(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記姿勢変更部は、前記搬送路のうち鉛直方向に沿って前記シートを搬送する部分に設けられた前記シートとの距離を測定するセンサの出力に基づいて前記シートが前記第2面側に反っているか否かを判定する
請求項1に記載の搬送装置。
前記姿勢変更部は、前記シートの銘柄、温度又は湿度の情報を取得し、取得した当該情報に基づき算出される前記第1面及び前記第2面の伸縮率の差から前記シートが前記第2面側に反っているか否かを判定する
請求項1に記載の搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1]実施形態
[1−1]構成
図1は、実施形態の搬送装置の全体構成を示す図である。
図1では、CPU(Central Processing Unit)2と、RAM(Random Access Memory)3と、ROM(Read Only Memory)4と、記憶部5と、搬送部10と、処理部20と、センサ30とを備える搬送装置1が示されている。CPU2は、RAM3をワークエリアとして用いてROM4や記憶部5に記憶されているプログラムを実行することによって各部を制御する。
【0017】
搬送部10は、シートを搬送路に沿って搬送する。搬送部10は、本実施形態では、図示せぬ画像形成手段によって画像が形成された記録媒体を搬送する。なお、その画像形成手段は、搬送装置1に備えられていてもよいし、搬送装置1の外部に備えられていてもよい。処理部20は、搬送部10を搬送されるシートに処理を施す。処理部20は、本実施形態では、シートに形成された画像を読み取る処理を施す。
【0018】
センサ30は、シートが反っている方向を判定するためのセンサである。このシートの反りは、カールとも呼ばれ、例えば画像を定着させる際の熱や圧力のストレスによって発生したり、搬送路を曲げられた状態で搬送されることによって発生したりする。また、このシートの反りは、重力によりシートに鉛直下方向きの力が加わることでも発生する。以下では、シートが沿っている方向のことを「カール方向」という。センサ30は、例えば対象との距離を非接触で測定する光学センサである。本実施形態では、センサ30が測定したセンサ30とシートの先端との距離に基づいてカール方向が判定される。
【0019】
図2は、搬送部10、処理部20及びセンサ30の構成を示す図である。なお、
図2を含む以降の図では、搬送されるシートの幅方向に見た各部を示す。搬送部10は、誘導部材11と、搬送ロール12とを備える。誘導部材11は、搬送路13を形成し、搬送路13に沿って搬送されるようにシート6を誘導する。本実施形態では、搬送路13は、処理部20の前後では概ね水平方向に沿っている。搬送ロール12は、回転可能に支持された2つのロールを有し、それらのロールを回転させてシートを搬送方向A1に搬送する。搬送方向A1は、処理部20の前後では概ね水平方向に沿った方向である。
【0020】
処理部20は、搬送されるシート6の第1面61側に配置されてその第1面61に処理を施す。センサ30は、処理部20によってシート6に処理が施される位置(以下「処理位置」という)P1よりも上流側に設けられている。センサ30は、本実施形態では、処理部20と同様にシート6の第1面61側に配置されている。搬送部10では、処理位置P1において、第1面61が、処理部20がある方向(本実施例では鉛直上方)を向き、第2面62が、処理部20がある方向とは逆の方向(鉛直下方)を向くようになっている。以下では、シート6が第1面61側に反っていることを「アップカール」といい、シート6が第2面62側に反っていることを「ダウンカール」という。
【0021】
例えばセンサ30とシート6の先端との距離が閾値未満であればアップカールと判定され、その距離が閾値よりも大きければダウンカールと判定される。また、その距離が閾値と一致すれば、シート6がいずれの方向にも反っていないことが判定される。この判定では、例えばシートが水平方向に沿っている場合のセンサ30とシート6の先端との距離が閾値として用いられる。なお、センサ30は、シート6の第2面62側に配置されていてもよい。その場合、測定される距離が上記閾値(前述の閾値とは異なっていてもよい)未満ならダウンカール、閾値よりも大きければアップカールと判定される。
【0022】
図3は、
図2のB部を拡大して示す図である。処理部20の上流側の誘導部材11には、第1接触部材14及び第2接触部材15が設けられている。第1接触部材14は、処理位置P1よりも上流側で第1面61に接触する第1接触領域R14を有する。第2接触部材15は、第1接触領域R14よりも上流側で第2面62に接触する第2接触領域R15を有する。第1接触領域R14は、第2接触領域R15よりも、処理位置P1において処理部20からシート6に向かう方向A2側に配置されている。本実施形態では、方向A2は、鉛直下向きの方向である。
【0023】
処理部20の下流の誘導部材11には、第3接触部材16及び第4接触部材17が設けられている。第3接触部材16は、処理位置P1よりも下流で第1面61に接触する第3接触領域R16を有する。第4接触部材17は、第3接触領域R16よりも下流で第2面62に接触する第4接触領域R17を有する。第3接触領域R16は、第4接触領域R17よりも、前述した方向A2側に配置されている。
【0024】
第1接触部材14と第3接触部材16との間には、搬送路13の外部の空間と繋がる開口18が設けられ、処理部20は、開口18に配置されている。第1及び第2接触領域が上記のとおり配置されていることで、シート6は、両接触領域に接触すると、両接触領域に挟まれた部分の下流側が方向A2に傾いた状態、すなわち処理部20及び開口18から離れる向きに傾いた状態で搬送される。このため、本実施形態のように配置された第1接触領域R14及び第2接触領域R15を有しない場合に比べて、開口18からのシート6の飛び出し及び処理部20へのシート6の衝突が抑制される。
【0025】
シート6は、第1から第4までの各接触領域に接触すると、
図3に示すように、第2接触領域R15及び第4接触領域R17によって第2面62に対して方向A2の反対向きの力が加えられ、第1接触領域R14及び第3接触領域R16に第1面61が押し付けられる状態になる。これにより、これらの接触領域が設けられていない場合に比べて、処理位置P1における処理部20及び第1面61の距離(以下「シート距離」という。
図3の例ではL1)が一定に保たれやすくなり、且つ、方向A2と第1面61とが成す角度θ1(以下「シート角度」という。
図3の例では概ね90度)も一定に保たれやすくなる。なお、シート角度は、処理位置P1の上流側で成される角度をいうものとする。
【0026】
処理部20は、
図3に示すシート距離L1及びシート角度θ1でシートが処理位置P1を通過する場合に画像の読み取りの精度が最も高くなるように設けられている。このため、搬送装置1においては、第1から第4までの各接触領域が設けられていない場合に比べて、これらの接触領域にシート6が接触している状態における処理部20の処理の精度(本実施形態では画像の読み取りの精度)が向上する。以下では、
図3に示すシート距離L1を「基準シート距離L1」といい、
図3に示すシート角度θ1を「基準シート角度θ1」という。処理部20による処理の精度は、シート距離が基準シート距離L1に近いほど高くなり、シート角度が基準シート角度θ1に近いほど高くなる。
【0027】
搬送路13を挟んで処理部20と対向する位置には、移動部材40が設けられている。つまり、移動部材40は、搬送されるシート6の第2面62側に配置されている。移動部材40は、処理部20との距離を変更可能に支持されている。移動部材40は、本発明の「部材」の一例である。移動部材40は、本実施形態では、方向A2及び方向A2とは反対向きの方向A3に移動可能に支持されている。
図3では、方向A2に限界まで移動して処理部20との距離が最大になった状態(これを「第1の状態」という)の移動部材40が実線で示され、方向A3に限界まで移動して処理部20との距離が最小になった状態(これを「第2の状態」という)の移動部材40が二点鎖線で示されている。
【0028】
移動部材40は、処理部20側に面42を有している。つまり、面42は、搬送されるシート6の第2面62に対向するようになっている。また、面42は、上流側に傾いている。面42の下流側の端43は、移動部材40のうち方向A3に最も突き出た部分となっている。前述した第1の状態では、移動部材40の下流側に設けられた誘導部材11の面111と、端43とが接している。面111は、この誘導部材11のうち搬送路13を向いた面である。これにより、面42及び面111がなだらかに繋がっている。例えば端43が面111よりも引っ込んでいると、誘導部材11の移動部材40に面した側面112と面42とが段差を形成し、シート6の先端がその段差に引っ掛かることになる。そのような場合に比べ、本実施形態では、面42及び面111がなだらかに繋がっているので、シート6の先端が引っ掛かりにくくなっている。このように、移動部材40は、誘導部材11と同様に、シート6が搬送路13に沿って搬送されるように誘導している。
【0029】
なお、第1の状態では、端43が面111よりも方向A3側に飛び出していてもよい。その場合、移動部材40の下流側に段差が形成されるが、その段差にシート6の先端が引っ掛かることはないから、面42及び面111がなだらかに繋がっている場合と同様に、シート6の先端が引っ掛かりにくくなる。
【0030】
移動部材40は、上流側に、搬送方向A1の反対を向いた側面44を有する。前述した第2の状態では、この側面44が搬送路13に露出していない。これにより、移動部材40が有する面42がシートに接触し、側面44にはシート6の先端が引っ掛からないようになっている。また、面42は、本実施形態では、搬送方向A1に対して15度程度の角度を成すように傾いている。この傾きが大きすぎる(例えば45度を超える)と、シート6の先端が衝突したときに、シート6が折れ曲がる原因となる。面42が上記のとおり傾いていることにより、移動部材が例えば側面44のようにシートの搬送方向A1に対して垂直な面でシートに接触する場合に比べて、シート6の折れ曲がりが抑制される。
【0031】
また、第2の状態では、
図3に示すように各接触領域に接触した状態で搬送されるシート6の第2面62と、移動部材40の端43とが隙間C1を空けて接触しないようになっている。これにより、
図3に示す状態で搬送されているシートの姿勢が移動部材40によって乱されないようになっている。
【0032】
搬送装置1においては、CPU2が記憶部5等に記憶されているプログラムを実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
図4は、搬送装置1の機能構成の一例を示す図である。搬送装置1は、姿勢変更部50を備える。姿勢変更部50は、搬送部10によって搬送されるシートの姿勢を変更する機能である。姿勢変更部50は、センサ30と移動部材40とを備える。
【0033】
姿勢変更部50は、センサ30の出力に基づいて、搬送されるシートのカール方向を判定する。姿勢変更部50は、本実施形態では、上述したように、センサ30が測定するシートの先端との距離が閾値未満であればアップカールと判定し、その距離が閾値よりも大きければダウンカールと判定する。また、姿勢変更部50は、その距離が閾値であれば、シートがカールしていないと判定する。姿勢変更部50は、アップカールと判定した場合、すなわち、シートが第1面側に反っていることを表す出力をセンサ30が行った場合には、姿勢の変更を行わない。
【0034】
具体的には、姿勢変更部50は、移動部材40を
図3において実線で示した第1の状態にし、姿勢の変更を行わない。つまり、姿勢変更部50は、移動部材40が既に第1の状態になっていれば何も行わず、
図3において二点鎖線でしめした第2の状態になっていれば、移動部材40を第1の状態になるまで方向A2に移動させる。こうして移動部材40が第1の状態になった場合の処理位置P1におけるシートの姿勢について、
図5を参照して説明する。
【0035】
図5は、アップカール時のシートの姿勢の一例を示す図である。
図5(a)では、シート6の先端63が処理位置P1を通過したときの姿勢が示されている。シート6は、第1接触領域R14及び第2接触領域R15に接触することで、上述したように、両接触領域に挟まれた部分の先端63側(つまり下流側)が方向A2に傾いた状態で搬送される。しかし、シート6がアップカールしているため、シート6の第1接触領域R14よりも先端63側は、その傾きを打ち消す方向に反ることになる。
【0036】
そのため、例えばカールがない場合に比べると、上述したシート距離(処理位置P1における処理部20及びシートの距離)L2が、
図3に示す基準シート距離L1に近くなり、上述したシート角度θ2(処理位置P1において方向A2と第1面61とがなす角度)が
図3に示す基準シート角度θ1(概ね90度)に近くなる。これにより、カールがない場合に比べて処理の精度(画像の読み取りの精度)が高くなる。
【0037】
図5(b)では、シート6の後端64が処理位置P1を通過する直前の姿勢が示されている。この状態では、シート6が第3接触領域R16及び第4接触領域R17に接触する。この場合、
図5(a)の場合とは反対に、両接触領域に挟まれた部分の後端64側(つまり上流側)が方向A2に傾いた状態で搬送される。しかし、シート6がアップカールしているため、シート6の第3接触領域R16よりも後端64側は、その傾きを打ち消す方向に反ることになる。そのため、
図5(a)の場合と同様に、例えばカールがない場合に比べると、シート距離L3が基準シート距離L1に近くなり、シート角度θ2が基準シート角度θ1に近くなり、処理の精度が高くなる。
【0038】
一方、姿勢変更部50は、ダウンカールと判定した場合、すなわち、シートが第2面側に反っていることを表す出力をセンサ30が行った場合には、次のような姿勢の変更を行う。姿勢変更部50は、処理部20による処理が施される位置(上述した処理位置P1)においてそのシートが処理部20に近づくようにシートの姿勢を変更する。具体的には、姿勢変更部50は、移動部材40と処理部20との距離を短くし、移動部材40を(より詳細には移動部材40の面42を)第2面に接触させることで、そのような姿勢の変更を行う。この場合、姿勢変更部50は、移動部材40が第2の状態になっていれば何も行わず、第1の状態になっていれば、移動部材40を第2の状態になるまで方向A3に移動させる。こうして移動部材40が第1の状態になった場合この場合の姿勢の変更について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0039】
図6及び
図7は、ダウンカール時のシートの姿勢の一例を示す図である。
図6では、姿勢変更部50が仮にダウンカール時に姿勢の変更を行わなかった場合における姿勢((a)では先端63側、(b)では後端64側)が示されている。この場合、先端63側及び後端64側のどちらでも、各接触領域との接触により生じたシート6の傾きが、ダウンカールによって処理位置P1においてはさらに増加している。このため、カールがない場合に比べて、基準シート角度θ1と
図6(a)に示すシート角度θ4との差が大きくなっている。また、例えば
図6(a)に示すシート6は、先端63に近づくほどダウンカールによって処理部20から離れるようになっている。そのため、カールがない場合に比べて、基準シート距離L1と
図6(a)に示すシート距離L4との差が大きくなっている。これらのことは、
図6(b)に示す後端64側におけるシート角度θ5及びシート距離L5でも同様である。
【0040】
図7では、姿勢変更部50がシートの姿勢を変更した場合((a)では先端63側、(b)では後端64側)が示されている。姿勢変更部50は、
図7に示すように、移動部材40を方向A3に移動させて上述した第2の状態にすることで、移動部材40と処理部20との距離を短くしている。その結果、
図7(a)に示す場合であれば、先端63側が処理部20に近づくようにシート6の姿勢が変更される。これにより、姿勢変更部50による姿勢の変更が行われない場合に比べて、シート角度θ6が基準シート角度θ1に近くなり、シート距離L6も、基準シート距離L1に近くなる。これらのことは、
図7(b)に示す後端64側におけるシート角度θ7及びシート距離L7でも同様である。
【0041】
このように、本実施形態によれば、第2面側に反っているシートの姿勢を変更しない場合に比べて、搬送中に処理が施される位置(上記例では処理位置P1)におけるシートの姿勢が安定する。また、処理部20との距離が短くなった移動部材40がシートに接触するため、第2面側に反っている(ダウンカールしている)シートの姿勢が確実に変更される。
【0042】
なお、仮にアップカール時に移動部材40が第2の状態になっていると、シート6が移動部材40に接触したときに、カールがない場合やダウンカール時に比べて、シートがアップカールしている分先端63が開口18に近づきやすく、先端63が開口18から外部空間に飛び出してしまうおそれも大きくなる。本実施形態では、アップカール時に姿勢変更部50が移動部材40を第1の状態にするので、アップカール時にも移動部材40を第2の状態にする場合に比べて、開口18からのシート6の飛び出し及び処理部20へのシート6の衝突が抑制される。
【0043】
姿勢変更部50は、本実施形態では、シートがカールしていないと判定した場合には、ダウンカール時と同様に移動部材40を第2の状態にし、姿勢の変更を行う。搬送路13が水平方向に沿っているため、シートがカールしていない場合でも、重力により鉛直下向きの力が働いてシートが鉛直下向きに抑えられ、ダウンカール時ほどではなくても、処理位置P1において、シートの先端側及び後端側の傾きが増加し、また、シートの先端側及び後端側が処理部20から離れるようになっている。そのため、姿勢変更部50による姿勢の変更が行われることで、ダウンカール時と同様に、処理位置P1におけるシートの姿勢が安定する。
【0044】
姿勢変更部50は、上述したように、カール方向を判定した結果、必要であれば移動部材40を移動させて第1の状態から第2の状態への切り替えを行う。この状態の切り替えは、処理位置P1にシートが到達するまでに行われることが望ましい。本実施形態では、
図2に示すセンサ30が、姿勢変更部50が姿勢の変更を行っていない状態(すなわち第1の状態)から、シートが第2面側に反っていることが判定されて姿勢の変更を行う状態(すなわち第2の状態)になるまで、に要する時間でシートが搬送される距離よりも処理位置P1から離れたところに設けられている。
【0045】
これにより、ダウンカールしたシートが処理位置P1に到達するときには、移動部材40が第2の状態になっているから、ダウンカールしたシートの先端の姿勢が十分に変更されないということが防止される。
また、本実施形態では、センサ30の出力に基づいてカール方向の判定が行われる。これにより、搬送されているシートの実際のカール方向に基づいてそのシートの姿勢の変更が行われる。
【0046】
[1−2]動作
図8は、搬送装置1の動作を示すフロー図である。搬送装置1は、本実施形態では、シートへの画像の形成が開始されることを契機に動作を開始する。搬送装置1は、まず、画像が形成されたシートの搬送を開始し(ステップS11)、そのシートのカール方向を判定する(ステップS12)。搬送装置1は、アップカールと判定した場合には、移動部材40を
図3において実線で示した第1の状態にし(ステップS13)、ダウンカールと判定した場合には、移動部材40を
図3において二点鎖線で示した第2の状態にする(ステップS14)。
【0047】
詳細には、搬送装置1は、ステップS13では、移動部材40が第2の状態になっていれば移動部材40を方向A2に移動させて処理部20との距離を長くし、既に第1の状態になっていれば何もしない。また、搬送装置1は、ステップS14では、移動部材40が第1の状態になっていれば移動部材40を方向A3に移動させて処理部20との距離を短くし、既に第2の状態になっていれば何もしない。そして、搬送装置1は、搬送を終了するか否かを判断する(ステップS15)。搬送装置1は、例えばシートへの画像の形成が続いていれば搬送を終了しない(NO)と判断し、ステップS12に戻って動作を続ける。また、搬送装置1は、シートへの画像の形成が終了していれば搬送も終了する(YES)と判断して動作を終了する。
【0048】
[2]変形例
上述した実施形態は、本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、上述した実施形態及び以下に示す各変形例は、必要に応じてそれぞれ組み合わせて実施してもよい。
【0049】
[2−1]移動部材
移動部材は、実施形態に示したものに限らない。
図9は、本変形例の移動部材の例を示す図である。
図9(a)では、処理部20側に
図3に示す第1接触部材14側に傾いた面42aと第3接触部材16側に傾いた面42bとを有する移動部材40aが示されている。実施形態では、搬送方向が一定であったが、搬送装置によっては、搬送方向が反対向きになる場合がある。そのような場合に、移動部材40aであれば、シートがどちらの方向に搬送されてもその先端が処理部20側の面になだらかな角度で衝突し、シートが折れ曲がりにくいようになっている。
【0050】
図9(b)では、処理部20側に曲面42cを有する移動部材40cが示されている。このように、移動部材は、
図3に示す面42のような平面に限らず、曲面を処理部20側に有していてもよい。
図9(c)では、平板の形をした移動部材40dが示されている。移動部材40dは、例えば自部材の面42dに沿った方向A4に移動可能に支持される。移動部材は、
図2等に示す誘導部材11のような誘導部材の隙間から搬送路内に入り込んで移動するが、移動部材40dを用いた場合、例えば実施形態に比べてその隙間が小さくて済む。
【0051】
[2−2]姿勢変更部
姿勢変更部は、実施形態では移動部材とは異なる部材を用いてシートの姿勢を変更してもよい。
図10は、本変形例で姿勢変更部が用いる部材の一例を示す図である。
図10では、軸45eを中心に回転するカム状の回転部材40eが示されている。
図10(a)では回転部材40eが第1の状態、すなわち処理部20との距離が最大になった状態が示されている。
図10(b)では、
図10(a)に示す回転部材40eが方向A5に回転し、第2の状態、すなわち処理部20との距離が最小になった状態が示されている。この場合も、処理位置においてシートが処理部20に近づくように姿勢変更部がシートの姿勢を変更することになり、搬送中に処理が施されるシートの処理位置における姿勢が安定する。
【0052】
図11は、本変形例の姿勢変更部が用いる部材の別の一例を示す図である。
図11では、軸45fを中心に回転する板状の回転部材40fが示されている。
図11(a)では回転部材40fが第1の状態、すなわち処理部20との距離が最大になった状態が示されている。第1の状態では、回転部材40fは、上流側及び下流側の誘導部材11fと段差なくなだらかに繋がっている。
図11(b)では、
図11(a)に示す回転部材40fが方向A6に回転し、第2の状態、すなわち処理部20との距離が最小になった状態が示されている。この例でも、搬送中に処理が施されるシートの処理位置における姿勢が安定する。また、回転部材40fが板状であるため、板状の回転部材を用いない場合に比べて、回転部材40fの上流側も下流側も誘導部材11と段差なくなだらかに繋がるように形成しやすい。回転部材40e及び40fは、それぞれ本発明の「部材」の一例である。
【0053】
[2−3]センサ
姿勢変更部は、実施形態では1つのセンサを有していたが、2以上のセンサを有していてもよい。センサを増やし、シート及びセンサの距離を測定する箇所を増やすほど、シートのカール方向がより確実に判定されることになる。また、シートが水平方向に沿って搬送されていると、実際には反っていないシートでも重力により鉛直下方に反っていると判定されることがある。そこで、実施形態のように水平方向に沿った搬送路ではなく、鉛直に沿った搬送路にセンサを設けることで、重力の影響を除いたときのカール方向が判定されるようにしてもよい。
【0054】
[2−4]カール方向の判定
姿勢変更部は、実施形態とは異なる方法でカール方向を判定してもよい。
図12は、本変形例の姿勢変更部の構成の一例を示す図である。
図12では、
図4に示すセンサ30に代えて取得部60を有する姿勢変更部50gが示されている。取得部60は、カール方向(すなわちシートが反っている方向)を表す情報を取得する。カール方向を表す情報とは、例えば、シートの銘柄や温度、湿度、トナー量、シートを反らせるような力が加わる構造(定着器や曲率の大きい搬送路、カールを矯正する装置(いわゆるデカラー))などの情報である。
【0055】
シートの銘柄、温度及び湿度によって、第1面及び第2面の伸縮率の差が算出可能であり、その差によってカール方向が表される。また、トナーが少ないほど定着器の熱がシートに加えられるため、画像が形成される側(実施形態では第1面)の含水率が少なくなり、第1面側に反りやすくなる。また、定着器やデカラーがシートに加える熱量や圧力、搬送路の曲率などによっても、シートが反りやすい方向が表される。姿勢変更部50gは、これらの情報に基づいて、周知の技術を用いてカール方向を判定する。
【0056】
そして、姿勢変更部50gは、シートが第2面側に反っていることを表す情報が取得部60により取得された場合に姿勢の変更を行う。本変形例では、
図2に示すセンサ30のようなカール方向を判定するためのセンサが設けられない場合(例えばそのための空間や配線などが確保できない場合)でも、カール方向が判定される。
【0057】
[2−5]アップカール時
姿勢変更部は、実施形態では、アップカール時にシートの姿勢を変更しなかったが、これに限らず、アップカール時にもシートの姿勢を変更してもよい。その場合、例えばダウンカール時よりもシートが処理部に近づく度合いを小さくすればよい。実施形態の移動部材40を備える場合であれば、姿勢変更部は、アップカール時に、
図3に実線で示す状態よりも方向A3側で且つ二点鎖線で示す状態よりも方向A2側に移動部材40を移動させる。この場合も、移動部材40を第2の状態にする場合に比べれば、シート6の先端63が開口18から飛び出しにくい。
【0058】
また、姿勢変更部は、アップカール時に、処理位置においてシートが処理部20から遠ざかるようにシートの姿勢を変更してもよい。
図13は、本変形例の姿勢変更部の構成の一例を示す図である。
図13の例では、本変形例の姿勢変更部が備える回転部材70が示されている。回転部材70は、
図3に示す第1接触部材14と形が共通しており、上流側の端部に設けられた軸71を中心に回転可能に支持されている。回転部材70は、処理位置P1よりも上流側でシート6の第1面61に接触する第1接触領域R70を有する。
【0059】
図13(a)の例では、
図3に示す第1接触領域R14と共通する位置に第1接触領域R70が配置されている。この例では、アップカールの度合いが大きいシート6hが搬送されており、第1接触領域R70に接触している部分よりも先端63hが大きく第1面61h側に反っているため、先端63hが開口18から飛び出しそうになっている。また、
図5に示すアップカール時の例に比べても、基準シート距離L1と
図13(a)に示すシート距離L8との差が大きくなり、基準シート角度θ1とシート角度θ8との差が大きくなっているため、処理部20による処理の精度が低下している。
【0060】
図13(b)では、シート6hが搬送されたときに回転部材70が方向A7に回転された状態が示されている。この回転により、第1接触領域R70が方向A2(処理位置P1において処理部20からシート6に向かう方向)に移動して、処理位置P1において先端63h側が処理部20から遠ざかるようにシートの6hの姿勢が変更される。これにより、アップカール時の姿勢の変更を行わない場合(
図13(a)に示す例)に比べて、シート距離L9が基準シート距離L1に近くなり、シート角度θ9が基準シート角度θ1に近くなるため、処理部20による処理の精度が向上する。
【0061】
[2−6]部材の位置
実施形態の移動部材や上記変形例の回転部材は、実施形態のように搬送路を挟んで処理部と対向する位置に設けられてもよいし、それよりも上流側や下流側にずれた位置に設けられてもよい。処理位置におけるシートの姿勢が変更されるのであれば、これらの部材をどの位置に設けてもよい。
【0062】
[2−7]カールがない場合
姿勢変更部は、カールがない場合、実施形態ではダウンカール時と同様にシートの姿勢の変更を行ったが、これを行わないようにしてもよい。例えば処理部20が配置されている開口が大きくなったり、搬送方向が鉛直方向に近くなって重力による抑えが利かなくなったりした場合には、第2の状態の移動部材40に衝突したシートの先端がその反動で鉛直上向きに跳ね返ってその開口から飛び出すということが起こり得る。そのような場合でも、本変形例によれば、開口からのシートの飛び出しが抑制される。
【0063】
[2−8]ガラスカバー
搬送装置においては、処理部とシートとの間にガラスカバーが設けられてもよい。これにより、シートの先端が処理手段に衝突したり、開口から飛び出したりしなくなる。また、搬送装置においては、第1接触領域R14及び第2接触領域R15によってシートを方向A2に傾けて搬送するため、これらの接触領域が設けられていない場合に比べて、ガラスカバーにシートが衝突しにくく、トナー等によるガラスカバーの汚れが生じにくい。
【0064】
[2−9]処理部が行う処理
処理部は、実施形態では画像の読み取りという処理を行ったが、これに限らず、例えば、シートにインクを噴出する処理などを行ってもよい。要するに、処理手段は、媒体の第1面に対して何らかの処理を行うものであればよい。特に、上述したシート距離及びシート角度が処理の結果に影響しやすい場合には、本発明を適用することで、それらの距離及び角度が安定し、処理の精度が向上する。
【0065】
[2−10]搬送部
搬送部は、実施形態では、処理部の前後において概ね水平方向に沿ってシートを搬送したが、これに限らず、例えば鉛直方向に沿って搬送してもよいし、これらの方向に交差する方向(斜めの方向)に沿って搬送してもよい。また、搬送部は、
図3等に示した接触領域を有していなくてもよい。
【0066】
図14は、本変形例の搬送部の一例を示す図である。
図14では、接触領域を有しない搬送部10kが示されている。搬送部10kは、処理位置P1kの上流側に搬送ロール121k及び122kを有する。これらの搬送ロールは、ニップ領域123kを通過するシートが鉛直下方に斜めに送り出されるように傾けて設けられている。
図14では、第2面側に反ったシート6kを実線で示し、第1面側に反ったシート6mを二点鎖線で示している。
【0067】
シート6k及び6mが示すように、この例でも、シート6mのようにアップカールの場合は、カールがない場合に比べると、シート距離が基準シート距離に近くなり、シート角度が基準シート角度に近くなる。また、シート6kのようにダウンカールの場合は、姿勢変更部が移動部材40kを移動させてシート6kの姿勢を変更することで、シート距離が基準シート距離に近づき、シート角度が基準シート角度に近づく。
【0068】
また、処理部の前後における搬送路が弧(カーブ)を描いていてもよい。
図15は、本変形例の搬送路の一例を示す図である。
図15では、搬送路13iに沿ってシートを搬送する搬送部10iが示されている。搬送路13iは、処理部20iが設けられている側に反っている。つまり、搬送路13iは、搬送されるシートの第1面側に反っている。搬送路13iは、弧を描いており、弧の中心に近い方(これを「内側」という)の誘導部材11iとこの中心から離れた方(これを「外側」という)の誘導部材11jとによって形成されている。このように、搬送部10iは、処理位置P1iよりも上流側において、第1面側に反った搬送路13iに沿ってシートを搬送する。そのため、処理位置P1iの前後において、シートの先端が外側の誘導部材11jにシートが衝突しやすい。
【0069】
図15(a)では、第1面側に反ったシート6iを搬送部10iが搬送する場合が示されている。この場合、シート6iが反っている方向と搬送路が反っている方向とが一致しているため、シート6iが外側の誘導部材11iに衝突する角度が小さくなりやすく、且つ、図に示すようにシート6i全体が外側の誘導部材11jに沿って搬送されやすい。搬送部10iを備える搬送装置においては、
図15(a)に示すようにシート6iが外側の誘導部材11jに沿っている状態のときにシートの姿勢が安定しやすいので、この例におけるシート距離であるL10を基準シート距離とし、この例におけるシート角度であるθ10を基準シート角度とするように処理部20iが設けられている。
【0070】
図15(b)では、第2面側に反った(ダウンカールの)シート6jを搬送部10iが搬送する場合が示されている。この場合、シート6jが反っている方向と搬送路が反っている方向とが反対であるため、シート6jの先端側は、外側の誘導部材11jに先端だけ接触して他の部分は外側の誘導部材11jから離れた状態になりやすい。そのため、図に示すように、シート距離L11及び基準シート距離L10の差も、シート角度θ11及び基準シート角度θ10の差も大きくなりやすい。
【0071】
図15の例では、搬送部10iによって搬送されるシートが第2面側に反っている場合には、処理位置P1iにおいてシートが処理部20iから遠ざかるようにシートの姿勢を変更する。この変更が行われた場合のシートの姿勢を
図15(c)に示す。本変形例の姿勢変更部は、処理位置P1iよりも上流側且つシート6jの第1面61j側に配置された回転部材40iを有する。回転部材40iは、自部材の上流側に回転軸41iを有する。
図15(c)では、姿勢変更部が回転軸41iを中心に回転部材40iを回転させ、回転部材40iを第1面61jに接触させている。これにより、シート6jは、誘導部材11j側に押し付けられるようになり、処理位置P1iにおいては誘導部材11jとほぼ接するようになっている。
【0072】
姿勢変更部が上記のとおりシート6jの姿勢を変更させたことで、
図15(c)に示すシート距離L12は、姿勢の変更を行わなかった場合のシート距離L11に比べて基準シート距離L10に近くなる。また、
図15(c)に示すシート角度θ12も、姿勢の変更を行わなかった場合のシート角度θ11に比べて基準シート角度θ10に近くなる。従って、本変形例によれば、姿勢の変更を行わない場合に比べて、処理部20iによる処理の精度が向上する。
【0073】
[2−11]発明のカテゴリ
本発明は、上述した搬送装置の他に、処理部20による読み取りの結果を出力する検査装置や画像読取装置としても捉えられる。また、処理部がインクをシートに噴出する場合、画像形成装置としても捉えられる。本発明は、搬送されるシートに処理を行うものであって、処理位置におけるシートの姿勢が安定していることが望ましいものであれば、どのような装置に適用されてもよい。