSM_R0065(約38kb)に存在する。この領域でTK#21、TK#4、129PT及びTK#34から欠失している1つの重要な遺伝子は、ペプチダーゼS8/S53スブチリシンケクシンセドリシンである(前記は宿主での初期コロニー形成に重要である)。TK#21、TK#4、129PT、TK#34、TK#42及びTK#28から欠失している他の遺伝子が存在し、それらの大半は仮定的タンパク質又はトランスポザーゼとして認定されている。HS91、153-3、TK#42、2336及びTK#28は、この全領域の大半又は全てを無傷で有しているように思われる。
【0047】
考察
TK#4は十分に弱毒化されているように見えるが、なお適切な免疫応答を誘引する能力を有し、この株を強力なワクチン候補にする。TK#4は、ほぼ同じ年に得られた他の単離株と同様ないくつかの遺伝子を欠くが、これら欠損遺伝子のいくつかはTK#4に固有であり、それらは、グリコシルトランスフェラーゼファミリータンパク質(GHFP)、リポタンパク質(LP)、マルチ銅オキシダーゼ3型、及びTetRファミリー転写調節因子を含む。TK#4及び病原性単離株の両方から失われているいくつかの遺伝子は弱毒化表現型に寄与するかもしれないが、しかしながらこれらの遺伝子が非病毒性に必要であるようには見えない。
他方で、病原株に存在しTK#4から固有に失われた2つの遺伝子、グリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質及びリポタンパク質は、TK#4の弱毒化表現型のために必要かつ十分であるように思われる。
これら2つの遺伝子の(TK#4における)発現の欠損と弱毒化病毒性との間の因果関係は以前に発表された研究によって支持される(前記研究は、GHFP及びLPタンパク質はコロニー形成及び宿主の防御の回避で重要な役割を果たすことを示している(Asgarali et. al. 2009;Garbe and Collin, 2010;Liu et. al. 2008;及びGuzman-Brambila et. al. 2012))。さらにまた、データは、TK#4は129PTと同じようには弱毒化されていないが、この株は畜牛及びマウスの
両方を(その後の病毒性チャレンジから)防御する能力を有していることを示している。
TK#34はTK#4と同様に高度に弱毒化されているが、しかしながら、TK#4は宿主回避に関わるより多くの遺伝子を失っている。TK#4及びTK#34は両方とも、ヘマグルチニンドメイン含有タンパク質及びYadAドメイン含有タンパク質の多様なアイソフォーム又はリピートをそれぞれ欠いている。TK#34は、繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質、接着及びlob1タンパク質を欠くが、TK#4は前記を有する。TK#4は、リポオリゴ糖シアリルトランスフェラーゼ、Abiファミリータンパク質、アシルトランスフェラーゼ3、リポタンパク質、マルチ銅3、及びTetR転写調節因子を欠き、それらはTK#34に存在する。これらの結果は、病毒因子の欠失が組み合わされることが、マウス及び畜牛で防御性である部分的弱毒細菌(TK#4)、又は高度に弱毒化されているがマウス及び畜牛で防御性ではない単離株(TK#34)を生じる一因となることを示している。このデータは
これだけで、十分に弱毒化され、なお十分に防御性であるH.ソムニワクチン株を得るためにどの遺伝子を欠失させるべきかを当業者は前もって予測できなかったであろうということを示している。
最後に、遺伝子の水平伝播は、この単離株にいくつかの耐性遺伝子を手渡すことはなかったように思われ、他の病毒因子の欠損がこの単離株を十分に弱毒化させて病気を引き起こす能力を失わせたように思われる。他方、共存株よりも多い病毒因子の存在がTK#4を強力なワクチン候補にしている(すなわちTK#4株は、宿主の液性免疫応答を刺激して長期防御を提供するために十分に長く生存できる)。
【0048】
TK#21は、マウス及び畜牛で高度に病毒性単離株であることが判明した。しかしながら遺伝的にはTK#21はこれまでの単離株(TK#4及び153-3(TK#21よりも病毒性が低い))とより類似するが、同時に他の公知の病毒株(2336及びHS91)からより外れている。TK#21は、グリコシドヒドロラーゼファミリータンパク質、リポタンパク質、マルチ銅オキシダーゼ3型の1つのアイソフォーム、及びTetRファミリー転写調節因子の1つのアイソフォーム(前記はTK#4で欠落している)を確かに保有していた。これらの4遺伝子はいずれもTK#4の弱毒化の一因でありうる。TK#21の種々のアイソフォームとして欠失が見出されなかったもっとも固有の遺伝子欠失は、グリコシドヒドロラーゼ及びリポタンパク質であった。これらの遺伝子の組み合わせが、チャレンジ単離株(当該遺伝子を有する)とワクチン候補(当該遺伝子を欠く)との間の十分な相違を引き起こすために必要であるように思われる。TK#21は、TK#4が有するYadAドメイン含有タンパク質を欠いていたが、しかしながらそれは病毒性欠如の一因であるようには思われない。TK#21に随伴する病毒性は、2336からのその逸脱ではなくむしろTK#4との微妙な相違のためであるように思われる。
より最近の単離株(TK#21、TK#4、153-3、TK#34、TK#42及びTK#28)は類似しているように見えるが、それらは2336及びHS91とは著しく異なっている(表15参照)。このデータは、H.ソムニ集団は時間の経過につれて進化していること、及び一般的に受け入れられているチャレンジ単離株2336は、仔ウシが現在直面しているH.ソムニ遺伝子プールにはもはや適切ではありえないことを提唱している。このデータはまた、TK#4をワクチン候補として支持する証拠を提供する。なぜならば、その遺伝的組成は、ウシの呼吸器複合疾患で現在循環している株と高度な関連性を有するからである。アラインメント率は、HS91及び2336は非常に近縁であり、TK#21、TK#4、153-3、TK#34、TK#42、及びTK#28は近縁であることを支持している。前記データはまた、従来の単離株は、1980−1990年代に単離された株と遺伝的に異なっていることを示している。さらにまた、遺伝子欠落に注目するとき、より現在に近い株は、HS91の遺伝子よりも2336の遺伝子をより多く欠き、現在の単離株はまた類似の遺伝子を欠く傾向がある。これは、ゲノムがH.ソムニで自然に浮動していることを示唆している。さらにまた、現在の単離株は米国内の種々の状態を表しているので、ここで認められた遺伝的浮動は、米国の現在のH.ソムニ集団を表していることを示唆している。
総合すれば、このデータは、多数の遺伝子の組み合わせが、単離株を有効なワクチン又はチャレンジ候補にするために必要でありうること、及びほんの数遺伝子の欠損が、動物を殺す代わりにその命を助けるために当該候補を十分に弱毒化できることを示している。このデータはまた、H.ソムニ集団は時間の経過につれて浮動すること、及び適切なワクチンを維持するために当産業界は進化する必要があることを提唱している。このデータは、自原性ワクチンの重要性を市販ワクチンの有効性の周期的再評価と同様に強く支持している。
【0049】
表16:“SAMTools mpileup”で分析した各単離株について(2336(アクセッション#CP00947)に対して)識別された変種
【0050】
識別された多くのSNP(表16)に加えて、多数の欠失遺伝子もまた存在する(表17−23)。より最近の単離株(TK#21、TK#4、153-3、TK#34、TK#42及びTK#28)及び129PTはほとんどのSNPを有し、一方、HS91野生型、HS91変異体、及び2336は全ての病毒関連遺伝子についてほとんど又は全くSNPをもたなかった。LOS生合成又は改変遺伝子については、最高パーセンテージのSNPが、両分析のグリコシルトランスフェラーゼ及びアセチルトランスフェラーゼ遺伝子で、さらにグループ2分析のlob2bで見いだされた。129PT単離株はほとんどのLOS生合成又は改変遺伝子を欠いていた。接着、コロニー形成及びバイオフィルム形成遺伝子については、ほとんどのSNPは、YadAドメイン含有タンパク質及びヘマグルチニンドメイン含有タンパク質で生じた。接着、コロニー形成及びバイオフィルム形成遺伝子の多くは、最近の単離株では欠失していた。グループ1のグリコシドヒドロラーゼ及び両グループのTonB-依存受容体のいくつかは、宿主侵入又は金属取り込みについて大半のSNPを有していた。ストレス応答、抗生物質耐性遺伝子及び薬剤排出遺伝子の多くがより新しい単離株の大半から欠失していた。存在していた単離株のうち、SNPのパーセンテージはそこそこに低く、ただしグループ1のTetRファミリー転写調節因子は例外であった。
LOS生合成又は改変に関わる遺伝子については、129PTを除くすべての単離株がOMP輸送タンパク質P1で1つのインデルを有していた。TK#21及びTK#34はそれぞれ1つ及び2つのインデルをlob2bに有していた。全ての最近の単離株はpgmBに1つのインデルを有していたが、HS91及び2336のより古い単離株はインデルを含まなかった。TK#42及びTK#28はグリコシルトランスフェラーゼファミリータンパク質で1つのインデルを有し、さらにlob2aで1つのインデルを有していた。129PT単離株はneuA
HSで1つのインデルを有していた。
接着、コロニー形成及びバイオフィルム形成に関わる病毒性関連遺伝子の非同義性インデルのグループ1分析では、TK#21及びTK#4は最も多くのインデルを有していた。これらは、YadAドメイン含有タンパク質(TK#21で合計26インデル及びTK#4で合計32インデル)、繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質(TK#21で合計6インデル及びTK#4で合計5インデル)、及び接着(TK#21について1インデル)で生じた。153-3単離株はまたグループ1でいくつかのインデルを有したが分析遺伝子の大半を欠き、129PTといくぶん類似していた。これらの存在する遺伝子のうちで、非同義性インデルを有するものは、YadAドメイン含有タンパク質(合計6インデル)、繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質(3インデル)、及びヘマグルチニンドメイン含有タンパク質(1インデル、表19)であった。接着、コロニー形成及びバイオフィルム形成のグループ2の分析について、単離株TK#34、TK#42及びTK#28はほとんどのインデルを有していた。インデルは、YadAドメイン含有タンパク質(TK#34で合計24インデル、TK#42で合計31インデル、TK#28で合計31インデル)、繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質(TK#34で合計2インデル、TK#42で合計4インデル、TK#28で合計4インデル)、及びヘマグルチニンドメイン含有タンパク質(TK#34で1インデル)に存在していた。さらにまた、129PTは、YadAドメイン含有タンパク質で7インデル、及びヘマグルチニンドメイン含有タンパク質で1インデル有していたが、前記は分析遺伝子の多くを欠いていた。最後に、HS91 ΔaroC及びHS91 ΔnanPUは、繊維状ヘマグルチニン外膜タンパク質でそれぞれ3及び2つの合計インデルを、さらにYadAドメイン含有タンパク質で各々1つのインデルを有していた(表20)。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
宿主侵入及び金属取り込みに関わる病毒関連遺伝子では最近の単離株と129PTとの間に欠失インデルについて多くの類似性があった。これらの遺伝子には以下が含まれていた:TonB依存受容体(TK#4及びTK#34の各々で2インデル、TK#42、TK#28及び129PTで1インデル)、TbpB(HS91、TK#42、2336、TK#28及び129PTの各々で1インデル)、TbpA(TK#21、TK#4、153-3、TK#34及びTK#42で2インデル、又は129PTで4インデル(この単離株では2つの分析が異なるインデル概算をもたらした)、及びTK#28で1インデル)、TbpA2(153-3で1インデル)、溶血活性化/分泌タンパク質様タンパク質(TK#42及びTK#28の各々で1インデル)、TonB-依存ヘモグロビン/トランスフェリン/ラクトフェリンファミリー受容体(129PTで1インデル)、及び外膜ヘミン受容体タンパク質(TK#21及びTK#4で1インデル、TK#34及び129PTで2インデル)。ストレス応答、抗生物質耐性及び薬剤排出遺伝子で任意のインデルを有するただ1つの遺伝子はアシルトランスフェラーゼ3であった。HS91及び2336で1つの非同義性インデルが存在し、TK#34、HS91ΔaroC及びHS91ΔnanPUで2インデルが存在した。
本発明の好ましい実施態様をこれまで詳細に述べてきたが、上記のパラグラフではっきりと輪郭が示された本発明は、多くの明白なその変型が本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく可能であるので、上記に示した個々の詳細な内容に限定されるべきでないことは理解されよう。