(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本実施形態の導電性接着剤層用のキャリアフィルム112は、導電性接着剤層111を有するボンディングフィルム100における、導電性接着剤層111の表面に設けられている。
【0014】
本実施形態の導電性ボンディングフィルム100は、
図2に示すように、打ち抜き金型を用いる等して、導電性接着剤層111のみをハーフカットし、所定のパターンに打ち抜いた後、プリント配線基板200の所定の位置に仮固定することができる。この際に、キャリアフィルム112を通して、パターン化された導電性接着剤層111の位置を確認しながら、プリント配線基板の所望の位置に位置合わせを行う。次に、キャリアフィルム112を剥離し、導電性接着剤層111の上に補強板等を配置して加圧・加熱することにより、プリント配線基板200と補強板とを貼り合わせて導通させることができる。
【0015】
導電性接着剤層111の位置合わせを容易にするためには、キャリアフィルム112の全光線透過率を高くし、導電性接着剤層111の位置を把握しやすくすることが好ましい。一方、キャリアフィルム112の剥がし忘れを防ぐためには、キャリアフィルム112の全光線透過率を低くして視認性を高くすることが好ましい。一般的に、下側の層を容易に視認できるフィルムの全光線透過率は少なくとも70%〜80%程度であり、存在を容易に確認できるフィルムの全光線透過率は高くても20%程度である。しかし、本願発明者らは、キャリアフィルム112の全光線透過率と共に下側の層との色差(ΔE*
ab)を制御することにより、下側の層の位置の把握のし易さと、視認性とを両立させられることを見いだした。
【0016】
本開示の導電性ボンディングフィルム100は、キャリアフィルム112の全光線透過率が30%以上、好ましくは45%以上、80%以下、好ましくは75%以下である。ΔE*
abは20以上、好ましくは30以上、より好ましくは33以上である。ΔE*
abは大きければ大きい方がよいが、色調整の現実的な範囲としては、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは39以下である。
【0017】
これにより、キャリアフィルム側から、打ち抜きによりパターン化された導電性接着剤層111の視認が容易となり、その位置を正確に把握することができる。これにより、パターン化された導電性接着剤層111を正確に位置合わせしてプリント配線基板200に仮固定することができる。
【0018】
また、全光線透過率及びΔE*
abを所定の値とすることにより、キャリアフィルム112の視認性も高くなり、仮固定した後にキャリアフィルム112を剥がし忘れにくくすることもできる。
【0019】
本実施形態のキャリアフィルム112は、下側の導電性接着剤層111のL*値を、好ましくは40以上、より好ましくは50以上、好ましくは70以下、より好ましくは60以下とすることにより、さらに導電性接着剤層111及びキャリアフィルム112の視認性を向上させることができる。
【0020】
なお、キャリアフィルム112の全光線透過率、キャリアフィルム112と導電性接着剤層111とのΔE
ab*、導電性接着剤層111のL*値は、実施例において示す方法により測定することができる。
【0021】
キャリアフィルム112は、全光線透過率及び導電性接着剤層111に対するΔE
ab*が所定の値を満たしていれば、その材質は問わないが、例えば熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、及び活性エネルギー線硬化性組成物等を用いることができる。このような樹脂組成物としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、又はポフィフェニレンサルファイド等 を用いることができる。全光線透過率及を調整するために、これらの樹脂に種々の添加物を添加することができる。このような添加物としては、特に限定されないが、顔料や染料を使用することができる。顔料としては、有機顔料及び無機顔料等が挙げられる。
【0022】
有機顔料の具体例としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー及びピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット及びパーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン及びチオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド及びキナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド及びペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンエロー及びイソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド及びピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料;縮合アゾ系有機顔料;ベンズイミダゾロン系有機顔料;キノフタロンエロー等のキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエロー等のイソインドリン系有機顔料;並びにその他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド及びジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0023】
また、無機顔料の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック及び合成鉄黒等を挙げることができる。
【0024】
染料としては、従来から知られた種々の化合物を使用することができる。
【0025】
キャリアフィルム112と、導電性接着剤層111との間には離型剤層(図示せず)を設けることができる。離型剤層は、シリコン系又は非シリコン系の離型剤を、キャリアフィルム112の導電性接着剤層111側の表面に塗布することにより形成することができる。離型剤層を形成する場合、その厚さは、数μm〜10数μm程度とすることができる。
【0026】
本実施形態において、導電性接着剤層111は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等の樹脂成分と、導電性フィラーとを含んでいる。
【0027】
導電性接着剤層111が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂として例えばスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、及びアクリル系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
導電性接着剤層111が熱硬化性樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂として例えばフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びアルキッド系樹脂等を用いることができる。活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。これらの組成物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
熱硬化性樹脂は、例えば反応性の第1の官能基を有する第1樹脂成分と、第1の官能基と反応する第2樹脂成分とを含む。第1の官能基は、例えばエポキシ基、アミド基、又は水酸基等とすることができる。第2の官能基は、第1の官能基に応じて選択すればよく、例えば第1官能基がエポキシ基である場合、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基及びアミノ基等とすることができる。具体的には、例えば第1樹脂成分をエポキシ樹脂とした場合には、第2樹脂成分としてエポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。また、第1樹脂成分が水酸基である場合には、第2樹脂成分としてエポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0030】
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応を促進する硬化剤を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂が第1の官能基と第2の官能基とを有する場合、硬化剤は、第1の官能基及び第2の官能基の種類に応じて適宜選択することができる。第1の官能基がエポキシ基であり、第2の官能基が水酸基である場合には、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、及びカチオン系硬化剤等を使用することができる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。この他、任意成分として消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、希釈剤、沈降防止剤、レベリング剤、カップリング剤、着色剤、及び難燃剤等を含んでいてもよい。
【0031】
導電性フィラーは、特に限定されないが、例えば、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。金属フィラーとしては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、及び金コートニッケル粉等を挙げることができる。これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、又は還元法等により作製することができる。中でも銀粉、銀コート銅粉及び銅粉のいずれかが好ましい。
【0032】
導電性フィラーは、フィラー同士の接触の観点から、平均粒子径が好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。導電性フィラーの形状は特に限定されず、球状、フレーク状、樹枝状、又は繊維状等とすることができる。
【0033】
導電性フィラーの含有量は、用途に応じて適宜選択することができるが、導電性接着剤層の全固形分中で好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。埋め込み性の観点からは、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。また、異方導電性を実現する場合には、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0034】
導電性接着剤層111は、例えばキャリアフィルム112の上に、導電性接着剤層用組成物を塗布することにより形成することができる。導電性接着剤層用組成物は、導電性接着剤層用の樹脂及びフィラーに適量の溶剤を加えて調製すればよい。
【0035】
導電性接着剤層111の厚さは、埋め込み性を制御する観点から、1μm〜50μmとすることが好ましい。
【0036】
なお、必要に応じて、導電性接着剤層111の表面に剥離可能な保護用フィルムを貼り合わせてもよい。また、キャリアフィルム112の両面に離型剤層を設ける等して、キャリアフィルム112と導電性接着剤層111とが交互に配置されるように巻回することもできる。
【0037】
本実施形態の導電性ボンディングフィルム100は、キャリアフィルム112を残して導電性接着剤層111をハーフカットしてパターン化した後、プリント配線基板200に仮固定することができる。しかし、導電性接着剤層111と共にキャリアフィルム112をカットしてパターン化し、プリント配線基板200に仮固定することもできる。この場合においても、キャリアフィルム112の剥がし忘れを生じにくくでき、有用である。
【0038】
本実施形態の導電性接着剤層用キャリアフィルム112は、フレキシブルプリント配線基板に導電性補強板及び放熱板等を貼り合わせる導電性ボンディングフィルムに用いることができるだけでなく、シールドフィルム等の導電性接着剤層のキャリアフィルムとしても有用である。
【実施例】
【0039】
以下に、本開示の導電性ボンディングフィルムについて実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0040】
<導電性ボンディングフィルムの作製>
所定のキャリアフィルムの表面に、非シリコン系の離型剤を塗布して離型剤層を形成した。離型剤層の厚さは、0.1μmとした。次に、導電性接着剤層用組成物をワイヤーバーにより塗布した後、100℃×3分の乾燥を行い、厚さが60μmの導電性接着剤層を形成し、導電性ボンディングフィルムを得た。
【0041】
導電性接着剤層用組成物は、酸価が25mgKOH/gのポリウレタンポリウレア樹脂55質量部に対して、エポキシ樹脂45質量部を配合して作製した。なお、エポキシ樹脂の組成は、フェノキシタイプのエポキシ樹脂(商品名jER4275、三菱化学製)20質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名jER152、三菱化学製)20質量部、ゴム変性エポキシ樹脂(商品名ERP−4030、旭電化製)5質量部とした。これを、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ドクターブレイド(板状のヘラ)を用いてハンドコートし、100℃×3分の乾燥を行って導電性接着フィルムを作製した。なお、ドクターブレイドは、作製する導電性接着フィルムの厚みに応じて、1mil〜5mil品を適切に選択した。なお、1mil=1/1000インチ=25.4μmである。各実施例及び各比較例においては、導電性接着フィルムの厚みが所定の厚みとなるように作製した。なお、導電性接着フィルムの厚みは、マイクロメータによって測定した。
【0042】
また、導電性フィラーとしては、平均粒径が5μmの銀粉(福田金属箔粉工業株式会社製)を使用した。
【0043】
<全光線透過率の測定>
キャリアフィルムの全光線透過率は、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、 SH7000)を用い、JIS K 7361に準拠して測定した。
【0044】
<L*の評価>
導電性接着剤層のL*値は、積分球分光測色計(X−Rite社製、Ci64、タングステン光源)を用いて測定した。
【0045】
<色差の測定>
キャリアフィルムと導電性接着剤層との色差(ΔE*
ab)は、積分球分光測色計(X−Rite社製、Ci64、タングステン光源)を用いてCIE76(delta E76)に準拠して測定した。
【0046】
<視認性評価>
キャリアフィルムの視認性については、ボンディングフィルムをキャリアフィルム側から観察し、目視によりキャリアフィルムの存在を確認できた場合を良好(○)とし、確認できなかった場合を不良(×)とした。
【0047】
導電性接着剤層の視認性については以下のようにして評価した。キャリアフィルムを残して、ボンディングフィルムの導電性接着剤層の一部をロ字状にハーフカットして正方形の導電性接着剤層を形成した。ポリイミドフィルムの上に、導電性接着剤層を下にして、ハーフカットしたボンディングフィルムを配置し、キャリアフィルム側から正方形の導電性接着剤層が透過して見えるかどうかを目視により確認した。具体的には、正方形の導電性接着剤層の4隅の角が90°であることが目視により確認できた場合を良好(○)とし、正方形の導電性接着剤層の4隅の角が90°であることが目視により確認できなかった場合を不良(×)とした。
【0048】
(実施例1)
キャリアフィルムとして、厚さが50μmのPETフィルムを用いた。全光線透過率は50%であり、導電性接着剤層のL*値は51であった。また、PETフィルムと導電性接着剤層の色差(ΔE*
ab)は34であった。キャリアフィルム側からの導電性接着剤層の視認性は良好(○)であり、キャリアフィルムの視認性も良好(○)であった。
【0049】
(実施例2)
キャリアフィルムとして、厚さが55μmの乳白色PETフィルムを用いた。全光線透過率は65%であり、導電性接着剤層のL*値は69であった。また、ΔE*
abは34であった。キャリアフィルム側からの導電性接着剤層の視認性は良好(○)であり、キャリアフィルムの視認性も良好(○)であった。
【0050】
(実施例3)
キャリアフィルムとして、厚さが50μmの乳白色PETフィルムを用いた。全光線透過率は46%であり、導電性接着剤層のL*値は41であった。また、ΔE*
abは35であった。キャリアフィルム側からの導電性接着剤層の視認性は良好(○)であり、キャリアフィルムの視認性も良好(○)であった。
【0051】
(比較例1)
キャリアフィルムとして、厚さが38μmの白色PETフィルムを用いた。全光線透過率は13%であり、導電性接着剤層のL*値は60であった。また、ΔE*
abは40であった。キャリアフィルム側からの導電性接着剤層の視認性は不良(×)であったが、キャリアフィルムの視認性は良好(〇)であった。
【0052】
(比較例2)
キャリアフィルムとして、厚さが50μmの白色PETフィルムを用いた。全光線透過率は5%であり、導電性接着剤層のL*値は55であった。また、ΔE*
abは32であった。キャリアフィルム側からの導電性接着剤層の視認性は不良(×)であったが、キャリアフィルムの視認性は良好(〇)であった。
【0053】
(比較例3)
キャリアフィルムとして、厚さが38μmの透明PETフィルムを用いた。全光線透過率は90%であり、導電性接着剤層のL*値は53であった。また、ΔE*
abは2.9であった。キャリアフィルム側からの導電性接着剤層の視認性は良好(〇)であったが、キャリアフィルムの視認性は不良(×)であった。
【0054】
表1に各実施例及び比較例の結果をまとめて示す。
【0055】
【表1】
【解決手段】導電性接着剤層用キャリアフィルム112は、導電性接着剤層111の表面に設けられ、全光線透過率が30%以上、80%以下であり、導電性接着剤層111とのΔE*