(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405587
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】有機ELパネル及びその製造方法、並びにカラーフィルター基板
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20181004BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20181004BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20181004BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20181004BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20181004BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20181004BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/12 E
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L27/32
G02B5/20 101
G09F9/30 365
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-550550(P2015-550550)
(86)(22)【出願日】2014年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2014005735
(87)【国際公開番号】WO2015079641
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-243528(P2013-243528)
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼丸 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】島村 隆之
【審査官】
横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−250437(JP,A)
【文献】
特開2006−123289(JP,A)
【文献】
特開2003−257666(JP,A)
【文献】
特開2004−197140(JP,A)
【文献】
特開2004−095233(JP,A)
【文献】
特開平10−275682(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/004865(WO,A1)
【文献】
特開2011−108477(JP,A)
【文献】
特開2004−006133(JP,A)
【文献】
特開2004−039579(JP,A)
【文献】
特開2007−042499(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/022123(WO,A1)
【文献】
特開2009−117180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/00−33/28
G02B 5/20
G09F 9/30
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上に有機EL素子が形成された有機EL基板と、第2基板上に着色層が形成されたカラーフィルター基板とが、前記有機EL素子と前記着色層が対向した状態で、樹脂層を介して貼り合わされている有機ELパネルであって、
前記カラーフィルター基板には、さらに、前記着色層上であって前記樹脂層と対向する面側に水分吸着層が形成されており、
前記水分吸着層は波長550nmの光に対する屈折率が1.5以上1.65以下の酸化マグネシウムを含み、且つ、前記水分吸着層の波長550nmの光に対する屈折率は1.72未満であることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】
前記水分吸着層は、さらに、酸化カルシウム及び/または酸化ストロンチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記水分吸着層の酸化マグネシウムは(111)配向をしていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機ELパネル。
【請求項4】
第1基板上に有機EL素子が形成された有機EL基板と、第2基板上に着色層が形成されたカラーフィルター基板とが、前記有機EL素子と前記着色層が対向した状態で、樹脂層を介して貼り合わされている有機ELパネルであって、
前記カラーフィルター基板には、さらに、前記着色層上であって前記樹脂層と対向する面側に酸化マグネシウムを含む水分吸着層が形成されており、
前記水分吸着層の酸化マグネシウムは(111)配向をしていることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項5】
前記水分吸着層は、さらに、酸化カルシウム及び/または酸化ストロンチウムを含むことを特徴とする請求項4に記載の有機ELパネル。
【請求項6】
透光性基板と、
前記透光性基板上に形成された着色層と、
前記着色層上に水分吸着層と、を備え、
前記水分吸着層は波長550nmの光に対する屈折率が1.5以上1.65以下の酸化マグネシウムを含み、且つ、前記水分吸着層の波長550nmの光に対する屈折率は1.72未満であることを特徴とするカラーフィルター基板。
【請求項7】
第1基板上に有機EL素子を形成して有機EL基板を作製する工程と、
第2基板上に着色層を形成した後、前記着色層上に酸化マグネシウムを含む水分吸着層を蒸着により形成してカラーフィルター基板を作製する工程と、
前記有機EL基板と前記カラーフィルター基板とを、前記有機EL素子と前記水分吸着層とが対向した状態で、樹脂層を介して貼り合せる工程とを、含み、
前記蒸着時における前記第2基板の基板温度が200℃以下であることを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項8】
前記蒸着時において、蒸着雰囲気下の酸素濃度は0.02Pa以上0.09Pa以下であることを特徴とする請求項7に記載の有機ELパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELパネル及びその製造方法、並びにカラーフィルター基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルが普及しつつあり、大型有機ELテレビも商品化が近いと言われている。有機ELパネルのカラー化の方法の一つとして、トップエミッション型の有機EL素子とカラーフィルター(以下、CFと称す。)基板とを組み合わせる方式が知られている。より具体的には、有機EL素子が形成された有機EL基板と着色層が形成されたCF基板とを、有機EL素子と着色層とが対向した状態で樹脂層を介して貼り合せた構成である。このトップエミッション型のCF方式における有機EL素子としては、白色に発光する有機EL素子を用いるものと、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に発光する有機EL素子を並列配置したものとがある。後者の場合、CF基板は、各色に発光する有機EL素子の色純度を上げて有機ELパネルの色再現範囲を広げるために用いられている。
【0003】
有機ELパネルは自発光素子であり、視認性に優れるという長所があるが、有機EL素子は水分に弱いという短所がある。そのため、パネルの内外から水分が侵入してくると、有機ELパネルの表示領域における非発光部(ダークスポット)の発生や、表示領域の輝度低下を招くことがある。従って、有機ELパネルの実用化にあたっては、水分をいかにして除去するかが重要となる。
【0004】
そこで、有機ELパネル中に水分吸着層を設けるという手法が過去から検討されてきた。水分吸着層の材料としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化ストロンチウムが知られている(特許文献1)。酸化マグネシウム等は透明性と水分吸着性の両面で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−95233号公報
【特許文献2】特開平5−89959号公報
【特許文献3】特開平7−169567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トップエミッション型のCF方式の有機ELパネルにおいて、CF基板の着色層中に水分が含まれていることがあり、この水分が樹脂層を介して有機EL素子に達すると発光特性が劣化するということが問題視されるようになってきた。そこで、CF基板の着色層上に水分吸着層を設けることが考えられる。しかし、酸化マグネシウム等を含む水分吸着層を成膜する場合、成膜時の温度によってはCF基板の着色層の劣化を招くことがある。しかも、CF基板は光の取り出し側に配置されるため、有機EL素子から出た光が水分吸着層を通過することになる。例えば、酸化マグネシウムを水分吸着層に用いた場合、一般的な酸化マグネシウムの屈折率は隣接する樹脂層の屈折率よりも高く、水分吸着層と樹脂層との屈折率差が大きい。そのため、水分吸着層と樹脂層との間で界面反射が生じて光の利用効率が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明はCF基板の着色層の熱による劣化を抑えつつ、発光した光の利用効率の低下を抑制した有機ELパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る有機ELパネルは、第1基板上に有機EL素子が形成された有機EL基板と、第2基板上に着色層が形成されたカラーフィルター基板とが、前記有機EL素子と前記着色層が対向した状態で、樹脂層を介して貼り合わされている有機ELパネルであって、前記カラーフィルター基板には、さらに、前記着色層上であって前記樹脂層と対向する面側に酸化マグネシウムを含む水分吸着層が蒸着により形成されており、前記水分吸着層の蒸着時における前記第2基板の基板温度は200℃以下であることとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る有機ELパネルでは、基板温度が200℃以下で蒸着して得られる酸化マグネシウムを含む水分吸着層を用いている。200℃以下であると、一般的なCF基板の着色層の熱による劣化を抑えることができる。しかもこれにより、一般的な酸化マグネシウムを用いた場合に比べて、水分吸着層と樹脂層との屈折率差を小さくすることができる。
【0010】
従って、CF基板の着色層の熱による劣化を抑えつつ、発光した光の利用効率の低下を抑制した有機ELパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る有機ELパネル1を示す正面図である。
【
図2】実施の形態に係る有機ELパネル1のA−A線で示す部分の断面図である。
【
図3】実施例及び比較例のサンプルの基板温度と各種測定値、及び、CFにおける着色層の耐熱性を示す図である。
【
図4】実施例及び比較例のサンプルの基板温度と屈折率及び(111)強度との関係を示すグラフである。
【
図5】(a)は(111)配向を呈する酸化マグネシウム結晶のSEM写真であり、(b)は(100)配向を呈する酸化マグネシウム結晶のSEM写真である。
【
図6】実施例及び比較例のサンプルの基板温度とイオン電流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態)
《発明の態様》
本発明の一態様に係る有機ELパネルは、第1基板上に有機EL素子が形成された有機EL基板と、第2基板上に着色層が形成されたカラーフィルター基板とが、前記有機EL素子と前記着色層が対向した状態で、樹脂層を介して貼り合わされている有機ELパネルであって、前記カラーフィルター基板には、さらに、前記着色層上であって前記樹脂層と対向する面側に酸化マグネシウムを含む水分吸着層が蒸着により形成されており、前記水分吸着層の蒸着時における前記第2基板の基板温度は200℃以下であることとする。
【0013】
また、本発明の別の態様では、前記水分吸着層は、さらに、酸化カルシウム及び/または酸化ストロンチウムを含むこともできる。
【0014】
また、本発明の別の態様では、前記水分吸着層の酸化マグネシウムは(111)配向をしていてもよい。
【0015】
また、本発明の別の態様では、第1基板上に有機EL素子が形成された有機EL基板と、第2基板上に着色層が形成されたカラーフィルター基板とが、前記有機EL素子と前記着色層が対向した状態で、樹脂層を介して貼り合わされている有機ELパネルであって、前記カラーフィルター基板には、さらに、前記着色層上であって前記樹脂層と対向する面側に水分吸着層が形成されており、前記水分吸着層は波長550nmの光に対する屈折率が1.5以上1.65以下の酸化マグネシウムを含み、且つ、前記水分吸着層の波長550nmの光に対する屈折率は1.72未満とすることもできる。
【0016】
また、本発明の別の態様では、透光性基板と、前記透光性基板上に形成された着色層と、前記着色層上に蒸着により形成された酸化マグネシウムを含む水分吸着層と、を備え、前記水分吸着層の蒸着時における前記第2基板の基板温度は200℃以下であるカラーフィルター基板とすることもできる。
【0017】
また、本発明の別の態様では、第1基板上に有機EL素子を形成して有機EL基板を作製する工程と、第2基板上に着色層を形成した後、前記着色層上に酸化マグネシウムを含む水分吸着層を蒸着により形成してカラーフィルター基板を作製する工程と、前記有機EL基板と前記カラーフィルター基板とを、前記有機EL素子と前記水分吸着層とが対向した状態で、樹脂層を介して貼り合せる工程とを、含み、前記蒸着時における前記第2基板の基板温度が200℃以下であることとしてもよい。
【0018】
また、本発明の別の態様では、前記蒸着時において、蒸着雰囲気下の酸素濃度は0.02Pa以上0.09Pa以下であることとしてもよい。
【0019】
《発明に至った経緯》
本発明者らは酸化マグネシウムが透明性と水分吸着性に優れていることから、酸化マグネシウムをCFの水分吸着層に適用できないかと鋭意、研究を重ねてきた。その結果、基板温度を200℃以下で蒸着することにより、従来の一般的な酸化マグネシウムよりも屈折率が低く、且つ、一般的に樹脂層に用いられる樹脂材料の屈折率に近い酸化マグネシウムを作製できることが分かった。そこで、この酸化マグネシウムを含む水分吸着層を用いることで、CF基板の着色層の熱による劣化を抑えつつ、発光した光の利用効率の低下を抑制した有機ELパネルを発明するに至った。
【0020】
《有機ELパネル1》
図1は、本発明の一態様に係る有機ELパネル1を示す正面図である。
図2は、
図1に示す有機ELパネル1のA−A線で示す部分の断面図である。
図2に示すように、有機ELパネル1は、有機EL基板10とCF基板20とが対向配置されており、樹脂層40を介して貼り合わされている。
図1に示すように、封止部材30が、有機EL素子が形成された表示領域を囲むように配置されている。有機ELパネル1は所謂トップエミッション型であり、発光した光は
図2の+Z軸方向に取り出される。有機ELパネル1の表示領域には画素Pxがマトリクス状に配置されている。
【0021】
《有機EL基板10》
図2を用いて有機EL基板10を説明する。有機EL基板10は、TFT(薄膜トランジスタ:不図示)素子が各画素Px毎に形成されたTFT基板11上に、層間絶縁膜12、アノード13、発光層15、カソード16、及び封止層17からなる有機EL素子50を備える。各有機EL素子50同士の間であって、層間絶縁膜12とカソード16との間にはバンク14が形成されている。また、有機EL基板10は表示領域において、発光層15が各画素Px毎に、R(赤)に発光する発光層15(R)、G(緑)に発光する発光層15(G)、B(青)に発光する発光層15(B)を有する有機EL素子50が並列配置されて構成される。
【0022】
TFT基板11は、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、アルミナ等の絶縁性材料からなる。TFT基板11の上面には複数のTFT及び各種電極配線が所定パターンで形成されている。
【0023】
層間絶縁膜12は、ポリイミド樹脂等からなり、TFT及び各種電極配線とアノード13とを絶縁するとともに、TFT等による段差を平坦化するために形成される。
【0024】
アノード13は、アルミニウム、銀、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等の光反射性導電材料からなり、各画素Px毎にマトリクス状に形成されている。
【0025】
バンク14は、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなり、アノード13が形成された領域を避けて形成されている。本実施の形態に係るバンク14はY方向に延在するライン状部分とX方向に延在するライン状部分とを含むピクセルバンクであるが、Y方向に延在するライン状部分のみからなるラインバンクであっても良い。
【0026】
発光層15は、バンク14で規定された各画素Pxに対応した領域に形成されており、有機EL表示パネル1の駆動時において、ホールと電子との再結合によりR、GまたはBに発光する。発光層15は有機材料で構成されており、有機材料としては、例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等を挙げることができる。
【0027】
発光層15は、必要に応じて、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、及び電子輸送層のいずれか、または、すべてを含んでいてもよい。
【0028】
カソード16は、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の透光性材料で形成された透明電極であって、発光層15上に形成されている。
【0029】
封止層17は、表示領域を被覆して封止し発光層15が水分や空気等に触れるのを防止するための層であって、窒化シリコン、酸窒化シリコン等の光透過性材料からなり、カソード16上に形成されている。
【0030】
《CF基板20》
図2を用いてCF基板20を説明する。CF基板20には、ガラス基板21上に(有機EL基板10側の主面側に)、R、G、Bの着色層22と、ブラックマトリクス(以下、BMと称す。)層23とが形成されている。そして、これらを被覆するように水分吸着層24が表示領域のほぼ全面に亘って形成されている。
【0031】
着色層22は、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過する透光性層であって、公知の樹脂材料(例えば市販製品として、JSR株式会社製カラーレジスト)等からなり、各画素Pxに対応した領域に形成されている。
【0032】
BM層23は、パネル内部への外光の入射を防止したり、CF基板20越しに内部部品が透けて見えるのを防止したり、外光の照り返しを抑えて有機ELパネル1のコントラストを向上させたりする目的で形成されている。材料としては、黒色樹脂であって、例えば光吸収性および遮光性に優れる黒色顔料を含む紫外線硬化樹脂材料からなる。
【0033】
図1に示すように、BM層23は、有機EL基板10の表示領域、及び、有機EL基板10の周辺領域(
図1において表示領域を囲む領域である。)に形成されている。但し、表示領域については、バンク14が形成された部分に対応した領域のみに形成されている。すなわち、表示領域においてBM層23は、X方向に延在するライン状部分とY方向に延在するライン状部分とを含む構造を有する。
【0034】
次にCF基板20において、着色層22とBM層23を被覆するように形成された水分吸着層24について説明する。本実施の形態では水分吸着層24として、透明性と水分吸着性を両立できる酸化マグネシウムを用いた。水分吸着層24としてはこれ以外にも酸化マグネシウムを含むアルカリ土類金属酸化物であってもよい。例示すると、酸化マグネシウムと酸化カルシウムとの複合酸化物、酸化マグネシウムと酸化ストロンチウムとの複合酸化物、酸化マグネシウムと酸化カルシウムと酸化ストロンチウムとの複合酸化物である。酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムの順に水分吸着性は高くなる。その他、酸化マグネシウムと樹脂との混合物等でもよい。
【0035】
水分吸着層24である酸化マグネシウムの膜厚としては、0.1μm〜10μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であると水分吸着性が良好となり、10μm以下であると水分吸着層24にひび割れが入るのを抑制できる。
【0036】
《封止部材30》
封止部材30は、緻密な樹脂材料(例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等)またはガラスからなる部材であって、有機EL基板10とCF基板20との間に有機EL基板10の表示領域を囲むように設けられている。これにより、有機EL基板10の表示領域を封止し有機EL素子50が水分や空気等に触れるのを防止している。尚、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルに封止部材30は必須ではなく、例えばマスキングテープを使用すれば封止部材30を省略可能である。
【0037】
封止部材30には、有機EL基板10とCF基板20との対向間隔を規定するスペーサ(不図示)が含まれている。スペーサは、シリカなどの材料で形成されており、円筒形、直方体や球状などの形状に形成され、有機EL基板10とCF基板20に両端部を当接させた状態で配置されている。なお、封止部材30がスペーサを含むことは本発明の一態様に係る有機ELパネル1において必須ではない。
【0038】
《有機ELパネル1の製造方法》
有機EL基板10は、TFT基板11上に有機EL素子50を含む積層構造を一般的な方法で作製する。
【0039】
CF基板20は既述した通り、まずガラス基板21上にR、G、Bの着色層22とBM層23とを一般的なフォトリソグラフィ工程で順次、形成する。そして、表示領域のほぼ全面に亘って、酸化マグネシウムからなる水分吸着層24をEB(Electron Beam)蒸着法で成膜する。蒸着時のCF基板20の温度としては着色層22の耐熱性を考慮して200℃以下とする。200℃よりも高い温度ではCF基板20の着色層22が熱に耐えられず、着色層22が劣化してしまう。従って、CF基板20の温度の上限値は200℃である。CF基板20の温度の下限値は特にないが、加熱しなくとも、EB蒸着時の輻射熱で少なくとも100℃以上にはなっているものと推定される。このようにEB蒸着では基板温度が少なくとも100℃には達していると考えられるため、水分吸着層24は有機EL基板10側には蒸着できない。なぜなら100℃程度の輻射熱の影響で有機EL素子50が劣化してしまうからである。また、蒸着時のCF基板20の温度を200℃以下とする理由は、着色層22が熱に耐えられる条件である上に、水分吸着層24の屈折率を下げることができ、水分吸着層24と樹脂層40との屈折率差を小さくすることができるからである。それと同時に、成膜された水分吸着層24である酸化マグネシウムの結晶格子の配向を(111)配向に近づけることができる。(100)配向等と比べて(111)配向の結晶層は多孔質な膜質であり、その分、水分等の吸着能力がより高まって好ましい。また、蒸着時における蒸着雰囲気下の酸素濃度は0.02Pa以上0.09Pa以下が好ましい。0.02Pa以上とすることで、より効率良く酸素を膜中に取り込むことができ、酸素欠陥が低減することにより(111)配向を得ることが可能になる。蒸着雰囲気中の酸素濃度を増やせば、より(111)配向が得やすい。そして、0.09Pa以下とすることでも同様に、より効率良く酸素を膜中に取り込むことができ、酸素欠陥が低減することにより(111)配向を得ることが可能になる。上記では水分吸着層24を蒸着により形成する方法を説明したが、蒸着以外にスパッタで形成してもよい。
【0040】
ここまでで用意した有機EL基板10とCF基板20のいずれか一方の周辺領域に封止部材30をディスペンサーで描画する。そして、有機EL基板10上の表示領域のほぼ全域に亘って樹脂層40を形成する。樹脂層40は、有機EL基板10とCF基板20との接着剤としての役割を果たす。材料としては熱硬化性のエポキシ樹脂である。しかしこれに限定されるものではなく、UV硬化性のエポキシ樹脂や他の有機材料、例えばアクリル樹脂等であってもよい。その後、両基板同士を、有機EL素子50と着色層22とをアライメントした上で、樹脂層40を介して貼り合せる。尚、貼り合せ後、有機ELパネル1を100℃程度のオーブン中に入れてベークし、封止部材30と樹脂層40とを硬化させる。
【0042】
《水分吸着層24の効果》
本実施の形態に係る水分吸着層24である酸化マグネシウムの効果を調べるべく、CFの着色層が熱に耐えられる上限温度が200℃であることを考慮して蒸着時のガラス基板の温度を変えたサンプルを
図3の通り6つ用意した。ここでは簡単のため、着色層やBMのないガラス基板に酸化マグネシウムを単膜で成膜した。実施例1と実施例2は本実施の形態の範囲に含まれる基板温度である200℃以下でEB蒸着したサンプルである。比較例1〜比較例4は本実施の形態の範囲に含まれる基板温度より高い基板温度(200℃より高い基板温度)でEB蒸着したサンプルである。従って、実施例1と実施例2の基板温度はCFの着色層が耐えられる温度条件であり、比較例1〜比較例4の基板温度はCFの着色層が耐えられない温度条件である。
図3には、各サンプルにおける屈折率と(111)強度の測定値、及び、CFにおける着色層の耐熱性のOK/NGを合わせて示した。屈折率は波長550nmの光に対する値である。本明細書中でいう屈折率の値はすべてこの波長における値とする。
【0043】
図4は基板温度と屈折率及び(111)強度との関係を示すグラフである。まず、屈折率についてであるが、CFの着色層が耐えられる200℃以下の基板温度である実施例1及び実施例2では、屈折率が1.63前後である。逆にCFの着色層が耐えられない200℃よりも高い基板温度である比較例1〜比較例4では、屈折率が1.68前後である。これらの実験値から推測すると、CFにおける着色層の耐熱性のOK/NGの境界である基板温度200℃では酸化マグネシウムの屈折率は1.65と推測できる。
図4より、屈折率も基板温度200℃を境にして200℃以下では大きく低下することが分かる。よって、基板温度を200℃以下とすることで、酸化マグネシウムの屈折率を従来の一般的な値である1.72よりも小さい1.65以下にすることができる。これは本発明者らが鋭意、実験を行った結果、得られた事実である。樹脂の屈折率は材質によって差があるが、平均的な値としては1.5と考えられる。酸化マグネシウムと樹脂との屈折率差が小さい程、界面反射が抑えられて光の利用効率の低下が抑制される。従って、基板温度を200℃以下で蒸着することにより、屈折率が1.65以下という、従来の一般的なものよりも屈折率が低く、樹脂の平均的な屈折率の値に近い酸化マグネシウムを作製することができる。
【0044】
尚、基板温度が140℃未満の実験は行っていないが、酸化マグネシウムの屈折率の下限値は樹脂と同じ1.5にすればよい。この場合、酸化マグネシウムと樹脂との屈折率差はゼロとなる。このように酸化マグネシウムの屈折率の下限値としては、樹脂と同じ1.5が好ましいが、本実施の形態で実験した範囲内では、1.62が現実的な下限値とも言える。
【0045】
尚、基板温度が200℃以下で酸化マグネシウムを蒸着したかどうかはサンプルを見ても判断することが難しい。しかしながら、屈折率を測定して1.65以下であれば、200℃以下で蒸着したことの間接的な証拠になると本発明者らは考えている。将来的に被疑侵害品が現れた際には水分吸着層の屈折率の値を測定すればよい。
【0046】
次に
図4の(111)強度について説明する。(111)強度とはXRD(X−ray diffraction)と呼ばれるX線結晶構造解析の手法で測定した値である。この手法により結晶内部において原子がどのような配向をしているかが分かる。ここでは(111)配向をしているピーク度合を測定しているので、強度が高い程、(111)配向を呈していると言うことができる。このグラフより、実施例1及び実施例2のように基板温度が200℃以下になると(111)配向強度が高い値で安定化することが分かる。逆に比較例1〜比較例4のように200℃より高くなると急激に(111)強度が低下する。
【0047】
参考までに、(111)配向と(100)配向を呈している酸化マグネシウム薄膜のSEM写真を
図5に挙げておく。
図5(a)は(111)配向のものであり、
図5(b)は(100)配向のものである。(100)配向は結晶が寝ているような状態であるのに対し、(111)配向は結晶が柱状に起立しているような状態で、柱同士の間には間隙が多く存在する。そのため、(111)配向を呈している実施例1及び実施例2ではより一層水分等の吸着性が向上するものと考えられる。
【0048】
図6は基板温度とイオン電流との関係を示すグラフである。イオン電流はTDS(Thermal Desorption Spectrometry:昇温脱離ガス分光法)という質量分析法で測定した値である。この値が高い程、ガスの脱離量が多いことになり、換言すれば、その分だけサンプル中にそのガスが多く含まれていたことになる。即ち、基板温度を200℃以下にした実施例1及び実施例2では、基板温度を200℃より高くした他のサンプルと比べてサンプル中により多くの水分等が含まれていたことが分かる。
【0049】
以上より、本実施の形態では、酸化マグネシウムを含む水分吸着層の蒸着時の基板温度を200℃以下とすることで、屈折率としては1.65以下である水分吸着層を得ることができる。これにより、CF基板の着色層の熱による劣化を抑えつつ、発光した光の利用効率の低下を抑制した有機ELパネルを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、CF方式の有機ELパネルに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 有機ELパネル
10 有機EL基板
11 第1基板
20 CF基板
21 第2基板
22 着色層
24 水分吸着層
40 樹脂層
50 有機EL素子