【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1に係るデッキガーニッシュの構造について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施例に係るデッキガーニッシュ1は、フロントガラス(ウィンドシールドガラス)2とフロントフード(エンジンフード)3との間に配設され、自動車の車両幅方向(
図1における紙面前後方向)に延設されている。デッキガーニッシュ1の一端側(
図1における右方側)は、フロントガラス2の下端部21に連結され、他端側(
図1における左下方側)は、デッキガーニッシュ1の車両下方(
図1における下方)に位置するカウルトップ4の上面部41に連結されている。
【0025】
デッキガーニッシュ1は、一端がフロントガラス2の下端部21に接合されて車両前方(
図1における左方)へ延びる上面部11と、当該上面部11の車両前方端部12から車両下方へ向かって車両後方(
図1における右方)へ傾斜して延びる前壁部13と、当該前壁部13の車両下方端部(取付け端部)14から車両前方へ延びてカウルトップ4の上面部41と対接する下面部15とから成り、上面部11と前壁部13と下面部15とで略Z字形状の断面を有する。
【0026】
デッキガーニッシュ1は、車両前方端部12側の前半部分がフロントフード3の下方に上下で重なるように配置されている。そして、デッキガーニッシュ1の上面部11のフロントフード3の下方に位置する部位には、フロントフード3との隙間をシールするウェザーストリップ(シール部材)5が車両幅方向に延設して取り付けられ、更に、当該ウェザーストリップ5と隣接して、ウェザーストリップ5の取り付け方向(
図1における上方向)に延びる山部(ウェザーストリップ支持部)16が形成されている。ウェザーストリップ5は、ゴム等の弾性部材から成り、デッキガーニッシュ1に取り付けるための取り付け部51と、デッキガーニッシュ1と密接してシール性を向上するためのリップ部52と、フロントフード3と密接してシール性を向上するためのチューブ部53とを備えている。
【0027】
フロントフード3が閉じられた状態(
図1における状態)においては、ウェザーストリップ5のチューブ部53は、フロントフード3の重量によって変形し、フロントフード3の内側部材であるフードインナパネル31と密接すると共に、ウェザーストリップ5のリップ部52がデッキガーニッシュ1の
ウェザーストリップ支持部16と密接することにより、デッキガーニッシュ1とフロントフード3との隙間がシールされ、図示しないエンジンルーム等に水などの異物が入り込まない構造となっている。
【0028】
本実施例に係るデッキガーニッシュ1は、車両上方からの衝撃荷重作用時における変形促進構造として、ウェザーストリップ支持部16の頂部16aに車両上方へ突出してフロントフード3と対向する突出部17を備えている。突出部17は、フロントフード3の下面を構成するフードインナパネル31との距離が、デッキガーニッシュ1の他の部位と比べて最短(間隔が最小)となるように形成され、衝突等によってフロントフード3の後端部近傍に上方から衝撃荷重が作用した際に、フロントフード3のフードインナパネル31と最初に接触するように設定されている。つまり、突出部17は、フロントフード3の下面と対向する位置に配置され、車両上方からの衝撃荷重作用時に最初にフロントフード3と当接して衝撃荷重を受ける初期荷重受部として機能している。
【0029】
また、
図2に示すように、突出部17を、ウェザーストリップ支持部16の頂部16aにおけるデッキガーニッシュ1の車両幅方向(
図2における左右方向)に沿って不連続に(間隔を空けて)複数設けている。このように突出部17を不連続に設けることにより、デッキガーニッシュ1の剛性が必要以上に高くなってしまうことを回避している。すなわち、衝撃荷重を受けた際にたわみ易い構造とすることで、衝突対象(歩行者等)に対する衝撃が高くなることを防止している。
【0030】
もちろん、本発明における突出部(初期荷重受部)は、本実施例のようにウェザーストリップ支持部16の頂部16aに形成したものに限定されない。突出部(初期荷重受部)としては、デッキガーニッシュ1の上面部11における車両前方端部12よりも車両後方側において、フロントフード3の下面であるフードインナパネル31と対向して配置され、フロントフード3のフードインナパネル31との距離が最短となるように車両上方へ突出形成したものであれば良い。また、デッキガーニッシュの剛性が必要以上に高くなることの不具合を抑えることができる場合には、突出部(初期荷重受部)を車両幅方向に沿って連続的に、すなわち、デッキガーニッシュの全域に亘って設けても良い。
【0031】
本実施例における前壁部13は、
図1に示すように、車両前方へ突出するよう湾曲した湾曲形状を成し、上下方向での中間部に向かうに従って車両前方側に突出しており、車両前方端部12と車両下方端部14とを結ぶ直線(
図1における二点鎖線)よりも車両前方側へ突出した湾曲部13aを備えている。なお、本実施例では、前壁部13全体が湾曲部13aとして車両前方側へ湾曲形成されている。湾曲部13aを形成したことによって、車両上方からデッキガーニッシュ1に衝撃荷重が作用した際に、前壁部13が車両前方へ突出して変形するようになっている。もちろん、本発明における前壁部13は、本実施例のように前壁部13全体が湾曲部13aとして湾曲したものに限定されるものではなく、前壁部13の一部分が車両前方へ突出するような湾曲形状に形成されていてもよい。また、車両前方へ突出した湾曲形状を成す湾曲部13aに限定されず、前壁部が車両前方へ突出するように屈曲部を形成しても良い。
【0032】
また、本実施例においては、デッキガーニッシュ1の車両下方端部14に肉盗み部(肉抜き部)14aを設けている。車両下方端部14に肉盗み部14aを設けることにより、車両上方からデッキガーニッシュ1に衝撃荷重が作用した際に、下面部15に対して前壁部13が車両下方端部14を支点として車両前方へ容易に屈曲(変形)するようになっている。
【0033】
本発明の実施例1に係るデッキガーニッシュの変形モードについて、
図1から
図3Bを参照して説明する。
【0034】
図3Aに示すように、衝突等によってデッキガーニッシュ1近傍のフロントフード3に衝撃荷重が作用すると、フロントフード3のフードアウタパネル32およびフードインナパネル31が変形し、フードインナパネル31がその下方(
図3Aにおける下方)に位置するデッキガーニッシュ1と接触する。このとき、突出部17を、デッキガーニッシュ1においてフードインナパネル31との距離が最短となるように車両上方(
図3Aにおける上方)に向かって突出して形成しているので、フードインナパネル31は突出部17と最初に接触する。
【0035】
フードインナパネル31と突出部17とが接触し、デッキガーニッシュ1における突出部17に車両上方からの衝撃荷重が作用すると、デッキガーニッシュ1の上面部11には、車両前方端部12側を車両上方に向かって、突出部17側を車両下方に向かって変位させようとする回転モーメントM
1(
図3Aにおける右回りの力)が作用する。そして、この回転モーメントM
1を受けることで、前壁部13は、上端部(車両前方端部12)側が車両後方に向かって回転しつつ車両下方へ押されるので、中間部分が車両前方側に押し出されるように湾曲しながら変形する。よって、デッキガーニッシュ1は、前壁部13が車両前方へ突出するように変形した状態で潰れる。
【0036】
つまり、車両上方からの衝撃荷重が作用した際に、デッキガーニッシュ1は前壁部13が従来(
図4A参照)のように車両後方へ突出するように変形することがない。したがって、カウルトップ4とデッキガーニッシュ1との間、すなわち、デッキガーニッシュ1の上面部11と下面部15との間に前壁部13が入り込んで、上面部11とカウルトップ4に挟まれるのを回避することができる。これにより、前壁部13がデッキガーニッシュ1全体の変形を阻害するような変形モードを回避することができ、最終的な変形ストロークを従来よりも長く確保することができる。
【0037】
なお、このとき、前壁部13に車両前方へ突出するよう湾曲した湾曲部13aを形成しているので、前壁部13をより確実かつスムーズに車両前方へ突出するように変形させることができる。
【0038】
また、前壁部13と下面部15との連結部である車両下方端部14に肉盗み14a(
図1参照)を設けているので、車両上方からの衝撃荷重が作用したデッキガーニッシュ1は、当該車両下方端部14を支点として、下面部15に対して前壁部13が車両前方へ倒れるように屈曲し易い。つまり、車両下方端部14に肉盗み14aを設けて、デッキガーニッシュ1における車両下方端部14の剛性が高くなるのを抑えることにより、デッキガーニッシュ1をより一層変形し易くし、衝突時における衝突対象(歩行者等)に対する衝撃を低くすることができる。
【0039】
本実施例に係るデッキガーニッシュ1によれば、以上のようにして、フロントフード2の最終的な変形ストロークが長くなる変形モードを確実に起こすことができるので、デッキガーニッシュ1の衝撃吸収性能を確実に発揮させることが可能となる。