(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405710
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】アイアン型ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20181004BHJP
【FI】
A63B53/04 E
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-111381(P2014-111381)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-223426(P2015-223426A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】坂 航
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−024999(JP,A)
【文献】
特開2005−118526(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3035480(JP,U)
【文献】
特開平11−178961(JP,A)
【文献】
米国特許第08317635(US,B2)
【文献】
特開2004−008565(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0172023(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0203763(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0021285(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0228928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース面及びソール面を備えた本体部と、該本体部に連なるホゼル部とを有し、
該本体部の背面の下部は後方に張り出した張出部となっているアイアン型ゴルフクラブヘッドであって、
該張出部の上面から下面にまで貫通するスリットが設けられているアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記本体部の背面に銘板が取り付けられ、この銘板の下方に弾性体が配置され、
該本体部の背面の周縁部のトップ側は凸条のバックフリンジ部となっており、該銘板の上方は該バックフリンジ部に接しており、
該スリットの上部にのみ弾性体が配置されており、
該スリットの上部を除いてスリット内が空洞となっていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記スリット上部の内面のうち後面側は、段部となっており、この段部に前記弾性体が係合していることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項2において、前記弾性体の断面がL字型であることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項1において、前記スリット上部の内面のうち後面側は、テーパ面となっており、このテーパ面に前記弾性体が係合していることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記弾性体は前記本体部に対し接着剤を用いずに係合していることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記弾性体の上部が前記張出部の上面よりも上方に突出していることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記銘板の厚みは、前記弾性体の上部の厚みよりも大きいことを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記弾性体は、該弾性体を設ける前の前記本体部の重心からフェース面に下した垂線を含む位置に配置されていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、前記本体部の背面の周縁部のうちトウ側、トップ側及びヒール側が凸条のバックフリンジ部となっており、前記銘板は該バックフリンジ部と前記弾性体で囲まれた領域に設けられていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイアン型ゴルフクラブヘッドに係り、詳しくは、ソール側を後方に突出させた張出部を有し、この張出部に上下方向にスリットを設けたアイアン型ゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイアン型ゴルフクラブとしては、フェアウェー、ラフ、バンカーなどからのショットや、ショートホール(パー3のホール)のティーショット等に主として用いられるアイアンクラブのほか、アイアンヘッドに近似した形状のヘッドを有したユーティリティクラブが用いられている。
【0003】
アイアン型ゴルフクラブヘッドとしては、ステンレススチール、炭素鋼、チタン、各種合金などでフェース部からホゼル部まで形成したものが広く用いられている。
【0004】
アイアン型ゴルフクラブヘッドは、ボールをヒットするためのフェース面と、地面に対面するソール面とを有する。ヘッドのヒール側にホゼル部が設けられ、このホゼル部にシャフトが挿入され、接着剤などの固着手段によって固着される。
【0005】
ヘッドのソール側を後方に突出させた形状の張出部を有するアイアン型ゴルフクラブヘッドは、ヘッドの重心が低く、また重心のフェース面からの距離(重心深度)が大きい。
【0006】
特許文献1には、この張出部の上面から下面にまで貫通するスリットを設けることにより、アイアン型ゴルフクラブヘッドのバランス調整、重量調整を図ることが記載されている。また、特許文献1の0014段落には、このスリットの全体にセラミックや繊維強化合成樹脂を充填してもよいことが記載されている。
【0007】
特許文献2には、張出部に上下方向に貫通するスリット(欠落部)を設け、このスリット全体に弾性体を充填したアイアンヘッドが記載されている。この欠落部を設けることにより、フェースの下部でボールをヒットした場合であっても、反発率が高くなり、打感も良好になる。
【0008】
特許文献3には、張出部の上面から凹陥する凹所を設け、この凹所の入口部(上部)に弾性体を充填したアイアンヘッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−776号公報
【特許文献2】特開2002−253713号公報
【特許文献3】特開2004−8565号公報
【特許文献4】特開2002−224255号公報
【特許文献5】特開平11−178961号公報
【特許文献6】実用新案登録第3035480号公報
【特許文献7】特開2013−255779号公報
【特許文献8】特開2005−58765号公報
【特許文献9】米国特許第8317635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
張出部に上下方向に貫通するスリットを設けることにより、ゴルフボールをヒットしたときにフェース面がたわみ、これによって反発性が向上したり、ゴルフボールのバックスピン量が減少したりするなどの効果が奏される。
【0011】
特許文献1の一態様では、このスリットが張出部を上下に貫通した孔状となっているが、貫通したままの状態のアイアンヘッドはゴルフ規則に適合しない。特許文献1の別態様では、このスリットにセラミックや繊維強化合成樹脂を充填しているが、セラミックや繊維強化合成樹脂は剛性が高いため、ゴルフボールをヒットしたときのフェース面のたわみが阻害されてしまい、スリットを設けたことによる上記効果が損なわれるおそれがある。
【0012】
特許文献2では、スリットの全体に弾性体を充填しているため、ゴルフボールをヒットしたときのフェース面のたわみが小さくなり、スリットを設けたことによる上記効果が小さくなってしまうおそれがある。
【0013】
特許文献3では、張出部に上面側から凹所を設けており、ソール底面付近にはスリットは存在しない。
【0014】
本発明は、ゴルフクラブヘッドの反発性向上及びゴルフボールのバックスピン量の低減効果に優れ、しかもゴルフ規則に適合するアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、その一態様において、スリット上部に充填された弾性体の脱落が防止され、耐久性に優れたアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、フェース面及びソール面を備えた本体部と、該本体部に連なるホゼル部とを有し、該本体部の背面の下部は後方に張り出した張出部となっているアイアン型ゴルフクラブヘッドであって、該張出部の上面から下面にまで貫通するスリットが設けられているアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、該スリットの上部にのみ弾性体が配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の一態様では、前記スリット上部の内面のうち後面側は、段部となっており、この段部に前記弾性体が係合している。
【0018】
本発明の別の一態様では、前記スリット上部の内面のうち後面側は、テーパ面となっており、このテーパ面に前記弾性体が係合している。
【0019】
本発明では、本体部の背面に銘板が取り付けられ、この銘板の下方に弾性体を配置することが好ましい。この場合、前記弾性体は前記本体部に対し非接着となっており、前記スリット上部に係合されていることが好ましい。また、前記弾性体の上部が前記張出部の上面よりも上方に突出していることが好ましい。また、前記銘板の厚みは、前記弾性体の上部の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0020】
本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドでは、前記弾性体は、該弾性体を設ける前の前記本体部の重心からフェース面に下した垂線を含む位置に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドでは、張出部に上下に貫通するスリットが設けられており、このスリットの上部にのみ弾性体が充填されている。従って、このスリットの大部分が空洞状となっているので、このアイアン型ゴルフクラブヘッドは、ボールをヒットしたときにフェース面がたわみ易く、反発性に優れ、またゴルフボールのバックスピン量の減少効果にも優れる。
【0022】
このスリットの上部の後面側に段部又はテーパ面を設け、該段部又はテーパ面に弾性体を係合させることにより、弾性体の装着が安定する。また、フェース面の背面に銘板を取り付け、銘板の下方に弾性体を配置することにより弾性体の脱落が防止される。
【0023】
また、銘板を弾性体よりも厚くすることにより、弾性体の保持がさらに安定する。
【0024】
弾性体を本体部に対し非接着とし、銘板によって押さえて本体部に保持させることにより、弾性体の取り付けが容易になる。
【0025】
弾性体を張出部の上面から若干突出させ、後方から視認可能とすることにより、弾性体が装着されていることを目視確認することができる。
【0026】
弾性体を設ける前の本体部の重心からフェース面に下した垂線を含む位置に弾性体を設けることにより、ヘッドの重心高さや重心の左右方向の位置を殆ど変化させずに、弾性体を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッドの背面斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッドの下方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜3を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0029】
このアイアン型ゴルフクラブヘッド1は、本体部2と、本体部2に連なるホゼル部3とを有している。ホゼル部3にはシャフトを差し込むためのホゼル穴3aが設けられている。本体部2の前面がフェース面2fであり、多数のスコアライン(溝、図示略)が設けられている。本体部2の下部は後方に膨出した形状の張出部4となっている。本体部2及びホゼル部3は金属製であるが、一部に非金属材料を用いてもよい。
【0030】
本体部2の背面の周縁部のうちトウ側、トップ側及びヒール側は、凸条よりなるバックフリンジ部2aとなっている。バックフリンジ部2aで囲まれた領域がバック面2bとなっている。
【0031】
張出部4は、ゴルフクラブヘッド1のトウ側からヒール側まで延在している。張出部4の底面がソール面4sである。張出部4の上面4aからソール面4sにまで貫通するスリット5が設けられている。この実施の形態では、スリット5はトウ側からヒール側まで連続して延在している。スリット5の内面のうちフェース面2f側の面は、
図2の通り、バック面2bと面一となっていることが好ましい。
【0032】
このスリット5の上部に弾性体6が配置されている。この実施の形態では、スリット5の上部内面のうち後面側に段部5aが設けられており、弾性体6はこの段部5aに係合している。弾性体6の下部はスリット5内に配置されているが、上部はスリット5から上方に突出し、張出部4の上面4aよりも上方に突出している。
【0033】
バック面2bに薄板材よりなる銘板7が両面テープ、接着剤又は粘着剤によって接着されている。銘板7はバックフリンジ2aと弾性体6で囲まれる全領域にわたって設けられているが、全領域でなくてもよい。銘板7の下方に弾性体6を配置することで、弾性体6の脱落を防止する役割を果たしている。また、銘板7の下面を弾性体6の上面に当接させることで、弾性体6の保持をより安定なものとすることができる。
【0034】
この実施の形態では、銘板7の厚み(バック面2bと垂直方向の厚み)は弾性体6の厚みよりも若干大きい。弾性体6の上部が張出部4の上面4aよりも突出しているので、銘板7の下端と上面4aとの間で弾性体6が視認可能である。
【0035】
この実施の形態においては、
図2の通り、トウ・ヒール方向の中間におけるアイアン型ゴルフクラブヘッド1のフェース面2fに沿う上下方向の全長をH
0とし、スリット5の下端から上端(すなわち張出部4の上面4a)までの該方向の長さをH
1とした場合、H
1の下限値としては、H
0の20%以上、好ましくはH
0の30%以上であり、上限値としては、H
0の70%以下、好ましくはH
0の60%以下である。スリット5のフェース面2fと垂直方向の寸法Wは、下限値として1mm以上、好ましくは2mm以上であり、上限値としては、5mm以下、好ましくは3mm以下である。寸法Wが小さすぎると、打音や打感が悪くなる可能性があり、寸法Wが大きすぎると所望のヘッド重量に設計するのが困難になる場合がある。スリット5とフェース面2fとの間のフェース前面部の厚さは、下限値として1mm以上、好ましくは1.5mm以上であり、上限値としては、5mm以下、好ましくは3mm以下である。
【0036】
スリット5のトウ・ヒール方向の長さは、下限値として20mm以上、好ましくは30mm以上であり、上限値としては、60mm以下、好ましくは45mm以下である。スリット5のトウ・ヒール方向の長さは、スリット5の上部から下部にかけて均等であることが好ましいが、上記の範囲であるならば不均一であってもよい。例えば、上部が下部よりも広くてもよく、下部が上部よりも広くてもよい。
【0037】
弾性体6は、スリット5の上部全域に、すなわちスリット5のヒール側からトウ側まで連続して設けられている。弾性体6のフェース面2fと垂直方向の厚み(以下、単に厚みということがある。)は、スリット5の間隔Wよりも大きくする事で、しっかりと弾性体を装着させる事ができる。弾性体6のフェース面2fと平行方向の高さは、下限値として3mm以上、好ましくは5mm以上であり、上限値としては、15mm以下、好ましくは10mm以下である。弾性体の高さが小さすぎると段部5aへの係合が悪くなる可能性があり、大きすぎるとフェースのたわみ量が減ってしまう可能性がある。
【0038】
弾性体の材料としては、ゴム又は樹脂等からなる材料が挙げられる。ゴムとしては、例えば天然ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。樹脂としては、例えばアイオノマー樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。特に、ウレタン樹脂が好適である。弾性体の材料のショアD硬度は、下限値として20以上、好ましくは40以上、より好ましくは50以上であり、上限値としては80以下、好ましくは70以下である。硬度が小さすぎると製造が困難となる場合があり、硬度が大きすぎるとフェースのたわみ量が抑えられてしまう可能性がある。弾性体6は、好ましくは接着剤や粘着剤を用いずに段部5aに係合し、銘板7で押さえられることにより本体部2に保持されることが好ましい。このように接着剤(粘着剤や両面テープを包含する。)を用いない場合、弾性体6の装着作業が容易となり、さらに接着剤によるヘッド性能への影響も無くすことができる。
【0039】
重量が異なる複数の弾性体6を準備しておき、ゴルフクラブのバランスや重量を調整できるようにしてもよい。また硬度が異なる複数の弾性体6を準備しておき、打感や打音を調整できるようにしてもよい。
【0040】
銘板7の厚みは、弾性体6の厚みと異なってもよいが、弾性体6の厚みよりも大きくし、弾性体6をしっかりと保持できるようにするのが好ましい。この場合、銘板7の下部の厚みと弾性体6の上部の厚みの差は、下限値として0.5mm以上、好ましくは1mm以上であり、上限値としては、2mm以下、好ましくは1.5mm以下である。銘板7の厚みは全体として一様であってもよいが、部分的に厚みが異なっていてもよい。例えば、銘板7の下端部の厚みをそれ以外よりも大きくしてもよい。
【0041】
銘板7の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、樹脂、ヘッド本体よりも軽比重の材料などを用いることができる。銘板7には、ロゴ、商標、品番表示、装飾模様などが表わされている。
【0042】
このように構成されたアイアン型ゴルフクラブヘッド1にあっては、スリット5が設けられており、かつスリット5の上部を除いてスリット5内が空洞となっているため、ゴルフボールをヒットしたときにフェース面2fの下部がたわみ、反発性が向上し、ゴルフボールの初速が増大すると共に、ゴルフボールのバックスピン量が減少する。これにより、ゴルフボールの飛距離が増大する。本発明は、ショートアイアンよりもロフト角が小さいミドルアイアンやロングアイアンなどに適用するのに好適である。
【0043】
上記実施の形態では、弾性体6が張出部4の上面4aから突出し、アイアン型ゴルフクラブヘッド1の後方から視認可能であるので、アイアン型ゴルフクラブヘッド1の製作工程において、弾性体6を装着したことを最終製作工程後でも目視確認することができ、製造ミスを減らすことができる。
【0044】
図4、5を参照して別の実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッド1A、1Bについて説明する。
【0045】
図4のアイアン型ゴルフクラブヘッド1Aでは、弾性体6Aが逆L字形断面形状とされ、その上部の後縁部が張出部4の上面と銘板7との間に配置されている。弾性体6Aの下部をスリット5の上部に差し込むときに、該後縁部が張出部4の上面4aに当接するまで弾性体6Aをスリット5に差し込むことにより、弾性体6Aをスリット5内に正確に規定深さまで差し込むことができる。
【0046】
図5のアイアン型ゴルフクラブヘッド1Bでは、弾性体6Bは、上方ほど厚みが大きくなっており、後面は上方ほどフェース面2fから遠ざかるテーパ面となっている。また、スリット5の上部内面のうち後面側は、段部ではなく、上方ほどフェース面2fから遠ざかるテーパ面5bとなっている。弾性体6Bのテーパ面はこのテーパ面5bに係合している。
【0047】
このアイアン型ゴルフクラブヘッド1Bでは、弾性体6Bやスリット5の上部に若干の寸法ないし形状誤差があっても、弾性体6Bをテーパ面5bに係合させることができ、弾性体6Bの保持が安定する。
【0048】
図4,5のアイアン型ゴルフクラブヘッド1A,1Bのその他の構成はアイアン型ゴルフクラブヘッド1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0049】
本発明では、弾性体6,6A又は6Bは、該弾性体6,6A又は6Bを装着する前の本体部2の重心からフェース面2fに下した垂線を含む位置に設けられることが好ましく、弾性体6,6A又は6Bの重心が本体部2の重心からフェース面2fに下した垂線を通るように弾性体6,6A又は6Bを配置することがさらに好ましい。このように構成した場合、弾性体6,6A又は6Bを装着してもアイアン型ゴルフクラブヘッドの重心高さや重心の左右方向の位置が殆ど変化しないので、アイアン型ゴルフクラブヘッドの重心位置を設計通りとすることができる。
【0050】
ロフト角が少しずつ異なる複数の本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドを有した複数のゴルフクラブを一揃えとしたゴルフクラブセットにあっては、各ゴルフクラブで弾性体を同一のものとしてもよく、ゴルフクラブの番手に応じて特性の異なる弾性体を装着してもよい。
【0051】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、張出部4の形状や大きさは図示以外とされてもよい。
【0052】
図示のアイアン型ゴルフクラブヘッド1,1A,1Bは、従来のアイアンヘッドと略同一の外観構成のものであるが、本発明はアイアンヘッドに近似した外観形状のアイアン型ユーティリティヘッドにも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,1A,1B アイアン型ゴルフクラブヘッド
2 本体部
2a フリンジ部
2b バック面
2f フェース面
3 ホゼル部
4 張出部
5 スリット
6,6A,6B 弾性体
7 銘板