特許第6405566号(P6405566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405566
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】医療用粉体スプレー装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 35/00 20060101AFI20181004BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20181004BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   A61M35/00 Z
   A61M11/00 A
   B05B7/14
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-193871(P2014-193871)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-63919(P2016-63919A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】596036256
【氏名又は名称】株式会社ビーエムジー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(72)【発明者】
【氏名】長田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】須賀井 一
(72)【発明者】
【氏名】玄 丞烋
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−166576(JP,A)
【文献】 特表2012−511946(JP,A)
【文献】 特開平7−255301(JP,A)
【文献】 実開昭57−165285(JP,U)
【文献】 実開昭50−106459(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体容器(7)を上部に取り付け可能か、または粉体容器(7)と一体に設けられる漏斗(ろうと)部材(1)と、
漏斗部材(1)の下端の排出口(11B)に第1の開口(31)が接続される三方継ぎ手(3)と、
三方継ぎ手(3)の第2及び第3の開口(32,33)にそれぞれ接続される気流供給管(41)及び送出管(42)と、
これらの部材を収納するハウジング(5)とを備える粉体スプレー装置(10)において、
振動モーター(2)がさらに備えられ、漏斗部材(1)には、漏斗本体部(11)の外面にポケット部(12)が一体に設けられ、このポケット部(12)中に振動モーター(2)が押し込まれて固定され、
漏斗部材(1)及び三方継ぎ手(3)は、ハウジング(5)に対して揺動及び振れ動きが可能に取り付けられていることを特徴とする粉体スプレー装置。
【請求項2】
振動モーター(2)の回転軸(2A)は、漏斗本体部(11)の中心軸(11C)へと向いており、中心軸(11C)と回転軸(2A)との交点の高さ位置が、漏斗本体部(11)における上下方向の中心位置の近傍にあることを特徴とする請求項1に記載の粉体スプレー装置。
【請求項3】
振動モーター(2)は、回転軸(2A)方向の寸法が、径方向の寸法より小さく、
ポケット部(12)の開口部(12A)は、漏斗本体部(11)の内周面に沿って側方へと向いており、ポケット部(12)の内部、または開口部(12A)には、振動モーター(2)がズレ出て来るのを防止するために、掛け止め突起、粘着剤、及び、粘着テープの少なくともいずれかが備え付けられることを特徴とする請求項2に記載の粉体スプレー装置。
【請求項4】
漏斗本体部(11)の上端の近傍における、ハウジング(5)と漏斗部材(1)との間の、揺動可能な保持及び可動範囲の制限は、フランジ(14,51A,51B)同士の突き当て、及び、フランジ(14,51A,51B)と円筒部(15,51C)との突き当てによって行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉体スプレー装置。
【請求項5】
気流供給管(41)を通じた気流の供給を開始または再開すべくオンオフ機構(6)を操作したならば、まず振動モーター(2)の作動が開始され、この後、気流の供給が開始または再開されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉体スプレー装置。
【請求項6】
振動モーター(2)に印加する電圧を調整可能であることを特徴とする請求項5に記載の粉体スプレー装置。
【請求項7】
漏斗部材(1)は、ポリオレフィン樹脂からなり、漏斗本体部(11)の内面の表面粗さ(Ra)が50以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粉体スプレー装置。
【請求項8】
三方継ぎ手(3)には前記第2の開口(32)から前記第3の開口(33)へと至る均一な径の気流管路(36)が設けられ、前記第1の開口(31)は、この気流管路(36)の側壁の開口として設けられており、
前記第1の開口(31)に対向して、気流管路(36)の管壁に湾入部(35)が設けられていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の粉体スプレー装置。
【請求項9】
気流管路(36)は、前記第1の開口(31)による合流部(37)から遠ざかるにつれて上方へと向かう傾斜が、少なくとも合流部(37)の近傍において、20度より小さく0度以上であることを特徴とする請求項8に記載の粉体スプレー装置。
【請求項10】
気流供給管(41)及び送出管(42)がエラストマー材料または軟質塩化ビニル樹脂からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粉体スプレー装置。
【請求項11】
溶液の凍結乾燥により得られた粉体、または、その他粉体について、請求項1〜10のいずれかの粉体スプレー装置を用いて吹き付けを行う粉体スプレー方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気や加圧ガスを用いて粉体を吹き付けて塗布または供給することができる粉体スプレー装置に関する。特には、片手で、持ち上げ及び吹き付けのオンオフを行うことのできるタイプの粉体スプレー装置、すなわち、粉体スプレーガンに関する。また、特には、粉体の形態の医療用接着剤、止血剤、シーラント、癒着防止材などを患者の施術部位などに局所的に吹き付けるための医療用粉体スプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、医薬製剤を鼻腔などへ投与するための医療用の粉体スプレー装置が用いられている。また、下記特許文献1〜5には、止血剤などの薬剤粉体を患部に塗布するのに用い得る粉体スプレー装置が記載されている。特許文献3には、ふいご(「送風体1」)からの吹き出し管(「送風管11」)の途中に、粉体ホッパー(「容粉体14」)の下端が接続するようにした形態の粉体スプレー装置(「散粉器」)が示されている。一方、特許文献4の図2-1及び2-2には、スポイトゴム及び二重ガラス管を用いた医療用反応剤粉体のための簡易なスプレー装置が示されている。
【0003】
特許文献5には、粉体スプレーガン(「散粉器100」)の上端にバイアルビン(「薬剤容器70」)を逆さにして取り付け、取っ手部(「把持部10」)内のダイヤフラムポンプ(「空気ポンプ20」)からの空気流によって、「薬剤容器70」内の薬剤粉体を「ノズル80」から前方へと送り出す。ここで、「空気ポンプ20」の空気流は、上方へと向かって「薬剤容器70」中へとホッパー状の「通路55」を通って送り込まれ、粉体を攪拌する作用を行う。そして、「通路55」の側壁に設けられた細管状の「通路59」を通って、薬剤粉体とともに、前方へと延びる「ノズル80」へと送り出される。特許文献5の図1によると、「薬剤容器70」は、取っ手部(「把持部10」)に比べて寸法が非常に小さく、1〜2mL程度のバイアル瓶であると思われる。実施例の図における「薬剤容器70」の寸法、及び、粉体の送り出し機構に鑑み、薬剤粉体は、かさ密度が、かなり大きい顆粒状であると考えられる。特許文献5の図に記載の粉体スプレーガンとともに、アルギン酸ナトリウムの粉末が非常に小型のバイアル瓶に入れられて、止血剤として「アルト原末」の商品名で市販されている。
【0004】
特許文献1には、特許文献3の装置を改良してケーシングに収納した形態の粉体スプレーガンが示されている。すなわち、図1に示されるように、空気を吹き出す経路について、粉体ホッパー(「ホッパ14」)の下端が接続する箇所にて、V字状に屈曲させるとともに、各部材を「ケーシング20」内に収納して堅固に固定している。図7A及び図7B、並びに[0028]の説明によると、空気を送り出さないときには、V字状屈曲箇所(「本体部11」の底部)内に「一定量」の「粉体W」が「溜まって」「ホッパ14の下端の小径の開口」を塞ぐと、「ホッパ14の下端部」に「ブリッジを生じ」る。そして、図6B及び[0029]〜[0030]の説明によると、ベローズ(「エアポンプ30」の「蛇腹状の胴部31」)を押し縮めて空気を送り出した際には、前方へと「一定量」の「粉体W」が送り出されるとともに、空気流の一部が、「ホッパ14内に流入し」「粉体Wのブリッジを破壊する」。空気流により粉体がV字状の傾斜部を伝って押し上げられる際に、「ホッパ14」内の粉体が一部の空気流により攪拌され、この結果、再度、一定量の粉体がV字状屈曲箇所(「本体部11」の底部)内に落下して溜まるものと理解することができる。特許文献1のスプレーガンを正常に作動させるには、圧縮空気を間欠的に送り込むか、または、脈動式に送り込むことが必要であると考えられる。そのため、粉体の送り出しも間欠的または脈動式とならざるを得ないと考えられる。なお、特許文献1は、[0001]の説明によると、粉体として、「セメント、化粧品、医薬品、食品など」を想定している。
【0005】
特許文献2は、請求項21〜22に記載されているように、外科用止血剤などとして用いられる粉体の形態のフィブリン糊などを供給するためのスプレーガンに関する。特許文献の図3〜7に記載のスプレーガン(「粉末供給装置20」、0050〜0067段落(EP2373373Bの[0041]-[0058]))は、ケーシングの上面から突き出る筒状部分(「栓33」)に、逆さにした「粉末容器」(「バイアル9」)が嵌め合わされ、粉体が、「外部の圧縮ガス供給源」からの空気流により、振動を受けつつノズル(「筒状バレル29」)から送り出されるものである。ここで、大部分の空気流により、筒状部分(「栓33」)の下方でスプレーガンを振動させるとともに、一部の空気流により、粉体を筒状部分(「栓33」)からノズル(「筒状バレル29」)へと送り出している。なお、スプレーガンを振動させるためには、上方から見て円形リング状のトンネル(「円形の軌道43」)内を伝って「ボール50」が、「円形の軌道43」中へと吹き込まれた空気流により回転するようになっている。また、粉体を送り出すための一部の空気流は、「円形の軌道43」の上面に設けられた「空気供給孔48」から、筒状部分(「栓33」)内に送られる。粉体は、筒状部分(「栓33」)の「基部の穿孔プレート34」と、「円形の軌道43」の上部を形成する「中間部材41」との間の空間を通って、ノズル(「筒状バレル29」)から吹き出される。このようなスプレーガンであると、圧縮空気が多量に吹き出されるので、騒音が生じるとともに、塵(ちり)が舞い上がるなどの問題が生じると考えられる。また、スプレーガンを振動させるための機構が複雑で精巧さを要し、コストを上昇させると考えられる。なお、このスプレーガンでも、「ボール50」が「円形の軌道43」中を加速・減速されるにともない、粉体を送り出すための空気流の量、及び、振動の程度も脈動することとなる。
【0006】
一方、特許文献2の図1〜2に記載のスプレーガン(「粉末供給装置1」、0035〜0049段落(EP2373373Bの[0028]-[0040]))であると、「トリガー11」を押し下げた際、「ベローズ7」が押し縮められて空気流を送り出すとともに「バネ17」を引張り、この後、「バネ17の作用」で「ストライカー13」が「バイアル9と接触し」振動させる(0044段落(EP2373373Bの[0037]))。このようなスプレーガンであると、連続的な吹き付けが困難であり、また、粉体の状態などによっては、送り出しが不十分になることがあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2013/122040A
【特許文献2】特開2012-511946(EP2373373B)
【特許文献3】実公昭26(1951)-003443
【特許文献4】国際公開WO2008/066182A
【特許文献5】特許2809976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粉体スプレー装置は、シンプルな構造でもって、かさ密度の低く流動性の低い粉体など、多様な粉体を、連続的に、かつなるべく均一に送り出すことができるのが望ましい。また、周囲に騒音や不所望の気流をなるべく生じないのが望ましい。さらに、圧縮空気や加圧ガスを吹き付けに効率よく利用することができ、気流の経路の屈曲などに起因する圧力損失も少ないのが望ましい。一方、粉体を連続的に均一に送り出すためには、空気ポンプを備えるか、または、外部の圧縮空気配管やガスボンベなどに接続するのが望ましい。他方、医療用の粉体スプレー装置においては、多くの場合、気流の送り込み経路に除菌フィルターを設置する必要があり、これに適したものであるのが望ましい。また、粉体スプレー装置は粉体スプレーガンであるのが望ましい。すなわち、片手で持ち上げて動かし、吹き付けるべき箇所にノズルを向けることができるとともに、同じ手の指で吹き付けの開始及び停止を行うことができるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
好ましい実施形態の粉体スプレー装置は、粉体容器を上部に取り付け可能か、または粉体容器と一体に設けられる漏斗(ろうと)部材と、漏斗部材の下端の排出口部分に第1の開口部が接続される三方継ぎ手と、三方継ぎ手の第2の開口部に接続される気流供給管と、三方継ぎ手の第3の開口部に接続される送出管と、これらの部材を収納するハウジングとを備える粉体スプレー装置において、振動モーターがさらに備えられ、漏斗部材には、漏斗本体部の外面にポケット部が一体に設けられ、このポケット部中に振動モーターが押し込まれて固定され、漏斗部材及び三方継ぎ手は、ハウジングに対して、部材間のクリアランスにより、揺動及び振れ動きが可能に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
薬剤溶液の凍結乾燥により得られる粉体などといったランダムな形状で流動性がそれほど良好でない粉体についても、ほぼ一定の気流により連続的に送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施例の粉体スプレーガンについての、気流の経路に沿った垂直断面斜視図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3図1の粉体スプレーガンについての外観斜視図である。
図4図1の粉体スプレーガンにおける漏斗部材についての模式的な外観斜視図である。
図5図4の漏斗部材のポケット部に差し込まれる振動モーターの一例についての外観斜視図である。
図6】他の実施例の粉体スプレーガンについての、図2に対応する要部拡大図である。
図7】さらなる実施例の粉体スプレーガンについての、図1に対応する直断面斜視図である。
図8図7の粉体スプレーガンについての回路図である。
図9】変形例の粉体スプレーガンについての図8に対応する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
漏斗部材は、下方へと向かってすぼまる円錐状、角錐状などのテーパー状をなす漏斗本体部と、この漏斗本体部の外面に一体に設けられるポケット部と、粉体容器の取り付け部または、粉体容器の役割をなす部分とを含む。好ましい実施形態において、ガラス製または樹脂製の粉体容器が、漏斗部材の上部に嵌(は)め込まれて取り付けられる。特には医療用粉体がバイアル中に密封された状態で供給され、栓を取って逆さまにしたバイアルを漏斗部材の上部に取り付ける。この取り付けのためには、バイアルの瓶口部を受け入れるリング状の受入部を、漏斗本体部の上端部のまわりに形成し、この受入部に抜けを防止する掛け止め突起を設けておくことができる。一方、粉体容器の取り付け部に代えて、フタまたは栓の付いた粉体容器部分を、漏斗本体部などと一体に設けることもでき、また、漏斗本体部を大きくしてフタまたは栓を取り付け可能とすることもできる。なお、漏斗本体部のテーパー角、すなわち、漏斗本体部の中心軸に対する壁面の角度は、例えば5〜30度、特には約10〜20度とすることができる。なお、流動性の低い粉体の場合には、例えば5〜15度とすることができる。
【0013】
他方、漏斗本体部の下端部すなわち、排出口の近傍の部分は、三方継ぎ手における第1の開口に、連通するように組み付けられる。好ましくは、嵌め合わせなどにより組み付けられる。好ましい形態において、三方継ぎ手が、第2の開口から第3の開口へと至る気流管路をなす部分と、この途中から分岐して上方へと突き出すソケット部とからなり、このソケット部中に、漏斗本体部の下端部が差し込まれて接続がなされる。漏斗部材と三方継ぎ手との接続は、例えば、リング状突起がリング状の溝に嵌め込まれるようにして固定されるのものでも良く、ねじ合わせによるものであっても良く、また、接着剤を用いた接着や融着によるものであっても良い。また、好ましい一実施形態において、漏斗部材と三方継ぎ手とは、相互の位置関係(姿勢や向きを含むものとする)が固定されるように、堅固に接続される。しかし相互の位置関係を多少変化可能に接続されるのであっても良い。また、場合によっては、漏斗部材と三方継ぎ手とを一体に成形などにより設けることも可能である。好ましい形態において、三方継ぎ手内の気流管路は、第2の開口から第3の開口に至るまで径が均一である。なお、第2の開口による合流部においても、左右方向(気流経路に垂直で、かつ漏斗本体部の中心軸に垂直の方向)における径が他の部分と同一である。また、好ましい一実施形態において、第2の開口は、気流管路の側壁の開口として設けられる。すなわち、漏斗本体部の排出口が気流管路にほぼ接するように配置される。
【0014】
好ましい実施形態において、三方継ぎ手における気流管路の官壁には、第2の開口と向かい合う箇所に、湾入部が設けられている。すなわち、気流の停止時には、第2の開口を通じて送られてくる粉体が湾入部に落ちて来て溜まるようになっている。この湾入部は、第2の開口とほぼ同一の径の片面レンズ状に設けることができる。湾入部の深さは、例えば、開口の径の20〜40%とすることができ、気流管路の径は、開口の径の60〜90%とすることができる。なお、開口の径は、例えば2〜6mmとすることができる。一方、好ましい実施形態において、気流管路は、第2の開口による合流部と、これを挟む上流部及び下流部とからなり、少なくとも合流部の近傍において、水平面(漏斗本体部の中心軸に垂直の平面)に対する上流部及び下流部の傾斜が、好ましくは、いずれも20度より小さく0度以上である、例えば5〜15度である。なお、ここでの傾斜は、好ましくは、合流部から遠ざかるにつれて上方へと向かう傾斜である。このように、気流管路が全体的に水平面に沿ってほぼ滑らかに延びるものであるため、供給される空気流を効率的に利用し、連続的に粉体を吹き付ける上で有利である。
【0015】
漏斗部材及び三方継ぎ手は、ハウジング内にて、大きなクリアランス(遊び)により、前後左右及び上下に揺動可能に保持されている。また、例えばポケット部を中心にして、振れ動きが可能に保持されている。すなわち、漏斗部材及び三方継ぎ手は、ハウジング内にて、各方向への揺動、及び、軸方向を振れさせる振れ動きが可能なように、充分なクリアランス(遊び)を持って保持されている。また、抜け外れが生じないように可動範囲を制限する取り付け構造となっている。好ましい一実施形態において、クリアランスによる上下方向への揺動可能な寸法範囲は、0.5〜8mm、好ましくは1〜5mm、特には2〜4mmであり、クリアランスによる水平方向(漏斗本体部の中心軸に垂直の方向)への揺動可能な寸法範囲は、0.5〜5mm、好ましくは0.5〜4mm、特には2〜3mmである。また、好ましい一実施形態において、漏斗部材は、漏斗本体部の上端の近傍及び下端の近傍にて、ハウジングから保持される。そして、最大の振れ動きは、漏斗本体部における上端の近傍と下端の近傍とが、上記の水平方向の揺動可能範囲の限界まで、互いに逆向きに動いた際に生じる。好ましい一実施形態において、漏斗本体部の上端の近傍における、ハウジングと漏斗部材との間の、揺動可能な保持及び可動範囲の制限は、フランジ同士の突き当て、及び、フランジと円筒部との突き当てによって行われる。具体的には、漏斗部材及びハウジングの一方に設けられたフランジが、他方に設けられた上下のフランジ及び円筒部に突き当てられるようにして可動範囲を制限することができる。また、好ましい一実施形態において、漏斗本体部の下端の近傍における、ハウジングと、漏斗部材及び三方継ぎ手との間の、揺動可能な保持及び可動範囲の制限は、ハウジングの壁面またはリブと、三方継ぎ手、または漏斗本体部の下端部との間の突き当てによって行われる。具体的には、ハウジングの底壁または水平板状リブに設けられた、円形またはその他の形状の開口に、漏斗本体部の下端部または三方継ぎ手の一部が、水平方向に可動に差し込まれることで実現可能である。なお、フランジは、好ましい実施形態において、板状に半径方向外側または内側へと突き出して先端にエッジを形成するものである。しかし、板状以外の断面形状のものでも良く、また、円筒壁の一部に設けられた段部や断面コの字状の折り曲げ部であっても良い。例えば、断面が正方形に近い矩形または横向きU字状の半径方向突出部が、円筒壁の一部に設けられた凹部中にて、大きなクリアランスをもって保持されているのであっても良い。
【0016】
振動モーターは、典型的には、扇形金属片などのバラスト(おもり)が、一方に偏るようにして中心軸に取り付けられ、バラストの回転により振動を発生する。振動モーターは、好ましくは扁平型のものである。すなわち、径が回転軸方向の寸法より大きいものである。振動モーターは、さらに好ましくはコイン型のものである。すなわち、径が25mm以下の円盤形であり、例えば径が5〜20mmである。厚みは例えば径の20〜60%である。振動モーターの回転数(回転/分)は、例えば1000〜2万rpm(振動数 約20〜300Hz)、特には2000〜1万rpm(振動数 約30〜200Hz)である。振動モーターを収納するポケット部は、振動モーターが押し込まれて固定されるように、対応する寸法が、振動モーターに等しいか、またはわずかに小さく設定される。ポケット部は、好ましくは、駆動モーターの回転軸が漏斗本体部の内側に向けられるように、特には、回転軸の延長線が漏斗本体部の中心軸に交わるか、ほぼ交わるように配置される。また、好ましい形態において、ポケット部の開口部は、漏斗本体部の周方向を向いており、好ましくは、ポケット部の開口部または内面に、振動モーターの抜け出しを防止するとともにさらに固定を行うために、掛け止め突起を設けるか、粘着テープを貼り付けるか、粘着剤を用いるかの少なくともいずれかを行う。掛け止め突起は、例えば、ポケット部の内面から突き出す円弧状の突条、または、開口縁のツメ部として設けることができる。また、粘着テープは、例えば、片面粘着タイプのものを、開口部を覆うように貼り付けることもでき、両面粘着タイプのものをポケット部の内面と振動モーターとの間に挟み込むようにすることもできる。粘着剤は、例えば、振動モーターを押し込む前に、ポケット部の内面に塗布しておくことができる。塗布するかまたは粘着テープに用いる粘着剤は、例えば変性アクリル樹脂または変性シリコーン樹脂であり、粘着テープに用いた場合に、例えばJIS Z 1541の1種に合格するものを用いることができる。このように強力な粘着剤または粘着テープを用いるならば、簡便かつ確実に振動モーターの抜け出しを防止することができる。
【0017】
好ましい実施形態において、漏斗部材は、樹脂成形により、少なくとも漏斗本体部及ポケット部が一体に設けられる。樹脂成形は、射出成形、押し出し成形などにより行うことができ、好ましくは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、及びこれらの共重合樹脂を含むポリオレフィン樹脂が用いられる。ポリオレフィン樹脂は、安価で成形が容易であるとともに表面エネルギーが小さく各種材料との滑り性が良好であるので好ましい。また、漏斗本体部の内面は、JIS 表面粗さRa(JIS B 0031・JIS B 0061で規定する算術平均粗さ; 単位nm)が50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下であり、例えば3以上であって、一例によると5〜15である。このような低い表面粗さは、金型内面を鏡面加工することで実現できる。また、成形後に研磨を行うことによっても実現可能である。三方継ぎ手も、上記と全く同様に、ポリオレフィン樹脂の樹脂成形により設けることができる。但し、JIS表面粗さRa(nm)は、50以下が好ましいが50を超えても良い。一方、三方継ぎ手に接続される気流供給管及び送出管は、いずれも、三方継ぎ手の振動を妨げないように、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどのエラストマー材料からなる。
【0018】
好ましい実施形態において、粉体スプレー装置は、取っ手をつかんで自在に動かすことができ、取っ手の上部にトリガーレバーが備えられた粉体スプレーガンである。また、好ましくは、トリガーレバーを引いている間だけ、吹き付けのための気流の供給、及び、振動モーターの作動が行われる。特に好ましくは、バネ力に逆らってトリガーレバーを引いた際、軽く引いたときに振動モーターのスイッチがオンになり、さらに引くと、気流の供給が行われる。なお、粉体スプレー装置における気流供給のオンオフ機構は、トリガーレバーに限らず、電気的な押しボタンにより操作可能なものであっても良く、この場合も、押し始めの時点で振動モーターの作動が開始し、この後に、気流の供給が開始するようにすることができる。一方、好ましい一実施形態において、振動モータを駆動する電池がスプレーガン中に備えられる。また、ハウジングは、好ましい一実施形態において、左側ハウジングと、右側ハウジングとからなり、これらが、各種部材を収納してから、互いに組み付けられる。
【0019】
以下に、図1〜5に示す一実施例について説明する。図面に示す実施例における粉体スプレー装置は、ピストル型の粉体スプレーガン10であり、圧縮空気配管46からの圧縮空気を利用して、上端部に逆さに取り付けられたバイアル7内の粉体を、前方端のノズル45から吹き付けるものである。バイアル7は、容量が、例えば7〜50mL、一具体例で20mLであり、瓶口71の内径が、例えば5〜25mm、一具体例で10mmである。バイアル7、ノズル45及び圧縮空気供給管43を除き、ほぼ全体がハウジング5内に収納されている。ハウジング5の後方部分が取っ手部54であり、この中に、電池ボックス55が収納されている。取っ手部54の上部には、圧縮空気の供給及び遮断を行うためのオンオフ機構6が設けられ、ピストルの引き金(トリガー)に相当するトリガーレバー61を引き込んでいる間だけ、気流が供給される。また、トリガーレバー61を軽く引いた際に、スイッチ素子21Aを通じて振動モータ2が作動を開始する。振動モーター2は、バイアル7が上部に取り付けられる漏斗部材1のポケット部12内に、ズレ動き不能に固定されて収納されており、漏斗部材1とこの下端に接続される三方継ぎ手3は、ハウジング5から遊びをもって保持されることで、揺動及び振れ動きが可能となっている。そのため、振動モーター2が作動すると、漏斗部材1とこの上下に取り付けられたバイアル7及び三方継ぎ手3が一体になって、ハウジング5に対して振動を行う。三方継ぎ手3は、一筋の気流管路36をなす部分と、漏斗部材1の下端に接続するソケット部34とからなり、この気流管路36は、オンオフ機構6からノズル45へと至るフレキシブル管4の途中に挿入されている。このようにして、三方継ぎ手3の中心部にて気流中に分散された粉体がノズル45から送り出される。なお、このフレキシブル管4には、振動に対する追従性に優れたウレタンゴムを用いることができるが、シリコーン管やPVC管(特には非フタル酸系の軟質塩化ビニル樹脂管)を用いても構わない。また、振動モーター2は、具体例において、携帯電話のマナーモード用に用いられているものであって、径が10mm、厚みが3.3〜3.5mmであり、3Vでの駆動電流が50〜70mAである。
【0020】
漏斗部材1は、全体がテーパー状である漏斗本体部11と、この外面から外側へと突き出るポケット部12と、漏斗本体部11の上端部11Dの外面から延びる取り付け部13とからなる。この取り付け部13は、バイアル7を振動により外れないように堅固に固定することを可能にするとともに、ハウジング5の上端部の取り付け用開口部51により、漏斗部材1を、比較的大きな遊びを持って保持するようにするためものである。図示の具体例において、漏斗部材1の取り付け部13は、漏斗本体部11の上端より少し下方の箇所から延びるフランジ部14と、フランジ部14の外周端よりわずかに内側から上方へと延びる円筒部15とからなる。漏斗本体部11の上端部11Dと、フランジ部14と、円筒部15とにより形成される円形リング状の溝17内にバイアル7の瓶口部71が差し込まれて固定される。また、バイアル7が抜け出るのを防止すべく、円筒部15の内周面に、複数の掛け止め突起16が設けられている。
【0021】
一方、ハウジング5の上端部の取り付け用開口部51は、ハウジング5の上端部から上方へと突き出す円筒部51Cと、この上下の端部から延びる上下の内向きフランジ51A及び51Bからなる。漏斗部材1の可動範囲の制限は、上下方向において、漏斗部材1のフランジ部14が、上下の内向きフランジ51A及び51Bに突き当てられることにより行われる。一方、水平方向における可動範囲の制限は、フランジ部14が、取り付け用開口部51の円筒部51Cに突き当てられるとともに、漏斗部材1の円筒部15が上方の内向きフランジ51Aに突き当てられることにより行われる。図示の例で、さらに、下方の内向きフランジ51Bが、フランジ部14の下面の段部18に突き当てられることによっても可動範囲を制限可能である。一具体例において、漏斗部材1の可動範囲は、上下方向に3mm、上端部及び下端部にて水平方向に2mmである。
【0022】
漏斗部材1は、ポリプロピレン樹脂の射出成形により一体に形成される。この際、漏斗本体部11の内面に対応する金型面には、鏡面加工を施して置く。このようにして、漏斗本体部11の内面のJIS 表面粗さRaを約10(nm)とした。なお、図示の例で、漏斗本体部11の内面のテーパー角(中心軸11Cに対する角度)は、約10度である。
【0023】
漏斗部材1のポケット部12は、コイン型の振動モーター2をぴったりと押し込めるように設けられている。ここで、振動モーター2の回転軸2Aは、その延長線が漏斗本体部11の中心軸11Cに交わるように配置されて収納される。また、図示の例で、この交点の位置は、漏斗本体部11の高さ方向寸法の等分点に一致する。ポケット部12は、漏斗本体部11の周方向へと一方へと開口する開口部12Aをなし、この開口部12Aから振動モーター2が押し込まれる。この押し込みの後、例えば、振動モーター2の周面から突き出ることで開口部12Aから突き出る端子部2Bを、強力な粘着テープにより、漏斗本体部11の外面またはポケット部12の外面に貼り付けるようにして固定することができる。例えば、片面粘着テープを、端子部2Bを覆うようにして貼り付けることができる。このようにして、粘着テープを用いて、振動モーター2の位置ズレ及び抜け落ちをさらに防止することができる。一方、振動モーター2と、ポケット部12の内面との間に強力な両面粘着テープを配置することもできる。例えば、ポケット部12における開口部12Aから遠い側の部分、すなわちポケット底部12Bは、振動モーター2の回転軸2Aの方向から見て、半円形に設けることができ、振動モーター2を押し込む際に、ポケット底部12Bの周壁面と、コイン型の振動モーター2の周面との間に、強力な両面粘着テープが挟み込まれるようにすることができる。
【0024】
図示の例で、漏斗本体部11の下端部11Aは、三方継ぎ手3の中央部から上方へと分岐するソケット部34に、ポケット部12の下端がソケット部34の上端にほぼ接するまで押し込まれて堅固に接続されている。この接続面には、適宜、抜け止めのためのリング状の突起などを設けることができる。一方、漏斗本体部11の下端排出口11Bは、ソケット部34の底に設けられた第1の開口31に、内周面同士が連続するようにして接続されている。特に、この第1の開口31は、三方継ぎ手3内の気流管路36の管壁の開口をなすように設けられる。そのため、漏斗本体部11の下端排出口11Bが、気流管路36にほぼ接する位置にまで延びている。一方、オンオフ機構6からノズル45へと延びるフレキシブル管4は、途中に挿入される三方継ぎ手3により2つに分断されており、三方継ぎ手3の第2の開口32に接続する気流供給管41と、三方継ぎ手3の第3の開口33からノズル45へと延びる送出管42とからなる。三方継ぎ手3内の気流管路36は、フレキシブル管4とともに、一筋の気流経路をなしており、気流が折れ曲がるほどの屈曲部は存在しない。図示の例において、三方継ぎ手3内の気流管路36は、第2の開口31による合流部37にて多少屈曲しているが、合流部37を挟む上流部36A及び下流部36Bは、水平面(中心軸11Cの垂面)に対する傾斜角が15度またはこれより小さい。そのため、上流部36Aの中心軸38Aと下流部37Bの中心軸38Bとがなす角度は、約150度またはそれ以上である。
【0025】
一方、合流部37の底面、すなわち、第1の開口31に対向する箇所には、気流管路36の管壁に、湾入部35が設けられている。すなわち、上流部36Aと下流部36Bとを滑らかに接続する管路を想定した場合も、この管路から下方へと湾入した湾入部35が存在する。図示の例において、湾入部35は、レンズ状であり、湾入部35の円形の縁の径は、第1の開口31にほぼ等しいかこれより少し大きい。湾入部35の深さは、一例において、第1の開口31の径の25〜35%である。また、気流管路36の径は、第1の開口31の径の60〜70%である。
【0026】
図1に示すように、三方継ぎ手3の外面がハウジング5内面から突き出る板状リブ52に突き当てられることにより、三方継ぎ手3と漏斗部材1の下部とに対する保持及び可動範囲の制限が行われる。図示の例で、三方継ぎ手3のソケット部34の上端部が、水平板状リブの開口52A内に位置して、この開口52Aの縁に突き当て可能となっている。また、三方継ぎ手3の下端の突起部が、他の水平板状リブの開口52B内に位置して、開口52Bの縁に突き当て可能となっている。なお、初期位置において、三方継ぎ手3の下端は、水平板状リブの開口52Bの周辺部に載せられて支持されている。
【0027】
オンオフ機構6が、トリガーレバー61と、バルブハウジング部材62と、コイルバネ63とからなる。トリガーレバー61は、指載せ部61Cと、これからハウジング5内へと延びる棒状部分61Dとからなり、この棒状部分61Dの先端部に、コイルバネ63の先端部が係止されている。すなわち、指載せ部61Cに人差し指などをあてがってトリガーレバー61を、コイルバネ63の力に逆らって押し込むことができる。そして、引くのを止めると、コイルバネ63により初期位置に復帰する。なお、コイルバネ63は、ハウジング5内の板状リブ52により形成された筒状部分に収納されている。一方、トリガーレバー61の棒状部分61Dには、バルブ孔61A及びスイッチ用突起61Bが設けられており、バルブハウジング部材62に、滑り動き可能に差し込まれる。トリガーレバー61を引き込める限界まで引き込むと、バルブ孔61Aが、バルブハウジング部材62の通気経路に一致する。このとき、バルブハウジング部材62の下部に接続された圧縮空気供給管43から、バルブハウジング部材62の上部に接続された気流供給管41へと圧縮空気を供給する。他方、トリガーレバー61の引き始めの時点で、棒状部分61Dのスイッチ用突起61Bが、スイッチ素子21のヒンジレバー21Aを振れ動かして、ボタン21Bを押し下げる。すると、電池ボックス55中の乾電池22(具体例において単4のアルカリ乾電池)からの電力が、電力配線23を通じて振動モーター2に供給され振動が行われる。このように、圧縮空気を供給するより前に、振動を開始することにより、粉体をスムーズに送り出すことができる。特には、トリガーレバー61の「半押し」により、振動モーター2の作動開始から、ある程度の時間の経過後(例えば1秒以上経過後)に圧縮空気の供給を開始することができる。
【0028】
圧縮空気供給管43は、ポリエチレンなどからなるフレキシブルチューブであり、ハウジング5の後端の穴から出て、施術室の壁面に設けられた壁面接続口46Aを通じて、圧縮空気配管46に接続される。圧縮空気配管46は、図1中に模式的に示す例において、圧縮空気供給装置48から、除菌フィルター47及び圧力調整器48Aを経て圧縮空気を供給するものである。圧縮空気供給装置48は、例えばコンプレッサー及び空気貯留部からなるか、または空気ボンベからなる。したがって、脈動のない一定の圧力の圧縮空気を送り出す。なお、壁面接続口46Aでの圧縮空気の圧力は、例えば4気圧(約400kPa)である。一方、ハウジング5は、左側ハウジング部5Aと、右側ハウジング部5Bとからなり、これらが、別個に製作され、漏斗部材1、三方継ぎ手3、フレキシブル管4、ノズル45、トリガーレバー61などを挟み込むようにして、左右間の組み付け用のツメ53などにより互いに組み付けられる。なお、図示の例で、ノズル45は、直線状に延び、先端に、シリコーンゴムなどからなるノズル先端管部44が取り付けられている。
【0029】
上記の実施例の粉体スプレーガン10を用いて、株式会社ビーエムジーの自己分解性医療用接着剤「LYDEX」の混合粉体形態のものを、止血剤として、外科手術後の患部に塗布した。ここでの「LYDEX」の混合粉体は、重量平均分子量が1000〜2万であるポリ-L-リジンについて、その水酸基を部分的に、無水コハク酸によるサクシニル化によりカルボキシル化したものの粉体と、アルデヒド化デキストランの粉体とからなる。ここで、いずれも、水溶液の凍結乾燥により粉体を得ることから、ランダムな形態の粒子からなり、流動性が低く、かさ密度が小さい。また、平均粒径は、10〜150μmと比較的小さい。このように粉体吹き付けによる均一な塗布が難しい医療用粉体について、施術者が、容易に、所定量を均一に塗布することができた。
【0030】
次に、別の実施例の粉体スプレーガン10'について、図6に基づき簡単に説明する。図6に示す実施例においては、三方継ぎ手3内の気流管路36が、左右方向から見て全体に湾曲しており、合流部37の屈曲が全くない。また、湾入部35が多少大きく設けられている。これら以外の点では、図1〜5に示す実施例の粉体スプレーガン10と全く同様である。図6の実施例の粉体スプレーガン10'によっても、同様に、上記「LYDEX」の吹き付け塗布を行うことが可能であった。
【0031】
さらなる実施例の粉体スプレーガン10"について、図7〜8に基づき説明する。この実施例の粉体スプレーガン10"は、振動モーター2に印加する電圧を、粉体の流動性などに合わせて調整可能としたものである。振動エネルギー及び振動周波数は、ほぼ印加電圧に比例するので、流動性の低い粉体を送り出す場合には高い電圧を加え、流動性が高い粉体を送り出す場合には低い電圧を加えることで、気流管路36へと粉体が落下する割合を適したものとすることができる。印加電圧の調整は、ハウジング5の外側面に取り付けられた粉体量調節ダイヤル26を回すことで、これに接続された可変抵抗25の軸を回転させて行うことができる。なお、本実施例では、さらに、昇圧のためのDC-DCコンバーター27が備えられている。このDC-DCコンバーター27により、電圧の調整可能範囲を大きくしている。図示の例では、DC-DCコンバーター27に、これとは別体の、抵抗値を調整可能な出力電圧設定用の外付け抵抗器28が備え付けられている。外付け抵抗器28による出力調整は、例えば、精密ドライバーをあてがうことにより行うことができる。このようなDC-DCコンバーター27及び外付け抵抗器28により、1個のみの乾電池22(1.5V)から、例えば、3.5〜5.0Vの範囲内の出力電圧を設定することができる。そして、可変抵抗25により、この出力電圧の30〜100%の電圧を振動モーター2に印加可能とすることができる。一具体例においては、振動モーター2に印加する電圧を、2.0〜3.5Vに変化させることにより、振動モーターの回転数を、およそ5000〜9000rpm(80〜150Hz)の範囲で自由に調整することができる。
【0032】
図9に示すように、DC-DCコンバーター27を省いて、可変抵抗25のみにより電圧を調整することも可能である。この場合の一具体例においては、電池22による3.0Vの電圧に基づき、可変抵抗25により、振動モーター2に印加する電圧を、2.0〜3.0Vに変化させることにより、振動モーターの振動周波数を、およそ100〜150Hzの範囲で自由に調整することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…漏斗(ろうと)部材; 10…粉体スプレーガン;
11…漏斗本体部; 11A…下端部; 11B…下端の排出口;
11C…漏斗本体部の中心軸; 11D…漏斗本体部の上端部;
12…ポケット部; 12A…開口部; 12B…ポケット底部;
13…取り付け部; 14…フランジ部; 15…円筒部;
16…掛け止め突起; 17…リング状の溝; 18…段部;
2…振動モーター; 2A…振動モーターの回転軸;
2B…振動モーターの端子部;
21…スイッチ素子; 21A…ヒンジレバー; 21B…ボタン;
22…電池; 23…電力配線; 25…可変抵抗器;
26…粉体量調節ダイヤル; 27…DC-DCコンバーター;
28…出力電圧設定用の外付け抵抗器;
3…三方継ぎ手; 31…粉体受入開口; 32…気流受入開口;
33…気流送出開口; 34…ソケット部; 35…湾入部;
36…気流管路; 36A…上流部; 36B…下流部;
37…合流部; 38A,38B…上流部及び下流部の中心軸;
4…フレキシブル管; 41…気流供給管; 42…送出管;
43…圧縮空気供給管; 44…ノズル先端管部; 45…ノズル;
46…圧縮空気配管; 46A…壁面接続口; 47…除菌フィルター;
48…圧縮空気供給装置; 48A…圧力調整器;
5…ハウジング; 5A…左側ハウジング部; 5B…右側ハウジング部;
51…取り付け用開口部; 51A,51B…内向きフランジ;
51C…円筒部; 52…板状リブ;
52A,52B…水平板状リブの開口; 53…左右間の組み付け用のツメ;
54…取っ手部; 55…電池ボックス; 6…オンオフ機構;
61…トリガーレバー; 61A…バルブ孔; 61B…スイッチ用突起;
61C…指載せ部; 61D…棒状部分; 62…バルブハウジング部材;
63…コイルバネ; 7…バイアル(粉体容器); 71…瓶口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9