特許第6405718号(P6405718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405718酸性ガス吸着・除去剤およびそれを用いた吸着・除去フィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405718
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】酸性ガス吸着・除去剤およびそれを用いた吸着・除去フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20181004BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20181004BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20181004BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20181004BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B01J20/20 B
   B01J20/04 A
   B01J20/06 A
   B01J20/30
   B01J20/28 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-115614(P2014-115614)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-24405(P2015-24405A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-127281(P2013-127281)
(32)【優先日】2013年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西谷 祐介
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−000187(JP,A)
【文献】 特開2012−030199(JP,A)
【文献】 特開2012−056822(JP,A)
【文献】 特開2007−021221(JP,A)
【文献】 特開2003−001024(JP,A)
【文献】 特開2005−021239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/28
B01J 20/30 − 20/34
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/00 − 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭を用意する工程と、
200℃〜400℃で焼成されたマンガン酸化物を用意する工程と、
アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した前記活性炭と前記マンガン酸化物の混合比率(重量比)が、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭/マンガン酸化物=0.4〜10となるように混合する工程と、を含み、
前記活性炭のBET比表面積が600m2/g以上であり、前記マンガン酸化物のBET比表面積が100m2/g以上であることを特徴とする酸性ガス吸着・除去剤の製造方法
【請求項2】
前記マンガン酸化物が少なくともα型酸化マンガンを含有する請求項1に記載の酸性ガス吸着・除去剤の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属を含む水酸化物がNaOHまたはKOHである請求項1または2に記載の酸性ガス吸着・除去剤の製造方法
【請求項4】
前記アルカリ金属を含む炭酸塩がNa2CO3またはK2CO3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性ガス吸着・除去剤の製造方法
【請求項5】
前記アルカリ金属を含む炭酸水素塩がNaHCO3またはKHCO3である請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性ガス吸着・除去剤の製造方法
【請求項6】
前記アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物の添着比率が活性炭100重量部に対して、0.03〜30重量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸性ガス吸着・除去剤の製造方法
【請求項7】
性ガス吸着・除去剤を含むシート状またはハニカム状成型体で構成されている酸性ガス吸着・除去フィルタの製造方法において、
前記酸性ガス吸着・除去剤は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法にて製造される、酸性ガス吸着・除去フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガス、特に、二酸化硫黄などの硫黄酸化物や二酸化窒素などの窒素酸化物の吸着・除去性能に優れた酸性ガス吸着・除去剤およびそれを用いた吸着・除去フィルタに関する。さらに詳しくは、一般生活における温湿度領域において、長期にわたって除去性能を発現できる酸性ガス吸着・除去剤および吸着・除去フィルタに関する。ここで言う、一般生活における温湿度領域とは、温度範囲でおおよそ−30〜50℃、湿度範囲でおおよそ20〜95RH%のことである。
【背景技術】
【0002】
大気中の酸性ガス、特に、硫黄酸化物や窒素酸化物等の有害ガスを除去するために、活性炭の吸着作用を利用した吸着除去手法が知られている。また、活性炭を用いる際には、活性炭に薬剤を添着し、活性炭に化学吸着能を付与する手法も知られている。
【0003】
硫黄酸化物や窒素酸化物等の酸性ガス除去性能向上を目的として、活性炭に薬剤を添着した例としては、活性炭にアルカリ薬剤、特に水酸化カリウムを添着した脱硝剤(例えば、特許文献1)やアミノ基含有有機物を添着した酸性ガス除去剤(例えば、特許文献2)が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に開示される薬剤添着活性炭では、硫黄酸化物や窒素酸化物等の酸性ガスの吸着性能が不十分であり、また吸着性能にも限界があるため、長期間にわたって、硫黄酸化物や窒素酸化物等の酸性ガス吸着・除去性能を維持することは困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、活性炭やアルミナ等の多孔質体に触媒を担持し、吸着した硫黄酸化物や窒素酸化物等の酸性ガスを分解、または反応させて除去する手法が知られている。
【0006】
多孔質担体に触媒を担持した例としては、炭素を主成分とし、アルカリ金属の1種又は2種以上と、セリウム、トリウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、及び錫からなる群から選ばれた1種または2種以上とを含有し、かつ硫黄化合物からなる表面層を有する窒素酸化物吸着剤(例えば、特許文献3)や白金、パラジウム、ロジウム及びルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、マンガン、ニッケル、コバルトおよび鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素がアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−チタニア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニアおよびチタニア−ジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種に担持された窒素酸化物除去剤(例えば、特許文献4)が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3に開示される窒素酸化物吸着剤は200〜400℃の範囲内の温度ではガス中の窒素酸化物除去には効果は見られるが、一般生活における温湿度領域において長期にわたって十分な除去性能を発現できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献4に開示される窒素酸化物除去剤は、白金、パラジウム、ロジウム及びルテニウムを使用しているため、非常に高価であり、コスト的に不利であるという問題がある。
【0009】
上述のとおり、長期間にわたって硫黄酸化物や窒素酸化物等の酸性ガス吸着・除去性能を維持できる酸性ガス吸着・除去剤は見当たらないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−126162号公報
【特許文献2】特開平6−7634号公報
【特許文献3】特公平6−202号公報
【特許文献4】特開平11−57399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術の課題を背景になされたものであり、一般生活における温湿度領域で長期にわたって十分な除去性能を発現できる酸性ガス吸着・除去剤およびそれを用いた吸着・除去フィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、以下の通りである。
1.アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭とマンガン酸化物を含有し、活性炭のBET比表面積が600m/g以上であり、マンガン酸化物のBET比表面積が100m/g以上であり、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭とマンガン酸化物の混合比率(重量比)が、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭/マンガン酸化物=0.4〜10であることを特徴とする酸性ガス吸着・除去剤。
2.前記マンガン酸化物が少なくともα型酸化マンガンを含有する上記1に記載の酸性ガス吸着・除去剤。
3.前記アルカリ金属を含む水酸化物がNaOHまたはKOHである上記1または2に記載の酸性ガス吸着・除去剤。
4.前記アルカリ金属を含む炭酸塩がNaCOまたはKCOである上記1〜3のいずれかに記載の酸性ガス吸着・除去剤。
5.前記アルカリ金属を含む炭酸水素塩がNaHCOまたはKHCOである上記1〜4のいずれかに記載の酸性ガス吸着・除去剤。
6.前記アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物の添着比率が活性炭100重量部に対して、0.03〜30重量部である上記1〜5のいずれかに記載の酸性ガス吸着・除去剤。
7.上記1〜6のいずれかに記載の酸性ガス吸着・除去剤を含むシート状またはハニカム状成型体で構成されている酸性ガス吸着・除去フィルタ。
【発明の効果】
【0013】
本発明による酸性ガス吸着・除去剤は、一般生活における温湿度領域で長期にわたって十分な除去性能を発現することが可能であるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明における酸性ガス吸着・除去剤において、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭とマンガン酸化物を含有し、活性炭のBET比表面積が600m/g以上であり、マンガン酸化物のBET比表面積が100m/g以上であり、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭とマンガン酸化物の混合比率(重量比)が、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭/マンガン酸化物=0.4〜10とすることにより、一般生活における温湿度領域で長期にわたって十分な除去性能を発現できることを本発明者は見出した。
酸性ガスであるガス状硫黄酸化物や窒素酸化物の除去メカニズムについては明確ではないが、次の(1)〜(3)のように推測される。
【0016】
まず、最初に(1)マンガン酸化物にガス状硫黄酸化物が、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭に窒素酸化物がそれぞれ吸着される。
【0017】
その後、(2)ガス状硫黄酸化物はマンガン酸化物の酸化触媒作用によりガス状硫黄酸化物がより高酸化状態の硫黄酸化物に酸化され、窒素酸化物は活性炭上のアルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物と反応し、固定化される。
【0018】
そして、(3)生成した高酸化状態の硫黄酸化物はマンガン酸化物に吸着された水分と反応し、硫酸となり、活性炭に移行して、吸着除去される。活性炭は生成した硫酸、窒素酸化物の受容体として作用しており、もし、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭の混合比率が低ければ、水分が優先的に吸収されてしまうため、前記メカニズム(3)が阻害され、長期にわたって十分な酸性ガス吸着・除去剤の除去性能を発現することができない。
【0019】
本発明におけるマンガン酸化物は、少なくともα型酸化マンガンを含有することが好ましい。少なくともα型酸化マンガンを含有することで、低温での高い除去性能を実現することができるからである。
【0020】
本発明におけるマンガン酸化物のBET比表面積は、100m/g以上である。より好ましくは150m/g以上である。マンガン酸化物のBET比表面積が100m/g以上であれば、低温での高い除去性能を発現することができるからである。また、マンガン酸化物のBET比表面積の上限は特に限定するものではないが、500m/g以下であることが好ましい。この範囲を超えると、製造が非常に困難になるという不都合が生じるからである。
【0021】
本発明におけるマンガン酸化物の製造方法は、特に限定しない。金属塩を含有する溶液に濃硝酸等を添加して、加温後、過マンガン酸カリウム水溶液等を添加する方法、もしくは、金属塩を含有する溶液に酸素ガス、オゾン水、または過酸化水素水等の酸化剤を添加して、金属を高酸化状態にした後、アンモニア、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩等のアルカリを添加して沈殿を生成させた後、沈殿を濾別、乾燥させる方法、もしくは、金属塩を含有する溶液に酸素ガス、オゾン水、または過酸化水素水等の酸化剤を添加して、金属を高酸化状態にした後、スクロース、グルコース、ポリビニルアルコール等の有機還元剤を添加して、生成したゲルを濾別、乾燥させる方法、もしくはマンガン塩を含有する溶液にアンモニア、炭酸アンモニウム等のアルカリを添加して沈殿を生成させた後、沈殿を濾別、乾燥、焼成して製造する方法等を用いることができる。使用する金属塩に関しては、特に定めないが、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の一般的な塩を使用することができる。溶解度の面から、硝酸塩、硫酸塩が好ましい。また、溶液の溶媒の種類に関しては、特に定めないが、一般的な有機溶剤、水等を使用することができる。環境への負荷を考慮すると、水が好ましい。乾燥、焼成温度に関しては、500℃以下であることが好ましい。500℃を超えると、マンガン酸化物の結晶化が進行し、結果として、低温で十分な除去性能が発現できない。
【0022】
本発明における活性炭種は、特に限定しない。例えば、黒鉛、鉱物系材料(褐炭、瀝青炭などの石炭系、石油または、石油ピッチなど)、植物系材料(木質、果実殻(ヤシ殻など)など)、高分子系材料(ポリアクリルニトリル、フェノール系材料、セルロース)などを原料とする活性炭が挙げられ、これらの原料を炭化、または不融化した後、賦活処理することによって得られる活性炭を使用することができる。
【0023】
本発明における活性炭作製時の炭化方法、不融化方法、賦活方法については、特に限定されず、従来公知の加工方法を用いることができる。例えば、賦活は、炭化、または不融化処理を施した炭素原料を水や二酸化炭素などの賦活ガス中で、500〜1000℃程度で熱処理するガス賦活法や炭化、または不融化処理を施した炭素原料をリン酸、塩化亜鉛、水酸化カリウムなどの賦活剤と混合し、300〜800℃程度で熱処理する化学賦活法などを用いることができる。
【0024】
本発明における活性炭のBET比表面積は、600m/g以上である。より好ましくは700m/g以上である。600m/g未満であれば、酸性ガスの吸着容量が小さく、結果として、十分な除去性能が発現できない。また、活性炭のBET比表面積の上限は特に限定するものではないが、3000m/g以下であることが好ましい。この範囲を超えると、製造が非常に困難になるという不都合が生じるからである。
【0025】
本発明におけるアルカリ金属を含む水酸化物としては、例えばNaOH、KOHなどが挙げられ、アルカリ金属を含む炭酸塩としては、例えばNaCO、KCOなどが挙げられ、アルカリ金属を含む炭酸水素塩としては、例えばNaHCO、KHCOなどが挙げられ、単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明におけるアルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物の添着比率が活性炭100重量部に対して、0.03〜30重量部であることが好ましく、0.05〜25重量部であることがより好ましい。アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物の添着比率が0.03重量部未満であれば、長期にわたって十分な酸性ガス吸着・除去性能を発現することができない。また、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物の添着比率が30重量部を超えると、添着したアルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物により活性炭細孔が閉塞され、酸性ガス吸着・除去性能が低下するという不都合が生じるからである。
【0027】
本発明において、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭とマンガン酸化物の混合比率(重量比)が、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭/マンガン酸化物=0.4〜10である。アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭と前記マンガン酸化物の混合比率(重量比)が、0.4未満であれば、生成した硫酸や窒素酸化物を活性炭上で固定化することができず、長期にわたって十分な酸性ガス吸着・除去剤の除去性能を発現することができない。また、10を超えると、マンガン酸化物による硫黄酸化物除去性能が大幅に低下するため、活性炭への硫黄酸化物、窒素酸化物の負荷が大きくなり、長期にわたって十分な酸性ガス吸着・除去剤の除去性能を発現することができない。
【0028】
アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物の活性炭への担持手法は特に制限されず、従来公知の加工方法を用いることができる。例えば、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含む溶液を活性炭または活性炭含有成型体に散布、もしくは含浸、浸漬し、乾燥することにより行うことができる。
【0029】
本発明における酸性ガス吸着・除去剤に含まれるマンガン酸化物、活性炭、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物以外のその他の成分については特に限定しないが、ジルコニウム、銅、コバルト、銀、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物を含有することが好ましい。より好ましくは、ジルコニウム、銀、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物である。これらの元素を含有することにより、酸性ガス吸着・除去能を向上させ、長期にわたって十分な除去性能を発現することができる。
【0030】
本発明における酸性ガス吸着・除去剤の形状については、特に制限されるものではなく、粉末状やその造粒物でもよい。造粒する際には、各種バインダー等、例えば、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト、シリカゾル等の無機化合物系バインダーやポリビニルアルコール等の有機化合物系バインダー等を用いることができる。
【0031】
本発明における酸性ガス吸着・除去剤は、各種加工を施して、脱臭フィルタとして使用することもできる。前記脱臭フィルタの製造方法については、特に限定しないが、シート化された酸性ガス吸着・除去剤を、平面状、プリツ状、ハニカム状に加工するという製造方法が好ましい。プリーツ状は直行流型フィルタとしての使用において、また、ハニカム状は平行流型フィルタとしての使用において、処理する気体との接触面積を大きくして除去効率を向上させるとともに、脱臭フィルタの低圧損化を同時に図ることができる。
【0032】
本発明における酸性ガス吸着・除去剤をシート化する方法としては特に制限されず、従来公知の加工方法を用いることができる。例えば、(a)シート構成繊維と共に酸性ガス吸着・除去剤粒子を水中に分散させ脱水することにより得られる湿式シート化法、(b)シート構成繊維と共に酸性ガス吸着・除去剤粒子を気中分散させることにより得られるエアレイド法、(c)二層以上の不織布もしくは織布、ネット状物、フィルム、膜の層間に、熱接着によりガ酸性ガス吸着・除去剤を充填する方法、(d)エマルジョン接着剤、溶剤系接着剤を利用して不織布、織布、発泡ウレタンなどの通気性材料に酸性ガス吸着・除去剤を結合担持させる方法、(e)基材、ホットメルト接着剤の熱可塑性等を利用して不織布、織布、発泡ウレタンなどの通気性材料に酸性ガス吸着・除去剤を結合担持させる方法、(f)酸性ガス吸着・除去剤を繊維もしくは樹脂に練りこむことにより混合一体化する方法等、用途に応じて適当な方法を用いることができる。また、前記(a)〜(f)の方法において、界面活性剤、水溶性高分子等を用いる必要がなく、多孔質体自身の細孔閉塞を防止することができるため、前記加工方法(b)、(c)、(e)を用いることが好ましい。
【0033】
本発明における酸性ガス吸着・除去剤は、脱臭フィルタとして、屋内、乗り物内、壁紙、家具、内装材、樹脂成形体、電気機器等で、酸性ガスを低減する目的で広く用いることができる。特に空気中に含有される酸性ガスの除去目的で用いることが好ましく、例えば、粒状物を通気性の箱、袋、網等の容器に充填し、静置もしくは通気させて用いることが好ましい。 また、除去速度が速く、一旦除去した酸性ガスが脱離する問題が少ないため、通風状態で用いることがより好ましく、自動車や鉄道車両等の車室内の空気を清浄化するためのエアフィルタ、健康住宅、ペット対応マンション、高齢者入所施設、病院、オフィス等で使用される空気清浄機用フィルタ、エアコン用フィルタ、OA機器の吸気・排気フィルタ、ビル空調用フィルタ、産業用クリーンルーム用フィルタに用いられることがより好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示す。下記実施例は本発明方法を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0035】
(BET比表面積の測定方法)
除去剤サンプルを約100mg採取し、120℃で12時間真空乾燥した後、秤量した。自動比表面積装置ジェミニ2375(マイクロメリティックス社製)を使用し、液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で徐々に高めながら40点測定し、前記サンプルの吸着等温線を作製した。(相対圧0.02〜0.15での結果をBETプロットし、重量当りのBET比表面積[m/g]を求めた。)
【0036】
(酸性ガス除去剤除去性能の評価方法:二酸化硫黄除去)
酸性ガス吸着・除去剤サンプル200mgを内径15mmのガラスカラム内に充填し、二酸化硫黄ガス100ppmを含む温度25℃、相対湿度50%の空気を流量2.0L/minで流通した。ガラスカラム内の温度は25℃一定とした。ガラスカラムの入口、出口濃度を光音響ガスモニター1312(INNOVA社製)により、測定開始から1時間の二酸化硫黄ガスの濃度変化を連続的に測定し、二酸化硫黄ガス供給量と除去率から二酸化硫黄ガス除去量を算出した。そして、二酸化硫黄ガス除去量と時間の曲線を積分することにより、二酸化硫黄ガス除去量[mg]を算出し、この二酸化硫黄ガス除去量[mg]をサンプル重量で割ることにより、サンプル当りの二酸化硫黄ガス除去量[mg/g]を算出した。
【0037】
(酸性ガス除去剤除去性能の評価方法:二酸化窒素除去)
酸性ガス吸着・除去剤サンプル300mgを内径26mmのガラスカラム内に充填し、二酸化窒素ガス1.0ppmを含む温度25℃、相対湿度50%の空気を流量10L/minで流通した。ガラスカラム内の温度は25℃一定とした。ガラスカラムの入口、出口濃度をNO−NO−NO Analyzer Model 42C(Thermo Fisher Scientific社製)により、測定開始から二酸化窒素ガス除去率が40%に到達するまで、二酸化窒素ガスの濃度変化を連続的に測定し、二酸化窒素ガス供給量と除去率から二酸化窒素ガス除去量を算出した。そして、二酸化窒素ガス除去量と時間の曲線を積分することにより、二酸化窒素ガス除去量[mg]を算出し、この二酸化窒素ガス除去量[mg]をサンプル重量で割ることにより、サンプル当りの二酸化窒素ガス除去量[mg/g]を算出した。
【0038】
<実施例1>
硫酸マンガン(II)一水和物(和光純薬工業株式会社製)19.8gを67.5mlのイオン交換水に溶解させ、濃硝酸(ナカライテスク株式会社製)6.8mlを加え、60℃に加温しながらしばらく撹拌した。また過マンガン酸カリウム13.3g(ナカライテスク株式会社製)を225mlのイオン交換水に溶解した。その後、60℃に加温・保持した硫酸マンガン温水溶液と過マンガン酸カリウム水溶液を混合したところ、白色の沈殿が得られた。その後、白色の沈殿を濾別し、120℃で乾燥させた後、350℃で1.5時間焼成処理を施したところα型酸化マンガンを含むマンガン酸化物が得られ、BET比表面積は125m/gであった。得られたマンガン酸化物を密度1.9g/cmになるように打錠成型後、粉砕し、355〜500μmに分級し、粒状サンプルを得た。
また、炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、得られたマンガン酸化物3.0gと炭酸カリウム添着加工を施したヤシ殻活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0039】
<実施例2>
硫酸マンガン(II)一水和物(和光純薬工業株式会社製)19.8gを67.5mlのイオン交換水に溶解させ、濃硝酸(ナカライテスク株式会社製)6.8mlを加え、60℃に加温しながらしばらく撹拌した。また過マンガン酸カリウム13.3g(ナカライテスク株式会社製)を225mlのイオン交換水に溶解した。その後、60℃に加温・保持した硫酸マンガン温水溶液と過マンガン酸カリウム水溶液を混合したところ、白色の沈殿が得られた。その後、白色の沈殿を濾別し、120℃で乾燥させた後、250℃で1.5時間焼成処理を施したところα型酸化マンガンを含むマンガン酸化物が得られ、BET比表面積は220m/gであった。得られたマンガン酸化物を密度1.9g/cmになるように打錠成型後、粉砕し、355〜500μmに分級し、粒状サンプルを得た。
また、炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、得られたマンガン酸化物3.0gと炭酸カリウム添着加工を施したヤシ殻活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0040】
<実施例3>
過マンガン酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gを50mlのイオン交換水に溶解させ、しばらく撹拌した。その後、スクロース(和光純薬工業株式会社製)4.8gを20mlのイオン交換水に溶解したスクロース溶液を添加した後、1時間撹拌した。得られたゾルを濾別し、120℃で乾燥処理を行った。その後、250℃で1.5時間焼成処理を施したところα型酸化マンガンを含むマンガン酸化物が得られ、BET比表面積は311m/gであった。得られたマンガン酸化物を密度1.9g/cmになるように打錠成型後、粉砕し、355〜500μmに分級し、粒状サンプルを得た。
また、炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、得られたマンガン酸化物3.0gと炭酸カリウム添着加工を施したヤシ殻活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0041】
<実施例4>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル1.0gと炭酸カリウム添着活性炭10gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0042】
<実施例5>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル2.0gと炭酸カリウム添着活性炭4.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0043】
<実施例6>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭2.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0044】
<実施例7>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル5.0gと炭酸カリウム添着活性炭2.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0045】
<実施例8>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)0.1gをイオン交換水199.9gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)100gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム0.03重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0046】
<実施例9>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会製)0.2gをイオン交換水199.8gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)100gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム0.05重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0047】
<実施例10>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)2.0gをイオン交換水18gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム5重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0048】
<実施例11
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)2.5gをイオン交換水17.5gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m2/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム7.5重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0049】
<実施例12>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.5gをイオン交換水16.5gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム12.5重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0050】
<実施例13>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)4.0gをイオン交換水16gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム15重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0051】
実施例14>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)6.0gをイオン交換水14gに溶解し、
作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m2/g)10
gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで
炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム20重量部)を得
た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添
着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0052】
<実施例15
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)8.0gをイオン交換水12gに溶解し、
作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m2/g)10
gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで
炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム30重量部)を得
た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添
着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0053】
<実施例16>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:820m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0054】
<実施例17>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1150m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0055】
<実施例18>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1500m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0056】
<実施例19>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:2900m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0057】
<実施例20>
硝酸マンガン(II)六水和物(ナカライテスク株式会社製)60.0gを200mlのイオン交換水に溶解し、しばらく撹拌した。次に、過マンガン酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)20.0gを100mlのイオン交換水に溶解し、しばらく撹拌した。その後、硝酸マンガン水溶液を過マンガン酸カリウム水溶液に撹拌下でゆっくり滴下し、約30分間反応させたところ、白色の沈殿が得られた。その後、白色の沈殿を濾別、イオン交換水にて水洗し、120℃で乾燥させた後、300℃で1時間焼成処理を施したところマンガン酸化物が得られた。得られたマンガン酸化物の結晶形はγ型、BET比表面積は152m/gであった。得られたマンガン酸化物を密度1.9g/cmになるように打錠成型後、粉砕し、355〜500μmに分級し、粒状サンプルを得た。
また、炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、得られたマンガン酸化物3.0gと炭酸カリウム添着加工を施したヤシ殻活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0058】
<比較例1>
硫酸マンガン(II)一水和物(和光純薬工業株式会社製)19.8gを67.5mlのイオン交換水に溶解させ、濃硝酸(ナカライテスク株式会社製)6.8mlを加え、60℃に加温しながらしばらく撹拌した。また過マンガン酸カリウム13.3g(ナカライテスク株式会社製)を225mlのイオン交換水に溶解した。その後、60℃に加温・保持した硫酸マンガン温水溶液と過マンガン酸カリウム水溶液を混合したところ、白色の沈殿が得られた。その後、白色の沈殿を濾別し、120℃で乾燥させた後、550℃で1.5時間焼成処理を施したところα型酸化マンガンを含むマンガン酸化物が得られ、BET比表面積は88m/gであった。得られたマンガン酸化物を密度1.9g/cmになるように打錠成型後、粉砕し、355〜500μmに分級し、粒状サンプルを得た。
また、炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、得られたマンガン酸化物3.0gと炭酸カリウム添着加工を施したヤシ殻活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0059】
<比較例2>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル1.0gと炭酸カリウム添着活性炭20gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0060】
<比較例3>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル4.0gと炭酸カリウム添着活性炭1.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0061】
<比較例4>
実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gとヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0062】
<比較例5>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:500m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで炭酸カリウム添着活性炭(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
そして、実施例2で得られたマンガン酸化物の造粒サンプル3.0gと炭酸カリウム添着活性炭3.0gを均一になるように混合し、酸性ガス吸着・除去剤を得た。
【0063】
<比較例6>
実施例2で得られたマンガン酸化物6.0gを密度1.9g/cmになるように打錠成型後、粉砕し、355〜500μmに分級して、酸性ガス吸着・除去剤を得た。得られた酸性ガス吸着・除去剤のBET比表面積は220m/gであった。
【0064】
<比較例7>
炭酸カリウム(ナカライテスク株式会社製)3.0gをイオン交換水17gに溶解し、作製した炭酸カリウム水溶液にヤシ殻活性炭(BET比表面積:1800m/g)10gを入れ、30min攪拌し、その後、溶液を濾過し、120℃で6時間乾燥することで、酸性ガス吸着・除去剤(活性炭100重量部に対して、炭酸カリウム10重量部)を得た。
【0065】
以下表1により本発明の効果を説明する。本発明である実施例1〜20は、α型酸化マンガンを含むマンガン酸化物のBET比表面積が100m/gよりも小さい場合(比較例1)、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物を添着した活性炭/マンガン酸化物の重量混合比率が10より大きい場合(比較例2)、0.4より小さい場合(比較例3)、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物が活性炭へ添着されていない場合(比較例4)、活性炭のBET比表面積が600m/gよりも小さい場合(比較例5)と比較して、二酸化硫黄ガス、二酸化窒素ガス除去容量が高いことがわかる。また、α型酸化マンガンを含むマンガン酸化物単体(比較例6)、アルカリ金属塩を添着した活性炭単体(比較例7)と比較しても、二酸化硫黄ガス、二酸化窒素ガス除去容量が高いことがわかる。
【0066】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の酸性ガス吸着・除去剤及び吸着・除去フィルタは、長期にわたって酸性ガス吸着・除去性能を維持することができるため、広い分野で用いることができ、産業界に寄与すること大である。