【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の1つの主題は、有機母材に埋め込まれたマルチフィラメント織物繊維の少なくとも1つの糸を含むコアとコアの回りに巻かれてコアに接触した金属線を含む外側層とを含むタイヤのための単層ビードワイヤである。
【0007】
有機母材に固有の比較的高い降伏強度により、輸送及び貯蔵の段階中のビードワイヤの可能な可塑化は回避され、塑性変形のあらゆる危険性は排除される。
【0008】
更に、ビードワイヤは比較的軽い。具体的には、コアが作られる材料の性質は、その機械的特性、特に破断時の力を保持しながら、金属コアを有するビードワイヤのものと比較して15から35%だけビードワイヤの質量を低減することを可能にする。
【0009】
定義により、織物繊維は非金属である。マルチフィラメント織物繊維は、並んで配置されて実質的に一方向方式に配向される基本紡織フィラメントを含む。基本フィラメントは、従って、時折重なるのは別として、互いに多かれ少なかれ平行である。
【0010】
織物繊維は、有機母材を補強する。そのような繊維は、例えば、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド(又は「アラミド」)繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、セルロース繊維、レーヨン繊維、ビスコース繊維、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(又は「PBO」)繊維、ポリエチレンナフテン酸塩(「PEN」)繊維、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、及びそのような繊維の混合物から構成される群から選択される。好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、及びそのような繊維の混合物から構成される群から選択された繊維を使用することになる。好ましくは、繊維は、ガラス繊維である。
【0011】
有機母材は、重量で50%よりも多く、好ましくは、75%よりも多く、より好ましくは、90%よりも多い有機材料を含むあらゆる母材であると理解される。有機母材は、その製造工程に由来する鉱物及び/又は金属を含有するが、意図的に鉱物及び/又は金属添加剤を追加することもできる。従って、有機母材は、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエポキシド、フェノール誘導体又はアミノプラストに基づく例えば熱硬化性ポリマー母材、又は例えばシアネート、ポリ(ビスマレイミド)、ポリイミド、ポリアミドイミドに基づく熱安定性のポリマー母材、又は例えばポリプロピレン、ポリアミド、飽和ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポルスルホン及びポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドに基づく熱可塑性ポリマー母材、又は例えばポリウレタン、シリコーン、又はゴムに基づく熱可塑性又は架橋エラストマー、又はこれらの材料の混合物から得られる有機母材とすることができる。
【0012】
好ましくは、有機母材は、好ましくは架橋された熱硬化性樹脂である。それは、例えば、紫外可視光線、加速電子のビーム、又はX線のようなイオン化放射線による架橋性の例えば樹脂である。過酸化物によって架橋性の樹脂を含む組成物も選択することができ、その後の架橋は、次に、その工程で印加される熱により、例えば、マイクロ波の作用によって実施することができる。好ましくは、イオン化放射線によって硬化することができるタイプの組成物が使用され、最終重合化をイオン化処理、例えば、UV又はUV可視タイプを使用して容易にトリガして制御することができる。架橋性樹脂として、ポリエステル樹脂(すなわち、不飽和ポリエステルに基づくもの)又はビニルエステル樹脂を使用することがより好ましい。より好ましくは、ビニルエステル樹脂を使用する。
【0013】
一実施形態において、コアは、単糸を含み、かつ好ましくは単糸から構成される。
【0014】
一変形において、コアは、モノリシック円環体を形成する。用語「モノリシック」は、円環体に巨視的スケールで材料又は継手の不連続性がないことを意味すると理解される。円環体はモノリシックであるので、コアは、従来技術のビードワイヤのコアよりも脆弱でなく、従来技術のビードワイヤは、その端部を溶接する点に弱点がある。好ましくは、基本フィラメントは、円環体の容積全体を通して均質に分配される。
【0015】
別の変形において、コアは、いくつかのコイルにおける糸の巻線を形成する。
【0016】
別の実施形態において、コアは、複数の別々の糸を含む。その高降伏強度の理由で、コア材料は、より大きい弾性変形の機能を有し、その機能は、複数の糸によって高められる。具体的には、糸の数を増加させることにより、ビードワイヤの予め決められたサイズに対して各糸の断面及び従って各糸の断面の剛性は低下し、コアの臨界曲げ曲率半径は減少する。第1にコア材料及び第2に複数の糸の組合せにより、優れた弾性変形の機能を有するビードワイヤを得ることを可能にする。ビードワイヤの可塑化のあらゆる危険性を回避する。
【0017】
一変形において、糸は、ケーブリングによって組み立てられる。この変形において、糸は、螺旋状に互いに巻かれ、これら自体の軸線の回りで捩りを受けない。
【0018】
別の変形において、糸は、捩ることによって組み立てられる。この変形において、糸は螺旋状に互いに巻かれ、集合的捩り及びこれら自体の軸線の回りで個々の捩りの両方を受け、それによって糸の各々に対して捩り戻しトルクを発生させる。
【0019】
更に別の変形において、コアは、互いに平行に並置された複数のモノリシック円環体を含む。
【0020】
有利な態様において、各糸を作る材料は、800MPa以上であり、好ましくは、1000MPa以上であり、より好ましくは、1200MPa以上の23℃で基準「ISO 14125」に従って測定された降伏強度を有する。コア材料の高降伏強度により、輸送及び貯蔵の段階中のビードワイヤの可塑化の危険性は更に低下する。
【0021】
有利な態様において、各糸を作る材料は、100GPa以下であり、好ましくは、75GPa以下であり、より好ましくは、50GPa以下の23℃で基準「ISO 14125」に従って測定されたヤング率を有する。低ヤング率は、変形の観点から強力であるコアを得ることを可能にする。好ましくは、高降伏強度及び低ヤング率の組合せは、ビードワイヤのコアに弾性ドメインにおける優れた変形機能を与える。
【0022】
有利な態様において、ビードワイヤの質量に対するコアの寄与対ビードワイヤの破断時の力に対するコアの寄与の比率は、厳密には1よりも小さく、好ましくは、0.8以下であり、より好ましくは、0.7以下である。コアの比較的低い質量に対して、コアの破断時の力は、比較的高い。従って、コアの及び従ってビードワイヤの質量の比較的小さい増加は、破断時の力の比較的高い増加をもたらす。
【0023】
破断時の力に対するコアの寄与は、コア単独の破断時の力対ビードワイヤの破断時の力の比率によって定義される。ビードワイヤの質量に対するコアの寄与は、コア単独の質量対ビードワイヤの質量の比率によって定義される。
【0024】
破断時の力に対する寄与の比率を決定するために、ビードワイヤの又はコアの破断時の力(Nでの最大荷重)は、一般的に使用するあらゆる種類の方法によって測定することができる。例えば、ビードワイヤの直線試料に対して基準「ISO 6892,1984」による方法、又は以下に説明するビードワイヤ引張試験による方法を使用することもできる。
【0025】
有利な態様において、ビードワイヤの質量に対するコアの寄与対ビードワイヤの破断時の力に対するコアの寄与の比率は、0.25以上であり、好ましくは、0.4以上であり、より好ましくは、0.5以上である。従って、ビードワイヤは、コアと外側層の間の質量及び破断時の力への優れた寄与の分配を有する。
【0026】
好ましくは、ビードワイヤの質量に対するコアの寄与対ビードワイヤの破断時の力に対するコアの寄与の比率は、範囲[0.25;1]、[0.4;1]、[0.5;1]、[0.25;0.8]、[0.4;0.8]、[0.5;0.8]、[0.25;0.7]、[0.4;0.7]、及び[0.5;0.7]のうちの少なくとも1つにある。
【0027】
より好ましくは、ビードワイヤの質量に対するコアの寄与対ビードワイヤの破断時の力に対するコアの寄与の比率は、範囲[0.5;0.7]にある。
【0028】
好ましくは、ビードワイヤの破断時の力に対するコアの寄与は、10%以上であり、好ましくは、15%以上であり、より好ましくは、17%以上である。従って、ビードワイヤの破断時の力に対するビードワイヤのコアの寄与は、従来技術のビードワイヤの破断時の力に対する従来技術のビードワイヤのコアの寄与よりも大きい。一定の機械的特性において、ビードワイヤは、従ってより軽い。
【0029】
任意的に、ビードワイヤの破断時の力に対するコアの寄与は、75%よりも小さいか又はそれに等しい。破断時の力に対する寄与は、従って、コアと外側層の間に比較的良く分配されたままである。
【0030】
好ましくは、ビードワイヤの質量に対するコアの寄与は、20%以下であり、好ましくは、15%以下であり、より好ましくは、10%以下である。従って、ビードワイヤの質量に対するビードワイヤのコアの寄与は、従来技術のビードワイヤの質量に対する従来技術のビードワイヤのコアの寄与以下である。
【0031】
任意的に、ビードワイヤの質量に対するコアの寄与は、5%以上である。質量に対する寄与は、従って、主として依然として外側層によるものである。
【0032】
有利な態様において、コアによって定められた円環体の直径対ビードワイヤによって定められた円環体の直径の比率は、0.35以上であり、好ましくは、0.45以上であり、より好ましくは、0.55以上である。従って、比較的コンパクトなコアを含み、かつ優れた機械的特性、特に破断時の力を有するビードワイヤを得ることができる。
【0033】
好ましくは、ビードワイヤの破断時の力は、包括的に1600daN〜2700daNであり、好ましくは、包括的に1800daN〜2500daNであり、より好ましくは、包括的に2000daN〜2300daNである。
【0034】
ビードワイヤの又はコアの破断時の力(Nでの最大荷重)は、好ましくは、12個の半径方向に可動性の扇形を含む引張試験機械を用いてビードワイヤ引張試験と呼ばれる周方向引張試験を使用して23℃で測定される。準静的な条件下に実施されるこの試験中に、試験すべきビードワイヤ又はコアは、扇形の回りに位置決めされる。扇形の同時及び漸次的移動は、増加した強度の半径方向の力をビードワイヤ又はコアに及ぼす効果を有する。扇形の移動の後に、ビードワイヤ又はコアにかかる力を測定する3つの力センサが続く。破断時の力は、ビードワイヤの要素が破断する時(ビードワイヤの試験の場合)又はコアが破断する時(コアの試験の場合)に決定される。取得周波数は、100Hzに等しい。保持される破断時の力の値は、3つのセンサによって測定された3つの値の平均値である。
【0035】
ビードワイヤの好ましい特徴により、以下の通りである。
−各糸の直径は、0.5〜4mmである。
−各マルチフィラメント織物繊維の各基本フィラメントの直径は、2〜30μmである。
−各マルチフィラメント織物繊維は連続的である。非連続的の反対の用語「連続的」は、繊維の予め決められた長さ、例えば、5cmに対して繊維の基本フィラメントの少なくとも80%及び好ましくは少なくとも90%が個々に連続的であることを意味すると理解される。
−各マルチフィラメント織物繊維は、10よりも多い基本フィラメント、好ましくは、100よりも多い基本フィラメント、より好ましくは、1000よりも多い基本フィラメントを含む。
【0036】
有利な態様において、それぞれ23℃で基準「ASTM D 638」及び「ASTM D 790」に従って測定されたビードワイヤのコア材料の伸展及び曲げ率は、好ましくは、15GPaよりも大きく、より好ましくは、30GPaよりも大きく、特に包括的に30〜50GPaである。
【0037】
好ましくは、23℃で基準「ASTM D 638」に従って測定された有機コア母材の伸展率は、2.3GPa以上であり、好ましくは、2.5GPa以上であり、より好ましくは、3GPa以上である。任意的に、コア材料は、少なくとも2%、好ましくは、3%に等しい圧縮時の弾性変形を有する。好ましくは、コア材料は、屈曲時に、伸展時のその破断応力よりも大きい圧縮時の破断応力を有する。
【0038】
コア材料の機械的曲げ特性は、会社インストロンからのタイプ4466の引張試験機械の助けによって測定される。
【0039】
圧縮特性は、ループ試験(D.Sinclair,J.App.Phys.21,380(1950))と呼ばれる方法によってコア材料に対して測定される。この試験の現在の使用において、ループが生成され、その破断点に漸次的にもたらされる。大きいサイズの断面の理由で容易に観察可能な破断の性質は、伸展時又は圧縮時のコア材料の破断を認識することを直ちに可能にする。
【0040】
好ましくは、コア材料が破断するまで曲げ状態で負荷が掛けられたコア材料は、材料が伸展状態にある側で破断し、これは簡単な目視観察によって識別されることに注意されたい。
【0041】
この場合にループの寸法が大きいことを考えると、ループに内接する円の半径を読むことはいつでも可能である。破断点の直前の内接する円の半径は、臨界曲率半径に対応する。それはRacと表示されている。以下の式:ecr=r/(Rac+r)は、次に、臨界弾性変形を計算して決定することを可能にし、式中rは材料の半径に対応する。
【0042】
圧縮時の破断応力は、以下の式:σc=ecr.Meを使用する計算によって得られ、式中Meは伸展率である。コア材料の場合に、ループは伸展時に一部破断し、従って、屈曲時に、圧縮時の破断応力が伸展時の破断応力よりも大きいという結論が引き出される。3降伏法と呼ばれる方法による矩形バーの屈曲状態の破断も実施される。この方法は、基準「ASTM D790」に対応する。この方法はまた、破断の性質が実際には伸展にあることを視覚的に検証することを可能にする。
【0043】
有機コア母材のガラス遷移温度Tgは、好ましくは、130℃よりも高く、より好ましくは、140℃よりも高い。ガラス遷移温度は、基準「ASTM D 3418」に従って測定される。
【0044】
コア材料の繊維含有率は、有利な態様において、材料の全質量の包含的に30%〜80%である。好ましくは、繊維含有率は、コア材料の質量の50%〜80%である。パーセントで表す繊維の質量による含有率は、滴定から得られる繊維の1mの質量をコア材料の線密度で割って計算される。
【0045】
有利な態様において、コア材料の密度は、2.2以下であり、好ましくは、2.05以下であり、より好ましくは、1.6以下である。好ましくは、コア材料の密度は、包含的に1.4と2.05の間であり、その範囲において、材料は、質量と機械的特性、特に破断時の力との間の最良の妥協を有する。コア材料の密度は、会社メトラー・トレドからのタイプ「PG503 DeltaRange」の専門家用秤を使用して測定される。数センチメートルの試料は、空気中で連続的に計量されてメタノールの中に浸漬され、装置のソフトウエアは、次に、密度を決定し、その密度は、3つの測定値の平均値である。
【0046】
好ましくは、外側層のワイヤは、鋼で作られる。有利な態様において、炭素含有率は、重量で0.7%以上であり、好ましくは、0.8%以上であり、より好ましくは、0.9%以上である。
【0047】
そのような炭素含有率は、必要な機械的特性とワイヤの実現可能性との間の良好な妥協を表している。特に、0.9%以上の炭素含有率の場合に、優れた機械的特性、特に破断時の力を得ることができる。
【0048】
使用する金属又は鋼は、それが特に炭素鋼であれ又はステンレス鋼であれ、金属層でそれ自体を被覆することができ、これは、例えば、金属コード及び/又はその構成要素の作業性、又は接着性、耐食性、又は耐老化性のようなコード及び/又はタイヤ自体の使用特性を改善する。
【0049】
1つの好ましい実施形態によって、使用する鋼は、真鍮(Zn−Cu合金)又亜鉛の層で覆われる。ワイヤを製造する工程中に、真鍮又は亜鉛コーティングは、ワイヤを引き出しやすくし、ワイヤをゴムにより良く接着させることを思い起こされたい。しかし、ワイヤは、例えば、これらのワイヤの耐食性及び/又はこれらのゴムに対する接着性を改善する機能を有する真鍮又は亜鉛以外の金属の薄層、例えば、Co、Ni、Alの薄層、化合物Cu、Zn、Al、Ni、Co、Snのうちの2つ又はそれよりも多くの合金の薄層で覆うことができると考えられる。
【0050】
当業者は、例えば、Cr、Ni、Co、V、又は様々な他の公知の元素(例えば、Research Disclosure 34984−「タイヤのためのマイクロ合金化鋼コード構成」−1993年5月、Research Disclosure 34054−「タイヤのための高引張強度の鋼コード構成」−1992年8月を参照)のような特殊な追加元素を含有するマイクロ合金化炭素鋼を使用することにより、その特定の特殊な要件に応じて特に鋼の組成及びこれらのワイヤの加工硬化の最終程度を調節することによって鋼ワイヤを製造する方法を知っているであろう。
【0051】
本発明の更に別の主題は、上述したような少なくとも1つのビードワイヤを含むタイヤである。
【0052】
好ましくは、タイヤは、地上車両のためのものである。地上車両は、航空機以外のあらゆる車両であると理解される。好ましくは、タイヤは、乗用車のためのものである。
【0053】
変形として、タイヤは、航空機のためのものである。
【0054】
本発明は、図面を参照して単に非限定的な例として与える以下の説明を読むとより良く理解されるであろう。