(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤトレッドにおける湿潤牽引性能及び転がり抵抗のバランスを保つ方法であって、タイヤトレッドを形成するために、少なくとも20〜80質量%の充填剤、5〜75質量%のジエンエラストマー、及び硬化剤を、5〜30質量%の1つ又は複数のプロピレン−(エチレン又はエチレンとC4−C20αオレフィン)−ジエンターポリマーと組み合わせることであって、プロピレン−(エチレン又はエチレンとC4−C20αオレフィン)−ジエンターポリマーは、2質量%〜40質量%のエチレン又はエチレンとC4−C20αオレフィンに由来する単位、0.5〜10質量%のエチリデンノルボルネン又はビニルノルボルネンに由来する単位を含み、かつDSCにより決定して0J/g〜80J/gの融解熱を有し、ジエンエラストマー、加工オイル、充填剤、硬化剤及びプロピレン−(エチレン又はエチレンとC4−C20αオレフィン)−ジエンターポリマーの合計質量%は100%を超えないこと;
タイヤトレッドを形成するために、成分を硬化させること;を含み、
他の成分に対するプロピレン−(エチレン又はエチレンとC4−C20αオレフィン)−ジエンターポリマーのレベル及びそのコモノマー含有量は、タイヤトレッドの湿潤牽引性及び転がり抵抗のバランスを改善するために変化し得る、方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、タイヤトレッド組成物におけるプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの使用に関する。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、プロピレンと、少なくとも1つのエチレン及びC
4−C
20αオレフィンとを重合することにより調製し、エチリデンノルボルネンなどの1つ又は複数のジエンを重合してもよい。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは5質量%〜40質量%のエチレン及び/又はC
4−C
20αオレフィンに由来する単位を含み、かつDSCにより決定して0J/g〜80J/gの融解熱を有する。
タイヤトレッド組成物は、摩耗、牽引性、及び転がり抵抗に影響する、タイヤにおいて重要な態様である。良好なトレッド摩耗性をもたらす一方で、優れた牽引性及び低転がり抵抗を確保することは、技術的難題である。この難題は、湿潤牽引性と転がり抵抗/トレッド摩耗性の間のトレードオフの関係にある。組成物のTgを上昇させることにより、良好な湿潤牽引性がもたらされるが、しかし同時に転がり抵抗及びトレッド摩耗性が増加する。本明細書に記載される実施形態は、転がり抵抗及びトレッド摩耗性を低減させることなく湿潤牽引性を達成することができるトレッド用配合物添加剤を提供する。
この問題には、配合物全体のTgを変化させることなく、湿潤牽引性領域(0℃)におけるヒステリシスを増加させ、かつ転がり抵抗領域(60℃)におけるヒステリシスを低減させる添加剤、ポリプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーを開発することにより取り組んできた。
添加剤配合工程により、ポリオレフィンドメイン中のカーボンブラック及び酸化防止剤を濃縮することによって、スチレン−ブタジエンゴム/ポリブタジエン/天然ゴム(SBR/PBD/NR)組成物とのポリオレフィンブレンドの公知の欠陥に取り組み、耐摩耗性、硬化状態及びUV安定性を改善することが可能となる。これらの欠陥として、好ましくない溶解度パラメータの差異により硬化剤及び充填剤がポリオレフィンから移動するため、加硫が不完全で補強が不完全なポリオレフィンドメインが挙げられる。本明細書に記載される本実施形態は、1つ又は複数のこれらの欠陥を克服する。
【0007】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマー
本明細書で使用するとき、「プロピレン−エチレン−ジエンターポリマー」とは、プロピレン及び他のコモノマーを含む任意のポリマーであり得る。用語「ポリマー」とは、1つ又は複数の異なるモノマーからの繰り返し単位を有する任意の炭素含有の化合物を表す。好ましくは、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、プロピレン由来の単位、αオレフィン由来の単位を含み、ジエン由来の単位を含んでもよい。例えば、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、プロピレン−αオレフィンポリマー、プロピレン−αオレフィン−ジエンターポリマー、又はプロピレン−ジエンコポリマーであってもよい。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、プロピレンと、少なくとも1つのエチレン及びC
4−C
20αオレフィンとを重合することにより調製することができ、1つ又は複数のジエンを重合してもよい。
【0008】
コモノマーは、直鎖又は分岐であってもよい。好ましい直鎖のコモノマーとして、エチレン又はC
4−C
8αオレフィン、より好ましくはエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン、さらにより好ましくはエチレン又は1−ブテンが挙げられる。好ましい分岐のコモノマーとして、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、及び3,5,5−トリメチル−1−ヘキセンが挙げられる。1つ又は複数の実施形態において、コモノマーはスチレンを含んでもよい。
ジエンは、共役又は非共役であってもよい。ジエンは、非共役であることが好ましい。例示的なジエンとして、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB);1,4−ヘキサジエン;5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);1,6−オクタジエン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;ビニルノルボルネン(VNB);ジシクロペンタジエン(dicyclopendadiene)(DCPD);及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。ジエンは、ENB又はVNBであることが好ましい。
【0009】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、ポリマーの質量を基準として、60質量%〜95質量%、又は65質量%〜95質量%、又は70質量%〜95質量%、又は75質量%〜95質量%、又は80質量%〜95質量%、又は83質量%〜95質量%、又は84質量%〜95質量%、又は84質量%〜94質量%の量のプロピレンを有してもよい。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーのバランスは、少なくとも1つのエチレン及びC
4−C
20αオレフィンを含み、1つ又は複数のジエンを含んでもよい。αオレフィンは、エチレン、ブテン、ヘキセン(hexane)又はオクテンであってもよい。ポリマー中に2つ以上のαオレフィンが存在する場合、エチレン及び少なくとも1つのブテン、ヘキセン(hexane)又はオクテンが好ましい。
【0010】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの質量を基準として、5〜40質量%のC
2及び/又はC
4−C
20αオレフィンを含むことが好ましい。2つ以上のエチレン及びC
4−C
20αオレフィンが存在する場合、ポリマー中のこれらのオレフィンを合わせた量は、少なくとも5質量%及び本明細書に記載される範囲内に含まれることが好ましい。エチレン及び/又は1つ又は複数のαオレフィンの量の他の好ましい範囲として、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの質量を基準として、5質量%〜35質量%、又は5質量%〜30質量%、又は5質量%〜25質量%、又は5質量%〜20質量%、又は5〜17質量%、又は5質量%〜16質量%、又は6質量%〜16質量%が挙げられる。
【0011】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、ポリマーの質量を基準として、0.2質量%〜24質量%、又は0.5質量%〜12質量%、又は0.6質量%〜8質量%、又は0.7質量%〜5質量%のジエン含有量を含むことが好ましい。他の好ましい範囲として、ポリマーの質量を基準として、0.2質量%〜10質量%、又は0.2質量%〜5質量%、又は0.2質量%〜4質量%、又は0.2質量%〜3.5質量%、又は0.2〜3.0質量%、又は0.2質量%〜2.5質量%を挙げることができる。1つ又は複数の実施形態において、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、0.5質量%〜10質量%、又は0.5質量%〜4質量%、又は0.5質量%〜2.5質量%、又は0.5質量%〜2.0質量%の量の5−エチリデン−2−ノルボルネンを含んでもよい。
【0012】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、5,000,000以下の質量平均分子量(Mw)、3,000,000以下の数平均分子量(Mn)、10,000,000以下のz平均分子量(Mz)、及びアイソタクチックポリプロピレンを基線として使用して、ポリマーの質量平均分子量(Mw)において測定した0.95以上のg’指数を有してもよい。
分子量(数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及びz平均分子量(Mz))は、オンライン示差屈折率(DRI)、光散乱(LS)、及び粘度計(VIS)検出器を備えたPolymer Laboratoriesのモデル220高温GPC−SECを使用して決定した。0.54ml/分の流速及び300μLの公称注入容量を使用して、分離用にPolymer Laboratoriesの3つのPLgel 10m Mixed−Bカラムを使用した。検出器及びカラムは、135℃に維持したオーブン内に収容した。SECカラムから出てくる流れは、miniDAWN(Wyatt Technology,Inc.)の光学フローセルに、次にDRI検出器へと向かった。DRI検出器はPolymer Laboratories SECの一体部品であった。粘度計は、SECオーブン内部にあり、DRI検出器の後部に位置していた。これらの検出器同様にその較正の詳細は、例えば、T.Sun,P.Brant,R.R.Chance,and W.W.Graessley,in 34(19)MACROMOLECULES,6812-6820,(2001)に記載されている。
【0013】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、5,000〜5,000,000g/モル、又は10,000〜1,000,000g/モル、又は20,000〜500,000g/モル、又は50,000〜400,000g/モルのMwを有してもよい。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、2,500〜2,500,000g/モル、又は5,000〜500,000g/モル、又は10,000〜250,000g/モル、又は25,000〜200,000g/モルのMnを有してもよい。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、10,000〜7,000,000g/モル、又は50,000〜1,000,000g/モル、又は80,000〜700,000g/モル、又は100,000〜500,000g/モルのMzを有してもよい。
【0014】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの分子量分布指数(MWD=(Mw/Mn))は、1.5〜40であってもよい。例えば、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、40、又は20、又は10、又は5、又は4.5、又は3の上限、及び1.5、又は1.8、又は2.0の下限を伴うMWDを有してもよい。1つ又は複数の実施形態において、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーのMWDは、1.8〜5、又は1.8〜3である。
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、0.95以上、又は少なくとも0.98、又は少なくとも0.99のg’指数値を有してもよく、g’はアイソタクチックポリプロピレンの固有粘度を基線として使用してポリマーのMwにおいて測定する。本明細書での使用に関して、g’指数は、
【0015】
【数1】
のように定義され:
式中、η
bはプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの固有粘度であり、η
lはプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーと同じ粘度平均分子量(M
v)の直鎖ポリマーの固有粘度である。したがって、η
l=KM
vα、式中、K及びαは、直鎖ポリマーに関する測定値であり、分子量を決定するための上述のGPC−SEC法に関して記載された、g’指数測定で使用した装置と同じ装置で取得しなければならない。
【0016】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、ASTM D−1505試験法によって測定して、室温で0.85g/cm
3〜0.92g/cm
3、又は0.87g/cm
3〜0.90g/cm
3、又は0.88g/cm
3〜0.89g/cm
3の密度を有してもよい。
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、ASTM D−1238に準拠して測定して、0.2g/10分以上のメルトフローレート(MFR、230℃において2.16kg重)を有してもよい。MFR(230℃において2.16kg)は、0.5g/10分〜200g/10分、又は1g/10分〜100g/10分、又は2g/10分〜30g/10分、又は5g/10分〜30g/10分、又は10g/10分〜30g/10分、又は10g/10分〜25g/10分であることが好ましい。
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、ASTM D1646に準拠して決定して、100未満、又は75未満、又は60未満、又は30未満のムーニー粘度ML(1+4)125℃を有してもよい。
【0017】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、本明細書に記載されるDSC手順により決定して、グラム当たり0ジュール以上(J/g)であり、かつ80J/g以下、又は75J/g以下、又は70J/g以下、又は60J/g以下、又は50J/g以下、又は35J/g以下である融解熱(H
f)を有してもよい。また好ましくは、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、1J/g以上、又は5J/g以上の融解熱を有してもよい。好ましいプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、1.0J/g、又は1.5J/g、又は3.0J/g、又は4.0J/g、又は6.0J/g、又は7.0J/gの下限から、30J/g、又は35J/g、又は40J/g、又は50J/g、又は60J/g、又は70J/g、又は75J/g、又は80J/gの上限までの範囲にわたる融解熱を有してもよい。
【0018】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの結晶化度は、本明細書に記載されるDSC手順に準拠して決定して、結晶化度の百分率(すなわち、%結晶化度)で表すことができる。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、0%〜40%、又は1%〜30%、又は5%〜25%の%結晶化度を有してもよい。1つ又は複数の実施形態において、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、40%未満、又は0.25%〜25%、又は0.5%〜22%、又は0.5%〜20%の結晶化度を有してもよい。
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、単一で幅広い融解転移を有し得ることが好ましい。しかしながら、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、第1ピークに隣接する第2融解ピークを示してもよいが、本明細書の目的のために、このような第2融解ピークは共に単一の融点と考えられ、これらのピークの最高点(本明細書に記載される基線に対して)をプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの融点と考える。
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、本明細書に記載されるDSC手順により測定して、100℃以下、又は90℃未満、又は80℃未満、又は75℃以下の融点を有してもよい。1つ又は複数の実施形態において、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、25℃〜80℃、又は25℃〜75℃、又は30℃〜65℃の融点を有してもよい。
【0019】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの融解熱及び融解温度を決定するために、示差走査熱量計(DSC)手順を使用してもよい。この方法は以下の通りである:およそ6mgの物質をマイクロリットルのアルミニウム試料皿に置いた。試料を示差走査熱量計(Perkin Elmer Pyris 1 Thermal Analysis System)に置き、−80℃まで冷却する。試料を10℃/分で、120℃の最終温度に達するまで加熱する。この試料は2サイクル行われる。試料の融解ピーク下の面積として記録された熱出力は、融解熱の尺度であり、ポリマーのグラム当たりのジュールで表すことができ、Perkin Elmer Systemにより自動的に算出される。融点は、基線測定値に対して試料の融解範囲内で最大熱吸収の温度として、温度の関数としてポリマーの熱容量増加に関して記録される。
【0020】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、
13C NMRで測定して、75%以上、又は80%以上、又は82%以上、又は85%以上、又は90%以上の3つのプロピレン単位の3連子タクティシティーを有してもよい。他の好ましい範囲は、75%〜99%、又は80%〜99%、又は85%〜99%を含んでもよい。3連子タクティシティーは、米国特許出願公開第2004/0236042号に記載される方法により決定される。
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、ポリマーブレンドが本明細書に記載されるプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの特性を有する限り、分散ランダムプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーのブレンドであってもよい。プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの数は、3以下、又は2以下であってもよい。1つ又は複数の実施形態において、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、オレフィン含有量、ジエン含有量、又はその両方が異なる2つのプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーのブレンドを含んでもよい。このようなポリマーブレンドの調製は、米国特許出願公開第2004/0024146号及び米国特許出願公開第2006/0183861号に見出すことができる。
【0021】
本発明の組成物は、組成物の質量を基準として、5質量%〜99質量%、例えば、5質量%〜30質量%の量のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーを含んでもよい。この組成物は、組成物の質量を基準として、低値が高値より低い限り、5質量%、又は10質量%、又は15質量%、又は20質量%、又は25質量%、又は30質量%、又は35質量%、又は40質量%、又は50質量%、又は60質量%、又は70質量%、又は75質量%の下限から、70質量%、又は80質量%、又は85質量%、又は90質量%、又は95質量%の上限までの量のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーを含むことが好ましい。
【0022】
エラストマー
本発明のタイヤトレッド組成物はまた、エラストマーも含む。一般に、エラストマーの範囲は、タイヤトレッド組成物の5〜75質量%である。好適なエラストマーとして、例えば、ジエンエラストマーが挙げられる。
「ジエンエラストマー」とは、公知のように、少なくとも一部(ホモポリマー又はコポリマー)がジエンモノマー(共役であろうとなかろうと、2つの炭素−炭素二重結合を有するモノマー)から生じるエラストマーを意味すると理解される。
ジエンエラストマーは、50%超のモル含有量を有する単位の共役ジエンモノマーから生じ、「高度に不飽和」であり得る。
【0023】
一態様に基づいて、−75℃〜−40℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、スチレンブタジエンコポリマー、天然ポリイソプレン、95%超のcis−1,4結合含有量を有する合成ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン/イソプレンターポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択され、−110℃〜−75℃、好ましくは−100℃〜−80℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、90%超のcis−1,4結合含有量を有するポリブタジエン及び50%以上の量のブタジエン単位を含むイソプレン/ブタジエンコポリマーからなる群から選択される。
別の態様において、−75℃〜−40℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、天然ポリイソプレン及び95%超のcis−1,4結合含有量を有する合成ポリイソプレンからなる群から選択され、−110℃〜−75℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、90%超のcis−1,4結合含有量を有するポリブタジエンである。
【0024】
一実施形態において、組成物は、−75℃〜−40℃のTgを有し、かつジエンエラストマーのそれぞれが−110℃〜−75℃のTgを有するジエンエラストマーのブレンドを含む。
一態様において、組成物は、90%超のcis−1,4結合含有量を有する少なくとも1つのポリブタジエンと、少なくとも1つの天然又は合成のポリイソプレン(95%超のcis−1,4結合含有量を有する)とのブレンドを含む。
別の態様において、組成物は、90%超のcis−1,4結合含有量を有する少なくとも1つのポリブタジエンと、少なくとも1つのスチレン、イソプレン及びブタジエンのターポリマーとのブレンドを含む。
これらのジエンエラストマーは、2つの区分:「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」に分類することができる。用語「本質的に不飽和」とは、一般に少なくとも一部が、15%(mol%)超のジエン起源(共役ジエン)の単位レベルを有する共役ジエンモノマーから生じるジエンエラストマーを意味すると理解され;したがって、ブチルゴム又はEPDM型のジエン及びアルファオレフィンのコポリマーなどのジエンエラストマーは前述の定義にあてはまらず、詳細には「本質的に飽和」のジエンエラストマー(常に15%未満の低い又は非常に低いジエン起源の単位レベル)と表すことができる。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーの区分において、用語「高度に不飽和」のジエンエラストマーとは、詳細には、50%超のジエン起源(共役ジエン)の単位レベルを有するジエンエラストマーを意味すると理解される。
【0025】
これらの定義を考慮すると、本明細書で使用されることが可能な用語ジエンエラストマーは、より詳細には:(a)4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合することにより得られる任意のホモポリマー;(b)1つ又は複数の共役ジエンと別の1つの共役ジエンとを、又は8〜20個の炭素原子を有する1つ若しくは複数のビニル芳香族化合物とを共重合することにより得られる任意のコポリマー;(c)エチレン及び3〜6個の炭素原子を有するアルファオレフィンと、6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとを共重合することにより得られる三元コポリマーであって、例えば、エチレン及びプロピレンと、詳細には1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジシクロペンタジエンなどの上述の種類の非共役ジエンモノマーから得られるエラストマーなど;(d)イソブテン及びイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、並びにこの種類のコポリマーのハロゲン化されたもの、詳細には塩素化又は臭素化されたものを意味すると理解される。
【0026】
以下:1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、例えば2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン若しくは2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエンなどの2,3−ジ(C1−C5アルキル)−1,3−ブタジエン、アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン又は2,4−ヘキサジエンは、詳細には共役ジエンとして好適である。例えば、以下:スチレン、オルト−、メタ−、若しくはパラ−メチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物、パラ−(tert−ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン又はビニルナフタレンは、ビニル芳香族化合物として好適である。
【0027】
コポリマーは、99%〜20質量%のジエン単位及び1%〜80質量%のビニル芳香族単位を含むことができる。エラストマーは、使用される重合条件、詳細には調整剤及び/又はランダム化剤の有無、並びに利用される調整剤及び/又はランダム化剤の量に応じて変わる任意の微細構造を有することができる。エラストマーは、例えばブロック、ランダム、連続又はミクロ連続のエラストマーであり得て、分散系又は溶液中で調製することができ、これらは結合及び/若しくは星型分岐するか、又はさらに結合及び/若しくは星型分岐若しくは官能化剤を用いて官能化することができる。カーボンブラックと結合するための、例えばベンゾフェノンなどの、例えばC−Sn結合を含む官能基又はアミノ化官能基を挙げることができ;シリカなどの補強無機充填剤と結合するための、例えばシラノール末端、アルコキシシラン基、カルボキシル基又はポリエーテル基を有するシラノール又はポリシロキサン官能基を挙げることができる。
【0028】
以下:ポリブタジエン、詳細には4%〜80%の1,2−単位含有量(モル%)を有するもの又は80%超のcis−1,4−単位含有量(モル%)を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー並びに詳細には0℃〜−70℃及びより詳細には−10℃〜−60℃のTg(ガラス転移温度、標準ASTMS D3418に準拠して測定)、5%〜60質量%及びより詳細には20%〜50%のスチレン含有量、4%〜75%のブタジエン部の1,2−結合含有量(モル%)及び10%〜80%のtrans−1,4−結合含有量(モル%)を有するもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、詳細には5%〜90質量%のイソプレン含有量及び−40℃〜−80℃のTgを有するもの、又はイソプレン/スチレンコポリマー、詳細には5%〜50質量%のスチレン含有量及び−25℃〜−50℃のTgを有するものが好適である。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合には、5%〜50質量%及びより詳細には10%〜40%のスチレン含有量、15%〜60質量%及びより詳細には20%〜50%のイソプレン含有量、5%〜50質量%及びより詳細には20%〜40%のブタジエン含有量、4%〜85%のブタジエン部の1,2−単位の含有量(モル%)、6%〜80%のブタジエン部のtrans−1,4−単位の含有量(モル%)、5%〜70%のイソプレン部の1,2−プラス3,4−単位の含有量(モル%)、及び10%〜50%のイソプレン部のtrans−1,4−単位の含有量(モル%)を有するもの、並びにより一般に−20℃〜−70℃のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に好適である。
【0029】
ポリブタジエン(「BR」と略記)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる高度に不飽和のジエンエラストマーの群から選択されるジエンエラストマー。このようなコポリマーは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)及びイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選択されることがより好ましい。
【0030】
特定の実施形態に基づいて、ジエンエラストマーは、主に(すなわち、50質量%超)、エマルジョン内で調製されたSBR(「ESBR」)か、溶液内で調製されたSBR(「SSBR」)か、又はSBR/BR、SBR/NR(若しくはSBR/IR)、BR/NR(若しくはBR/IR)か、又はさらにSBR/BR/NR(若しくはSBR/BR/IR)ブレンド(混合物)のSBRである。SBR(ESBR又はSSBR)エラストマーの場合には、詳細には、例えば20%〜35質量%のような中等度のスチレン含有量、又は例えば35〜45%のような高度のスチレン含有量、15%〜70%のブタジエン部のビニル結合含有量、15%〜75%のtrans−1,4−結合含有量(モル%)及び−10℃〜−55℃のTgを有するSBRが使用され;このようなSBRは、好ましくは90%(モル%)超のcis−1,4−結合を有するBRとの混合物として有利に使用され得る。
【0031】
用語「イソプレンエラストマー」とは、公知の意味で、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、言い換えれば天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、さまざまなイソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味すると理解される。詳細には、イソプレンコポリマーの中で、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム IM)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)又はイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)がさらに挙げられる。このイソプレンエラストマーは、天然ゴム又は合成cis−1,4−ポリイソプレンであることが好ましく;これらの合成ポリイソプレンの中で、90%超、より好ましくはさらに98%超のcis−1,4−結合のレベル(モル%)を有するポリイソプレンが使用されることが好ましい。
【0032】
さらに別の態様に基づいて、ゴム組成物は、−70℃〜0℃のTgを示す(1つ又は複数の)「高Tg」ジエンエラストマー及び−110℃〜−80℃、より好ましくは−100℃〜−90℃のTgを示す(1つ又は複数の)「低Tg」ジエンエラストマーのブレンドを含む。高Tgエラストマーは、S−SBR、E−SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%超のcis−1,4−構造のレベル(モル%)を示す)、BIR、SIR、SBIR及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されることが好ましい。低Tgエラストマーは、少なくとも70%に等しいレベル(モル%)に基づいたブタジエン単位を含むことが好ましく;90%超のcis−1,4−構造のレベル(モル%)を示すポリブタジエン(BR)からなることが好ましい。
【0033】
本発明の別の実施形態に基づいて、ゴム組成物は、例えば30〜100phr、詳細には50〜100phr(全エラストマーの100部当たりの質量部)の高Tgエラストマーを、0〜70phr、詳細には0〜50phrの低Tgエラストマーとのブレンドとして含み、別の例に基づいて、ゴム組成物は、100phr全体に対して、溶液内で調製された1つ又は複数のSBRを含む。
本発明の別の実施形態に基づいて、本発明に基づく組成物のジエンエラストマーは、90%超のcis−1,4−構造のレベル(モル%)を示すBR(低Tgエラストマーとして)と、1つ又は複数のS−SBR又はE−SBR(高Tgエラストマーとして)とのブレンドを含む。
本明細書に記載される組成物は、単一のジエンエラストマー又はいくつかのジエンエラストマーの混合物を含むことができ、ジエンエラストマー又はエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意の種類の合成エラストマーと、実際、例えば熱可塑性ポリマーのようなエラストマー以外のポリマーとさえ組み合わせて使用することが可能である。
【0034】
本発明のタイヤトレッド組成物は、組成物の質量に対して、5又は10質量%〜15又は20又は25質量%の範囲内のプロピレン−α−オレフィンエラストマーであるプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーを含む。このようなエラストマーは、例えば米国特許第7,390,866号及び米国特許第8,013,093号に記載されており、Vistamaxx(商標)、Tafmer(商標)、及びVersify(商標)の商品名で販売されている。一般に、これらは、いくつかのレベルの結晶化度を可能にする制限されたアイソタクチックな配列を有する5〜25質量%のエチレン又はブテンに由来するコモノマー単位を有するランダムポリプロピレンコポリマーであり、いくつかの実施形態におけるコポリマーは、10,000又は20,000g/モル〜100,000又は200,000又は400,000g/モルの範囲内の質量平均分子量及び110又は100℃未満の融点(DSC)を有する。
【0035】
一実施形態において、タイヤトレッド組成物は、4〜20質量%のポリオレフィン−ポリブタジエンブロックコポリマーを含まず、ポリオレフィン−ポリブタジエンブロックコポリマーは一般式:PO−XL−fPBを有するブロックコポリマーであり、式中、「PO」は1000〜150,000g/モルの範囲内の質量平均分子量を有するポリオレフィンブロックであり、「fPB」は500〜30,000g/モルの範囲内の質量平均分子量を有する官能化極性ポリブタジエンブロックであり、「XL」はPOブロックとfPBブロックとを共有結合的に結合する架橋部分であり;混和しないポリオレフィンドメインの最大エネルギー損失(tanδ)は、−30℃〜10℃の範囲内の温度である。
【0036】
任意のスチレンコポリマーが有用であるが、タイヤ組成物において最も望ましいスチレンコポリマーは、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー「ゴム」である。このようなゴムは、ブロックコポリマーの質量で、10又は15又は20質量%〜30又は25又は40質量%のスチレン由来の単位、及び30又は40又は45質量%〜55又は60又は65質量%の範囲内のビニル基を有するのが好ましい。
有用なタイヤトレッド組成物はまた、全組成物を基準とした質量百分率で、15〜50又は60質量%のスチレンコポリマー;0又は5質量%〜60質量%のポリブタジエンポリマー;0〜60質量%の天然ゴム又は合成ポリイソプレン;15〜50又は60質量%の官能化スチレンコポリマー;0又は5質量%〜60質量%の官能化極性ポリブタジエンポリマー;0又は5質量%〜60質量%の天然ゴム又は官能化合成ポリイソプレン;0又は5質量%〜20又は40質量%の加工オイル;20質量%〜60質量%の充填剤、特に本明細書に記載されるシリカベースの充填剤;硬化剤;並びに5質量%〜20質量%の本明細書に記載されるプロピレン−エチレン−ジエンターポリマー、及び0又は5質量%〜40質量%の炭化水素樹脂も含むことができる。
【0037】
無機充填剤
本明細書で使用するとき、用語「充填剤」は、エラストマー組成物の物理的特性を補強又は調整し、特定の加工特性を付与するか、又はコストを低減するために使用される任意の物質を表す。
好ましい充填剤の例として、炭酸カルシウム、クレイ、マイカ、シリカ、シリケート、タルク、二酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、デンプン、木粉、カーボンブラック、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。充填剤は任意の大きさ及び範囲であってよく、例えばタイヤ産業において0.0001μm〜100μmであってよい。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「シリカ」は、任意の種類若しくは粒度のシリカ又は別のケイ酸誘導体、又は未処理を含み、溶液、焼成、若しくは同様の方法により加工されたケイ酸、沈降シリカ、結晶シリカ、コロイド状シリカ、アルミニウムシリケート又はカルシウムシリケート、ヒュームドシリカなどを表すことを意味する。沈降シリカは、従来のシリカ、半−高分散性シリカ、又は高分散性シリカであり得る。好ましい充填剤は、商標名Zeosil(商標)Z1165でRhodia Companyから市販されている。
例えば、カーボンブラックなどの有機充填剤、シリカなどの補強無機充填剤、又はこれらの2種類の充填剤のブレンド、詳細にはカーボンブラックとシリカとのブレンドのような、タイヤ製造で使用することができる、ゴム組成物を補強する能力で公知の任意の種類の補強充填剤を使用してもよい。
【0039】
従来的にタイヤに使用される全てのカーボンブラック、詳細にはHAF、ISAF又はSAF型のブラック(「タイヤグレード」のブラック)がカーボンブラックとして好適である。より詳細には、後者の中で、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347若しくはN375ブラック、又はさらに目的とする用途に応じて、高シリーズのブラック(例えば、N660、N683若しくはN772)などの、100、200又は300シリーズ(ASTMグレード)の補強カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形態で(例えば、出願WO97/36724又はWO99/16600を参照のこと)、イソプレンエラストマーに既に組み込まれていてもよい。
用語「補強無機充填剤」は、本特許出願で定義により、その色及びその起源(天然又は合成)に関わらず、カーボンブラックと対照的に「白色充填剤」、「透明充填剤」又はさらには「非黒色充填剤」としても公知でもある、中間カップリング剤以外の手段を用いないでそれ単独で補強できる任意の無機又は鉱物の充填剤、タイヤ製造を目的としている、言い換えればその補強役割において従来のタイヤグレードのカーボンブラックに取って代わることができるゴム組成物を意味すると理解すべきであり;このような充填剤は、一般に、公知の意味で、その表面のヒドロキシル(−OH)基の存在を特徴とする。
【0040】
補強無機充填剤が提供される場合の物理的状態は、それが粉末、ミクロビーズ、細粒、ビーズであっても、又は他の任意の適切な圧縮された形態であっても重要ではない。当然のことながら、用語、補強無機充填剤はまた、異なる補強無機充填剤、詳細には以下に記載の高分散性のシリカ及び/又はアルミニウムの充填剤の混合物も意味すると理解される。
シリカ型、詳細にはシリカ(SiO
2)の、又はアルミニウム型、詳細にはアルミナ(Al
2O
3)の鉱物充填剤は、特に補強無機充填剤として好適である。使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強シリカ、詳細にはBET表面積及びCTAB比表面積の両方とも450m
2/g未満好ましくは30〜400m
2/gを示す、任意の沈降シリカ又は焼成シリカであり得る。高分散性(「HDS」)沈降シリカとして、例えば、DegussaからのUltrasil 7000及びUltrasil 7005シリカ、RhodiaからのZeosil 1165MP、C5MP及び1115MPシリカ、PPGからのHi−Sil EZ150Gシリカ、HuberからのZeopol 8715、8745及び8755シリカ又は高比表面積を有するシリカが挙げられる。
【0041】
また、使用することができる他の無機充填剤の例として、補強アルミニウム(酸化物)、水酸化物、酸化チタン又は炭化ケイ素(例えば、出願WO02/053634又は米国特許出願公開第2004/0030017号を参照のこと)も挙げられる。
本発明の組成物が、低転がり抵抗を有するタイヤトレッドを目的としている場合、使用される補強無機充填剤は、詳細にはそれがシリカであるならば、45〜400m
2/g、より好ましくは60〜300m
2/gのBET表面積を有することが好ましい。
全補強充填剤(カーボンブラック及び/又は補強無機充填剤)のレベルは、20〜200phr、より好ましくは30〜150phrであることが好ましく、最適値は公知の意味で、目的とする特定の用途に応じて異なり:例えば自転車用タイヤに関して期待される補強レベルは、例えば、オートバイ用タイヤ、乗用車用タイヤ又は大型車などの商用車用タイヤのような持続的に高速で走行することができるタイヤに関して要求されるレベルより、当然のことながら低い。
【0042】
カップリング剤
本明細書で使用するとき、用語「カップリング剤」は、それがなければ相互作用しない、例えば、充填剤とジエンエラストマーのような2種間での安定な化学的及び/又は物理的な相互作用を促進することができる任意の薬剤を表すことを意味する。カップリング剤によって、シリカはゴムに対する補強効果を持つようになる。このようなカップリング剤は、シリカ粒子と予備混合、若しくは予備反応してあってもよく、又はゴム/シリカの加工、若しくは混合のステージ中に、ゴム混合物に添加してもよい。カップリング剤及びシリカを、ゴム/シリカの混合、又は加工のステージ中に別々にゴム混合物に添加する場合、カップリング剤は次にインサイチュでシリカと結合すると考えられる。
【0043】
カップリング剤は、硫黄ベースのカップリング剤、有機過酸化物ベースのカップリング剤、無機カップリング剤、ポリアミンカップリング剤、樹脂カップリング剤、硫黄化合物ベースのカップリング剤、オキシム−ニトロソアミンベースのカップリング剤、及び硫黄であってもよい。これらの中で、タイヤ用のゴム組成物として好ましいのは、硫黄ベースのカップリング剤である。
一実施形態において、カップリング剤は少なくとも二官能性である。二官能性カップリング剤の非限定的な例として、オルガノシラン又はポリオルガノシロキサンが挙げられる。好適なカップリング剤の他の例として、シランポリスルフィドが挙げられ、その特異的構造に応じて、「対称性」又は「非対称性」と表される。シランポリスルフィドは、式(V)
Z−A−S
x−A−Z (V)
により表すことができ、
式中、xは2〜8(好ましくは2〜5)の整数であり;記号Aは、同一又は異なっており、2価の炭化水素基(好ましくはC
1−C
18アルキレン基又はC
6−C
12アリーレン基、より詳細にはC
1−C
10、詳細にはC
1−C
4アルキレン、特にプロピレン)を表し;記号Zは、同一又は異なっており、3つの式(VI):
【0044】
【化1】
のうちの1つに相当し、
式中、R
1基は、置換又は非置換であり、かつ同一又は互いに異なり、C
1−C
18アルキル、C
5−C
18シクロアルキル又はC
6−C
18アリール基(好ましくはC
1−C
6アルキル、シクロヘキシル又はフェニル基、詳細にはC
1−C
4アルキル基、より詳細にはメチル及び/若しくはエチル)を表し;R
2基は、置換又は非置換であり、かつ同一又は互いに異なり、C
1−C
18アルコキシ又はC
5−C
18シクロアルコキシ基(好ましくはC
1−C
8アルコキシル及びC
5−C
8シクロアルコキシルから選択される基、さらにより好ましくはC
1−C
4アルコキシル、詳細にはメトキシル及びエトキシルから選択される基)を表す。
【0045】
シランポリスルフィドの非限定的な例として、例えば、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどの、ビス((C
1−C
4)アルコキシ(C
1−C
4)アルキルシリル(C
1−C
4)アルキル)ポリスルフィド(詳細にはジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)が挙げられる。さらなる例として、TESPTと略記され、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S
2]
2のビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、又はTESPDと略記され、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S]
2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが挙げられる。他の例として、ビス(モノ(C
1−C
4)アルコキシルジ(C
1−C
4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(詳細にはジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、より詳細にはビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0046】
カップリング剤はまた、二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)、又はヒドロキシシランポリスルフィド、又はアゾジカルボニル官能基を有するシラン若しくはPOSであり得る。カップリング剤はまた、例えば、少なくとも1つのチオール(−SH)官能基を有するシラン(メルカプトシランと表される)及び/又は少なくとも1つのマスクされたチオール官能基を有するシランのような他のシランスルフィドも含むことができる。
カップリング剤はまた、本明細書に記載されるか又はそうでなければ当技術分野で公知のカップリング剤などの1つ又は複数のカップリング剤の組み合わせも含むことができる。好ましいカップリング剤は、アルコキシシラン又はポリ硫化アルコキシシランを含む。特に好ましいポリ硫化アルコキシシランは、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドであり、商標名X50S(商標)でDegussaから市販されている。
【0047】
可塑剤
本明細書で使用するとき、用語「可塑剤」(加工オイルとも表される)は、石油由来の加工オイル及び合成可塑剤を表す。このようなオイルは、主に組成物の加工可能性を改善するために使用される。好適な可塑剤として、脂肪酸エステル又は、パラフィン系オイル、芳香族系オイル、ナフテン系石油オイル、及びポリブテンオイルなどの炭化水素可塑剤オイルが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい可塑剤は、ナフテン系オイルであり、商標名Nytex(商標)4700でNynasから市販されている。
MES及びTDAEオイルは、当業者に周知であり;例えば、「Safe Process Oils for Tires with Low Environmental Impact」と題して、KGK(Kautschuk Gummi Kunstoffe),52nd year,No.12/99,pp.799-805の刊行物に述べられている。
【0048】
MESオイル(これらが「抽出」型であっても「水素処理」型であっても)又はTDAEオイルの例として、例えば、Flexon(商標)683の商品名でExxonMobilにより、Vivatec(商標)200又はVivatec(商標)500の商品名でH&R Europeanにより、Plaxolene(商標)MSの商品名でTotalにより、又はCatenex(商標)SNRの商品名でShellにより市販されている製品を挙げることができる。
C
5画分/ビニル芳香族コポリマー、詳細にはC
5画分/スチレン又はC
5画分/C
9画分コポリマーの形態の樹脂(用語「樹脂」は、固体化合物に関する定義により指定されていることを想起されたい)は、周知であり;これらは本質的に、接着剤及び塗料用の粘着付与剤としてだけでなく、タイヤゴム組成物における加工助剤としての用途から始まり使用されてきた。
C
5画分/ビニル芳香族コポリマーは、定義により、かつ公知の意味で、ビニル芳香族モノマー及びC
5画分のコポリマーである。
【0049】
例えば、スチレン、アルファ−メチルスチレン、オルト−、メタ−又はパラ−メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ−(tert−ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン及びC
9画分(又はより一般にC
8〜C
10画分)から生じる任意のビニル芳香族モノマーは、ビニル芳香族モノマーとして好適である。ビニル芳香族化合物は、スチレン又はC
9画分(又はより一般にC
8〜C
10画分)から生じるビニル芳香族モノマーであることが好ましい。
【0050】
公知の意味で、用語C
5画分(又はそれぞれ例えばC
9画分)は、石油化学又は石油精製から生じるプロセスから生じる任意の画分、5個(又はそれぞれ、C
9画分の場合は9個)の炭素原子を有する化合物を主に含む任意の蒸留画分を意味すると理解されており;例えば、C
5画分は、例示としてかつ限定されることなく、以下の化合物を含んでもよく、その相対的比率はC
5画分が得られるプロセスに従って、例えばナフサの起源及び水蒸気分解プロセスに従って変化し得る:1,3−ブタジエン、1−ブテン、2−ブテン、1,2−ブタジエン、3−メチル−1−ブテン、1,4−ペンタジエン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−ペンテン、イソプレン、そのジシクロペンタジエンダイマーの形態で存在し得るシクロペンタジエン、ピペリレン、シクロペンテン、1−メチルシクロペンテン、1−ヘキセン、メチルシクロペンタジエン又はシクロヘキセン。これらの画分は、石油産業及び石油化学において公知の任意の化学的プロセスにより得ることができる。非限定的な例として、ナフサの水蒸気分解プロセス又はガソリンの流動式接触分解プロセスを挙げることができ、これらのプロセスを、水素化及び脱水素化などの当業者に公知の、これらの画分を変換するための任意の可能な化学的処理と組み合わせることが可能である。
C
5画分/ビニル芳香族コポリマー(詳細にはC
5画分/スチレン又はC
5画分/C
9画分コポリマー)において、ビニル芳香族化合物(詳細にはスチレン又はC
9画分)は、モル分率で表して、少数のモノマーであることが好ましい。したがって、芳香族プロトンの百分率(コポリマーのプロトンの総数に関して)は、NMR解析による公知の方法で決定して、50%未満、より好ましくは1%〜25%(mol%)であることがより好ましい。
【0051】
酸化防止剤
本明細書で使用するとき、用語「酸化防止剤」は、酸化的劣化に対抗する化学物質を表す。好適な酸化防止剤として、ジフェニル−p−フェニレンジアミンが挙げられ、これらはThe Vanderbilt Rubber Handbook(1978),Pages 344-346に開示されている。特に好ましい酸化防止剤は、パラ−フェニレンジアミンであり、商標名Santoflex(商標)6PPD(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)でEastmanから市販されている。
架橋剤、硬化剤、硬化パッケージ、及び硬化プロセス
これらの組成物から作製されるエラストマーの組成物及び物品は、一般に少なくとも1つの硬化パッケージ、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの架橋剤を用いて製造され、及び/又はエラストマー組成物を硬化するためのプロセスを受ける。本明細書で使用するとき、少なくとも1つの硬化パッケージは、本産業で通常理解されるように、ゴムに硬化特性を付与することができる任意の物質又は方法を表す。好ましい助剤は硫黄である。
【0052】
加工
本発明のタイヤトレッド組成物は、当業者に公知の任意の従来の手段により、配合(混合)することができる。混合は、単一工程又は複数ステージで行ってもよい。例えば、原料を少なくとも2ステージで混合し、すなわち少なくとも1つの非生産的ステージ、続いて生産的混合ステージで混合する。用語「非生産的」及び「生産的」混合ステージは、ゴム混合分野における当業者には周知である。使用する場合は、エラストマー、ポリマー添加剤、シリカ及びシリカカプラー、並びにカーボンブラックを、一般に1つ又は複数の非生産的混合ステージで混合する。最も好ましくは、最初にポリマーを110℃〜130℃で30秒〜2分間混合し、次にシリカ、シリカカプラー及び他の原料を添加し、この組み合わせを最も好ましくは140℃〜160℃までの昇温時に30秒〜3又は4分間さらに混合する。最も望ましくは、シリカを分割して混合し、最も好ましくは2分の1、次に後の2分の1を混合する。生産的混合ステージで最終硬化剤を混合する。生産的混合ステージにおいて、先行する非生産的混合ステージの混合温度より低い温度、又は到達温度で混合を行う。
【0053】
タイヤトレッド組成物は、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが組成物内に存在する場合、多くの望ましい特性を有する。さらに、硬化組成物の混和しないポリオレフィンドメインの最大エネルギー損失(tanδ、ここで勾配はゼロである)は、−30〜10℃又は−25若しくは−20若しくは−10℃〜−5若しくは0若しくは10℃の範囲内の温度であることが好ましい。最後に、他の成分のポリマーマトリックス中に相溶化剤を含むドメインは、好ましくは20μm未満、より好ましくは10μm未満、及び最も好ましくは5μm未満;又は0.1又は0.2又は0.5又は1.0μm〜5又は10又は20μmの範囲内の大きさを有する。
【0054】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマー、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーを作製するために使用される反応物、及びタイヤトレッド組成物におけるその使用に関して本明細書に開示されるさまざまな記載要素及び数値的範囲は、本発明を記載する他の記載要素及び数値的範囲と組み合わせることができ;さらに、所与の要素に関して、本明細書に記載される任意の数値的上限と任意の数値的下限とを組み合わせることができる。本発明の特徴を、以下の非限定的な例に記載する。
【実施例】
【0055】
非晶質のプロピレンベースコポリマーの調製(PEDM 2〜4)
触媒系:触媒前駆体は、ビス((4−トリエチルシリル)フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−フルオレン−9−イル)ハフニウムジメチルであった。しかしながら、良好なジエン組み込み及びMW能力を有する他のメタロセン前駆体もまた使用することができた。
活性剤は、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであったが、しかしジメチルアニリニウム−テトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボレート及び他の非配位性アニオン型活性剤又はMAOもまた使用することができた。
【0056】
重合:PEDM 2〜4(非晶質)
重合試験を、Autoclave Engineers、Erie PA製作の連続撹拌槽型反応器(CSTR)で実施した。本試験の公称反応器圧力はより低く、1600〜1700psigであったけれども、反応器は、それぞれ2000バール(30kpsi)及び225℃の最大圧力及び温度で操作するように設定した。公称反応器容積は150mLであった。作業容積は、撹拌機のためにこれより小さく、およそ120mLであった。反応器に磁気結合型外部撹拌機(Magnedrive)を備えた。圧力トランスデューサーで反応器内の圧力を測定した。反応器温度をK熱電対を使用して測定した。反応器の側面に位置する埋め込み破裂板により、壊滅的な圧力低下に対する保護をもたらした。全ての製造ラインを、付着防止のために約120℃に加熱した。反応器は、プログラマブルロジック制御装置(PLC)により制御される電気加熱バンドを備えた。周囲への熱損失を除いて、反応器は冷却しなかった(半断熱操作)。
反応器内の変換を、供給液と溶出液の両方を試料採取するオンラインガスクロマトグラフ(GC)により監視した。GC解析には内部標準として供給されるプロピレンに存在するプロパン不純物を利用した。反応器加熱器出力(外被温度)及び触媒供給速度を調整することにより、反応器温度及び反応器壁にわたる温度差を一定に維持した。目標反応器温度を供給液内の0.5〜3mol ppmの触媒濃度で維持した。この低触媒濃度で、制御された定常状態の反応器条件の達成において、不純物制御は最も重要な因子であった。モノマー供給により輸送される不純物を制御するために、供給浄化トラップを使用した。浄化トラップは、供給ポンプの直前に位置し、連続する2つの分離床で構成された:O
2除去のための活性化銅(225℃及び1バールで水素流内で還元)、次に水分除去のためのモレキュラーシーブ(5A、270℃でN
2流内で活性化)。
【0057】
プロピレンを、反応器への液体送出用のディップレグを備えた低圧シリンダーから供給した。プロピレンシリンダーヘッド圧力を17バール(約250psig)に上昇させるために、加熱ブランケット(Ace)を使用した。このヘッド圧力上昇により、ポンプでの泡立ち点を超える圧力で、モノマーをモノマー供給ポンプヘッドへ送ることが可能となった。低圧モノマー供給により、10℃に冷やした水を使用してポンプヘッドを冷却することにより、泡形成に対しても安定化した。浄化モノマー供給液を、2バレル連続ISCOポンプ(モデル500D)により供給した。モノマー流速を、ポンプのモーター速度を調整することにより調整し、コリオリ質量流量計(Model PROline Promass 80、Endress and Hauser)により測定した。
【0058】
触媒供給溶液を、アルゴン充填乾燥ボックス(真空雰囲気)内で調製した。グローブボックス内の雰囲気を浄化して、O
2 1ppm未満及び水 1ppm未満に維持した。全てのガラス器具を最低でも4時間、110℃でオーブン乾燥し、乾燥ボックスのアンティチャンバへ熱いまま移動させた。触媒前駆体の貯蔵液及び活性剤を、乾燥ボックス内のアンバー瓶に保存していた精製トルエンを使用して調製した。アリコートを取り、新しい活性触媒溶液を調製した。活性触媒溶液をアルゴン充填乾燥ボックス内の厚肉ガラス貯蔵容器(Ace Glass,Inc.Vineland、NJ)に投入し、アルゴンで5psigまで加圧した。活性触媒溶液を、特別注文の2バレル連続高圧シリンジポンプ(PDC Machines)によりユニットまで送った。
【0059】
HPLCグレードヘキサン(95% n−ヘキサン、J.T.Baker)を溶媒として使用した。HPLCグレードヘキサンを、アルゴンで最低4時間パージし、活性塩基性アルミナ上で1回濾過した。濾過したヘキサンを、アルゴン充填乾燥ボックス内の4リットルガラス容器(Ace Glass、Vineland、NJ)に保存した。濾過したヘキサンの4リットル貯蔵容器に1.5mL(1.05g)のトリオクチルアルミニウム(Aldrich #38,655−3)を添加することにより、ヘキサンをさらに精製した。ガラス容器に5〜10psigのアルゴンのヘッド圧力を印加し、そこからヘキサンが2バレル連続ISCOポンプ(モデル500D)により反応器へ送られる、金属の供給容器に捕捉剤溶液を送った。
【0060】
エチリデンノルボルネン(ENB)を、活性塩基性アルミナを通して濾過することにより精製した。濾過したENBを、アルゴン充填乾燥ボックス内の4リットルガラス容器(Ace Glass、Vineland、NJ)に保存した。ガラス容器に5〜10psigのアルゴンのヘッド圧力を印加し、捕捉剤溶液を500mLの単一バレルISCOポンプへ送り、これにより次にジエンを反応器に供給した。
重合グレードエチレンを、Fluitron A%−200圧縮機で圧縮し、質量流量計により反応器内へ計量供給した。
重合試験中、反応器を所望の反応温度より約10〜15℃低い温度に予備加熱した。反応器が予備加熱温度に達した時点で、溶媒ポンプをオンにして、ヘキサン/トリオクチルアルミニウム捕捉剤溶液を、4リットルの捕捉剤溶液供給容器から反応器へ送った。この捕捉剤/触媒溶液の流れは、撹拌装置の上部のポートを通って反応器に入り、ポリマーが撹拌ドライブに付着することを避けた。供給容器から取った溶媒の量を監視することにより、反応器への溶媒流を確認した後、モノマー供給をオンにした。モノマーはサイドポートを通って反応器へ供給された。圧力が約100バール(約1.5kpsi)に上昇したときに、各バルブを一時的に開くことにより反応器をパージした。これで反応器内の圧力が低下し、反応器内の全てのポートが操作可能であることが確認された。全てのバルブの試験を行い、反応器が所望の反応圧力に達した後、活性触媒溶液を含むシリンジポンプを加圧した。シリンジポンプ圧力が反応器圧力を27bar(約400psi)超えたときに、空気作動する電磁バルブを開き、触媒溶液と反応器上流の溶媒流とを混合させた。反応器への触媒の到着は、発熱重合反応に起因する反応温度の上昇により示された。ラインアウト期間中に、触媒供給速度を調整して、目標の反応温度及び変換に到達させ維持した。70℃で終夜の真空乾燥後、生成物を収集し秤量した。全体の生成収量を均質化することなく、生成物のアリコートを特性決定に使用した。
【0061】
重合:PEDM 1(プロピレンベースコポリマー結晶性物質)
上述のコポリマー組成物を以下のように合成した。コポリマー組成物を、直列に連結した2つの連続撹拌槽反応器で合成した。第1コポリマー成分、未反応モノマー、及び溶媒を含有する第1反応器からの流出液に、追加のモノマーを供給して第2反応器へと送り、ここで異なるプロセス条件下で重合を継続し、第2コポリマー成分を生成した。イソヘキサンを溶媒として使用して溶液内で重合を実施した。重合プロセス中、水素添加及び温度制御を使用して、所望のメルトフローレートを達成した。活性化した触媒を、必要に応じて、目標重合温度を維持するのに効果的な量で、反応器に外部から添加した。
【0062】
第1反応器内で、第1コポリマー成分を、エチレン、プロピレン、及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと[シクロペンタジエニル(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジ−p−トリエチルシランフェニルメタン]ハフニウムジメチルとの反応生成物を含む触媒の存在下で生成した。
第2反応器内で、第2コポリマー成分を、エチレン、プロピレン、及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと[シクロペンタジエニル(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジ−p−トリエチルシランフェニルメタン]ハフニウムジメチルとの反応生成物を含む触媒の存在下で生成した。
【0063】
第2反応器から出てくる混合コポリマー溶液を失活させ、次にフラッシング又は液相分離などの従来の公知の脱揮方法を使用して脱揮し、最初に大量のイソヘキサンを除去することにより濃縮液を提供し、次に脱揮装置を使用して残留溶媒を取り去ることにより無水状態に、結果として0.5質量%未満の溶媒及び他の揮発性物質を含有する溶融ポリマー組成物を得た。溶融ポリマー組成物を、そこからポリマー組成物ペレットを水に浸漬させ固体になるまで冷却するペレタイザーへとスクリュにより進めた。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
Dynisco Kayeness Polymer Test Systems Series 4003装置を使用して、ASTM D1238及びISO C3法に従って、MFR(メルトフローレート)測定値を得た。
−80℃で10℃/分で120℃まで昇温;N
2下で平衡化することにより、DSC測定値を得た。
【0066】
配合物1〜4の試料調製
4つの配合物の配合物組成を表1に列挙する。全ての成分は、phrすなわちポリマー単位の100部当たりの部で列挙した。これらの配合物を、170℃まで加温したBrabenderミキサーを使用して単一パスで混合した。硫黄を除く全ての原料を添加し、およそ2分間、100rpmで混合した。トルクを記録し、硫黄を添加した。トルクが、硫黄を添加する前に記録した値から400単位増加した後、配合物を引いた。
【0067】
シリカトレッド配合
4つの配合物、2つの参照配合物(添加剤を含まない対照配合物)及び4つの配合例のトレッド配合物組成を表3に列記する。全ての成分は、phr、すなわちポリマー単位の100部当たりの部で列挙した。
組成物を、適切なミキサー内で、当業者に周知の2つの連続調製段階を使用して製造した。第1段階において、110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃の温度まで加温したBanburyミキサー内で成分を混合した。第1段階は硬化剤を除く全ての成分を混合した。配合物を冷却した後、同じBanburyミキサーを使用して、第2パス中に40℃〜110℃、好ましくは70℃で、硬化剤にブレンドした。
【0068】
【表3】
損失正接測定
表3に列挙した配合物を圧縮成形し、硬化してパッドにした。その後、長方形の試験片を硬化パッドから切り離し、長方形形状ねじれにおける動的機械試験のためにARES(Advanced Rheometric Expansion System、TA instruments)に据えた。室温(20℃)、5.5%歪みまで、10Hzで歪み掃引を最初に実行し、次に4%歪み、10Hz、−35℃〜100℃、2℃/分の昇温速度で温度掃引を実行した。貯蔵弾性率及び損失弾性率を損失正接値と同様に測定した。より良好な湿潤牽引性のために、0℃未満の温度でより高い損失正接値を有することが好ましいが、一方、より良好な転がり抵抗のためには、60℃における損失正接はより低いことが好ましい。表4に列挙するように、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーを添加することにより、60℃における損失正接値を著しく増加させることなく、0℃の温度における損失正接値は増加する。
【0069】
【表4】
プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーをトレッド配合物に添加することにより、0℃におけるtanδと60℃におけるtanδ値の従来のトレードオフの関係を著しく改善することができる。例えば、
図1を参照されたい。
図1の参照は、添加剤なしのトレッド配合物である。
さらに配合工程により、硬化可能性及び/又は充填剤との相互作用を改善するために、適切な酸化防止剤(プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーに混和性)、充填剤(カーボンブラック)を濃縮する能力、及びプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの官能化ももたらされる。
【0070】
高結晶化プロピレン−エチレン−ジエンターポリマー
本発明のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの高結晶化型もまた生成した。プロセス及び反応条件は、C2対称メタロセン触媒を使用したことを除き、開示されたものと同様である。この例において、ジメチルシリルビス(インデニル)ハフニウムジメチル触媒前駆体を上述のボレートと共に使用した。得られたポリマーは、15%超、最も好ましくは25%超、又は15、若しくは25%〜50、若しくは70、若しくは80%の範囲内のアイソタクチックな結晶化度を有することが好ましい。表5は、本発明のPEDMの4つの異なる高結晶化変形体の結果の要約である。
【0071】
【表5】
これらの高結晶化PEDM類似体は、表6に概略を示すものなどのタイヤトレッドに有用な組成物内に組み込むことができる。これらは、本明細書に記載される表7に概略を示すように、弾性に関して試験を行った。
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
ここに、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマータイヤトレッド組成物について述べてきたが、本明細書に記載される番号付きパラグラフを示す:
1.組成物の質量に対して下記の範囲内の成分:5〜75質量%のジエンエラストマー;0〜40質量%の加工オイル;20〜80質量%の充填剤;硬化剤;並びに2〜40質量%のエチレン及び/又はC
4−C
20αオレフィンに由来する単位を含み、かつDSCにより決定して0J/g〜80J/gの融解熱を有する5〜30質量%のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマー、あるいはその成分の硬化反応生成物を含むタイヤトレッド組成物。
2.充填剤が、シリカベースの充填剤である、パラグラフ番号1に記載のタイヤトレッド組成物。
3.充填剤が、カーボンブラック充填剤である、パラグラフ番号1及び2に記載のタイヤトレッド組成物。
4.充填剤が、シリカベースの充填剤とカーボンブラック充填剤とのブレンドである、パラグラフ番号1〜3のいずれか1パラグラフに記載のタイヤトレッド組成物。
5.プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、0.5〜10質量%のエチリデンノルボルネンを含む、パラグラフ番号1〜4のいずれか1パラグラフに記載のタイヤトレッド組成物。
6.プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、2質量%〜20質量%のエチレンを含む、パラグラフ番号1〜5のいずれか1パラグラフに記載のタイヤトレッド組成物。
7.プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、5質量%〜95質量%のプロピレンを含む、パラグラフ番号1〜6のいずれか1パラグラフに記載のタイヤトレッド組成物。
8.タイヤトレッド組成物のTg(℃)が、0〜−60である、パラグラフ番号1〜7のいずれか1パラグラフに記載のタイヤトレッド組成物。
9.プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの230℃、2.16kg重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.2〜10g/10分である、パラグラフ番号1〜8のいずれか1パラグラフに記載のタイヤトレッド組成物。
10.ジエンエラストマーが、スチレンコポリマー、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー又はこれらのブレンドである、パラグラフ番号1〜9のいずれか1パラグラフに記載のタイヤトレッド組成物。
11.1〜10の番号の実施形態のいずれか1つに記載のタイヤトレッドにおける湿潤牽引性能及び転がり抵抗のバランスを保つ方法であって、
少なくとも充填剤、ジエンエラストマー、及び硬化剤を、1つ又は複数のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーと組み合わせて、タイヤトレッドを形成することであって、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、2質量%〜40質量%のエチレン及び/又はC
4−C
20αオレフィンに由来する単位、0.5〜10質量%のジエンに由来する単位を含み、かつDSCにより決定して0J/g〜80J/gの融解熱を有すること;
成分を硬化させて、タイヤトレッドを形成すること;を含み、
他の成分に対するプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーのレベル及びそのコモノマー含有量は、タイヤトレッドの湿潤牽引性及び転がり抵抗のバランスを改善するために変化し得る、方法。
【0075】
記載されるタイヤトレッド組成物におけるプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの使用も開示する。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲において、用語「含む(including)」及び「含む(comprising)」は、オープンエンドな用語であり、「含むが、…に限定されない」ことを意味すると解釈すべきである。これらの用語は、より制限的な用語「から本質的になる」及び「からなる」を包含する。
【0077】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象を包含することに留意されたい。同様に、用語「a」(又は「an」)、「1つ又は複数の」及び「少なくとも1つの」は、本明細書において互換的に使用することができる。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「特徴とする」及び「有する」は、互換的に使用することができることにも留意されたい。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 組成物の質量に対して下記の範囲内の成分:
5〜75質量%のジエンエラストマー;
0〜40質量%の加工オイル;
20〜80質量%の充填剤;
硬化剤;並びに
2〜40質量%のエチレン及び/又はC4−C20αオレフィンに由来する単位、0.5〜10質量%のジエン由来の単位を含み、かつDSCにより決定して0J/g〜80J/gの融解熱を有する5〜30質量%のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマー
を含むタイヤトレッド組成物。
2. 充填剤が、シリカベースの充填剤である、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
3. 充填剤が、カーボンブラック充填剤である、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
4. 充填剤が、シリカベースの充填剤とカーボンブラック充填剤とのブレンドである、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
5. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、0.5〜10質量%のエチリデンノルボルネンを含む、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
6. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、2質量%〜20質量%のエチレンを含む、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
7. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、60質量%〜95質量%のプロピレンを含む、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
8. タイヤトレッド組成物のTg(℃)が、0〜−60である、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
9. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの230℃、2.16kg重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.2〜10g/10分である、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
10. ジエンエラストマーが、スチレンコポリマー、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー又はこれらのブレンドである、上記1に記載のタイヤトレッド組成物。
11. 組成物の質量に対して下記の範囲内の成分:
5〜75質量%のジエンエラストマー;
0〜40質量%の加工オイル;
20〜80質量%の充填剤;
硬化剤;並びに
2〜40質量%のエチレン及び/又はC4−C20αオレフィンに由来する単位、0.5〜10質量%のジエン由来の単位を含み、かつDSCにより決定して0J/g〜80J/gの融解熱を有する5〜30質量%のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマー
の硬化反応生成物を含むタイヤトレッド。
12. 充填剤が、シリカベースの充填剤である、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
13. 充填剤が、カーボンブラック充填剤である、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
14. 充填剤が、シリカベースの充填剤とカーボンブラック充填剤とのブレンドである、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
15. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、0.5〜10質量%のエチリデンノルボルネンを含む、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
16. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、2質量%〜20質量%のエチレンを含む、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
17. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、60質量%〜95質量%のプロピレンを含む、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
18. タイヤトレッド組成物のTg(℃)が、0〜−60である、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
19. 230℃、2.16kg重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.2〜10g/10分である、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
20. ジエンエラストマーが、スチレンコポリマー、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー又はこれらのブレンドである、上記11に記載のタイヤトレッド組成物。
21. タイヤトレッドにおける湿潤牽引性能及び転がり抵抗のバランスを保つ方法であって、
タイヤトレッドを形成するために、少なくとも充填剤、ジエンエラストマー、及び硬化剤を、1つ又は複数のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーと組み合わせることであって、プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーは、2質量%〜40質量%のエチレン及び/又はC4−C20αオレフィンに由来する単位、0.5〜10質量%のジエンに由来する単位を含み、かつDSCにより決定して0J/g〜80J/gの融解熱を有すること;
タイヤトレッドを形成するために、成分を硬化させること;を含み、
他の成分に対するプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーのレベル及びそのコモノマー含有量は、タイヤトレッドの湿潤牽引性及び転がり抵抗のバランスを改善するために変化し得る、方法。
22. 充填剤が、シリカベースの充填剤である、上記21に記載の方法。
23. 1つのプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーを含み、かつプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーの量が、5質量%〜30質量%の範囲内で変化する、上記21に記載の方法。
24. 1つ又は複数のプロピレン−エチレン−ジエンターポリマー内のエチレン及び/又はC4−C20αオレフィンに由来する単位のレベルが、2質量%〜40質量%の範囲内で変化し;かつジエン(例えば、エチリデンノルボルネン)のレベルが、0.5〜10質量%の範囲内で変化する、上記21に記載の方法。
25. プロピレン−エチレン−ジエンターポリマーが、総量が5質量%〜30質量%の範囲内でさまざまな量の異なるプロピレン−エチレン−ジエンターポリマーのブレンドを含む、上記24に記載の方法。