(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
  次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
  
図1に示すように、空気式防舷材の製造装置10は、成形ドラム12と、成形ドラム12を回転可能に支持する支持装置14と、制御部24とを含んで構成されている。
 
【0009】
  成形ドラム12は、円筒部1202と、円筒部1202の軸方向の一端を閉塞し円筒部1202から離れる方向に凸状を呈する曲面部1204と、円筒部1202の軸方向の他端に円筒部1202と、円筒部1202から曲面部1204と反対側に突設された支軸1208とを備えている。
  円筒部1202は、
図3に示すように、帯状の防舷材形成部材2が貼り付けられることで、空気式防舷材4の直胴部4Aを形成する部分である。
  曲面部1204は、曲面部1204に対応した形状の防舷材形成部材2が貼り付けられることで、空気式防舷材4の鏡部4Bを形成する部分である。
  
図1に示すように、支軸1208は円板状のフランジ1210を介して成形ドラム12に連結され、支軸1208の内部には、その軸方向に沿って空気路1212が形成されている。
 
【0010】
  支持装置14は、成形ドラム12の支軸1208を回転可能に支持するものであり、言い換えると、成形ドラム12をその軸線を水平方向にして、曲面部1204と反対に位置する円筒部1202の端部側から成形ドラム12を回転可能に支持するものである。
  支持装置14は、架台26と、架台用移動部28と、フレーム30と、第1軸受部32および第2軸受部34と、アクチュエータ36と、昇降部38と、回転部40と、制御部24とを含んで構成されている。
 
【0011】
  架台26は、成形ドラム12の軸線と平行する方向に延在する成形ドラム用レール1214上に走行可能に配置されている。
  架台用移動部28は、架台26に取着されたモータ2802と、モータ2802により回転される歯車機構2804とを含んで構成されている。
  歯車機構2804は、成形ドラム用レール1214に沿って設けられた不図示のラックに噛合しており、モータ2802の正逆転により、架台26は歯車機構2804、ラックを介して成形ドラム用レール1214に沿って前進、後退する。
 
【0012】
  フレーム30は、第1軸受部32および第2軸受部34を介して支軸1208を回転可能に支持している。
  第1軸受部32および第2軸受部34は、支軸1208の長手方向に間隔をおいた箇所を支持するものであり、本実施の形態では、第1軸受部32が成形ドラム12寄りの支軸1208の箇所を支持し、第2軸受部34が成形ドラム12から離れた側の支軸1208の箇所を支持している。
  また、第1軸受部32および第2軸受部34は、支軸1208の傾きを吸収する自動調芯ベアリングで構成されており、耐久性の向上が図られている。
  第1軸受部32は、成形ドラム12寄りのフレーム30の箇所に、不図示の取り付け部材を介して取着されている。
  第2軸受部34は、成形ドラム12から離れたフレーム30の箇所に、取り付け部材3402および昇降用のアクチュエータ36を介して取り付けられている。言い換えると、第2軸受部34は、取り付け部材3402を介してアクチュエータ36に連結されている。
 
【0013】
  アクチュエータ36は、第2軸受部34をフレーム30に対して上下方向に移動させるものである。
  本実施の形態では、アクチュエータ36は、電気シリンダで構成されている。
  電気シリンダは、柱状の本体3602と、本体に内蔵された不図示のモータと、本体に内蔵されモータによって正逆転される不図示の送りねじと、送りねじに不図示の雌ねじ部材を介して螺合され、送りねじの正逆転により本体の一端から軸方向に沿って出没する方向に移動されるロッド3604とを備えている。
  また、本体3602は、軸方向を上下方向に向けてフレーム30に取着され、ロッド3604の先端に取り付け部材3402が取着されている。
  したがって、第2軸受部34は、アクチュエータ36により上下方向に変位される。
  または、架台26にアクチュエータを取り付け、このアクチュエータにより第2軸受部34を上下方向に変位させても構わない。
 
【0014】
  昇降部38は、架台26に対してフレーム30を昇降させる。
  昇降部38は、架台26に取着されたモータ3802と、モータ3802により回転される歯車機構3804と、上下に延在し架台26側で回転可能に支持され歯車機構3804により回転される雄ねじ部材3806とを含んで構成されている。
  雄ねじ部材3806にフレーム30側から雌ねじ部材3808が結合され、モータ3802の正逆転によりフレーム30を昇降させることで成形ドラム12を昇降させ、防舷材形成部材2の貼付け作業が効率よく行なわれるように図られている。
 
【0015】
  回転部40は、フレーム30に支持されたモータ4002と、モータ4002により回転される歯車機構4004とを含んで構成されている。
  支軸1208に設けられた歯車4006と歯車機構4004とが連結しており、モータ4002の正逆転により歯車機構4004を介して支軸1208が正逆転し、これにより成形ドラム12が正逆転される。
 
【0016】
  制御部24は、CPU、制御プログラムなどを格納するROM、ワーキングエリアを提供するRAM、各モータ2802、3802、4002、支持装置14のアクチュエータ36に接続されるインタフェース部などがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されたものである。また、インターフェース部には、ディスプレイなどの表示部、キーボードやマウスなどの入力部が接続されている。
  CPUは、制御プログラムを実行することにより、支持装置14の架台用移動部28のモータ2802の正逆回転、昇降部38のモータ3802の正逆回転、回転部40のモータ4002の正逆回転、支持装置14のアクチュエータ36の駆動をそれぞれ制御する。
 
【0017】
  ここで、制御部24による支持装置14のアクチュエータ36の制御について説明する。
  本実施の形態では、制御部24は、成形ドラム12に貼り付けられる防舷材形成部材2の量が多くなるにつれて第2軸受部34が下方に変位するようにアクチュエータ36のモータの回転を制御して成形ドラム12の水平状態に保持する。
  より詳細に説明すると、制御部24は、後述する貼り付け工程によって成形ドラム12に貼り付けられる防舷材形成部材2によって支軸1208に傾きが発生した場合に、その傾きを補正して成形ドラム12の水平状態に保持するに足る第2軸受部34の変位量、すなわち、アクチュエータ36の変位量を特定し、その特定した変位量に基づいてアクチュエータ36を駆動する。
 
【0018】
  本実施の形態では貼り付け工程の進捗度合いと、アクチュエータ36の変位量を関連付けた補正テーブル42が制御部24のROMに設けられており、制御部24は、補正テーブル42からアクチュエータ36の変位量を特定し、その特定した変位量に基づいてアクチュエータ36を駆動する。なお、補正テーブル42は制御部24以外の箇所に設けられていてもよい。
 
【0019】
  補正テーブル42は、予め、貼り付け工程の進捗度合いと、支軸1208に発生する傾き量との実測結果に基づいて作成される。なお、支軸1208の傾き量は、支軸1208が水平線となす傾斜角度でもよいし、支軸1208の単位長さ当たりにおける上下方向の変化量でもよい。
  本実施の形態では、貼り付け工程の進捗度合いを以下の3つの期間に区分けしておく。なお、後述するように、防舷材形成部材2は、外層用ゴムシートと、複数枚の繊維補強層用ゴムシートと、内層用ゴムシートとで構成されている。
1)成形ドラム12の曲面部1204および円筒部1202に外層用ゴムシートの貼り付けを行っている間の第1期間T1。
2)外層用ゴムシートの表面全域に対する繊維補強層用ゴムシートの貼り付けを行っている第2期間T2。
3)繊維補強層用ゴムシートの表面全域に対する内層用ゴムシートの貼り付けを行っている第3期間T3。
  すなわち、成形ドラム12に貼り付けられたゴムシートの重量は、第1期間T1、第2期間T2、第3期間T3の順で次第に増大している。
 
【0020】
  補正テーブル42は、
図5に示すように、第1期間T1〜第3期間T3と、アクチュエータ36の変位量D1〜D3とが関連付けられて作成されている。
  したがって、制御部24は、貼り付け工程がなされている場合、貼り付け工程の進捗度合いが第1期間T1〜第3期間T3の何れの期間に該当するかを判定し、その判定結果に基づいて補正テーブル42からアクチュエータ36の変位量D1〜D3を特定し、その特定した変位量に基づいてアクチュエータ36を駆動する。そのため、アクチュエータ36の変位量は3段階となる。
  なお、貼り付け工程の進捗度合いは、3段階に限定されるものではなく、2段階であっても、4段階以上であってもよい。
  また、
図5に二点鎖線で示すように、貼り付け工程の進捗度合いと変位量とが連続的に変化するように補正テーブル42を構成してもよい。
 
【0021】
  また、制御部24による貼り付け工程の進捗度合いの判定は、例えば、作業者が貼り付け工程の進捗度合いに応じて制御部24のキーボードから手作業で入力する進捗度合いの情報に基づいてなされてもよいし、制御部24に接続された上位の制御装置から供給される貼り付け工程の進捗度合いの情報に基づいてなされてもよい。
  また、補正テーブル42は、製造する空気式防舷材4の仕様、すなわち、空気式防舷材4の大きさや防舷材形成部材2の種類に対応してそれぞれ作成される。したがって、制御部24は、製造する空気式防舷材4の仕様に対応した補正テーブル42を選択することで製造する空気式防舷材4の仕様に対応してアクチュエータ36の制御を行なうことができる。
 
【0022】
  次に、空気式防舷材4の製造装置10の使用方法について説明する。
  まず、成形ドラム12の曲面部1204と円筒部1202とにわたり防舷材形成部材2を貼り付ける貼り付け工程を行なう。
  貼り付け工程では、
図3に示すように、防舷材形成部材2を円筒部1202及び曲面部1204の外周面にわたって貼り付ける。
  防舷材形成部材2は、外層用ゴムシートと、複数枚の繊維補強層用ゴムシートと、内層用ゴムシートとで構成され、それらゴムシートは未加硫ゴム製である。
 
【0023】
  次に、曲面部1204と反対に位置する円筒部1202の端部に位置する防舷材形成部材2の端部を、曲面部1204側に折り返す折り返し工程を行なう。
  この折り返し工程では、まず、不図示のターンバックケースが用いられ、防舷材形成部材2の部分をターンバックケースの外側で曲面部1204側に折り返し、折り返された防舷材形成部材2の端部を曲面部1204寄りの箇所まで移動させる。
  次に、
図4に示すように、防舷材形成部材2の端部をターンバックケースの外周面から外し、ターンバックケースを成形ドラム12から離間させる。その後、鏡部の成型を行い未加硫品を得る。
 
【0024】
  ところで、上述した空気式防舷材4は、完成状態において外形寸法が例えば直径2m程度、長さ6m程度であり、外層ゴムシートと繊維補強層と内層ゴムシートとを含めた防舷材形成部材2の合計の厚さは10mm以上となる。
  したがって、上記貼り付け工程において、成形ドラム12に貼り付けられた防舷材形成部材2の量が増えるにしたがって、支軸1208に加わる荷重も増大し、この荷重の増大に伴ってフレーム30が変形していく。
  支軸1208は、フレーム30を介して架台26に片持ち支持されているため、
図2に示すように、成形ドラム12の荷重の増大に伴ってフレーム30が変形すると、支軸1208は傾く。
  支軸1208が傾くと、成形ドラム12は水平状態から傾き、成形ドラム12の円筒部1202は傾斜することになる。
  このような傾斜が生じると、成形ドラム12の円筒部1202の外周面に対する外層、繊維補強層、内層の各ゴムシートの貼り付けに際して、ゴムシートに加わる厚さ方向の荷重に偏りが生じ、ゴムシートの貼り付けを均一に行なう上で不利が生じる。また、ゴムシートの貼り付けが均一になされないと、空気式防舷材4の強度を確保し、耐久性の向上を図る上で不利となる。また、成形ドラム12が水平状態から傾くと、ターンバックケースを成型ドラム12に被せる際にターンバックケースと防舷材形成部材2とが接触するおそれがある。
  そこで、本実施の形態では、貼り付け工程において、制御部24により成形ドラム12を水平状態に保持するようにしている。
 
【0025】
  以下、
図6のフローチャートを参照して制御部24の動作について説明する。
  まず、制御部24は、貼り付け工程の進捗度合いが第1期間〜第3期間T1〜T3の何れであるかを判定する(ステップS10)。
  次に、制御部24は、第1期間〜第3期間T1〜T3の判定結果に基づいて補正テーブル42からアクチュエータ36の変位量D1〜D3の何れかを特定する(ステップS12)。
  次に、制御部24は、特定した変位量に基づいてアクチュエータ36を制御する(ステップS14)。
  これにより、第2軸受部34が特定された変位量だけ変位され、これにより支軸1208の傾きが補正され、
図3に示すように、支軸1208の水平状態が保持される(ステップS16)。
  次に、制御部24は、貼り付け工程が終了したか否かを判定し、終了していなければステップS10に移行して同様の処理を繰り返して実行し、終了していれば制御を終了する。
 
【0026】
  以上説明したように本実施の形態によれば、貼り付け工程において、成形ドラム12に貼り付けられる防舷材形成部材2の量が多くなるにつれてアクチュエータ36により第2軸受部34を上下方向に変位させ成形ドラム12の水平状態を保持するようにした。
  したがって、成形ドラム12の円筒部1202の外周面に対する防舷材形成部材2の貼り付けに際して、防舷材形成部材2に加わる厚さ方向の荷重の偏りを抑制できるため、防舷材形成部材2の貼り付けを均一に行なえ、空気式防舷材4の強度を確保し、耐久性の向上を図る上で有利となる。
  また、成形ドラム12の水平状態を保持するので、ターンバックケースを成型ドラム12に被せる際にターンバックケースと防舷材形成部材2とが接触することがなく、製造を円滑に行う上で有利となる。
 
【0027】
  また、本実施の形態では、制御部24によるアクチュエータ36の制御は、貼り付け工程の進捗度合いに基づいて補正テーブル42からアクチュエータ36の変位量を特定し、その特定した変位量に基づいてアクチュエータ36を駆動することでなされるようにした。
  したがって、簡単かつ安価に構成される補正テーブル42を用いて制御部24によるアクチュエータ36の制御を実現することができ、支持装置14のコストを抑制する上で有利となる。
  なお、制御部24によるアクチュエータ36の制御は、成形ドラム12の水平状態を保持することができればよいのであり、例えば、支軸1208の傾きを検出する検出部を設け、この検出結果に基づいて制御部24がアクチュエータ36の変位量を特定し、その特定した変位量に基づいてアクチュエータ36を駆動することで成形ドラム12の水平状態を保持するようにしてもよい。
  しかしながら、このような検出部による支軸1208の傾きの検出結果に基づいてアクチュエータ36を駆動する場合は、検出部を設ける必要があり、また、アクチュエータ36の制御処理が複雑化するため、装置の構成の簡素化、低コスト化を図る上で不利がある。
 
【0028】
  また、本実施の形態では、第2軸受部34は、第1軸受部32よりも成形ドラム12から離れた箇所に位置し、アクチュエータ36は第2軸受部34に連結されているので、第1軸受部32にアクチュエータ36を連結する場合に比較して、成形ドラム12の近傍に広いスペースを確保する上で有利となる。そのため、例えば、支軸1208に対する成形ドラム12の交換作業を効率的に行なう上で、あるいは、成形ドラム12寄りに配置すべき他の部材のレイアウトの自由度を確保する上で有利となる。
  しかしながら、成形ドラム12の近傍のスペースについて考慮する必要がなければ、第1軸受部32にアクチュエータ36を連結し、貼り付け工程において、成形ドラム12に貼り付けられる防舷材形成部材2の量が多くなるにつれてアクチュエータ36により第1軸受部32を上下方向に変位させ成形ドラム12の水平状態を保持するようにしてもよい。
 
【0029】
  また、本実施の形態では、支軸1208を第1軸受部32と第2軸受部34との2つの軸受部で支持する場合について説明したが、支軸1208を、支軸1208の長手方向に沿った複数の軸受部で支持し、貼り付け工程において、成形ドラム12に貼り付けられる防舷材形成部材2の量が多くなるにつれてアクチュエータ36により複数の軸受部のうちの少なくとも1つあるいは複数の軸受部を上下方向に変位させ成形ドラム12の水平状態を保持するようにしてもよい。
  しかしながら、本実施の形態のようにすると、軸受部が2つで足り、また、アクチェータも1つで足りることから、支持装置14の簡素化、低コスト化を図る上で有利となる。