(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第二初期化ステップにおいて、前記第二スイッチ素子のゲート電極に印可される電圧が、他のスイッチ素子のゲート電極に印可される電圧よりも低くなるように制御する、
請求項12に記載の表示装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(課題の詳細)
以下、課題の詳細について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0015】
[比較例における有機ELディスプレイの構成]
図1は、比較例における有機ELディスプレイ100の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、有機ELディスプレイ100は、有機ELパネル110と、データ線駆動回路120と、走査線駆動回路130と、制御部200とを備えている。
【0016】
有機ELパネル110は、複数の表示画素P0がマトリクス状に配置されている。なお、表示画素P0は、ここでは、1つの色を構成するサブ画素である。赤色、緑色、青色に対応する3つのサブ画素で1つの画素が構成されている。
【0017】
表示画素P0は、有機EL素子OELと、容量素子Csと、駆動トランジスタTrdと、第一スイッチ素子Tr1と、第二スイッチ素子Tr20と、第三スイッチ素子Tr3と、第四スイッチ素子Tr4とを備えている。
【0018】
有機EL素子OELは、駆動電流に応じて発光する発光素子である。駆動電流は、駆動トランジスタTrdから供給される。有機EL素子OELは、アノード電極が駆動トランジスタTrdのソース電極に、カソード電極が電源線VEL(VELは、例えば、接地電圧)にそれぞれ接続されている。
【0019】
容量素子Csは、データ線Dataの電圧に応じた電荷が蓄積される容量素子である。容量素子Csは、第一電極が駆動トランジスタのゲート電極に、第二電極が駆動トランジスタTrdのソース電極にそれぞれ接続されている。
【0020】
駆動トランジスタTrdは、データ線Dataの電圧に応じて蓄積された容量素子Csの電荷の量に応じた駆動電流を有機EL素子OELに供給する。駆動トランジスタTrdは、薄膜トランジスタであり、ゲート電極が容量素子Csの第一電極に、ソース電極が有機EL素子OELのアノード電極に、ドレイン電極が電源線VTFTにそれぞれ接続されている。
【0021】
第一スイッチ素子Tr1は、走査線Scanの電圧に応じてデータ線Dataと容量素子Csの第一電極との導通および非導通を切り替えることにより、表示画素P0の選択および非選択を切り替える。より詳細には、第一スイッチ素子Tr1は、薄膜トランジスタであり、ゲート電極が走査線Scanに、ソース電極がデータ線Dataに、ドレイン電極が容量素子Csの第一電極にそれぞれ接続されている。
【0022】
第二スイッチ素子Tr20は、信号線Initの電圧に応じて、容量素子Csの第二電極(ノードN2)と電源線VINIとの間の導通および非導通を切り替える。
【0023】
第三スイッチ素子Tr3は、信号線Refの電圧に応じて、容量素子Csの第一電極(ノードN1)と電源線VREFとの間の導通および非導通を切り替える。
【0024】
第四スイッチ素子Tr4は、信号線Enableの電圧に応じて、駆動トランジスタTrdのドレイン電極と電源線VTFTとの間の導通および非導通を切り替える。
【0025】
データ線駆動回路120は、複数のデータ線Dataに対し、制御部200から出力されるデータ信号に応じた電圧を供給する。
【0026】
走査線駆動回路130は、複数の走査線Scanおよび信号線Init、信号線、Ref、信号線Enableに対し、制御部200から出力される駆動信号に応じた電圧を供給する。
【0027】
制御部200は、有機ELパネル110における映像の表示を制御する回路であり、例えば、TCON(タイミングコントローラ)等を用いて構成される。なお、制御部200は、マイクロコントローラを含むコンピュータシステム、あるいは、システムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)等を用いて構成されていても構わない。
【0028】
[比較例における有機ELディスプレイの動作]
図2は、比較例における有機ELディスプレイ100の信号波形を示すグラフである。
図2において、VA、VB、VCは、それぞれ、駆動トランジスタTrdのゲート電極の電圧、ソース電極の電圧、ドレイン電極の電圧を示している。
【0029】
図2に示すように、比較例における有機ELディスプレイ100では、外部から入力される映像信号の各フレームについて、初期化、閾値電圧補償、書き込みおよび発光がこの順に実行される。以下の説明では、初期化を行う初期化期間、閾値電圧補償を行う閾値電圧補償期間、書き込みを行う書込期間、および、有機EL素子OELを発光させる発光期間について説明し、他の期間についての説明は省略する。
【0030】
(期間T22:初期化期間)
図2に示す時刻t1〜時刻t2の期間T22は、初期化期間である。初期化期間では、制御部200は、第一スイッチ素子Tr1および第四スイッチ素子Tr4を非導通状態、第二スイッチ素子Tr20および第三スイッチ素子Tr3を導通状態にすることにより、容量素子Csを初期化する。具体的には、制御部200は、走査線Scanおよび信号線Enableの電圧をLレベルに設定させることにより、第一スイッチ素子Tr1および第四スイッチ素子Tr4を非導通状態にする。また、制御部200は、信号線Initおよび信号線Refの電圧をHレベルに設定させることにより、第二スイッチ素子Tr20および第三スイッチ素子Tr3を導通状態にする。
【0031】
(期間T24:閾値電圧補償期間)
図2に示す時刻t3〜時刻t4の期間T24は、駆動トランジスタTrdの閾値電圧の変動による影響を補償するための閾値電圧補償期間である。閾値電圧補償期間では、制御部200は、第一スイッチ素子Tr1および第二スイッチ素子Tr20を非導通状態に、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4を導通状態にする。閾値電圧補償期間を設けることで、上述した閾値電圧のばらつきが輝度制御に与える影響を低減することができる。具体的には、制御部200は、走査線Scanおよび信号線Initの電圧をLレベルに設定させることにより、第一スイッチ素子Tr1および第二スイッチ素子Tr20を非導通状態にする。また、制御部200は、信号線Refおよび信号線Enableの電圧をHレベルに設定させることにより、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4を導通状態にする。
【0032】
このとき、第四スイッチ素子Tr4が導通状態になることから、駆動トランジスタTrdにドレイン電流が流れ、駆動トランジスタTrdの閾値電圧に応じて、容量素子Csの第二電極の電圧値が上昇する。これにより、閾値電圧の補償を行うことができる。
【0033】
(期間T27:書込期間)
図2に示す時刻t6〜時刻t7の期間T27は、容量素子Csにデータ線Dataの電圧に応じた電荷を蓄積する書込期間である。書込期間では、制御部200は、第一スイッチ素子Tr1を導通状態に、第二スイッチ素子Tr20、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4を非導通状態にする。具体的には、制御部200は、走査線Scanの電圧をHレベルに設定させることにより、第一スイッチ素子Tr1を導通状態にする。また、制御部200は、信号線Init、信号線Refおよび信号線Enableの電圧をLレベルに設定させることにより、第二スイッチ素子Tr20、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4を非導通状態にする。さらに、制御部200は、データ線駆動回路120により、選択された表示画素P0の輝度値に応じた電圧を信号線Dataに印加させる。
【0034】
このとき、容量素子Csの第一電極に、信号線Dataの電圧に応じた電荷が蓄積される。
【0035】
(期間T29:発光期間)
図2に示す時刻t8〜時刻t9の期間T29は、有機EL素子OELを発光させる発光期間である。発光期間では、制御部200は、第四スイッチ素子Tr4を導通状態に、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr20、および第三スイッチ素子Tr3を非導通状態にする。具体的には、制御部200は、信号線Enableの電圧をHレベルに設定させることにより、第四スイッチ素子Tr4を導通状態にする。また、制御部200は、走査線Scan、信号線Initおよび信号線Refの電圧をLレベルに設定させることにより、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr20および第三スイッチ素子Tr3を非導通状態にする。
【0036】
このとき、駆動トランジスタTrdのドレインソース間に容量素子Csの第一電極に蓄積された電荷に応じた駆動電流が流れる。そして、有機EL素子OELに当該駆動電流が供給されることにより、有機EL素子OELは、駆動電流の電流量に応じた輝度で発光する。
【0037】
[閾値電圧補償における課題]
図3は、比較例における駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧の閾値電圧補償期間における変化を示している。
図3のグラフは、
図2の破線で囲んだ部分のグラフに対応している。なお、
図2では、1つの素子について図示しているが、
図3では、閾値電圧が異なる3つの場合について示している。
【0038】
図3に示すように、駆動トランジスタTrdの閾値電圧がVth1の表示画素は、電圧値がVREF−Vth1となるまでに、Tth1の時間がかかる。駆動トランジスタTrdの閾値電圧がVth2の表示画素は、電圧値がVREF−Vth2となるまでに、Tth2の時間がかかる。駆動トランジスタTrdの閾値電圧がVth3の表示画素は、電圧値がVREF−Vth3となるまでに、Tth3の時間がかかる。
図3では、Tth1>Tth2>Tth3となっている。
【0039】
近年、有機ELディスプレイの高精細化および大型化が進んでおり、1水平走査期間(以下、適宜「1H」と称する)が短くなる傾向がある。簡略化のためにブランキング期間を無視すると、1Hは、パネル駆動周波数Freq、走査線数Vlineを用いて、1H=1sec/Fre1/Vlineで表わされる。当該式から、有機ELディスプレイの高精細化によりパネル駆動周波数Freqおよび走査線数Vlineが増大するほど、1Hが短くなることが分かる。
【0040】
十分な発光期間を確保するために、例えば閾値電圧補償期間を1Hに設定する場合、1水平走査期間が短くなると、閾値電圧補償の期間も短くなる。さらに、近年、有機ELディスプレイの大型化が進んでおり、走査線数Vlineおよび1走査線当たりの表示画素の数が多くなっている。大型化が進むほど、閾値電圧の補償を行うために必要な電流量が有機ELディスプレイ全体で多くなるため、閾値電圧補償にかかる期間のばらつきが大きくなる。また、大型化により有機ELディスプレイを構成する素子同士の距離が離れるため、プロセスに起因する膜厚や膜質のばらつきが大きくなり、駆動トランジスタの閾値電圧のばらつきも大きくなる。
【0041】
閾値電圧補償を十分な精度で行うためには、
図3において、最も閾値電圧補償期間の長いVth1の駆動トランジスタTrdの電圧が集束するまで、十分な閾値電圧補償期間を確保する必要がある。あるいは、1H内に、全ての駆動トランジスタTrdの電圧を収束させることが重要である。
【0042】
しかし、上述したように、有機ELディスプレイの高精細化により、閾値電圧補償期間が短くなる傾向にあり、十分な閾値電圧補償期間を確保することが困難になってきている。また、有機ELディスプレイの大型化により、駆動トランジスタTrdが収束するまでの期間のばらつきが大きくなっているため、1H内に、全ての駆動トランジスタTrdの電圧を収束させることは困難である。
【0043】
このため、特に、
図3に示す閾値電圧Vth1の駆動トランジスタでは、ソース電極の電圧がVREF−Vth1に到達する前に、閾値電圧補償期間が終了してしまい、閾値電圧の補償が十分な精度で行えない場合があるという問題がある。つまり、従来の有機ELディスプレイでは、駆動トランジスタの閾値電圧のばらつきにより、閾値電圧補償において精度が低下するという問題がある。
【0044】
このため、閾値電圧補償期間が短くなっても閾値電圧補償の精度を十分に確保できる技術が求められている。
【0045】
このような問題を解決するために、本発明の一態様に係る表示装置は、表示画素と、前記表示画素の駆動を制御する制御部とを備える表示装置であって、前記表示画素は、発光素子と、電圧を保持するための容量素子と、ゲート電極が前記容量素子の第一電極と接続され、ソース電極が前記容量素子の第二電極および前記発光素子のアノード電極と接続されている駆動トランジスタと、データ信号に応じた電圧を供給するための信号線と前記容量素子の前記第一電極との導通および非導通を切り換える第一スイッチ素子と、抵抗を有し、初期化電圧を供給する電源線と前記容量素子の前記第二電極との導通および非導通を切り換え可能に構成された抵抗部であって、前記容量素子の前記第二電極と前記発光素子の前記アノード電極との接続点から、前記電源線までの電流経路上に配置された抵抗部とを有し、前記制御部は、前記駆動トランジスタの閾値電圧の補正を行う。
【0046】
上記構成の表示装置は、初期化電圧を供給する電源線と容量素子の第二電極との導通および非導通を切り換え可能に構成された抵抗部であって、容量素子の第二電極と発光素子のアノード電極との接続点から、電源線までの電流経路上に配置された抵抗部を有する。
【0047】
従来は、初期化期間において駆動トランジスタのソース電極の電圧は、駆動トランジスタの閾値電圧にかかわらず一定の値に調整されていた。これに対し、上記構成の表示装置では、抵抗部を備えることにより、駆動トランジスタのソース電極の電圧を駆動トランジスタの閾値電圧の変動量に応じて調整することができる。これにより、上記構成の表示装置では、閾値電圧の補償を十分な精度で行うことが可能になる。
【0048】
具体的には、上記構成の表示装置では、初期化期間において、当該抵抗部に貫通電流に応じた電圧降下が生じる。つまり、駆動トランジスタのソース電極の電圧が上昇する。
【0049】
駆動トランジスタのソース電極の電圧が上昇すると、初期化期間の後に設定された閾値電圧補償において、ソース電極の電圧の上昇幅が小さくなる。つまり、閾値電圧補償にかかる期間が短くなる。そうすると、上記構成の表示装置は、閾値電圧補償期間を延ばすことなく、閾値電圧補償をより確実に行うことができる。あるいは、上記構成の表示装置は、閾値電圧補償期間を短くすることができる。
【0050】
さらに具体的には、上記構成の表示装置では、初期化期間において、駆動トランジスタのソース電極の電圧は、VTFT−(VINI+Ron×Id)となる。VTFTは、駆動トランジスタのドレイン電極に駆動電圧を供給する電源線VTFTの電圧である。VINIは、容量素子の第二電極に初期化電圧を供給する電源線VINIの電圧である。Ronは抵抗部の抵抗値である。Idは貫通電流の電流値である。
【0051】
貫通電流は、駆動トランジスタのドレイン電極に駆動電圧を供給する電源線から、駆動トランジスタおよび第二スイッチ素子を介して、初期化電圧を供給する電源線に流れる電流である。貫通電流の電流値は、駆動トランジスタの閾値電圧に応じて変化する。具体的には、貫通電流の電流値は、駆動トランジスタの閾値電圧が大きいほど小さくなり、閾値電圧が小さいほど大きくなる。
【0052】
つまり、上記構成の表示装置では、閾値電圧が大きいほど、Ron×Id(抵抗部における電圧降下量)が小さくなり、初期化期間の後に設定された閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタのソース電極の電圧は小さくなる。
図3を参照すると、グラフa1〜a3の初期値が、閾値電圧の値に応じて増加することになる。
図3では、閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタのソース電極の電圧は全て同じであるが、上記構成の表示装置では、閾値電圧の小さいVth1のグラフa1の方が、閾値電圧の大きいVth3のグラフa3よりも、初期値が小さくなる。これにより、閾値電圧が小さいほど、駆動トランジスタのソース電極がVREF−Vthに到達する時間が従来よりも短くなる。これにより、閾値電圧Vthが小さく、駆動トランジスタのソース電極の電圧が所望の電圧に到達するまでの閾値電圧補償にかかる期間が長い表示画素ほど、比較例に対して閾値電圧補償にかかる期間を短くすることができる。
【0053】
つまり、上記構成の表示装置では、大型化および高精細化により閾値電圧補償期間が短くなった場合でも、閾値電圧の補償を十分な精度で行うことが可能になる。
【0054】
例えば、前記抵抗部の抵抗値は、前記駆動トランジスタにおける閾値電圧の変動量に対する、前記駆動トランジスタの前記閾値電圧の補正を行う期間の開始時におけるゲート電極およびソース電極間の電圧の変動量が、0.3倍から0.7倍までの値になるように設定してもよい。
【0055】
ここで、抵抗部の抵抗値は、閾値電圧補償にかかる期間の短縮を十分に行え、かつ、抵抗部のレイアウトサイズが、1画素あたり(表示画素PX)のレイアウトサイズを超えないような値であると共に、閾値電圧補償に必要な初期化電圧を印可できるような値であることが好ましい。具体的には、駆動トランジスタの閾値電圧の変動量に対する、閾値電圧補償開始時の駆動トランジスタのゲートソース間電圧の変動量(=∂Vgs/∂Vth)が、0.3倍以上になるように抵抗部の抵抗値を設定すれば、閾値電圧補償にかかる期間の短縮を十分に行えると考えられる。また、∂Vgs/∂Vthが0.7倍以下になるように抵抗部の抵抗値を設定すれば、抵抗部の追加によるレイアウトサイズの増大を抑えつつ、閾値電圧補償に必要な初期化電圧を印可できると考えられる。
【0056】
例えば、前記抵抗部は、トランジスタであってもよい。また、当該トランジスタは、前記初期化電圧を供給する電源線と前記容量素子の前記第二電極との導通および非導通を切り換える第二スイッチ素子であってもよい。また、前記第二スイッチ素子のオン抵抗が、他のスイッチ素子のオン抵抗よりも高くてもよいし、前記第二スイッチ素子のW/L比が、他のスイッチ素子のW/L比よりも小さくてもよい。
【0057】
第二スイッチ素子および抵抗部を、他のスイッチ素子よりもオン抵抗が大きいトランジスタを用いて一体に構成すれば、部品点数を少なくすることができる。具体的には、第二スイッチ素子を構成するトランジスタのW/L比を、他のスイッチ素子のW/L比よりも小さくすればよい。
【0058】
例えば、前記抵抗部は、前記初期化電圧を供給する電源線と前記容量素子の前記第二電極との導通および非導通を切り換える第二スイッチ素子と、当該第二スイッチ素子と直列に接続された抵抗素子とを有してもよい。
【0059】
第二スイッチ素子とは別の素子を設けるように構成すれば、第二スイッチ素子をスイッチとして利用できる。また、抵抗素子を設けるのみで構成できるので、装置構成が複雑になるのを防止できる。
【0060】
例えば、前記抵抗部は、複数の前記表示画素の間で共有されていてもよい。
【0061】
抵抗部を複数の表示画素の間で共有すれば、追加回路を小さくすることができる。
【0062】
また、本発明の一態様に係る表示装置の制御方法は、発光素子と、電圧を保持するための容量素子と、ゲート電極が前記容量素子の第一電極と接続され、ソース電極が前記容量素子の第二電極および前記発光素子のアノード電極と接続されている駆動トランジスタと、データ信号に応じた電圧を供給するための信号線と前記容量素子の前記第一電極との導通および非導通を切り換える第一スイッチ素子と、抵抗を有し、初期化電圧を供給する電源線と前記容量素子の前記第二電極との導通および非導通を切り換え可能に構成された抵抗部であって、前記容量素子の第二電極と前記発光素子のアノード電極との接続点から、前記電源線までの電流経路上に配置された抵抗部とを有する表示画素と、前記表示画素の駆動を制御する制御部とを備える表示装置の制御方法であって、前記制御部が、前記容量素子の前記第一電極に対して参照電圧を印加し、前記第二スイッチ素子を導通状態に設定することにより前記第二電極に対して初期化電圧を印加した状態で、前記駆動トランジスタのドレイン電極に対して前記発光素子を駆動するための駆動電圧を印加する初期化ステップと、前記初期化ステップの実行後に、前記第一電極に対する前記参照電圧の印加を維持し、かつ、前記駆動トランジスタのドレイン電極に対する前記駆動電圧の印加を維持した状態で、前記第二スイッチ素子を非導通状態にするステップとを実行する。
【0063】
当該制御方法においても、上述した表示装置と同様に、簡単な構成で製造コストを増大させることなく、駆動トランジスタの閾値電圧の変動に対応することができる。
【0064】
例えば、前記初期化ステップは、前記駆動トランジスタのドレイン電極に対する前記駆動電圧の印加を停止させた状態で、前記容量素子の前記第一電極に対して参照電圧を印加し、前記第二スイッチ素子を導通状態に設定することにより前記第二電極に対して初期化電圧を印加する第一初期化ステップと、前記第一初期化ステップの実行後に、前記第一電極に対する前記参照電圧の印加を維持し、かつ、前記第二スイッチ素子を導通状態に維持した状態で、前記駆動トランジスタのドレイン電極に対する前記駆動電圧の印加を開始する第二初期化ステップとを含んでいてもよい。
【0065】
上記構成の表示装置では、第一初期化ステップおよび第二初期化ステップを実行するので、抵抗部により、駆動トランジスタのソース電極の電圧を駆動トランジスタの閾値電圧の変動量に応じて調整することができる。
【0066】
例えば、前記制御部は、前記第二初期化ステップにおいて、前記第二スイッチ素子のゲート電極に印可される電圧が、他のスイッチ素子のゲート電極に印可される電圧よりも低くなるように制御してもよいし、または、前記第二スイッチ素子はトランジスタであり、前記制御部は、前記第二初期化ステップにおいて前記第二スイッチ素子のゲート電極に印可される電圧が、前記第一初期化ステップにおいて前記第二スイッチ素子のゲート電極に印可される電圧よりも低くなるように制御してもよい。
【0067】
上記構成の表示装置は、第二スイッチ素子を、トランジスタを用いて一体に構成すれば、部品点数を少なくすることができ、第二スイッチ素子において電圧降下を良好に生じさせることができる。
【0068】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0069】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0070】
(実施の形態)
実施の形態の有機ELディスプレイについて、
図4〜
図20を用いて説明する。
【0071】
本実施の形態の有機ELディスプレイは、抵抗を有し、初期化電圧を供給する電源線と容量素子の第二電極との導通および非導通を切り換え可能に構成された抵抗部であって、容量素子の第二電極と前記発光素子のアノード電極との接続点から、前記電源線までの電流経路上に配置された抵抗部を備える。これにより、第一初期化期間の終了後、閾値電圧補償期間の開始前に、閾値電圧の変動に応じて駆動トランジスタのソース電極に電圧を印加することができる。
【0072】
[1.有機ELディスプレイの構成]
図4は、本実施の形態における有機ELディスプレイ10の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、有機ELディスプレイ10は、有機ELパネル11と、データ線駆動回路12と、走査線駆動回路13と、制御部20とを備えている。
【0073】
有機ELパネル11は、比較例の有機ELパネル110と同様に、複数の表示画素PXがマトリクス状に配置されている。なお、表示画素PXは、比較例と同様に、1つの色を構成するサブ画素である。赤色、緑色、青色に対応する3つのサブ画素で1つの画素が構成されている。
【0074】
表示画素PXは、有機EL素子OELと、容量素子Csと、駆動トランジスタTrdと、第一スイッチ素子Tr1と、第二スイッチ素子Tr2と、第三スイッチ素子Tr3と、第四スイッチ素子Tr4とを備えている。表示画素PXの構成要素のうち、第二スイッチ素子Tr2以外の構成要素については、比較例と構成が同じである。
【0075】
有機EL素子OELは、比較例の有機EL素子OELと同様に、駆動電流に応じて発光する発光素子である。駆動電流は、駆動トランジスタTrdから供給される。有機EL素子OELは、アノード電極が駆動トランジスタTrdのソース電極に、カソード電極が電源線VELにそれぞれ接続されている。
【0076】
容量素子Csは、比較例の容量素子Csと同様に、データ線Dataの電圧に応じた電荷が蓄積される容量素子である。容量素子Csは、第一電極が駆動トランジスタのゲート電極に、第二電極が駆動トランジスタTrdのソース電極にそれぞれ接続されている。
【0077】
駆動トランジスタTrdは、比較例の駆動トランジスタTrdと同様に、データ線Dataの電圧に応じて蓄積された容量素子Csの電荷の量に応じた駆動電流を有機EL素子OELに供給する。駆動トランジスタTrdは、薄膜トランジスタであり、ゲート電極が容量素子Csの第一電極に、ソース電極が有機EL素子OELのアノード電極に、ドレイン電極が、駆動電圧を供給する電源線VTFTにそれぞれ接続されている。
【0078】
第一スイッチ素子Tr1は、比較例の第一スイッチ素子Tr1と同様に、走査線Scanの電圧に応じてデータ線Dataと容量素子Csの第一電極との導通および非導通を切り替えることにより、表示画素PXの選択および非選択を切り替える。より詳細には、第一スイッチ素子Tr1は、薄膜トランジスタであり、ゲート電極が走査線Scanに、ソース電極がデータ線Dataに、ドレイン電極が容量素子Csの第一電極にそれぞれ接続されている。
【0079】
第二スイッチ素子Tr2は、信号線Initの電圧に応じて、容量素子Csの第二電極(ノードN2)と初期化電圧を供給する電源線VINIとの間の導通および非導通を切り替える。第二スイッチ素子Tr2は、薄膜トランジスタであり、他のスイッチ素子よりも高いオン抵抗を持つ。なお、本実施の形態では、制御部20は、第一初期化期間において、第四スイッチ素子Tr4を非導通とし、容量素子Csの充放電のみを行う。つまり、第二スイッチ素子Tr2を抵抗ではなくスイッチとして機能させる。また、制御部20は、第二初期化期間において、第四スイッチ素子Tr4を導通させ、第二スイッチ素子Tr2に貫通電流を流すことで、第二スイッチ素子Tr2を抵抗として機能させる。つまり、第二初期化期間において、第二スイッチ素子Tr2は、上述した抵抗部として機能する。第二スイッチ素子Tr2の詳細については、後述する。
【0080】
第三スイッチ素子Tr3は、比較例の第三スイッチ素子Tr3と同様に、信号線Refの電圧に応じて、容量素子Csの第一電極(ノードN1)と参照電圧を供給する電源線VREFとの間の導通および非導通を切り替える。
【0081】
第四スイッチ素子Tr4は、比較例の第四スイッチ素子Tr4と同様に、信号線Enableの電圧に応じて、駆動トランジスタTrdのドレイン電極と電源線VTFTとの間の導通および非導通を切り替える。
【0082】
データ線駆動回路12は、比較例と同様に、複数のデータ線Dataに対し、制御部20から出力されるデータ信号に応じた電圧を供給する。
【0083】
走査線駆動回路13は、比較例と同様に、複数の走査線Scanに対し、制御部20から出力される駆動信号に応じた電圧を供給する。
【0084】
制御部20は、比較例と同様に、有機ELパネル11における映像の表示を制御する回路であり、例えば、TCON(タイミングコントローラ)等を用いて構成される。なお、制御部20は、マイクロコントローラを含むコンピュータシステム、あるいは、システムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)等を用いて構成されていても構わない。あるいは、制御部20は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0085】
[1−1.第二スイッチ素子の詳細構成]
第二スイッチ素子Tr2の詳細な構成について、
図5〜
図13を用いて説明する。
【0086】
上述したように、本実施の形態の第二スイッチ素子Tr2は、他のスイッチ素子よりもオン抵抗が高いトランジスタであり、第二初期化期間において抵抗部として機能する。言い換えると、第二スイッチ素子Tr2のW/L比は、他のスイッチ素子に比べて小さい。
【0087】
課題の詳細において説明した閾値電圧のばらつきによる閾値電圧補償における精度の低下を低減するためには、第二スイッチ素子Tr2の抵抗値等を適切に設定することが望ましい。
【0088】
なお、ここでは、第二スイッチ素子Tr2の抵抗値を適切に設定するために、チャネル幅W
Rおよびチャネル長L
Rの範囲を設定する。
【0089】
[1−1−1.比較例におけるVth検出のずれ]
図5は、閾値電圧補償期間における駆動トランジスタTrdのゲートソース間の電圧Vgs−閾値電圧Vthの理想的な時間変化を示すグラフである。
図6は、閾値電圧補償期間における駆動トランジスタTrdのソース電極とドレイン電極との間に流れる電流Idsの理想的な時間変化を示すグラフである。
図5および
図6では、閾値電圧のばらつきΔVthが0Vの場合、1Vの場合、2Vの場合の3つの場合について示している。
【0090】
閾値電圧補償期間では、
図5に示すように、Vgs−Vthが、駆動トランジスタTrdの閾値電圧のばらつきΔVthに拘わらず、同じ電圧Vofsに収束することが望ましい。なお、閾値電圧補償期間は有限の期間であるため、Vgs−Vthは完全に0Vにはならず、Vofsに収束する。
【0091】
同様に、
図6に示すように、閾値電圧補償期間において、電流Idsは、ほぼ同じ電流Iendに収束することが望ましい。なお、閾値電圧補償期間は有限の期間であるため、Idsは完全にではなく、ほぼIendに収束する。このとき、電流Idsは、以下の式1により求めることができる。また、電流Iendは、以下の式2により求めることができる。
【0094】
なお、Vgs=Vofs+Vth、Vth=Vth0+ΔVthである。
【0095】
しかし、実際には、閾値電圧補償期間の終了時における電流Idsは、同じ値には収束しない。
図7は、閾値電圧補償期間における駆動トランジスタTrdのドレインソース間電圧の時間変化を示すグラフである。
図7では、閾値電圧のばらつきΔVthが0〜2Vの3つの場合について示している。
【0096】
図7に示すように、閾値電圧のばらつきΔVthが大きいほど、閾値電圧補償期間の終了時における駆動トランジスタTrdのドレインソース間の電圧Vdsが大きくなる。そうすると、閾値電圧のばらつきΔVthが大きいほど収束電流Iendは大きくなる。
【0097】
図8は、閾値電圧補償期間における駆動トランジスタTrdのソース電極とドレイン電極との間に流れる電流Idsの実際の時間変化を示すグラフである。電流Idsは、以下の式3により求めることができる。
【0099】
閾値電圧補償期間の終了時における電流Idsは、理想的には、
図6に示すように、閾値電圧のばらつきが異なる場合でも電流Iendに集束するのが望ましい。しかし、実際には、
図8に示すように、閾値電圧補償期間の終了時における電流Idsは、閾値電圧のばらつきΔVthに起因するVdsばらつきに応じて変動する。このため、閾値電圧補償期間の終了時におけるVgs−Vthもばらつくことになる。
【0100】
図9は、閾値電圧補償期間における駆動トランジスタTrdのゲートソース間の電圧Vgs−閾値電圧Vthの実際の時間変化を示すグラフである。
図9に示すように、閾値電圧のばらつきΔVthが大きいほど、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流の量が大きくなるので、Vgs−Vthは小さくなる。つまり、閾値検出にずれが生じており、閾値電圧補償の精度が低下すると考えられる。
【0101】
[1−1−2.第二スイッチ素子Tr2のチャネル幅およびチャネル長]
そこで、本実施の形態では、閾値電圧のばらつきΔVthが大きいほど、閾値電圧補償期間の開始時におけるVgs−Vthが大きくなるように、初期化期間においてVgs−Vthを調整する。つまり、初期化期間の終了時に、閾値電圧のばらつきΔVthが大きいほど、Vgs−Vthが大きくなるように、初期化電圧を調整する。
【0102】
初期化電圧の調整を行うため、本実施の形態の表示画素PXは、
図4に示すように、容量素子Csの第二電極と有機EL素子OELのアノード電極との接続点であるノードN2から、電源線VINIまでの電流経路上に、上述した抵抗部を備えている。当該抵抗部は、本実施の形態では、第二スイッチ素子Tr2(薄膜トランジスタ)のオン抵抗を他のスイッチ素子よりも大きくすることにより実現される。これにより、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧を、駆動トランジスタTrdの閾値電圧VthのばらつきΔVthに応じて調整することが可能になる。
【0103】
以下、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧の調整方法について説明する。
【0104】
初期化期間において、第一スイッチ素子Tr1をオフ状態、第二スイッチ素子Tr2、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4をオン状態にすると、電源線VTFTから、駆動トランジスタTrdおよび第二スイッチ素子Tr2を介して、電源線VINIに貫通電流Idが流れる。
【0105】
このとき、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧は、VTFT−(VINI+Ron×Id)となる。VTFTは、上述したように、駆動トランジスタのドレイン電極に駆動電圧を供給する電源線VTFTの電圧である。VINIは、上述したように、容量素子Csの第二電極に初期化電圧を供給する電源線VINIの電圧である。Ronは、上述したように、抵抗部の抵抗値である。
【0106】
貫通電流Idは、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthに応じて変化する。具体的には、貫通電流Idは、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthが大きいほど小さくなり、閾値電圧Vthが小さいほど大きくなる。
【0107】
これにより、閾値電圧Vthが大きいほど、Ron×Id(抵抗部における電圧降下量)が小さくなり、初期化期間終了時およびその後に続く閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタのソース電極の電圧は小さくなる。
【0108】
つまり、抵抗部を設けることで、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧を、駆動トランジスタTrdの閾値電圧VthのばらつきΔVthに応じて調整することが可能になる。
【0109】
抵抗部の抵抗値(本実施の形態では、第二スイッチ素子Tr2の抵抗値)は、以下の式4を満たすように設定する。
【0111】
ここで、∂Vgs/∂Vthを0.3倍以上に設定することで、閾値電圧の変動を、ソース電極の電圧に十分に反映させることができる。また、∂Vgs/∂Vthを0.7倍以下に設定することで、抵抗部のレイアウトサイズが、1画素あたり(表示画素PX)のレイアウトサイズを超えてしまい、レイアウト不可能となることを防止すると共に、抵抗部における電圧降下量が大きくなりすぎるのを防止し、閾値電圧補償期間の初期値として十分な大きさの電圧差を容量素子Csに与えることが可能になる。なお、0.3倍以上0.7倍以下に設定することの根拠については後述する。
【0112】
ここで、貫通電流Idは、駆動トランジスタTrdのチャネル幅W
D、チャネル長L
D、電子移動度μ
Dおよびゲート酸化膜の単位面積当たりの容量Coxを用いて、以下の式5により求めることができる。また、Vgsは以下の式6により求めることができる。
【0115】
式5に式6を代入すると、以下の式7および式8が得られる。
【0118】
以上より、Vgsについて、以下の式9を導き出すことができる。
【0120】
式9を式4に代入すると、以下の式10が求められる。
【0122】
ここで、第二スイッチ素子Tr2は線形領域で動作するトランジスタなので、以下の式11〜式13が成り立つ。
【0126】
式11〜式13において、W
Rは第二スイッチ素子Tr2のチャネル幅、L
Rは第二スイッチ素子Tr2のチャネル長、μ
Rは第二スイッチ素子Tr2の電子移動度である。また、Vgs
Rは第二スイッチ素子Tr2のゲートソース間電圧、Vth
Rは第二スイッチ素子Tr2の閾値電圧、Vds
Rは第二スイッチ素子Tr2のドレインソース間電圧、Vgh
Rは第二スイッチ素子Tr2がオン状態のときのゲート電極の電圧(Initの電圧)である。上記式11〜式13を式10に適用すると、以下の式14が得られる。
【0128】
式14を満たすように、第二スイッチ素子Tr2のチャネル幅W
Rおよびチャネル長L
Rを設定する。
【0129】
図10は、比較例および本実施の形態における閾値電圧補償期間のVgs−Vthの推移を示すグラフである。
図10では、閾値電圧のばらつきΔVthが2Vの場合について示している。
図11は、本実施の形態において、閾値電圧のばらつきΔVthが0Vのときと2VのときのVth検出のずれを示すグラフである。
図12は、本実施の形態において、閾値電圧補償期間における駆動トランジスタTrdのドレインソース間電圧の時間変化を示すグラフである。
図12では、閾値電圧のばらつきΔVthが0Vのときと2Vのときを示している。
【0130】
図10に示すように、比較例のグラフに比べ、本実施の形態のグラフは、初期値が大きくなっている。これにより、閾値電圧補償期間の終了時における閾値検出の値がVofsに近づいている。
図11に示すように、本実施の形態では、比較例に比べ、閾値電圧補償期間の終了時における閾値検出のばらつきが低減されることが分かる。
図12に示すように、ΔVthが0Vのときと2VのときのVdsの差は、2V以下になっている。
【0131】
[1−1−3.閾値電圧Vthのばらつきに対するVgsの変動量の範囲の設定]
【0132】
(1)式4の∂Vgs/∂Vthの下限値(例えば、0.3)の設定について説明する。
【0133】
まず、比較例におけるVth検出に必要な時間TthMaxについて説明する。比較例では、閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタTrdのゲートソース間電圧Vinitは、以下の式15により求められる。
【0135】
ここで、VthMaxは、有機ELパネル11を構成する全ての表示画素のうち、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthが最大値となる表示画素PXにおける閾値電圧Vthの値である。VthMarginは、閾値電圧補償において必要な電圧マージンである。次に、
図3から分かるように、閾値電圧Vthが最小値をとるときに、Vth検出の時間が最も長くなる。そこで、閾値電圧Vthが最小値の場合におけるVth検出に必要な時間TthMaxを求める。まず、Vth検出で充電される電荷量Qmaxは、以下の式16により求められる。
【0137】
ここで、VthMinは、有機ELパネル11を構成する全ての表示画素のうち、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthが最小値となる表示画素PXにおける閾値電圧Vthの値である。電荷量Qmaxを充電するために必要な時間TthMaxは、以下の式17により求められる。
【0139】
ここで、Idは閾値電圧補償期間中に駆動トランジスタTrdを介して容量素子Csに流れる電流の平均値である。課題の詳細において説明したように、例えば、閾値電圧補償期間が1水平走査期間(1H)である場合は、TthMaxは、1H以下になることが望ましい。式16および式15を式17に代入すると、以下の式18が得られる。
【0141】
次に、本実施の形態におけるVth検出に必要な時間TthMaxについて説明する。上述したように、本実施の形態では、Vinitは、Vthに対し、α(=∂Vgs/∂Vth)の係数で変化する。従って、駆動トランジスタTrdの閾値電圧がVthMaxである表示画素PXにおいて、以下の式19が成り立つ。
【0143】
式18および式19より、以下の式20が成り立つ。
【0145】
式18と式20からわかる通り、比較例に比べて本実施の形態の有機ELディスプレイでは、(1−α)の係数の分だけ、TthMaxが小さく、閾値電圧補償期間を1水平走査期間(1H)以下にすることが容易になる。
【0146】
本発明者らは、40型4K2K(例えば、3480×2160表示画素)の有機ELパネル11について検証を行った。上記有機ELパネル11として、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthの面内ばらつきが0〜2V、VthMarginが2.5V、容量素子Csが0.5pFのパネルを用いた。この場合、閾値電圧補償期間中に駆動トランジスタTrdを介して容量素子Csに流れる電流の平均値Idは、0.25μAであった。
【0147】
図13は、走査線数Vlineが2160本の場合において、駆動周波数Freq毎に、式20を満たすために必要なαの値を算出した結果を示すグラフである。
図13より、例えば、駆動周波数が120Hzの場合は、αが0.3以上であることが望ましいことが分かる。
【0148】
図14は、駆動周波数Freqを120Hzに固定した場合において、走査線数Vline毎に式20を満たすために必要なαの値を算出した結果を示すグラフである。
図14に示すように、走査線数Vlineが2160本の場合、αが0.3以上であることが望ましいことが分かる。
【0149】
以上より、走査線数Vline≧2160、駆動周波数Freq≧120Hzのパネルでは、閾値電圧補償期間内に駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧を収束させるためには、α≧0.3となることが望ましいことが分かる。
【0150】
なお、本実施の形態では、40型4K2Kのパネルについて説明したが、Vlineが2160よりも小さい等、異なる条件の有機ELパネル11では、αの下限値が異なる値であっても構わない。設計する有機ELパネル11の制約に応じて設定することが望ましい。
【0151】
(2)式4の∂Vgs/∂Vthの上限値(例えば、0.7)の設定について説明する。
【0152】
図15は、Cs初期化電圧(初期化期間終了時における容量素子Csの第一電極と第二電極間に印可される電圧)と、閾値電圧Vthとの関係を示すグラフである。グラフの直線の傾きが、α=∂Vgs/∂Vthに対応する。
【0153】
図15では、電源線VREFの電圧を2V、電源線VINIの電圧を−4V、第二スイッチ素子Tr2をオン状態にするときのゲート電極の電圧Vgh
Rを20Vとしている。また、
図15では、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthと第二スイッチ素子Tr2の閾値電圧Vth
Rとがほぼ同じであると仮定している。
【0154】
図15に示すように、駆動トランジスタTrdのチャネル幅とチャネル長との比(W
D/L
D)に対する、第二スイッチ素子Tr2のチャネル幅とチャネル長との比(W
R/L
R)、つまり、(W
R/L
R)/(W
D/L
D)が1/20のとき、α=∂Vgs/∂Vth=0.67である。比(W
R/L
R)/(W
D/L
D)が1/10のとき、α=∂Vgs/∂Vth=0.55である。比(W
R/L
R)/(W
D/L
D)が1/4のとき、α=∂Vgs/∂Vth=0.38である。
【0155】
図16は、∂Vgs/∂Vthの値と、第二スイッチ素子Tr2のチャネル長L
Rとの相関関係を示すグラフである。
図16に示すように、∂Vgs/∂Vthが大きいほど、閾値電圧補償の精度が高くなり、Vth検出に必要な時間のばらつきは小さくなる。しかし、∂Vgs/∂Vthが大きいほど、第二スイッチ素子Tr2のチャネル長L
Rは大きくなる。
【0156】
ここで、40型4K2Kのパネルを考える。この場合、1画素のサイズは、例えば約230μmである。この場合、第二スイッチ素子Tr2のチャネル長L
Rは、230μm以下であることが望ましい。
図16の場合、∂Vgs/∂Vthが0.7以下のときに、第二スイッチ素子Tr2のチャネル長L
Rが230μm以下となる。従って、チャネル長L
Rが230μm以下の精細なパネルを設計する場合には、∂Vgs/∂Vth≦0.7となることが望ましい。これにより、抵抗部が、1画素あたり(表示画素PX)のレイアウトサイズを超えてしまい、レイアウト不可能となることを防止することが出来る。
【0157】
また、閾値電圧補償開始時の駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧は、上述のように、VTFT−(VINI+Ron×Id)で表されるが、∂Vgs/∂Vth>0.7となるような第二スイッチ素子Tr2の場合、オン抵抗Ronが非常に大きくなる。この場合、ソース電極の電圧が大きくなり過ぎてしまい、閾値電圧補償を行うために十分な大きさのゲートソース間電圧を確保できなくなる可能性がある。この観点からも、∂Vgs/∂Vth≦0.7となることが望ましい。
【0158】
なお、チャネル長L
Rに求められる制約が異なる場合には、∂Vgs/∂Vthの上限値は0.7以外の値であっても構わない。設計する有機ELパネル11の制約に応じて設定することが望ましい。
【0159】
[2.有機ELディスプレイの動作]
図17は、本実施の形態における有機ELディスプレイ10の信号波形を示すグラフである。
【0160】
本実施の形態の有機ELディスプレイ10では、第一初期化期間および第二初期化期間の2つの初期化期間が設けられている。本実施の形態の有機ELディスプレイ10では、初期化期間の経過後、閾値電圧補償期間、書込期間および発光期間がこの順に設定されている。
【0161】
なお、時刻t0までは、全てのスイッチ素子がオフ状態であると仮定する。
【0162】
また、第一初期化期間T22では、第二スイッチ素子Tr2をスイッチとして動作させ、第二初期化期間T23では、第二スイッチ素子Tr2を抵抗部として動作させる。信号線Scan、信号線Refおよび信号線Enable各々のHレベルの電圧は、スイッチ素子各々の特性に応じて、第一スイッチ素子Tr1、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4各々をスイッチとしてみなして良いほど、十分低抵抗で動作させることができる電圧に設定される。
【0163】
(期間T21:第一期間)
図17に示す時刻t0〜時刻t1の期間T21は、ノードN2の電圧を安定させるための期間である。
【0164】
具体的には、期間T21の開始時に、制御部20は、第二スイッチ素子Tr2を導通状態に、他のスイッチ素子を非導通状態に設定する第一ステップを実行する。これにより、期間T21では、ノードN2の電圧を電源線VINIの電圧に安定させる。
【0165】
走査線駆動回路13は、信号線Scan、信号線Refおよび信号線Enableの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4をオフ状態に維持する。
【0166】
また、走査線駆動回路13は、期間T21の開始時に、信号線Initの電圧をLレベルからHレベルに設定することにより、第二スイッチ素子Tr2をオフ状態からオン状態に遷移させる。
【0167】
期間T21を設けることにより、短期間にノードN2の電圧を電源線VINIの電圧に設定することができる。また、容量素子Csにより、ノードN1の電圧も、(電源線VINIの電圧+前フレームでの発光時の駆動トランジスタTrdのゲートソース間電圧Vgs)に低下する。
【0168】
この期間T21を設ける理由は次の通りである。有機ELパネル11のサイズあるいは1画素あたり(表示画素PX)のサイズが大きい場合に、有機EL素子OELの容量Coledが大きくなり、電源線VINIの配線時定数が大きくなる。このため、有機ELパネル11のサイズあるいは1画素あたりのサイズが大きいほど、ノードN2の電圧を電源線VINIの電圧にすることに時間を要する。そのため、第二スイッチ素子Tr2を導通状態にしてノードN2に電源線VINIの電圧を印加する期間T21を設けることにより、より短期間でノードN2の電圧を電源線VINIの電圧に設定することができる。言い換えると、期間T21を設けることにより、より短期間で有機EL素子OELおよび電源線VINIの配線容量に電源線VINIの電圧を書き込むことができる。
【0169】
なお、電源線VREFの電圧をノードN1に印加することにも同様に時間を要する。しかし、電源線VREFの電圧を充放電する対象は、容量素子Csおよび電源線VREFの配線容量である。ここで、電源線VREFの配線時定数と電源線VINIの配線時定数とはほぼ同等である。しかし、有機EL素子OELの容量>容量素子Csの容量であり、容量素子Csに対する有機EL素子OELの容量比(有機EL素子OEL/容量素子Cs)は、1.3〜9倍である。つまり、容量素子Csを充電するのにかかる時間よりも、有機EL素子OELを充電するのにかかる時間の方が長い。言い換えると、ノードN1の電圧を電源線VREFの電圧にするのにかかる時間よりも、ノードN2の電圧を電源線VINIの電圧にするのにかかる時間の方が長い。さらに言い換えると、容量素子Csに電源線VREFの電圧を書き込むのにかかる時間よりも、有機EL素子OELに電源線VINIの電圧を書き込むのにかかる時間の方が長い。
【0170】
また、期間T21を設けることにより、ノードN2の電圧が電源線VINIの電圧に設定されるので、電源線VREFの負荷を軽くすることができるという利点がある。つまり、期間T21を設けることで、ノードN1の電圧を低い電圧に設定することができ、電源線VREFは表示画素PXに充電するための電流(電圧)を供給するのみでよくなる。換言すると、期間T21では、電源線VREFの電圧が有機EL素子OELを充電するための電圧として用いられないため、電源線VREFの負荷が軽くなるという利点がある。
【0171】
(期間T22:第一初期化期間)
図17に示す時刻t1〜時刻t2の期間T22は、駆動トランジスタTrdの閾値電圧補償を行うためにドレイン電流を流すのに必要な電圧を駆動トランジスタTrdのゲートソース間に印加する第一初期化期間である。
【0172】
言い換えると、第一初期化期間は、制御部20が、駆動トランジスタTrdのドレイン電極に対して有機EL素子OELを駆動するための駆動電圧の印加を停止させた状態で、容量素子Csの第一電極に対して参照電圧を印加し、第二スイッチ素子Tr2を導通状態に設定することにより、容量素子Csの第二電極に対して初期化電圧を印加する第一初期化ステップを実行する期間である。
【0173】
図18は、第一初期化期間における表示画素PXの状態を示す回路図である。
【0174】
具体的には、期間T22では、
図17および
図18に示すように、第二スイッチ素子Tr2および第三スイッチ素子Tr3は導通状態に、第一スイッチ素子Tr1および第四スイッチ素子Tr4を非導通状態に設定される。
【0175】
走査線駆動回路13は、信号線Scanおよび信号線Enableの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1および第四スイッチ素子Tr4をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、信号線Initの電圧をHレベルのまま維持することで、第二スイッチ素子Tr2をオン状態に維持する。
【0176】
また、走査線駆動回路13は、期間T22の開始時に、信号線Refの電圧をLレベルからHレベルに遷移させることにより、第三スイッチ素子Tr3をオフ状態からオン状態に遷移させる。ここで、第二スイッチ素子Tr2に流れる電流は、容量素子Csを充放電するために必要な電流のみであり、容量素子Csの充放電が収束する時点では、ほぼ電流はゼロであるので、第二スイッチ素子Tr2のオン抵抗はほぼ無視することが出来る。つまり、第二スイッチ素子Tr2は、スイッチとして動作する。
【0177】
これにより、ノードN1の電圧が電源線VREFの電圧に設定される。ここで、第二スイッチ素子Tr2が導通状態であるから、ノードN2の電圧は電源線VINIの電圧に設定されている。すなわち、駆動トランジスタTrdは、ゲート電極に電源線VREFの電圧が印加され、ソース電極に電源線VINIの電圧が印加される。
【0178】
第一初期化期間は、例えば、ノードN1の充放電を十分に行うことができる長さに設定する。
【0179】
ここで、第一初期化期間の設定の一例として、40型4K2Kディスプレイの場合について説明する。なお、当該第一初期化期間の設定は一例であり、同型のディスプレイであっても、下記に示す条件の何れかが異なる場合は、第一初期化期間も異なる結果になる。
【0180】
40型4K2Kディスプレイの設計値として、VthMargin=2.5V、VthMax=2V、VthMin=0V、Vgs_Peak=6.5V、Id_Peak=4.5μA、Cs=0.5pF、Coled=2.5pF、Ron_Sw=0.6MΩ、Ron_Drv=1MΩの場合を考える。Csは表示画素PXの容量素子の容量値である。Coledは、有機EL素子OELの容量である。Ron_Swは、第二スイッチ素子Tr2のオン抵抗である。Ron_Drvは、駆動トランジスタTrdのオン抵抗である。なお簡略化のため、以下ではトランジスタや表示画素内の配線交差部に付随する細かな寄生容量は省略する。
【0181】
第一初期化期間は、ノードN1の表示画素PX内の充放電時間と、電源線VREFのCR負荷の充放電に必要な時間とを加算した値となる。
【0182】
(1)ノードN1の表示画素PX内の充放電時間について説明する。ここで、ノードN1を初期化する際の表示画素PXのCR時定数であって、ノードN1を99.9%充放電するために必要な時定数は、6.9tauとする。そうすると、表示画素PX内の充放電時間は、CR係数×Cs×Ron_Sw=6.9×0.5pF×0.6MΩ=2.1μsecとなる。
【0183】
(2)電源線VREFのCR負荷の充放電に必要な時間について説明する。ここで、電源線VREFの抵抗=3KΩ(シート抵抗0.1Ω/□)、配線負荷=500pFとすると、電源線VREFのCR時定数は、3KΩ×500pF=1.5μsecとなる。従って、電源線VREFのCR負荷の充放電に必要な時間は、1.5μsec×6.9tau=10.4μsecとなる。
【0184】
以上より、第一初期化期間は、2.1μsec+10.4μsec=12.5μsecとなる。
【0185】
また、上述したように、第一初期化期間では、駆動トランジスタTrdのゲートソース間電圧Vgsは、閾値補正動作を行うのに必要な初期ドレイン電流を確保できる電圧に設定される。そのため、電源線VREFの電圧と電源線VINIの電圧の電圧差は駆動トランジスタTrdの最大閾値電圧VthMaxよりも大きな電圧に設定される。具体的には、駆動トランジスタTrdの最大閾値電圧VthMaxに、閾値電圧補償において必要な電圧マージンVthMarginを足した値に設定される。また、電源線VREFの電圧および電源線VINIの電圧は、有機EL素子OELに電流が流れないように、電源線VINIの電圧<電源線VELの電圧+有機EL素子OELの順方向電流閾値電圧、および、電源線VREFの電圧<電源線VELの電圧+有機EL素子OELの順方向電流閾値電圧+駆動トランジスタTrdの最小閾値電圧VthMin、となるように設定される。
【0186】
(期間T23:第二初期化期間)
図17に示す時刻t2〜時刻t3の期間T23は、閾値電圧補償を行うために必要な時間のばらつきを低減するために、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧を補正する第二初期化期間である。
【0187】
言い換えると、第二初期化期間は、制御部20が、第一初期化ステップの実行後に、容量素子Csの第一電極に対する参照電圧の印加を維持し、かつ、第二スイッチ素子Tr2を導通状態に維持した状態で、駆動トランジスタTrdのドレイン電極に対する駆動電圧の印加を開始する第二初期化ステップを実行する期間である。
【0188】
図19は、第二初期化期間における表示画素PXの状態を示す回路図である。
【0189】
具体的には、期間T23では、
図17および
図19に示すように、第二スイッチ素子Tr2、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4は導通状態に、第一スイッチ素子Tr1は非導通状態に設定される。
【0190】
走査線駆動回路13は、信号線Scanの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、信号線Initおよび信号線Refおよびの電圧をHレベルのまま維持することで、第二スイッチ素子Tr2および第三スイッチ素子Tr3をオン状態に維持する。
【0191】
また、走査線駆動回路13は、期間T23の開始時に、信号線Enableの電圧をLレベルからHレベルに遷移させることにより、第四スイッチ素子Tr4をオフ状態からオン状態に遷移させる。
【0192】
このとき、
図19に示すように、電源線VTFTから、第四スイッチ素子Tr4、駆動トランジスタTrdおよび第二スイッチ素子Tr2を介して、電源線VINIまで貫通電流が流れる。第二スイッチ素子Tr2の導通期間中は貫通電流が流れ続けるので、駆動トランジスタTrdのソース電極に印可される電圧は、第二スイッチ素子のオン抵抗の影響を受ける。つまり、第二スイッチ素子Tr2は、抵抗部として動作する。このため、第二初期化期間の終了時における駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧は、VTFT−(VINI+Ron×Id)となる。
【0193】
ここで、上述したように、貫通電流Idは、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthが大きいほど小さくなり、閾値電圧Vthが小さいほど大きくなる。つまり、閾値電圧Vthが大きいほど、Ron×Id(抵抗部における電圧降下量)が小さくなり、初期化期間終了時およびその後に続く閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧は小さくなる。
【0194】
図20は、第二初期化期間および閾値電圧補償期間における駆動トランジスタのソース電極の電圧の変化を示すグラフである。
図20は、
図17の破線により囲んだ部分に対応するグラフである。
【0195】
図20に示すように、第二初期化期間T23における駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧の上昇量(ΔV1〜ΔV3)は、閾値電圧Vthの値が小さいほど(Vth1<Vth2<Vth3)、大きくなっている(ΔV1>ΔV2>ΔV3)。
【0196】
第二初期化期間は、ノードN2を、一定の電圧分、充放電できる長さであればよい。なお、ノードN2を一定の電圧分、充放電できる長さは、閾値電圧Vthの値によって異なる。
【0197】
例えば、閾値電圧補償期間の開始前の駆動トランジスタTrdのゲート電極およびソース電極間の電圧Vgs=VREF−VINI=6.5Vとする。閾値電圧VthがVthMin=0Vとなる場合、閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタTrdのVgsは、VthMin+VthMargin=2.5Vになればよい。この場合、ノードN2から6.5−2.5=4.0V分の電荷が放電できればよい。なお、閾値電圧補償期間中に、駆動トランジスタTrdのVgsが2.5Vから0Vになるように、徐々に電荷が放電される。
【0198】
一方、閾値電圧VthがVthMax=2Vの場合、閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタTrdのVgsは、VthMax+VthMargin=4.5Vになればよい。この場合、ノードN2から6.5−4.5=2.0V分の電荷が放電できればよい。なお、閾値電圧補償期間中に、駆動トランジスタTrdのVgsが4.5Vから2Vになるように、徐々に電荷が放電される。この場合における閾値電圧補償期間の駆動トランジスタTrdの放電量は、閾値電圧VthがVthMinの場合とほぼ同じになる。つまり、閾値電圧VthがVthMinとなる場合とVthMaxとなる場合とで、閾値電圧補償にかかる動作が収束する時間がほぼ同じになる。
【0199】
第二初期化期間は、ワーストケース(閾値電圧VthがVthMinの場合)において、ノードN2を一定の電圧分、充放電できる長さを考えればよい。また、第二初期化期間は、ノードN2の表示画素PX内の充放電時間と、電源線VINIのCR負荷の充放電に必要な時間とを加算した値となる。よって、ノードN2のCR時定数は、4V/6.5V=62%の充放電にかかる時間(=0.96tau)となる。
【0200】
(1)ノードN2の表示画素PX内の充放電時間について説明する。表示画素PX内の充放電時間は、CR時定数×(Cs+Coled)×Ron_Drv=0.96×(0.5pF+2.5pF)×1MΩ=2.88μsecとなる。なお、Cs、ColedおよびRon_Drvの値は、第一初期化期間の場合と同じである。
【0201】
(2)電源線VINIのCR負荷の充放電に必要な時間について説明する。ここで、電源線VINIのCR時定数は、電源線VREFのCR時定数とほぼ同じであると仮定する。そうすると、電源線VINIのCR負荷の充放電に必要な時間は、1.5μsec×0.96tau=1.44μsecとなる。
【0202】
以上より、第二初期化期間は、2.88μsec+1.44μsec=4.32μsecとなる。第一初期化期間は、上述したように、12.5μsecであるので、第二初期化期間は、第一初期化期間よりも短い。
【0203】
(期間T24:閾値電圧補償期間)
図17に示す時刻t3〜時刻t4の期間T24は、駆動トランジスタTrdの閾値電圧を補償する閾値電圧補償期間である。
【0204】
当該閾値電圧補償期間では、制御部20により、第二初期化ステップの実行後に、容量素子Csの第一電極に対する参照電圧の印加を維持し、かつ、駆動トランジスタTrdのドレイン電極に対する駆動電圧の印加を維持した状態で、第二スイッチ素子を非導通状態にするステップが実行される。
【0205】
具体的には、期間T24では、
図17に示すように、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4は導通状態に、第一スイッチ素子Tr1および第二スイッチ素子Tr2は非導通状態に設定される。
【0206】
走査線駆動回路13は、信号線Scanの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、信号線Refおよび信号線Enableの電圧をHレベルのまま維持することで、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4をオン状態に維持する。
【0207】
また、走査線駆動回路13は、期間T24の開始時に、信号線Initの電圧をHレベルからLレベルに遷移させることにより、第二スイッチ素子Tr2をオン状態からオフ状態に遷移させる。
【0208】
このように、駆動トランジスタTrdのゲート電極に電源線VREFの電圧を入力し、第四スイッチ素子Tr4を導通状態(オン状態)にした状態で、第二スイッチ素子Tr2を非導通状態(オフ状態)にすると、駆動トランジスタTrdの閾値補償動作を開始することができる。
【0209】
例えば、
図20に示すように、閾値電圧Vth1の場合、第二初期化期間T23の終了時における駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧は、電源線VREF−Vth1である。このため、閾値電圧補償において、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧は、第一初期化期間のみを設ける場合には、ΔV1b上昇させる必要があるが、第二初期化期間を設けた場合には、ΔV1bよりも小さいΔV1aだけ上昇させればよい。言い換えると、第二初期化期間T23における電圧の上昇分、閾値電圧補償期間における電圧の上昇量を小さく抑えることができる。閾値電圧Vth1の場合、閾値電圧補償における電圧の上昇量は、比較例と比べて本実施の形態では、ΔV1分小さくなる。
【0210】
閾値電圧Vth2あるいはVth3の場合についても、閾値電圧補償における電圧の上昇量は、ΔV2あるいはΔV3分小さくなる。
【0211】
また、本実施の形態の第二初期化期間T23では、上述したように、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧の上昇量(ΔV1〜ΔV3)は、閾値電圧Vthの値が小さいほど(Vth1<Vth2<Vth3)、大きくなっている(ΔV1>ΔV2>ΔV3)。
図3および
図20のグラフを比較すると、閾値電圧補償にかかる期間のばらつき(Tth1−Tth3=ΔTth)は、比較例のΔTthよりも、本実施の形態のΔTthの方が短くなっていることがわかる。つまり、本実施の形態の場合、
図3および
図20より、閾値電圧補償にかかる期間のばらつきが低減されていることが分かる。
【0212】
(期間T25:第三期間)
図17に示す時刻t4〜時刻t5の期間T25は、閾値補償動作を終了させるための期間である。
【0213】
具体的には、期間T25では、
図17に示すように、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr2および第三スイッチ素子Tr3は導通状態に、第四スイッチ素子Tr4は非導通状態に設定される。制御部20は、期間T25の開始時に、第四スイッチ素子Tr4を導通状態から非導通状態にする第三ステップを実行する。
【0214】
走査線駆動回路13は、信号線Scanおよび信号線Initの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1および第二スイッチ素子Tr2をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、信号線Refの電圧をHレベルのまま維持することで、第三スイッチ素子Tr3をオン状態に維持する。
【0215】
また、走査線駆動回路13は、期間T25の開始時に、信号線Enableの電圧をHレベルからLレベルに遷移させることにより、第四スイッチ素子Tr4をオン状態からオフ状態に遷移させる。
【0216】
このようにして、閾値電圧補償期間の後に信号線Enableの動作により第四スイッチ素子Tr4を非導通状態とする期間T25を設けることにより、駆動トランジスタTrd経由で、有機EL素子OELのアノード電極に接続された電源線VELからノードN2への電流の供給をなくすことができ、閾値補償動作を確実に終了させてから次の動作を行うことができる。
【0217】
(期間T26:第四期間)
図17に示す時刻t5〜時刻t6の期間T26は、第三スイッチ素子Tr3を非導通状態(オフ状態)にすることで、信号線Dataを介して供給されるデータ信号の電圧と電源線VREFの電圧とが同時にノードN1に印加されるのを防止する期間である。
【0218】
具体的には、期間T26では、
図17に示すように、第一スイッチ素子Tr1〜第四スイッチ素子Tr4が非導通状態に設定される。制御部20は、期間T26の開始時に、第三スイッチ素子Tr3を導通状態から非導通状態にする第四ステップを実行する。
【0219】
走査線駆動回路13は、信号線Scan、信号線Initおよび信号線Enableの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr2および第四スイッチ素子Tr4をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、期間T26の開始時に、信号線Refの電圧をHレベルからLレベルに遷移させることにより、第三スイッチ素子Tr3をオン状態からオフ状態に遷移させる。
【0220】
このように、信号線Refの動作により第三スイッチ素子Tr3をさらに非導通状態とし、第一スイッチ素子Tr1および第三スイッチ素子Tr3が同時に非導通状態(オフ状態)となる期間T26を設けることで、信号線Dataを介して第一スイッチ素子Tr1から供給されるデータ信号の電圧と、電源線VREFの電圧とがノードN1に同時に印加されるのを防止することができる。
【0221】
なお、第三スイッチ素子Tr3と第四スイッチ素子Tr4とを同時に非導通状態(オフ状態)にし、期間T25および期間T26を一つにまとめてもよい。
【0222】
期間T25および期間T26と2段階にわける場合には、以下に説明する利点がある。すなわち、期間T25および期間T26を設けることで、駆動トランジスタTrdのゲート電圧であるノードN1の電圧が不定となる期間をなるべく短くし、不定期間中で発生する恐れのある電圧変動を抑え、映像信号に基づいた表示がより正確にできる。
【0223】
また、階調表示は期間T26の最後(時刻t6)のノードN1の電圧と、信号線Dataを介して入力されるデータ信号の電圧(映像信号に応じた電圧)の書き込み完了時(時刻t27)のノードN1の電圧との電圧差によって行われる。このため、期間T26におけるノードN1の電圧変動は少ないほうが好ましい。理想的には、期間T24においてノードN1に電源線VREFの電圧が印加され、期間T25においてはノードN1の電圧が保持されることから、電圧差(データ信号の電圧−電源線VREFの電圧)に基づいて有機EL素子OELの表示輝度が決まる。
【0224】
なお、データ信号の電圧−電源線VREFの電圧を正確に反映させるには、期間T26はなるべく短い方がよい。
【0225】
また、信号線Enableに接続される第四スイッチ素子Tr4は、
図4に示すように、駆動トランジスタTrdのドレイン側に接続されている。第四スイッチ素子Tr4をn型トランジスタで形成した場合、第四スイッチ素子Tr4のオン抵抗は高くなりやすく、オン抵抗による電圧ドロップは、有機ELパネル11の消費電力に影響する。そのため、できる限り第四スイッチ素子Tr4のオン抵抗を下げて形成する。第四スイッチ素子Tr4のオン抵抗を下げる方法としては、一般的に、第四スイッチ素子Tr4のチャネルサイズを大きくする方法、あるいは、信号線EnableのHレベルの電圧(オン状態制御電圧)を高く設定する方法が知られているが、いずれの方法であっても信号線Enableの立下り時間を長くする方向となってしまう。
【0226】
そこで、本実施の形態では、信号線Refに対して先に信号線Enableを立ち下げる期間T25を設けることにより、ノードN1の電圧が不安定となる期間を短くすることができる、つまり、立下り時間を短くすることができる。
【0227】
(期間T27:書込期間)
図17に示す時刻t6〜時刻t7の期間T27は、信号線Dataから映像信号に含まれる階調値に応じた電圧値を有するデータ信号の電圧を、第一スイッチ素子Tr1を介して容量素子Csに書き込む書込期間である。
【0228】
具体的には、期間T27では、
図17に示すように、第一スイッチ素子Tr1が導通状態に、第二スイッチ素子Tr2、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4が非導通状態に設定される。
【0229】
走査線駆動回路13は、信号線Init、信号線Refおよび信号線Enableの電圧をLレベルのまま維持することで、第二スイッチ素子Tr2、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、期間T27の開始時に、信号線Scanの電圧をLレベルからHレベルに遷移させることにより、第一スイッチ素子Tr1をオフ状態からオン状態に遷移させる。
【0230】
これにより、容量素子Csには、閾値電圧補償期間で記憶された駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthに加えて、データ信号の電圧と電源線VREFの電圧との電圧差が、(有機EL素子OELの容量)/(有機EL素子OELの容量+容量素子Csの容量)倍されて、記憶(保持)される。ここで、第四スイッチ素子Tr4が非導通状態にあるため、駆動トランジスタTrdはドレイン電流を流さない。そのため、ノードN2の電圧は期間T27の間で大きく変化することはない。
【0231】
大画面化(有機ELパネル11のサイズが大きくなる)、かつ、表示画素PXの数が増加するのに伴い、表示画素PXにデータ信号を書き込むための期間(水平走査期間)が短くなる。大画面化に伴い信号線Scanの配線時定数も増加する。水平走査期間の短縮および信号線Scanの配線時定数の増加により、従来の有機ELパネル11に比べ、所望の階調値に対応する電圧を表示画素PXに書き込むことが難しくなる。
【0232】
そこで、本実施の形態では、
図3に示すように、限られた時間で映像信号(データ信号電圧)を取り込むために、第一スイッチ素子Tr1を導通状態にさせる時間(期間T27)を増加させている。また、本実施の形態では、信号線Scanの波形なまりがあっても、データ信号の電圧が信号線Dataに入力される前に信号線Scanが立ち上がりを完了させて、第一スイッチ素子Tr1が導通状態(オン状態)となるようにしている。これは期間T27でのノードN2電圧変動が大きく発生しないためである。
【0233】
これにより、信号線Scanの負荷(配線時定数)が大きく、立ち上がりに時間がかかるような大画面、高画素数の有機ELパネル11であっても確実に書き込むことができる。
【0234】
なお、このように駆動させることから、信号線Scanの配線幅をより細くすることもできる。その場合、配線幅を細くした分を容量素子Csの大きさ(容量)を拡大することに用いて、表示性能を上げるとしてもよい。
【0235】
表示性能は、容量素子Csが小さいと、駆動トランジスタTrdのドレインゲート間寄生容量と容量素子Csと有機EL素子OELの容量が直列になっている関係から、電源線VELの変動により、容量素子Csに書き込まれている電荷量が変化するという問題が顕著となる。そのため、表示性能は、寄生容量と蓄積容量の比率が重要であり、蓄積容量/寄生容量>>1となることが好ましい。
【0236】
このように、期間T27(書込期間)では、データ信号の電圧および駆動トランジスタTrdの閾値電圧に応じた電圧が容量素子Csに記憶(保持)される。
【0237】
(期間T28)
図17に示す時刻t7〜時刻t8の期間T28は、第一スイッチ素子Tr1を確実に非導通にさせるための期間である。
【0238】
具体的には、期間T28では、
図17に示すように、第一スイッチ素子Tr1〜第四スイッチ素子Tr4が非導通状態に設定される。
【0239】
走査線駆動回路13は、信号線Init、信号線Refおよび信号線Enableの電圧をLレベルのまま維持することで、第二スイッチ素子Tr2、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、期間T28の開始時に、信号線Scanの電圧をHレベルからLレベルに遷移させることにより、第一スイッチ素子Tr1をオン状態からオフ状態に遷移させる。
【0240】
これにより、続く期間T29(発光期間)において第四スイッチ素子Tr4が導通状態(オン状態)になる前に第一スイッチ素子Tr1を確実に非導通状態(オフ状態)にすることができる。
【0241】
期間T28を設けず、第一スイッチ素子Tr1と第四スイッチ素子Tr4とが同時に導通状態(オン状態)になってしまった場合、駆動トランジスタTrdのドレイン電流により、ノードN2の電圧が上昇する一方で、ノードN1の電圧はデータ信号の電圧となる。そうすると、駆動トランジスタTrdのソースゲート間電圧が小さくなってしまう。この場合には、所望の輝度に比べて少ない輝度で発光してしまうという問題がある。これを防止するため、本実施の形態では、期間T28を設けて第一スイッチ素子Tr1が非導通状態であることを確保してから、続く期間T29において第四スイッチ素子Tr4を導通状態にする。
【0242】
(期間T29:発光期間)
図17に示す時刻t8〜時刻t9の期間T29は、発光期間である。
【0243】
具体的には、期間T29では、
図17に示すように、第四スイッチ素子Tr4が導通状態に、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr2および第三スイッチ素子Tr3が非導通状態に設定される。
【0244】
走査線駆動回路13は、信号線Scan、信号線Initおよび信号線Refの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr2および第三スイッチ素子Tr3をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、期間T29の開始時に、信号線Enableの電圧をLレベルからHレベルに遷移させることにより、第四スイッチ素子Tr4をオフ状態からオン状態に遷移させる。
【0245】
このように、第四スイッチ素子Tr4が導通状態(オン状態)になると、駆動トランジスタTrdは、容量素子Csに蓄えられた電圧に応じた駆動電流を有機EL素子OELに供給する。これにより、有機EL素子OELを発光させることができる。
【0246】
(期間T30:第二期間)
図17に示す時刻t9〜時刻t0の期間T30は、すべてのスイッチを非導通状態として、ノードN1およびノードN2の電圧を、期間T21で必要な電圧に近い電圧まで変化させるための期間である。
【0247】
具体的には、期間T30では、
図17に示すように、第一スイッチ素子Tr1〜第四スイッチ素子Tr4が非導通状態に設定される。制御部20は、期間T30の開始時に、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr2、第三スイッチ素子Tr3および第四スイッチ素子Tr4を非導通状態にする第二ステップを実行する。
【0248】
走査線駆動回路13は、信号線Scan、信号線Initおよび信号線Refの電圧をLレベルのまま維持することで、第一スイッチ素子Tr1、第二スイッチ素子Tr2および第三スイッチ素子Tr3をオフ状態に維持する。さらに、走査線駆動回路13は、期間T30の開始時に、信号線Enableの電圧をHレベルからLレベルに遷移させることにより、第四スイッチ素子Tr4をオン状態からオフ状態に遷移させる。
【0249】
期間T29と期間T21の間に期間T30を設けることで、電源線による電流の充放電なしに、ノードN1およびノードN2の電圧を、期間T21で必要な電圧に近い電圧まで変化させることができる。
【0250】
より具体的には、ノードN2は、期間T30において、電源線VELの電圧+有機EL素子OELの閾値電圧に収束する。また、ノードN1は、期間T30において、ノードN2の電圧+容量素子Csに記憶された電圧となる。
【0251】
つまり、期間T30を設けることにより、期間T21の開始時点(時刻t0)では、期間T29の終了時点(時刻t9)に比べ、ノードN1およびノードN2の電圧を有機EL素子OELの発光時電圧―閾値電圧分だけ低くできる。
【0252】
この電圧低下により、期間T21での電源線VINIの電圧と電源線VREFの電圧による充放電作業の負荷が軽くなる。
【0253】
以上のようなシーケンスにより、表示画素PXは、階調表示を行う。
【0254】
なお、制御部20は、有機ELパネル11を構成する他の表示画素PXについても、同様の制御方法を線順次に行う。
【0255】
[3.効果等]
本実施の形態の有機ELディスプレイ10は、ノードN2から電源線VINIまでの電流経路上に配置された抵抗部を有するので、第一初期化期間と閾値電圧補償期間との間で、駆動トランジスタTrdのソース電極、つまり、ノードN2に電圧を与え、ノードN2の電圧を閾値電圧補償にかかる期間が短くなるように調整することができる。これにより、表示装置の高精細化等により閾値電圧補償期間が短くなった場合でも、十分な精度で閾値補償を行うことが可能になる。
【0256】
さらに、抵抗部を備えることで、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthが小さいほど、初期化期間中のノードN2の電圧の調整幅を大きくすることができる(
図20参照)。このように設定することで、上述したように、閾値電圧補償にかかる期間のばらつきをおさえることができる。このため、閾値電圧補償期間の設計が容易になる。
【0257】
本実施の形態では、抵抗部を設けるという簡単な構成で、製造コストを増大させることなく、閾値電圧補償期間の短縮および閾値電圧補償の精度を向上させることができる。
【0258】
(他の実施の形態)
以上、表示装置について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0259】
(1)例えば、上記実施の形態では、第二スイッチ素子Tr2のW/L比を他のスイッチ素子に比べて小さくすることで、抵抗部としての機能を実現したが、これに限るものではない。例えば、信号線Initのオン電圧(スイッチ素子をオン状態にするときのゲート電極の電圧)を、他の信号線のオン電圧に比べて低くすることで、第二スイッチ素子Tr2のオン抵抗を大きくしても良い。この際、第一初期化期間と第二初期化期間とで、信号線Initのオン電圧を変えても良い。あるいは、第二スイッチ素子Tr2のW/L比は他のスイッチ素子と同じにしつつ、第二スイッチ素子Tr2の移動度を他のスイッチ素子よりも低くなるように、製造プロセスで調整しても良い。
【0260】
(2)また、上記実施の形態では、第二スイッチ素子Tr2を抵抗部として用いたが、これに限るものではない。抵抗部は、第二スイッチ素子Tr2とは別個の抵抗素子を備えていても構わない。抵抗部は、例えば、スイッチ素子および抵抗素子の直列回路と、第二スイッチ素子Tr2とを並列に接続した構成であっても構わない。
【0261】
図21は、抵抗部の他の一例を示す回路図である。この場合、第二スイッチ素子Tr2はスイッチとしてとして動作すればよいので、オン抵抗は他のスイッチ素子と同じで良い。つまり、W/L比は他のスイッチ素子と同じで良い。また、直列回路のスイッチ素子がトランジスタである場合は、制御部20は、当該スイッチ素子がスイッチとしてみなして良いほど、十分低抵抗で動作するように当該スイッチ素子のゲート電極の電圧を制御しても構わない。
【0262】
また、
図22および
図23は、抵抗部の他の一例を示す回路図である。
図22および
図23では、第二スイッチ素子Tr2に抵抗素子が直接に接続されている。
【0263】
(3)例えば、上記実施の形態では、表示画素PXは、5つのトランジスタを備えていたが、3つのトランジスタ(駆動トランジスタTrd、第一スイッチ素子Tr1および第二スイッチ素子Tr2)を備える構成であっても良い。この場合、駆動トランジスタTrdのドレイン電極と電源線VTFTとの間の導通および非導通を切り替える第四スイッチ素子が存在しないので、第一初期化期間は存在せず、第二初期化期間のみとなる。しかしながら、駆動トランジスタTrdのソース電極の電圧を、駆動トランジスタTrdの閾値電圧Vthの変動量ΔVthに応じて調整するという、本発明の本質的な効果については何ら影響を与えるものではない。本発明の効果を得るためには、容量素子の第二電極と発光素子のアノード電極との接続点から、電源線までの電流経路上に抵抗部を有すればよく、4あるいは6以上のトランジスタを備える構成であっても構わない。
【0264】
(4)また、複数の表示画素PXで、抵抗部を共有しても構わない。
【0265】
図24は、2つの表示画素PXで1つの抵抗部を共有する場合の例を示す回路図である。
図24では、表示画素PX1の第二スイッチ素子Tr2の一端と、表示画素PX2の第二スイッチ素子Tr2の一端とが、スイッチ素子TrBの一端に接続されている。
図24に示す変形例では、表示画素PX1およびPX2の第二スイッチ素子Tr2をスイッチとして動作させ、スイッチ素子TrBを抵抗部として動作させる。具体的には、第二スイッチ素子Tr2は、第一スイッチ素子Tr1と同じオン抵抗および同じW/L比となるようにし、スイッチ素子TrBは、第一スイッチ素子Tr1および第二スイッチ素子Tr2よりも高いオン抵抗となるように、W/L比を小さくする。
【0266】
ここで、第二初期化期間中にスイッチ素子TrBに流れる貫通電流は、1サブ画素毎に抵抗部を設けた場合に対して約2倍となる。従って、初期化期間における駆動トランジスタのソース電極の電圧は、VTFT−(VINI+Ron×2×Id)となり、上記実施の形態に対して閾値電圧補償期間の開始時における駆動トランジスタのソース電極の電圧変動量は、約2倍となる。言い換えると、目標とする∂Vgs/∂Vthを実現するためのRon抵抗が、上記実施の形態に比べて約1/2となり、抵抗部の面積そのものを半分に縮小することができる。つまり、2つの表示画素PXで1つの抵抗部を共有する場合、上記の実施の形態に比べて、1サブ画素あたりのレイアウトサイズの増加量を約1/4に抑えることが出来る。
【0267】
これによって、抵抗部を複数画素で共有することで、1サブ画素あたりのレイアウトサイズの増加量を抑制するだけでなく、抵抗部自体の面積も縮小できるので、より高精細なパネルを設計することが可能となる。
【0268】
(5)また、上記実施の形態では、第一初期化期間および第二初期化期間において、第二スイッチ素子Tr2のゲート電極に印加される電圧が同じ値である場合を例に説明したが、これに限るものではない。
【0269】
図25は、有機ELディスプレイ10の信号波形の他の一例を示す回路図である。
図25に示す例では、第一初期化期間では、スイッチとしてできるだけ低抵抗で動作させるため、他のスイッチ素子のゲート電極と同じレベルの電圧がゲート電極に印加されている。これにより、第二スイッチ素子Tr2のオン抵抗が第二初期化期間に比べて大きくなっている。これに対し、第二初期化期間では、抵抗として動作させるため、第一初期化期間よりも小さい電圧が第二スイッチ素子Tr2のゲート電極に印加されている。第二スイッチ素子Tr2のオン抵抗が第一初期化期間に比べて小さくなっている。