特許第6405557号(P6405557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405557
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】デッキガーニッシュ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   B62D25/08 H
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-42316(P2014-42316)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-168277(P2015-168277A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】西尾 信哉
(72)【発明者】
【氏名】荒木 謙志
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−141898(JP,A)
【文献】 特開平10−315881(JP,A)
【文献】 特開2006−240560(JP,A)
【文献】 特開2002−046649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/10−25/13
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車におけるフロントガラスとフロントフードとの間に配設され、前記フロントガラスの下端部から車両前方へ延びる上面部と、前記上面部の車両前方端部から車両下方へ向かって車両後方へ傾斜して延びる前壁部と、前記前壁部の車両下方端部から車両前方へ延びる下面部とから成るデッキガーニッシュであって、
前記上面部における前記車両前方端部よりも車両後方側において、前記フロントフードの下面と対向して配置され、前記フロントフードとの間隔が最小となるよう突出形成された突出部を備え、
前記突出部は、前記フロントフードに上方から荷重が作用した際に、前記フロントフードに最初に接触することで、前記上面部の前記車両前方端部に車両上方へ向かう回転モーメントを発生させる
ことを特徴とするデッキガーニッシュ。
【請求項2】
前記突出部が、前記上面部に設けた前記フロントフードとの隙間をシールするシール部材と隣接する山部の頂部に形成され、
前記突出部は、前記フロントフードが閉じられた状態において、前記フロントフードに押されることによって変形した前記シール部材と当接する
ことを特徴とする請求項1に記載のデッキガーニッシュ。
【請求項3】
前記突出部が、車両幅方向に沿って間隔を空けて複数形成されて成る
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデッキガーニッシュ。
【請求項4】
前記前壁部に、車両前方側に突出する湾曲部または屈曲部を設けた
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデッキガーニッシュ。
【請求項5】
前記車両下方端部に、肉抜き部を設けた
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデッキガーニッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両上方からの衝撃荷重作用時における変形促進構造を備えたデッキガーニッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は多数の部材から成り、それらの部材の中には、交通事故等で衝撃荷重が作用した際に変形し易い変形促進構造を備えるものがある。これは、交通事故等で当該車両と衝突した歩行者への傷害値を低く(改善)するためのものである。交通事故等で歩行者と衝突し得る所定の部材に変形促進構造を備えることにより、歩行者との衝突によって衝撃荷重が作用した際に、部材が容易に変形するので、当該部材の変形ストロークを十分に確保することができる。このように、衝撃荷重作用時における部材の変形ストロークを十分に確保することによって、当該部材と衝突した歩行者への衝撃を緩和させ、歩行者への傷害値を低くすることができる。
【0003】
例えば、自動車のフロントフードは、交通事故等により歩行者の頭部が衝突する虞があるため、フロントフードが車両上方からの衝撃荷重に対して変形しやすいように、フロントフードに変形促進構造を備えると共に、その周辺部材にも変形促進構造を備える必要がある。
【0004】
変形促進構造を備える必要があるフロントフードの周辺部材としては、フロントウィンドガラスとフロントフードとの間に配設され、車両幅方向に亘って延設されるデッキガーニッシュがある。デッキガーニッシュに備えられる変形促進構造としては、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4807249号公報
【特許文献2】特開2006−111105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のデッキガーニッシュにおける変形モードの一例を、図4Aおよび図4Bに示す。図4Aは、従来のデッキガーニッシュの衝撃荷重作用時における変形初期の状態であり、図4Bは、同じく従来のデッキガーニッシュの衝撃荷重作用時における変形後期の状態である。なお、図4Aおよび図4Bにおいて二点鎖線で示すものは、従来のデッキガーニッシュの変形前の状態である。
【0007】
図4Aに示すように、交通事故等によって歩行者の頭部100がフロントフード103に衝突してフロントフード103が車両下方(図4Aにおける下方)へ突出するように変形すると、フロントフード103がデッキガーニッシュ101の上面部111と前壁部113との連結部である車両前端部112側に最初に接触する場合がある。このような場合、車両上方(図4Aにおける上方)からの衝撃荷重がデッキガーニッシュ101の車両前端部112に最初に作用するため、デッキガーニッシュ101は、車両前端部112側から車両下方へ変形し始める。そのため、上面部111と前壁部113には、車両前方側(図4Aにおける左方側)を車両下方へ、車両後方側(図4Aにおける右方側)を車両上方へ変位させようとする回転モーメントM101が作用する。この回転モーメントM101によって、デッキガーニッシュ101は、上面部111が車両前方へ倒れ込むように、且つ、前壁部113が車両後方へ突出するように変形する(図4Aにおける白抜き矢印を参照)。
【0008】
そして、このような状態でデッキガーニッシュ101の変形が進むと、図4Bに示すように、デッキガーニッシュ101は、前壁部113が上面部111と下面部115との間に挟まれた状態となり、デッキガーニッシュ101の更なる変形が抑制される場合があった。つまり、前壁部113がデッキガーニッシュ101およびフロントフード103の変形を阻害して、最終的な変形ストロークを小さくしてしまう場合があった。
【0009】
このように、デッキガーニッシュの変形の仕方(変形モード)によっては、デッキガーニッシュおよびフロントフードの最終的な変形ストロークが変わってしまい、本来の衝撃吸収性能を十分に発揮できなくなる虞があるため、改善の余地があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、フロントフードの車両上方から衝撃が加わった際に、デッキガーニッシュが良好な変形モードで変形し、デッキガーニッシュおよびフロントフードの変形ストロークを十分に確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する第一の発明に係るデッキガーニッシュは、自動車におけるフロントガラスとフロントフードとの間に配設され、前記フロントガラスの下端部から車両前方へ延びる上面部と、前記上面部の車両前方端部から車両下方へ向かって車両後方へ傾斜して延びる前壁部と、前記前壁部の車両下方端部から車両前方へ延びる下面部とから成るデッキガーニッシュであって、前記上面部における前記車両前方端部よりも車両後方側において、前記フロントフードの下面と対向して配置され、前記フロントフードとの間隔が最小となるよう突出形成された突出部(初期荷重受部)を備え、前記突出部は、前記フロントフードに上方から荷重が作用した際に、前記フロントフードに最初に接触することで、前記上面部の前記車両前方端部に車両上方へ向かう回転モーメントを発生させることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第二の発明に係るデッキガーニッシュは、第一の発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記突出部が、前記上面部に設けた前記フロントフードとの隙間をシールするシール部材と隣接する山部の頂部に形成され、前記突出部は、前記フロントフードが閉じられた状態において、前記フロントフードに押されることによって変形した前記シール部材と当接することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第三の発明に係るデッキガーニッシュは、第一または第二の発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記突出部が、車両幅方向に沿って間隔を空けて複数形成されて成ることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第四の発明に係るデッキガーニッシュは、第一から第三のいずれか一つの発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記前壁部に、車両前方側に突出する湾曲部または屈曲部を設けたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第五の発明に係るデッキガーニッシュは、第一から第四のいずれか一つの発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記車両下方端部に、肉抜き部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第一の発明に係るデッキガーニッシュによれば、自動車におけるフロントガラスとフロントフードとの間に配設され、フロントガラスの下端部から車両前方へ延びる上面部と、上面部の車両前方端部から車両下方へ向かって車両後方へ傾斜して延びる前壁部と、前壁部の車両下方端部から車両前方へ延びる下面部とから成るデッキガーニッシュであって、上面部における車両前方端部よりも車両後方側において、前記フロントフードの下面と対向して配置され、前記フロントフードとの間隔が最小となるよう突出形成された突出部(初期荷重受部)を備え、前記突出部は、前記フロントフードに上方から荷重が作用した際に、前記フロントフードに最初に接触することにより、衝突等によって衝突対象(歩行者等)がフロントフードに衝突して上方から衝撃荷重が作用した際に、その衝撃荷重によって変形したフロントフードが突出部と最初に接触する。つまり、デッキガーニッシュにおいては、車両上方からの衝撃荷重が最初に上面部における車両前方端部よりも車両後方側の突出部に作用する。よって、上面部には、車両前方端部を車両上方へ、後方側の突出部を車両下方へ変位させようとする回転モーメントが作用する。そして、この回転モーメント受けて前壁部は、上端部側が後方に回転しつつ下方へ押されるので、中間部分が車両前方側に押し出されるように湾曲しながら変形する。すなわち、デッキガーニッシュは、前壁部が車両前方へ突出するように変形しながら潰れる。そのため、前壁部が下面部と上面部との間に挟まれて、デッキガーニッシュの変形を阻害することがない。よって、常にデッキガーニッシュを良好な変形モードで変形させることができ、デッキガーニッシュおよびフロントフードの変形ストロークを十分に確保することができる。
【0017】
第二の発明に係るデッキガーニッシュによれば、第一の発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記突出部が、前記上面部に設けた前記フロントフードとの隙間をシールするシール部材と隣接する山部の頂部に形成され、前記突出部は、前記フロントフードが閉じられた状態において、前記フロントフードに押されることによって変形した前記シール部材と当接することにより、僅かな形状変更で突出部を備えることができる。
【0018】
第三の発明に係るデッキガーニッシュによれば、第一または第二の発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記突出部が、車両幅方向に沿って間隔を空けて複数形成されて成ることにより、デッキガーニッシュの剛性が必要以上に高くなってしまうことを回避することができる。つまり、上方から衝撃荷重を受けた際にデッキガーニッシュがたわみ易くなり、衝突対象(歩行者等)に対する衝撃が高くなることを抑えることができる。
【0019】
第四の発明に係るデッキガーニッシュによれば、第一から第三のいずれか一つの発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記前壁部に、車両前方側に突出する湾曲部または屈曲部を設けたことにより、デッキガーニッシュの変形時に前壁部が車両前方へ突出するように変形し易くなる。よって、車両上方からの衝撃荷重が作用した際に、前壁部が車両後方へ突出するように変形することを確実に防止し、前壁部を車両前方へ突出するように変形させることができる。
【0020】
第五の発明に係るデッキガーニッシュによれば、第一から第四のいずれか一つの発明に係るデッキガーニッシュにおいて、前記車両下方端部に、肉抜き部を設けたことにより、車両上方からデッキガーニッシュに衝撃荷重が作用した際に、下面部に対して前壁部を、車両下方端部を支点として車両前方へ容易に屈曲させることができる。よって、前壁部が車両後方へ突出するように変形することを確実に防止し、前壁部を車両前方へ突出するように変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1に係るデッキガーニッシュおよびその周辺構造を示す概略図である。
図2】実施例1に係るデッキガーニッシュにおける突出部を示す断面図(図1におけるII‐II矢視断面図)である。
図3A】実施例1に係るデッキガーニッシュの変形モード(変形初期状態)を示す説明図である。
図3B】実施例1に係るデッキガーニッシュの変形モード(変形後期状態)を示す説明図である。
図4A】従来のデッキガーニッシュの変形モードの一例(変形初期状態)を示す説明図である。
図4B】従来のデッキガーニッシュの変形モードの一例(変形後期状態)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係るデッキガーニッシュの実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1に係るデッキガーニッシュの構造について、図1および図2を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施例に係るデッキガーニッシュ1は、フロントガラス(ウィンドシールドガラス)2とフロントフード(エンジンフード)3との間に配設され、自動車の車両幅方向(図1における紙面前後方向)に延設されている。デッキガーニッシュ1の一端側(図1における右方側)は、フロントガラス2の下端部21に連結され、他端側(図1における左下方側)は、デッキガーニッシュ1の車両下方(図1における下方)に位置するカウルトップ4の上面部41に連結されている。
【0025】
デッキガーニッシュ1は、一端がフロントガラス2の下端部21に接合されて車両前方(図1における左方)へ延びる上面部11と、当該上面部11の車両前方端部12から車両下方へ向かって車両後方(図1における右方)へ傾斜して延びる前壁部13と、当該前壁部13の車両下方端部(取付け端部)14から車両前方へ延びてカウルトップ4の上面部41と対接する下面部15とから成り、上面部11と前壁部13と下面部15とで略Z字形状の断面を有する。
【0026】
デッキガーニッシュ1は、車両前方端部12側の前半部分がフロントフード3の下方に上下で重なるように配置されている。そして、デッキガーニッシュ1の上面部11のフロントフード3の下方に位置する部位には、フロントフード3との隙間をシールするウェザーストリップ(シール部材)5が車両幅方向に延設して取り付けられ、更に、当該ウェザーストリップ5と隣接して、ウェザーストリップ5の取り付け方向(図1における上方向)に延びる山部(ウェザーストリップ支持部)16が形成されている。ウェザーストリップ5は、ゴム等の弾性部材から成り、デッキガーニッシュ1に取り付けるための取り付け部51と、デッキガーニッシュ1と密接してシール性を向上するためのリップ部52と、フロントフード3と密接してシール性を向上するためのチューブ部53とを備えている。
【0027】
フロントフード3が閉じられた状態(図1における状態)においては、ウェザーストリップ5のチューブ部53は、フロントフード3の重量によって変形し、フロントフード3の内側部材であるフードインナパネル31と密接すると共に、ウェザーストリップ5のリップ部52がデッキガーニッシュ1のウェザーストリップ支持部16と密接することにより、デッキガーニッシュ1とフロントフード3との隙間がシールされ、図示しないエンジンルーム等に水などの異物が入り込まない構造となっている。
【0028】
本実施例に係るデッキガーニッシュ1は、車両上方からの衝撃荷重作用時における変形促進構造として、ウェザーストリップ支持部16の頂部16aに車両上方へ突出してフロントフード3と対向する突出部17を備えている。突出部17は、フロントフード3の下面を構成するフードインナパネル31との距離が、デッキガーニッシュ1の他の部位と比べて最短(間隔が最小)となるように形成され、衝突等によってフロントフード3の後端部近傍に上方から衝撃荷重が作用した際に、フロントフード3のフードインナパネル31と最初に接触するように設定されている。つまり、突出部17は、フロントフード3の下面と対向する位置に配置され、車両上方からの衝撃荷重作用時に最初にフロントフード3と当接して衝撃荷重を受ける初期荷重受部として機能している。
【0029】
また、図2に示すように、突出部17を、ウェザーストリップ支持部16の頂部16aにおけるデッキガーニッシュ1の車両幅方向(図2における左右方向)に沿って不連続に(間隔を空けて)複数設けている。このように突出部17を不連続に設けることにより、デッキガーニッシュ1の剛性が必要以上に高くなってしまうことを回避している。すなわち、衝撃荷重を受けた際にたわみ易い構造とすることで、衝突対象(歩行者等)に対する衝撃が高くなることを防止している。
【0030】
もちろん、本発明における突出部(初期荷重受部)は、本実施例のようにウェザーストリップ支持部16の頂部16aに形成したものに限定されない。突出部(初期荷重受部)としては、デッキガーニッシュ1の上面部11における車両前方端部12よりも車両後方側において、フロントフード3の下面であるフードインナパネル31と対向して配置され、フロントフード3のフードインナパネル31との距離が最短となるように車両上方へ突出形成したものであれば良い。また、デッキガーニッシュの剛性が必要以上に高くなることの不具合を抑えることができる場合には、突出部(初期荷重受部)を車両幅方向に沿って連続的に、すなわち、デッキガーニッシュの全域に亘って設けても良い。
【0031】
本実施例における前壁部13は、図1に示すように、車両前方へ突出するよう湾曲した湾曲形状を成し、上下方向での中間部に向かうに従って車両前方側に突出しており、車両前方端部12と車両下方端部14とを結ぶ直線(図1における二点鎖線)よりも車両前方側へ突出した湾曲部13aを備えている。なお、本実施例では、前壁部13全体が湾曲部13aとして車両前方側へ湾曲形成されている。湾曲部13aを形成したことによって、車両上方からデッキガーニッシュ1に衝撃荷重が作用した際に、前壁部13が車両前方へ突出して変形するようになっている。もちろん、本発明における前壁部13は、本実施例のように前壁部13全体が湾曲部13aとして湾曲したものに限定されるものではなく、前壁部13の一部分が車両前方へ突出するような湾曲形状に形成されていてもよい。また、車両前方へ突出した湾曲形状を成す湾曲部13aに限定されず、前壁部が車両前方へ突出するように屈曲部を形成しても良い。
【0032】
また、本実施例においては、デッキガーニッシュ1の車両下方端部14に肉盗み部(肉抜き部)14aを設けている。車両下方端部14に肉盗み部14aを設けることにより、車両上方からデッキガーニッシュ1に衝撃荷重が作用した際に、下面部15に対して前壁部13が車両下方端部14を支点として車両前方へ容易に屈曲(変形)するようになっている。
【0033】
本発明の実施例1に係るデッキガーニッシュの変形モードについて、図1から図3Bを参照して説明する。
【0034】
図3Aに示すように、衝突等によってデッキガーニッシュ1近傍のフロントフード3に衝撃荷重が作用すると、フロントフード3のフードアウタパネル32およびフードインナパネル31が変形し、フードインナパネル31がその下方(図3Aにおける下方)に位置するデッキガーニッシュ1と接触する。このとき、突出部17を、デッキガーニッシュ1においてフードインナパネル31との距離が最短となるように車両上方(図3Aにおける上方)に向かって突出して形成しているので、フードインナパネル31は突出部17と最初に接触する。
【0035】
フードインナパネル31と突出部17とが接触し、デッキガーニッシュ1における突出部17に車両上方からの衝撃荷重が作用すると、デッキガーニッシュ1の上面部11には、車両前方端部12側を車両上方に向かって、突出部17側を車両下方に向かって変位させようとする回転モーメントM1図3Aにおける右回りの力)が作用する。そして、この回転モーメントM1を受けることで、前壁部13は、上端部(車両前方端部12)側が車両後方に向かって回転しつつ車両下方へ押されるので、中間部分が車両前方側に押し出されるように湾曲しながら変形する。よって、デッキガーニッシュ1は、前壁部13が車両前方へ突出するように変形した状態で潰れる。
【0036】
つまり、車両上方からの衝撃荷重が作用した際に、デッキガーニッシュ1は前壁部13が従来(図4A参照)のように車両後方へ突出するように変形することがない。したがって、カウルトップ4とデッキガーニッシュ1との間、すなわち、デッキガーニッシュ1の上面部11と下面部15との間に前壁部13が入り込んで、上面部11とカウルトップ4に挟まれるのを回避することができる。これにより、前壁部13がデッキガーニッシュ1全体の変形を阻害するような変形モードを回避することができ、最終的な変形ストロークを従来よりも長く確保することができる。
【0037】
なお、このとき、前壁部13に車両前方へ突出するよう湾曲した湾曲部13aを形成しているので、前壁部13をより確実かつスムーズに車両前方へ突出するように変形させることができる。
【0038】
また、前壁部13と下面部15との連結部である車両下方端部14に肉盗み14a(図1参照)を設けているので、車両上方からの衝撃荷重が作用したデッキガーニッシュ1は、当該車両下方端部14を支点として、下面部15に対して前壁部13が車両前方へ倒れるように屈曲し易い。つまり、車両下方端部14に肉盗み14aを設けて、デッキガーニッシュ1における車両下方端部14の剛性が高くなるのを抑えることにより、デッキガーニッシュ1をより一層変形し易くし、衝突時における衝突対象(歩行者等)に対する衝撃を低くすることができる。
【0039】
本実施例に係るデッキガーニッシュ1によれば、以上のようにして、フロントフード2の最終的な変形ストロークが長くなる変形モードを確実に起こすことができるので、デッキガーニッシュ1の衝撃吸収性能を確実に発揮させることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 デッキガーニッシュ
2 フロントガラス(ウィンドシールドガラス)
3 フロントフード
4 カウルトップ
5 ウェザーストリップ(シール部材)
11 デッキガーニッシュの上面部
12 デッキガーニッシュの車両前方端部
13 デッキガーニッシュの前壁部
13a 前壁部の湾曲部(湾曲部または屈曲部)
14 デッキガーニッシュの車両下方端部
14a 車両下方端部の肉盗み部(肉抜き部)
15 デッキガーニッシュの下面部
16 デッキガーニッシュのウェザーストリップ支持部(山部)
16a ウェザーストリップ支持部の頂部
17 デッキガーニッシュの突出部(初期荷重受部)
21 フロントガラスの下端部
31 フロントフードのフードインナパネル
32 フロントフードのフードアウタパネル
41 カウルトップの上面部
51 ウェザーストリップの取り付け部
52 ウェザーストリップのリップ部
53 ウェザーストリップのチューブ部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B