特許第6405596号(P6405596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405596
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】膜モジュール及び水処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/06 20060101AFI20181004BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20181004BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B01D63/06
   C02F1/44 F
   C02F3/34 101B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-225959(P2015-225959)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-94229(P2017-94229A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】尾田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】萩本 寿生
(72)【発明者】
【氏名】水谷 洋
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−358410(JP,A)
【文献】 特開2011−156519(JP,A)
【文献】 特開2007−021457(JP,A)
【文献】 特開2000−033238(JP,A)
【文献】 特表平01−503689(JP,A)
【文献】 特開平09−164399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
C02F 3/28 − 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線が鉛直方向に延在する筒形状のケーシングと、
前記ケーシングの延在方向の下方に設けられた第一隔壁と、
前記ケーシングの延在方向の上方に設けられた第二隔壁と、
前記ケーシングの内部において鉛直方向に延在して、一端が前記第一隔壁に連結され、他端が前記第二隔壁に連結された、親水性モノマーが共重合された単層構造を有する複数の管状濾過膜と、
前記ケーシングと前記第一隔壁と前記第二隔壁とによって画成され、前記複数の管状濾過膜を透過した透過水が導入される透過水空間と、
前記透過水空間の上部に設けられたエア抜き口と、
前記透過水空間の下部に設けられ、前記透過水を排出する透過水排出口と、を備える膜モジュール。
【請求項2】
前記ケーシングの内部空間における前記第一隔壁よりも下方の空間である下部ヘッダ空間と、
前記ケーシングの内部空間における前記第二隔壁よりも上方の空間である上部ヘッダ空間と、
前記上部ヘッダ空間に被処理水を供給する被処理水導入口と、
前記下部ヘッダ空間から被処理水を排出する濃縮水排出口と、を備える請求項1に記載の膜モジュール。
【請求項3】
被処理水に含有される有機物を処理する生物処理水槽と、
前記生物処理水槽から排出される被処理水が収容される原水槽と、
請求項1又は請求項2に記載の膜モジュールを有し、前記原水槽から供給される被処理水を透過水と濃縮水とに分離する膜分離装置と、
前記濃縮水を前記生物処理水槽に返送する返送ラインと、を備え、前記原水槽には前記濃縮水を返送しない水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し尿などの有機性廃水を処理する膜モジュール及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
し尿などの有機性廃水を処理する場合、固液の分離にMF(精密濾過)、UF(限外濾過)などの膜分離を用いることが主流となっている。
膜分離装置としては、円筒形状のケーシングと、ケーシング内に収容された複数の管状濾過膜(中空糸膜)と、を備えた複数の膜モジュールを用い、管状濾過膜の内側に原水を循環させながら濾過する方式の装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。管状濾過膜を透過した透過水は、吸引ポンプによって吸引されて、例えば、貯留槽に貯留されて適宜利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−052338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の膜分離装置は、複数の膜モジュールを縦置き、即ち、ケーシングの軸線が上下方向に沿うように配置して透過水をケーシングの上部に設けられた透過水排出口から取り出すことが一般的であった。複数の管状濾過膜を透過した透過水は、ケーシングの内部の透過水空間に滞留した後、ケーシングの上部に設けられた透過水排出口から排出されていた。
【0005】
しかしながら、透過水排出口をケーシングの上部に設けた場合、循環する被処理水の流れが止まると、ケーシング内の透過水空間から透過水が排出されることなく滞留する。これにより、透過水の腐敗が起こるという課題があった。また、透過水に含まれるスケール成分(リン酸イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなど)によるスケール析出、蓄積が起こり、ノズルが閉塞するなどの不具合が生じるという課題があった。さらに、滞留した透過水により、管状濾過膜に背圧がかかり、FLUX(流出量)の低下が生じるという課題があった。
【0006】
この発明は、透過水の腐敗や、スケール析出を抑制することができる膜モジュール及び水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、膜モジュールは、軸線が鉛直方向に延在する筒形状のケーシングと、前記ケーシングの延在方向の下方に設けられた第一隔壁と、前記ケーシングの延在方向の上方に設けられた第二隔壁と、前記ケーシングの内部において鉛直方向に延在して、一端が前記第一隔壁に連結され、他端が前記第二隔壁に連結された、親水性モノマーが共重合された単層構造を有する複数の管状濾過膜と、前記ケーシングと前記第一隔壁と前記第二隔壁とによって画成され、前記複数の管状濾過膜を透過した透過水が導入される透過水空間と、前記透過水空間の上部に設けられたエア抜き口と、前記透過水空間の下部に設けられ、前記透過水を排出する透過水排出口と、を備える。
【0008】
このような構成によれば、膜モジュールの管状濾過膜を流れる被処理水の流れが止まった場合においても、下部に設けられた透過水排出口より透過水が排出される。これにより、透過水が透過水空間に滞留することがなくなり、透過水の腐敗及びスケール析出を抑制することができる。
また、管状濾過膜全体を親水性を有する材料で形成することによって、被処理水の流れが止まり管状濾過膜が乾燥した場合においても、疎水性の場合と異なり、管状濾過膜の乾燥による損傷を防止することができる。
【0009】
上記膜モジュールにおいて、前記ケーシングの内部空間における前記第一隔壁よりも下方の空間である下部ヘッダ空間と、前記ケーシングの内部空間における前記第二隔壁よりも上方の空間である上部ヘッダ空間と、前記上部ヘッダ空間に被処理水を供給する被処理水導入口と、前記下部ヘッダ空間から被処理水を排出する濃縮水排出口と、を備えてもよい。
【0010】
本発明の第二の態様によれば、水処理システムは、被処理水に含有される有機物を処理する生物処理水槽と、前記生物処理水槽から排出される被処理水が収容される原水槽と、上記いずれかの膜モジュールを有し、前記原水槽から供給される被処理水を透過水と濃縮水とに分離する膜分離装置と、前記濃縮水を前記生物処理水槽に返送する返送ラインと、を備え、前記原水槽には前記濃縮水を返送しない。
【0011】
このような構成によれば、管状濾過膜が親水性を有することで膜面流速を低くすることができるため、被処理水の循環流量を少なくすることができる。これにより、疎水性膜の場合に必要であった、濃縮水を原水槽と生物処理水槽とに分配する分配タンクや、濃縮水を原水槽に返送する配管が不要となる。また、流量が少なくなることにより、配管を小径化することができる。また、流量が少なくなることにより、流量計などの機器の削減が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膜モジュールの管状濾過膜を流れる被処理水の流れが止まった場合においても、下部に設けられた透過水排出口より透過水が排出される。これにより、透過水が透過水空間に滞留することがなくなり、透過水の腐敗及びスケール析出を抑制することができる。
また、管状濾過膜を親水性を有する材料で形成することによって、被処理水の流れが止まった場合においても、管状濾過膜の乾燥による損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態の水処理システムの概略構成図である。
図2】本発明の第一実施形態の膜モジュールの概略断面図である。
図3】本発明の第一実施形態の変形例の膜モジュールの概略断面図である。
図4】本発明の第二実施形態の膜モジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態の膜モジュール1を有する水処理システム10について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の水処理システム10は、被処理水W1(し尿、浄化槽汚泥を含む有機性廃水)に含まれる有機物を処理する生物処理水槽11と、生物処理水槽11から排出される被処理水W2が収容される原水槽12と、原水槽12から供給される被処理水W3(原水)を透過水PWと濃縮水W4とに分離する膜分離装置13と、を備えている。
【0015】
生物処理水槽11は、例えば、硝化菌と脱窒菌の作用により液中のBOD、窒素化合物等を分解除去する装置である。生物処理水槽11には、第一配管15を介して被処理水W1が供給される。生物処理水槽11と原水槽12とは第二配管16によって接続されている。
【0016】
膜分離装置13は、複数の膜モジュール1を備えている。複数の膜モジュール1は、並列に配列されている。複数の膜モジュール1は、膜分離装置13の筐体内に、縦向きで配置されている。即ち、膜モジュール1の円筒形状のケーシング2(図2参照)の軸線Aは、鉛直方向に延在している。
図2に示すように、膜モジュール1は、ケーシング2と、ケーシング2の内部に配置された複数の管状濾過膜3とを有している。膜分離装置13は、管状濾過膜3の内側に被処理水W3を循環させながら濾過する方式を用い、被処理水W3から透過水PWを取り出す装置である。
【0017】
原水槽12と膜分離装置13とは原水供給配管17を介して接続されている。原水供給配管17には、循環ポンプ21が設けられている。原水槽12に貯留された被処理水Wは、循環ポンプ21によって加圧されながら、膜分離装置13に供給される。
膜分離装置13から分離される透過水PWは、透過水配管18に導入される。透過水配管18は、貯留槽20に接続されている。即ち、膜モジュール1の透過水排出口9(図2参照)は、透過水配管18に接続されている。透過水配管18には、吸引ポンプ22が設けられている。
【0018】
透過水PWが分離されて膜分離装置13から排出される濃縮水W4は、余剰汚泥を除き全量が返送配管19(返送ライン)を介して生物処理水槽11に返送される。即ち、膜モジュール1の濃縮水排出口8(図2参照)は、返送配管19に接続されている。よって、濃縮水W4は原水槽12に返送されない。
生物処理水槽11から排出された被処理水W2は、原水槽12、膜分離装置13を介して、生物処理水槽11に戻る。即ち、被処理水Wは、水処理システム10の配管を循環する。
【0019】
上述したように、複数の膜モジュール1は、並列に配列されている。具体的には、原水供給配管17、透過水配管18、及び返送配管19は、各々の膜モジュール1に接続されている。
【0020】
図2に示すように、膜モジュール1は、円筒形状のケーシング2と、複数の管状濾過膜3と、を備えている。
ケーシング2は、円筒形状をなすケーシング本体4と、ケーシング本体4の下端を閉鎖する第一側壁5と、ケーシング本体4の上端を閉鎖する第二側壁6と、ケーシング本体4に形成された被処理水導入口7と、ケーシング本体4に形成された濃縮水排出口8と、ケーシング本体4に形成された透過水排出口9と、を有している。
【0021】
膜モジュール1は、ケーシング2の内部を3つの空間に分割する、第一隔壁30と第二隔壁31と、を備えている。第一隔壁30と第二隔壁31とには、複数の挿通孔32が形成されている。挿通孔32は、第一隔壁30及び第二隔壁31の板厚方向に貫通する孔である。挿通孔32の内径は、管状濾過膜3の外径よりもやや大きい。
複数の管状濾過膜3は、ケーシング2の内部において鉛直方向に延在して、一端が第一隔壁30に連結され、他端が第二隔壁31に連結されている。
【0022】
第一隔壁30は、板形状をなす部材であり、ケーシング2の延在方向の下方(第一側壁5の側)に固定されている。ケーシング本体4と、第一隔壁30と、第一側壁5とによって囲まれる空間は、下部ヘッダ空間S1である。下部ヘッダ空間S1は、ケーシング2の内部空間における第一隔壁30よりも下方の空間である。
第二隔壁31は、板形状をなす部材であり、ケーシング2の延在方向の上方(第二側壁6の側)に固定されている。ケーシング本体4と、第二隔壁31と、第二側壁6とによって囲まれる空間は、上部ヘッダ空間S2である。上部ヘッダ空間S2は、ケーシング2の内部空間における第二隔壁31よりも上方の空間である。
【0023】
ケーシング本体4と、第一隔壁30と、第二隔壁31とによって囲まれる空間は、透過水空間S3である。複数の管状濾過膜3から取り出された透過水PWは、透過水空間S3に排出された後、透過水排出口9を介して透過水配管18に導入される。
【0024】
被処理水導入口7は、ケーシング2の外部と下部ヘッダ空間S1とを連通させる開口である。被処理水導入口7は、ケーシング本体4に形成されている。被処理水導入口7は、ケーシング2の軸線A方向における、第一隔壁30と、第一側壁5との間に設けられている。
濃縮水排出口8は、ケーシング2の外部と上部ヘッダ空間S2とを連通させる開口である。濃縮水排出口8は、ケーシング本体4に形成されている。濃縮水排出口8は、ケーシング2の軸線A方向における、第二隔壁31と、第二側壁6との間に設けられている。
【0025】
透過水排出口9は、ケーシング2の外部と透過水空間S3とを連通させる開口である。透過水排出口9は、ケーシング本体4に形成されている。透過水排出口9は、ケーシング2の軸線A方向における、第一隔壁30と、第二隔壁31との間に設けられている。
本実施形態の透過水排出口9は、透過水空間S3の下部に設けられている。換言すれば、透過水排出口9は、第一隔壁30の僅かに上方に設けられている。透過水排出口9は、透過水空間S3の下端に設けられていることが好ましい。透過水排出口9は、複数の管状濾過膜3を透過した透過水PWを透過水空間S3に滞留させることなく可能な限り排出できる位置に形成されている。
また、透過水排出口9に接続される透過水配管18は、下方に向かって傾斜している。即ち、透過水配管18は、透過水排出口9から排出された透過水PWが重力によって戻らないような形状を有している。
【0026】
また、ケーシング本体4には、ケーシング2の外部と透過水空間S3とを連通させるエア抜き口34が設けられている。エア抜き口34は、透過水空間S3の上部に設けられている。
【0027】
各々の管状濾過膜3の一端は、第一隔壁30の挿通孔32に挿通された上で、挿通孔32の内周面に固定されている。挿通孔32の内周面と管状濾過膜3の外周面との間は、シール材(図示せず)によってシールされている。シール材としては、エポキシ樹脂やウレタン樹脂など、初期に粘性を持ち、経時的に硬化する材料が好ましい。
各々の管状濾過膜3の他端は、管状濾過膜3の一端と同様の方法で第二隔壁31の挿通孔32に固定されている。
【0028】
管状濾過膜3は、円筒形状をなし、単一主要構成素材に親水性モノマーが共重合された単層構造の高分子濾過膜によって形成されている。
即ち、管状濾過膜3は、主要材料が1種類の素材によって形成されている。主要材料が1種類の素材によって形成されているということは、管状濾過膜3を形成する素材(例えば、樹脂)において、1種類樹脂が50質量%以上を占めていることを意味する。
また、主要材料が1種類の素材によって形成されているということは、その1種類の素材の性質が構成素材の性質を支配していることを意味する。具体的には、1種類の樹脂が50質量%−99質量%を有する素材を意味する。
【0029】
管状濾過膜3を構成する主要材料としては、塩化ビニル系樹脂、ポリスルホン(PS)系、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリエーテルスルフォン系、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリイミド(PI)系などの高分子材料を用いることができる。
【0030】
管状濾過膜3を構成する主要材料としては、特に塩化ビニル系樹脂が好ましい。塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体(塩化ビニルホモポリマー)、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体、これらの塩化ビニルモノマー単位が塩素化されたものからなる(共)重合体などが挙げられる。
【0031】
親水性モノマーとしては、例えば、
(1)アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、イミノ基、ベタイン構造などのカチオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩、
(2)水酸基、アミド基、エステル構造、エーテル構造などの親水性の非イオン性基含有ビニルモノマー、
(3)カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのアニオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩、
(4)その他のモノマー等が挙げられる。
管状濾過膜の管径は、被処理水Wの性状等によって適宜選択することができ、例えば被処理水W3について粗繊維量αが200mg/リットル以下の場合は、管状濾過膜3の内径を5mm以下、粗繊維量αが200mg/リットルより大きく500mg/リットルより小さい場合は、管状濾過膜3の内径を5mm−10mm、粗繊維量αが500mg/リットル以上の場合は、管状濾過膜3の内径を10mm以上とすることができる。管径を選択する事によって、粗繊維分による管状濾過膜3の閉塞を抑制することができる。
【0032】
次に、本実施形態の水処理システム10の作用について説明する。
まず、被処理水W1は、生物処理水槽11において処理される。具体的には被処理水W1に含まれる有機性物質が微生物によって分解される。
次いで、生物処理水槽11から排出された被処理水W2は、原水槽12に貯留される。原水槽12から排出された被処理水W3は、循環ポンプ21を介して膜分離装置13に供給されると、膜モジュール1の管状濾過膜3内に送り込まれる。
【0033】
管状濾過膜3から透過された透過水PWは、透過水空間S3に流れる。透過水空間S3内の透過水PWは、重力によって下方へ流れる。透過水空間S3の下方へ流れた透過水PWは、透過水空間S3の下部に設けられた透過水排出口9より排出され、透過水配管18を介して貯留槽20に貯留される。
【0034】
膜分離装置13から排出された濃縮水W4は、余剰汚泥を除く全量が返送配管19を介して生物処理水槽11に返送されて、再度、処理が行われる。
また、水処理システム10を停止した場合、透過水空間S3内の透過水PWの全量が、透過水空間S3外に排出される。換言すれば、循環ポンプ21を停止させることで被処理水W3の流れが止まった場合においても、透過水空間S3に透過水PWが滞留することがない。
【0035】
上記実施形態によれば、膜モジュール1の管状濾過膜3を流れる被処理水W3の流れが止まった場合においても、下部に設けられた透過水排出口9より透過水PWが排出される。これにより、透過水PWが透過水空間S3に滞留することがなくなり、透過水PWの腐敗及びスケール析出を抑制することができる。
【0036】
また、水処理システム10の運転中においても、透過水空間S3に透過水PWが溜まらないため、管状濾過膜3内の圧力と管状濾過膜3外の圧力差が大きくなる。これにより、管状濾過膜3の濾過性能を向上させることができる。
【0037】
また、疎水性膜を有する材料で形成した濾過膜や、疎水性の基材に親水性のコーティングを施した濾過膜と異なり、管状濾過膜3を親水性を有する材料で形成することによって、水処理システム10の停止した場合においても、管状濾過膜3が乾燥により損傷することがない。
【0038】
また、滞留した透過水PWにより、管状濾過膜3に背圧がかかり、FLUX(流出量)の低下が生じるのを抑制することができる。
また、ケーシング本体4にエア抜き口34が設けられていることによって、透過水空間S3内の空気圧は大気圧となるため、透過水PWが透過水排出口9から排出されにくくなることを防止することができる。また、エア抜き口34を設けることによって、吸引ポンプ22が停止した場合においても、透過水空間S3内の透過水PWをケーシング2の外部へ排出することができる。
【0039】
また、管状濾過膜3を親水性を有する材料で形成することによって、被処理水W3の膜面流速を低くすることができる。膜面流速は、例えば、0.15m/s−0.30m/sとすることができる。
【0040】
管状濾過膜3が疎水性である場合、膜面流速を高くする必要がある(例えば、2.5m/s)。このため、循環流量が多くなり、膜分離装置13から排出される濃縮水W4を、原水槽12及び生物処理水槽11に返送する必要が生じる。原水槽12及び生物処理水槽11に返送するためには、濃縮水W4を原水槽12と生物処理水槽11とに分配する分配タンクや配管が必要となる。
【0041】
本実施形態の水処理システム10は、膜面流速を低くすることができるため、被処理水Wの循環流量を少なくすることができる。これにより、循環ポンプ21の動力を低減することができる。また、濃縮水W4を原水槽12と生物処理水槽11とに分配する分配タンクや、濃縮水W4を原水槽12に返送する配管が不要となる。
また、流量が少なくなることにより、配管を小径化することができる。また、流量が少なくなることにより、流量計などの機器の削減が可能となる。
【0042】
なお、上記実施形態では、膜モジュール1として、管状濾過膜3を並列に配列した膜モジュール1を採用したがこれに限ることはない。例えば、図3に示すように、複数の管状濾過膜3を直列に接続してもよい。即ち、複数の管状濾過膜3の一端同士、及び管状濾過膜3の他端同士、を複数の管状濾過膜3が直列的に接続されるように接続する複数のU字状の接続部材46を有する構成としてもよい。
また、直列に接続された複数の管状濾過膜3に、被処理水導入口7、及び濃縮水排出口8を接続部材47及び接続部材48を介して直接的に接続し、被処理水W3を導入し、濃縮水W4を排出してもよい。この場合上部ヘッダ空間S2は無くてもよく、第二側壁6をなくすなど、ケーシングの構成を変更してもよい。
【0043】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態の膜モジュール1を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の膜モジュール1の被処理水導入口7は、上部ヘッダ空間S2に接続され、濃縮水排出口8は、下部ヘッダ空間S1に接続されている。被処理水Wは、上方から下方に向かって流れる。
本発明の膜モジュール1は、上記実施形態のように、被処理水W3が下方に向かって流れる形態とすることができる。この場合には、サイフォンブレーカを設置することが望ましい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、管状濾過膜3の本数に関して、図2などには5本の管状濾過膜3を示したが、管状濾過膜3の本数はこれに限ることはない。
【符号の説明】
【0045】
1 膜モジュール
2 ケーシング
3 管状濾過膜
4 ケーシング本体
5 第一側壁
6 第二側壁
7 被処理水導入口
8 濃縮水排出口
9 透過水排出口
10 水処理システム
11 生物処理水槽
12 原水槽
13 膜分離装置
15 第一配管
16 第二配管
17 原水供給配管
18 透過水配管
19 返送配管(返送ライン)
20 貯留槽
21 循環ポンプ
22 吸引ポンプ
30 第一隔壁
31 第二隔壁
32 挿通孔
34 エア抜き口
46 接続部材
47 接続部材
48 接続部材
A 軸線
PW 透過水
S1 下部ヘッダ空間
S2 上部ヘッダ空間
S3 透過水空間
W1〜W3 被処理水
W4 濃縮水
図1
図2
図3
図4