(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アラミドフィブリッドが、5〜20μmの平均幅を有する第1のアラミドフィブリッド、及び、20超〜40μmの平均幅を有する第2のアラミドフィブリッドのみからなる、請求項1記載の絶縁紙。
前記アラミドフロックの一部、前記第1のアラミドフィブリッドの一部、及び、前記第2のアラミドフィブリッドの一部が熱接着している、請求項1〜10のいずれかに記載の絶縁紙。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、鋭意検討の結果、アラミドフロック及びアラミドフィブリッドからなり、絶縁耐力が16kV/mm以上であり、且つ、比引裂強度が28mN・m
2/g以上である絶縁紙を実現可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
特に、本発明者らは、アラミドフロック及びアラミドフィブリッドからなる絶縁紙において、アラミドフィブリッドとして特定の2種類のものを必須に使用すると電気絶縁紙としての特性、特に電気絶縁性及び強度が向上することを見出した。したがって、本発明の絶縁紙は、2〜10mmの平均繊維長及び10〜30μmの平均繊維径を有するアラミドフロック、並びに、5〜20μmの平均幅を有する第1のアラミドフィブリッド、及び、20超〜40μmの平均幅を有する第2のアラミドフィブリッドを含むアラミドフィブリッドからなる。
【0023】
本発明の絶縁紙がアラミドフロック及びアラミドフィブリッド「からなる」とは、本発明の絶縁紙が、前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドのみからなる場合、並びに、前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドからなるもこれらの以外の成分を含む場合の両者を包含する意味である。
【0024】
[アラミド]
本発明において「アラミド」とは芳香族ポリアミドを意味する。本発明において「アラミド」とは、化学構造的には、アミド結合の60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更により好ましくは90モル%以上が芳香環に直接結合した線状高分子化合物を意味する。
【0025】
アラミドはベンゼン環へのアミド基の置換位置によって、パラアラミド、メタアラミド及びこれらの共重合体に分類される。パラアラミドとしては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド及びその共重合体、ポリ(パラフェニレン)−コポリ(3,4’−ジフェニルエーテル)テレフタルアミド(ポリ(パラフェニレン)−コポリ(3,4’−ジフェニルエーテル)テレフタルアミド)等が例示される。メタアラミドとしては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド及びその共重合体等が例示される。これらのアラミドは、例えば従来既知の界面重合法、溶液重合法等により工業的に製造されており、市販品として入手することが可能であるが、これに限定されるものではない。本発明では、メタアラミドが好ましく選択される。メタアラミドは汎用アミド溶剤に可溶であること、ポリマー溶液を出発原料として湿式成形が可能であること、熱融着性に優れること、耐熱性や難燃性が良好であること等の特長がある。メタアラミドの中でも、ポリメタフェニレンイソフタルアミドが、良好な成型加工性、熱接着性、難燃性、耐熱性等の特性を備えている点で好ましく用いられる。
【0026】
[アラミドフロック]
「アラミドフロック」とは、アラミドからなる短繊維である。本発明におけるアラミドフロックの(数)平均繊維長は2〜10mmの範囲であり、2〜8mmの範囲がより好ましく、3〜6mmの範囲が更により好ましい。平均繊維長が2mmよりも小さいと絶縁紙の強度が低減するおそれがある。平均繊維長が10mmを超えると絶縁紙においてフロック同士の「絡み」、「結束」が発生しやすくなり、欠陥の原因となりやすいため、好ましくない。
【0027】
本発明におけるアラミドフロックは10〜30μmの(数)平均繊維径を有する。前記アラミドフロックの平均繊維径は、12〜28μmが好ましく、14〜26μmがより好ましく、16〜24μmが更により好ましい。平均繊維径は、例えば、本発明の絶縁紙の原料としてのアラミドフロックの所定本数(例えば100本)の幅を平均して得ることができる。或いは、本発明の絶縁紙の表面上の所定面積範囲(例えば60,000μm
2)に存在するアラミドフロックの幅を、SEM観察等により測定し、平均してもよい。
【0028】
アラミドフロックの繊度は0.1〜10デニールが好ましく、0.5〜8デニールがより好ましく、1〜6デニールが更により好ましい。ここで、「デニール」とは、繊維9000m当たりの質量(グラム)で表記した単位である。繊度が0.1デニールよりも小さいと水中での絡み合いが大きくなり絶縁紙の性能の低下を招くおそれがある。一方、繊度が10デニールを上回ると、フロックの径が大きくなりすぎるため、アスペクト比の低下、力学的補強効果の低下、及び、絶縁紙の均一性不良を招くおそれがあるため好ましくない。
【0029】
本発明で使用されるアラミドフロックはメタアラミドからなることが好ましい。メタアラミドとしては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド及びその共重合体が好ましく、例えば、m−フェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドを共縮重合することによって製造可能である。メタアラミドフロックは市販されており、例えば、帝人(株)の「コーネックス(登録商標)」等を使用することができるが、これらに限定されない。
【0030】
[アラミドフィブリッド]
「アラミドフィブリッド」とは、アラミドからなるフィルム状又は繊維状の微小粒子であり、アラミドパルプと称されることもある(アラミドフィブリッドについては特公昭35−11851号、特公昭37−5752号等を参照)。フィブリッドは、通常の木材(セルロース)パルプと同じように抄紙性を有するため、水中分散後、抄紙機にてシート状に成形することができる。
【0031】
アラミドフィブリッドには、通常の木材パルプと同様に、抄紙に適した品質を保つ目的でいわゆる叩解処理を施すことができる。この叩解処理は、ディスクリファイナー、ビーター等の機械的切断作用を及ぼす抄紙原料処理機器によって実施することができる。この操作において、アラミドフィブリッドの形態変化は、日本工業規格P8121に規定の濾水度試験方法(フリーネス)でモニターすることができる。本発明において、叩解処理を施した後のアラミドフィブリッドの濾水度は、10cm
3〜300cm
3(カナディアンフリーネス(JISP8121))の範囲内にあることが好ましい。この範囲より大きな濾水度のファイブリッドでは、それから成形されるアラミド紙の強度が低下する可能性がある。一方、10cm
3よりも小さな濾水度を得ようとすると、投入する機械動力の利用効率が小さくなり、また、単位時間当たりの処理量が少なくなることが多く、さらに、ファイブリッドの微細化が進行しすぎるためいわゆるバインダー機能の低下を招きやすい。したがって、このように10cm
3よりも小さい濾水度を得ようとしても、格段の利点が認められない。
【0032】
本発明におけるアラミドフィブリッドは、少なくとも、第1のアラミドフィブリッド及び第2のアラミドフィブリッドを含む。したがって、本発明におけるアラミドフィブリッドは前記第1のアラミドフィブリッド及び前記第2のアラミドフィブリッド以外のアラミドフィブリッドを含むことができる。一方、本発明におけるアラミドフィブリッドは、第1のアラミドフィブリッド及び第2のアラミドフィブリッドのみからなる、すなわち、第1のアラミドフィブリッド及び第2のアラミドフィブリッドだけで構成されていてもよい。
【0033】
前記第1のアラミドフィブリッド及び第2のアラミドフィブリッドはメタアラミドからなることが好ましい。
【0034】
メタアラミドとしては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド及びその共重合体が好ましく、例えば、m−フェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドを共縮重合することによって製造可能である。メタアラミドフィブリッドは、メタアラミドを含有する溶液を、例えば、特公昭35―11851号に記載の方法にしたがって湿式沈殿法によって製造することができる。
【0035】
前記第1のアラミドフィブリッドは5〜20μmの(数)平均幅を有する。平均幅は、例えば、本発明の絶縁紙の原料としての前記第1のアラミドフィブリッドの所定本数(例えば100本)の幅を平均して得ることができる。或いは、本発明の絶縁紙の表面上の所定面積範囲(例えば60,000μm
2)に存在する第1のアラミドフィブリッドの幅を、SEM観察等により測定し、平均してもよい。なお、ここでの「幅」とは第1のアラミドフィブリッドの幅方向(直径)における最大幅を意味する。
【0036】
前記第2のアラミドフィブリッドは20超〜40μmの(数)平均幅を有する。平均幅は、例えば、本発明の絶縁紙の原料としての前記第2のアラミドフィブリッドの所定本数(例えば100本)の幅を平均して得ることができる。或いは、本発明の絶縁紙の表面上の所定面積範囲(例えば240,000μm
2)に存在する第2のアラミドフィブリッドの幅を、SEM観察等により測定し、平均してもよい。ここでの「幅」とは第2のアラミドフィブリッドの幅方向(直径)における最大幅を意味する。
【0037】
前記第1のアラミドフィブリッドは前記第2のアラミドフィブリッドを微細化処理することによっても製造することができる。前記微細化処理の種類は特に限定されるものではなく、例えば、超音波処理等の非機械的微細化処理であってもよいが、ホモジナイザー、高速回転型解繊機等を用いた機械的微細化によるミクロフィブリル化処理を挙げることができる。ホモジナイザーによる処理が好ましい。したがって、前記第1のアラミドフィブリッドはホモジナイザー処理を受けたものであることが好ましい。
【0038】
ホモジナイザーの具体例としては、スギノマシン社製の「スターバースト」、イズミフードマシナリ社製の「高圧ホモゲナイザー」、Rannie社製の「ミニラボ8.3H型」に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザーやMicrofluidics社製の「マイクロフルイダイザー」、吉田機械興業社製の「ナノマイザー」、スギノマシン社製の「アルティマイザー」、白水化学社製の「ジーナスPY」、日本ビーイーイー社製の「DeBEE2000」等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
【0039】
本発明におけるアラミドフィブリッドが、第1のアラミドフィブリッド及び第2のアラミドフィブリッド以外のアラミドフィブリッドを含む場合、当該アラミドフィブリッドはメタアラミドからなることが好ましい。
【0040】
本発明の絶縁紙におけるアラミドフィブリッドは5〜25μmの(数)平均幅を有することが好ましい。前記アラミドフィブリッドの平均幅は、7〜22μmが好ましく、9〜20μmがより好ましく、11〜18μmが更により好ましい。平均幅は、例えば、本発明の絶縁紙の原料としてのアラミドフィブリッドの所定本数(例えば100本)の幅を平均して得ることができる。或いは、本発明の絶縁紙の表面上の所定面積範囲(例えば60,000μm
2)に存在するアラミドフィブリッドの幅を、SEM観察等により測定し、平均してもよい。
【0041】
本発明の絶縁紙におけるアラミドフィブリッドは、10μm以下の幅を有する第1のアラミドフィブリッドを30繊維本数%以上の割合で含むことが好ましい。10μm以下の幅を有する第1のアラミドフィブリッドの含有率は40繊維本数%以上がより好ましく、50繊維本数%以上が更により好ましく、60繊維本数%以上が更により好ましい。
【0042】
ここで、「繊維本数%」とは、本発明の絶縁紙表面に存在するアラミドフィブリッドの総本数に占める前記第1のアラミドフィブリッドの本数の占める割合を意味しており、特に、本発明の絶縁紙の表面上の所定面積範囲(例えば60,000μm
2)に存在するアラミドフィブリッドの総本数に占める前記第1のアラミドフィブリッドの本数の占める割合を意味している。「繊維本数%」の決定は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)観察等によって行うことができる。したがって、換言すれば、本発明の絶縁紙に含まれる前記アラミドフィブリッドの数ベースで30%以上が前記第1アラミドフィブリッドであることが好ましい。
【0043】
前記アラミドフィブリッドに含まれる第1のアラミドフィブリッドの数ベースでの配合割合の上限は90繊維本数%以下が好ましく、80繊維本数%以下が好ましく、70繊維本数%以下が更に好ましい。
【0044】
[絶縁紙]
本発明の絶縁紙は前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドから主に構成される多孔性のシート状物であり、絶縁耐力が16kV/mm以上であり、且つ、比引裂強度が28mN・m
2/g以上である。本発明の絶縁紙の絶縁耐力は18kV/mm以上が好ましく、20kV/mm以上がより好ましく、22kV/mm以上が更により好ましい。本発明の絶縁紙の比引裂強度は30mN・m
2/g以上が好ましく、32mN・m
2/g以上がより好ましく、34mN・m
2/g以上が更により好ましい。
【0045】
絶縁耐力と比引裂強度は、通常、トレードオフの関係にある。したがって、アラミドフィブリッドの配合割合を高めて絶縁耐力を高めると、比引裂強度が低下する一方、アラミドフロックの配合割合を高めて比引裂強度を高めると、絶縁耐力が低下する。しかし、本発明では、例えば、20超〜40μmの平均幅を有する第2のアラミドフィブリッドと共に5〜20μmの平均幅を有する第1のアラミドフィブリッドを併用してアラミドフィブリッドの微細化を進めることによって、アラミドフィブリッドが絶縁紙の表面を被覆しやすくなり、比較的少量のアラミドフィブリッドによって絶縁耐力を高めることが可能となり、その一方で、比較的多量のアラミドフロックが使用可能となり、比引裂強度を高めることができる。したがって、本発明の絶縁紙は、高い絶縁耐力と高い比引裂強度を両立している。
【0046】
本発明の絶縁紙の厚みは、10〜1000μmが好ましく、20〜800μmがより好ましく、30〜500μmが更により好ましい。また、本発明の絶縁紙の坪量は、10〜1000g/m
2が好ましく、20〜500g/m
2がより好ましく、30〜300g/m
2が更により好ましい。
【0047】
本発明の絶縁紙は、絶縁紙の全重量(全質量)に対して前記アラミドフロックを、20〜80重量%含むことが好ましく、30〜70重量%含むことがより好ましく、40〜60重量%含むことがより好ましい。
【0048】
本発明の絶縁紙は、絶縁紙の全重量に対して前記アラミドフィブリッドを、20〜80重量%含むことが好ましく、30〜70重量%含むことがより好ましく、40〜60重量%含むことがより好ましい。
【0049】
本発明の絶縁紙における前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドの混合割合は任意とすることができるが、前記アラミドフロック/前記アラミドフィブリッドの混合比(重量比)は20:80〜80:20が好ましく、30:70〜70:30がより好ましい。
【0050】
本発明の絶縁紙は、前記アラミドフィブリッドの全重量に対して前記第1のアラミドフィブリッドを50〜90重量%含むことが好ましい。
【0051】
また、本発明の絶縁紙は、前記アラミドフィブリッドの全重量に対して前記第2のアラミドフィブリッドを50〜10重量%含むことが好ましい。
【0052】
本発明の絶縁紙は、例えば、前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドを混合後にシート化する方法により製造可能である。具体的には、例えば、前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドを乾式混合後に、気流を利用してシートを形成する方法、前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドを液体媒体中で分散混合した後、液体透過性の網、ベルト等の支持体上に吐出してシート化し、液体を除いて乾燥する方法等を使用することができるが、後者が好ましく、その中でも、水を液体媒体として使用する、いわゆる湿式抄造法が好ましい。
【0053】
湿式抄造法では、前記アラミドフロック及び前記アラミドフィブリッドを少なくとも含有する水性スラリーを抄紙機に供給し分散後、脱水、搾水及び乾燥することによって、シートとして巻き取る方法が一般的である。抄紙機としては長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機及びこれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機等が利用可能である。コンビネーション抄紙機での製造の場合、配合比率の異なるスラリーをシート成形し合一することで複数の紙層からなる複合体シートを得ることができる。抄造の際に必要に応じて分散性向上剤、消泡剤、紙力増強剤などの添加剤が使用される。
【0054】
上記のようにして得られた絶縁紙は、例えば、一対のロール間にて高温高圧で熱圧することにより、密度、結晶化度、耐熱性、寸法安定性、機械強度等を向上することができる。これにより、前記アラミドフロックの一部、前記第1のアラミドフィブリッドの一部、及び、前記第2のアラミドフィブリッドの一部が熱融着することが好ましい。熱圧の条件は、たとえば金属製ロールを使用する場合、温度100〜350℃、線圧50〜400kg/cmの範囲内を例示することができるが、これらに限定されるものではない。熱圧の際に複数の絶縁紙を積層することもできる。上記の熱圧加工を任意の順に複数回行うこともできる。但し、本発明の絶縁紙はその多孔性を維持することが好ましい。
【0055】
[バインダー]
本発明の絶縁紙は、必要に応じて、アラミド以外のポリマーからなる少なくとも1種のバインダーを更に含むことができる。バインダーとして使用される樹脂は、製紙用分散体に直接添加される水溶性又は分散性ポリマーの形態でもよいし、あるいは乾燥又は次の更なる圧縮及び/又は加熱処理の間に加えられる熱によりバインダーとして活性化されるようにアラミド繊維と混ぜられた樹脂材料の熱可塑性バインダー繊維の形態でもよい。水溶性又は分散性ポリマーとしては、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の水溶性又は水分散性の熱硬化性樹脂を挙げることができる。特に有用なのは水溶性ポリアミド樹脂である。ポリ(ビニルアルコール)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ(酢酸ビニル)等の熱可塑性樹脂の水溶液又は水分散体も同様に使用することができる。
【0056】
[フィラー]
本発明の絶縁紙は、必要に応じて、少なくとも1種のフィラーを更に含むことができる。フィラーの種類は特に限定されるものではないが、無機系フィラーが好ましく、例えば、雲母、グラファイト、カオリン、ベントナイト等の粘土、カーボンナノチューブ、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の熱伝導性フィラーを挙げることができる。
【0057】
[その他の成分]
本発明の絶縁紙は、必要に応じて、アラミド以外の材質からなる他の繊維を含んでもよい。他の繊維としては、例えば、芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリエーテルケトン繊維、パラアラミド繊維等の耐熱性繊維を挙げることができる。
【0058】
パラアラミド繊維は、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮重合により得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば、4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン等のような反対方向に同軸又は平行に延びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になるもので、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)等のパラ配向型またはパラ配向型に近い構造を有する芳香族ポリアミドを具体的に挙げることができる。これらの芳香族ポリアミドはパラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドを重合させることにより製造される。
【0059】
前記パラ配向芳香族ジアミンを例示すると、パラフェニレンジアミン(以下、PPDということがある)、4,4’−ジアミノビフェニル、2−メチル−パラフェニレンジアミン、2−クロロ−パラフェニレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミンおよび4,4’−ジアミノベンズアニリド等を挙げることができる。
【0060】
前記パラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドを例示すると、テレフタロイルクロリド(以下、TPCということがある)、4,4’−ベンゾイルクロリド、2−クロロテレフタロイルクロリド、2,5−ジクロロテレフタロイルクロリド、2−メチルテレフタロイルクロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドおよび1,5−ナフタレンジカルボン酸クロリド等を挙げることができる。
【0061】
本発明の絶縁紙は、電気絶縁紙として機能することができる。本発明の絶縁紙はASTM D−257の体積抵抗率の方法に準拠して、少なくとも10
13Ωcmの電気抵抗、好ましくは、少なくとも10
15Ωcmの電気抵抗を有することができる。
【0062】
本発明の絶縁紙は電気絶縁紙として優れた特性を有し、特に、改善された電気絶縁性及び強度を有するので、電気絶縁体の構成要素として有用である。例えば、本発明の絶縁紙又はその積層体を、変圧器、発電機、電動機等の電気デバイスを構成する電気絶縁体の構成要素として使用することができる。本発明の絶縁紙又はその積層体は、フェノール樹脂、エポキシ、ポリイミド等の樹脂で含浸されてもよいが、樹脂で含浸されずとも優れた電気絶縁性を発揮することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0064】
[評価方法]
(平均繊維幅)
下記実施例及び比較例より得られた各手抄用原料スラリーを希釈して、プレパラート上に均一な薄膜となるよう滴下して乾燥させ、走査型電子顕微鏡で100〜400倍に拡大してランダムに3視野を観察し、各視野から無作為に30本の繊維径を測定し数平均繊維幅(径)を算出した。
【0065】
(シート生産性)
手抄脱水後にコーチィングしたワイヤー上繊維シートのワイヤーからの剥がし易さを以下3段階で評価した。
○:ワイヤーへの繊維付着がほとんど無く容易に剥がすことが出来る。
△:ワイヤーへの繊維付着が若干見られるが容易に剥がすことが出来る。
×:ワイヤーへの繊維付着が多く慎重に剥がす必要がある。
【0066】
(アラミドフィブリッド繊維のシート作製時の歩留り)
はじめに、下記実施例と比較例により得たアラミドフィブリッド繊維スラリーとアラミドフロック繊維スラリーを絶乾繊維重量で55:45の比率で混合し、115g/m
2分の混合原料にて手抄を行った。この手抄後の絶乾シート坪量を測定した。このとき、歩留り100%であればシート中にアラミドフロック繊維は52g/m
2、アラミドフィブリッド繊維は63g/m
2が含まれることとなる(この時のフィブリッド繊維重量63g/m
2を(A)とする。)。しかし、手抄後の絶乾シート坪量が実測で115g/m
2よりも少ない場合、坪量が減少した分は手抄時にワイヤーから流出した微細化フィブリッド繊維の重量分と考えられる。そこで、次に、配合するフロック繊維重量46g/m
2分は変えず、フィブリッド繊維配合量を適量増加させて絶乾シート坪量が115g/m
2になるよう再度手抄きを行った。この際に配合したアラミドフィブリッド繊維の絶乾繊維重量を(B)とする。以上の(A)と(B)をもとに、アラミドフィブリッド繊維歩留りを次の式から算出した。
アラミドフィブリッド繊維歩留り(%)=(A/B)×100
【0067】
(絶縁耐力)
ASTM D−149に準拠して測定した。
【0068】
(原料調成)
メタ−アラミドフィブリッド繊維を、水中にて標準型離解機を用いて絶乾繊維重量濃度1.2%にて30分間離解処理を行い、処理後原料スラリーを8カットスクリーンにてゴーザムスクリーン処理を行い、大型の未離解状繊維の除去を行った。次いで未離解状繊維を除去した原料スラリーを絶乾繊維重量濃度1.2%のまま低圧ホモジナイザーを用いて、バルブ圧10〜20MPaにて10回掛け処理を行い平均繊維幅7μmの手抄用第1のアラミドフィブリッド繊維スラリーを得た。
【0069】
また、ゴーザムスクリーン処理にて未離解状繊維を除去した原料スラリーを絶乾繊維重量濃度1.2%のままナイアガラビーターにて40分間叩解して平均繊維幅27μmの手抄用第2のアラミドフィブリッド繊維スラリーを得た。
【0070】
次に、メタ−アラミドフロック繊維を、水中にて標準型離解機を用いて絶乾繊維重量濃度0.3%にて1分間分散処理を行い、平均繊維長7.0mm、平均繊維幅17μmの手抄用アラミドフロック繊維スラリーを得た。
【0071】
[実施例1]
それぞれ得られた第1のアラミドフィブリッド繊維スラリー、第2のアラミドフィブリッド繊維スラリーと手抄用アラミドフロック繊維スラリーを順に、絶乾繊維重量で44:11:45の比率で混合して手抄用原料混合スラリーを得た。(アラミドフィブリッド全重量に対して第1のアラミドフィブリッドは80重量%、第2のアラミドフィブリッドは20重量%となる。)
【0072】
手抄用原料混合スラリーを絶乾重量にて坪量115/m
2となるよう原料を採取して角型手抄マシンにてウェットシートを作製し、プレス機での脱水、回転式乾燥機(写真ドライヤー)での加熱乾燥を行い、手抄乾燥シートを得た。次いで300℃に加熱した金属ロール間にて手抄乾燥シートの加熱加圧処理を行い、試験用シートを得た。
【0073】
[実施例2]
第1のアラミドフィブリッド繊維スラリー、第2のアラミドフィブリッド繊維スラリーとアラミドフロック繊維スラリーを順に絶乾重量で33:22:45の比率で混合し手抄用原料混合スラリーを得た以外は実施例1と同様にして試験用シートを得た。(アラミドフィブリッド全重量に対して第1のアラミドフィブリッドは60重量%、第2のアラミドフィブリッドは40重量%となる。)
【0074】
[比較例1]
第1のアラミドフィブリッド繊維スラリーとアラミドフロック繊維スラリーを絶乾重量で55:45の比率で混合し手抄用原料混合スラリーを得た以外は実施例1と同様にして試験用シートを得た。
【0075】
[比較例2]
第2のアラミドフィブリッド繊維スラリーとアラミドフロック繊維スラリーを絶乾重量で55:45の比率で混合し手抄用原料混合スラリーを得た以外は実施例1と同様にして試験用シートを得た。
【0076】
得られた試験用シートの物性試験結果を表1に示す。
【表1】
【0077】
表1より、微細化させた第1のアラミドフィブリッドと繊維幅の広い第2のアラミドフィブリッドを混合させることにより高い絶縁耐力及び比引裂強度を実現し、更に、シートの生産性、アラミドフィブリッドのシート作製時の歩留りを高めることが可能となる。