特許第6405513号(P6405513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 多摩川精機株式会社の特許一覧

特許6405513ナットランナー装置におけるソケットカバー構造
<>
  • 特許6405513-ナットランナー装置におけるソケットカバー構造 図000002
  • 特許6405513-ナットランナー装置におけるソケットカバー構造 図000003
  • 特許6405513-ナットランナー装置におけるソケットカバー構造 図000004
  • 特許6405513-ナットランナー装置におけるソケットカバー構造 図000005
  • 特許6405513-ナットランナー装置におけるソケットカバー構造 図000006
  • 特許6405513-ナットランナー装置におけるソケットカバー構造 図000007
  • 特許6405513-ナットランナー装置におけるソケットカバー構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405513
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ナットランナー装置におけるソケットカバー構造
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   B25B21/00 530Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-180038(P2014-180038)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-52705(P2016-52705A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】池上 幸紀
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−029121(JP,A)
【文献】 実開昭61−201770(JP,U)
【文献】 実開平06−000619(JP,U)
【文献】 米国特許第04287923(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
B25B 23/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(32)内に設けられた駆動源(31)により、前記ケーシング(32)の先端部(33)に設けられたナットランナー部(2A)のソケットレンチ(4)を回転駆動するようにし、
前記ナットランナー部(2A)の端部(2Aa)に軸方向(A)移動自在で、かつ、スプリング(50)によって一方向に付勢されたソケットカバー(10)を有し、
前記ソケットカバー(10)は前記ソケットレンチ(4)の外周側に同軸配置されている構成としたナットランナー装置におけるソケットカバー構造において、
前記ナットランナー部(2A)の端部(2Aa)の外周に設けられ全体形状が筒状をなすソケットカバー(10)の先端部(10A)の内側に形成された輪状溝部(40)と、前記輪状溝部(40)の底壁(41)に形成された複数の貫通孔(42)と、前記各貫通孔(42)を作動自在に貫通し前記ナットランナー部(2A)の端部(2Aa)に固定されたストッパーピン(43)と、前記各ストッパーピン(43)の外端(43A)に形成され前記ストッパーピン(43)に対する前記ソケットカバー(10)の抜けを防止するためのストッパー頭部(45)と、前記ストッパーピン(43)の外周に設けられ前記ナットランナー部(2A)の端部(2Aa)と前記輪状溝部(40)の底壁(41)の内面(41A)との間に設けられたスプリング(50)と、からなり、前記ナットランナー部(2A)に対して前記ソケットカバー(10)は、常時外側(60)へ向けて付勢されている構成としたことを特徴とするナットランナー装置におけるソケットカバー構造。
【請求項2】
前記ストッパー頭部(45)が前記底壁(41)に接触している状態では、前記ソケットカバー(10)の後端(10B)は、前記ストッパーピン(43)のピン後端(43B)よりも後方に位置している構成としたことを特徴とする請求項記載のナットランナー装置におけるソケットカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットランナー装置におけるソケットカバー構造に関し、主として、ナットランナーのソケットレンチの外周側にソケットカバーを軸方向移動自在に設けることにより、回転するソケットレンチに対する安全性を向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のナットランナー装置としては、例えば、特許文献1及び2の構成を、図6及び図7に挙げることができる。
すなわち、図6の特許文献1の構成の場合、円筒状の芯ずれ吸収カバー22の両端には、ソケット部19,20からなると共に六角孔部201を有するねじ側ソケット17と各ソケット部14,15からなると共に角孔部142を有する機械側ソケット12が設けられている。
【0003】
前記芯ずれ吸収カバー22内には、胴体部11と一対のボール部112及び113からなるリンク部11が内設され、前記各ボール部112及び113と前記ソケット部15及び19との間には、スプリング23が介挿され、前記各ソケット部14,15及び19,20は付勢された状態で前記芯ずれ吸収カバー22に設けられている。
【0004】
従って、前記機械側ソケット12の各孔部142に図示しないモータの回転軸を接続し、前記ソケット部20の六角孔部201に被締付用ボルト(図示せず)を係合させた状態で、前記モータを駆動させると、前記ソケット部20によって前記ボルトの締付けを行うことができる。
【0005】
次に、図7の構成は、特許文献2の構造を示しており、図7においてナットランナー装置2内には、受動ギヤ7を有するナットソケット軸6が回転自在に設けられており、このナットソケット軸6の先端にはナットNと座金Wを保持したナットソケット4が設けられている。
【0006】
前記ナットランナー装置2の先端には、ソケットカバー10が設けられており、このソケットカバー10の先端の開口孔10aには、半径方向に向けて形成された複数の孔12が設けられ、前記各孔12内には、ばね15により付勢された係止ボール13を有するボールプランジャ11の筒状ケース14が設けられている。
前記係止ボール13は、前記筒状ケース14の開口形状によって外方に飛び出すことのないように保持されている。
【0007】
従って、図7の構成において、前記受動ギヤ7に対して、図示しない駆動源の駆動ギヤを噛合させると、ナットNとワッシャWが回転し、この回転状態のままで前記ナットNとワッシャWを図示しないねじ軸に螺合させると、ナットNとワッシャWはボールプランジャ11で保持されたままでねじ軸に螺合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4841493号公報
【特許文献2】実開平6−619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のナットランナー装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図6に示される特許文献1の構成においては、ナットを締め付けるためのソケット部20が外部に露出しているため、作業中にソケット部20に触れると大変危険である。
【0010】
また、図7に示される特許文献2の構成の場合、ソケットカバー10内にナットNと座金Wが設けられた状態でナットランナー装置2のナットランナー部2Aを相手方のボルトに対して螺合させる時に、ソケットカバー10が固定状態であるため、このソケットカバー10が相手方の固定部分に当接し、ナット締めの障害となることもあった。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、ナットランナーのソケットレンチ外周にソケットカバーを軸方向移動自在に設けることにより、回転するソケットレンチに対する安全性を向上させるようにしたナットランナー装置におけるソケットカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるナットランナー装置におけるソケットカバー構造は、ケーシング内に設けられた駆動源により、前記ケーシングの先端部に設けられたナットランナー部のソケットレンチを回転駆動するようにし、前記ナットランナー部の端部に軸方向移動自在で、かつ、スプリングによって一方向に付勢されたソケットカバーを有し、前記ソケットカバーは前記ソケットレンチの外周側に同軸配置されている構成において、前記ナットランナー部の端部の外周に設けられ全体形状が筒状をなすソケットカバーの先端部の内側に形成された輪状溝部と、前記輪状溝部の底壁に形成された複数の貫通孔と、前記各貫通孔を作動自在に貫通し前記ナットランナー部の端部に固定されたストッパーピンと、前記各ストッパーピンの外端に形成され前記ストッパーピンに対する前記ソケットカバーの抜けを防止するためのストッパー頭部と、前記ストッパーピンの外周に設けられ前記ナットランナー部の端部と前記輪状溝部の底壁の内面との間に設けられたスプリングと、からなり、前記ナットランナー部に対して前記ソケットカバーは、常時外側へ向けて付勢されている構成であり、また、前記ストッパー頭部が前記底壁に接触している状態では、前記ソケットカバーの後端は、前記ストッパーピンのピン後端よりも後方に位置している構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるナットランナー装置におけるソケットカバー構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ケーシング内に設けられた駆動源により、前記ケーシングの先端部に設けられたナットランナー部のソケットレンチを回転駆動するようにし、前記ナットランナー部の端部に軸方向移動自在で、かつ、スプリングによって一方向に付勢されたソケットカバーを有し、前記ソケットカバーは前記ソケットレンチの外周側に同軸配置されていることにより、回転するソケットレンチに対する安全性が向上する。また、ソケットレンチの相手方の座面への接触を防止できる。
また、前記ナットランナー部の端部の外周に設けられ全体形状が筒状をなすソケットカバーの先端部の内側に形成された輪状溝部と、前記輪状溝部の底壁に形成された複数の貫通孔と、前記各貫通孔を作動自在に貫通し前記ナットランナー部の端部に固定されたストッパーピンと、前記各ストッパーピンの外端に形成され前記ストッパーピンに対する前記ソケットカバーの抜けを防止するためのストッパー頭部と、前記ストッパーピンの外周に設けられ前記ナットランナー部の端部と前記輪状溝部の底壁の内面との間に設けられたスプリングと、からなり、前記ナットランナー部に対して前記ソケットカバーは、常時外側へ向けて付勢されていることにより、相手方の座面に対してソケットレンチが接触することはなく、従来のようなソケットレンチによる座面の擦りを防止し、その結果、ソケットレンチの回転トルク向上を得ることができる。
また、前記ストッパー頭部が前記底壁に接触している状態では、前記ソケットカバーの後端は、前記ストッパーピンのピン後端よりも後方に位置しているにより、回転中のソケットレンチをソケットカバーにより完全に覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるナットランナー装置を示す概略図である。
図2図1の平面図である。
図3図1の左側面図である。
図4図2のソケットレンチを示す左側面拡大図である。
図5図2の要部の拡大断面図である。
図6】従来のナットランナー装置を示す断面図である。
図7】従来のナットランナー装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるナットランナー装置におけるソケットカバー構造は、ナットランナーのソケットレンチ外周にソケットカバーを軸方向移動自在に設けることにより、回転するソケットレンチに対する安全性を向上させることである。
【実施例】
【0016】
以下、図面と共に本発明によるナットランナー装置におけるソケットカバー構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、図7で示されるナットランナー装置2と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。
図1で示されるナットランナー装置2においては、取手30を有しモータ等の駆動源31を有するケーシング32の先端側33に駆動軸34が設けられ、この駆動軸34には、ナットランナー分35のソケットレンチ4が接続されている。
前記駆動源31は、前記ケーシング32に取り付けられた駆動スイッチ36のオン/オフによって駆動又は非駆動とされるように構成されている。
【0017】
前記ナットランナー部35に回転自在に設けられたソケットレンチ4の外周位置には、全体形状が筒状をなすソケットカバー10が軸方向Aに沿って移動自在となるように設けられている。
【0018】
前記ソケットカバー10の先端部10Aの内側には輪状溝部40が形成され、この輪状溝部40の底壁41には複数の貫通孔42が形成されている。
前記各貫通孔42を作動自在、すなわち、軸方向Aに沿って移動自在に貫通してストッパーピン43が設けられており、各ストッパーピン43のねじ部44は前記ナットランナー部2Aの端部2Aaのねじ孔44aに螺入されて前記各ストッパーピン43がナットランナー部2Aに固定されている。
【0019】
前記各ストッパーピン43の外端43Aに形成されたストッパ頭部45は、前記底壁41の内面41Aに接触し、前記貫通孔42の孔径よりもストッパー頭部45の形状の方が大であるため、前記輪状溝部40は前記ストッパー頭部45から外方に抜けることはなく、かつ、前記ソケットカバー10は前記ストッパーピン43から外側60へは抜けることのないように構成されている。
【0020】
前記ストッパーピン43の外周には、スプリング50が圧縮された状態で設けられており、このスプリング50は、前記ナットランナー部2Aの端部2Aaと前記輪状溝部40の前記底壁41の内面41Aとの間に設けられていることにより、前記ソケットカバー10は前記ナットランナー部2Aに対して軸方向Aに沿って常時外側60に向けて付勢されている。
【0021】
図5のように、前記ナットランナー部2Aの前記ソケットレンチ4の多角孔51を用いてナット(図示せず)締めを行う前の状態では、前記ソケットカバー10の先端面10Aaが前記ソケットレンチ4の先端面4Aよりも長さL分だけ突出しているため、図5の状態でソケットレンチ4を空転させた場合でも、作業者の手等に回転中のソケットレンチ4が接触することはなく、安全性を確保することができるように構成されている。尚、前記ソケットレンチ4の外周4Bと輪状溝部40の内周40Aとは隙間Gにより非接触に保たれている。
また、図5の状態では、ソケットカバー10の後端10Bは、ストッパーピン43のピン後端43Bよりも後方に位置している。
【0022】
次に、前述の構成において、本発明によるナットランナー装置2を用いて、図示しないナット又はねじを締め付ける場合、図示しない装置の例えばボルトにナットが設けられた状態で、前記ソケットレンチ4の多角孔51にナットを係合させ、駆動スイッチ36を操作してソケットレンチ4を回転させると、ソケットカバー10の先端面10Aaは前記装置の座面に当接した状態でソケットレンチ4のみが相対的に前進すると共にソケットカバー10はスプリング50を圧縮しつつ長さL1分だけ後退し、ソケットレンチ4によるナット締めは完了する。
【0023】
尚、前述の場合、装置の座面に接触するのはソケットカバー10の先端面10Aaのみであり、前記ソケットレンチ4が直接接触することはないため、ソケットレンチ4の損傷等もなく、また、ソケットレンチと座面との接触による粉塵等は発生することがなく、安全なナット締めを行うことができる。
【0024】
また、前述の本発明によるナットランナー装置におけるソケットカバー構造の要旨は次の通りである。
ケーシング32内に設けられた駆動源31により、前記ケーシング32の先端部33に設けられたナットランナー部2Aのソケットレンチ4を回転駆動するようにし、前記ナットランナー部2Aの端部2Aaに軸方向A移動自在で、かつ、スプリング50によって一方向に付勢されたソケットカバー10を有し、前記ソケットカバー10は前記ソケットレンチ4の外周側に同軸配置されている構成において、前記ナットランナー部2Aの端部2Aaの外周に設けられ全体形状が筒状をなすソケットカバー10の先端部10Aの内側に形成された輪状溝部40と、前記輪状溝部40の底壁41に形成された複数の貫通孔42と、前記各貫通孔42を作動自在に貫通し前記ナットランナー部2Aの端部2Aaに固定されたストッパーピン43と、前記各ストッパーピン43の外端43Aに形成され前記ストッパーピン43に対する前記ソケットカバー10の抜けを防止するためのストッパー頭部45と、前記ストッパーピン43の外周に設けられ前記ナットランナー部2Aの端部2Aaと前記輪状溝部40の底壁41の内面41Aとの間に設けられたスプリング50と、からなり、前記ナットランナー部2Aに対して前記ソケットカバー10は、常時外側60へ向けて付勢されている構成としたことを特徴とするナットランナー装置におけるソケットカバー構造であり、また、前記ストッパー頭部45が前記底壁41に接触している状態では、前記ソケットカバー10の後端10Bは、前記ストッパーピン43のピン後端43Bよりも後方に位置している構成としたことを特徴とするナットランナー装置におけるソケットカバー構造である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によるナットランナー装置におけるソケットカバー構造は、ソケットレンチの外周側にソケットカバーを軸方向移動自在に設け、ソケットレンチに対する安全性及びパワーの向上を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
2 ナットランナー装置
2A ナットランナー部
2Aa 端部
4 ソケットレンチ
4A 先端面
4B 外周
10 ソケットカバー
10A 先端部
10Aa 先端面
10B 後端
A 軸方向
30 取手
31 駆動源
32 ケーシング
33 先端側
34 駆動軸
36 駆動スイッチ
40 輪状溝部
41 底壁
42 貫通孔
43 ストッパーピン
43A 外端
43B ピン後端
44 ねじ部
45 ストッパー頭部
50 スプリング
51 多角孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7