特許第6405952号(P6405952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405952
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】車両のルーフ構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20181004BHJP
   B60R 9/04 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B60R13/04 A
   B60R9/04
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-243889(P2014-243889)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-107656(P2016-107656A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】北川 省
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−18382(JP,A)
【文献】 特開2008−68847(JP,A)
【文献】 特開2014−58214(JP,A)
【文献】 特開2006−256365(JP,A)
【文献】 特開平9−11800(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10064181(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/04
13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフ上面に形成された凹部の内側に固設された金具と、前記金具に装着されて前記凹部を被覆するとともにスライド移動して取り外される蓋と、を具備した車両のルーフ構造であって、
前記蓋の裏面においてスライド方向に沿う方向に互いに間隔をあけて突設され、前記金具に係止される二つの爪部と、
前記裏面における前記二つの爪部の間に突設された補助部と、を備え、
前記二つの爪部のうち前記蓋を取り外す際に支点となる一方の爪部が、弾性的に前記金具に係止されるとともに他方の爪部よりも遅れて係止が外れ、
前記補助部が、前記他方の爪部を前記金具に係止させたまま前記蓋をスライド移動させた滑動係止状態で前記金具に当接する位置に設けられ、前記他方の爪部の係止が外れたときに前記蓋を押し上げる
ことを特徴とする、車両のルーフ構造。
【請求項2】
前記補助部は、前記二つの爪部の係止状態で前記金具と非接触となる位置に設けられる
ことを特徴とする、請求項1記載の車両のルーフ構造。
【請求項3】
前記他方の爪部が、その端部に前記スライド方向に沿う方向に突設され、前記金具に係合する係合保持突起を有し、
前記係合保持突起は、その突出量が、前記係止状態から前記滑動係止状態に至るまでの前記蓋のスライド移動量よりも大きい
ことを特徴とする、請求項2記載の車両のルーフ構造。
【請求項4】
前記金具が、前記凹部との固定面から上方に突設された角部を備え、
前記補助部が、前記スライド方向側に行くほど上方に向かって傾斜し、前記角部と当接する傾斜面を有する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両のルーフ構造。
【請求項5】
前記補助部が、前記スライド方向に沿う方向に延設された板状体である
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両のルーフ構造。
【請求項6】
前記補助部が、前記スライド方向に沿う方向に延設された弾性体である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の車両のルーフ構造。
【請求項7】
前記一方の爪部が、板金で成形されるとともに前記金具に係合する係合支持突起を有する
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の車両のルーフ構造。
【請求項8】
前記一方の爪部が、板金で成形されるとともに前記係合支持突起よりも基端側に設けられ、前記滑動係止状態で前記金具に押圧されて変形する変形代を有する
ことを特徴とする、請求項7記載の車両のルーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフ上面に形成された凹部の内側に固設された金具に装着される蓋を備えた車両のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ルーフパネルとサイドパネルとの接合部に、車両前後方向に延びた細長いルーフ溝が設けられたものがある。このルーフ溝にはルーフキャリアを取り付けるための金具(ブラケット)が固定され、アウトドア用品やスポーツ用品等がルーフキャリアに積載される。また、金具の固定部分には着脱自在な蓋(キャップ)が取り付けられ、金具以外の部分はルーフモールによって塞がれる。これにより、ルーフキャリアの有無に関わらず金具の固定部分が被覆され、車両の外観が良好に保たれる。
【0003】
ルーフ溝及び蓋の取付構造としては、例えば特許文献1,2に記載されたような構造が知られている。特許文献1の構造では、蓋部材の長手方向の前方側と後方側とに、爪を有する係合受部がそれぞれ突設されており、二つの係合受部がブラケットの係合部とそれぞれ係合することでルーフ溝が蓋部材により覆われる。また、特許文献2の構造では、ルーフモールの開口部に取り付けられるキャップに、二組のスライド爪と弾性変形する一つの係止爪とが設けられている。この構造では、キャップを取り外す際に、キャップをルーフモールの係止孔とは反対側の方向にスライドさせる操作と、キャップの係止孔とは反対側の部分を上に持ち上げる操作の2ステップ動作を行わないと取り外すことができず、これにより不本意なキャップの脱落が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−58214号公報
【特許文献2】特開2013−18382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1のような長手方向に互いに間隔をあけて突設された二つの爪部を有する蓋を、特許文献2のようにスライドさせて取り外す場合、ユーザーが蓋をスライドさせ過ぎてしまうと、一方の爪部に過剰に力が加えられて折れ曲がってしまうおそれがある。また、ユーザーが誤って逆側の端部を持ち上げてしまった場合、爪部が金具に係合したまま上方に向かう力が作用するため、爪部の破損やキャップ本体の折れ曲がりなどが発生する可能性がある。
【0006】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、ルーフに取り付けられた蓋を取り外すときの操作性を向上させるとともに蓋の破損を防止することができるようにした、車両のルーフ構造を提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する車両のルーフ構造は、ルーフ上面に形成された凹部の内側に固設された金具と、前記金具に装着されて前記凹部を被覆するとともにスライド移動して取り外される蓋と、を具備した車両のルーフ構造である。このルーフ構造は、前記蓋の裏面においてスライド方向に沿う方向に互いに間隔をあけて突設され、前記金具に係止される二つの爪部と、前記裏面における前記二つの爪部の間に突設された補助部と、を備える。前記二つの爪部のうち前記蓋を取り外す際に支点となる一方の爪部が、弾性的に前記金具に係止されるとともに他方の爪部よりも遅れて係止が外れる。また、前記補助部が、前記他方の爪部を前記金具に係止させたまま前記蓋をスライド移動させた滑動係止状態で前記金具に当接する位置に設けられ、前記他方の爪部の係止が外れたときに前記蓋を押し上げる。
【0008】
(2)前記補助部は、前記二つの爪部の係止状態で前記金具と非接触となる位置に設けられることが好ましい。
(3)前記他方の爪部が、その端部に前記スライド方向に沿う方向に突設され、前記金具に係合する係合保持突起を有することが好ましい。この場合、前記係合保持突起は、その突出量が、前記係止状態から前記滑動係止状態に至るまでの前記蓋のスライド移動量よりも大きいことが好ましい。
【0009】
(4)前記金具が、前記凹部との固定面から上方に突設された角部を備えることが好ましい。この場合、前記補助部が、前記スライド方向側に行くほど上方に向かって傾斜し、前記角部と当接する傾斜面を有することが好ましい。
(5)前記補助部が、前記スライド方向に沿う方向に延設された板状体であることが好ましい。
(6)あるいは、前記補助部が、前記スライド方向に沿う方向に延設された弾性体であることが好ましい。
【0010】
(7)前記一方の爪部が、板金で成形されるとともに前記金具に係合する係合支持突起を有することが好ましい。
(8)この場合に、前記一方の爪部が、板金で成形されるとともに前記係合支持突起よりも基端側に設けられ、前記滑動係止状態で前記金具に押圧されて変形する変形代を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示の車両のルーフ構造によれば、他方の爪部の係止が外れると同時に蓋を自動的にポップアップさせることができ、蓋を取り外すときの操作性を向上させることができる。また、他方の爪部の係止が外れた時点で蓋をポップアップさせることができるため、取り外しのときに支点となる一方の爪部の過剰な変形を抑制でき、爪部の折れ曲がりや破損を防ぐことができる。さらに、蓋の一方の端部を浮き上がらせることができるため、引っ張り上げる位置を明確にすることができ、誤った位置を引っ張ることによる爪部の折れ曲がりや蓋の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る車両のルーフ構造が適用された車両のルーフを示す斜視図である。
図2図1のルーフ構造のA−A矢視断面図であって蓋の装着状態を示す。
図3】(a)は図2の蓋の本体部を透視して示す斜視図であり、(b)は蓋を裏返して示す斜視図である。
図4図2の蓋の要部拡大図であり、(a)は第二爪部と補助部周辺との関係を示し、(b)は第一爪部の構成を示す。
図5】蓋の取り外し手順に合わせて蓋の状態を説明する断面図(図2に対応する図)であり、(a)は滑動係止状態、(b)は第二爪部が外れた瞬間、(c)はポップアップ状態をそれぞれ示す。
図6】第一爪部の変形例を示す図であり、(a)は第一変形例の第一爪部を、蓋を裏返した状態で示す斜視図、(b)は第一変形例の第一爪部の断面図、(c)は第二変形例の第一爪部の側面図である。
図7】(a)〜(c)は、変形例に係るルーフ構造を示す縦断面図(図2に対応する図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としての車両のルーフ構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
以下の説明では、車両の進行方向を前方とし、前方を基準に左右を定め、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。また、車両に装着,固定される部品の説明では、その部品が車両に装着,固定された状態を基準として、上下方向,左右方向(車幅方向)及び前後方向を定める。
【0014】
[1.構成]
本実施形態に係るルーフ構造は、図1に示す車両1に適用される。図1に示すように、車両1は、ルーフパネル2と左右のサイドパネル3との各接合部2Aに、前後方向に延設された細長いルーフ溝4を有する。ルーフ溝4は、ルーフパネル2の上面(ルーフ上面)において上方に開放した凹状の溝部であり、ルーフパネル2の前端から後端に亘って形成される。
【0015】
図2に示すように、ルーフ溝4には、ルーフパネル2の上方にキャリア6を取り付けるためのブラケット20(金具)が固設される。このブラケット20が固設される固定位置4Bには、着脱自在のキャップ10(蓋)が取り付けられる。一方、固定位置4B以外の部分には、ルーフモール5が嵌め込まれてルーフ溝4の上面が塞がれる。つまり、ルーフモール5は、ブラケット20の固定位置4Bの前後に分離して設けられる。図1では、各々のルーフ溝4に固設された二箇所の固定位置4Bによって、三本に分断されたルーフモール5を示す。
【0016】
ルーフモール5の分離部分(固定位置4Bの上方)には、開口部4Hが形成される。開口部4Hは、ルーフ溝4の一部であって、上方に開放されて上面視で矩形状に形成された凹部である。キャップ10は、ブラケット20に対して取り付けられて、この開口部4Hの上面を被覆する。なお、ブラケット20にキャリア6を装着する場合にはキャップ10が取り外され、開口部4Hの上面が開放されて、ブラケット20が露出状態とされる。
【0017】
ブラケット20は、開口部4Hの内側でルーフ溝4に沿って前後方向に延設される。ブラケット20は、前後方向中心を通って車幅方向に延在する仮想的な鉛直面に関して面対称形状(図2では左右対称形状)とされる。ブラケット20には、前後方向中心から両端部側(前方及び後方)に向かって、キャリア6を固定するための段部23と、ルーフ溝4の底面41(固定面)に固定される二つの固定部21と、キャップ10と係合する二つの係合部22とがこの順に設けられる。すなわち、二つの固定部21は前後方向に互いに間隔をあけて設けられ、これらの固定部21の間に段部23が設けられ、固定部21の端部側に係合部22が設けられる。
【0018】
固定部21は、ルーフ溝4の底面41に沿った平面状の部位であり、略中央に締結用の孔部21hが穿設される。固定部21は、孔部21hが底面41に形成された孔部41hと重なるように配置されて、図示しない締結部材で固定される。なお、固定部21とルーフ溝4の底面41とを締結固定する代わりに、溶接固定してもよい。
係合部22は、各固定部21の前後方向外側の端部から略鉛直上方に湾曲形成されるとともに、固定部21よりも上方で底面41と略平行になるように外方に向かって湾曲形成された部位である。係合部22は、その先端部の下面及び外側を向いた面が何れも平面状に形成され、この先端部でキャップ10と係合する。
【0019】
段部23は、各固定部21の前後方向中心側の端部から斜め上方(底面41から離隔する方向)に湾曲した斜面23aと、固定部21よりも上方で底面41と略平行に延在する平面状の取付面23bとからなる段差状の部位である。ブラケット20は、二つの固定部21と段部23とにより、前後方向に沿う縦断面形状がハット状に形成される。斜面23aと取付面23bとの間には、これらを滑らかに接続する曲面状に形成された角部23cが設けられる。また、取付面23bの略中央には締結用の孔部23hが穿設され、この孔部23hと重なる位置の裏面には、キャリア6の締結用のナット24が溶着される。
【0020】
キャップ10は、ブラケット20に装着されて開口部4Hを被覆(閉鎖)するとともに、スライド操作されて取り外されるものであり、取り外されるときの移動方向(以下、スライド方向という)が予め決められている。本実施形態のキャップ10は、ルーフ溝4に沿って前方へスライド操作されると取り外されるものであり、スライド方向が「前方」と定められている。以下、キャップ10の構成について、図3(a),(b)及び図4(a),(b)も用いて説明する。なお、図3(a)は、キャップ10の本体部13を透視して示した斜視図であり、図3(b)はキャップ10を裏返して示した斜視図である。
【0021】
図2及び図3(a),(b)に示すように、キャップ10は、開口部4Hを閉鎖する板状の本体部13と、ブラケット20に係止される二つの爪部11,12と、補強用のリブ14と、取り外し操作を補助する補助部15とを有する。本体部13は、上面視で矩形状に形成されたキャップ10の本体部分であり、前後方向長さが開口部4Hの前後方向長さよりも大きく、左右方向長さが開口部4Hの車幅方向長さと略同等に形成される。本体部13は、図1に示すように、その外面(表面)のスライド方向と反対側(後方)の端部寄りの位置に、スライド方向を表す三角形や矢印等の目印13aを有する。
【0022】
図2及び図3(a),(b)に示すように、二つの爪部11,12は、キャップ10の本体部13の裏面から下方へ突設され、ブラケット20に係止されてキャップ10を装着状態とするための部分であり、前後方向(スライド方向に沿う方向)に互いに間隔をあけて配置される。二つの爪部11,12は、左右方向長さが本体部13の左右方向長さよりも短く形成されるとともに、本体部13の左右方向略中央に設けられる。なお、キャップ10の装着状態とは、二つの爪部11,12が共にブラケット20の係合部22に係止され状態(係止状態)を意味する。以下、二つの爪部11,12が係合部22に共に係止された状態を係止状態といい、二つの爪部11,12の少なくとも一方の係止が外れた状態を開放状態という。
【0023】
二つの爪部11,12のうち、一方の爪部11はキャップ10を取り外す際に支点となる部分であり、弾性的に係合部22に係止され、他方の爪部12よりも遅れて係止が外れるように設けられる。以下、これを第一爪部11と呼ぶ。これに対し、他方の爪部12は、第一爪部11よりも剛性が高く形成される部分であり、キャップ10を取り外す際に第一爪部11よりも先に係止が外れるように設けられる。以下、これを第二爪部12と呼ぶ。本実施形態のキャップ10は、第一爪部11がスライド方向と逆側(すなわち後方)の端部寄りに位置し、第二爪部12がスライド方向側(前方)の端部寄りに位置する。
【0024】
図3(a),(b)及び図4(b)に示すように、第一爪部11は、本体部13の裏面から連続的に突設された脚部11aと、脚部11aの先端部に装着された板金製の板金爪部11Dとを有する。脚部11aは、前後方向長さ(厚み寸法)が最も短く形成された薄い矩形状をなし、本体部13の裏面から略垂直に突設される。脚部11aの基端側には、複数の三角板状のリブ11rが左右方向に互いに間隔をあけて設けられる。これにより、第一爪部11の基端部が補強される。
【0025】
板金爪部11Dは、矩形状の薄板の板金が曲げ加工されたものであり、ブラケット20の係合部22に係合する係合支持突起11bと、係合支持突起11bの上方に設けられ脚部11aを前後方向から挟みこむ二つの挟持部11cとを有する。係合支持突起11bは、板金爪部11Dの下端11eから前方に向かって斜め上方に傾斜した面11fと前側の挟持部11cから前方に向かって斜め下方に傾斜した面11gとによって、前方に向かって凸状に形成された部位である。二つの挟持部11cは、脚部11aの前後において互いに対向する位置に設けられる。板金爪部11Dの各挟持部11cの上方には、脚部11aの厚み寸法よりもやや狭い隙間が設けられ、この隙間に脚部11aが嵌め込まれて固定される。
【0026】
板金爪部11Dは、係合支持突起11bが脚部11aに対して前後方向に変位しうるように弾性変形可能に設けられる。係合支持突起11bは、キャップ10がブラケット20に装着されるときに、押し潰されながらブラケット20の係合部22の下方に入り込み、元の形状に復帰して係合部22に係合する。また、第一爪部11は、本体部13に対して脚部11aの先端側が板金爪部11Dと共に後方へ湾曲しうるように弾性変形可能に設けられる。本実施形態の第一爪部11は、脚部11aの厚み寸法が第二爪部12や本体部13の厚み寸法よりも小さく形成される。つまり、第一爪部11には、第二爪部12や本体部13よりも曲がりやすい(変形を許容しやすい)特性が与えられる。これにより、キャップ10が取り外されるときには、第一爪部11が係合部22に押圧されて後方へ弾性的に湾曲変形し、第二爪部12の係止が外れて係合部22から押圧力を受けなくなると元の状態に復帰する。
【0027】
図3(a),(b)及び図4(a)に示すように、第二爪部12は、本体部13の裏面から連続的に突設された脚部12aと、脚部12aの下端に連続的に形成され、ブラケット20の係合部22に係合する係合保持突起12bとを有する。脚部12aは、前後方向長さが本体部13の厚み(上下方向長さ)よりもやや短く先細形状に形成され、本体部13の裏面に対して僅かに後方に傾いて突設される。脚部12aの基端側にも、脚部11aと同様に、複数の三角板状のリブ12rが左右方向に互いに間隔をあけて設けられる。
【0028】
係合保持突起12bは、第二爪部12の下端12eから後方に向かって斜め上方に傾斜した面12fと脚部12aの後方に向いた面から後方へ略水平方向に延びる保持面12gとによって、後方に向かって凸状に形成された断面三角形状の部位である。係合保持突起12bは、キャップ10がブラケット20に装着されるときに、最初にブラケット20の係合部22の下方に引っ掛けられる部位となる。また、係合保持突起12bの保持面12gは、キャップ10が取り外されるときに、後述の補助部15による付勢力を蓄えるために係止状態を保持する機能を持つ。係合保持突起12bの後方への突出量C(保持面12gの前後方向長さ)は、第一爪部11の弾性変形量よりも小さい寸法に設定される。すなわち、第一爪部11が後方へ弾性的に湾曲変形している間に、第二爪部12の係止が外れる程度の寸法となっている。
【0029】
図2及び図3(a),(b)に示すように、リブ14は、本体部13の裏面における二つの爪部11,12の間に突設されるとともに、前後方向に直線状に延設された補強部である。本実施形態のキャップ10には、二つのリブ14が左右方向に間隔をあけて平行に設けられる。リブ14の突出量は爪部11,12に比べて十分に小さく、キャップ10の装着状態では、リブ14の下縁とブラケット20の段部23の取付面23bとの間に空間が形成される。
【0030】
補助部15は、本体部13の裏面における二つの爪部11,12の間に突設された板状のリブ(板状体)であり、前後方向に所定の幅を持って延設される。本実施形態の補助部15は、キャップ10の前後方向中心よりもスライド方向と逆側(後方)に配置され、二つのリブ14の各後端に繋がった連続的な形状に形成される。すなわち、補助部15は、第一爪部11側に片寄って配置され、左右方向に間隔をあけて平行に二つ設けられる。補助部15は、左右方向長さが前後方向長さ及び上下方向長さに比べて小さく、図4(a)に示すように、側面視で台形に似た不等辺四角形状に形成される。
【0031】
図2に示すように、補助部15は、二つの爪部11,12の係止状態(キャップ10の装着状態)で、ブラケット20と非接触となる位置に設けられる。この状態を図4(a)中に実線で示す。図4(a)中の破線は、キャップ10がスライド方向に操作されてスライド移動し、ブラケット20の角部23cに当接(干渉)した状態を示し、図中の距離Bは係止状態(実線)から角部23cに当接した状態(破線)に至るまでのスライド移動量を示す。本実施形態の補助部15は、スライド移動量Bが第二爪部12の突出量Cよりも短くなるように設けられている。
【0032】
すなわち、キャップ10がスライド移動し始めると、第二爪部12の係止が外れる前に補助部15がブラケット20に当接する。このとき、第二爪部12は係合部22に係止されたままであり、第一爪部11は係合部22に押圧されて弾性変形した状態(すなわち、強固に係止されている状態)となる。つまり、二つの爪部11,12は何れも係止状態ではあるが、スライド移動していない通常の係止状態(静止中の係止状態)とは異なる状態となる。以下、この状態を通常の係止状態と区別して、滑動係止状態と呼ぶ。すなわち、滑動係止状態では、第二爪部12が係合部22に係止されたままキャップ10がスライド移動する。
【0033】
また、滑動係止状態での第二爪部12は、係合保持突起12bの凸状の先端のみが係合部22に係合するため、通常の係止状態よりも軽く係止された状態となる。一方、補助部15は、滑動係止状態でブラケット20に当接する位置に設けられ、ブラケット20に当接することで反力を受け、キャップ10に対して上方に向かう力(付勢力)を付与する。ただし、この状態ではキャップ10は開放されないため、第二爪部12の係止が外れる瞬間まではその付勢力が蓄えられ、第二爪部12の係止が外れたときにキャップ10を押し上げる(ポップアップさせる)ように作用する。この付勢力は、補助部15とブラケット20との干渉によって生成され、少なくともこの時点で弾性変形している第一爪部11に蓄えられる。なお、付勢力の一部は、第二爪部12や本体部13の歪み(内部応力)として、キャップ10全体に蓄えられうる。
【0034】
本実施形態の補助部15の下縁部には、スライド方向側(前方)に行くほど上方に傾斜した傾斜面15aが設けられる。傾斜面15aは、通常の係止状態ではブラケット20と非接触となり、滑動係止状態ではブラケット20の角部23cに当接する位置に設けられる。また、図4(a)に示すように、傾斜面15aは、その前端がブラケット20の取付面23bよりも上方に位置し、その下端が取付面23bよりも下方に位置するように設けられる。したがって、傾斜面15aは、キャップ10がスライド移動し始めると、第二爪部12の係止が外れる前にブラケット20の角部23cに当接する。このとき、補助部15はブラケット20の角部23cに引っ掛かることなく当接する。
【0035】
また、補助部15がブラケット20に当接した状態からキャップ10がさらにスライド方向側へ移動したときには、傾斜面15aがブラケット20をより強く下方に押し付けるように作用し、その反力として生じる付勢力の大きさも増大する。つまり、滑動係止状態で生成される付勢力の大きさは、キャップ10がスライド方向側へ移動するに連れて増大し、キャップ10をポップアップさせる力が強められることになる。この付勢力は、傾斜面15aの勾配に応じて、第二爪部12の係止が外れるまで増加し続け、係止が外れた瞬間に最大となる。したがって、第二爪部12の係止が外れると同時にキャップ10が上方に向かって跳ね上げられ、キャップ10の自動ポップアップ機能がより確実に達成される。
【0036】
[2.作用,効果]
次に、図5(a)〜(c)を用いて、上述のキャップ10を取り外すときの動作及び作用を説明する。図2に示す通常の係止状態(キャップ10の装着状態)から、図5(a)中に太矢印で示すように、キャップ10の本体部13を前方へとスライドさせ始めると、第一爪部11が係合部22に押し付けられて弾性的に湾曲変形する。また、第二爪部12が係合部22に係止されたまま補助部15の傾斜面15aが角部23cに当接して、滑動係止状態となる。これにより、白抜き矢印で示すように、補助部15によってキャップ10に対して上方(開放方向)に向かう力が付与される。しかし、この時点ではまだ第二爪部12が係止されたままであるため、この力はキャップ10の開放を補助する付勢力としてキャップ10に蓄えられる。
【0037】
図5(b)に示すように、キャップ10をさらにスライド移動させると、補助部15の傾斜面15aが角部23c上を滑りながら上っていき、キャップ10に蓄えられる付勢力(図中の白抜き矢印)が増大していくとともに、第二爪部12の係合保持突起12bが係合部22から離れていく。これにより、保持面12gと係合部22との係合寸法(引っかかり代)が徐々に減少していく。そして、図5(c)に示すように、スライド移動量Bが第二爪部12の突出量Cに達して第二爪部12の係止が外れると、蓄えられていた付勢力によってキャップ10の第二爪部12側の端部がルーフモール5の表面から上方へ跳ね上がる。
【0038】
すなわち、第二爪部12の係合保持突起12bが係合部22から外れると、その瞬間に第一爪部11を支点としてキャップ10の前端が自動的にポップアップし(図中白抜き矢印参照)、ルーフモール5の表面とキャップ10の本体部13の裏面との間に空間が形成される(開放状態となる)。このとき、第一爪部11の弾性変形が解消されるため、キャップ10全体が元の形状となる。これにより、ポップアップした後の第二爪部12はその下方に位置する係合部22の上面に載った状態となり、キャップ10を容易に取り外すことができる状態となる。
【0039】
したがって、上述のルーフ構造によれば、第二爪部12の係止が外れると同時にキャップ10を自動的にポップアップさせることができ、キャップ10を取り外すときの操作性を向上させることができる。また、第二爪部12の係止が外れた時点でキャップ10をポップアップさせることができるため、取り外しのときに支点となる第一爪部11の過剰な変形を抑制でき、第一爪部11の折れ曲がりや破損を防ぐことができる。さらに、キャップ10の一方の端部を浮き上がらせることができるため、引っ張り上げる位置を明確にすることができ、誤った位置を引っ張ることによる第一爪部11の折れ曲がりやキャップ10の破損を防ぐことができる。
【0040】
上述のルーフ構造では、補助部15が、二つの爪部11,12の通常の係止状態でブラケット20と非接触となる位置に設けられるため、通常の係止状態では、キャップ10に対して上向きの力が作用することがない。これにより、キャップ10の装着状態を安定させることができる。また、キャップ10の装着中における応力が減少することから部材の疲労を小さくすることができ、キャップ10の耐久性を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態の第二爪部12は、係合保持突起12bの突出量Cが、通常の係止状態〔図4(a)中の実線の状態〕から滑動係止状態〔図4(a)中の破線の状態〕に至るまでのスライド移動量Bよりも大きく形成されている。これにより、キャップ10のスライド移動が開始されたのちも第二爪部12の係止を保持して滑動係止状態とすることができ、ポップアップのための付勢力を蓄えることができる。
【0042】
上述のルーフ構造では、ブラケット20が、ルーフ溝4の底面41から上方に突設された角部23cを備え、補助部15がこの角部23cと当接する傾斜面15aを有するため、キャップ10をスライド移動させるときに補助部15が角部23cに引っ掛かることがない。また、補助部15の傾斜面15aが角部23c上を滑りながら上っていくので、小さな力でキャップ10をスライドさせることができ、キャップ10の取り外し時の操作性をより高めることができる。さらに、スライド移動量Bが増加するほど、ポップアップのための付勢力を増大させることができ、キャップ10の自動ポップアップ機能を向上させることができる。
【0043】
上述のルーフ構造では、補助部15が前後方向に延設された板状体であるため、簡素な構成にすることができ、コスト増や重量増を抑えて簡単に成形することができる。また、補助部15が板状であることから、板の端面をなす傾斜面15aと角部23cとの接触面積を小さくすることができる。これにより、キャップ10をスライド移動させたときの引っかかりやもたつきを発生しにくくすることができ、キャップ10の滑動性を高めてスムーズなスライド操作を実現することができる。
【0044】
また、本実施形態の第一爪部11は、板金で成形された係合支持突起11bを有し、この係合支持突起11bが弾性変形するため、キャップ10の装着時の操作性をも向上させることができる。また、キャップ10の取り付け,取り外しの操作感が改善されることから、ユーザビリティ(使い勝手)や製品の品質レベルを高めることができる。
【0045】
[3.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
キャップ10に設けられる第一爪部11の構成は上述のものに限られない。ここで、図6(a)及び(b)に第一変形例の第一爪部11Mを示し、図6(c)に第二変形例の第一爪部11Nを示す。なお、図6(b)は、図6(a)の第一爪部11Mを左右方向中心において上下方向に切った断面図である。
【0046】
第一変形例,第二変形例の第一爪部11M,11Nは、先端部に装着される板金爪部11Dm,11Dnが、係合支持突起11bよりも基端側(上方)に変形代11k,11pを有する点で異なる。変形代11k,11pは、係合部22の先端が当接する位置で前後方向に伸縮可能(すなわち、スライド方向に沿って弾性的に変位可能)に設けられ、滑動係止状態で係合部22に押圧されて変形する(圧縮される)部位である。
【0047】
図6(a)及び(b)に示すように、第一変形例の第一爪部11Mは、板金爪部11Dmが左右方向で異なる断面を有するように形成される。具体的には、左右方向の両端部に二つの挟持部11cを持つ部位(支持部)が形成され、左右方向の中間部に変形代11kを持つ部位(変形部)が形成される。板金爪部11Dmは、前側に位置する面に上下方向に延びるスリットが形成され、このスリットによって三つの部位(二つの支持部及び一つの変形部)に分けられている。
【0048】
変形代11kは、係合支持突起11bを形成する上方の面11gの後縁(上縁)から、脚部11aとの間に空間を有した状態で脚部11aと略平行に上方へ延設された部位であり、係合部22の先端が当接する。板金爪部11Dmは、変形代11kと脚部11aとの間の空間の分だけ変形可能である。また、スリットによって分けられた三つの部位のうち、変形代11kが設けられた部位(変形部)には、板金爪部11Dmの下端11eの内側に、ねじりばね11sが装着される。ねじりばね11sは、下端11eを形成する二つの面(後側の挟持部11cと下端11eとの間で上下方向に延びる面及び傾斜した面11f)を外側に押圧する方向に付勢力を与える。このねじりばね11sにより、係合部22の係止状態が安定的に保持される。なお、二つの支持部に設けられた各挟持部11cは、上記実施形態と同様に構成される。
【0049】
このように構成された第一爪部11Mを有するキャップ10を備えたルーフ構造の場合、キャップ10をスライドさせると、係合部22に押圧されて板金爪部11Dmが撓む(スライド方向に押し縮められて変形する)ため、第一爪部11Mの脚部11aが変形することなく滑動係止状態となる。言い換えると、第一爪部11Mの脚部11aの折れ曲がりやキャップ10の破損を効果的に防止しながら、滑動係止状態を作り出すことができ、これによりキャップ10をポップアップさせるための付勢力を蓄えることができる。
なお、この変形例の板金爪部11Dmが、挟持部11cを有さない構成であってもよい。すなわち、左右方向全体に亘って変形代11kが設けられていてもよい。例えば、板金爪部が脚部11aの後側の面に接着材で固定されていてもよい。また、ねじりばね11sが設けられていなくてもよい。
【0050】
また、図6(c)に示すように、第二変形例の第一爪部11Nは、板金爪部11Dnが左右方向に一様な断面を有するように形成され、その上端に二つの挟持部11cを有し、前側の挟持部11cと係合支持突起11bとの間に変形代11pを有する。変形代11pは、係合支持突起11bを形成する上方の面11gの後縁(上縁)から、脚部11aとの間に隙間をあけた状態で上方に向かって延設された部位であり、係合部22の先端が当接する。板金爪部11Dnは、変形代11pと脚部11aとの間の隙間の分だけ変形可能である。
【0051】
このように構成された第一爪部11Nを有するキャップ10を備えたルーフ構造の場合、キャップ10をポップアップさせるための付勢力の一部は、変形代11pが弾性変形することによって蓄えられる。したがって、滑動係止状態での第一爪部11Nの全体的な変形量を抑制することができ、第一爪部11Nの折れ曲がりやキャップ10の破損をより確実に防止することができる。
【0052】
また、上記実施形態のルーフ構造の他の変形例を、図7(a)〜(c)に示す。
図7(a)のルーフ構造は、上記実施形態の補助部15及びリブ14の代わりに、補助部16が設けられる点で異なる。図7(a)に示すように、本変形例のキャップ10Aは、本体部13の裏面に突設された補助部16が、スライド方向に沿う方向に延設されたスポンジやゴム等の弾性体で形成される。この補助部16は、例えばキャップ10Aの本体部13とブラケット20の取付面23bとの隙間寸法よりもやや厚みを持った板状に形成される。これにより、キャップ10Aをブラケット20に取り付けると、補助部16が上下方向に圧縮された状態となり、その復元力がポップアップのための付勢力となる。したがって、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0053】
また、補助部16が弾性体であることから、キャップ10Aに蓄えられる付勢力を適度に吸収することができるため、ポップアップする量(キャップ10Aが上方へ浮き上がる量)を調節することが容易であるという利点もある。なお、ある程度の剛性を持った弾性体を用いて、上述の実施形態における補助部15と同じ形状に形成することも考えられる。この場合、弾性体による付勢力を利用してポップアップ量を調節しつつ(ポップアップ量を増大させつつ)、スムーズなスライド操作を実現することができる。
【0054】
なお、補助部16は、図7(a)に示すように、キャップ10Aの装着状態(通常の係止状態)でブラケット20の取付面23bに当接する位置に設けられてもよいし、キャップ10Aの前後方向の中心に配置されてもよい。また、補助部16は、図7(a)に示すような断面矩形状に形成されてもよい。あるいは、これら以外の形状,配置であってもよい。図7(a)ではリブ14が省略されているが、補助部16とリブ14とを設けてもよい。
【0055】
図7(b)のルーフ構造は、上記実施形態のキャップ10のスライド方向が、前方だけでなく後方にも設定されている点で異なる。図7(b)に示すように、本変形例のキャップ10Bは、二つの爪部11,12′が何れも弾性的にブラケット20の係合部22に係止される構成となっている。すなわち、第二爪部12′が、上記の第一爪部11と同様(例えば、鏡像対称形状)に形成されている。さらに、本変形例のキャップ10Bは、本体部13の裏面に、上記実施形態の補助部15に加えて、リブ14の前端にも補助部15′が突設される。補助部15′は、補助部15と同様(例えば、鏡像対称形状)に構成されている。
【0056】
このような構成を備えたキャップ10Bを前方にスライドさせた場合は、上記実施形態と同様、二つの爪部11,12′のうち、後方に位置する一方が第一爪部11として機能し、前方に位置する他方が第二爪部12′として機能して、キャップ10Bの前端側がポップアップする。反対に、キャップ10Bを後方にスライドさせた場合は、図中括弧書きで符号を付けたように、二つの爪部11,12′のうち、前方に位置する一方が第一爪部11として機能し、後方に位置する他方が第二爪部12′として機能して、キャップ10Bの後端側がポップアップする。このように、本変形例のルーフ構造によっても、上記実施形態と同様の作用,効果が得られ、さらに何れの方向にもスライド可能に設けられることで、ユーザーの利便性(操作性)をより向上させることができる。
【0057】
図7(c)のルーフ構造は、上記実施形態のキャップ10とブラケット20との係合部分の形状が異なるとともに、スライド方向が後方である点で異なる。図7(c)に示すように、本変形例のキャップ10Cは、二つの爪部11′,12″の先端の突設方向がキャップ10Cの前後方向外側を向いている。すなわち、後方に位置する第一爪部11′の先端が後方に向かって突設され、前方に位置する第二爪部12″の先端が前方に向かって突設される。また、補助部15′は、第二爪部12″側に片寄って設けられ、上記実施形態の補助部15と同様(例えば、鏡像対称形状)に形成されている。また、本変形例のブラケット20Cは、二つの爪部11′,12″に係合する各係合部22′が、固定部21′の外側の端部から上方に向かって湾曲形成されたのち、その上端で前後方向中心側に向かって湾曲形成される。すなわち、各係合部22′の先端が、対向するように設けられる。
【0058】
このような構成を備えたキャップ10Cを後方にスライドさせた場合、スライド方向側に位置する第一爪部11′が係合部22′に押圧されて弾性的に前方へ湾曲変形する。このとき、スライド方向と反対側に位置する第二爪部12″が係合部22′に係止されたまま、補助部15′がブラケット20Cの前側の角部23cに当接して、滑動係止状態となる。キャップ10Cをさらにスライドさせると、第二爪部12″の係止が外れ、キャップ10Cの第二爪部12″側の端部が自動的にポップアップする。すなわち、本変形例のルーフ構造によっても、上記実施形態と同様の作用,効果が得られる。
【0059】
なお、上記実施形態及び各変形例に係るルーフ構造は一例であって、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。例えば、上記実施形態のキャップ10や変形例のキャップ10Aのスライド方向が後方であってもよいし、変形例のキャップ10Cのスライド方向が前方であってもよい。キャップ10,10A,10Cのスライド方向に合わせて、爪部11,12等の配置構成を変更すればよい。また、キャップ10が装着される開口部4Hは、ルーフ上面の凹部であればよく、ルーフパネル2とサイドパネル3との接合部2Aに沿って(すなわち、前後方向に)延設されたルーフ溝4でなくてもよい。また、ルーフ溝4に嵌め込まれるルーフモール5が分離していないものであって、ブラケット20の固定位置4Bに開口部4Hが穿設されていてもよい。なお、ブラケット20の形状は一例であって、適宜変更可能である。何れの構成においても、上述の実施形態と同様の作用,効果を奏するルーフ構造を実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
4H 開口部(凹部)
10 キャップ(蓋)
11,11′,11M,11N 第一爪部(一方の爪部)
11b 係合支持突起
11D,11Dm,11Dn 板金爪部
11k,11p 変形代
12,12′,12″ 第二爪部(他方の爪部)
12b 係合保持突起
15,16 補助部
15a 傾斜面
20 ブラケット(金具)
22,22′ 係合部
23c 角部
41 ルーフ溝4の底面(固定面)
B スライド移動量
C 突出量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7