(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6405576
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】排水蓋
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
E04D13/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-57332(P2018-57332)
(22)【出願日】2018年3月25日
【審査請求日】2018年3月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518103411
【氏名又は名称】株式会社ナカケン
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】中根 純
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−329666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を排水する多数の排水孔または排水スリットを有し、排水管の排水口を覆う蓋本体部と、
蓋本体部の裏側中央から裏側方向に延設された支柱と、
支柱の先端部に、この先端部を中心として左右対称に取り付けられた可撓性を有する脚部と、
を備え、
脚部は支柱の先端部に、蓋本体部の前後方向に回動自在に軸支されるとともに、脚部の両側をU字状に撓ませて排水口に差し込まれると、脚部の復元力で排水口の内壁に密着自在に形成されており、
蓋本体部の上部の前側端部と後側端部の内、少なくとも一方を前後方向の外側に延設して延設部とし、
この延設部の内、蓋本体部の裏側方向の先端を、延設部を除く蓋本体部の裏側方向の先端より上方に位置するようにし、延設部の前後方向の端縁を平面的に見て左右方向に直線状に形成したこと、
を特徴とする排水蓋。
【請求項2】
延設部は、雨水を排水する複数の排水スリットを有すること、
を特徴とする請求項1記載の排水蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水蓋に係り、とくにマンションやビル等の建物のベランダ、屋上等の排水管の排水口に設置するゴミ避け用の排水蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションやビル等のベランダ、屋上には上向きまたは横向きに開口した排水口から排水管を通して雨水を外部に排水するようにしてあるが、排水口の開口から落ち葉などのゴミが流入すると排水管が詰まってしまうので、雨水は通し、ゴミの流入は阻止する排水蓋を設置するようにしている。
上向きに開口した排水口は軸が垂直な円筒状であり、排水口の上端の周囲は水平な平面となっている(
図5の下側参照)。上向きに開口した排水口用の従来の排水蓋は、平面視が円形状または多角形状などに形成された蓋本体部と、蓋本体部の裏側中央から裏面方向へ延びた支柱の先端に、この支柱先端を中心にして左右対称に延設された可撓性を有する帯板状の脚部が固着されて成る。排水蓋の蓋本体部で開口を覆いながらに脚部の両側をU字状に撓ませて排水口に差し込むと、脚部の復元力で排水口の内壁に密着し、抜け防止が図られる。
【0003】
一方、横向きに開口した排水口は軸が略水平な円筒状であり、排水口の前端の周囲は縦断面がL字状の角面となっている(
図9参照)。上向き用の排水蓋を横向きに開口した排水口に使用しようとすると、脚部の両先端間が復元力で広がり、排水口の上下方向の中央付近に位置しようとするため、脚部、支柱、蓋本体部が傾斜し、排水口の開口との間に隙間が生じてしまう(
図11参照)。
【0004】
上向き用と横向き用の二種類の排水蓋を用意するのは面倒であるため、従来から、1つで上向き用と横向き用に兼用可能とした排水蓋が市販されている(特許文献1参照)。この排水蓋は排水口の開口を覆う蓋本体部が平面的に見て角丸正方形状に形成されており、裏側の中央から裏側方向へ延びた支柱の先端に、この支柱先端を中心にして左右対称に延設された可撓性を有する帯板状の脚部が固着されて成る。この排水蓋はそのままの形で上向きの排水口に使用でき、脚部の両側をU字状に撓ませて排水口に差し込むと、脚部の復元力で排水口の内壁に密着し、抜け防止が図られる。
一方、横向きの排水口に使用する場合、蓋本体部の一部を直線的に切り取ることで、支柱と脚部を排水口の上下方向の中央付近に略水平に配設可能とするようにしている。このため、横向きの排水口に対しては蓋本体部を切り取り線に沿って切り取る作業が必要であり、面倒であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4682292号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みなされたもので、部材の一部の切り取りなどの面倒な作業が不要な上向き、横向き兼用の排水蓋を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明では、
雨水を排水する多数の排水孔または排水スリットを有し、排水管の排水口を覆う蓋本体部と、
蓋本体部の裏側中央から裏側方向に延設された支柱と、
支柱の先端部に、この先端部を中心として左右対称に取り付けられた可撓性を有する脚部と、
を備え、
脚部は支柱の先端部に、
蓋本体部の前後方向に回動自在に軸支され
るとともに、脚部の両側をU字状に撓ませて排水口に差し込
まれると、脚部の復元力で排水口の内壁に密着自在に形成されて
おり、
蓋本体部の上部の前側端部と後側端部の内、少なくとも一方を前後方向の外側に延設して延設部とし、
この延設部の内、蓋本体部の裏側方向の先端を、延設部を除く蓋本体部の裏側方向の先端より上方に位置するようにし、延設部の前後方向の端縁を平面的に見て左右方向に直線状に形成したこと、
を特徴としている。
請求項2記載の発明では
、
延設部は、雨水を排水する複数の排水スリットを有すること、
を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脚部をU字状に撓ませて排水口に差し込み排水口を塞ぐように蓋本体部を設置すると、排水口内の脚部が復元力で排水口の内壁に密着するが、この際、支柱の先端部を中心に回動して脚部の両先端が排水口の断面の一番間隔の広い箇所に位置するので、蓋本体部を傾斜させる力が生じず、蓋本体部と排水口の間に隙間が生じない。従って、排水蓋の一部を切り取ったりしなくても、上向きと横向きの両方の排水口に使用可能となる。
また、横向きの排水口に設置する場合、排水口部材のフランジ部の内の底板部と立ち上がり部の接続部分が丸角部となっていても、延設部が底板部の上に当接する一方、蓋本体部の裏側方向の先端は丸角に当接せず、蓋本体部は傾斜しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係る排水蓋の平面図である(実施例1)。
【
図5】上向きの排水口に対する排水蓋の使用方法の説明図である。
【
図6】上向きの排水口に設置した排水蓋周りの断面図である。
【
図7】上向きの排水口に設置した排水蓋の作用説明図である。
【
図8】上向きの排水口に設置した排水蓋の作用説明図である。
【
図9】横向きの排水管の一部省略した斜視図である。
【
図10】横向きの排水口に設置した排水蓋の作用説明図である。
【
図11】脚部が回動しない場合の問題点の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0011】
図1乃至
図4を参照して本発明に係る排水蓋の実施例を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る排水蓋の平面図、
図2は排水蓋の正面図、
図3は排水蓋の右側面図、
図4は排水蓋の底面図である。
図1乃至
図4において、1は排水蓋であり、上向きの排水管の排水口と横向きの排水管の排水口の両方に使用可能である。排水蓋1の内、2は平面視がトラック状に形成された蓋本体部であり、平面状の上面に多数の雨水の排水孔3が形成されている。また、蓋本体部2の左側、右側、前側(
図1の下側)、後側(
図1の上側)の周縁近くの裏側から多数の幅広及び幅狭の突起4A、4B、5A、5Bが間隔をあけて蓋本体部2の裏側方向に突設されており、隣接する突起4A、4B、5A、5Bの間に雨水を排水する多数の排水スリット6が形成されている。突起4A、4Bは蓋本体部2の左側端部近くと右側端部近くに間隔をあけて円弧状に配設されており、突起5A、5Bは蓋本体部2の前側端部近くと後側端部近くに間隔をあけて略直線状に配設されている。突起4A、4B、5A、5Bの蓋体本部2の裏側方向の先端は蓋本体部2の上面と平行な同一平面上に位置しており、蓋本体部2の下端を成す。
【0012】
蓋本体部2の前側端部(
図1における下側端部)は突起5Aより前方向外側に延設された延設部7となっている。延設部7は熊手状の複数の突起7Aから成り、蓋本体部2の上面から延設部7にかけて雨水を排水する多数の排水スリット8が形成されている。延設部7は側面的に見て、蓋本体部2の上面側から下端側へ略J字状に湾曲しており、平面的に見た前側端縁は直線状に形成されている。同様に、蓋本体部2の後側端部は突起5Bより後方向外側に延設された延設部9となっている。延設部9は熊手状の複数の突起9Aから成り、蓋本体部2の上面から延設部9にかけて雨水を排水する多数の排水スリット8が形成されている。延設部9は側面的に見て、蓋本体部2の上面側から下端側へ略J字状に湾曲しており、平面的に見た後側端縁は直線状に形成されている。延設部7、9の蓋体本部2の裏側方向の先端は蓋本体部2の上面と平行な同一平面状に位置しているが、突起4A、4B、5A、5Bの先端が成す平面よりも上方に位置している。
【0013】
蓋本体部2の裏側の中央から裏側方向へ支柱10が突設されており、この支柱10の開放側の先端部に、該先端部を中心として左右対称に可撓性を有する帯板状の脚部11がネジ12により取り付けられている。脚部11はネジ12により支柱10と直交する軸であって、
図1、
図2の左右方向に延びた軸周りに回動自在に軸支されており、両端部が蓋本体部2の前側方向または後側方向に回動可能になっている(
図3の矢印C参照)。脚部11は両側をU字状に撓ませることで(
図2の矢印A、B参照)、排水口に差し込み、脚部11の復元力で排水口の内壁に密着自在に形成されている(
図6参照)。脚部11の両先端部には爪部13が形成されており、排水管内の段差部分(
図6の符号26、
図10の符号39参照)に係合可能になっている。
【0014】
次に、
図5乃至
図8を参照して上記した実施例の作用を説明する(なお、
図5では脚部を省略している)。
(1)上向きの排水口への設置(
図5乃至
図8参照)
図5乃至
図8の内、20はベランダ、屋上に設けられた上向きの排水管であり、上下方向に配設された排水管本体21と、排水管本体21の上端に嵌着された排水口部材(ドレン)22から成る。排水口部材22の中が円筒状の排水口23である。排水口部材22は上端に円形の開口24と水平な円環状のフランジ部25を有している。
排水蓋1の脚部11の両端部をU字状に撓ませ、排水口23に差し込みながら上面を上向きにした蓋本体部2で排水口23の開口24を覆い、突起4A、4B、5A、5Bの下端をフランジ部25の上に当接させる(
図5、
図6参照)。この際、蓋本体部2の平面的に見た中心を排水口23の中心に合わせるようにする。
【0015】
排水口23の中に差し込まれた脚部11は復元力により両端部の間隔が広がり、排水口23の内壁に密着するとともに内壁に沿って排水口23の水平断面の一番間隔の広い箇所に位置しようとする(
図7の矢印D参照)。蓋本体部2を設置した際、平面的に見た蓋本体部2の中心が排水口23の中心に一致していれば、脚部11の回動軸方向から見て脚部11と支柱10は直線状になり、蓋本体部2を傾斜させる力は生じず、蓋本体部2と開口24との間に隙間は生じない。
若し、蓋本体部2を設置した際、脚部11の回動軸方向から見て蓋本体部2の中心が排水口23の中心からずれていた場合、脚部11が回動して支柱10に対し斜め方向を向くことにより、支柱10、蓋本体部2を斜め方向に向ける力は生じず、蓋本体部2と開口24の間に隙間は生じない(
図8参照)。
また、蓋本体部2に上向きの外力が加わっても脚部11の両端の爪13が排水口部材23の内、開口24とは反対の端縁26に係合するので、排水蓋1が排水口23から外れることはない。
【0016】
(2)横向きの排水口への設置(
図9、
図10参照)
図9の内、30はベランダ、屋上に設けられた横向きの排水管であり、水平より僅かに傾斜した方向に配設された排水管本体31と、排水管本体31の先端に嵌着された排水口部材(ドレン)32から成る。排水口部材32の中が略円筒状の排水口33である。排水口部材32は前部に略円形の開口34と断面L字状のフランジ部35を有している。
図10に示す如く、排水蓋1の脚部11の両端部をU字状に撓ませ、排水口33に差し込みながら横向きにした蓋本体部2で排水口33の開口34を覆い、突起4A、4B、5A、5Bの下端(
図10の右端)をフランジ部35の立ち上がり部36の前面に当接させ、延設部7(または9)を底板部37の上に当接させる。この際、蓋本体部2の
図1、
図2の左右方向の中心を排水口33の左右方向の中心に合わせるようにする。
【0017】
排水口33の中に差し込まれた脚部11は復元力により両端部の間隔が広がり、排水口33の内壁に密着するとともに、内壁に沿って排水口33の縦断面の一番間隔の広い箇所に位置しようとする。蓋本体部2を設置した際、脚部11の回動軸方向から見て蓋本体部2の
図10における上下方向の中心が排水口33の上下方向の中心からずれるが、脚部11が回動して支柱10に対し斜め方向を向くことにより、支柱10、蓋本体部2を斜め方向に向ける力は生じず、蓋本体部2の突起4A、4B、5A、5Bの先端が形成する平面は開口34を含む平面と一致し、隙間は生じない。
この点、
図11の排水蓋1Aに示す如く、若し脚部11Aが支柱10Aに対し回動不能に固定されていた場合、脚部11Aの両先端間が復元力で広がり、排水口33の上下方向の中央付近に位置しようとしたとき、脚部11A、支柱10A、蓋本体部2Aが傾斜し、排水口33の開口34との間に隙間Sが生じてしまう。
【0018】
また、
図9、
図10に示す如く、フランジ部35の底板部37と立ち上がり部36の接続部分が丸角部38となっていても延設部7(または9)が底板部37に当接する一方、突起5A(または5B)は丸角部38に当接せず、これによっても蓋本体部2は傾斜しない。
また、蓋本体部2に横外向きの外力が加わっても脚部11の両端の爪13が排水口部材32の内、開口34とは反対の端縁39に係合するので、排水蓋1が排水口33から外れることはない。
【0019】
この実施例によれば、排水口23または33の開口24または34を塞ぐように蓋本体部2を設置すると、排水口内の脚部11が支柱10の先端部を中心に回動して脚部11の両先端が排水口23または33の断面の一番間隔の広い箇所に位置するので、蓋本体部2を傾斜させる力が生じず、蓋本体部2と開口24または34の間に隙間が生じない。従って、排水蓋1の一部を切り取ったりしなくても、上向きの排水口23と横向きの排水口33の両方に使用可能となる。
また、横向きの排水口33に設置する場合、フランジ部35の内の底板部37と立ち上がり部36の接続部分が丸角部38となっていても延設部7(または9)が底板部37の上に当接する一方、蓋本体部2の下端である突起5A(または5B)の先端は丸角38に当接せず、これによっても蓋本体部2は傾斜しない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、マンションやビル等の建物のベランダ、屋上等の排水管の排水口に設置するゴミ避け用の排水蓋に適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 排水蓋
2 蓋本体部
3 排水孔
4、5 突起
6、8 排水スリット
7、9 延設部
10 支柱
11 脚部
12 ネジ
20、30 排水管
22、32 排水口部材
23、33 排水口
【要約】
【課題】 部材の一部の切り取りなどの面倒な作業が不要な上向き、横向き兼用の排水蓋を提供する。
【解決手段】 排水蓋1は、雨水を排水する多数の排水孔3、排水スリット6、8を有し、排水管30の排水口33を覆う蓋本体部2と、蓋本体部2の裏面中央から裏側方向に延設された支柱10と、支柱10の先端部に、この先端部を中心として左右対称に取り付けられた可撓性を有する脚部11と、を備えている。脚部11は支柱の先端部に、支柱の軸と直交する軸周りに回動自在に軸支されており、脚部11の両側をU字状に撓ませて排水口33に差し込み、脚部11の復元力で排水口33の内壁に密着自在に形成されている。
【選択図】
図10