(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405611
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物処分施設及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
G21F9/36 541M
G21F9/36 541D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-206969(P2013-206969)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-72154(P2015-72154A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】森 拓雄
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−061596(JP,A)
【文献】
特開2008−073572(JP,A)
【文献】
特開2006−214788(JP,A)
【文献】
特開2002−048900(JP,A)
【文献】
特開2002−214394(JP,A)
【文献】
特開平10−153696(JP,A)
【文献】
特開平10−082893(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0247396(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21F 9/34
B09B 1/00−5/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設であって、
前記地層内に構築され、所定の間隔をおいて定置された複数の前記廃棄体の周辺に緩衝材による人工バリアが構築されている処分坑道と、
該処分坑道と所定の間隔おいて前記地層内に構築された作業坑道と、
前記作業坑道と前記処分坑道における複数の前記廃棄体のそれぞれの定置位置とをそれぞれ接続して前記地層内に所定の間隔をおいて複数構築され、前記作業坑道から前記処分坑道への前記廃棄体の定置に用いられた後、埋め戻し材によって埋め戻された廃棄体定置孔とを具備することを特徴とする放射性廃棄物処分施設。
【請求項2】
放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設であって、
前記地層内に構築され、定置された前記廃棄体の周辺に緩衝材による人工バリアが構築されている処分坑道と、
該処分坑道と所定の間隔おいて前記地層内に構築された作業坑道と、
前記作業坑道と前記処分坑道とを接続して前記地層内に構築され、前記作業坑道から前記処分坑道への前記廃棄体の定置に用いられた後、埋め戻し材によって埋め戻された廃棄体定置孔とを具備し、
前記処分坑道と、前記作業坑道とは、平行に構築されていることを特徴とする放射性廃棄物処分施設。
【請求項3】
放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設であって、
前記地層内に構築され、定置された前記廃棄体の周辺に緩衝材による人工バリアが構築されている処分坑道と、
該処分坑道と所定の間隔おいて前記地層内に構築された作業坑道と、
前記作業坑道と前記処分坑道とを接続して前記地層内に構築され、前記作業坑道から前記処分坑道への前記廃棄体の定置に用いられた後、埋め戻し材によって埋め戻された廃棄体定置孔とを具備し、
前記廃棄体定置孔は、断面が前記処分坑道の断面積よりも小さく構築されていることを特徴とする放射性廃棄物処分施設。
【請求項4】
放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設の施工方法であって、
前記廃棄体を定置するための処分坑道と当該処分坑道への前記廃棄体の定置作業を行うための作業坑道とを前記地層内に所定の間隔をおいて構築する坑道構築工程と、
前記廃棄体の定置前に前記処分坑道内に緩衝材を充填して人工バリアを構築する人工バリア構築工程と、
前記作業坑道と前記処分坑道とを接続する廃棄体定置孔を構築する廃棄体定置孔構築工程と、
前記人工バリアが構築された前記処分坑道に前記廃棄体定置孔を通して前記作業坑道から前記廃棄体を定置する廃棄体定置工程と、
前記廃棄体の前記処分坑道への定置後に前記廃棄体定置孔を埋め戻し材で埋め戻す閉塞工程とを有することを特徴とする放射性廃棄物処分施設の施工方法。
【請求項5】
前記人工バリア構築工程では、前記廃棄体と同形状のダミー体を埋め込んで緩衝材を充填することを特徴とする請求項4記載の放射性廃棄物処分施設の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電等で生じた放射性廃棄物を地層処分する放射性廃棄物処分施設及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電等で生じた廃棄物や、原子力発電で生じた使用済み核燃料を再処理する際に発生する廃液等は、深い安定した地層中に埋設処分する計画になっている。放射性廃棄物の地層中への埋設は、放射性廃棄物をガラス原料と共に溶かし込みガラス固化体として安定化処理し、さらにこのガラス固化体を密閉容器(オーバーパック)内に密閉収納した廃棄体として行われる。そして、廃棄体の周りには、ベントナイトあるいはベントナイト混合土で人工バリア(緩衝材)を構築し、この人工バリアと天然バリア(岩盤)とで放射性物質を封じ込める(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
人工バリア(緩衝材)の構築には、以下に示すいくつかの方式が提案されている。
1.ブロック方式
廃棄体を処分坑道に定置した後、圧縮成型したベントナイトブロック人工バリア(緩衝材)として廃棄体の周りに輸送して定置する。
2.プレアセンブル方式
人工バリア(緩衝材)と廃棄体とを全て地上でパッケージ化して地下に輸送し、定置する。
3.原位置締め固め方式
廃棄体を処分坑道に定置した後、粉体のベントナイトを人工バリア(緩衝材)として廃棄体の周りに充填し、原位置で締め固める。
4.ペレット充填方式
廃棄体を処分坑道に定置した後、粒状(ペレット)ベントナイトを人工バリア(緩衝材)として廃棄体の周りに充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−294698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術において、ブロック方式、原位置締め固め方式及びペレット充填方式では、廃棄体を処分坑道に定置した後に人工バリア(緩衝材)を構築する必要があるため、放射線のために人が近づけず、遠隔操作で人工バリア(緩衝材)を構築しなければならず、高度で且つ信頼性の高い機械技術が必要であった。
また、ブロック方式及びプレアセンブル方式では、廃棄体を定置する処分坑道の壁面、すなわち天然バリア(岩盤)と人工バリア(緩衝材)との間に隙間が発生し、この隙間がバリアとしての弱点となってしまう。さらに、原位置締め固め方式は、施工時に廃棄体を痛める危険があり、ペレット充填方式は、遮断に必要な十分な密度が得られない虞がある。
また、従来技術では、処分坑道には、隣接する坑道や処分坑道自体を用いて廃棄体を定置しているため、処分坑道と共に、隣接する坑道も埋め戻されるのが一般的であり、一旦定置した廃棄体を再び取り出すことは困難であった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、処分坑道への廃棄体の定置前に、有人で処分坑道内に人工バリア(緩衝材)の構築作業を行うことができると共に、廃棄体の再度の取り出しを容易に行うことができる放射性廃棄物処分施設及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射性廃棄物処分施設は、放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設であって、前記地層内に構築され、
所定の間隔をおいて定置された
複数の前記廃棄体の周辺に緩衝材による人工バリアが構築されている処分坑道と、該処分坑道と所定の間隔おいて前記地層内に構築された作業坑道と、前記作業坑道と前記処分坑道
における複数の前記廃棄体のそれぞれの定置位置とを
それぞれ接続して前記地層内に所定の間隔をおいて複数構築され、前記作業坑道から前記処分坑道への前記廃棄体の定置に用いられた後、埋め戻し材によって埋め戻された廃棄体定置孔とを具備することを特徴とする。
また、本発明の放射性廃棄物処分施設は、放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設であって、前記地層内に構築され、定置された前記廃棄体の周辺に緩衝材による人工バリアが構築されている処分坑道と、該処分坑道と所定の間隔おいて前記地層内に構築された作業坑道と、前記作業坑道と前記処分坑道とを接続して前記地層内に構築され、前記作業坑道から前記処分坑道への前記廃棄体の定置に用いられた後、埋め戻し材によって埋め戻された廃棄体定置孔とを具備し、前記処分坑道と、前記作業坑道とは、平行に構築されていることを特徴とする。
また、本発明の放射性廃棄物処分施設は、放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設であって、前記地層内に構築され、定置された前記廃棄体の周辺に緩衝材による人工バリアが構築されている処分坑道と、該処分坑道と所定の間隔おいて前記地層内に構築された作業坑道と、前記作業坑道と前記処分坑道とを接続して前記地層内に構築され、前記作業坑道から前記処分坑道への前記廃棄体の定置に用いられた後、埋め戻し材によって埋め戻された廃棄体定置孔とを具備し、前記廃棄体定置孔は、断面が前記処分坑道の断面積よりも小さく構築されていることを特徴とする。
また、本発明の放射性廃棄物処分施設の施工方法は、放射性廃棄物を廃棄体として地層に処分する放射性廃棄物処分施設の施工方法であって、前記廃棄体を定置するための処分坑道と当該処分坑道への前記廃棄体の定置作業を行うための作業坑道とを前記地層内に所定の間隔をおいて構築する坑道構築工程と、前記廃棄体の定置前に前記処分坑道内に緩衝材を充填して人工バリアを構築する人工バリア構築工程と、前記作業坑道と前記処分坑道とを接続する廃棄体定置孔を構築する廃棄体定置孔構築工程と、前記人工バリアが構築された前記処分坑道に前記廃棄体定置孔を通して前記作業坑道から前記廃棄体を定置する廃棄体定置工程と、前記廃棄体の前記処分坑道への定置後に前記廃棄体定置孔を埋め戻し材で埋め戻す閉塞工程とを有することを特徴とする。
さらに、本発明の放射性廃棄物処分施設の施工方法は、前記人工バリア構築工程では、前記廃棄体と同形状のダミー体を埋め込んで緩衝材を充填しても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処分坑道内の人工バリアの構築を廃棄体の定置前に行うことができるため、充填する緩衝材と地層との隙間の手当てを、有人が近傍で行うことができ、確実な人工バリアを構築することができると共に、廃棄体の再度の取り出しを容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る放射性廃棄物処分施設の実施形態の構成を示す斜視図及び断面図である。
【
図2】
図1に示す作業坑道に対する処分坑道の配置例を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る放射性廃棄物処分施設の施工方法の坑道構築工程を説明する説明図である。
【
図4】本発明に係る放射性廃棄物処分施設の施工方法の人工バリア構築工程及び廃棄体定置孔構築工程を説明する説明図である。
【
図5】本発明に係る放射性廃棄物処分施設の施工方法の廃棄体定置工程を説明する説明図である。
【
図6】本発明に係る放射性廃棄物処分施設の他の実施形態の構成を示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
本実施形態の放射性廃棄物処分施設は、
図1を参照すると、放射性物質を封じ込める天然バリアとして機能する安定した岩盤5中に構築され、放射性破棄物が廃棄体1として納められる処分坑道2と、処分坑道2に対して所定の間隔をおいて平行に構築された作業坑道3と、作業坑道3と処分坑道2とを接続する廃棄体定置孔4とを備えている。そして、処分坑道2内には、放射性物質を封じ込める人工バリアとして機能する緩衝材21が充填されていると共に、廃棄体定置孔4は、埋め戻し材41によって埋め戻されている。なお、
図1(a)において、z軸が鉛直方向、xy平面が水平面である。また、
図1(b)は、処分坑道2、作業坑道3及び廃棄体定置孔4をyz平面で切断した断面図である。
【0012】
処分坑道2は、x軸方向、すなわち水平に構築されている。処分坑道2には、複数の廃棄体1が所定の間隔をおいて定置され、処分坑道2内に充填されている緩衝材21(人工バリア)と、岩盤5(天然バリア)とで放射性物質を封じ込める構成になっている。なお、廃棄体1は、例えば、放射性廃棄物をガラス原料と共に溶かし込んだガラス固化体を、さらに円筒状の密閉容器(オーバーパック)内に密閉収納したものである。また、処分坑道2は、廃棄体定置孔4よりも大きく、且つ緩衝材21の充填によって構築される人工バリアが必要な透水係数が確保できる外径を有している。
【0013】
作業坑道3は、x軸方向、すなわち水平に処分坑道2と平行して構築されている。作業坑道3は、廃棄体定置孔4の構築及び埋め戻し作業や、処分坑道2への廃棄体1の定置作業や処分坑道2からの廃棄体1の搬出作業を行うためのものであり、これらの作業に用いる各種作業機械の通行や設置が可能な大きさに構築されている。
【0014】
また、処分坑道2と作業坑道3とは、1対1である必要はなく、
図2に示すように、1本の作業坑道3に対して複数本の処分坑道2、2a、2bを構築するようにしても良い。また、処分坑道2aのように、作業坑道3に対して鉛直方向(z軸方向)の異なる位置に構築するようにしても良い。
【0015】
廃棄体定置孔4はy軸方向、すなわち処分坑道2及び作業坑道3と直交する方向に所定の間隔をおいて複数構築されている。廃棄体定置孔4は、作業坑道3から処分坑道2に廃棄体1を定置する際に用いられる孔であり、処分坑道2における廃棄体の定置位置に対応してそれぞれ構築される。廃棄体定置孔4は、廃棄体1を作業坑道3から処分坑道2に定置した後は、埋め戻し材41によって埋め戻される。従って、廃棄体定置孔4の断面は、廃棄体1が通り抜け可能で有れば良く、構築及び埋め戻しの作業量を考慮すると、処分坑道2の断面積よりも小さく、できるだけ小さい断面積であることが好ましい。なお、本実施形態のように、処分坑道2と作業坑道3とが平行に構築されている場合には、処分坑道2と作業坑道3とを接続する廃棄体定置孔4は、全て同じ方向及び長さに構築すれば良く、専用の作業機械の製作も容易であり、作業効率を向上させることができる。
【0016】
緩衝材21及び埋め戻し材41としては、例えば、ベントナイトあるいはベントナイト混合土が用いることができる。ベントナイトは、透水係数が小さいこと等の理由により、緩衝材21及び埋め戻し材41として好適に使用することができる。また、緩衝材21及び埋め戻し材41として、ベントナイトを含む土質系材料を用いると、水と触れ合うと膨潤し、内圧が高まることで水の侵入を抑制する効果が期待される。
【0017】
次に本実施形態の放射性廃棄物処分施設の施工方法について
図3乃至
図5を参照して詳細に説明する。
まず、
図3に示すように、地層処分を行う安定した岩盤5を掘削することで、処分坑道2と作業坑道3とを平行に構築する坑道構築工程を実行する。この坑道構築工程は、廃棄体1の搬入前に行うことができるため、有人で行うことができる。なお、
図1及び
図3に示す例では、処分坑道2及び作業坑道3の断面が円形に構成されているが、処分坑道2及び作業坑道3の断面は馬蹄形や矩形等の他の形状に構成しても良い。また、処分坑道2及び作業坑道3は、水平方向に構築することで後工程の作業効率を向上させることができるが、処分坑道2及び作業坑道3を傾斜させて構築するようにしても良い。さらに、処分坑道2と作業坑道3とを平行に構築することで、後工程の作業効率を向上させることができるが、処分坑道2と作業坑道3とを必ずしも平行に構築しなくても、略平行であれば良い。
【0018】
作業坑道3と処分坑道2との間には、天然バリアである岩盤5が介在している。従って、作業坑道3と処分坑道2との間隔によって、処分坑道2に定置された廃棄体1から作業坑道3に到達する放射線量を制御することができる。例えば、廃棄体1の放射能レベルが高い場合には、作業坑道3と処分坑道2との間隔を広く取ることで、作業坑道3に到達する放射線量を容易に低減させることが可能になる。
【0019】
次に、
図4に示すように、処分坑道2内に緩衝材21を充填して人工バリアを構築する人工バリア構築工程と、作業坑道3から処分坑道2に向けて岩盤5を掘削することで、作業坑道3と処分坑道2とを接続する廃棄体定置孔4を構築する廃棄体定置孔構築工程とを実行する。人工バリア構築工程と廃棄体定置孔構築工程とは、どちらを先に実行しても良く、並行して実行するようにしても良い。
【0020】
処分坑道2内への緩衝材21の充填方式には、限定がなく、ブロック方式、原位置締め固め方式、ペレット充填方式のいずれの方式で行っても良い。人工バリア構築工程は、廃棄体1の搬入前に行う。従って、人工バリア構築工程において、充填する緩衝材21と天然バリア(岩盤5)との隙間の手当てを、有人が近傍で行うことができ、確実な人工バリアを構築することができる。
【0021】
また、廃棄体定置孔構築工程も、廃棄体1の搬入前に行う。従って、有人で行うことができ、既存の作業機械を用いて効率良く作業を行うことが可能になる。さらに、廃棄体定置孔構築工程において、
図4に示すように、廃棄体1を定置する定置空間Aを、処分坑道2内に充填された緩衝材21内に形成しておく。すなわち、廃棄体1の定置は、遠隔で行う必要があるが、廃棄体1を定置する定置空間Aを予め形成しておくことで、廃棄体1の定置作業を容易に行うことができる。
【0022】
さらに、人工バリア構築工程において、廃棄体1と同形状のダミー体を埋め込んで緩衝材21を充填するようにしても良い。この場合には、廃棄体定置孔構築工程において、ダミー体を抜き出すだけで、廃棄体1を定置する定置空間Aを簡単に形成することが可能になる。
【0023】
次に、
図5に示すように、作業坑道3から廃棄体定置孔4を介して処分坑道2内に形成された定置空間Aに廃棄体1を定置する廃棄体定置工程を実行する。処分坑道2内に形成された定置空間Aへの廃棄体1の定置は、例えば、
図5(b)に示すように、廃棄体1を支持し、廃棄体定置孔4を通して定置空間Aまで搬送可能なアーム61を備えた作業機械6を用いて行うことができる。なお、廃棄体定置工程は、廃棄体1を取り扱うため、有人で行うことができず、作業機械6は、無線で操縦可能なものが用いられる。
【0024】
次に、作業坑道3から廃棄体定置孔4を通して廃棄体1の周辺に緩衝材21を充填することで、廃棄体1の廃棄体定置孔4側に人工バリアを構築するとともに、廃棄体定置孔4を埋め戻し材41で閉塞する閉塞工程を実行する。閉塞工程を実行することで、
図1に示す状態になる。閉塞工程は、廃棄体1を定置した後の作業であるため、有人で行うことができず、無線で操縦可能な図示しない作業機械を用いて行われる。
【0025】
廃棄体定置孔4を閉塞した後は、処分坑道2と作業坑道3との間の天然バリア(岩盤5)によって、作業坑道3内の放射線量が低減されるため、作業坑道3を埋め戻す必要がない。換言すると、作業坑道3内の放射線量が問題のないレベルまで低減されるように、処分坑道2と作業坑道3との間隔を設定すると良い。これにより、作業坑道3から処分坑道2内に定置された廃棄体1の状態の検査等の維持管理を行うことができると共に、作業坑道3を用いることで廃棄体1の再度の取り出しを容易に行うことができる。また、処分坑道2内に定置された複数の廃棄体1の中から選択的に取り出すことも容易である。
【0026】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、円筒状である廃棄体1の軸を、処分坑道2の構築方向に対して直交する向きで定置する例について説明したが、
図6に示すように、円筒状である廃棄体1の軸を処分坑道2aの構築方向に定置するようにしても良い。廃棄体1の形状は、通常、直径よりも軸方向の長さの方が長く設定されている。廃棄体1の軸を処分坑道2の構築方向に定置する場合には、廃棄体1の軸を処分坑道2aの構築方向に対して直交する向きで定置する場合に比べて、処分坑道2aの断面積を小さくすることができる。しかし、廃棄体定置孔4aの断面積は、大きく設定する必要があると共に、処分坑道2aに廃棄体1を定置する間隔を広くとる必要がある。従って、岩盤5の状態等にも左右されるが、円筒状である廃棄体1の軸を、処分坑道2の構築方向に対して直交する向きで定置する方が有効であると考えられる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態は、放射性廃棄物を廃棄体1として天然バリアである岩盤5(地層)に処分する放射性廃棄物処分施設であって、岩盤5内に構築され、定置された廃棄体1の周辺に緩衝材21による人工バリアが構築されている処分坑道2と、処分坑道2と所定の間隔おいて岩盤5内に構築された作業坑道3と、作業坑道3と処分坑道2とを接続して岩盤5内に構築され、作業坑道3から処分坑道2への廃棄体1の定置に用いられた後、埋め戻し材41によって埋め戻された廃棄体定置孔4とを備えている。
この構成により、処分坑道2内の人工バリアの構築を廃棄体1の定置前に行うことができるため、充填する緩衝材21と天然バリア(岩盤5)との隙間の手当てを、有人が近傍で行うことができ、確実な人工バリアを構築することができる。また、処分坑道2と作業坑道3との間の岩盤5(天然バリア)によって、作業坑道3を埋め戻す必要がない。これにより、作業坑道3から処分坑道2内に定置された廃棄体1の状態の検査等の維持管理を行うことができると共に、作業坑道3を用いることで廃棄体1の再度の取り出しを容易に行うことができる。
【0028】
さらに、本実施形態において、処分坑道2と、作業坑道3とは、平行に構築されている。
この構成により、処分坑道2に定置された廃棄体は、作業坑道3から同じ方向で且つ同じ距離をあるため、維持管理や再度の取り出しを容易に行うことができる。
【0029】
さらに、本実施形態において、廃棄体定置孔4は、断面が処分坑道2の断面積よりも小さく構築されている。
この構成により、処分坑道2の断面は廃棄体1のサイズと廃棄体1の周辺に緩衝材21の充填によって構築される人工バリアを包括したものが必要であるのに対し、廃棄体定置孔4の断面は廃棄体が通り抜け可能であれば良く、廃棄体定置孔4によるバリア機能の損失を少なくすることができ、処分坑道2と作業坑道3との間の岩盤5(天然バリア)を有効に活用することができる。
【0030】
また、本実施形態は、放射性廃棄物を廃棄体1として天然バリアである岩盤5(地層)に処分する放射性廃棄物処分施設の施工方法であって、廃棄体1を定置するための処分坑道2と、処分坑道2への廃棄体1の定置作業を行うための作業坑道3とを岩盤5内に所定の間隔をおいて構築する坑道構築工程と、廃棄体1の定置前に処分坑道2内に緩衝材21を充填して人工バリアを構築する人工バリア構築工程と、作業坑道3と処分坑道2とを接続する廃棄体定置孔4を構築する廃棄体定置孔構築工程と、人工バリアが構築された処分坑道2に廃棄体定置孔4を通して作業坑道3から廃棄体1を定置する廃棄体定置工程と、廃棄体1の処分坑道2への定置後に廃棄体定置孔4を埋め戻し材41で埋め戻す閉塞工程とを有している。
この構成により、人工バリア構築工程において、充填する緩衝材21と天然バリア(岩盤5)との隙間の手当てを、有人が近傍で行うことができ、確実な人工バリアを構築することができる。
【0031】
さらに、本実施形態において、人工バリア構築工程では、廃棄体1と同形状のダミー体を埋め込んで緩衝材41を充填する。
この構成により、廃棄体定置孔構築工程において、ダミー体を抜き出すだけで、廃棄体1を定置する定置空間Aを簡単に形成することが可能になる。
【0032】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0033】
1 廃棄体
2、2a、2b 処分坑道
3 作業坑道
4、4a 廃棄体定置孔
5 岩盤
6 作業機械
21 緩衝材
41 埋め戻し材
61 アーム
A 定置空間