特許第6405477号(P6405477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405477コンピュータを用いたオーダーメード家具の設計及び製造方法、システム、及びそのためのプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405477
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】コンピュータを用いたオーダーメード家具の設計及び製造方法、システム、及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   G06F17/50 680B
   G06F17/50 604G
   G06F17/50 608A
【請求項の数】6
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-3454(P2018-3454)
(22)【出願日】2018年1月12日
(62)【分割の表示】特願2017-533043(P2017-533043)の分割
【原出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-81718(P2018-81718A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-18216(P2016-18216)
(32)【優先日】2016年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501390079
【氏名又は名称】ドゥーマンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126826
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健一
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩幸
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−074973(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/064971(WO,A1)
【文献】 特開2007−164576(JP,A)
【文献】 特開平10−162048(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0201189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直方体形状のパーツ部材からなる家具製品をコンピュータ画面上で設計し寸法を変更するために、コンピュータが実行する方法であって、
前記コンピュータが、
三次元座標系を有するコンピュータ画面上にパーツ部材を直方体として表示し、表示されたパーツ部材の一つの面を面に対して垂直方向に自由に移動することによって、前記パーツ部材のXYZ方向の寸法を、前記一つの面を垂直方向に移動した距離だけ延長又は縮小可能に設定し、

第一のパーツ部材と第二のパーツ部材を、前記第一のパーツ部材の前記画面のXY二次元平面と平行な第一の面が、前記第二のパーツ部材の前記画面のXY二次元平面と平行な第1の面と対面するように配置し、

前記第一のパーツ部材の前記第一の面と、前記第二のパーツ部材の前記第1の面との間の前記画面のZ軸上の距離を所定の値に固定し、

前記第一のパーツ部材の前記画面のYZ二次元平面と平行な第二の面と、前記第二のパーツ部材の前記画面のYZ二次元平面と平行な第2の面との間の前記画面のX軸上の距離を所定の値に固定し、

前記第一のパーツ部材の前記第二の面と同じ直方体において相対する第三の面と、前記第二のパーツ部材の第2の面と同じ直方体において相対する第3の面との間の前記画面のX軸上の距離を所定の値に固定し、

前記第一のパーツ部材の前記画面のXZ二次元平面と平行な第四の面と、前記第二のパーツ部材の前記画面のXZ二次元平面と平行な第4の面との間の前記画面のY軸上の距離を所定の値に固定し、

前記第二のパーツ部材の一つの面との面間距離が固定された前記第一のパーツ部材の一つの面を、当該面に対して垂直方向に移動することによって、前記第一のパーツ部材の前記垂直方向の寸法を前記移動した距離だけ延長又は縮小し、さらに、前記第一のパーツ部材の一つの面の移動に連動して、前記第二のパーツ部材の前記一つの面が同じ垂直方向に移動され、それによって前記第二のパーツ部材の前記垂直方向の寸法が、前記第一のパーツ部材の一つの面を前記移動した距離だけ延長又は縮小される、

家具製品をコンピュータ画面上で設計して寸法を変更するための方法。
【請求項2】
前記第一のパーツ部材のZ軸方向の寸法を所定の値に固定し、前記第一のパーツ部材のXY二次元平面に平行な一つの面をZ軸方向に移動すると、前記第一のパーツ部材の位置が前記一つの面を移動した距離だけZ軸方向に移動され、それに連動して、前記第二のパーツ部材のZ軸方向の寸法が前記一つの面を移動した距離だけ延長又は縮小される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二のパーツ部材のY軸方向の寸法を所定の値に固定し、前記第一のパーツ部材の前記XZ二次元平面に平行な一つの面をY軸方向に移動すると、前記第一のパーツ部材のY軸方向の寸法が前記移動した距離だけ延長又は縮小され、それに連動して、前記第二のパーツ部材の位置が前記一つの面を移動した距離だけY軸方向に移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の直方体形状のパーツ部材からなる家具製品をコンピュータ画面上で設計し寸法を変更するためのシステムであって、

三次元座標系を有するコンピュータ画面上にパーツ部材を直方体として表示し、表示されたパーツ部材の一つの面を面に対して垂直方向に自由に移動することによって、前記パーツ部材のXYZ方向の寸法を、前記一つの面を垂直方向に移動した距離だけ延長又は縮小可能に設定する手段と、

第一のパーツ部材と第二のパーツ部材を、前記第一のパーツ部材の前記画面のXY二次元平面と平行な第一の面が、前記第二のパーツ部材の前記画面のXY二次元平面と平行な第1の面と対面するように配置する手段と、

前記第一のパーツ部材の前記第一の面と、前記第二のパーツ部材の前記第1の面との間の前記画面のZ軸上の距離を所定の値に固定する手段と、

前記第一のパーツ部材の前記画面のYZ二次元平面と平行な第二の面と、前記第二のパーツ部材の前記画面のYZ二次元平面と平行な第2の面との間の前記画面のX軸上の距離を所定の値に固定する手段と、

前記第一のパーツ部材の前記第二の面と同じ直方体において相対する第三の面と、前記第二のパーツ部材の第2の面と同じ直方体において相対する第3の面との間の前記画面のX軸上の距離を所定の値に固定する手段と、

前記第一のパーツ部材の前記画面のXZ二次元平面と平行な第四の面と、前記第二のパーツ部材の前記画面のXZ二次元平面と平行な第4の面との間の前記画面のY軸上の距離を所定の値に固定する手段と、を備え、

前記第二のパーツ部材の一つの面との面間距離が固定された前記第一のパーツ部材の一つの面を、当該面に対して垂直方向に移動することによって、前記第一のパーツ部材の前記垂直方向の寸法を前記移動した距離だけ延長又は縮小し、さらに、前記第一のパーツ部材の一つの面の移動に連動して、前記第二のパーツ部材の前記一つの面が同じ垂直方向に移動され、それによって前記第二のパーツ部材の前記垂直方向の寸法が、前記第一のパーツ部材の一つの面を前記移動した距離だけ延長又は縮小される、

家具製品をコンピュータ画面上で設計して寸法を変更するためのシステム。
【請求項5】
前記第一のパーツ部材のZ軸方向の寸法を所定の値に固定し、前記第一のパーツ部材のXY二次元平面に平行な一つの面をZ軸方向に移動すると、前記第一のパーツ部材の位置が前記一つの面を移動した距離だけZ軸方向に移動され、それに連動して、前記第二のパーツ部材のZ軸方向の寸法が前記一つの面を移動した距離だけ延長又は縮小される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第二のパーツ部材のY軸方向の寸法を所定の値に固定し、前記第一のパーツ部材の前記XZ二次元平面に平行な一つの面をY軸方向に移動すると、前記第一のパーツ部材のY軸方向の寸法が前記移動した距離だけ延長又は縮小され、それに連動して、前記第二のパーツ部材の位置が前記一つの面を移動した距離だけY軸方向に移動する、請求項4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いたオーダーメード家具の設計及び製造方法、システム、及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータを用いて立体構造物を作図設計する方法としては、3次元CAD が一般に用いられている。3次元CADを用いることで、家具を画面上で希望する寸法、形状に三次元的に設計することができる。さらに、3次元CADで設計した家具のデータをCAD/CAMを用いることによってNCデータとして生成して、NC工作機械を用いて部材を加工して家具を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2001−92865 CAD図面作成方法及び装置並びに寸法編集方法及び装置並びに記憶媒体 キャノン株式会社 2001年4月6日公開公報
【非特許文献】
【0004】
複合加工機用CAPPシステムの開発 日本機械学会論文集(C編)78巻791号(2012−7)濱田大地 他 2012年3月24日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元CADは、複雑多様な構造を有する立体をPCを使って簡単かつ自在に設計できる便利なツールである。3次元CADは、立体構造物をPC画面の三次元座標空間に配置して、立体の頂点、稜線、面を、三次元座標系のXYZ座標位置に基づいて記述し、算出する。
【0006】
しかし、家具が複数の部材から構成される場合に、3次元CADでは各部材のサイズ、形状はPC画面のXYZ座標でそれぞれ記述されるが、1つの部材の位置・構造を示す情報には、他の部材との接続関係を示す情報は直接含まれない。それ故、 1つの部材の寸法、形状を変更すると、その部材の周囲にある他の部材の面、稜線、頂点との連結関係をPC画面上のXYZ座標上で探索して、その結果に基づいて他の部材の位置・構造を改めて計算して設定し直さなければならない。
【0007】
さらに、家具の構成部材には、通常多数の穴あけ、切り欠き、溝掘り等の形状の加工が付与される。3次元CADで家具の構成部材をそのような穴あけ、切り欠き、溝掘り等が付与された立体形状のものとして設計すると、いったん設計した後に寸法を変更しようとすると、 その寸法の変更がたとえわずかなものであったとしても、個々の構成部材の寸法と、穴あけ、切り欠き、溝掘り等の加工を、変更後の寸法に合わせて改めて全て設定し直さなければならなくなる。家具の構成部材の数が多数である場合には、そのための作業は膨大なものになる。
【0008】
他方、3次元CADは立体構造物をどのような複雑な形状でも自在に設計できるという点が大きな長所であるが、家具、とりわけ木工家具では、構成部材に施す加工は、ルーター、溝堀機、ダボ打ち機等の加工機械の側で施すことができる特定の種類の加工に限られるので、そのような加工機械が処理できる特定の限られた種類の加工以上に複雑な形状を設計する必要性は極めて少ない。
【0009】
以上のような状況の下で、従来の3次元CADを用いる方法では、多数の部材からなる家具を顧客の要望に応じて臨機応変に寸法を変更することは実際上難しかった。また、3次元CADで設計した家具の部材を家具の製造工場が備える加工機械にかけて、多くの構成部材を商業的に効率的に加工することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の発明者等は鋭意検討した結果、多数の構成部材からなる家具を、複数の直方体(空間)の立体的組み合わせとして捉えることができることに想到した。すなわち、家具を構成する個々の部材は、必ずしも直方体形状ではないが、構成部材の基本的な輪郭を全て単純な直方体として捉え、直方体の面に切り欠き、溝掘り、穴あけ等の加工が付与されて構成部材の実際の形状が構成されると見ることができる。構成部材の輪郭が全て単純な直方体であれば、複数の構成部材を組み立てた家具も同様に単純な直方体を組み合わせた立体構造として捉えることができる。
【0011】
家具の基本構造が複数の単純な直方体の組み合わせだとすると、各直方体の各面は互いに平行又は垂直であるので、家具の立体構造を1)複数の直方体の互いに平行な面と面の間の距離関係と、2)各直方体の互いに平行な面を相手面に対して垂直方向に投影することによって得られる同一平面上における面と面との間の二次元的位置関係、として捉えて、そのように捉えられた各構成部材、及びそれらの相互の位置関係に基づいて家具を設計することが可能になる。上記発見に基づいて、本発明の発明者等は以下の発明に至った。
【0012】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法は、板材等の家具製品を構成する基本的部材を「パーツ部材」とし、パーツ部材の輪郭を全て直方体として設定する。パーツ部材を組み合わせて家具製品の一定の機能を発揮する「ユニット」を作成し、ユニットに外接する直方体空間を「ユニット空間」とする。さらに、複数のユニットを組み合わせて「製品」とし、製品に外接する直方体空間を「製品空間」とする。これらの各空間の相互間の上位下位のヒエラルキー関係(パーツ部材→ユニッ空間→製品空間)に基づいてツリー構造を設定する。ツリー構造においては、下位の直方体空間の位置は、それよりも一つ上位の直方体空間を基準として設定することができる。
【0013】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法では、製品が複数のユニットから構成され、かつ上記一つのパーツ部材(第一のパーツ部材)と他のパーツ部材(第二のパーツ部材)が互いに別々のユニットに属する場合には、当該別々のユニットによって構成される一つの製品の製品空間にさかのぼり、第一のパーツ部材→第一のユニット空間→製品空間→第二のユニット空間→第二のパーツ部材という経路で上記一つのパーツ部材と他のパーツ部材との位置関係を特定することができる。
【0014】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法では、一つ又は複数のパーツ部材と、当該パーツ部材によって構成されるユニットのユニット空間との間で、ユニット空間の一つの面と、それと平行に対応するパーツ部材の一つの面との間の面間距離を指定することによって互いの位置関係を設定することができる。ユニット空間の面とパーツ部材の対応する面との間の距離をユニット空間・パーツ部材面関連付けによって指定した状態で、ユニット空間の6面の一つの面を当該面に対して垂直方向に移動すると、移動されたユニット空間の一つの面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされたパーツ部材の面が、ユニット空間・パーツ部材面関連付けで指定された面間距離を保ちながら、ユニット空間の面の移動に連動して移動する。
【0015】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法では、一つのパーツ部材の6面の一つの面と他のパーツ部材の平行な面との間の面間距離を指定するパーツ部材面関連付けをすることによって両者の位置関係を設定することができる。ユニットを構成する複数のパーツ部材の各面が互いにパーツ部材面関連付けされた状態で、パーツ部材の6面の一つの面を当該面に対して垂直方向に移動すると、そのパーツ部材の面とパーツ部材面関連付けされた他のパーツ部材の面がパーツ部材面関連付けで指定された面間距離を保って連動して移動する。
【0016】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法では、一つのユニットのユニット空間の6面の一つの面と他の一つのユニットのユニット空間の平行な面との間の面間距離を指定するユニット空間面関連付けをすることによって両者の位置関係を設定することができる。製品を構成する複数のユニットのユニット空間の各面が互いにユニット空間面関連付けされた状態で、一つのユニット空間の一つの面を当該面に対して垂直方向に移動すると、当該一つの面とユニット空間面関連付けされた他の一つのユニット空間の面がユニット空間面関連付けで設定された関係を保って連動して移動する。
【0017】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法では、一つのパーツ部材の一つの面のXY座標で指定される位置を、当該面と平行に対応する他のパーツ部材の一つの面のXY座標で指定される位置として座標変換する。
【0018】
好ましくは、第一のパーツ部材と第二のパーツ部材とを、第一のパーツ部材の第一の面と第二のパーツ部材の第二の面とが互いに平行に直面するように画面上に配置し、前記第一と第二のパーツ部材の各面の長方形の一つの角を原点として当該角から直交して延びる二辺をX軸、Y軸として設定したXY座標を設定して、前記第一の面のXY座標で指定される位置を第一の位置として特定する。前記第一のパーツ部材の第一の面を前記第二のパーツ部材の第二の面に対して垂直方向に投影することによって、前記第一の面と前記第二の面との二次元的位置関係を算出する。前記算出した前記第一の面と前記第二の面との二次元的位置関係に基づいて、前記第一の面のXY座標で特定された第一の位置に対応する前記第二の面上の位置を前記第二の面のXY座標を用いて表現する。
【0019】
一つのパーツ部材と他の一つのパーツ部材とが一つのユニットを構成している場合には、当該ユニットを構成する各パーツ部材と当該ユニットのユニット空間との三次元的位置関係をユニット空間を基準として特定する。上記ユニット空間と各パーツ部材の相互の位置関係に基づいて、一つのパーツ部材の一つの面のXY座標で指定された位置を、当該一つの面と平行に対応する他の一つのパーツ部材の面に対して垂直に投影する。前記一つのパーツ部材の面を垂直に投影することによって前記他の一つのパーツ部材の面で特定される位置を前記他の一つのパーツ部材の面のXY座標で表現する。このように設定した上で、前者の一つのパーツ部材の面のXY座標で特定される加工付与位置を変更すると、後者の他の一つのパーツ部材の面の加工付与位置のXY座標を連動して変更することが可能になる。
【0020】
前記一つのパーツ部材と他の一つのパーツ部材とが一つの製品を構成する異なるユニットに属する場合には、前記異なるユニットによって構成される製品の製品空間にさかのぼることによって上記一つのパーツ部材のパーツ部材と他の一つのパーツ部材のパーツ部材との位置関係を算出する。それによって算出された両者の位置関係に基づいて、二つの面の相互間でXY座標変換を行うことで、異なるユニットに属する二つのパーツ部材の面上の加工付与位置を連動して変更することが可能になる。
【0021】
好ましくは、パーツ部材の直方体の一つの面の長方形の横長をpとし、縦長をqとすると、加工を付与する位置の座標位置は、直方体の面の長方形の角を原点とし当該角から延びる二辺をX軸、Y軸とする2次元座標系において、X座標とY座標をそれぞれp及び/又はqの関数(f(p), f(q))として設定することができる。このように設定した上で、パーツ部材の直方体の寸法を変更すると、p及び/又はqの値が変更されて、関数の計算式に従ってパーツ部材の各6面上の加工付与位置のXY座標を、全て自動的に連動して変更することが可能になる。
【0022】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法では、パーツ部材である板材が、芯材と、芯材の木口に貼付された木口材と、芯材の表面に貼付された表面材からなる場合には、パーツ部材の直方体を分割して、木口材空間と、表面材空間と、芯材空間を設定することができる。木口材空間と、表面材空間と、芯材空間は、上述したツリー構造の最下層に位置づけられる直方体空間である。
【0023】
好ましくは、木口材と表面材の厚さを固定値とし、芯材の厚さを可変値と設定する。このように設定した上で、パーツ部材の寸法を変更すると、パーツ部材の変更後の寸法に合わせて、木口材と表面材の厚さは変わらずに、芯材の厚さ寸法だけが変更される。
【0024】
パーツ部材に芯材空間、木口材空間、表面材空間を設定する方法としては、寸法を可変に設定した芯材空間に木口材空間及び/又は表面材空間を貼り付けてパーツ部材を構成し、芯材空間、木口材空間、表面材空間の各寸法の合計がパーツ部材の寸法となるように設定することも可能である。その場合のパーツ部材、芯材空間、木口材空間、表面材空間の関係は、パーツ部材を分割して木口材空間と、表面材空間と、芯材空間を設定した場合と同じである。
【0025】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法では、加工の位置は原則としてパーツ部材の直方体の面上に入力すれば足り、パーツ部材を分割した木口材空間、表面材空間、芯材空間には入力しない。加工機械で穴あけ、溝掘り等の加工を施す対象は、パーツ部材である板材であり、板材に加工が施された結果、その板材の表面材、木口材、芯材に穴あけ、溝掘り等の加工が付与されるので、板材のパーツ部材とは別に、木口材空間、表面材空間、芯材空間にいちいち加工付与を入力する必要はない。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法を用いると、家具を単純な直方体の組み合わせと直方体の面に対して登録する加工として設計することができるので、家具が多数の様々な寸法の部材からなる複雑な構造を有する場合であっても、容易に設計でき、かつ設計した後にも顧客の要望に応じて自由に設計変更して、かつ変更した加工を付与することが可能である。
【0027】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法を用いると、家具が複数の異なるユニットからなる場合であっても、異なるユニットに属する複数のパーツ部材に付与される加工の位置の相互間の関係を、上記システムによってコンピュータで容易に算出することができる。その結果、一つのパーツ部材に対する寸法変更を入力した場合に、それに伴って他のパーツ部材に生じる加工位置の変更を自動的に算出して出力できる。一つのパーツ部材に対する寸法変更のたびに、他のパーツ部材に付与する加工の位置を付け直す必要がない。
【0028】
本発明の一つの実施態様のシステム/方法を用いると、最小構成部材である表面材、木口材、芯材等を含む家具を構成する全ての部材の構成明細(BOM)と加工明細を自動的に生成し、家具製造工場に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施態様であるオーダーメード家具の設計及び製造システムの全体構成図を示す。
図2図2は、本発明の一実施態様であるオーダーメード家具の設計システムの内部構成を示す。
図3図3(A)は、本発明の一実施態様であるユニット設計システムのPC画面の例を示す。図3(B)は、本発明の一実施態様であるユニット組立システムのPC画面の例を示す。
図4図4(A)は、本発明の実施態様であるパーツ部材の直方体を木口材空間、表面材空間、芯材空間に分割した例を示す。図4(B)は、本発明の実施態様であるパーツ部材の直方体を木口材空間、表面材空間、芯材空間に分割した例を示す。図4(C)は、本発明の実施態様であるパーツ部材の直方体を木口材空間、表面材空間、芯材空間に分割した例を示す。
図5図5(A)は、本発明の一実施態様における二つのパーツ部材のパーツ部材面関連付け、及びユニット空間の設定の例を示す。図5(B)は図5(A)の天板104C面に設定されたxy座標におけるダボ穴の位置をC方向から見た図を示す。図5(C)は図5(B)の天板104C面に設定されたダボ穴の位置を左側板102D面に設定されたXY座標で表した図を示す。
図6図6は、本発明のシステムを用いて設計された書籍棚を示す。
図7図7(A)は、図6の書籍棚のキャビネット100を示す。図7(B)は、図7(A)のキャビネット100の天板104の104C面に設けられたダボ穴の位置を示す。図7(C)は、図7(B)の天板104C面に設けられたダボ穴が102D面に転写されて設けられるダボ穴の位置を102D面のXY座標で表した図を示す。
図8図8は、図7のキャビネットのパーツ部材の相互間に付与されたパーツ部材面関連付けの例を示す。
図9図9は、図7のキャビネット100のユニット空間の6面とパーツ部材の面との間に付与されたユニット空間・パーツ部材面関連付けを示す。
図10図10(A)は図6の棚板106の位置を基準にして左側板102にダボ穴加工を付与する例を示す。図10(B)は、図10(A)の左側板102D面にダボ穴を付与するために棚板106C面のXY座標を用いて仮想的に設定される基準位置を示す。図10(C)は、図10(B)に示す棚板106C面のXY座標を用いて仮想的に設定される基準位置に基づいて102D面に設けられるダボ穴の位置を102D面のXY座標で表した図を示す。
図11図11は、図6の書籍棚の可動棚の位置を変更したことに伴うダボ穴の位置の変更を示す。
図12図12は、図6の書籍棚の寸法を変更したことに伴うダボ穴の位置の変更を示す。
図13図13は、図6の書籍棚の可動棚の位置を変更したことに伴うダボ穴の位置の変更を示す。
図14図14は、本発明の一実施態様のシステムを用いて設計された図6の書籍棚の構成明細(BOM)データの例を示す。
図15図15(A)は本発明の一実施態様のシステムを用いて設計された図6の書籍棚のキャビネットのパーツ部材の面に施す加工明細の例を示す。図15(B)は本発明の一実施態様のシステムを用いて設計された図6の書籍棚の高さ10mm低くした場合の加工明細を示す。図15(C)は本発明の一実施態様のシステムを用いて設計された図6の書籍棚の可動棚板の高さ位置を10mm下げた場合の加工明細を示す。
図16図16(A)は、本発明の一実施態様のシステムを用いて設計された図6の書籍棚の平面図を示す。図16(B)は、本発明の一実施態様のシステムを用いて設計された図6の書籍棚の正面図を示す。図16(C)は、本発明の一実施態様のシステムを用いて設計された図6の書籍棚の右側面図を示す。
図17図17(A)は、本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の(A)右側板の正面図、平面図、側面図である。図17(B)は、本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の(B)左側板の正面図、平面図、側面図である。図17(C)は、本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の(C)天板の正面図、平面図、側面図である。図17(D)は、本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の(D)背板の正面図、平面図、側面図である。図17(E)は、本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の(E)地板の正面図、平面図、側面図である。図17(F)は、本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の(F)棚板106の正面図、平面図、側面図である。
図18図18は、本発明の一実施態様のシステムで設計する家具に用いる部材の価格と調達期間のマスターデータの例を示す。
図19図19は、本発明の一実施態様のシステムを用いてオーダーメード家具を設計し、受注し、製造発注するフローを示す。
図20図20(A)は、本発明のシステムを用いて設計された引出付書籍棚の実施例を示す。図20(B)は、本発明のシステムを用いて設計された引出付書籍棚の引出し内箱の実施例を示す。
図21図21は、本発明のシステムを用いて設計された扉付書籍棚の実施例を示す。
図22図22は、本発明の一実施態様のシステムで設計された家具の部材に付与する加工の例を示す。
図23図23は、本発明の一実施態様における加工データの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下図面を用いながら本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態を説明するために用いる各用語の意味について詳細に説明する。
【0031】
<家具>
本発明の実施形態において「家具」とは、収納棚、キッチン棚、ユニットバス等の住宅設備を広く含む。家具を構成する部材は主に木製であるが、特定の材料に限られず、プラスチック、金属、石材、大理石、或いはガラス製であってもよい。
【0032】
<ユニット設計システム>
本発明の一つの実施形態において「ユニット設計システム」とは本発明のシステムの一部をなすツールをいう。ユニット設計システムは、家具のパーツ部材のパーツ部材を作成し、パーツ部材の各6面の長方形のXY座標で指定された位置に加工情報を付与し、さらに加工情報を付与された一つ又は複数のパーツ部材からユニットを作成する。
【0033】
<ユニット組立システム>
本発明の一つの実施形態において「ユニット組立システム」とは、ユニット設計システムで作成されたユニットを組み合わせて家具製品を作成するためのツールである。ユニット組立システムは画面上でユニット空間の位置を移動させ、組み合わせて寸法を変更することによって、顧客の希望する寸法と形状の家具を設計し、設計した家具製品の品番を付与し、かつ家具製品の部材のBOMデータと加工明細データを出力する。
【0034】
<パーツ部材>
本発明の一つの実施形態において「パーツ部材」とは、板材等の家具を構成する基本的部材をいう。本発明の実施形態では、パーツ部材の輪郭は全て直方体形状とし、直方体形状の輪郭に対して、穴、溝、切欠き等の加工が施されて実際の形状を形作るものとして理解される。本発明の実施形態においては、パーツ部材はPC画面上で直方体空間として設計される。パーツ部材の直方体の縦横厚さの寸法は、PC画面上に設定されたXYZ座標(ローカル座標)の原点からX軸、Y軸、Z軸方向の長さとして設定される。パーツ部材の各寸法は、それぞれ可変値又は固定値として設定される。通常は、板材の厚みは一定とされるので、縦と横方向の値を可変とし、厚さ方向の値を固定として設定する。直方体の各6面のXY座標で指定される位置には、選択した加工が登録される。
【0035】
<付属部品>
本発明の実施形態において「付属部品」とは、ダボ、ビス等、家具のパーツ部材の付属物として用いられる部品をいう。ダボ、ビス等の付属部品は、そのサイズが規格によって決まっており、パーツ部材の寸法に合わせて選択又は変更する必要がないので、通常は付属部品について直方体空間を設定することはせずに、決まった規格のダボ、ビス等をメモリにマスター登録して、パーツ部材の面の指定された位置に適用する。パーツ部材の面に適用される付属部品は、パーツ部材のデータと共に構成明細(BOM)で出力される。
【0036】
<パーツ金具部品>
本発明の実施形態において、ヒンジ金具、扉の取手、引出のレール等は、家具のパーツ部材に取り付けられて用いられるパーツ金具部品であるが、これらはパーツ部材と同様に取扱い、その最小の三次元外接直方体空間を輪郭として設定する。ヒンジ金具、扉の取手、引出のレール等は非直方体形状であるが、部材の輪郭自体は直方体とし、直方体に対して切削、切欠き、穴開け等の加工を施すことによって、実際の形状が構成されるものとして設定する。
【0037】
ヒンジ金具、扉の取手、引出しのレール等はパーツ部材の寸法に合わせて数、サイズを選択又は変更する必要があるので、ヒンジ金具、扉の取手、引出のレール等についてはそれらの外接直方体空間を設定し、PC画面上でXYZ軸方向の寸法を変更することで直方体の縦横厚さを変更できるようにする。必要な場合には、ヒンジ金具、扉の取手、引出のレールをパーツ部材ではなくダボ、ビス等のような付属品として設定することも可能である。逆にダボ、ビス等をパーツ金具部品として扱い、これらの外接直方体空間を設定して、寸法の選択又は変更を可能にすることも可能である。
【0038】
<ユニット>
本発明の一つの実施形態において「ユニット」とは、製品の構成単位となる立体をいう。複数のパーツ部材を組み合わせて一つのユニットとして設定することも可能であるし、一つのパーツ部材を単独でユニットとして設定することも可能である。本発明の実施形態において、複数のパーツ部材を組み合わせた製品において、何をパーツ部材、ユニット、又はユニットとユニットの組み合わせとするかは、設計者の設計事項である。設計者は部材を他の立体の一部として固定するか、独立に配置可能とするか等の必要に応じて設定することができる。
【0039】
本発明の実施形態において、複数のパーツ部材を組み合わせた立体構造において、何をユニット、又はユニットとユニットの組み合わせとするかは、必要に応じて設計者が任意に設定することができる。図6の例では、キャビネット100は、左右側板、地板、天板、背板の5枚の板材のそれぞれのパーツ部材から構成される箱体を一つのユニットとし、棚板106のパーツ部材を一つのパーツ部材からなる別の一つのユニットとして設定されている。棚板106を他の側板、天板、地板、背板等と同じくキャビネット100を構成するパーツ部材の一つとして設定することも可能である。棚板106をキャビネット100の内部にダボを用いて出し入れ可能に収容する場合には、棚板106を一つのパーツ部材からなる単独のユニットとして設定することが設計上有利であり、望ましい。図21の扉付収納ケースの場合には、キャビネット、扉、扉の取っ手をそれぞれユニットとして設定することも可能であるし、扉と取っ手をそれぞれパーツ部材とし、両者の組み合わせを取っ手付扉としてユニットとして設定することも可能である。
【0040】
<スケルトンユニット、インフィルユニット>
本発明の一つの実施形態において「スケルトンユニット」とは、その内部に他のユニット(インフィルユニット)の全部又は一部を収容可能な空間を有するユニットをいう。本発明の実施形態において「インフィルユニット」とは、他のユニット(スケルトンユニット)の内部の空間(セル空間)にその全部又は一部が収容されるユニットをいう。本発明のシステムの画面上では、例えば図20の引出付キャビネットでは、パーツ部材の組み合わせで構成されたキャビネットがスケルトンユニットであり、同じくパーツ部材の組み合わせで構成された引出しがインフィルユニットに相当する。スケルトンユニットとインフィルユニットは互いに別ユニットなので、一方に対する寸法変更に連動して他方の寸法が変更されることはないが、セル空間(後述)を介してユニット空間相互に面関連付けをすることで、一方に対する寸法変更に他方を連動させることができる。
【0041】
<外接直方体空間>
本発明の一つの実施形態において「外接直方体空間」とは、立体に外接する仮想三次元直方体空間をいう。例えば立体が、直方体形状の板材で寸法が縦長300mm、横長500mm、厚み20mmであれば、その板材の輪郭の寸法の空間がそのままその立体の外接直方体空間となる。ヒンジ金具のように非直方体の立体では、当該金具を収容できる最小の直方体空間がその立体の外接直方体空間となる。図5に示す、側板と天板の二つの板材が垂直に接続された立体では、破線で示す空間が、側板と天板という二つのパーツ部材からなる立体の外接直方体空間となる。
【0042】
<ユニット空間>
本発明の一つの実施形態において「ユニット空間」とは、一つのユニットに外接する仮想三次元直方体空間をいう。本発明のシステムの画面上で複数のパーツ部材が組み合わされて一つのユニットを構成する場合には、当該ユニットを外接収容する空間を当該ユニットの「ユニット空間」とする。ユニットに外接する仮想三次元直方体空間をユニット空間として設定することによって、当該ユニットに属するパーツ部材の位置を当該ユニット空間との相対的位置関係において容易に算出及び/又は設定することが可能になる。ユニット空間は通常はユニットに外接する三次元直方体空間をそのままユニット空間として設定する。しかし、必要に応じて、ユニットに外接する三次元直方体空間を縮小又は拡大した直方体空間をユニット空間として設定することも可能である。
【0043】
好ましくは、本発明の一つの実施形態において、パーツ部材の寸法の変更はパーツ部材が構成するユニットのユニット空間の寸法を変更することによって行う。ユニット空間の寸法を変更すると、ユニット空間の6面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされた一つ又は複数のパーツ部材の寸法を変更することができる。さらに、一つのユニット空間の6面と他の一つのユニット空間の6面とをユニット空間面関連付けすることによって、前記一つのユニット空間の寸法を変更することによって、前記他の一つのユニット空間の寸法を変更することができる。それによって、それぞれのユニット空間を構成するユニット、及びユニットを構成するパーツ部材の寸法を連動して変更することができる。
【0044】
ユニットが複数のパーツ部材からなるときは、ユニットを構成する各パーツ部材の位置は、ユニット空間の各6面と平行に対応するパーツ部材の面との間の距離によって、ユニット空間を基準として設定することができる。一旦パーツ部材の位置がユニット空間を基準にして位置が規定された後は、ユニット空間の寸法・位置を変更することで、パーツ部材の寸法・位置を連動して変更することができる。
【0045】
<セル空間>
本発明の一つの実施形態において「セル空間」とは、スケルトンユニットの内部にインフィルユニットの全部または一部を内接収容することが可能な空間をいう。スケルトンユニットのパーツ部材によって囲まれた内部空間に「セル空間」を設定することで、インフィルユニットのユニット空間をセル空間に内接収容させることが可能になる。セル空間に内接収容されたインフィルユニットの位置は、セル空間の各6面と平行に対応するインフィルユニットのユニット空間の各6面との間の距離によってセル空間を基準として設定することができる。
【0046】
図6に示す例おいて、棚板106はそれ自体で一つのパーツ部材からなる一つのユニットとして設定されているので、キャビネット100(複数のパーツ部材の組み合わせ)と棚板106とは互いに別々のユニットである。キャビネット100を構成するパーツ部材101、102、103、104、105と棚板106とは互いにパーツ部材面関連付けされていなければ、一方の寸法が変更された場合に他方が連動して変更されることはない。しかし、キャビネットに棚板が収納されている場合に、キャビネットの寸法を縮小する変更を入力した場合に棚板の寸法がそれに連動して縮小変更されないと、当該棚板はキャビネットに収容できなくなる。そこで、キャビネットと棚板とが同じ一つの空間と関連付けするように設定すれば、当該共有された空間を変更することによって、キャビネットと棚板とは、共に当該共有された空間の変更に追従して変更することができる。キャビネットの板材によって囲まれたセル空間Pを設定し、棚板のユニット空間の面とセル空間Pの面を面関連付けすることによって、キャビネットと棚板とを互いに連動して寸法変更することが可能になる。
【0047】
<複合板>
本発明の一つの実施形態において「複合板」とは、例えば図4(A)に示すように、芯材の表面にポリ合板等の表面材、木口断面にテープ等の木口材が貼りつけられる場合にそれらの部材によって複合的に構成された板材をいう。「複合板」はパーツ部材であり、直方体の輪郭を有する。
【0048】
<表面材空間、木口材空間、芯材空間>
本発明の一つの実施形態において「表面材空間」とは複合板(パーツ部材)の直方体を芯材に貼り付けられる表面材の寸法に分割することによって形成される直方体空間をいう。「木口材空間」とは複合板のパーツ部材を芯材に貼り付けられる木口材の寸法に分割することによって形成される直方体空間をいう。「芯材空間」とは、複合板のパーツ部材から表面材空間と木口材空間を分割した場合に、芯材部分として残る直方体空間をいう。
【0049】
図4(A)―(C)を参照して、ユニット設計システムを用いて複合板のパーツ部材について説明する。図4(A)で、パーツ部材である複合板の初期値奥行寸法は300mm、初期厚み寸法は15mmで、木口材と表面材の厚さはそれぞれ1mmに設定されている。この複合板を、図4(B)に示すように奥端面には木口材を貼付けないように変更する。その変更のための簡便な方法として奥端面の木口材空間の厚みをゼロに変更することが可能である。この場合、パーツ部材である複合板空間の奥行寸法は300mmに設定されているので、芯材と表面材の奥行寸法(298mm)が、削除した木口材の厚み寸法(1mm)分だけ大きくなって299mmになるように変更される。
【0050】
図4(A)のパーツ部材である複合板を、図4(C)に示すように、上表面には表面材を貼付けないように変更する。その変更のための簡便な方法として上表面の表面材の厚みをゼロに変更することが可能である。この場合、面関連付けで複合板の厚みは15mmに固定として設定されているので、芯材の厚み寸法(13.0mm)が、削除した上表面材の厚み寸法(1.0mm)分だけ大きくなって14.0mmとなるように変更される。
【0051】
<製品>
本発明の一つの実施形態において「製品」とは、本発明のシステムの画面上で複数のユニットを組み合わせて作製された家具製品をいう。本発明のシステムで設計された製品には製品番号が付与される。製品を構成するユニット、そのユニットを構成するパーツ部材、そのパーツ部材を構成する表面材、木口材、芯材には、全て同じ製品番号が付与される。
【0052】
<製品空間>
本発明の一つの実施形態において「製品空間」とは、一つ又は複数のユニット空間から構成される製品に外接する仮想三次元直方体空間をいう。製品を構成する各ユニットのユニット空間の位置は、製品空間の各6面と対応するユニット空間の面との間の距離によって製品空間を基準として設定することができる。
【0053】
<ユニット空間・パーツ部材面関連付け>
本発明の一つの実施形態において「ユニット空間・パーツ部材面関連付け」とは、ユニットを構成するパーツ部材の一つの面と、当該ユニットのユニット空間の平行に対応する一つの面との間の距離を指定することによって面関連付けすることをいう。ユニット空間の面を当該ユニットを構成するパーツ部材の面とユニット空間・パーツ部材面関連付けすることによって、ユニット空間の寸法変更の入力があった場合に、ユニット空間・パーツ部材面関連付けの設定に従ってパーツ部材の寸法をそれに連動させて変更することが可能になる。
【0054】
<パーツ部材面関連付け>
本発明の一つの実施形態において「パーツ部材面関連付け」とは、パーツ部材の一つの面と、その面と平行に対応する他のパーツ部材の一つの面との間の距離を指定することによって面関連付けることをいう。パーツ部材面関連付けされた二つの面の間の距離がゼロなら、両面は互いに同一平面上にある。複数のパーツ部材が一つのユニットを構成する場合、当該ユニットを構成するパーツ部材の互いに平行に対応する面同士にパーツ部材面関連付を付与することによって、一つのパーツ部材の寸法を変更した場合に、他のパーツ部材の寸法を連動して変更することが可能になる。
【0055】
ユニット空間・パーツ部材面関連付けとパーツ部材面関連付けの協働関係について図5を参照して説明する。板材102(高さ500mm、奥行300mm、厚さ30mm)に対して板材104(厚さ20mm、縦長300mm、横長500mm)を接合する場合を考える。板材102の高さ500mmと奥行300mm、板材104の縦長300mmと横長500mmはそれぞれ可変であるが、板材102の厚さ30mm、板材104の厚さ20mmはそれぞれ固定値として設定されている。
【0056】
まず、板材102のパーツ部材と板材104のパーツ部材の間にパーツ部材面関連付けを付与する。互いに平行な102A面と104A面、102B面と104B面、102F面と104F面との間の面間距離をゼロと指定する。102D面と104C面との面間距離を0.5mmと指定する。パーツ部材102とパーツ部材104から構成される立体をユニットAとする。
【0057】
次いで、パーツ部材102とパーツ部材104の両者に外接する外接直方体空間(破線で示す)をユニット空間として設定し、ユニットAのユニット空間の6面(A、B,C,D,E,F)とユニットAを構成するパーツ部材102との間に次のようにユニット・パーツ面関連付けを付与する。
【0058】
(1)ユニット空間の上面(A面)は102A面と互いに平行でかつ面間距離はゼロ。(2)ユニット空間の前面(B面)は102B面と互いに平行でかつ面間距離はゼロ。(3)ユニット空間の左側面(C面)は102C面と互いに平行でかつ面間距離はゼロ。(4)ユニット空間の右側面(D面)は104D面と互いに平行でかつ面間距離はゼロ。(5)ユニット空間の下面(E面)は102E面と互いに平行でかつ面間距離はゼロ。(6)ユニット空間の後面(F面)は102F面と互いに平行でかつ面間距離はゼロ。
【0059】
上記のようにパーツ部材面関連付けとユニット空間・パーツ部材面関連付けをした上で、ユニット空間の前面(B面)を手前方向(矢印のB方向)に移動すると、ユニット空間の前面(B面)とユニット空間・パーツ部材面関連付けされた102B面がそれと連動して移動する。102B面と104B面とはパーツ部材面関連付けで互いに平行で面間距離がゼロと指定されているので、102B面が手前方向(B方向)に移動すると、104B面もパーツ部材面関連付けで設定された条件に従って102B面と共に手前方向(B方向)に移動する。従って、ユニット空間の前面Bを手前方向に移動することで102B面と104B面を共に手前に連動して移動することができる。
【0060】
ユニット空間の右面(D面)を右方向(矢印のD方向)に10mm移動すると、ユニット空間の面(D面)とユニット空間・パーツ部材面関連付けされた104D面がそれと連動して右方向に移動する。板材104の横長500mmは可変に設定されているので、板材104(パーツ部材)の横長500mmは10mm長くなって510mmとなる。
【0061】
ユニット空間の左面(C面)を左方向(矢印のC方向)に10mm移動すると、ユニット空間の左面(C面)とユニット空間・パーツ部材面関連付けされた102C面がそれと連動して左方向に移動する。板材102の厚さは30mmに固定されているので、102C面が左方向に10mm移動すると、102Cの反対面である102D面も左方向に10mm移動する。102D面と104C面とは面間距離0.5mmでパーツ部材面間連付けされているので、102D面が左方向に10mm移動すると、104C面もそれに追随して左方向に10mm移動する。板材104(パーツ部材)の横長は可変に設定されているので、104C面が左方向に10mm移動すると、板材104(パーツ部材)の横長は10mm長くなって510mmとなる。104D面はユニット空間のC面とも、102C面とも、102D面とも面関連付けされていないので、位置は変わらない。
【0062】
ユニット空間の上面(A面)を上方向(矢印のA方向)に10mm移動すると、ユニット空間のA面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされた102A面が上方向(矢印のA方向)に10mm移動する。102A面と104A面とは面間距離ゼロでパーツ部材面関連付けされているので、102A面が上方向(矢印のA方向)に10mm移動すると、104A面もそれに連動して10mm上方向(矢印のA方向)に移動する。板材104の厚さは30mmに固定されているので、104A面が上方向に移動すると、104A面の反対面である104E面も上方向(矢印のA方向)に10mm移動する。
【0063】
ユニット空間の下面(E面)を下方向(矢印のE方向)に10mm移動すると、ユニット空間のE面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされた102E面が下方向(矢印のE方向)に10mm移動する。102E面と104E面とは互いに平行であるがパーツ部材面関連付けされていないので、102E面が下方向に移動しても、104E面はそれに追従して下方向に移動することはない。
【0064】
<ユニット空間面関連付け>
本発明の一つの実施例において、「ユニット空間面関連付け」とは、一つの製品が複数のユニットから構成される場合において、一つのユニットのユニット空間の6面の一つの面と他の一つのユニットのユニット空間の平行な一つ面との間の面間距離を指定することによって両者の位置関係を設定することをいう。二つのユニット空間の面が互いにユニット空間面関連付けされた状態で、前記面関連付けされた一つのユニット空間の一つの面を当該面に対して垂直方向に移動すると、その一つの面とユニット空間面関連付けされた他の一つのユニット空間の面がユニット空間面関連付けで指定された関係に従って連動して移動する。
【0065】
<セル空間・ユニット空間面関連付け>
本発明の一つの実施形態において「セル空間・ユニット空間面関連付け」とは、スケルトンユニットのセル空間の面と、そのセル空間に収容されるインフィルユニットのユニット空間の対応する平行な面との間の距離を指定することによって面関連付けすることをいう。インフィルユニットがスケルトンユニットのセル空間に収容されると、インフィルユニットのユニット空間の面と、それに平行に対応するセル空間の面との間の面間距離が指定される。その結果、インフィルユニットのユニット空間を介して、スケルトンユニットのパーツ部材の寸法とインフィルユニットのパーツ部材の寸法を互いに連動して変更することが可能になる。セル空間・ユニット空間面関連付けとユニット空間面関連付けとは基本的に同じであり、面関連付けの相手方の空間がユニット空間であるか、セル空間であるかが異なるだけである。
【0066】
<加工>
本発明の一つの実施形態において「加工」とは、穴開け、溝掘り、切欠き等のパーツ部材に対して施す機械加工をいう。本発明の実施例では、パーツ部材は全て直方体形状の輪郭を有し、その直方体に対して機械加工が施されて実際の形状が構成されるものとして把握される。本発明の実施例の設計システムでは,メモリに登録した加工のマスターデータの中から特定の加工を選択してパーツ部材の直方体の面のXY座標の指定された位置に選択した加工を登録する。
【0067】
<加工位置>
本発明の一つの実施形態において「加工位置」とは、本発明のシステムを用いて選択した加工を入力するパーツ部材の直方体の面上の位置をいう。加工位置は加工が付与される面の長方形のXY座標を用いて示される。図22を参照して、A,B,C,Fは穴の中心位置が加工位置となり、中心位置からの径によって穴の大きさが指定される。Eの溝は、溝の横長の長方形を囲むa、b、c,dの4点が加工位置として指定される。Dの切欠きは加工対象の板材の切欠かれた角の前面の長方形を囲むp,q、r、sの4点が加工位置として指定される。これらの加工位置情報は、加工機械が加工対象に穴、溝、切欠き等の加工を施す位置を決定するために最低限必要な情報である。加工機械は、これらの位置情報と、併せてその他の必要な情報(穴、溝の深さ等)を受け取って、パーツ部材に対して機械加工をすることができる。
【0068】
<加工機械>
本発明の一つの実施形態において「加工機械」とは、ダボ打ち機、テノーナー、カットソー等、家具の製造業者が家具の構成部材に機械加工を施すために用いる装置をいう。好ましくは、本発明のシステムから出力されるBOMデータと加工明細データは製造工場の加工機械が読み取り可能なようにコード化されている。
【0069】
本発明のシステムから出力されるBOMデータと加工明細データは、加工の対象(板材等)と、加工対象に付与する加工の内容に関する情報と、加工を付与する位置に関する情報を含む。本発明のシステムから出力されたデータを受信した製造工場は、受信した構成明細と加工明細のデータに基づいて、自らが備える加工機械の処理能力に応じて加工に用いる加工機械の種類、加工方法を選択して板材に対して加工を付与する。
【0070】
図22を参照して、板材は一定の厚さと横幅と縦長を有するところ、前表面には直径8mmの穴Aが縦3つNC(ドリル)を用いて形成される。B,Cは金具を取り付けるためのカップ穴であり、カップ穴は専用のカップ穴加工機械を用いて形成されることが多いが、通常のNC機でドリルで形成することも可能である。Dは、板材の右上角に設けた切欠きであり、コーナーカッターを用いて形成することが可能である。Eは、板材の長手横方向に幅3mm、深さ6mmに形成された溝であり、テノーナーを用いて形成することができる。Fは直径50mmの貫通孔であり、NC機のドリルを用いて形成することが可能である。
【0071】
板材を加工する加工工場が有する加工機械は、同じ場合もあれば、それぞれ異なる場合もある。図22において、板材に対する穴A、F、切欠きDを形成する加工についてはA工場とB工場は共に同じ加工機械(NC機ドリル、コーナーカッター)で可能であるが、Eの溝加工は、A工場はテノーナーを備えているので、それで形成可能であるが、B工場はテノーナーを備えていないので、NC機ドリルを使用して形成する。
【0072】
本発明のシステムから出力されるBOMデータと加工明細データは、加工の対象(板材等)と、加工対象に付与する加工の種類/内容に関する情報と、加工を付与する位置に関する情報を、加工機械の側で読み取り可能なように標準化された形で提供することが好ましい。図23は本発明のシステムから加工機械に提供されるBOMデータと加工明細データの形式の一例を示す。製造工場は、本発明のシステムから標準化された形式のデータを受け取って、自らが有する加工機械で読み取ることによって、BOMデータと加工明細データに基づいて家具の部材を加工製造することができる。
【0073】
<座標変換>
本発明の一つの実施形態において「座標変換」とは、一つの直方体の一つの面のXY座標で指定された位置を、他の直方体の前記一つの面と平行な面のXY座標で指定される位置に変換することをいう。
【0074】
図5(A)を参照して、天板104の左側面104Cを、左側板102の内側面102Dにダボを用いて接合固定する場合を考える。天板104を左側板102に垂直に接合した状態において、両者の相互の位置関係は、天板104と左側板102に外接する仮想直方体空間(ユニット空間 破線で示す)の6面と、天板104の各面と、左側板102の各面との間の面間距離によって規定される。
【0075】
図5(A)において、左側板102とユニット空間の関係は、102A面は、ユニット空間の上面と平行で面間距離がゼロであり、102B面は、ユニット空間の前面と平行で面間距離がゼロであり、102C面は、ユニット空間の左面と平行で面間距離がゼロであり、102D面は102C面の反対面であり102の厚さは30mmに固定されている。102E面は、ユニット空間の下面と平行で面間距離がゼロであり、102F面は、ユニット空間の後面と平行で面間距離がゼロである。
【0076】
同じく図5(A)において、天板104とユニット空間の関係は、104A面は、ユニット空間の上面と平行で面間距離がゼロであり、104B面はユニット空間の前面と平行で面間距離がゼロであり、104C面はユニット空間の左面から102の厚さ寸法プラス0.5mm離れており、104D面は、ユニット空間の右面と平行で面間距離がゼロであり、104E面は104Aの反対面であり104の厚さは30mmに固定されており、104F面は、ユニット空間の後面と平行で面間距離がゼロである。
【0077】
天板104の左側面104C面に登録するダボ穴a、bの位置を104C面の長方形の左手前下の角を原点とするXY座標で指定する。図5(B)の例ではaのXY座標位置は(100mm, 10mm)、bの座標位置は(200mm, 10mm)である。天板104を右側板102に接合した場合に、天板104の左側面104C面に登録する二つのダボ穴の中心位置a(100mm, 10mm),b(200mm, 10mm)に対応する左側板101の内側面101D上に設けられる二つのダボ穴の座標位置をa’b’とすると、a’b’の左側板102の102D面上のXY座標上の位置は、棚板106と左側板102の位置関係から、a’(100mm, 490mm), b’(200mm, 490mm)として求めることができる。
【0078】
(実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の実施形態のシステムは、Windows(登録商標)等のOS上で稼働するアプリケーションソフトウエアとして稼働させることができる。OSと本システムのアプリケーションソフトの間にはOpenGL(登録商標) 等のアプリケーションプログラミングインターフェースが三次元コンピュータグラフィックインターフェースとしてインストールされるのが好ましい。
【0079】
図1は、本発明の一つの実施態様である家具の設計システムの全体構成図を示す。図1において、家具設計システムは、製造工場6と、販売代理店4又はハウスメーカー5に備えるPCと接続されている。さらに、家具設計システムはウェブサイト3を設営している。
【0080】
販売代理店4、又はハウスメーカー5は本発明の家具設計システム1を用いて設計した製品をPC又はカタログに基づいて顧客2に提案する。顧客2から寸法又は仕様の変更の要請を受けて、販売代理店4、又はハウスメーカー5は家具設計システム1を用いて寸法又は仕様を変更して設計した物品をその見積価格と納期と共に再提案する。再提案した製品の仕様寸法、価格納期で顧客から購入の注文を受けると、そのデータは家具設計システム1に送信される。注文を受信した家具設計システム1は、注文された製品の製造に必要なデータを入力データに基づいて算出し、算出によって生成したデータを製造連携をしている製造工場6に送信する。以上の方法の他、顧客はオーダーメード家具設計システム1が設営するウェブサイト3にアクセスして希望する種類寸法の物品を入力することによって、販売代理店又はハウスメーカーを介することなく直接注文することも可能である。
【0081】
図2は、本発明の実施態様である家具設計システムの内部構成を示す。
本システム1は、家具のユニットを設計するためのユニット設計システムと、ユニット設計システムで設計したユニットを組み立てて家具製品を設計し、さらに同一の製品品番を有するパーツ部材のデータに基づいて、当該製品を構成する部材の構成明細(BOM)と各部材の加工明細を出力する、ユニット組立システムからなる。
【0082】
設計者は、ユニット設計システムにアクセスして、家具のパーツ部材の寸法情報、組み合わせ情報と、パーツ部材に対する加工情報を入力することによって、ユニットを作成する。
【0083】
本発明のシステムで設計された家具を注文しようとする者は、ユニット組立システムにアクセスして、予めユニット設計システムで作成されてメモリに登録されてあるユニットを呼び出して、ユニットの寸法を調整した上で、ユニットを組み合わせて製品を設計し、設計された製品の構成明細(BOM)と加工明細を製造工場に出力する。
【0084】
本システムで設計された製品について注文を受け取った場合、設計された製品のパーツ部材の部材構成明細と加工明細をユニットと製品ごとに分類して作成し、製品の品番と共に製造工場6に送る。製造工場6が希望する場合には、設計図面を送る。本システム1は顧客の希望に合わせて設計して受注した製品の6面図を自らはプリントアウトせずに、製造データを製造工場6へ送信し、製造者の側で自らの様式で設計図面をプリントアウトすることも可能である。
【0085】
図3(A)は、本発明の実施態様であるユニット設計システムのPC画面の例を示す。図3(B)は、本発明の実施態様であるユニット組立システムのPC画面の例を示す。本発明のシステムのPC画面で家具を設計する場合、部材の稜線は全て、PC画面中のXYZ座標軸のいずれかの方向に整列するように設定されているのが好ましい。本発明のシステムでは、部材は全て直方体として把握されるので、直方体の一つの角から延びる3辺は、PC画面中の世界座標XYZ軸のいずれかの方向に延びるように設定される。
【0086】
実施例1(書籍棚)
図6は、本発明の実施例のシステムを用いて設計された書籍棚を示す。
【0087】
1.ユニットとパーツ部材
<製品の構成>
図6の書籍棚は、キャビネット100(ユニット1)と棚板106(ユニット2)からなる。ユニット1のキャビネット100は、右側板101、左側板102、背板103、天板104、地板105の5つのパーツ部材からなる。ユニット2は棚板106の1つのパーツ部材のみからなるユニットである。
【0088】
A.ユニット設計システムによる操作
2.ユニット設計システムでユニットを作成する。
<キャビネットの作成>
ステップ1)板材を組み立ててキャビネットを作成する。
板材のアイコンをクリックして板材のデータを読み込むと、メモリに記憶された板材が仮の縦横厚さの寸法に従って、その仮の寸法の板材(パーツ部材)が画面上に表示される。表示された板材(パーツ部材)をコピーしてパーツ部材の必要な個数(この実施例では5個)を作成する。次いで、板材(パーツ部材)の初期寸法と、可変/固定の区別、寸法が可変である場合の最大値/最小値の設定(任意)を入力する。初期寸法と可変/固定、最大値最小値の設定(任意)が入力がされた各パーツ部材を画面上でドラッグして移動してPC画面のXYZ軸方向にそれぞれ整列・配置することで、キャビネット100を組み立てて作成する。
【0089】
図7(A)を参照して、キャビネット100は、5つパーツ部材(右側板101、左側板102、背板103、天板104、地板105)によって構成されている。右側板101と左側板102の初期寸法は共に高さ700mm(可変)、奥行300mm(可変)、厚さ15mm(固定)である。天板104と地板105の初期寸法は共に横長370mm(可変)、奥行299.5mm(可変)、厚さ15mm(固定)である。背板103の初期寸法は横長400mm(可変)、高さ700mm(可変)、厚さ15mm(固定)である。
【0090】
ステップ2)板材相互間にパーツ部材面関連付けをする。
まず、CPUは、各パーツ部材の6面に自動的に識別符号を付与する。それぞれの上面をA面、前面をB面、左側面をC面、右側面をD面、下面をE面、後面をF面とすると、右側板101の6面には101A,101B、101C,101D,101E,101F、左側板102の6面には102A,102B、102C,102D,102E,102F、背板103の6面には103A,103B、103C,103D,103E,103F、天板104の6面には104A,104B、104C,104D,104E,104F、地板105の6面には105A,105B、105C,105D,105E,105Fという識別符号が付与される。
【0091】
パーツ部材面関連付けの手順として、例えば図8の例では、以下のように左側板102を基準として面関連付を開始する。
1.左側板102の右側面102Dと天板104の左側面104Cとは互いに平行で同一平面上にある。
2.左側板102の右側面102Dと地板105の左側面105Cとは互いに平行で同一平面上にある。
3.左側板102の左側面102Cと背板103の左側面103Cとは互いに平行で同一平面上にある。
4.左側板102の前面102Bと右側板101の前面101Bとは互いに平行で同一平面上にある。
5.左側板102の前面102Bと天板104の前面104Bとは、互いに平行で102Bは104Bから0.5mm離れている。
6.左側板102の前面102Bと地板105の前面105Bとは互いに平行で102Bは105Bから0.5mm離れている。
7.左側板102の後面102Fと右側板101の後面101Fとは互いに平行で同一平面上にある。
8.左側板102の後面102Fと天板104の後面104Fとは互いに平行で同一平面上にある。
9.左側板102の後面102Fと地板105の後面105Fとは互いに平行で同一平面上にある。
10.左側板102の後面102Fと背板103の前面103Bとは互いに平行で同一平面上にある。
11.左側板102の上面102Aと天板104の上面104Aとは、互いに平行で102Aは104Aから0.5mm離れている。
12.左側板102の上面102Aと右側板101の上面101Aとは互いに平行で同一平面上にある。
13.左側板102の下面102Eと地板105の下面105Eとは互いに平行で102Eは105Eから0.5mm離れている。
14.左側板102の下面102Eと右側板101の下面101Eとは互いに平行で同一平面上にある。
15.左側板102の上面102Aと背板103の上面103Aとは互いに平行で同一平面上にある。
16.左側板102の下面102Eと背板103の下面103Eとは互いに平行で同一平面上にある。
【0092】
パーツ部材の中には左側板102のどの面とも面関連付けできない面もあるので、左側板を基準とする面関連付けだけでは、キャビネット100を完全に定義することができない。そこで、左側板を基準に開始した面関連付けを完了した後、以下のように右側板101と背板103、天板104、地板105とを面関連付けをする。
17.右側板101の左側面101Cと天板104の右側面104Dとは互いに平行で同一平面上にある。
18.右側板101の左側面101Cと地板105の右側面105Dとは、互いに平行で同一平面上にある。
19.右側板101の右側面101Dと背板103の右側面103Dとは互いに平行で同一平面上にある。
【0093】
以上によってキャビネット100を構成する各パーツ部材の間に付与されたパーツ部材面関連付けを図8に示す。上記で互いにパーツ部材面関連付けされパーツ部材によって構成されたキャビネット100をユニット1とする。ユニット1が設計されると、ユニット設計システムはユニット1の外接直方体空間をユニット空間として算出する。
【0094】
ステップ3)上記で作成したユニット1のユニット空間の6面(A面、B面,C面,D面,E面,F面)とユニット1を構成する各パーツ部材との間にユニット空間・パーツ部材面関連付けを付与する。
1.ユニット空間の上面(A面)は左側板102の上面102Aと互いに平行でかつ面間距離はゼロ。
2.ユニット空間の下面(E面)は左側板102の下面102Eと互いに平行でかつ面間距離はゼロ。
3.ユニット空間の左側面(C面)は左側板102の左側面102Cと互いに平行でかつ面間距離はゼロ。
4.ユニット空間の右側面(D面)は右側板101の右側面101Dと互いに平行でかつ面間距離はゼロ。
5.ユニット空間の前面(B面)は左側板102の前面102Bと互いに平行でかつ面間距離はゼロ。
6.ユニット空間の後面(F面)は背板103の後面103Fと互いに平行でかつ面間距離はゼロ。
【0095】
以上によってユニット1(キャビネット100)のユニット空間とユニット1を構成する各パーツ部材の間に付与されたユニット空間・パーツ部材面関連付けを図9に示す。
【0096】
ユニット1を構成しているパーツ部材の面はユニット1のユニット空間のそれと平行に対応する面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされている。各パーツ部材の面は他のパーツ部材の平行に対応する面に対して直接又は間接にパーツ部材面関連付けされている。このように、ユニット空間・パーツ部材面関連付けと、パーツ部材面関連付けをしておくことによって、ユニット組立システムでユニット1のユニット空間の一つの面を移動させると、それに連動してユニット1のパーツ部材の面がそれに連動して移動され、さらに、そのパーツ部材とパーツ部材面関連付けされた他のパーツ部材の面がそれと連動して移動される。
【0097】
図7(A)、図8において、右側板101E面と左側板102E面は共に天板104E面に対してパーツ部材面関連付けされていない。同様に、右側板101A面と左側板102A面は共に地板105Aに対してパーツ部材面関連付けされていない。天板104の厚さは固定に設定されており、右側板101、左側板102及び背板103の高さは可変に設定されているので、右側板101E面と左側板102E面及び右側板101A面と左側板102Aはそれぞれ上下に移動することができ、それらの面を上下方向に移動することによって、天板104の厚さを固定したままで、キャビネット100の高さ寸法を変更することができる。
【0098】
ステップ4)キャビネットにセル空間を設定する
上記面関連付けが終了した後、キャビネット100の内部空間にセル空間Pを設定する。セル空間Pは図7(A)の右下に示された6方向の矢印に従って、A面、B面、C面、D面、E面、F面を有する。セル空間PのA面、C面、D面、E面、F面は、それぞれキャビネット100の104E面、102D面、101C面、105A面、103B面と対面する。キャビネット100前面は開口になっているので、セル空間PのB面と対面するパーツ部材の面は存在しない。キャビネット100の内部空間にセル空間を設定することで、インフィルユニットを収容してセル空間・ユニット空間面関連付けをすることが可能になる。
【0099】
ステップ5)天板、地板と左右側板にダボ穴を設ける。
キャビネット100の天板104と地板105を左右側板102、103とそれぞれダボで接合固定するために、天板104と地板105の左右木口面にそれぞれ3カ所ずつ6mmの外径と8mmの深さを有する円筒状のダボ穴を設ける。天板、地板の木口面に設けたダボ穴を左右側板の対応する位置に転写することによって左右側板の内面にダボ穴を設ける。本発明の実施例のシステムでパーツ部材の面のXY座標でダボ穴の位置を特定するにあたっては、ダボ穴の円筒の円の中心の位置を基準として位置を設定する。
【0100】
図7(B)は、図7(A)のキャビネット100の天板104の左木口面104C面を示す。図7(C)は、104C面が左側板102D面と接合された時の102D面上のXY座標における3つのダボ穴の位置を示す。天板104の上面は側板101と102の上面に対してチリの段差が設けられており、0.5mm引っ込んでいる。同様に地板105の下面は側板101と102の下面に対してチリの段差が設けられており0.5mm上がっている。左右側板101、102の前面101B面、102B面に対して、天板の104B面、地板の105B面は共に0.5mm引っ込んでいる。
【0101】
図7(B)を参照して、104C面の長方形の左下角を原点(0,0)とし、原点から延びる二辺をx軸、y軸とする二次元座標(ローカル座標)を設定する。3つのダボ穴a、b、cを、長方形の横方向については、両端から30mmの位置にaとc、及び横辺の長さを二等分する中心位置にbを設ける。長方形の縦方向についてはa、b、cは3つとも縦辺の長さ(15mm)を二等分する中心位置にある。
【0102】
天板の奥行の長さは側板の奥行長さ300mmより0.5mm短い299.5mmであり、天板の厚さ(固定)は15mmなので、104C面の長方形の左下角を原点(0,0)とするローカル座標では3つのダボ穴a、b、cの位置はそれぞれ、a(30mm、7.5mm)、b(149.75mm、7.5mm)、c(269.5mm、7.5mm)となる。
【0103】
次いで図7(C)を参照して、104C面のダボ穴a、b、cをキャビネット100の左側板102(D)面に対して垂直方向に投影して、a’b’c’とする。左側板102D面の長方形の左下角を原点(0,0)とするXY座標ではa’b’c’の位置は、a’(30.5mm、692.0mm)、b’(150.25mm、692.0mm)、c’(270.0mm、692.0mm)となる。
【0104】
上記は、左側板102D面にダボを用いて接合される地板105の左木口面105C面と左側板102D面に設けられるダボ穴についても同様である。また、キャビネット100は左右対称構造なので、天板104D面と右側板101C面、地板105D面と右側板101C面についても同様である。
【0105】
<可動棚板の作成>
ステップ6)可動棚板106(ユニット2)を作成する。
アイコンをクリックして読み出した板材を可動棚板106のパーツ部材として画面上に表示する。可動棚板の初期寸法を横長369mm、奥行長299.5mm、厚さ15mm(固定)と設定する。可動棚板の横長は可動棚板をキャビネット内で動かしやすくするために、キャビネットのセル空間の横幅よりも1mm小さく設定している。
【0106】
ステップ7)可動棚板106をユニット2とし、ユニット2のユニット空間と、面間距離ゼロでユニット空間・パーツ部材面関連付けをする。可動棚106を一つのパーツ部材のみからなるユニット2として設定する。ユニット2の外接直方体空間をそのままユニット2のユニット空間として設定する。
【0107】
ステップ8)棚板を支えるダボのダボ穴の位置決めをする。
図10(A)(B)(C)を参照して、左側板102の右側面102Dの面に、可動棚板の底をダボで支えるためのダボ穴を3つ設ける。可動棚板106をキャビネット内で上下可動とするためには、棚板106の高さ位置に応じて左側板102D面に設けられるダボ穴の位置が変わるように設定される必要がある。そこで、側板102Dの面に設けるダボ穴の位置は、可動棚板106の木口面106C面の位置を基準にして設定し、棚板106の木口面106Cを基準として設定された仮想の基準位置を102D面に対して垂直方向に投影して特定される側板102D面上の位置を102D面上のダボ穴の位置とする。
【0108】
図10(B)を参照して、棚板106C面の長方形の左下角を原点とするxy座標(ローカル座標)を設定し、左側板102D面にダボ穴を設けるための基準位置g,h,iを棚板106C面の長方形に設定されたXY座標で特定する。実施例1の書籍棚において、可動棚板106の初期寸法は奥行長299.5mm、厚さ15mmであり、ダボ穴の外径は6mmなので、ダボ穴基準位置g,h,iは、棚板106C面の長方形の左端から順に、g(30mm、―3mm)、h(149.75mm、―3mm)、i(269.5mm、―3mm)となる。
【0109】
図6では、棚板106は、左右側板の高さ方向の長さを二等分する高さ位置に設けられると設定されているので、キャビネット100は棚板106を挟んで上下に対称である。従って、天板と側板の間のダボ穴の設定は、地板と側板の間にもコピー可能である。また、棚板106を収容したキャビネット100は左右対称であるので、棚板106の面に設定されたダボ穴(基準位置)、及びそこから側板の面へのダボ穴加工は、棚板の面に設定された情報を反対面にコピーすることができる。
【0110】
B.ユニット組立システムによる操作
3.ユニットを読み出して画面上で組み合わせて製品を作る。
ステップ9)ユニット1と2を画面上に表示する。
ユニット組立システムのMENU画面のアイコンをクリックして、ユニット設計システムで設計されてメモリに登録されたユニットの内、所望のタイプのものを読み込んで、画面上に表示する。ここでは、キャビネットのユニットを読み込んでユニット1として表示し、棚板用の板材のパーツ部材からなるユニットを読み込んでユニット2として表示する。
【0111】
ステップ10)キャビネット(ユニット1)に可動棚板(ユニット2)を収容する。
図6に示す、キャビネット100のセル空間Pに、可動棚板106を設置したい高さ位置にドラッグして移動する。図6では、可動棚板106は当初左右側板の高さ方向の中心位置に設置されている。
【0112】
キャビネット100のパーツ部材である側板101、102、天板104、地板105、背板103によって囲まれているセル空間Pに棚板106を収容する。図6の例では、棚板106をドラッグして移動させた位置において、棚板106の周囲4面(106B面、106C面、106D面、106F面)がセル空間Pの対応する4面(B面、C面、D面、F面)に対して面間距離ゼロでセル空間・ユニット空間面関連付けされている。
【0113】
可動棚板106がセル空間Pに収容されると、左右側板の内面に棚板を支持するダボ穴が側板に転写される。図10(A)に示すように、棚板106は左側板に設けられた3つのダボ穴に挿入されたダボによって下面を支えられるので、棚板の木口面自身にはダボ穴は設けられない。棚板の木口面106C面にはそれと対面する左側板102D面に設けるダボ穴の位置を決めるための仮想の基準位置が設定される。
【0114】
図10(B)を参照して、棚板106C面のダボ穴の基準位置g、h、iは、106C面の長方形の左下角を原点とするxy座標(ローカル座標)ではg(30mm、―0.3mm)、h(149.75mm、―0.3mm)、i(269.5mm、―0.3mm)である。g、h、iの各位置から106C面に対して垂直方向に左側板102の右側面102D上に投影して特定される位置をg”、h”、i”とすると、g”、h”、i”の座標は右側板の長方形の左下を原点とするXY座標において、それぞれ g”(30.5mm、339.5mm)、h”(150.25mm、339.5mm)、i”(270mm、339.5mm)となる。
【0115】
棚板106をキャビネット100のセル空間Pに収容すると、棚板106の木口面を基準として特定された位置g、h、iに入力されたダボ加工が左側板102の右側面102Dのg”、h”、i”の位置に自動的に転写入力される。
【0116】
棚板106C面、左側板102D面のダボ穴の位置の設定は、反対面である棚板106D面、右側板101C面と同じなので、棚板106D面、右側板101C面に付与した加工を反対面にコピーすればよい。
【0117】
ステップ11)ユニットの寸法変更を入力する
図6図7図8図9を参照して、キャビネット100(ユニット1)の奥行を300mmから400mmに変更する操作を説明する。
【0118】
ユニット空間の後面(F面)に対して面の位置を100mm奥行方向(F方向)に移動すると、背板103の厚みが固定されており、かつ、図8を参照して、102F面、101F面は、共に背板103B面に対して面間距離ゼロでパーツ部材面関連付けされているので、左側板102の102F面、右側板101の101F面は共に100mm奥行方向(F方向)に移動する。左側板102、右側板101の奥行長は可変に設定されているので、左側板102、右側板101の奥行長は100mm延びて400mmとなる。尚、102B面、101B面は背板103F面、103B面に対してパーツ部材面関連付けされていないので、ユニット空間の後面(F面)をF方向に移動することで、背板103F面、103B面がF方向に移動しても、連動して移動することはない。
【0119】
キャビネット100の奥行を300mmから400mmに変更した後のダボ穴の位置を図11に示す。
【0120】
同じく、図6図7図8図9を参照して、キャビネット100(ユニット1)の高さ700mmを10mm低くして690mmに変更する操作を説明する。
図9においてユニット1の上面(A面)は左側板上面102Aとユニット・パーツ面関連付けされているので、ユニット1の高さを690mmとすると、左側板102A面が面関連付けで設定した関係(両者間の距離はゼロ)に従ってそれと連動して10mm下方向に移動される。そうすると、図8を参照して、左側板上面102Aは、天板104の上面104Aと互いに平行でかつ0.5mm離れているという設定で面関連付けされているので、天板104の上面104Aは左側板102A面から0.5mm離れているという関係を保ちながら10mm下方向に下げられる。さらに、左側板上面102Aは右側板101の上面101Aと背板103の上面103Aと互いの距離ゼロの設定で面関連付けされているので、左側板上面102Aが10mm下方向に移動されるとそれに連動して右側板101A面と背板103A面も10mm下方向に移動される。この結果、ユニット1の高さを690mmとする変更を入力したことに伴い、パーツ部材101、102、103の高さ寸法はそれぞれ10mm縮小されてどれも690mmとなる。
【0121】
キャビネット100の高さを700mmから690mmに変更した後のダボ穴の位置を図12に示す。図12は左側板102D面のダボ穴の位置設定を示すが、右側板101C面に設定されるダボの位置設定も同様である。
【0122】
さらに、図6図7図8図9図10を参照して、キャビネット100(ユニット1)に収容されている棚板106(ユニット2)の位置を10mm下げる操作を説明する。
【0123】
図10において、棚板106は、側板の高さを二等分する中心位置に設けられているので、棚板106の下面106Eは左側板102の下面102E、右側板101の下面101Eから共に342.5mm(700mmx1/2―7.5mm)の距離に設置されている。
【0124】
棚板106のパーツ部材はユニット2として、その周囲4面(B面、C面、D面、F面)はセル空間PのB面、C面、D面、F面と互いの面間距離ゼロでセル空間・ユニット空間面関連付けされているが、上面(A面)と下面(E面)は互いの面間距離を指定されていないので、棚板106は、周囲4面について設定されたセル空間・ユニット空間面関連付けに従いながら、上下方向には自由に移動することができる。
【0125】
棚板106を底面106Eの101の底面からの距離が332.5mmになるように下方向に10mm移動させると、図10(C)及び図13に示すように、106C面の基準位置g,h,iのY座標が10mm下げられて、その結果、102D面に施された加工g”、h”、 i”の102D面に設定されたXY座標上でY座標がそれぞれ10mm下げられる。
【0126】
キャビネット100の棚板の高さ位置を10mm低く変更した後のダボ穴の位置を図13に示す。
【0127】
ステップ12)設計された書籍棚の仕様と見積価格と納期を算出し表示する。
ステップ11)の寸法変更を経て設計された書籍棚の価格と納期の見積を、書籍棚を構成する部材と調達期間に基づいて算出し、その結果を設計された書籍棚の立体画像と共にPC画面上に表示する。
【0128】
図18は、本実施例の書籍棚に用いる部材の価格と調達期間のマスターデータの例である。個々の部材の価格と調達期間は、製造工場6から提示され、本発明のシステムのメモリに記憶されている。
【0129】
本実施例では、製品の見積価格は、パーツ部材のマスターデータに登録された各部材の価格に基づいて、製品の製造に用いるパーツ部材の価格を積算したものに、工賃及び各種経費と利益を加えて算出する。製品の納期は、パーツ部材のマスターデータに登録された各部材の調達に必要な期間に基づいて、書籍棚の納期を製品の製造に用いる複数のパーツ部材の中で最長の調達期間のものに加工、組立製作期間、梱包、搬入期間を加えて算出する。
【0130】
ステップ13)出力表示された製品でOKかどうか顧客に問い合わせる。
ユニットに対する変更入力で変更された寸法の書籍棚を立体画像としてPC画面上に出力表示する。顧客は画面上に出力された製品の仕様と見積価格、納期に満足すれば、それで提案された家具の購入を決定する。表示された仕様、価格または納期に満足せず、修正を希望するときは、ステップ11)の変更入力に戻る。
【0131】
尚、本実施例のシステムでは、パーツ部材相互間の接合手段として接着剤を用いるかビス等を用いるか等は指定していない。それらは、パーツ部材に対する加工として設定付与することができる。或いは、パーツ部材を接合する方法は本発明のシステムでは指定せずに、製造連携する製造工場に委ねることも可能である。
【0132】
4.製品の製造を発注する。
ステップ14)顧客から注文された製品の製造データを家具設計システム1を通して製造工場に送る。
本発明の実施例では、製造工場に提供される製造データとして、1.パーツ部材の構成明細(BOMデータ)と、2.加工明細と、3.設計図面を提供する。
【0133】
1.構成明細(BOMデータ)
図14は、本実施例のシステムを用いて設計した書籍棚の部材構成明細データ(BOMデータ)を示す。書籍棚には製品番号001が付与されている。書籍棚を構成する二つのユニット(キャビネットと棚)にはそれぞれユニット番号1、ユニット番号2が付与される。ユニット1と2の各パーツ部材にはパーツ部材番号が付与されており、各パーツ部材のそれぞれに材料、幅、高さ、厚み、個数が指定されている。
【0134】
2.加工明細
図15(A)は、本実施例のシステムを用いて設計した書籍棚の左側板102に付与されるダボ穴の加工明細を示す。図15(B)書籍棚の高さを10mm下げた場合の左側板102のダボ穴の加工明細を示す。図15(C)は棚板106の位置を10mm下げた場合の左側板102のダボ穴の加工明細を示す。
【0135】
図15(A)(B)(C)は、棚板106Cに対面する左側板102Dに付与されるダボ穴加工のみを示しているが、棚板106Dに対面する右側板101Cとの間にも同様のダボ穴加工が付与される。
【0136】
3.設計図面
図16(A)、(B)、(C)は、それぞれ本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の平面図、正面図、右側面図である。図17(A)−(F)は、それぞれ本実施例のシステムを用いて設計した図6の書籍棚の(A)右側板、(B)左側板、(C)天板、(D)背板、(E)地板、(F)棚板106の正面図、平面図、側面図である。(F)棚板106は複合板を用いているので、その6面に貼付する表面材と木口材の適用を示してある。
【0137】
ステップ15)製造工場は、構成明細(BOM)と加工明細のデータを受け取って、そのデータに従って製品を製造する。製造工場は、本システムと連携することによって、上記図14の構成明細(BOMデータ)と図15の加工明細データを受け取ることによって、注文された家具を自動製造ラインで自動的に加工することが可能である。製造工場は、図16(A)−(C)及び17(A)−(F)に示す設計図面を用いて、自動製造ラインによらず、従来の図面に基づく方法で注文された家具を製造することもできる。あるいは、製造工場は、自動製造ラインと従来の製造方法を併用することで、注文された家具を製造することも可能である。
【0138】
実施例2(引出し付収納ケース)
図20(A)(B)は、本発明の別の実施例である引出付収納ケースを示す。図20の引出付収納ケースは、キャビネット100(ユニット1)と、引出し内箱200(ユニット2)と、引出し前板300(ユニット3)と取っ手400(ユニット4)からなる。取っ手400は非直方体形状であるが、その最小の外接直方体空間を取っ手400の輪郭とし、板材と同じく直方体の輪郭を有するパーツ部材として取り扱う。
【0139】
ユニット1(キャビネット100)はスケルトンユニットであり、セル空間P1とセル空間P2を有する。ユニット2(引出し内箱)はインフィルユニットであり、図20(A)では、ユニット2はキャビネット100のセル空間P2に収容されて、セル空間・ユニット空間面関連付けされている。ユニット3(引出し前板300)とユニット4(取っ手400)は、ユニット2(引出し内箱)と組み合わされて引出しを構成し、引出しはキャビネット(ユニット1)と組み合わされて、製品である引出し付収納ケースが構成される。
【0140】
ユニット1(キャビネット100)は、パーツ部材である右側板101、左側板102、背板103、天板104、地板105、棚板106の各パーツ部材からなる。ユニット1の各パーツ部材は、ユニット1のユニット空間の6面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされており、さらに各パーツ部材の互いに平行な面同士はパーツ部材面関連付けがされている。
【0141】
ユニット2(引出し内箱200)のパーツ部材は、引出し左妻板201、引出し右妻板202、引出し底板203、引出し先板204からなる。ユニット2の各パーツ部材は、ユニット2のユニット空間の6面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされており、さらに各パーツ部材の互いに平行な面同士でパーツ部材面関連付けがされている。ユニット3(引出し前板300)のパーツ部材は引出し前板300のみである。同様に、ユニット4(取っ手400)のパーツ部材は取っ手400のみである。
【0142】
ユニット3(引出し前板300)とユニット2(引出し内箱)とは、それぞれのユニット空間同士がユニット空間面関連付けされており、ユニット空間面関連付けにおいて、引出し前板のユニット空間の後面(F面)と引出し内箱のユニット空間の前面(B面)との面間距離はゼロと指定されている。ユニット1(キャビネット100)とユニット3(引出し前板)とは、それぞれのユニット空間同士がユニット空間面関連付けされており、ユニット空間面関連付けにおいて、ユニット3(引出し前板)のユニット空間の後面(F面)とユニット1(キャビネット100)のユニット空間の前面(B面)の間の面間距離は5mmと指定されている。ユニット3(引出し前板)とユニット4(引出し取っ手400)とは、それぞれのユニット空間同士がユニット空間面関連付けされており、ユニット空間面関連付けにおいて、引出し前板のユニット空間の前面(B面)と引出し取っ手の後面(F面)との面間距離はゼロと指定されている。
【0143】
以上の各面関連付けが設定された上で、ユニット1(キャビネット100)のユニット空間の下面を10mm下方向(E方向)に下げると、ユニット空間の下面とユニット空間・パーツ部材面関連付けされたパーツ部材の下面が10mm下方向(E方向)に移動する。すると、そのパーツ部材とパーツ部材面関連付けされた他のパーツ部材の下面がパーツ部材面関連付けで設定した面間距離に従って10mm下方向に移動し、それに従って、他のパーツ部材の寸法が変更されて、ユニット1(キャビネット100)のセル空間P2の寸法が変更される。セル空間P2の寸法が変更されると、セル空間P2とセル空間・ユニット空間面関連付けされた引出し内箱ユニット2のユニット空間の寸法が変更される。引出し内箱ユニット2のユニット空間の寸法が変更されると、引出し内箱ユニット2を構成する各パーツ部材の寸法がユニット空間・パーツ部材面関連付けとパーツ部材面関連付けに従って変更される。
【0144】
ユニット1(キャビネット)の寸法が変更されると、ユニット1のユニット空間と、前板ユニット3のユニット空間との間に付けられたユニット空間面関連付けに従って引出し前板ユニットの寸法が変更される。その結果、引出し前板のパーツ部材の寸法が変更される。
【0145】
引出し前板ユニット3の寸法が変更されると、引出し前板に取り付けられている取っ手ユニット4の寸法が、前板ユニット3のユニット空間の前面(B面)と取っ手ユニット4のユニット空間のF面との間の面間距離をゼロとして設定されたユニット空間面関連付けに従って変更される。その結果、引出し取っ手のパーツ部材の寸法が変更される。
【0146】
実施例3(扉付収納ケース)
図21は本発明の別の実施例である扉付収納ケースを示す。図21の扉付収納ケース(製品)は、キャビネット100(ユニット1)と、扉300(ユニット2)と、取っ手400(ユニット3)とからなる。扉200とキャビネット100の間には2mm間隔を設けてある。
【0147】
ユニット1(キャビネット100)を構成する各パーツ部材の面相互間には面間距離ゼロでパーツ部材面関連付けがされている。ユニット1のユニット空間と、ユニット1(キャビネット100)を構成する各パーツ部材の面との間には面間距離ゼロでユニット空間・パーツ部材面関連付けがされている。
【0148】
ユニット1のユニット空間1とユニット2(扉)のユニット空間2とは扉とキャビネットの間に2mmの間隔を設けて、ユニット空間面関連付けされている。図21では、ユニット空間1の上面(A面)とユニット空間2の上面(A面)とは互いに平行で同一平面上にある。ユニット空間1の左側面(C面)とユニット空間2の左側面(C面)とは互いに平行で同一平面上にある。ユニット空間1の右側面(D面)とユニット空間2の右側面(D面)とは互いに平行で同一平面上にある。ユニット空間1の下面(E面)とユニット空間2の下面(E面)とは互いに平行で同一平面上にある。ユニット1のユニット空間1の前面(B面)とユニット2のユニット空間2の後面(F面)とは、互いに平行で面間距離が2mmである。扉の厚さは15mmに固定されている。
【0149】
ユニット2(扉)とユニット3(扉取っ手400)とは、取っ手が(外接直方体空間)扉の前面に接合されている。図21では、ユニット空間2の上面(A面)とユニット空間3の上面(A面)とは互いに平行で所定距離離れている。ユニット空間2の左側面(C面)とユニット空間3の左側面(C面)とは互いに平行で所定距離離れている。ユニット空間2の右側面(D面)とユニット空間3の右側面(D面)とは互いに平行で所定距離離れている。ユニット空間2の下面(E面)とユニット空間3の下面(E面)とは互いに平行で所定距離離れている。ユニット1のユニット空間1の前面(B面)とユニット2(扉)のユニット空間2の後面(F面)とは、互いに平行で同一平面上にある。
【0150】
以上の面関連付けをした上で、ユニット1(キャビネット100)のユニット空間の上面を10mm上方向(A方向)に上げると、キャビネットユニット1のユニット空間の上面とユニット空間面関連付けされた扉ユニット2のユニット空間の上面が10mm上方向(A方向)に移動する。すると、扉ユニット2のユニット空間とユニット空間・ユニット空間面関連付けされている扉取っ手ユニット3のユニット空間の上面がユニット空間面関連付けの設定に従って上方向(A方向)に移動する。以上の結果、ユニット1,2.3を構成する各パーツ部材の位置と寸法が連動して変更される。
【0151】
以上説明した実施例は、本発明の説明の便宜のため家具としては最も単純な構造の製品としたが、本発明は、より複雑な構造を有する家具にも適用可能である。又、本発明は、家具の設計、製造に好適に用いることができるが、その適用は家具に限られるものではなく、広く複数の構成部材からなる立体構造物の設計、製造にも用いることができる。
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