【実施例】
【0068】
[A. 高分子化合物の合成]
[実施例1−1: ポリ(メチン)の側鎖にホスホン酸エステルが直接結合している高分子化合物の合成(1)]
以下の手順に従い、ジアゾモノマーの合成と、遷移金属錯体による重合を行った。次の(11.1)式に、その合成スキームを示す。
【化12】
【0069】
[1. 粗生成物(1)]
窒素雰囲気下、KI:6.40g(38.6mmol)とクロロアセトン:2.9mL(36mmol)をアセトン:20mLとアセトニトリル:20mLの溶液とした。そこに室温で、トリエチルホスフェート:6.0mL(35mmol)のアセトン:10mLとアセトニトリル:10mLの溶液を30minかけてゆっくりと滴下した。
滴下後、反応混合物を室温で14h攪拌した後、ガラスフィルター上のセライトで濾過し、溶液を留去して、粗生成物(1)を得た。これを精製することなく、そのまま次の反応に用いた。粗収率=100%(粗収量=7.1g)。
【0070】
[2. 生成物(2)]
窒素雰囲気下、ヘキサンで洗浄したNaOH:1.0g(42mmol)をトルエン:20mL中の懸濁液とした。これを0℃に冷却し、粗生成物(1):7.1g(37mmol)をシリンジを用い、10minかけてゆっくりと滴下した。そこに、滴下漏斗からMeSO
2N
3(メシルアジド):4.9g(40mmol)のTHF(テトラヒドロフラン):10mLの溶液を20minかけて滴下した。反応混合物を0℃で1h攪拌後、室温で14h攪拌した。
【0071】
反応混合物をガラスフィルター上のセライトで濾過し、セライトをヘキサンとトルエンで洗浄した。濾液から揮発成分を減圧下で留去して得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、シリカゲルのショートカラムに通した。溶媒を留去後、リサイクルGPC(溶媒=クロロホルム)で精製し、生成物(2)を収率40%(収量3.2g)で得た。
1H NMR:δ4.24−4.18(m、4H、OCH
2)、2.29(s、3H、CH
3C(=O)−)、1.39(t、J=7.2Hz、6H、OCH
2CH
3)
31P NMR:δ11.1
【0072】
[3. 生成物(3): ジアゾモノマー]
窒素雰囲気下、生成物(2):1.57g(7.17mmol)のMeOH(20mL)溶液にゆっくりとEt
3N:1.3mL(9.26mmol)を滴下した。反応混合物を室温で15h攪拌した。揮発成分を減圧下で留去した後、残渣を酢酸エチルに溶解してシリカゲルのショートカラムに通した。溶媒を減圧下で留去した後、生成物(3)を収率95%(収量2.5g)で得た。
1H NMR:δ4.17−4.13(m、4H、OCH
2)、3.78(d、J=5.6Hz、1H、H−C(=N
2))、1.36(t、J=7.2Hz、6H、OCH
2CH
3)
31P NMR:δ19.2
【0073】
[4. 生成物(4): ポリ(メチン)]
窒素雰囲気下、(π−allylPdCl)
2:10.3mg(0.0283mmol)をTHF:5mLに溶解し、−78℃に冷却した。そこに、生成物(3):0.502g(2.82mmol)のTHF:5mL溶液をシリンジでゆっくりと滴下した。その後、徐々に室温まで昇温し、14h攪拌した。揮発成分を減圧下で留去した後、1N HCl:10mL、1N HCl/MeOH:10mL、クロロホルム:20mLを加え、分液漏斗で有機層を分離した。クロロホルムを減圧留去した後、残渣をクロロホルムに溶解し、リサイクルGPCにより精製し、収率4.3%(収量18.3)で生成物(4)を得た。
1H NMR:δ4.7−3.9(br、4H、OCH
2)、1.6−1.1(br、6H、OCH
2CH
3)
Mn=360,Mw/Mn=1.74
【0074】
[実施例1−2: ポリ(メチン)の側鎖にホスホン酸エステルが直接結合している高分子化合物の合成(2)]
以下の手順に従い、ビニルモノマーの合成と、ラジカル重合を行った。次の(11.2)式に、その合成スキームを示す。
【化13】
【0075】
[1. ビニルモノマー(5)]
窒素雰囲気下で、trans−1,2−ジクロロエチレン:8.4g(0.09mmol)、トリエチルホスフェート:43g(0.26mol)、NiCl
2:0.39g(2.7mmol)を100mLのオートクレーブに入れ、180℃、6時間加熱した。反応後、未反応の原料をエバポレーターで留去した後、残渣を真空下で分留(127℃、3.6Pa)し、ビニルモノマー(5)を収量17g、収率64%で得た。
1H NMR:δ6.79(t、2H、vinyl)、4.13(m、8H、OCH
2)、1.35(t、12H、OCH
2CH
3)
【0076】
[2. 生成物(6): ポリ(メチン)]
窒素雰囲気下で、ビニルモノマー(5)を5g(0.017mol)、ジtert−ブチルパーオキサイド(DTBPO):0.15mL(0.8mmol)を50mLのナスフラスコに入れ、100℃、16時間加熱した。重合反応後、エタノールにて透析(分画分子量:1000)による精製を行い、生成物(6)を収量2.5g、収率51%で得た。
1H NMR:δ4.3−3.9(br、4H、OCH
2)、1.4−1.2(br、6H、OCH
2CH
3)
【0077】
[実施例1−3: ポリ(メチン)の側鎖にスルホン酸エステルが直接結合している高分子化合物の合成(1)]
以下の手順に従い、ジアゾモノマーの合成と、遷移金属錯体による重合を行った。次の(11.3)式に、その合成スキームを示す。
【化14】
【0078】
[1. 生成物(7)]
窒素雰囲気下でシュレンクにメタンスルホニルクロリド:2.0mL(28.1mmol)、THF:20mL、イソプロパノール:3.2mL(42.2mmol)を加えて、0℃で攪拌した。トリエチルアミン:7.8mL(56.0mmol)を0℃で攪拌しながら加えて、1時間反応した。H
2Oでクエンチ後、エーテルで抽出し、MgSO
4で脱水後、溶媒を除去し、生成物(7)を収率81.4%(収量3.16g)で得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ4.96(septet、J=6.4Hz、1H、−OCH)、3.00(s、3H、CH
3−S)、1.43(d、J=7.6Hz、6H、−CH[CH
3]
2)。
【0079】
[2. 生成物(8): ジアゾモノマー]
滴下漏斗をつけた300mL三口ナスフラスコと、100mLナスフラスコを減圧後、窒素雰囲気にした。三口ナスフラスコに窒素下で生成物(7)(2.0g、0.015mol)とTHF:50mLを加えて、−78℃にした。
【0080】
次に、100mLナスフラスコにヘキサン:18mLを加えて0℃にした。その100mLナスフラスコに、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン:3.7mL(0.017mol)を加えて、10分攪拌した。さらにn−BuLi:10.4mL(0.019mol)を加えて、10分攪拌し、その反応溶液を滴下漏斗に移し、−78℃で15分かけて滴下し30分攪拌した。
【0081】
次に、2,2,2−トリフルオロエチルトリフルオロアセテート:2.6mL(0.019mol)を素早く加えた(5秒以内)。室温で10分攪拌し、HCl:20mLでクエンチし、ジエチルエーテルで有機層を抽出し、NaCl飽和水溶液で洗浄した。これをMgSO
4で脱水し、溶媒を除去した。
【0082】
次に、滴下漏斗をつけた300mL三口ナスフラスコを別途用意し、窒素雰囲気にした。そこに先程の反応物とアセトニトリル:30mLを加えた。次に、アセトニトリル:20mLに溶かしたメタンスルホニルアジド:3.0g(0.024mol)を滴下漏斗に移して滴下し、Et
3N:3.4mL(0.024mol)、H
2O:0.28mL(0.016mol)を加えて、6時間30分攪拌した。その後、溶媒を除去し、ショートカラム(シリカゲル)に通した後、CHCl
3を用いてリサイクルGPCにより精製し、生成物(8)を収率13.1%(収量0.32g)で得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ5.25(s、1H、N
2=CH−)、4.84(septet、J=6.0Hz、1H、−OCH)、1.44(d、J=7.6Hz、6.0H、−CH[CH
3]
2)
【0083】
[3. 生成物(9): ポリ(メチン)]
シュレンクに[IMesPd(NQ)]
2(3.6mg、3.2×10
-3mmol)を加えて30分減圧し、その後窒素を充填し、窒素雰囲気下にした。[Na]
+[Ar
4B]
-(Ar=3,5−(CF
3)
2C
6H
3)(6.6mg、7.5×10
-3mmol)を窒素下で加えた後、THF:0.5mLを加えてしばらく攪拌した。そこに生成物(8)(102.5mg、0.64mmol)のTHF(2mL)溶液を加え、室温で14時間攪拌し、重合した。
【0084】
減圧下で溶媒を除去し、その後1N MeOH/HClを20mL、1N HCl水溶液を20mL、クロロホルムを20mL加えた。この溶液のクロロホルム層を分液漏斗で分離し、残った水層を20mLのクロロホルムで抽出した。このクロロホルム層を50mLの1N HCl、50mLの水で洗浄し、Na
2SO
4を用いて乾燥した(1時間)。乾燥剤をろ過して取り除き、エバポレーターにより溶媒を除去し、減圧下で溶媒を取り除くことで生成物(9)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ4.99(m、1H、−OCH)、1.43(d、J=6.0Hz、6.0H、−CH[CH
3]
2)
【0085】
[実施例2−1: ポリ(メチン)の側鎖にホスホン酸が直接結合している高分子化合物の合成(1)]
以下の手順に従い、実施例1−1の生成物(4)を加水分解することによりホスホン酸ポリ(メチン)を合成した。次の(12.1)式に、その合成スキームを示す。
【化15】
【0086】
窒素雰囲気下、生成物(4):43.8mg(モノマーユニット:0.292mmol)をジクロロメタン:1mLに溶解し、そこにトリメチルシリルブロマイド(TMSBr):0.38mL(2.94mmol)を加え、室温で24h攪拌した。揮発成分を減圧下で留去した後、残渣をMeOH:2mLに溶解し、室温で24h攪拌した。揮発成分を減圧下で留去した後、残渣を水:20mLに溶解し、ヘキサン:20mLを加えて分液漏斗で分液し、ヘキサン可溶成分を除去した。水層から水を減圧下留去して、乾燥し、生成物(10)を収率83%(収量22.7mg)で得た。
【0087】
[実施例2−2: ホスホン酸ポリ(メチン)の合成(2)]
以下の手順に従い、実施例1−2の生成物(6)を加水分解することによりホスホン酸ポリ(メチン)を合成した。次の(12.2)式に、その合成スキームを示す。
【化16】
【0088】
還流管、滴下漏斗、3方コックを取り付けた100mLの3口フラスコに、窒素雰囲気下で、上記で合成した生成物(6)(2.5g、8.4mmol)と脱水ジクロロメタン:30mL加えて溶解した。トリメチルシリルブロマイド(8.9mL、68mmol)を滴下漏斗に加え、室温で攪拌しながらゆっくりと滴下した。その後、さらに室温で2日間、40℃で16時間攪拌し、反応を行った。
その後、ジクロロメタンと未反応のトリメチルシリルブロマイドを留去し、定量的にトリメチルシリル(−Si(CH
3)
3)体を得た。得られたTMS体をアセトン・水(1:1)に溶解し、室温で17時間攪拌した。その後、透析膜(分画分子量:1000)を用いて透析(アセトン・水(1:1)→1N HClaq→H
2O)により精製することで、生成物(11)を収量0.56g、収率36%で得た。
【0089】
[実施例3: ポリ(メチン)の側鎖にホスホン酸エステルがスペーサを介して結合している高分子化合物の合成]
以下の手順に従い、ジアゾモノマーの合成と、遷移金属錯体による重合を行った。次の(13.1)式に、その合成スキームを示す。
【化17】
【0090】
[1. 生成物(12)]
窒素雰囲気下、Dean-Stark管と冷却管を付けたフラスコ中で、トリエチルホスフェート(7.0mL、41mmol)と、2−ブロモエチルアセテート(4.1mL、37mmol)を混合し、150℃で45min、170℃で60min加熱攪拌した。冷却後、減圧下で揮発性成分を除去した後、減圧蒸留により生成物(12)を無色透明の液体として収率68%(5.7g)で得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ4.34−4.27(m、2H、−OCH
2CH
2−)、4.14−4.10(m、4H、P[OCH
2CH
3]
2)、2.20−2.12(m、2H、−OCH
2CH
2P−)、2.06(s、3H、CH
3−[C=O]−O−)、1.37−1.32(t、6H、P[OCH
2CH
3]
2)
【0091】
[2. 生成物(13)]
生成物(12)(5.64g、25.2mmol)にKOHのメタノール溶液(0.049M、23mL、1.1mmol)を加え、室温で15h攪拌した。水:10mLを加えた後、ジクロロメタンで抽出して得られた粗生成物をGPCにより精製し、生成物(13)を無色透明の液体として、収率73%(3.4g)で得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ4.18−4.09(m、4H、P[OCH
2CH
3]
2)、3.96−3.86(m、2H、HOCH
2CH
2−)、2.91−2.88(t、1H、HOCH
2−)、2.10−2.02(m、2H、−CH
2CH
2P)、1.36−1.33(t、6H、P[CH
2CH
3]
2)
【0092】
[3. 生成物(14)]
窒素雰囲気下、生成物(13)(1.47g、8.08mmol)と、NaHCO
3(2.05g、24.4mmol)にアセトニトリル:40mLを加え、0℃に冷却し、10min攪拌した。その混合物に0℃でブロモアセチルブロミド(1.1mL、13mmol)を滴下し、10min攪拌した。水:40mLを加えた後、ジクロロメタンで抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄した。MgSO
4で乾燥した後、揮発成分を留去して無色透明の液体を得た。
【0093】
窒素雰囲気下、上記の操作により得られた液体と、N,N’ジトシルヒドラジン(5.51g、16.2mmol)にTHF:40mLを加え、0℃に冷却した。そこにDBU(6.1mL、4.1mmol)を8minかけて滴下し、0℃で10min攪拌した。NaHCO
3飽和水溶液を加えた後、ジエチルエーテルで抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥後、揮発成分を減圧留去した。酢酸エチルを展開溶媒とするシリカゲルショートカラムとリサイクルGPCによる精製により、生成物(14)を淡黄色液体として収率38%(0.77g)で得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ4.76(s、1H、HCN
2)、4.43−4.37(m、2H、−OCH
2CH
2P)、4.14−4.11(t、4H、J=5.6Hz、P[OCH
2CH
3]
2)、2.22−2.14(m、2H、−OCH
2CH
2P)、1.37−1.32(m、6H、P[OCH
2CH
3]
2)Anal. Calcd for C
8H
15O
5N
2P:C、38.40:H、6.00:N、11.20。Found:C、37.60:H、6.63:N、10.60
【0094】
[4. 生成物(15)]
窒素雰囲気下、シュレンク管
に(π−allylPdCl)
2(1.48mg、0.0405mmol)とTHF:1mLを入れ、−78℃に冷却した。ここにNaBPh
4(5.70mg、0.167mmol)を加え、−78℃で10min攪拌した。そこに生成物(14)(モノマー)(101mg、0.403mmol)のTHF(1mL)溶液を滴下した後、室温に昇温し14h攪拌した。HClaq.、MeOH、CH
3Clを加えた後、CHCl
3により抽出した有機層をNa
2SO
4により乾燥した。揮発成分を減圧留去して得られる残渣をリサイクルGPCにより精製し、生成物(15)を収率31%(27.8mg)で得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ4.5−4.2(br、2H、−OCH
2CH
2P)、4.2−4.0(br、4H、P[OCH
2CH
3]
2)、3.6−2.8(br、1H、−CHC(=O)−)、2.4−2.0(br、2H、−OCH
2CH
2P)、1.5−1.2(br、6H、P[OCH
2CH
3]
2)Mn=2300、Mw/Mn=1.09
【0095】
[実施例4: ポリ(メチン)の側鎖にホスホン酸がスペーサを介して結合している高分子化合物の合成]
以下の手順に従い、実施例3の生成物(15)を加水分解することによりホスホン酸ポリ(メチン)を合成した。次の(14.1)式に、その合成スキームを示す。
【化18】
【0096】
窒素雰囲気下、生成物(15)をジクロロメタンに溶解し、そのポリマー中のモノマーユニットに対して約10倍当量のTMSBrを滴下し、室温で24h攪拌した。揮発成分を減圧留去後、メタノールを加えて室温で24h攪拌した。揮発成分を減圧下で留去した後、透析により精製し、生成物(16)を得た。
【0097】
[比較例1: ポリ(フマル酸)(=カルボン酸ポリ(メチン))の合成]
以下の手順に従い、ポリフマル酸を合成した。次の(21.1)式に、その合成スキームを示す。
【化19】
【0098】
[1. 生成物(17)]
還流管、滴下漏斗、3方コックを取り付けた500mLの3口フラスコに窒素雰囲気下でカリウムt−ブトキサイド(88.7g、0.7mol)、脱水ベンゼン:180mLを加え、0℃で攪拌し、懸濁状態にした。フマル酸クロライド(45mL、0.41mol)を滴下漏斗に加え、0℃で攪拌しながらゆっくり滴下した。途中で、副生した塩により反応液の攪拌が止まってしまったため、脱水ベンゼンを120mL加えて攪拌できるようにした。
【0099】
その後、0℃で2.5時間攪拌し、室温で一晩攪拌して、反応を行った。反応溶液をろ過して塩を取り除き、ベンゼンを用いてショートカラムに通した。その後、シリカカラム(酢酸エチル/ヘキサン)で精製を行い、室温で真空乾燥を行うことで、生成物(17)を収量10g、収率11%で得た。
1H−NMR(CDCl
3):δ6.66(s、2H、vinyl)、1.5(s、18H、CH
3)
【0100】
[2. 生成物(18)]
還流管と3方コックを取り付けた50mLの2口フラスコに窒素雰囲気下で生成物(17)(8.5g、37mmol)を加え、室温で1時間真空乾燥した。そこにトルエン:1.4mLを加え、80℃に加熱し、攪拌して溶解した。そこにDTBPO(0.068mL、0.37mmol)加え、120℃で28時間攪拌して、重合反応を行った。反応後、室温に戻し、メタノールに再沈殿し、60℃で真空乾燥することにより、生成物(18)を収量4.3g、収率50%で得た。
1H−NMR(D
2O):δ3.8−2.6(br、1H、CH)、1.5(br、9H、CH
3)
【0101】
[3. 生成物(19)]
上記で得た生成物(18)(4.3g)をシャーレに入れ、200℃で2時間加熱することで側鎖のt−ブチル基をイソブテンとして分解し、生成物(19)を収量1.7g、収率79%で得た。
1H−NMR(D
2O):δ3.8−2.8(br、1H、CH)
【0102】
[実施例5: ポリ(メチン)の側鎖にカルボン酸よりpKaが低い酸(スルファミド酸)が一部直接結合している高分子化合物の合成]
以下の手順に従い、比較例1の生成物(19)を用いてスルファミド酸を含む高分子化合物を合成した。次の(15.1)式に、その合成スキームを示す。
【化20】
【0103】
[1. 生成物(20)]
還流管、滴下漏斗、3方コックを取り付けた200mLの3口フラスコに、比較例1で合成した生成物(19)(カルボン酸ポリ(メチン))を加え、1時間真空乾燥を行い、窒素雰囲気下にした。そこに脱水DMFを50mL加えて攪拌し、溶解した。さらに、滴下漏斗にSOCl
2(1.87mL、25.8mmol)を加え、室温でゆっくり滴下した。その後、26時間攪拌して反応を行い、カルボン酸を酸クロライドに変換し、生成物(20)を得た。
【0104】
[2. 生成物(21)]
別の300mLの3口フラスコに還流管、滴下漏斗、3方コックを取り付け、スルファミン酸(25.8mmol)を加え、1時間真空乾燥し、窒素雰囲気下にした。脱水CH
2Cl
2を50mL加えて、0℃で攪拌した。そこに蒸留精製したトリエチルアミン(25.5mL、0.18mol)を滴下漏斗に入れ、0℃で攪拌しながらゆっくり滴下した。しばらく攪拌すると、スルファミン酸トリエチルアミン塩が生成し、溶解した。このスルファミン酸トリエチルアミン塩のCH
2Cl
2溶液を滴下漏斗に加え、生成物(20)を合成したフラスコに0℃でゆっくり滴下した。室温で26時間攪拌して、反応を行った。
【0105】
反応後、反応液をろ過して固形物を取り除き、溶媒を留去した。得られた残渣を透析膜(分画分子量:1000)を用いて透析(1N HCl水溶液、次いで水)し、60℃で真空乾燥を行うことで生成物(21)を得た。カルボン酸ポリ(メチン)のカルボン酸の内、55%がスルファミド酸に変換した。
1H NMR(D
2O):δ3.5−2.0(br、1H、−CHC(=O)−)
【0106】
[比較例2: ポリ(ビニルホスホン酸)の合成]
50mLのナス型フラスコにビニルホスホン酸:5.9g(56mmol)と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩:0.15g(0.5mmol)とを加え、さらに脱気した水を2.1g加えて溶解した。窒素雰囲気下60℃で4時間重合を行った。重合後、重合溶液を水で希釈してから透析チューブに封入し、1N塩酸、水の順で透析を行い精製し、ポリ(ビニルホスホン酸)を収量1.4g、収率24%で得た。
1H−NMR(D
2O):δ2.7−1.1(br、2H、CH
2CH、br、1H、CH
2CH、)
【0107】
[比較例3: ポリ(アリルスルホン酸)の合成]
アリルスルホン酸ナトリウム塩:50g(0.35mol)を2口ナスフラスコに加え、窒素をバブリングして脱気した水を30mL加えて溶解した。次に、開始剤の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩:0.94g(3.5mmol)加え、窒素雰囲気下、60℃、24時間、加熱攪拌した。反応後、重合溶液を透析膜(分画分子量:1000)に封入し、1N HCl水溶液で2日間、続いて超純水で2日間透析することで、目的のポリ(アリルスルホン酸)を収量0.55g、収率1.3%で得た。
1H−NMR(D
2O):δ3.2−2.5(br、2H、CH
2SO
3H)、δ2.4−0.9(br、2H、CH
2CH、br、1H、CH
2CH、)
【0108】
[比較例4: ポリ(ビニルスルホン酸)の合成]
Polysciences製ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム)の水溶液を1N塩酸、水の順で透析し、ポリ(ビニルスルホン酸)を得た。
δ2.3−1.2(br、2H、CH
2CH)、3.9−2.7(br、1H、CH
2CH、)
【0109】
[実施例6:スルホン酸エステルがポリ(メチン)に直接結合したポリマーの合成]
[1. モノマー合成]
以下の手順に従い、スルホン酸エステルがポリ(メチン)に直接結合した高分子化合物を合成するためのモノマーを合成した。次の(16.1)式に、その合成スキームを示す。
【化21】
【0110】
シュレンクを減圧後、窒素を充填し窒素雰囲気下にした。メタンスルホニルクロリド(5.0mL、65mmol)、THF:50mL、n−ヘキサノール(9.7mL、78mmol)を加え0℃で攪拌した。トリエチルアミン:18mLを0℃で攪拌しながら加え、15min反応させた。H
2Oでクエンチ後、ジエチルエーテルで抽出しNa
2SO
4で乾燥、その後溶媒を減圧留去した。減圧留去により、メタンスルホン酸n−ヘキシル(22)が収率81%で得られた。
1H−NMR(CDCl
3、400MHz):δ0.90(t、j=6.8Hz、3H、CH
3−)、1.32(m、4H、CH
3−CH
2CH
2−)、1.41(m、2H、−CH
2CH
2CH
2O−)、1.75(m、2H、−CH
2CH
2O−)、3.00(s、3H、CH
3S)、4.23(t、J=6.8Hz、−CH
2O−)
【0111】
窒素雰囲気下、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)(4.5mL、20mmol)のヘキサン(50mL)溶液と、1.58M n−BuLiのヘキサン溶液(12.5mL、19.8mmol)を10分攪拌して、HMDSアニオンのLi塩のヘキサン溶液を調製した。窒素雰囲気下、滴下漏斗をつけた300mL三つ口ナスフラスコにメタンスルホン酸n−ヘキシル(22)(3.0g、16.7mmol)のTHF(75mL)溶液を入れ、−78℃に冷却した。滴下漏斗から、−78℃で上記のHMDSアニオンのLi塩溶液を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。
【0112】
次に、2,2,2−トリフルオロエチルトリフルオロアセテート(2.8mL、20mmol)を素早く加えた(5秒以内)。−78℃で15分攪拌後、徐々に加温しながら10分攪拌し、0.5N HCl:60mLとジエチルエーテル:30mLを加え、混合溶液が室温になるまで攪拌した(約30分)。ジエチルエーテルで有機層を抽出し、NaCl飽和水溶液で洗浄、Na
2SO
4で脱水し、溶媒を除去した。
残留物を300mL三つ口ナスフラスコに入れ、窒素雰囲気下、アセトニトリル:15mLを加えた。そこへアセトニトリル:15mLに溶かした4−アセトアミドベンゼンスルホニルアジド(4.8g、20mmol)を滴下漏斗から滴下し、さらにEt
3N(2.8mL、20mmol)、H
2O(0.30mL、16.7mmol)を加え、一晩攪拌した。
【0113】
溶媒を減圧留去した後、ジクロロメタンを加えて析出した不溶物を濾別し、濾液から溶媒を減圧留去した。残渣をジクロロメタンに溶解して、シリカゲルのショートカラムに流し込んだ。流出液から溶媒を留去した後、リサイクルGPCによる精製によりジアゾメタンスルホン酸n−ヘキシル(23)を収率15%(収量:0.53g)で得た。
1H−NMR(CDCl
3、400MHz):δ0.90(t、J=7.0Hz、3H、CH
3−)、1.33(m、4H、CH
3−CH
2CH
2−)、1.42(m、2H、−CH
2CH
2CH
2O−)、1.76(m、2H、−CH
2CH
2O−)、4.19(t、J=6.6Hz、−CH
2O−)、5.22(s、1H、H−C=N
2)
【0114】
[2. ポリマー合成]
以下の手順に従い、スルホン酸エステルがポリ(メチン)に直接結合した高分子化合物を合成した。次の(16.2)式に、その合成スキームを示す。
【化22】
【0115】
窒素雰囲気下、シュレンク管に(π−allylPdCl)
2(1.67mg、0.00913mmol)とTHP:1mLを入れ、0℃に冷却した。ここにNaBPh
4(3.4mg、0.0099mmol)を加え、0℃で10min攪拌した。
そこにモノマー(23)(94.3mg、0.458mmol)のTHP(1mL)溶液を滴下した後、室温に昇温し、14h攪拌した。HClaq.、MeOH、CHCl
3を加えた後、CHCl
3により抽出した有機層をNa
2SO
4により乾燥した。揮発成分を減圧留去して得られる残渣をリサイクルGPCにより精製し、生成物(24)を収率17%(14mg、Mn=200)で得た。
1H−NMR(CDCl
3、400MHz):δ0.90(s、CH
3−)、1.1−1.9(br、−CH
2CH
2CH
2CH
2−)、3.2−3.8(br、CH)、4.1−4.4(br、−CH
2O−)
【0116】
[実施例7:スルホン酸ポリ(メチン)の合成]
以下の手順に従い、実施例6で得られた生成物(24)をスルホン酸ポリ(メチン)(S−PM)に変換した。次の(17.1)式に、その合成スキームを示す。
【化23】
【0117】
冷却管を付けたフラスコ中に、生成物(24)(PMMA換算GPCによるMn=200、0.299g、モノマー単位=1.68mmol)、Et
2NH・HBr(0.784g、5.09mmol)を入れ、NMP:5mLに溶解した。この混合物を120℃で48h加熱攪拌した。放冷後、エーテルと水を加えて分液し、エーテル可溶部を除去した(エーテル抽出操作3回)。水層からNMPを含む溶液を減圧留去した後、110℃に加熱して減圧乾燥した。
その後、水に溶解し、ナフィオン(登録商標)ビーズ(15.86g、酸当量=10.09mmol)を加えて室温で24h攪拌した。溶媒を減圧留去後、60℃で36h減圧乾燥し、目的物(25)を0.282g(水を含む)得た(すべてスルホン酸になった理論収量=0.158g)。
1H−NMR(D
2O、400MHz):δ2.0−3.8(br、CH)
【0118】
[B. 無加湿伝導度の測定]
[1. 測定方法]
上記で合成した電解質を膜状に成形し、電解質膜の80℃、105℃における窒素雰囲気下での抵抗値をLCRメーターで測定した。得られた測定値から平面方向の無加湿伝導度を算出した。同様に、室温から90℃の垂直方向の無加湿伝導度を算出した。
また、市販のナフィオン(登録商標)112も試験に供した。
【0119】
[2. 結果]
図2に、各種電解質膜の平面方向の無加湿伝導度を示す。また、
図3に、各種電解質膜の垂直方向の無加湿伝導度を示す。
図2及び
図3より、以下のことがわかる。
(1)生成物(11)(ホスホン酸ポリ(メチン))(実施例2−2)の無加湿条件下での伝導度は、酸性度の低いカルボン酸ポリ(メチン)(比較例1)より高い。
(2)生成物(16)(実施例4)、生成物(21)(実施例5)も同様であり、無加湿条件下での伝導度は、比較例1のカルボン酸ポリ(メチン)より高い。
(3)酸基密度が高い生成物(11)(実施例2−2)の無加湿条件下での伝導度は、酸基密度が低い比較例2〜4、あるいは、ナフィオン(登録商標)112より高い。
(4)スルホン酸ポリ(メチン)(実施例7)の垂直方向の無加湿伝導度は、ポリ(ビニルホスホン酸)(比較例4)より高い。
【0120】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。