特許第6405877号(P6405877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405877
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ベルレス高炉の原料装入方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20181004BHJP
   C21B 7/18 20060101ALI20181004BHJP
   C21B 7/20 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C21B5/00 311
   C21B7/18 301
   C21B7/20 304
   C21B7/20 306
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-212862(P2014-212862)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-79468(P2016-79468A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 将達
(72)【発明者】
【氏名】三尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】砂原 公平
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−223113(JP,A)
【文献】 特開2003−311216(JP,A)
【文献】 特許第5338308(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00
C21B 7/00−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉頂部に主原料ホッパーの他に、副原料ホッパーを有するベルレス高炉の原料装入方法において、
鉱石とコークスの混合物は、前記副原料ホッパーに装入され、
前記混合物は、装入ベルトコンベア上に前記鉱石と前記コークスとを切り出す際に、前記鉱石の上に前記コークスが層状に積層させることで形成され、
前記副原料ホッパーは、平板でありかつ可動軸を有する整流板を一つ有し、
前記整流板は、前記平板が、前記装入ベルトコンベアからの原料装入方向に対向し、前記副原料ホッパーを、前記整流板に対して前記原料装入方向の手前側に位置する第1の領域と、前記整流板に対して前記原料装入方向の奥側に位置する第2の領域とに二分するように設置されており、
前記整流板の前記可動軸よりも上方側の部分が、前記混合物が前記装入ベルトコンベアから前記副原料ホッパー内に自由落下する間に、前記混合物の落下軌跡を二分することで、前記混合物のうちの前記コークスの前記副原料ホッパー内への装入位置を決定し、
前記整流板の前記可動軸よりも下方側の部分が、前記副原料ホッパーの排出口上部で、前記第1の領域に装入された装入物が通過する第1の排出流路と前記第2の領域に装入された装入物が通過する第2の排出流路とを形成し、前記第1の排出流路及び前記第2の排出流路のうちいずれか一方からの装入物を優先的に排出させるものであり、
前記副原料ホッパーから排出される前記混合物中の前記コークスの比率について所望の経時的変化を得るべく、前記整流板の角度を予め定めておくことを特徴とするベルレス高炉の原料装入方法。
【請求項2】
前記装入ベルトコンベア上で、前記鉱石の上に前記コークスを層状に積層するに際し、
前記装入ベルトコンベア上の全積層長さに対して、前記コークスを先頭から50%以内に積層することを特徴とする請求項1に記載のベルレス高炉の原料装入方法。
【請求項3】
Cc、C、O、Oの順で実施する4バッチ装入であって、
前記Oに前記混合物を装入するに際し、
前記副原料ホッパーからの全排出時間に対し、前半50%の排出時間に排出するコークス量を増加させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルレス高炉の原料装入方法。
【請求項4】
Cc、C、O、Oの順で実施する4バッチ装入であって、
前記Oに前記混合物を装入するに際し、
前記副原料ホッパーからの全排出時間に対し、後半50%の排出時間に排出するコークス量を増加させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルレス高炉の原料装入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルレス高炉の原料装入方法に関する。特に、炉頂ホッパー内で焼結鉱、ペレット、塊鉱石などの鉱石原料に対してコークスを混合しながら高炉内部へ装入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業は、温室効果ガスの一つである二酸化炭素の排出量が多いため、その排出量の削減が求められている。そこで、二酸化炭素の排出量削減などを目的として、銑鉄製造用原料として使用しているコークスの比率を低減する操業(低コークス比操業)が行われている。
通常、高炉は、焼結鉱やペレット、塊鉱石などの鉱石原料と、石炭を乾留したコークスと、を用い、鉱石原料とコークスのそれぞれを層状に装入することで、銑鉄の製造を行っている。
コークスは、高炉内において、還元材、高炉内の熱源、通気確保のためのスペーサーなど、様々な役割を担っている。低コークス比操業を実施すると、上記役割を担うコークス量が減少することになる。この場合、還元反応の遅れや、熱不足、通気性の悪化などの問題が生じることが懸念される。中でも、炉下部での通気性の悪化が特に問題となっている。これは、炉下部の鉱石溶融部が最も通気抵抗が高いことが原因と考えられる。
【0003】
そこで、通気性を改善させるために、鉱石層にコークスを混合する、鉱石層へのコークス混合装入方法が提案されている。ここで、コークスは、通気確保のためのスペーサーとしての役割を持たせることを目的として、鉱石層内に混合される。
一方で、鉱石とコークスとでは、密度や粒径、形状などの差が存在する。このため、鉱石層へのコークス混合装入では、高炉内部への装入前の搬送設備において、コークスの偏析や分離が生じてしまう問題があった。
【0004】
鉱石層へのコークス混合装入に関して、以下のような技術が提案されている。
装入ベルトコンベア上での鉱石類原料の搬送方向長さに対して、炉頂バンカーに装入される先頭側50%以内にコークスを積層した状態で、原料装入する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、2つの炉頂バンカーにそれぞれ保持された鉱石類とコークスを同時に炉内へ装入するに際して、1バッチ分のコークス装入量が5〜50質量%のときに、鉱石を同時に切り出すことで、コークスの中心装入と鉱石及びコークスの混合装入とを1バッチで行うことが記載されている(特許文献2参照)。
【0005】
更に、異なる粒径の装入物を装入する技術として、ホッパー内上部に設けられ、原料装入時にホッパー内に落下してくる原料がすべて当たるように配置された衝突板と、ホッパー内下部に設けられ、原料排出時の流動パターンを変化可能な整流板とを備えた、ホッパーからの時系列排出粒度特性の調整装置が記載されている(特許文献3参照)。特許文献3によれば、ホッパーからの排出時の原料粒度を制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5338308号公報
【特許文献2】特許第4269847号公報
【特許文献3】実公平08−350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1では、炉頂ホッパーに装入した後のコークスの混合率の径方向分布をより均一化することは可能であるが、炉内に装入したときにコークスが偏析してしまうため、必ずしも効果的に混合層を形成することはできない。
また、上記特許文献2では、鉱石類とコークスとを混合装入する際の偏析などの問題に対応していない。
また、上記特許文献3では、コークス又は鉱石の一種類の原料における粒度を対象としており、両者を混合した混合物の装入方法については言及されていない。
【0008】
鉱石層へのコークス混合装入をする際には、炉頂部の原料ホッパーにて均一混合を行っても、原料ホッパーから炉内への装入時には、炉半径方向に原料が偏析する、もしくは堆積時に偏析してしまうことがある。このため、必ずしも炉内に均一に混合層を作るには、炉頂部の原料ホッパー装入時に、均一化することが最適とはいえない。このため、炉頂部の混合率を制御する必要があった。
【0009】
本発明の目的は、鉱石層へのコークス混合装入において、鉱石とコークスの混合物中のコークスの比率の経時的変化を制御することが可能な、ベルレス高炉の原料装入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鉱石層へのコークス混合装入において、ホッパー内に整流板を設置し、この整流板の角度を変更することによって、鉱石とコークスの混合物中のコークスの比率の経時的変化を制御することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、かかる知見に基づくものである。
(1)炉頂部に主原料ホッパーの他に、副原料ホッパーを有するベルレス高炉の原料装入方法において、鉱石とコークスの混合物は、前記副原料ホッパーに装入され、前記混合物は、装入ベルトコンベア上に前記鉱石と前記コークスとを切り出す際に、前記鉱石の上に前記コークスを層状に積層させることで形成され、前記副原料ホッパーは、平板でありかつ可動軸を有する整流板を一つ有し、前記整流板は、前記平板が、前記装入ベルトコンベアからの原料装入方向に対向し、前記副原料ホッパーを、前記整流板に対して前記原料装入方向の手前側に位置する第1の領域と、前記整流板に対して前記原料装入方向の奥側に位置する第2の領域とに二分するように設置されており、前記整流板の前記可動軸よりも上方側の部分が、前記混合物が前記装入ベルトコンベアから前記副原料ホッパー内に自由落下する間に、前記混合物の落下軌跡を二分することで、前記混合物のうちの前記コークスの前記副原料ホッパー内への装入位置を決定し、前記整流板の前記可動軸よりも下方側の部分が、前記副原料ホッパーの排出口上部で、前記第1の領域に装入された装入物が通過する第1の排出流路と前記第2の領域に装入された装入物が通過する第2の排出流路とを形成し、前記第1の排出流路及び前記第2の排出流路のうちいずれか一方からの装入物を優先的に排出させるものであり、前記整流板の角度を変更することによって、前記副原料ホッパーから排出される前記混合物中の前記コークスの比率について所望の経時的変化を得るべく、前記整流板の角度を予め定めておくことを特徴とするベルレス高炉の原料装入方法。
(2)前記装入ベルトコンベア上で、前記鉱石の上に前記コークスを層状に積層するに際し、前記装入ベルトコンベア上の全積層長さに対して、前記コークスを先頭から50%以内に積層することを特徴とする(1)に記載のベルレス高炉の原料装入方法。
(3)Cc、C、O、Oの順で実施する4バッチ装入であって、前記Oに前記混合物を装入するに際し、前記副原料ホッパーからの全排出時間に対し、前半50%の排出時間に排出するコークス量を増加させることを特徴とする(1)又は(2)に記載のベルレス高炉の原料装入方法。
(4)Cc、C、O、Oの順で実施する4バッチ装入であって、前記Oに前記混合物を装入するに際し、前記副原料ホッパーからの全排出時間に対し、後半50%の排出時間に排出するコークス量を増加させることを特徴とする(1)又は(2)に記載のベルレス高炉の原料装入方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホッパー内に整流板を設置し、この整流板の角度を変更することにより、鉱石層へのコークス混合装入において、混合物中のコークスの比率の経時的変化を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】Cc、C、O、O装入における装入物分布の模式図。
図2】整流板と原料装入時の落下軌跡との関係を示す図。
図3】模型実験装置の概略図。
図4】副原料ホッパーの形状を示す図。
図5】副原料ホッパーに整流板を設置した状態を示す図。
図6】原料の切り出し条件を説明する図であり、(A)は均一重ね、(B)は前半1/2重ね、(C)は中盤1/2重ね、(D)は後半1/2重ねである。
図7】原料のサンプリング方法を説明する図。
図8】原料切り出しを均一重ねにしたときの、副原料ホッパーから排出されるコークスの排出速度割合を示す図。
図9】原料切り出しを前半1/2重ねにしたときの、副原料ホッパーから排出されるコークスの排出速度割合を示す図。
図10】原料切り出しを中盤1/2重ねにしたときの、副原料ホッパーから排出されるコークスの排出速度割合を示す図。
図11】原料切り出しを後半1/2重ねにしたときの、副原料ホッパーから排出されるコークスの排出速度割合を示す図。
図12】Cc、C、O、O装入において、整流板をプラス側に傾斜させたときの混合状況を説明する図。
図13】Cc、C、O、O装入において、整流板をマイナス側に傾斜させたときの混合状況を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態におけるベルレス高炉の原料装入方法は、炉頂部に主原料ホッパーの他に、副原料ホッパーを有するベルレス高炉の原料装入方法において、鉱石とコークスの混合物は、前記副原料ホッパーに装入され、前記混合物は、装入ベルトコンベア上に前記鉱石と前記コークスとを切り出す際に、前記鉱石の上に前記コークスが層状に積層させることで形成され、前記副原料ホッパーは、可動軸を有する整流板を一つ有し、前記整流板の前記可動軸よりも上方側の部分が、前記混合物が前記装入ベルトコンベアから前記副原料ホッパー内に自由落下する間に、前記混合物の落下軌跡を二分することで、前記混合物のうちの前記コークスの前記副原料ホッパー内への装入位置を決定し、前記整流板の前記可動軸よりも下方側の部分が、前記副原料ホッパーの排出口上部で、前記整流板の下方側の部分の端部と前記副原料ホッパーの両側面との間で、所定の断面積比率を有する2つの排出流路を形成することで、前記2つの排出流路を通過する前記混合物のそれぞれの流量を決定するものであり、前記整流板の角度を変更することによって、前記副原料ホッパーから排出される前記混合物中の前記コークスの比率の経時的変化を制御することを特徴とする。
【0014】
副原料ホッパーは、通常、炉中心部へのコークス装入に使用されている。本実施形態では、この副原料ホッパーを、炉中心部へのコークス装入だけでなく、鉱石とコークスの混合物を装入する、コークス混合装入に使用する。
コークス混合装入に使用されるコークスは、鉱石の平均粒径に対して、5倍以上の平均粒径を有する塊コークスを使用することが好ましい。粒径比が大きいほど粒度偏析が顕著となるため、本発明の効果が得やすくなる。
【0015】
本実施形態の原料装入方法は、Cc、C、O、Oの順で装入する4バッチ装入に適している。このうち、C、Oは、主原料ホッパーからの装入、Cc、Oは、副原料ホッパーからの装入である。
具体的には、Ccバッチでは、コークスを装入し、炉の中心部にコークス層を形成する。次いで、Cバッチでは、コークスを装入し、炉壁部側に略水平な形状の水平型テラスと、更に、この水平型テラスの炉内側先端から炉中心部に向け下方に傾斜する傾斜コークス層を形成する。次に、Oバッチでは、鉱石とコークスの混合物を装入し、上記Cバッチの水平型テラスの上に、鉱石とコークスの混合物層を形成する。最後に、Oバッチでは、鉱石を装入し、炉壁部側に略水平な形状の水平型テラスと、更に、この水平型テラスの炉内側先端から炉中心部に向け下方に傾斜する傾斜鉱石層を形成する。
上記Cc、C、O、O装入における装入物分布の模式図を図1に示す。
【0016】
<副原料ホッパー1への鉱石とコークスの混合物の装入>
以下、C、Oの主原料ホッパーからの原料装入とCcの副原料ホッパーからの原料装入は、従来と同様であるため省略し、Oの副原料ホッパーへの鉱石とコークスの混合物の装入を説明する。
図2に示すように、副原料ホッパー1の内部には、可動軸3を有する整流板2が一つ設置されている。ここに、整流板2の上方側の部分の端部2Aは、自由落下する原料を二分する位置におく。また、整流板2の上方側の部分の端部2Aの高さは、当該バッチの全原料が装入された時点で形成される堆積面の高さに合わせるのが好ましい。また、当該バッチの全原料量は、その堆積面が整流板2の上方側の部分の端部2Aと一致する体積の1.1倍以内が好ましい。それによって、次に述べるコークス分級を十分に行わすことができる。
先ず、鉱石とコークスとを切り出す際には、混合物は、炉頂ホッパー直前の装入ベルトコンベア上にて、鉱石の上にコークスを層状に積層させることで形成される。
そして、装入ベルトコンベアから、上記層状に積層させた混合物を落下させ、副原料ホッパー1へと混合物を装入する。装入ベルトコンベアから落下させた混合物は、図2の矢印で示す、放物線の落下軌跡を描いて、整流板2の可動軸3よりも上方側の部分に衝突する。ここで、整流板2と混合物との衝突は、落下する混合物のうち、8割程度の混合物が整流板2と衝突するように、整流板2の設置位置並びに整流板2の傾斜角を調整することが好ましい。混合物は、整流板2との衝突で、平均粒径が大きく、かつ密度が小さいコークスの大部分が、装入ベルトコンベア側から見て、整流板2の奥側に位置する領域(図2中の整流板2よりも右側の領域)に装入される。また、コークスよりも細粒の鉱石は、装入ベルトコンベア側から見て、整流板2の手前側に位置する領域(図2中の整流板2よりも左側の領域)に装入される確率が高い。
これにより、混合物は、整流板2を挟んで二分され、図2に示す、ホッパーの左側の領域Aに鉱石を多く含む装入物が、ホッパーの右側の領域Bにコークスを多く含む装入物がそれぞれ装入される。以下、副原料ホッパー1内に装入された混合物を、装入物として説明する。
【0017】
<副原料ホッパー1からの装入物の排出>
そして、副原料ホッパー1からの装入物の排出時には、先ず、副原料ホッパー1の排出口に近い領域Cに装入されたものが最初に排出される。次に、排出されるのは、整流板2の可動軸3よりも下方側の部分の位置の影響を受ける。
整流板2は、副原料ホッパー1の排出口の上部において、副原料ホッパー1を2つの領域に区画する。ここで区画された領域は、上記領域Cを除いた領域である。そして、整流板2の可動軸3よりも下方側の部分の端部と副原料ホッパー1の両側面との間で、所定の断面積比率を有する2つの排出流路が形成されている。2つの排出流路のうち、一方の排出流路は、領域Aの排出流路、他方の排出流路は、領域Bの排出流路である。
図2に示すように、整流板2の可動軸3よりも上方側の部分が、装入ベルトコンベアから離れる方向へと整流板2を傾けた状態の場合、整流板2の可動軸3よりも下方側の部分は、装入ベルトコンベア側に近接する状態に位置している。このため、排出口に至る断面積は、領域Aの排出流路に比べて、領域Bの排出流路の方がその比率が大きくなる。これにより、2つの排出流路を通過する装入物のそれぞれの流量が決定される。したがって、図2に示すホッパーの右側の、領域Bのコークスが多く堆積した装入物が優先的に排出される。また、密度の大きい鉱石も同時に排出しようとするために、密度の大きい鉱石とコークスとが混合しながら排出されることになる。そして、最後に、ホッパーの左側の、領域Aの鉱石が多く堆積した装入物が排出される。このように、整流板2の可動軸3よりも上方側の部分が装入ベルトコンベアから離れる方向へと整流板2を傾けた状態とすることで、副原料ホッパー1からの全排出時間に対し、前半50%の排出時間に排出するコークス量を増加させることができる。
【0018】
なお、副原料ホッパー1から排出された装入物は、旋回シュートを通じて順傾動にて炉内に装入される。このため、排出前期に密度の大きい鉱石とコークスとが混合しながら優先的に排出されることで、炉壁部側に混合層が形成される。そして、排出後期に細粒の鉱石が排出され、この細粒の鉱石が、上記混合層中の空隙に浸透するように入り込む。これにより、コークスと鉱石とがより混合された混合層を形成することが可能となる。
【0019】
一方、整流板2の可動軸3よりも上方側の部分が装入ベルトコンベアに近づく方向へと整流板2を傾けた状態の場合、整流板2の可動軸3よりも下方側の部分は、装入ベルトコンベア側から離れた状態に位置している。このため、排出口に至る断面積は、領域Bの排出流路に比べて領域Aの排出流路の方がその比率が大きくなる。したがって、図2のホッパーの左側の、領域Aの鉱石が多く堆積した装入物が優先的に排出される。そして、最後に、ホッパーの右側の、領域Bのコークスが多く堆積した装入物が排出される。このように、整流板2の可動軸3よりも上方側の部分が装入ベルトコンベアに近づく方向へと整流板2を傾けた状態とすることで、副原料ホッパー1からの全排出時間に対し、後半50%の排出時間に排出するコークス量を増加させることができる。
なお、排出前期に鉱石が優先的に排出され、排出後期に鉱石とコークスとが混合しながら排出されることで混合層が形成される。
【0020】
<コークスの比率の経時的変化の制御>
上述の混合物の装入時及び排出時の作用により、整流板2の角度を変更することによって副原料ホッパー1からの装入物中のコークスの比率の経時的変化(混合物中のコークス比率の時間推移)を制御することができる。
【0021】
<高炉の操業への活用>
整流板2の角度の変更は、副原料ホッパー1中に装入物(装入された混合物)が存在する期間では困難である。従って、副原料ホッパー1への混合物の装入と、副原料ホッパー1からの装入物の排出時とで、整流板2の角度は同じとして、整流板2の角度とコークスの比率の経時的変化とを予め定めておく。
整流板2の角度は、高炉操業に合わせて以下のように制御する。たとえば、炉壁側の通気を改善する場合には、整流板2の可動軸3よりも上方側の部分が、装入ベルトコンベアから離れる方向へと整流板2を傾ける。これにより、炉壁側へ塊コークスを堆積させる。一方、炉中心の通気を改善する場合には、整流板2の可動軸3よりも上方側の部分が、装入ベルトコンベアに近づく方向へと整流板2を傾ける。そして、Cバッチで形成した水平型テラスの肩へ塊コークスを装入することで、次工程のOバッチでこの水平型テラスの肩部に装入した塊コークスを炉中心へ崩しこめる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。そして、整流板の角度を変更することで、装入物中のコークスの比率の経時的変化を制御できることを実験結果に基づいて具体的に示す。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
<実施例1>
図3に示す1/5.2模型実験にて、鉱石層へのコークス混合装入における、コークスの排出挙動の検討を行った。なお、図3に示す模型実験装置において、符号10は副原料ホッパー、符号20は装入ベルトコンベアである。
<副原料ホッパー>
本実施例で使用した副原料ホッパーを、図4で説明する。図4上図は、副原料ホッパーの上面図を、図4下図は、副原料ホッパーの側面図を示す。
副原料ホッパー10は、原料装入部11と、テーパー部12と、原料排出部13とから構成されている。
原料装入部11は、副原料ホッパー10の上部に位置する。また、その形状は略筒状である。原料装入部11の上端及び下端の内径寸法は690mm、原料装入部11の垂直方向高さは430mmである。
テーパー部12は、副原料ホッパー10の中央部に位置する。また、その形状は、逆錐台筒形状である。テーパー部12の上端は、原料装入部11の下端に接続されている。また、テーパー部12の下端は、テーパー部12の上端の中心軸よりも、装入ベルトコンベアから離れる方向に、その中心軸が設けられている。また、テーパー部12の下端は、その外周が、原料装入部11の中心軸に接する位置となるように設けられている。テーパー部12の下端の内径寸法は240mm、テーパー部12の垂直方向高さは370mmである。
【0023】
原料排出部13は、副原料ホッパー10の下部に位置する。原料排出部13の上端は、テーパー部12の下端に接続されている。原料排出部13の下端は、原料排出部13の上端の中心軸よりも、装入ベルトコンベアに近づく方向に、その中心軸が設けられている。原料排出部13の下端は、その外周が、原料装入部11の中心軸に接する位置となるように設けられている。また、原料排出部13の下端は、原料排出部13の上端の内径寸法よりも小さい内径寸法である。原料排出部13の下端の内径寸法は140mm、原料排出部13の垂直方向高さは250mmである。なお、原料排出部13の下端は、副原料ホッパー10の排出口14に相当し、この排出口14には、開閉可能なゲート15が備えられている。
【0024】
図5は、副原料ホッパー10に整流板16を設置した状態を示す図である。図5(A)は、整流板16が設置された副原料ホッパー10の断面図であり、図5(B)は、傾斜させた整流板16を副原料ホッパー10の上部側から見た図である。
図5(B)に示すように、整流板16は、台形状の平板であり、上底の長さは580mm、下底の長さは400mm、高さは250mmである。また、整流板16には、上底及び下底と平行な可動軸17を有している。可動軸17は、下底から上底に向かって高さ80mmの位置(上底から下底に向かって高さ170mmの位置)に設けられている。
図5(A)に示すように、整流板16は、装入ベルトコンベアからの原料装入方向に対して平板が対向するように設置されている。また、可動軸17は、テーパー部12の下端の中心軸から、装入ベルトコンベア側に20mm近づいた位置であり、また、テーパー部12の下端から、テーパー部12の上端に向かって垂直方向250mmの高さに設置されている。
整流板16は、可動軸17を軸として、傾斜が可能に構成されている。
【0025】
なお、本実施形態では、整流板16の可動軸17よりも上方が装入ベルトコンベアに近づく方向へと整流板16を傾けることをマイナス側傾斜という。また、整流板16の可動軸17よりも上方が装入ベルトコンベアから離れる方向へと整流板16を傾けることをプラス側傾斜という。
上記のように構成された副原料ホッパー10では、整流板16をプラス側に15°傾斜させたとき、整流板16の上端が、原料装入部11とテーパー部12との接続位置の高さとほぼ一致するように配置されている。なお、本実施例において、整流板16の傾斜は、マイナス側傾斜が15°、プラス側傾斜が30°で行った。プラス側に30°傾斜させたとき、装入ベルトコンベア20から落下する混合物のうち、落下幅の8割程度が、整流板16に衝突する。
【0026】
<原料切り出し>
副原料ホッパー10に装入する混合物について、コークスを装入ベルトコンベア20上で鉱石原料に混合する際に、鉱石原料上部に積層させる混合コークスの切り出し長さを、以下の4つのパターンに変化させて実験を行った。なお、コークスは、鉱石粒径に対して5倍以上の塊コークスを使用した。
図6に、原料の切り出し方法の条件を示す。図6(A)は均一重ね、図6(B)は前半1/2重ね、図6(C)は中盤1/2重ね、図6(D)は後半1/2重ねである。
・均一重ね:鉱石の上に、同じ長さでコークスを均一に積層。
・前半1/2重ね:全積層長さに対して、コークスを先頭から50%に積層。
・中盤1/2重ね:全積層長さに対して、コークスを中盤から50%を積層。
・後半1/2重ね:全積層長さに対して、コークスを後半の50%に積層。
【0027】
また、副原料ホッパー10の構成は、以下の3つのパターンを採用した。
・副原料ホッパー10内への整流板16の設置なし。
・副原料ホッパー10内に整流板16を設置し、整流板16をプラス側に傾斜。傾斜角度は、整流板16の軸位置に対してプラス30°。
・副原料ホッパー10内に整流板16を設置し、整流板16をマイナス側に傾斜。傾斜角度は、整流板16の軸位置に対してマイナス15°。
【0028】
また、図7に示すように、副原料ホッパー10下部にベルトコンベア21を設置し、このベルトコンベア21上に複数のサンプリングボックス22を設け、原料切り出しに合わせてサンプリングボックス22を送り出す構成とした。そして副原料ホッパー10から装入物(装入された混合物)を排出し、ベルトコンベア21上のサンプリングボックス22に装入することで、混合原料中のコークス、鉱石の質量比の経時変化を調査した。得られた結果を図8図11にそれぞれ示す。
【0029】
<整流板プラス傾斜>
図8図11から明らかなように、整流板16をプラス側に傾斜させた状態で混合装入した場合、原料切り出しが上記(1)〜(4)のいずれのパターンであっても、排出前期の無次元排出時間0.2〜0.4において、塊コークスが多く排出されていることが確認できる。
これは、図2に示す、副原料ホッパー1の右側に位置する領域Bに、粒径が大きく、かつ、密度が小さい塊コークスが偏析装入され、副原料ホッパー1からの排出時には、領域Bの塊コークスが偏析装入された装入物から優先的に排出された結果と推察される。
【0030】
図12に示すように、Cc、C、O、O装入では、炉壁部から、炉中心と炉壁部との中間部までの領域において、鉱石層の層厚が厚くなることが多い。この場合には、整流板16をプラス側に傾斜させた状態でOバッチ装入を実施することが好ましい。整流板16をプラス側に傾斜させた混合装入では、排出前期に塊コークスが多く排出される。旋回シュートからは順傾動で排出するので、図12中の点線丸印で示す、炉壁部側の領域に、偏析装入された塊コークスが装入される。このように、上記装入方法により、還元性の向上や炉下部の通気性を改善することができる。
【0031】
<整流板マイナス傾斜>
一方で、図8図11から明らかなように、整流板16をマイナス側に傾斜させた状態で混合装入した場合、排出後期の無次元排出時間0.6〜1.0において、塊コークスが多く排出されていることが確認できる。
これは、図2に示す、副原料ホッパー1からの原料排出時に、整流板2をマイナス側傾斜させることで、ホッパーの左側に位置する領域Aに、粒径が小さく、かつ、密度が大きい鉱石が偏析装入され、副原料ホッパー1からの排出時には、領域Aの、細粒の鉱石が偏析装入された装入物が優先的に排出された結果と推察される。
【0032】
高炉4ダンプ操業において、Cc、C、O、Oで装入する高炉に対して、低コークス比操業を行うと、図13の点線丸印で示す、Ccの裾野にあたる領域のコークス層の層厚が薄くなる傾向がある。コークス層の層厚が薄い領域は通気性が悪い。この場合には、整流板16をマイナス側に傾斜させた状態でOバッチ装入を実施することが好ましい。整流板16をマイナス側に傾斜させた混合装入では、排出後期に偏析装入された塊コークスが装入される。旋回シュートからは順傾動で排出するので、Oバッチの炉中心側の図13中の点線丸印で示す領域Aに、偏析装入された塊コークスが排出される。
そして、Oバッチの装入時にOバッチの崩しこみを行うことで、Oバッチで偏析装入された塊コークスを、炉中心部側に流し込むことができる。これにより、コークス層の層厚の薄い、図13中の実線丸印で示す領域Bに、塊コークスを多く装入することができるため、通気性の改善が見込める。
このように、整流板16を所望の角度に傾斜させた状態で原料装入することで、一つの設備によって、装入物中のコークスの比率の経時的変化を制御することが可能になる。
【0033】
<前半1/2重ね>
図8図11から明らかなように、原料切り出しのパターンごとに比較すると、前半1/2重ねは、他のパターンに比べて、排出全般にわたって、均一に塊コークスが装入されていることが確認できる。このため、原料切り出しは、図9に示す、前半1/2重ねのパターンが特に好ましい。
原料切り出しを前半1/2重ねとすることで、高炉操業として、万遍なく混合される。また、原料切り出しを前半1/2重ねとし、整流板16をプラス側に傾斜させた状態で混合装入することで、部分的に炉壁部側から中央側に多く装入することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のベルレス高炉の原料装入方法は、コークス混合装入の際に、鉱石とコークスの混合物中のコークスの比率の経時的変化を制御できる。
【符号の説明】
【0035】
1…副原料ホッパー、2…整流板、3…可動軸、10…副原料ホッパー、11…原料装入部、12…テーパー部、13…原料排出部、14…排出口、15…ゲート、16…整流板、17…可動軸、20…装入ベルトコンベア、21…ベルトコンベア、22…サンプリングボックス。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13