(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6405502
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】角度検出器のキャリア成分の位相ズレ量を検出する方法および手段、回転角度を検出する方法、角度検出器
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-171984(P2017-171984)
(22)【出願日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年9月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】櫛原 弘
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】新井 真一
(72)【発明者】
【氏名】牛草 遼平
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2016/0202088(US,A1)
【文献】
国際公開第2016/030948(WO,A1)
【文献】
特開2004−61157(JP,A)
【文献】
特開2016−3926(JP,A)
【文献】
特開2012−198180(JP,A)
【文献】
特開2007−309735(JP,A)
【文献】
特開2011−226907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相励磁の位相変調方式の角度検出器に係る、励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出する方法であって、
第1相の励磁信号を用いて、第2相の励磁信号を用いずに、角度検出器を励磁する、1相励磁ステップと、
第1相の励磁信号と、前記1相励磁ステップにおける出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出するステップと
を備える、方法。
【請求項2】
2相励磁の位相変調方式の角度検出器を用いて回転角度を検出する方法であって、
請求項1に記載の方法を用いて前記位相ズレ量を検出するステップと、
第1相の励磁信号および第2相の励磁信号に基づく出力信号と、前記位相ズレ量とに基づいて、回転角度を算出するステップと
を備える、方法。
【請求項3】
2相励磁の位相変調方式の角度検出器に係る、励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出する装置であって、
第2相の励磁信号を、励磁巻線に供給するか否かを切り替える切替手段と、
第1相の励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出する、位相差計測手段と、
を備える、装置。
【請求項4】
2相励磁の位相変調方式の角度検出器と、
請求項3に記載の装置と、
第1相の励磁信号および第2相の励磁信号に基づく出力信号と、前記位相ズレ量とに基づいて、回転角度を算出する、角度算出手段と
を備える、角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、計測技術に係る分野に属し、とくに、精密な角度検出に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
位相変調方式の角度検出器が公知である。たとえば非特許文献1には、2相励磁位相変調方式の角度検出器として、BRT、RT、VRT、RS、BRS等の構成が開示されている。また、これら以外にも、位相変調方式の角度検出器として、ステータ内に互いに直交した励磁巻線2相と出力巻線2相とを施し、ロータ側は鉄芯だけの構造とした構成(VRS)も考えられる。VRSの出力信号はRSおよびBRSと同様である。
【0003】
位相変調を利用した角度検出器では、使用環境等によって、キャリア(搬送波)成分の位相ズレ(位相誤差)を生じる場合がある。これは非特許文献1の5ページおよび13ページでも「位相誤差」として説明されている。
【0004】
キャリア成分の位相ズレは、たとえば角度検出器自体の特性や、伝送路(接続ケーブル、ワイヤーハーネス等)のインピーダンス等に起因して発生する場合がある。位相変調方式の角度検出器では、キャリア成分の位相ズレは、本来検出すべき角度等の検出対象情報の誤差成分となり、角度検出誤差に直結するため、位相ズレ量を正確に把握する必要がある。
【0005】
振幅変調方式の角度検出器の位相ズレ量を検出する技術として、特許文献1〜3に記載される構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−145273号公報
【特許文献2】特開2006−17659号公報
【特許文献3】特開2011−99828号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「日本電機工業会技術資料 JEM−TR187 レゾルバシステムの用語と定義」、社団法人日本電機工業会、1993年12月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、位相変調方式の角度検出器における位相ズレ量を検出することができないという問題があった。特許文献1〜3はいずれも振幅変調方式のものであり、位相変調方式に適用することはできない。
【0009】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたものであり、位相変調方式の角度検出器において、キャリア成分の位相ズレ量を検出できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る、位相ズレ量を検出する方法は、
2相励磁の位相変調方式の角度検出器に係る、励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出する方法であって、
第1相の励磁信号を用いて、第2相の励磁信号を用いずに、角度検出器を励磁する、1相励磁ステップと、
第1相の励磁信号と、前記1相励磁ステップにおける出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出するステップと
を備える。
また、この発明に係る、回転角度を算出する方法は、
2相励磁の位相変調方式の角度検出器を用いて回転角度を検出する方法であって、
上述の方法を用いて前記位相ズレ量を検出するステップと、
第1相の励磁信号および第2相の励磁信号に基づく出力信号と、前記位相ズレ量とに基づいて、回転角度を算出するステップと
を備える。
また、この発明に係る、位相ズレ量を検出する装置は、
2相励磁の位相変調方式の角度検出器に係る、励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出する装置であって、
第2相の励磁信号を、励磁巻線に供給するか否かを切り替える切替手段と、
第1相の励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出する、位相差計測手段と、
を備える。
また、この発明に係る角度検出装置は、
2相励磁の位相変調方式の角度検出器と、
上述の装置と、
第1相の励磁信号および第2相の励磁信号に基づく出力信号と、前記位相ズレ量とに基づいて、回転角度を算出する、角度算出手段と
を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、位相変調方式の角度検出器において、1相のみの励磁信号を用いて角度検出器を励磁し、その際の励磁信号と出力信号とに基づいて位相ズレ量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る角度検出装置において、回転角度を算出するための状態の例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る角度検出装置において、キャリア成分の位相ズレ量を検出するための状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1および
図2に、本発明の実施の形態1に係る角度検出装置100を含む構成の例を示す。角度検出装置100は、角度検出器10と、信号処理部20と、角度算出手段30とを備え、角度検出器10の回転角度θ
Mを出力する。
【0014】
角度検出器10は、2相励磁の位相変調方式の角度検出器である。このような角度検出器10の例としては、2相励磁/1相出力方式のもの(BRT,VRT,RT)や、2相励磁/2相出力方式のもの(BRS,VRS,RS)等が挙げられる。図示の例では角度検出器10はVRTである。
【0015】
信号処理部20は、励磁回路21と、切替手段22と、位相差計測手段23とを備える。励磁回路21は、2相の励磁信号を角度検出器10に供給する。2相の励磁信号はたとえば互いに直交する位相を持つ。本実施形態では、第1相の励磁信号をsinωtで表し、第2相の励磁信号をcosωtで表す。なお、この例では、説明の便宜上、励磁信号の振幅を1としているが、振幅を定数E等とおいても本質的に同一である。
【0016】
本実施形態では、信号処理部20は、角度検出器10に係る、励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量を検出する装置として機能する。
【0017】
切替手段22は、励磁回路21と角度検出器10との間に設けられ、2相の励磁信号のうち一方(本実施形態では第2相のcosωt)を、角度検出器10の励磁巻線に供給するか否かを切り替える。切替手段22はたとえば半導体を用いたスイッチによって構成されるが、励磁信号を切り替える機能を有するものであればどのような構造であってもよい。また、切替手段22の切替状態は、図示しない制御装置等によって制御されてもよい。
【0018】
位相差計測手段23は、2相の励磁信号のうち一方(本実施形態では第1相のsinωt)と、角度検出器10の出力信号との間の、キャリア成分の位相ズレ量ε
Pを検出する機能を備える。本実施形態では、この機能は
図2の状態において発揮されるが、詳細は後述する。
【0019】
角度算出手段30は、角度検出器10の出力信号と、位相差計測手段23の出力信号すなわち位相ズレ量ε
Pとに基づいて、角度検出器10の回転角度θ
Mを算出する機能を備える。本実施形態では、この機能は
図1の状態において発揮されるが、詳細は後述する。
【0020】
図1は、角度検出器10の回転角度θ
Mを算出するための状態の例を表し、
図2は、キャリア成分の位相ズレ量ε
Pを検出するための状態の例を表す。
図1の状態では切替手段22はオンすなわち接続状態に制御されており、
図2の状態では切替手段22はオフすなわち切断状態に制御されている。
【0021】
まず
図1の状態について信号処理部20の動作を説明する。
この状態では、角度検出器10には第1相の励磁信号sinωtおよび第2相の励磁信号cosωtが供給される。すなわち、信号処理部20は、第1相の励磁信号sinωtおよび第2相の励磁信号cosωtを用いて、角度検出器10を励磁する(2相励磁ステップ)。
【0022】
この状態における角度検出器10の出力信号vは、非特許文献1の5ページの出力電圧方程式:
v=K(√2・E
1・sinωt×cosNθ
M+√2・E
1・cosωt×sinNθ
M)
…(式1)
に従う電圧信号である。
【0023】
本実施形態では、励磁電圧E
1=1/√2、軸倍角N=1、変圧比K=1とする。また、励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量ε
Pを考慮するために、ωtをωt+ε
Pで置き換える。このようにおくと、上記式1は次のようになる。
v=sin(ωt+ε
P)×cosθ
M+cos(ωt+ε
P)×sinθ
M
=sin(ωt+θ
M+ε
P) …(式2)
【0024】
このように、位相変調方式の角度検出器では、出力信号は励磁信号に対する位相差の形で表され、位相ズレ量ε
Pはそのまま出力信号に表れ誤差となる。この位相ズレ量ε
Pを検出することができれば、位相ズレに起因する角度検出器10の出力誤差を補正することができる。
【0025】
次に、
図2の状態について信号処理部20の動作を説明する。
この状態では、角度検出器10には第1相の励磁信号sinωtのみが供給され、第2相の励磁信号cosωtは供給されず0となる。すなわち、信号処理部20は、第1相の励磁信号sinωtを用いて、第2相の励磁信号cosωtを用いずに、角度検出器10を励磁する(1相励磁ステップ)。
【0026】
角度検出器10がsinωtのみによって励磁され、cos(ωt+ε
P)=0とみなせるものとすると、上記式2は次のようになる。
v=sin(ωt+ε
P)×cosθ
M+0×sinθ
M
=sin(ωt+ε
P)×cosθ
M …(式3)
【0027】
このように、1相の励磁信号のみを用いて角度検出器10を励磁すると、角度検出器10の出力信号はその振幅変調信号となる。ここで、位相差計測手段23は、第1相の励磁信号sinωtと、対応する出力信号(1相励磁ステップにおける出力信号)との間のキャリア成分の位相ズレ量ε
Pを検出する。
【0028】
上記式3における出力信号のキャリア成分はsin(ωt+ε
P)であり、第1相の励磁信号sinωtのキャリア成分はそのままsinωtであるので、これらに基づいてキャリア成分の位相ズレ量ε
Pを検出することができる。検出のための具体的構成は任意に設計可能であるが、たとえばカウンタを用いてもよい。本実施形態に係る信号処理部20は、このような方法によって位相ズレ量ε
Pを検出することができる。
【0029】
角度算出手段30は、第1相の励磁信号sinωtおよび第2相の励磁信号cosωtに基づく角度検出器10の出力信号、すなわち
図1の状態における出力信号sin(ωt+θ
M+ε
P)と、
図2の状態において位相差計測手段23から出力される位相ズレ量ε
Pとに基づいて、角度検出器10の回転角度θ
Mを算出する。
【0030】
θ
Mの具体的な決定方法は、任意に設計することができる。たとえば、励磁回路21と、A/D変換器と、アキュムレータとを含み、所定の制御則に従う公知のフィードバックループを用いてもよい。角度検出装置100は、このような方法によって回転角度θ
Mを検出する。
【0031】
この際の手順の具体的な実行方法はどのようなものであってもよいが、以下に一例を示す。まず、図示しない制御装置(角度検出装置100の一部であってもよいし、角度検出装置100の外部に設けられるコンピュータ等であってもよい)が、切替手段22をオフ状態に切り替え、角度検出装置100を
図2の状態に構成する。この状態で、位相差計測手段23は、上述の方法によって位相ズレ量ε
Pを検出し、角度算出手段30は検出された位相ズレ量ε
Pを記憶する。
【0032】
次に、制御装置は、切替手段22をオン状態に切り替え、角度検出装置100を
図1の状態に構成する。この状態で、角度検出装置100は、上述の方法によって出力信号sin(ωt+θ
M+ε
P)を取得する。そして、角度算出手段30は、この出力信号と、記憶されていた位相ズレ量ε
Pとに基づき、回転角度θ
Mを算出する。角度算出手段30は、算出した回転角度θ
Mを出力してもよい。
【0033】
このように、実施の形態1に係る角度検出器10は、2相励磁の位相変調方式のものであるが、2相の励磁巻線のうち片側1相のみの巻線を用いることにより、1相励磁の振幅変調方式の角度検出器と同様の原理で動作させることができる。なわち、本来は位相変調方式である角度検出器10を、敢えて振幅変調方式で用い、その入出力間の励磁成分位相差を計測することにより、位相変調方式におけるキャリア成分の位相ズレ量を正確に把握することができる。
【0034】
とくに、位相変調方式の角度検出器10において、角度検出器10自体の特性や、伝送路(接続ケーブル、ワイヤーハーネス等)のインピーダンス等の使用環境に起因する位相ズレを補正することが可能となり、位相ズレの影響を受けない正確な回転角度θ
Mを検出することができる。
【0035】
実施の形態1では、角度検出器10はVRTであるが、2相励磁の位相変調方式のものであればVRTに限らず、BRT、RT、RS、BRS、VRS、等の構成についても同様に適用可能である。
【0036】
また、実施の形態1では、
図2に示すように、位相ズレ量ε
Pを検出するために第1相の励磁信号sinωtを用いるが、これに代えて第2相の励磁信号cosωtを用いてもよい。その場合には、切替手段22は、第1相の励磁信号sinωtを、角度検出器10の励磁巻線に供給するか否かを切り替えてもよい。
【0037】
また、実施の形態1では、角度検出装置100は角度検出器10および角度算出手段30を備えるが、角度検出装置としての全体を完成させる必要がない場合には、角度検出器10および角度算出手段30は省略可能である。たとえば角度算出手段30を省略し、角度検出器10および信号処理部20のみの構成としても、回転角度を算出するために必要な情報を出力することは可能である。また、角度検出器10および角度算出手段30を省略し、信号処理部20のみの構成としても、任意の角度検出器に接続して位相ズレを検出する装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 角度検出器、20 信号処理部(位相ズレ量を検出する装置)、22 切替手段、23 位相差計測手段、30 角度算出手段、100 角度検出装置。
【要約】
【課題】位相変調方式の角度検出器において、キャリア成分の位相ズレ量を検出できる技術を提供する。
【解決手段】角度検出器10は、2相励磁の位相変調方式の角度検出器である。第1相の励磁信号sinωtを用いて、第2相の励磁信号cosωtを用いずに、角度検出器10を励磁する(1相励磁ステップ)。第1相の励磁信号sinωtと、1相励磁ステップにおける出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量ε
Pを検出する。このようにして、励磁信号と出力信号との間のキャリア成分の位相ズレ量ε
Pが検出される。
【選択図】
図2