(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る電気化デバイスは、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを具備する。
上記正極は、正極活物質を含む正極材料からなる正極活物質層と、上記正極活物質層に電気的に接続する正極集電体とを有する。
上記負極は、負極活物質を含む負極材料からなる負極活物質層と、上記負極活物質層に電気的に接続する負極集電体とを有し、上記負極材料に被覆されたリチウムイオン供給源によって、上記負極活物質へのリチウムイオンのプレドープがなされている。
上記セパレータは、上記正極と上記負極を隔てる。
上記電解液は、上記正極、上記負極及び上記セパレータが浸漬されている。
【0012】
リチウムイオン供給源を用いてプレドープされた電気化学デバイスにおいて、充放電が繰返されると、劣化によりリチウムがデンドライト(析出物)として析出するが、このデンドライトはリチウムイオン供給源の痕跡を起点として発生し、堆積する。このため、上記構成のように、プレドープの際にリチウムイオン供給源が負極材料によって被覆されている場合、デンドライトは負極材料に囲まれた中で堆積し、負極材料の外に漏洩することが防止される。即ち、負極材料が、負極材料の外に配置されたセパレータへのデンドライトの到達を遮蔽する。これにより、デンドライトによるセパレータの損傷が防止され、電気化学デバイスの短絡故障が防止される。また、負極材料は、負極活物質を合成樹脂(バインダ樹脂)等と混合したペーストが硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。このため、デンドライトは負極材料の空隙に広がり、剥離片となって電解液中に浮遊することが防止される。加えて、デンドライトが負極材料の空隙に留まることにより、充放電の繰返しによってデンドライトの負極活物質への再ドープが生じ、電気化学デバイスの容量低下を回復させることが可能である。
【0013】
上記負極活物質層は、第1の負極活物質層と第2の負極活物質層を含み、
上記負極は、上記第1の負極活物質層と上記第2の負極活物質層の間に配置された上記リチウムイオン供給源によって上記プレドープがなされていてもよい。
【0014】
この構成によれば、リチウムイオン供給源は、第1の負極活物質層と第2の負極活物質層によって挟まれることによって負極材料によって被覆されるため、上記効果を得ることが可能である。
【0015】
上記負極集電体は、第1の負極集電体と第2の負極集電体を含み、
上記第1の負極活物質層は上記第1の負極集電体に積層され、
上記第2の負極活物質層は上記第2の負極集電体に積層されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1の負極集電体及び第1の負極活物質層の積層体(第1の積層体とする)と、第2の負極集電体及び第2の負極活物質層の積層体(第2の積層体とする)を、第1の負極活物質層と第2の負極活物質層が対向するように配置し、その間にリチウムイオン供給源を配置することにより、リチウムイオン供給源を負極材料によって被覆することが可能である。第1の積層体と第2の積層体は、後述するように一つの積層体が折り返されることによって形成されてもよく、別々の積層体であってもよい。
【0017】
集電体上に活物質層が積層された積層体が、上記活物質層を内側にして折り返されることによって、上記集電体が上記第1の負極集電体及び上記第2の負極集電体を構成し、上記活物質層が上記第1の負極活物質層及び上記第2の負極活物質層を構成してもよい。
【0018】
この構成によれば、一つの積層体によって、上記第1の積層体及び第2の積層体を形成することが可能である。即ち、リチウムイオン源を挟んで積層体を折り返すことによって、リチウムイオン源を負極材料によって被覆することが可能となり、別々の積層体を利用する場合に比べ、容易に製造することが可能となる。
【0019】
上記負極活物質層は、上記第1の負極集電体の上記第1の負極活物質層が積層された面とは反対側の面に積層された第3の負極活物質層をさらに含んでもよい。
【0020】
第1の負極活物質層及び第2の負極活物質層は、リチウムイオン供給源を挟んで対向配置されるため、第1の負極集電体及び第2の負極集電体に対して内側となる。ここで、第1の負極集電体の第1の負極活物質層が積層された面とは反対側の面に第3の負極活物質層を積層することにより、第3の負極活物質層をセパレータを介して正極活物質層と対向させることが可能となる。
【0021】
上記リチウムイオン供給源が上記負極活物質層に貼付された状態で上記プレドープがなされていてもよい。
【0022】
この構成によれば、負極活物質層へ貼付されたリチウムイオン供給源によって、負極活物質へのリチウムイオンのプレドープが可能となる。
【0023】
上記負極は、上記正極の電極面積よりも大きな電極面積を有してもよい。
【0024】
負極の電極面積を大きくすることにより、デンドライトによって被覆される電極面積の比率を低減させ、デンドライトの発生を抑制することが可能である。
【0025】
上記電気化学デバイスは、上記正極及び上記負極がセパレータを介して積重され、巻回されていてもよい。
【0026】
この構成によれば、巻回型の電気化学デバイスを提供することが可能である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る電気化デバイスの製造方法は、正極活物質を含む正極材料からなる正極活物質層及び上記正極活物質層に電気的に接続する正極集電体とを有する正極と、負極活物質を含む負極材料からなる負極活物質層及び上記負極活物質層に電気的に接続する負極集電体とを有する負極と、上記正極と上記負極を隔てるセパレータとを備える蓄電素子を準備する。
リチウムイオン供給源を上記負極材料によって被覆する。
上記蓄電素子を電解液に浸漬させ、上記リチウムイオン供給源から上記負極活物質にリチウムイオンをドープさせる。
【0028】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電気化学デバイスについて説明する。本実施形態に係る電気化学デバイスは、リチウムイオンキャパシタ等の、電荷の輸送にリチウムイオンを利用する電気化学デバイスである。
【0029】
[電気化学デバイスの構成]
図1は、本実施形態に係る電気化学デバイス100の構成を示す斜視図である。同図に示すように電気化学デバイス100は、蓄電素子110が容器120(蓋は図示略)に収容されて構成されている。容器120内には、蓄電素子110と共に電解液が収容されている。
【0030】
図2は、蓄電素子110の模式的な平面図であり、
図3は
図2の拡大図である。これらの図に示すように蓄電素子110は、正極130、負極140及びセパレータ150を有する。具体的には蓄電素子110は、正極130と負極140をセパレータ150を介して積重し、巻回したものとすることができる。なお、正極130と負極140はそれぞれが複数設けられてもよい。また、蓄電素子110は、このように巻回したものに限られず、正極130と負極140をセパレータ150を介して交互に配列したもの等であってもよい。
【0031】
正極130は、正極集電体131及び正極活物質層132を有する(
図3参照)。正極集電体131は、導電性材料からなり、正極活物質層132に電気的に接続されている。具体的には正極集電体131は、アルミニウム箔等の金属箔であるものとすることができ、表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0032】
正極活物質層132は、正極材料からなり、正極集電体131上に積層されている。正極材料は、正極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。正極活物質は、電解液中のリチウムイオン及びアニオンが吸着可能な材料であり、例えば活性炭を利用することができる。具体的には、正極活物質層132は、正極集電体131上に、ペースト状の正極材料が塗布され、硬化されることにより形成されるものとすることができる。
【0033】
負極140は、第1負極集電体141、第2負極集電体142、第1負極活物質層143、第2負極活物質層144及び第3負極活物質層145を有する(
図3参照)。
【0034】
第1負極集電体141は、導電性材料からなり、第1負極活物質層143及び第3負極活物質層145に電気的に接続されている。具体的には第1負極集電体141は、アルミニウム箔や銅箔等の金属箔であるものとすることができ、表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0035】
第2負極集電体142は、導電性材料からなり、第2負極活物質層144に電気的に接続されている。また、第2負極集電体142は第1負極集電体141とも電気的に接続されている。具体的には第2負極集電体142は、アルミニウム箔や銅箔等の金属箔であるものとすることができ、表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0036】
第1負極活物質層143は、負極材料からなり、第1負極集電体141上に積層されている。負極材料は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。負極活物質は、電解液中のリチウムイオンが吸着可能な材料であり、例えば炭素系材料を利用することができる。具体的には、第1負極活物質層143は、第1負極集電体141上にペースト状の負極材料が塗布され、硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0037】
第2負極活物質層144は、負極材料からなり、第2負極集電体141上に積層されている。具体的には、第2負極活物質層144は、第2負極集電体142上にペースト状の負極材料が塗布され、硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0038】
第3負極活物質層145は、負極材料からなり、第1負極集電体141上の、第1負極活物質層143が積層された面とは反対側の面に積層されている。具体的には、第3負極活物質層145は、第1負極集電体141の、第1負極活物質層143が積層された面とは反対側の面上にペースト状の負極材料が塗布され、硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0039】
第1負極活物質層143、第2負極活物質層144及び第3負極活物質層145の負極活物質にはリチウムイオンがプレドープされているが、この詳細については後述する。
【0040】
ここで、第1負極活物質層143と第2負極活物質層144、第1負極集電体141と第2負極集電体142は、集電体及び活物質層の積層体を折り返すことによって形成されたものであってもよい。
図4は、蓄電素子110の巻回端部を示す平面図である。同図に示すように、巻回端部において積層体の折り返し部146が形成されている。第1負極活物質層143と第2負極活物質層144は折り返し部146において連続し、第1負極集電体141と第2負極集電体142も折り返し部146において連続するものとすることができる。なお、折り返しは巻回端部において形成されているもの限られず、負極140の長辺(巻回前の長辺)において形成されていてもよい。
【0041】
また、第1負極活物質層143と第2負極活物質層144、第1負極集電体141と第2負極集電体142は、積層体が折り返されることによって形成されるものに限られず、別々の積層体であってもよい。
【0042】
負極140は、上述のように、第1負極活物質層143、第2負極活物質層144及び第3負極活物質層145を備えるので、正極130より大きな電極面積を有する。
【0043】
セパレータ150は、正極130と負極140を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。セパレータ150は、正極130と負極140の積層態様に応じて設けられ、一つであってもよく、複数であってもよい。具体的には、セパレータ150は、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができる。
【0044】
容器120は、蓄電素子110を収容する。容器120の上面及び下面は図示しない蓋によって閉塞されるものとすることができ、正極集電体131に接続された導線が接続される正極端子と、第1負極集電体141及び第2負極集電体142に接続された導線が接続される負極端子が設けられるものとすることができる。容器120の材質は、正極130又は負極140と接続する構造でなければ特に限定されない。容器120が正極130と接続する構造であればアルミやチタン等からなるものとすることができる。容器120が負極140と接続する構造であればニッケルや鉄を主成分とする金属、またはステンレス等からなるものとすることができる。
【0045】
蓄電素子110は以上のように構成されている。蓄電素子110と共に容器に収容される電解液は、リチウムイオンとアニオンを含む液体、例えばLiBF
4やLiPF
6を電解質として溶媒(炭酸エステル等)に溶解させた液体とすることができる。
【0046】
[プレドープについて]
上述のように電気化学デバイス100は、製造過程において負極140へのリチウムイオンのドープ(プレドープ)が行われる。
図5は、プレドープ時の蓄電素子110を示す模式図である。同図に示すように、プレドープの際には、第1負極活物質層143と第2負極活物質層144の間にリチウムイオン供給源Lが配置されている。
【0047】
リチウムイオン供給源Lは金属リチウムからなり、例えばリチウム箔である。リチウムイオン供給源Lは負極102に電気的に接続されていればよく、例えば第1負極活物質層143又は第2負極活物質層144のいずれか一方又は両方に貼付されるものとすることができる。
【0048】
図6は、リチウムイオン供給源Lと第1負極活物質層143及び第2負極活物質層144との位置関係を示す模式図である。同図に示すように、リチウムイオン供給源Lは、第1負極活物質層143と第2負極活物質層144によって挟まれ、即ちリチウムイオン供給源Lは負極材料によって被覆されている。
【0049】
この状態で蓄電素子110が電解液に浸漬されると、リチウムイオン供給源Lから電子が負極102に流れ、同時にリチウムイオン供給源Lからリチウムイオンが電解液中に拡散し、第1負極活物質層143、第2負極活物質層144及び第3負極活物質層145に含まれる負極活物質にドープ(プレドープ)される。この状態でエージングされることにより、リチウムイオン供給源Lがドープされる。なお、リチウムイオン供給源Lの表裏両面に負極活物質層(第1負極活物質層143及び第2負極活物質層144)が設けられているため、片面にのみ負極活物質層が設けられている場合に比べ、ドープは速やかに進行する。
【0050】
図7は、プレドープ完了時の蓄電素子110を示す模式図である。同図に示すように、リチウムイオン供給源Lはプレドープによって消失するが、リチウムイオン供給源Lが貼付されていた箇所にはリチウムイオン供給源Lの残渣や変色等の痕跡L'が生じる。
【0051】
[効果]
本実施形態に係る電気化学デバイス100の効果について説明する。ここで、比較例に係る電気化学デバイスについて先に説明する。
【0052】
図8は、比較例に係る電気化学デバイス200の蓄電素子210(プレドープ時)を示す平面図である。蓄電素子210は、正極230、負極240及びセパレータ250を有する。
【0053】
正極230は、正極集電体231と正極活物質層232を有し、負極240は負極集電体241と負極活物質層242を有する。
図8に示すように、リチウムイオン供給源Lは負極集電体241に貼付され、プレドープが行われる。
図9は、リチウムイオン供給源Lと負極活物質層242の位置関係を示す模式図である。このように、電気化学デバイス200では、本実施形態に係る電気化学デバイス100とは異なり、リチウムイオン供給源Lは負極材料によって被覆されていない。
【0054】
図10は蓄電素子210の、プレドープ完了時の平面図である。同図に示すように、負極集電体241にはリチウムイオン供給源Lの痕跡L'が存在している。電気化学デバイス200が使用され、劣化すると、電解液中のリチウムイオンが痕跡L'を起点として析出し、デンドライトが生じる。さらに電気化学デバイス200の使用が継続されるとデンドライトの堆積が生じる。
【0055】
図11は、デンドライトが堆積した蓄電素子210の平面図である。同図に示すように堆積したデンドライトDはセパレータ250を損傷させ、セパレータ250からはみ出すおそれがある。セパレータ250が損傷すると、正極230と負極240が短絡を生じ、電気化学デバイス200に短絡故障が生じる。また、デンドライトDが剥離すると、その破片が電解液中に浮遊、拡散し、これも電気化学デバイス200の故障原因となる。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る電気化学デバイス100では次のようになる。
図12は、電気化学デバイス100における、デンドライトDが堆積した蓄電素子110の平面図である。上述のようにデンドライトDは、リチウムイオン供給源Lの痕跡L'(
図7参照)を起点として析出するため、
図12に示すように、デンドライトDは第1負極活物質層143及び第2負極活物質層144によって遮蔽され、セパレータ150に到達しない。これにより、デンドライトDによるセパレータ150の損傷が防止される。
【0057】
加えて、第1負極活物質層143及び第2負極活物質層143を構成する負極材料は空隙を多く含み、デンドライトDは負極材料の空隙に広がるため、剥離が生じにくく、破片の電解液中への浮遊も防止される。さらに、デンドライトDが負極材料の空隙に留まるため、充放電がなされることでデンドライト化したリチウムの第1負極活物質層143及び第2負極活物質層143への再ドープが生じ、電気化学デバイス100の劣化による容量低下の回復が生じる。
【0058】
このように、本実施形態に係る電気化学デバイス100においては、比較例に係る電気化学デバイス200と比較して、デンドライトに起因する障害が防止されると共に、キャパシタ容量の維持が可能である。
【0059】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る電気化学デバイスについて説明する。本実施形態に係る電気化学デバイスは、リチウムイオンキャパシタ等の、電荷の輸送にリチウムイオンを利用する電気化学デバイスである。
【0060】
[電気化学デバイスの構成]
図13は、本実施形形態に係る電気化学デバイスのプレドープ前における蓄電素子310を示す模式図である。なお、蓄電素子310は、第1の実施形態と同様に電解液と共に容器に収容されているものである。
【0061】
同図に示すように、蓄電素子310は、正極330、負極340及びセパレータ350を有する。
【0062】
正極330は、正極集電体331、第1正極活物質層332及び第2正極活物質層333を有する。
【0063】
正極集電体331は、導電性材料からなり、第1正極活物質層332及び第2正極活物質層333に電気的に接続されている。具体的には正極集電体331は、アルミニウム箔や銅箔等の金属箔であるものとすることができ、表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0064】
第1正極活物質層332は、正極材料からなり、正極集電体331上に積層されている。
正極材料は、正極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。正極活物質は、電解液中のリチウムイオン及びアニオンが吸着可能な材料であり、例えば活性炭を利用することができる。具体的には、第1正極活物質層332は、正極集電体331上に、ペースト状の正極材料が塗布され、硬化されることにより形成されるものとすることができる。
【0065】
第2正極活物質層333は、正極材料からなり、正極集電体331上の、第1正極活物質層332が積層された面とは反対側の面に積層されている。具体的には、第2正極活物質層333は、正極集電体331上にペースト状の正極材料が塗布され、硬化されることにより形成されるものとすることができる。
【0066】
負極340は、負極集電体341、第1負極活物質層342、第2負極活物質層343及び負極シート344を有する。
【0067】
負極集電体341は、導電性材料からなり、第1負極活物質層342、第2負極活物質層343及び負極シート344に電気的に接続されている。具体的には負極集電体341は、アルミニウム箔や銅箔等の金属箔であるものとすることができ、表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0068】
第1負極活物質層342は、負極材料からなり、負極集電体341上に積層されている。負極材料は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。負極活物質は、電解液中のリチウムイオンが吸着可能な材料であり、例えば炭素系材料を利用することができる。具体的には、第1負極活物質層342は、負極集電体341上にペースト状の負極材料が塗布され、硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0069】
第2負極活物質層343は、負極材料からなり、負極集電体341上に積層されている。具体的には、第2負極活物質層343は、負極材料からなり、負極集電体341上の、第1負極活物質層342が積層された面とは反対側の面に積層されている。具体的には、第2負極活物質層343は、負極集電体341上にペースト状の負極材料が塗布され、硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0070】
負極シート344は、負極材料からなるシート(層)であり、リチウム供給源Lを被覆する。
図14は、リチウム供給源Lを被覆する負極シート344を示す模式図である。同図に示すように、負極シート344は、リチウム供給源Lを被覆できるサイズを有する。負極シート344は、リチウム供給源Lを挟んで第2負極活物質層343に貼付されているものとすることができる。なお、負極シート344は、負極集電体の表裏両面に負極材料が積層されたシートであってもよい。負極シート344は、ペースト状の負極材料が硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0071】
セパレータ350は、正極330と負極340を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。セパレータ350は、正極330と負極340の積層態様に応じて設けられ、一つであってもよく、複数であってもよい。具体的には、セパレータ350は、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができる。
【0072】
以上のような構成を有する蓄電素子310が電解液と共に容器に収容され、電気化学デバイスを構成する。
【0073】
[効果]
蓄電素子310は、第1の実施形態と同様に、リチウムイオン供給源Lから負極340へのリチウムイオンのプレドープがなされる。リチウム供給源Lを負極シート344によって被覆することにより、プレドープの完了後、負極シート344と第1正極活物質層332の間でも充放電が可能となる。
図15は、充放電時のリチウムイオンの授受を示す模式図であり、リチウムイオンの授受を矢印で示す。同図に示すように、負極シート344と、対向する第1正極活物質層332の間でリチウムイオンの授受が行われる。
【0074】
さらに、蓄電素子310では、リチウムイオン供給源L及び負極シート344を、第2負極活物質層343上の任意の位置に配置することが可能である。
図16は、第2負極活物質層343上におけるリチウムイオン供給源Lの配置を示す模式図である。同図に示すように、リチウムイオン供給源Lを第2負極活物質層343上において複数箇所に配置することにより、巻回された蓄電素子310において巻回の内部にリチウムイオン供給源Lを配置することができ、効率の良いプレドープ設計が可能となる。
【0075】
また、本実施形態においても、リチウムイオン源Lは負極材料によって被覆されているため、第1の実施形態と同様にデンドライトの発生を防止することが可能である。
【0076】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る電気化学デバイスについて説明する。本実施形態に係る電気化学デバイスは、リチウムイオンキャパシタ等の、電荷の輸送にリチウムイオンを利用する電気化学デバイスである。
【0077】
図17は、本実施形態に係る電気化学デバイスのプレドープ前における蓄電素子410を示す模式図である。蓄電素子410は、積層型(非巻回型)の蓄電素子であるものとすることができ、第1の実施形態と同様に電解液と共に容器に収容されているものである。
【0078】
同図に示すように、蓄電素子410は、正極430、負極440及びセパレータ450を有する。負極440は、リチウムイオン源Lを挟んで二つが設けられている。なお、実際には、蓄電素子410は、
図17に示す積層構造の多数が積重されたものとすることができる。
【0079】
正極430は、正極集電体431、第1正極活物質層432及び第2正極活物質層433を有する。
【0080】
正極集電体431は、導電性材料からなり、第1正極活物質層432及び第2正極活物質層433に電気的に接続されている。具体的には正極集電体431は、アルミニウム箔や銅箔等の金属箔であるものとすることができ、表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0081】
第1正極活物質層432は、正極材料からなり、正極集電体431上に積層されている。
正極材料は、正極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。正極活物質は、電解液中のリチウムイオン及びアニオンが吸着可能な材料であり、例えば活性炭を利用することができる。具体的には、第1正極活物質層432は、正極集電体431上に、ペースト状の正極材料が塗布され、硬化されることにより形成されるものとすることができる。
【0082】
第2正極活物質層433は、正極材料からなり、正極集電体431上の、第1正極活物質層432が積層された面とは反対側の面に積層されている。具体的には、第2正極活物質層433は、正極集電体431上にペースト状の正極材料が塗布され、硬化されることにより形成されるものとすることができる。
【0083】
負極440は、負極集電体441、第1負極活物質層442及び第2負極活物質層443を有する。
【0084】
負極集電体441は、導電性材料からなり、第1負極活物質層442及び第2負極活物質層443に電気的に接続されている。具体的には負極集電体441は、アルミニウム箔や銅箔等の金属箔であるものとすることができ、表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0085】
第1負極活物質層442は、負極材料からなり、負極集電体441上に積層されている。負極材料は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。負極活物質は、電解液中のリチウムイオンが吸着可能な材料であり、例えば炭素系材料を利用することができる。具体的には、第1負極活物質層443は、負極集電体441上にペースト状の負極材料が塗布され、硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0086】
第2負極活物質層443は、負極材料からなり、負極集電体441上に積層されている。具体的には、第2負極活物質層443は、負極材料からなり、負極集電体441上の、第1負極活物質層442が積層された面とは反対側の面に積層されている。具体的には、第2負極活物質層443は、負極集電体441上にペースト状の負極材料が塗布され、硬化されることにより形成され、空隙を多く含むものとすることができる。
【0087】
セパレータ450は、正極430と負極440を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。具体的には、セパレータ450は、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができる。
【0088】
図17に示すように、蓄電素子410は、正極430、負極440及びセパレータ450が積層されて構成され、リチウムイオン供給源Lは、これらの積層構造の中間において二つの負極440の間に配置されている。
【0089】
以上のような構成を有する蓄電素子410が電解液と共に容器に収容され、電気化学デバイスを構成する。
【0090】
[効果]
蓄電素子410は、第1の実施形態と同様に、リチウムイオン供給源Lから負極440へのリチウムイオンのプレドープがなされる。
図18は、比較例に係る蓄電素子510におけるリチウムイオンの移動を示す模式図であり、
図19は、本実施形態に係る蓄電素子410におけるリチウムイオンの移動を示す模式図である。これらの図において、黒矢印はリチウムイオンドープの際のリチウムイオンの移動を示し、白矢印は充放電の際のリチウムイオンの授受を示す。
【0091】
なお、
図18に示す蓄電素子510は、正極530、負極540及びセパレータ550を有する。正極530は、正極集電体531の一面に第1正極電極層532が積層され、その裏面に第2正極電極層533が積層されて構成されている。負極540は、負極集電体541の一面に第1負極電極層542が積層され、その裏面に第2正極電極層543が積層されて構成されている。
【0092】
図18に示すように、リチウムイオン供給源Lが積層構造の中間に配置されていない場合、リチウムイオンドープの際のドープ量は、リチウムイオン供給源から離間するに従って減少する。このため、リチウムイオン供給源から離間した負極540へのドープには時間がかかる。これに対し、
図19に示すようにリチウムイオン供給源Lが積層構造の中間に配置されている場合、リチウムイオン供給源Lと負極440の距離が接近し、ドープが短時間で完了する。
【0093】
このように、本実施形態に係る蓄電素子410においては、リチウムイオン供給源Lが層構造の中間において二つの負極440の間に配置されていることにより、リチウムイオンのプレドープを短時間で完了させることが可能である。
【0094】
また、本実施形態においても、リチウムイオン源Lは負極材料によって被覆されているため、第1の実施形態と同様にデンドライトの発生を防止することが可能である。
【実施例】
【0095】
本発明の実施例と比較例に係るリチウムイオンキャパシタを作製し、充放電サイクル試験を実施した。実施例に係るリチウムイオンキャパシタは、上記電気化学デバイス100と同様の構造を有し、比較例に係るリチウムイオンキャパシタは、上記電気化学デバイス200と同様の構造を有する。
【0096】
充放電サイクル試験は、充電電圧を3.8Vまで、放電電圧を2.2Vまでとし、充放電電流は100C相当、25℃±3℃環境の条件にて実施した。比較例及び実施例に係るリチウムイオンキャパシタのそれぞれ10個ずつに対して、3000サイクル、30000サイクル、300000サイクルの充放電サイクル試験を実施した。
【0097】
充放電サイクル試験の後、各リチウムイオンキャパシタを解体し、デンドライトの発生状況を観察した。また、解体前のリチウムイオンキャパシタを1C相当の電流にてセル電圧が2.2Vとなるように調整し、1時間放置後、セル電圧を測定した。また、比較として、実施例及び比較例に係るリチウムイオンキャパシタを10個ずつ準備し、充放電サイクル試験を実施することなく、観察及びセル電圧の測定を実施した。
図20は観察結果及び測定結果を示す表である。
【0098】
同図に示すように、デンドライトの発生状態を表す指標として、負極電極面積に対するデンドライトの発生面積の比率を算出し、次の3ランクで表した。1)負極電極面積比3%未満を「発生なし」、2)負極電極面積比3%以上30%未満を「少量あり」、3)負極電極面積比30%以上を「多量あり」とした。また、上記測定によるセル電圧が2V未満であれば短絡故障が生じているものと判断した。
【0099】
図21は、
図20の観察結果及び測定結果を表すグラフである。縦軸はリチウムイオンキャパシタの割合であり、1個を10%とした。
【0100】
図20及び
図21に示すように、比較例に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、サイクル数と共にデンドライトが増加し、300000サイクル後には、10個中3個において短絡故障が発生した。これは、デンドライトの増加によりセパレータが損傷し、デンドライトがセパレータからはみ出すことによるものであった。
【0101】
これに対し、実施例に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、サイクル数と共にデンドライトが増加しているが、その増加量は比較例に比べて小さい。これは、析出したデンドライトが充電により負極に再ドープされたものと考えられる。また、実施例では、300000サイクル後であっても短絡故障が発生しなかった。これは、上記のようにデンドライトの発生が抑制されていることに加え、デンドライトが負極活物質層により空間的に遮蔽されており、セパレータに損傷を与えなかったためである。
【0102】
以上のように、実施例に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、デンドライトの発生が抑制され、デンドライトに起因する短絡故障が防止されることが確認できた。