(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出手段は、ある前記検知エリアへの外部機器の侵入を検出した場合、当該外部機器の前記ある検知エリアへの侵入を特定する情報を、当該外部機器を特定する情報に関連付けて、前記メモリーに格納する、請求項4に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しつつ、画像処理装置の実施の形態であるMFPを含む画像処理システムについて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0025】
[第1の実施の形態]
<1.画像処理システムの概要>
図1および
図2は、画像処理システムの概要を示す図である。
図1および
図2には、画像処理装置の一例であるMFP100についての復帰エリアAXが示されている。復帰エリアAXは、MFP100から一定の距離内にある領域を表わす。省電力モードで動作しているMFP100は、ユーザーが復帰エリアAXでMFP100に向かって移動したことに応じて、起動モードに復帰する。
【0026】
より具体的には、第1の実施の形態のMFP100は、通常の画像形成処理等の処理を実行するときの起動モードに加えて、当該MFP100の消費電力を低減するための省電力モードで、動作することができる。そして、MFP100は、省電力モードで動作しているときに、
図1に示されるように、ユーザー900が復帰エリアAXにおいてMFP100に向かって移動していることが検出されると、起動モードへと復帰する。一方、MFP100は、
図2に示されるように、ユーザー900が復帰エリアAXにおいてMFP100に向かうことなく移動した場合(単に、復帰エリアAXを横切ろうとした場合等)には省電力モードを維持する。
【0027】
なお、
図1において、矢印D01は、復帰エリアAX外から復帰エリアAX内へ移動するユーザー900の進行方向を示す。矢印D02は、復帰エリアAX内をMFP100に向けて移動するユーザー900の進行方向を示す。
【0028】
また、
図2において、矢印D03は、復帰エリアAX外から復帰エリアAX内へ移動するユーザー900の進行方向を示す。矢印D04は、復帰エリアAX内をMFP100に向かうことなく移動するユーザー900の進行方向を示す。
【0029】
そして、第1の実施の形態のMFP100では、復帰エリアAX内の、
図1の進行方向(矢印D02)と
図2の進行方向(矢印D04)とが区別される。そして、MFP100は、
図1の進行方向(矢印D02)に従ってユーザーが移動したときは起動モードに復帰し、
図2の進行方向(矢印D04)に従ってユーザー900が移動したときは省電力モードを維持する。このような制御により、
図2に示されたように、ユーザー900がMFP100を利用することが想定されない場合には省電力モードを維持することにより、MFP100の電力消費が抑えられる。一方、
図1に示されたように、ユーザー900がMFP100を利用することが想定される場合には(ユーザーがMFP100に到達する前に)起動モードへ移行することにより、MFP100に到達したユーザーの待ち時間が短縮される。
【0030】
<2.画像処理システムの構成>
図3は、画像処理システムの構成を模式的に示す図である。
図3に示されるように、画像処理システムは、画像処理装置の一例であるMFP100と、ユーザー900によって携帯される携帯端末200とを含む。
【0031】
MFP100は、携帯端末200と無線で通信する。そして、MFP100は、携帯端末200との通信状態に基づいて、携帯端末200が所定の検知エリア内に侵入したことを検出する。携帯端末200の侵入の検出に利用される無線通信は、他の用途(たとえば、携帯端末200からMFP100への画像データの送信)にも利用される。つまり、第1の実施の形態では、MFP100と携帯端末200のいずれにおいても、携帯端末200の侵入のための特別なハードウェア構成を追加する必要はない。
【0032】
MFP100と携帯端末200との間の無線通信の一例は、Bluetooth(登録商標)方式を利用した通信である。当該方式は、低消費電力且つ中程度の通信速度(約1Mbps)で通信可能であると共に、通信モジュールを小型化し易いというメリットがある。第1の実施の形態では、携帯端末200は、無線タグの一例として利用される。また、MFP100は、無線基地局の一例として利用される。
【0033】
<3.画像処理システムにおける携帯端末200の進行方向の判定>
図4〜
図9は、画像処理システムにおける携帯端末200の進行方向の判定方法を説明するための図である。
【0034】
図4には、状態(A)〜状態(C)として、ユーザー900がMFP100に対して3つの異なる方向のそれぞれに位置する状態が示されている。より具体的には、状態(A)では、ユーザー900はMFP100の左方に位置する。状態(B)では、ユーザー900はMFP100の右上方に位置する。状態(C)では、ユーザー900はMFP100の右下方に位置する。
【0035】
第1の実施の形態では、MFP100は、ユーザー900が携帯する携帯端末200(
図3参照)が特定の検知エリア内に侵入したか否かのみを検出するが、携帯端末200がMFP100に対してどの方角に位置するかは検出しない。したがって、第1の実施の形態では、状態(A)〜状態(C)のいずれの状態も、MFP100と携帯端末200との間の距離が同じであれば、MFP100では同じ状態として検出される。
【0036】
第1の実施の形態では、MFP100は、特定の検知エリア内に携帯端末200が存在するか否かを検出する。また、MFP100は、1つの検知エリアにおける携帯端末200の存在(侵入)を検出すると、検知エリアを狭める。そして、MFP100は、狭められた検知エリアにおける携帯端末200の存在(侵入)を検出すると、検知エリアをさらに狭める。つまり、MFP100は、少なくとも3つの検知エリアに対する携帯端末200(ユーザー900)の侵入を検出する。この3つの検知エリアが
図5〜
図7に示される。
【0037】
図5には、1つ目の検知エリアA1が示される。
図6には、2つ目の検知エリアA2が、1つ目の検知エリアA1とともに示される。
図7には、3つ目の検知エリアA3が、1つ目の検知エリアA1および2つ目の検知エリアA2とともに示される。
【0038】
検知エリアA1〜A3は、MFP100を中心とする同心円である。第1の実施の形態では、検知エリアA1と検知エリアA2の半径の差は、検知エリアA2と検知エリアA3の半径の差と等しい。つまり、検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁までの距離は、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離に等しい。
【0039】
MFP100は、まず、ユーザー900によって携帯される携帯端末200が、
図5に示された検知エリアA1に侵入したことを検出する。これにより、MFP100は、検知エリアを、検知エリアA1から
図6に示された検知エリアA2へと狭める。なお、矢印D10は、ユーザー900の検知エリアA1への侵入経路の一例を示す。
【0040】
そして、MFP100は、ユーザー900によって携帯される携帯端末200が、検知エリアA2に侵入したことを検出する。これにより、MFP100は、検知エリアを、検知エリアA2から
図7に示された検知エリアA3へと狭める。なお、矢印D11は、ユーザー900の検知エリアA1から検知エリアA2への侵入経路の一例を示す。
【0041】
そして、MFP100は、ユーザー900によって携帯される携帯端末200が、検知エリアA3に侵入したことを検出する。なお、矢印D12は、ユーザー900の検知エリアA2から検知エリアA3への侵入経路の一例を示す。
【0042】
MFP100は、少なくとも3つの検知エリアで携帯端末200の存在を検出すると、ユーザー900が2つの検知エリアの境界間を移動するのに要した時間を計測する。
図8および
図9を参照して、当該時間の計測を説明する。
【0043】
図8には、ユーザー900がMFP100に向かって移動している状況が示されている。なお、
図8には、
図5〜
図7に示された検知エリアA1〜A3が示されている。また、
図8には、
図6および
図7に示された矢印D11,D12とともに、検知エリアA3からMFP100への経路を表す矢印D13が示されている。
【0044】
図8を参照して、MFP100は、携帯端末200の検知エリアA1,A2,A3のそれぞれへの侵入を検出したタイミングに基づいて、携帯端末200の検知エリアA1への侵入から検知エリアA2への侵入までに要した時間(
図8の「移動時間(1)」)、および、携帯端末200の検知エリアA2への侵入から検知エリアA3への侵入までに要した時間(
図8の「移動時間(2)」)を計測する。
【0045】
上記したように、第1の実施の形態では、検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁までの距離は、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離に等しい。したがって、ユーザー900がMFP100に向かって等速で移動している場合、移動時間(1)は移動時間(2)と等しくなる。
【0046】
一方、
図9には、ユーザー900がMFP100に向かうことなく検知エリアA1〜A3を移動している状況が示されている。
図9では、検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁までのユーザーの移動経路が矢印D21で示されている。また、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までのユーザーの移動経路が矢印D22で示されている。
図9の例では、矢印D21に沿った移動に要する時間が「移動時間(1)」であり、矢印D22に沿った移動に要する時間が「移動時間(2)」である。
【0047】
図9の例では、矢印D21と矢印D22は一直線上に位置するが、矢印D22は、矢印D21よりも長い。したがって、ユーザー900が矢印D21および矢印D22に沿って移動した場合、つまり、ユーザー900がMFP100に向かうことなく検知エリアA1〜A3を横切った場合、「移動時間(2)」は「移動時間(1)」よりも長くなる。
【0048】
MFP100は、
図8の例と
図9の例における「移動時間(1)」と「移動時間(2)」との関係の相違を利用して、ユーザー900の進行方向を判定する。つまり、MFP100は、「移動時間(2)」が「移動時間(1)」よりも長い場合には、ユーザー900の進行方向はMFP100に向かっていないと判断する。一方、MFP100は、「移動時間(2)」が「移動時間(1)」以下である場合には、ユーザー900の進行方向はMFP100に向かっていると判断する。
【0049】
そして、MFP100は、ユーザー900の進行方向はMFP100に向かっていないと判断すると、省電力モードを維持する。一方、MFP100は、ユーザー900の進行方向はMFP100に向かっていると判断すると、起動モードへ復帰する。
【0050】
<4.ハードウェア構成>
図10は、MFP100と携帯端末200のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10を参照して、MFP100と携帯端末200のそれぞれのハードウェア構成の一例を説明する。
【0051】
(MFP100)
図10に示されるように、MFP100は、主な構成要素として、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、補助記憶装置104と、通信装置106と、操作パネル107と、スキャナー部108と、プリンター部109とを備えている。CPU101と、ROM102と、RAM103と、補助記憶装置104と、通信装置106と、操作パネル107と、スキャナー部108と、プリンター部109とは、互いに内部バスで接続されている。
【0052】
CPU101は、MFP100の動作を統括的に制御するための処理を実行するプロセッサーの一例である。
【0053】
ROM102は、CPU101が実行するプログラムを含む各種のデータを格納する。
RAM103は、CPU101におけるプログラム実行時のワークエリアとして機能する。RAM103は、スキャナー部108で読み取られた画像データ等を一時的に保存する場合もある。
【0054】
補助記憶装置104は、MFP100に登録されている宛先情報やドキュメントなどの各種のデータを保存する。ドキュメントのデータは、ネットワークを介してMFP100に入力される場合もあれば、スキャナー部108で画像が読み取られることによって生成される場合もある。
【0055】
通信装置106は、MFP100が携帯端末200と情報をやり取りする際の通信インターフェースである。第1の実施の形態の画像処理システムでは、通信装置106の通信方式は、たとえばBluetoothである。
【0056】
操作パネル107は、コピーの画質または用紙のための設定値、スキャンの送信先(宛先登録)を登録または選択するための情報など、各種の情報の入力を受け付ける。操作パネル107の表面には、たとえばタッチパネルが積層された液晶表示部が設けられている。操作パネル107は、たとえばMFP100における設定内容を表示する。
【0057】
スキャナー部108は、セットされた原稿をスキャンし、原稿の画像データを生成する。スキャナー部108における画像データの生成方法は公知の方法を採用することができるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0058】
プリンター部109は、たとえば電子写真方式により、スキャナー部108で読み取られた画像データや、携帯端末200等の外部の情報処理装置から送信されたプリントデータを、印刷のためのデータに変換し、変換後のデータに基づいて文書等の画像を印刷する装置である。電子写真方式などの画像形成の態様は、公知の技術を採用することができる。
【0059】
なお、MFP100では、CPU101が適切なプログラムを実行することによって、本明細書に記載されたようなMFP100の動作が実現される。CPU101によって実行されるプログラムは、上記したようにROM102に格納されている代わりに、補助記憶装置104に格納されていてもよいし、MFP100に対して着脱可能な記憶媒体に格納されていてもよい。当該プログラムが格納される記憶媒体は、たとえばCD−ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk - Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリー、メモリーカード、FD(Flexible Disk)、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、磁気テープ、カセットテープ、MO(Magnetic Optical Disc)、MD(Mini Disc)、IC(Integrated Circuit)カード(メモリーカードを除く)、光カード、マスクROM、EPROM、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの、不揮発的にデータを格納する媒体である。
【0060】
本開示にかかるプログラムは、コンピューターのオペレーティングシステム(OS:Operating System)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0061】
また、本開示にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0062】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0063】
(携帯端末200)
携帯端末200は、主な構成要素として、CPU201と、RAM202と、記憶装置203と、ディスプレイ204と、入力装置205と、通信装置206とを備えている。CPU201と、RAM202と、記憶装置203と、ディスプレイ204と、入力装置205と、通信装置206とは、互いに内部バスで接続されている。
【0064】
CPU201は、携帯端末200の全体的な動作を制御するための処理を実行する演算装置の一例である。
【0065】
RAM202は、CPU201における処理実行時のワークエリアとして機能する。
記憶装置203は、CPU201が実行するOSやブラウザーアプリケーションなどの各種のプログラムやこれらのプログラムの実行に利用されるデータを含む、各種のデータを保存する。記憶装置203は、たとえば、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリー、メモリーカード、FD、ハードディスク、SSD、磁気テープ、カセットテープ、MO、MD、ICカード(メモリーカードを除く)、光カード、マスクROM、EPROM、EEPROMなどの、不揮発的にデータを格納する媒体が挙げられる。また、記憶装置203には、ネットワークを介してダウンロードされたプログラムがインストールされる場合も有り得る。
【0066】
ディスプレイ204は、CPU201によって実行されるプログラムの処理結果を示す画像を表示するための表示装置である。
【0067】
入力装置205は、たとえばディスプレイ204上に配置されたタッチセンサーおよび/または携帯端末200の本体に設けられた操作ボタンによって実現される。入力装置205は、情報の入力を受け付けると、当該情報をCPU201へ送る。
【0068】
通信装置206は、携帯端末200がMFP100と情報をやり取りする際の通信インターフェースである。第1の実施の形態の画像処理システムでは、通信装置206の通信方式は、たとえばBluetoothである。
【0069】
<5.機能構成>
図11は、MFP100の機能的な構成の一例を示す図である。
図11に示されるように、MFP100は、CPU101が適切なプログラムを実行することによって実現される、通信圏内外検出部151と、時間計測部152と、時間比較部153と、進行方向判定部154と、通信距離調節部155と、認証部156と、動作制御部157とを含む。
【0070】
通信圏内外検出部151は、通信装置106が取得する信号に基づいて、通信距離調節部155によって指定された検知エリア内に携帯端末200が侵入してきたことを検出する。通信距離調節部155は、通信圏内外検出部151に対して、検知エリアを指定する。より具体的には、通信距離調節部155は、たとえば、最初の検知エリアとして、
図5に示された検知エリアA1を指定する。これにより、通信圏内外検出部151は、検知エリアA1に携帯端末200が侵入したかどうかを判断する。
【0071】
通信距離調節部155は、通信圏内外検出部151が検知エリアA1に携帯端末200が侵入したことを検出すると、通信圏内外検出部151に対して指定する検知エリアを、
図6に示された検知エリアA2に変更する。また、通信距離調節部155は、通信圏内外検出部151が検知エリアA2に携帯端末200が侵入したことを検出すると、通信圏内外検出部151に対して指定する検知エリアを、
図7に示された検知エリアA3に変更する。
【0072】
なお、通信圏内外検出部151は、たとえば通信装置106が携帯端末200から取得する電波の強度に基づいて、携帯端末200の検知エリアへの侵入を検出する。より具体的には、通信装置106が取得する電波の強度は、携帯端末200がMFP100(通信装置106)の近くに位置するほど高い。通信圏内外検出部151は、携帯端末200から電波を取得したとき、当該電波の強度が、その時点で特定されている検知エリアの外縁とMFP100との距離に対応する強度以上であれば、携帯端末200が当該検知エリア内に侵入したと判断する。なお、通信距離調節部155によって特定される検知エリアの外縁とMFP100との距離と、当該距離に対応する電波の強度との関係は、たとえば補助記憶装置104に格納されている。
【0073】
時間計測部152は、通信圏内外検出部151による携帯端末200の侵入の検出に基づいて、
図8等を参照して説明された「移動時間(1)」および「移動時間(2)」を計測する。
【0074】
時間比較部153は、時間計測部152によって計測された移動時間(1)と移動時間(2)とを比較する。
【0075】
進行方向判定部154は、
図8および
図9を参照して説明されたように、時間比較部153による比較の結果に基づいて、携帯端末200を携帯するユーザーの進行方向がMFP100に向かっているかどうかを判定する。
【0076】
認証部156は、ユーザー認証のための処理を実行する。より具体的には、認証部156は、通信装置106を介して携帯端末200から取得したユーザーのIDとパスワードの組合せを、補助記憶装置104に格納された組合せと比較することにより、ユーザーを認証するかどうかを決定する。
【0077】
動作制御部157は、MFP100の動作モードを制御する。より具体的には、動作制御部157は、MFP100を、起動モードまたは省電力モードで動作させる。MFP100が省電力モードで動作しているときには、たとえば、プリンター部109(
図10)において画像の定着に利用される加熱ロールへの給電が停止される。一方、MFP100が起動モードでは、当該加熱ロールに電力が供給されることにより、当該加熱ロールの温度が所定の温度に維持される。
【0078】
<6.処理の流れ>
図12は、MFP100において実行される、携帯端末200の進行方向を検出するための処理のフローチャートである。第1の実施の形態のMFP100では、検出された携帯端末200の進行方向は、省電力モードで動作するMFP100が当該省電力モードを維持するか否かの決定に利用される。つまり、第1の実施の形態では、
図12に示された処理は、省電力モードで動作するMFP100において実行される。また、
図12に示された処理は、たとえばCPU101が所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0079】
図12を参照して、ステップS10で、CPU101は、通信装置106による通信範囲を初期値に設定する。より具体的には、CPU101は、たとえば、携帯端末200の侵入を検出する電波強度の閾値を、検知エリアA1(
図5)の外縁に対応する強度に設定する。そして、制御はステップS20へ進められる。
【0080】
ステップS20で、CPU101は、携帯端末200(無線タグ)の検知エリアA1への侵入が検出されたかどうかを判断する。より具体的には、CPU101は、たとえば、通信装置106がステップS10で設定された強度以上の強度の電波を受信したときに携帯端末200が検知エリアA1に侵入したと判断する。そして、CPU101は、携帯端末200が検知エリアA1に侵入していないと判断している間は(ステップS20でNO)、ステップS20の制御に留まる。そして、携帯端末200が検知エリアA1に侵入したと判断すると(ステップS20でYES)、ステップS30へ制御を進める。
【0081】
ステップS30で、CPU101は、通信装置106による通信範囲を縮小する。より具体的には、CPU101は、たとえば、携帯端末200の侵入を検出する電波強度の閾値を、検知エリアA2(
図6)の外縁に対応する強度に設定する。そして、制御はステップS40へ進められる。第1の実施の形態では、一般的には、ステップS30で設定される強度は、ステップS10で設定される強度よりも高い。
【0082】
ステップS40で、CPU101は、時間の計測を開始する。そして、制御はステップS50へ進められる。
【0083】
ステップS50で、CPU101は、携帯端末200(無線タグ)の検知エリアA2への侵入が検出されたかどうかを判断する。より具体的には、CPU101は、たとえば、通信装置106がステップS30で設定された強度以上の強度の電波を受信したときに携帯端末200が検知エリアA2に侵入したと判断する。そして、CPU101は、携帯端末200が検知エリアA2に侵入していないと判断している間は(ステップS50でNO)、ステップS50の制御に留まる。そして、携帯端末200が検知エリアA1に侵入したと判断すると(ステップS50でYES)、ステップS60へ制御を進める。
【0084】
ステップS60で、CPU101は、ステップS40で開始した時間の計測を終了させる。そして、ステップS40での開始からステップS60での終了までの時間を、「移動時間(1)」としてメモリー(たとえば、RAM103)に格納する。そして、制御はステップS70へ進められる。
【0085】
ステップS70で、CPU101は、通信装置106による通信範囲を縮小する。より具体的には、CPU101は、たとえば、携帯端末200の侵入を検出する電波強度の閾値を、検知エリアA3(
図7)の外縁に対応する強度に設定する。そして、制御はステップS80へ進められる。第1の実施の形態では、一般的には、ステップS70で設定される強度は、ステップS30で設定される強度よりも高い。
【0086】
ステップS80で、CPU101は、時間の計測を開始する。そして、制御はステップS90へ進められる。
【0087】
ステップS90で、CPU101は、携帯端末200(無線タグ)の検知エリアA3への侵入が検出されたかどうかを判断する。より具体的には、CPU101は、たとえば、通信装置106がステップS70で設定された強度以上の強度の電波を受信したときに携帯端末200が検知エリアA3に侵入したと判断する。そして、CPU101は、携帯端末200が検知エリアA3に侵入していないと判断している間は(ステップS90でNO)、ステップS90の制御に留まる。そして、携帯端末200が検知エリアA1に侵入したと判断すると(ステップS90でYES)、ステップS100へ制御を進める。
【0088】
ステップS100で、CPU101は、ステップS80で開始した時間の計測を終了させる。そして、ステップS80での開始からステップS100での終了までの時間を、「移動時間(2)」としてメモリー(たとえば、RAM103)に格納する。そして、制御はステップS110へ進められる。
【0089】
ステップS110で、CPU101は、ステップS60の「移動時間(1)」とステップS100の「移動時間(2)」とを比較する。そして、制御はステップS120へ進められる。
【0090】
ステップS120で、CPU101は、ステップS110における比較の結果が、「移動時間(2)が移動時間(1)以下である」ということを示すかどうかを判断する。そして、当該結果が「移動時間(2)が移動時間(1)以下である」ということを示す場合には(ステップS120でYES)、CPU101は、MFP100の動作モードを起動モードに復帰させる。一方、当該結果が「移動時間(2)が移動時間(1)以下である」ということを示さない場合には(ステップS120でYES)、CPU101は、ステップS10へ制御を戻す。
【0091】
以上説明された第1の実施の形態では、MFP100は、3つ以上の検知エリアのそれぞれへの外部機器(携帯端末200)の侵入を検出する。そして、当該検出の結果に基づいて、外部機器について、少なくとも2種類(移動時間(1),移動時間(2))の、2つの検知エリア間の移動に要する時間である移動時間を計測する。そして、当該少なくとも2種類の移動時間に基づいて、外部機器の進行方向が画像処理装置(MFP100)に向かうものであるか否かを判定する。
【0092】
<7.ユーザー認証>
第1の実施の形態のMFP100は、少なくとも1つの検知エリアにおけるユーザー900(携帯端末200)の侵入が検出されたことに基づいて、ユーザー900を認証するための処理を実行してもよい。これにより、ユーザー900がMFP100に到達する前に、ユーザー900の認証が完了され得る。したがって、ユーザー900がMFP100に到達した後の、MFP100を利用するまでのユーザー900の待ち時間を削減することができる。
【0093】
より具体的には、たとえばCPU101は、検知エリアA1に携帯端末200が侵入したことを検出すると、当該携帯端末200に対して、ユーザー認証に必要なデータ(たとえば、IDとパスワード)の送信を要求する。これに応じて、携帯端末200は、その時点でユーザー900が入力したデータ、または、記憶装置203に格納されたデータを、MFP100へ送信する。
【0094】
携帯端末200からデータを受信すると、CPU101は、当該データが補助記憶装置104等に格納されている認証用情報のデータ(たとえば、IDとパスワードの組合せ)と一致するかどうかを判断し、一致すると判断すると、携帯端末200のユーザー900を認証する。MFP100においてユーザー900が認証されている間は、CPU101は、たとえば、当該ユーザー900に対して許可された条件下で、MFP100の動作を制御する。当該ユーザー900に対して許可された条件下での動作の一例は、秘密扱いの書類を出力することである。
【0095】
ユーザー認証が成功すると(上記のように受信したデータが上記の認証用情報のデータと一致すると)、CPU101は、ユーザー認証が成功したことを示す情報を、たとえばRAM103に格納する。ユーザー認証が成功したことを示す情報が格納されている間は、CPU101は、ユーザー900に対して許可された条件下で動作する。
【0096】
なお、ユーザー認証が成功したことを示す情報がRAM103等に格納された後、ユーザー900(携帯端末200)の進行方向がMFP100に向かっていないことが検出された場合には、CPU101は、当該情報をRAM103から削除する。これにより、MFP100を操作しないユーザーがMFP100において認証されている状態が解消され得る。
【0097】
CPU101は、たとえば通信相手の携帯端末200を識別する情報(たとえば、携帯端末200のプロダクトID、携帯端末200を使用するユーザー900のID、等)に基づいて、個々の携帯端末200を識別する。CPU101は、たとえば、検知エリアA1内の複数のユーザーの進行方向がMFP100に向かっている場合、これらのユーザーの中の最もMFP100に近いユーザーについてのみ、ユーザー認証を行なってもよい。MFP100との距離は、たとえば各携帯端末200から受信された電波の強度が高いほど近いと判断される。
【0098】
<8.変形例>
図12等を参照して説明された処理では、MFP100は、ユーザー900(携帯端末200)の進行方向の検出結果を、省電力モードの解除(ステップS120でYES)/維持(ステップS120でNO)の決定に利用する。なお、MFP100は、当該検出結果を、他の用途にも利用し得る。
【0099】
たとえば、MFP100のCPU101は、ユーザー900の進行方向がMFP100に向かっていることを条件として、携帯端末200のユーザー900についてのユーザー認証を実行してもよい。これにより、ユーザー900は、MFP100に到達した後で、ユーザー認証のための操作をする必要がなくなり、このため、速やかにMFP100を使用できる。また、MFP100に向かっていることが想定されるユーザー900のみについて、ユーザー認証が実行され得る。MFP100に向かっていることが想定されないユーザー900について、事前にユーザー認証が実行されることが回避され得る。
【0100】
また、MFP100のCPU101は、携帯端末200の進行方向を、個々の携帯端末200を特定する情報(たとえば、携帯端末200のプロダクトID)とともに検出することにより、MFP100近傍を通過するユーザーの中で、MFP100に向かって移動するユーザーの数と、MFP100に向かうことなく検知エリアを通過するユーザーの数とを取得することができる。これらの数値は、たとえば、室内のMFP100の配置の決定に利用され得る。
【0101】
より具体的には、複数の設置場所のそれぞれについて、MFP100に向かって移動するユーザーの数と、MFP100に向かうことなく検知エリアを通過するユーザーの数との和を取得する。複数の設置場所のうち、当該MFP100に向かって移動するユーザーの数の割合が高い設置場所が、MFP100についての適切な設置場所として選択され得る。
【0102】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態の画像処理システムでは、隣接する検知エリア間の間隔は一定である。つまり、検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁までの距離と、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離は、等しい。一方、第2の実施の形態の画像処理システムでは、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離は、検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁までユーザー900が移動する時間(または、移動速度)に応じて、変更される。
【0103】
図13および
図14は、第2の実施の形態における検知エリアA1〜A3の設定例を説明するための図である。
図13および
図14では、検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁までの距離は、距離C1として示される。
図13では、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離は距離C2として示される。
図14では、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離は距離C2Xとして示される。
【0104】
図13では、第1の実施の形態と同様に、距離C1と距離C2は等しい。第2の実施の形態では、ユーザー900が検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁まで移動する時間が所定の時間以上である場合には、検知エリアA1〜A3は、
図13に示されるように設定される。
【0105】
一方、
図14では、距離C2Xは、距離C1より長い。第2の実施の形態では、ユーザー900が検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁まで移動する時間が所定の時間未満である場合には、検知エリアA1〜A3は、
図14に示されるように設定される。
【0106】
つまり、第2の実施の形態では、「移動時間(1)」が短いほど、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離が長くなる。また、「移動時間(1)」が長いほど、検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離が短くなる。
【0107】
検知エリアA1の外縁から検知エリアA2の外縁までの距離と検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離とが等しい場合、「移動時間(1)」が短いほど、「移動時間(2)」が短くなることが想定される。第2の実施の形態では、「移動時間(1)」が短くなるほど検知エリアA2の外縁から検知エリアA3の外縁までの距離が長くなることにより、「移動時間(2)」を長くなることが期待され、これにより、携帯端末200の進行方向の検出の精度を向上することが期待される。
【0108】
なお、第2の実施の形態における検知エリアの変更は、たとえば、当該検知エリアに侵入したことを検出するための、通信装置106における受信した電波の強度の閾値が変更されることによって実現される。たとえば、補助記憶装置104には、検知エリアA3のための電波強度の閾値として、「移動時間(1)」の長さに対応した2以上の値が格納されている。CPU101(通信距離調節部155)は、「移動時間(1)」の長さに応じた閾値を選択して、検知エリアA3についての電波強度の閾値として利用する。
【0109】
[第3の実施の形態]
第1および第2の実施の形態では、MFP100では3つの検知エリアについて、携帯端末200の侵入を検出した。侵入を検出するエリアの数は、「3」に限定されない。
【0110】
図15は、第3の実施の形態の画像処理システムにおいて利用される4つの検知エリアを示す図である。
図15に示されるように、第4の実施の形態では、携帯端末200の侵入を検出するためのエリアとして、4つの検知エリアA11〜A14が利用される。検知エリアA11〜A14は、MFP100を中心とした同心円である。
【0111】
図15では、検知エリアA11から検知エリアA12までの経路の一例が、経路C11で示される。検知エリアA12から検知エリアA13までの経路の一例が、経路C12で示される。検知エリアA13から検知エリアA14までの経路の一例が、経路C13で示される。
【0112】
第3の実施の形態では、ユーザー900が検知エリアA11の外縁から検知エリアA12の外縁まで移動する時間が「移動時間(1)」として計測される。ユーザー900が検知エリアA12の外縁から検知エリアA13の外縁まで移動する時間が「移動時間(2)」として計測される。さらに、ユーザー900が検知エリアA13の外縁から検知エリアA14の外縁まで移動する時間が「移動時間(3)」として計測される。
【0113】
第3の実施の形態では、CPU101は、たとえば、「移動時間(2)」が「移動時間(1)」以下であり、かつ、「移動時間(3)」が「移動時間(2)」以下である場合には、ユーザー900(携帯端末200)の進行方向がMFP100に向かっていると判断する。一方、CPU101は、それ以外の場合には、ユーザー900(携帯端末200)の進行方向がMFP100に向かっていないと判断する。
【0114】
つまり、第3の実施の形態では、第1および第2の実施の形態と比較して、ユーザー900(携帯端末200)の進行方向が、より多くの段階の検知エリアへの侵入の検出に基づいて判断される。これにより、より正確に、当該進行方向が判定され得る。
【0115】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態の画像処理システムでは、MFP100は、複数のユーザー900(携帯端末200)についての進行方向を並行して判定する。
図16は、第4の実施の形態のMFP100のCPU101によって実行される処理のフローチャートである。
図16に示された処理では、変数Nが利用される。変数Nの初期値は「1」である。
【0116】
図16に示されるように、ステップSA10で、CPU101は、侵入を検出する検知エリアを初期値(たとえば、
図5の検知エリアA1)に設定する。そして、制御はステップSA20へ進められる。
【0117】
ステップSA20で、CPU101は、ステップSA10で設定された検知エリアへの携帯端末200の侵入が検出されたかどうかを判断する。そして、当該侵入が検出されていないと判断すると(ステップSA20でNO)、CPU101は、ステップSA20の制御に留まる。一方、当該侵入が検出されたと判断すると(ステップSA20でYES)、CPU101は、ステップSA30へ制御を進める。
【0118】
ステップSA30で、CPU101は、変数Nの値を1加算更新する。そして、制御はステップSA40へ進められる。
【0119】
ステップSA40で、CPU101は、ステップSA10で検知エリアA1への侵入を検知された携帯端末200をユーザーNと特定し、当該ユーザーNについて、
図12の処理(ユーザーの進行方向を判定するための処理)のステップS30以降の制御を実行する。そして、制御は、ステップSA10に戻される。制御がステップSA10へ戻されることにより、ユーザーNについての
図12の処理と並行して、新たなユーザーの検知エリアAへの侵入を検出するために、ステップSA10以降の制御が実行される。
【0120】
以上、
図16を参照して説明された処理によれば、CPU101は、検知エリアA1に侵入した複数のユーザー900(携帯端末200)のそれぞれについて、それぞれを変数Nの値で特定しながら、進行方向を判定することができる。
【0121】
なお、第4の実施の形態において、各ユーザー900(携帯端末200)のそれぞれについて
図12のステップS30以降の制御を実行する際に、CPU101は、各ユーザー900に対するその時点に応じた検知エリアを適宜設定する。検知エリアは、たとえば、通信装置106が受信する電波の強度についての、侵入を検出するための閾値が変更されることによって、変更される。CPU101は、上記したような複数のユーザーのそれぞれの進行方向を判定する際、たとえば各ユーザーの侵入を検出する検知エリアの種類を時間の経過とともに順に変更する。
【0122】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。