(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により電力を出力する燃料電池(16−1、16−2、・・・、16−N)と、前記燃料ガスが充填され、充填された前記燃料ガスを前記燃料電池へ供給する燃料タンク(12a−1、12b−1、12a−2、12b−2、・・・12a−N、12b−N)と、前記燃料タンクに充填された前記燃料ガスの残圧を検出する圧力検出手段(13a−1、13b−1、13a−2、13b−2、・・・、13a−N、13b−N)と、入力された信号に応じて前記燃料電池の出力を制御する出力制御手段(17−1、17−2、・・・、17−N)と、を有するサブシステム(1−1、1−2、・・・、1−N)を複数備えるサブシステム群と、
前記サブシステム群が備えるすべての出力制御手段に対して、前記サブシステム群が備える各サブシステムに出力させる電力の目標値である要求出力に応じた信号を出力する制御装置(2)と、を備え、
前記制御装置は、前記サブシステム群が備える2つのサブシステムのうち、残圧が高い方の第1サブシステムに対する前記要求出力を、残圧が低い方の第2サブシステムに対する前記要求出力よりも大きくする要求出力補正を行い、
前記制御装置は、前記要求出力補正において、前記第1サブシステムの残圧と、前記サブシステム群のうち前記第1サブシステム以外のサブシステムの残圧との関係に応じて、前記第1サブシステムについての補正率kを定め、前記第1サブシステムへの補正前の要求出力に前記補正率kを乗じた補正量を、補正前の要求出力に足して補正後の要求出力とし、
前記サブシステム群はN個のサブシステムを有し、
前記N個のサブシステムのうち1番目のサブシステムからN番目のサブシステムについての前記要求出力補正が順に行われ、
前記制御装置は、前記要求出力補正において、1以上N以下の整数n番目のサブシステムから前記N番目のサブシステムまでの残圧の平均と前記n番目のサブシステムの残圧との差ΔP(n)に応じて前記補正率kを定めることを特徴とする燃料電池システム。
前記差ΔP(n)が一定のとき、前記サブシステム群が備えるすべてのサブシステムから出力される電力の和の目標値が大きいほど前記補正率kが大きいことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
前記差ΔP(n)が一定のとき、前記サブシステム群が備えるすべてのサブシステムから出力される電力の和の目標値が小さいほど前記補正率kが大きいことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
前記制御装置が、前記サブシステム群が備えるすべてのサブシステムに対する要求出力が各サブシステムの最大出力以下となるように、前記補正率kを定めることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により電力を出力する燃料電池(16−1、16−2、・・・、16−N)と、前記燃料ガスが充填され、充填された前記燃料ガスを前記燃料電池へ供給する燃料タンク(12a−1、12b−1、12a−2、12b−2、・・・12a−N、12b−N)と、前記燃料タンクに充填された前記燃料ガスの残圧を検出する圧力検出手段(13a−1、13b−1、13a−2、13b−2、・・・、13a−N、13b−N)と、入力された信号に応じて前記燃料電池の出力を制御する出力制御手段(17−1、17−2、・・・、17−N)と、を有するサブシステム(1−1、1−2、・・・、1−N)を複数備えるサブシステム群と、
前記サブシステム群が備えるすべての出力制御手段に対して、前記サブシステム群が備える各サブシステムに出力させる電力の目標値である要求出力に応じた信号を出力する制御装置(2)と、を備え、
前記制御装置は、前記サブシステム群が備える2つのサブシステムのうち、残圧が高い方の第1サブシステムに対する前記要求出力を、残圧が低い方の第2サブシステムに対する前記要求出力よりも大きくする要求出力補正を行い、
前記制御装置は、前記要求出力補正において、前記第1サブシステムの残圧と、前記サブシステム群のうち前記第1サブシステム以外のサブシステムの残圧との関係に応じて、前記第1サブシステムについての補正率kを定め、前記第1サブシステムへの補正前の要求出力に前記補正率kを乗じた補正量を、補正前の要求出力に足して補正後の要求出力とし、
前記制御装置は、前記サブシステム群が備えるすべてのサブシステムに対する要求出力が各サブシステムの最大出力以下となるように、前記補正率kを定めることを特徴とする燃料電池システム。
酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により電力を出力する燃料電池(16−1、16−2、・・・、16−N)と、前記燃料ガスが充填され、充填された前記燃料ガスを前記燃料電池へ供給する燃料タンク(12a−1、12b−1、12a−2、12b−2、・・・12a−N、12b−N)と、前記燃料タンクに充填された前記燃料ガスの残圧を検出する圧力検出手段(13a−1、13b−1、13a−2、13b−2、・・・、13a−N、13b−N)と、入力された信号に応じて前記燃料電池の出力を制御する出力制御手段(17−1、17−2、・・・、17−N)と、を有するサブシステム(1−1、1−2、・・・、1−N)を複数備えるサブシステム群と、
前記サブシステム群が備えるすべての出力制御手段に対して、前記サブシステム群が備える各サブシステムに出力させる電力の目標値である要求出力に応じた信号を出力する制御装置(2)と、を備え、
前記制御装置は、前記サブシステム群が備える2つのサブシステムのうち、残圧が高い方の第1サブシステムに対する前記要求出力を、残圧が低い方の第2サブシステムに対する前記要求出力よりも大きくする要求出力補正を行い、
前記制御装置は、前記要求出力補正において、前記第1サブシステムの残圧と、前記サブシステム群のうち前記第1サブシステム以外のサブシステムの残圧との関係に応じて、前記第1サブシステムについての補正率kを定め、前記第1サブシステムへの補正前の要求出力に前記補正率kを乗じた補正量を、補正前の要求出力に足して補正後の要求出力とし、
前記制御装置は、前記サブシステム群が備えるすべてのサブシステムに対する要求出力が0以上となるように、前記補正率kを定めることを特徴とする燃料電池システム。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車等に用いられる燃料電池システムは、燃料電池と燃料タンクを有するサブシステムを複数備えることで高出力化する。そのため、燃料電池システムはバス等の大型車両にも容易に対応できる。このような燃料電池システムにおいては、各サブシステムが有する燃料電池の性能差等により、複数のサブシステム間で燃料タンクの残圧に差が生じる。
【0003】
ステーションから燃料タンクへ燃料ガスを充填するとき、ステーションは供給圧を徐々に上げて、燃料ガスが入り始めたときの圧力を検知し、充填時の断熱圧縮に伴う温度上昇を考慮して目標充填圧を決定する。例えば残圧の差がある2本のタンクに燃料ガスを充填する場合、最初は低圧側の燃料タンクのみに燃料ガスが入り始める。このとき、充填口からは高圧側の燃料タンクの圧力を検知できない。
【0004】
この状態で充填を続けると、2本の燃料タンクの残圧が等しくなった時点で高圧側だった燃料タンクにも燃料ガスが入り始め、均等に残圧が上昇し始める。このとき、充填開始時に低圧側だった燃料タンクは、充填時の断熱圧縮に伴い充填開始時よりも温度が上昇している。一方、高圧側だった燃料タンクは温度上昇していない。
【0005】
そのため、2本の燃料タンクの残圧が等しくなった時点では、高圧側だった燃料タンクは、低圧側だった燃料タンクよりも温度が低いためにSOC(State Of Charge:充填率)が高い状態にある。しかし、目標充填圧は、低圧側だった燃料タンクに燃料ガスが入り始めたときの圧力に基づいて決められている。そのため、2つの燃料タンクの残圧が目標充填圧に達したとき、低圧側だった燃料タンクのSOCが100%以下になるようにしていたとしても、同一圧力でより温度の低い高圧側だった燃料タンクのSOCが100%を超えてしまうおそれがある。
【0006】
このように、燃料タンクの残圧に差が生じた状態で燃料ガスの充填を行うと、残圧が高い燃料タンクのSOCが100%を超えてしまうおそれがある。そのため、燃料電池システムの運転中に、複数のサブシステム間で燃料タンクの残圧に差が生じないように、各サブシステムの燃料タンクの残圧を制御する必要がある。
【0007】
同一のサブシステム内にある複数の燃料タンク等、燃料電池への供給ラインが同一の系にある複数の燃料タンクであれば、各燃料タンクからの供給ラインに設けたシャットバルブの開頻度を残圧に応じて変化させることで、残圧を均一化できる。具体的には、対応する燃料タンクの残圧が高いシャットバルブの開頻度を、対応する燃料タンクの残圧が低いシャットバルブよりも高くして、残圧が高い燃料タンクから燃料電池へ、残圧が低い燃料タンクよりも燃料ガスを多く供給することで、残圧を均一化する。
【0008】
しかし、この方法では、独立したサブシステム間の平均残圧の差は補正できない。同様の方法で各サブシステムの燃料タンクの残圧を均一化するには、燃料供給系を連通させ、各サブシステムのシャットバルブを相互に駆動可能にすること等が必要になる。そのため、システムが複雑になり、製造コスト等が高くなる。よって、独立した複数のサブシステムの残圧を均一化するための他の方法が必要である。
【0009】
特許文献1では、燃料ガス供給装置に対し並列に接続した複数の燃料電池の出力電流を等しくすることで、複数の燃料電池の間で燃料ガスの消費量を等しくする方法が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1ないし
図3を用いて説明する。本実施形態の燃料電池システム100は、電気自動車の一種である、いわゆる燃料電池車両に適用されており、車両走行用電動モータ等の電気負荷に電力を供給するものである。
【0019】
まず、
図1を用いて、燃料電池システム100の構成について説明する。
図1に示すように、燃料電池システム100は、サブシステム群、制御装置2、燃料充填口3、配管4、燃料充填弁5を備え、負荷6に接続されている。負荷6は、車両走行用電動モータ等で構成される電気負荷である。
【0020】
図1では、サブシステム群に属する2つのサブシステムをそれぞれサブシステム1−1、1−2とする。サブシステム1−1とサブシステム1−2の構成は同等なので、以下では、符号のハイフン以下を省略して説明する。
【0021】
サブシステム1は、制御装置2からの信号に応じた電力を出力して負荷6に供給するものである。サブシステム1は、逆止弁11、2つの燃料タンク12a、12b、2つの圧力検出手段13a、13b、2つのシャットバルブ14a、14b、燃料供給弁15を備えている。また、サブシステム1は、燃料電池16、PCU(Power control unit)17、二次バッテリ18を備えている。サブシステム1の詳細については後述する。
【0022】
制御装置2は、アクセル開度等に基づいて燃料電池システム100全体が出力する電力の目標値P
totalを算出し、目標値P
totalおよび各サブシステムの燃料タンク12a、12bの残圧に応じて、各サブシステムに出力させる電力の目標値を決定する装置である。制御装置2は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
【0023】
制御装置2の入力端子は、負荷6、各サブシステムの圧力検出手段13a、13b、図示しないアクセル等に接続されている。また、制御装置2の入力端子は、燃料電池16の周辺に配置された図示しない電流センサ、電圧センサ、温度センサ等、図示しない水素ポンプ、エアポンプ、冷却水ポンプ等の補機類に接続されている。また、制御装置2の出力端子は、各サブシステムのシャットバルブ14a、14b、燃料供給弁15、PCU17に接続されている。
【0024】
燃料充填口3は、車両の外部と連結しており、車両の外部から各サブシステムの燃料タンク12a、12bへ燃料ガスを充填するために用いられる。燃料充填口3から燃料電池システム100の内部へ向けて配管4が形成されており、配管4には燃料充填弁5が設けられている。燃料充填弁5は、燃料ガスの充填時には開いており、それ以外のときには閉じている。
【0025】
配管4は燃料充填弁5に対して燃料充填口3と反対側で分岐しており、分岐した配管4の先に、各サブシステムが接続されている。
【0026】
サブシステム1の詳細について説明する。上述したように、サブシステム1は、逆止弁11、2つの燃料タンク12a、12b、2つの圧力検出手段13a、13b、2つのシャットバルブ14a、14b、燃料供給弁15、燃料電池16、PCU17、二次バッテリ18を備えている。
【0027】
燃料充填弁5の先で分岐した配管4には、各サブシステムの逆止弁11が設けられている。逆止弁11は、燃料ガスを充填する際、車両の外部から燃料充填口3、配管4を通して燃料タンク12a、12bへ送られる燃料ガスの流れを一方向に制限し、逆流を防止するためのものである。
【0028】
配管4は、逆止弁11の先で2つに分岐している。分岐したうちの一方はさらに2つに分岐し、分岐した先にはそれぞれ燃料タンク12a、12bが接続されている。配管4のうち、逆止弁11の先で2つに分岐したうちの他方の先には、燃料供給弁15を介して燃料電池16が接続されている。
【0029】
燃料タンク12a、12bは、燃料ガスが充填される圧縮ガスタンクであり、燃料タンク12a、12bには、燃料タンク12a、12bの残圧を検出する圧力検出手段13a、13bがそれぞれ備えられている。
【0030】
配管4と燃料タンク12a、12bとの接続部には、シャットバルブ14a、14bがそれぞれ設けられている。シャットバルブ14a、14bは、燃料タンク12a、12bへの燃料ガスの充填や、燃料タンク12a、12bから燃料電池16への燃料ガスの供給を行う際に開くものである。燃料ガスの充填時には、すべてのサブシステム1に備えられたすべてのシャットバルブ14a、14bが常に開く。燃料ガスの供給時には、1つのサブシステム1が備えるシャットバルブ14a、14bは1つずつ開く。シャットバルブ14a、14bの開頻度は制御装置2により燃料タンク12a、12bの残圧に応じて制御され、対応する燃料タンクの残圧が高いシャットバルブほど開頻度が高い。これにより、1つのサブシステム1における2つの燃料タンク12a、12bは、残圧が互いにほぼ等しくなる。燃料ガスの供給時には、燃料供給弁15も開き、燃料ガスが燃料タンク12a、12bから燃料電池16へ移動するようになる。
【0031】
燃料電池16は、負荷6、二次バッテリ18等の電気負荷に供給される電気エネルギを発生させるものであり、本実施形態では、固体高分子電解質型燃料電池を採用している。
【0032】
より具体的には、燃料電池16は、基本単位となる燃料電池セル16aが複数積層され、電気的に直列に接続されて構成された燃料電池スタックである。各燃料電池セル16aでは、以下に示すように、燃料ガスである水素と酸化剤ガスである空気(酸素)の電気化学反応により電気エネルギが出力される。
【0033】
(負極側)H
2→2H
++2e
−
(正極側)2H
++1/2O
2+2e
−→H
2O
燃料電池16から出力された電力は、PCU17を介して負荷6および二次バッテリ18に供給され、モータの駆動等に用いられる。
【0034】
PCU17は、燃料電池16から二次バッテリ18あるいは二次バッテリ18から燃料電池16への電力の流れを制御するもので、電圧の大きさに関わらず双方向に電力のやり取りが可能となっている。これにより、燃料電池16から発生した電力が負荷6に必要な電力より多い場合には、余剰分の電力が二次バッテリ18に貯蔵される。また、燃料電池16から発生した電力が不足している場合には、二次バッテリ18はPCU17に電力を出力し、電力の不足を補う。また、PCU17は、負荷6に電気的に接続されており、燃料電池16から発生した電力を変換して負荷6へ送る。また、PCU17は、燃料電池16から取り出す電力の大きさを調整することで燃料電池16の出力を制御する機能を備えており、本発明の出力制御手段に相当する。
【0035】
つぎに、
図2を用いて、本実施形態の燃料電池システム100の動作について説明する。運転手がアクセル操作等を行うと、アクセル開度等に応じた信号が制御装置2に入力される。制御装置2は、入力された信号と、負荷6を構成する車両走行用電動モータ等の負荷の大きさに基づいて、燃料電池システム100全体が出力する電力の目標値P
totalを算出する。その後、制御装置2は圧力検出手段13a−1、13b−1、13a−2、13b−2からの入力に基づいて、サブシステム1−1、1−2への要求出力、つまり、サブシステム1−1、1−2に出力させる電力の目標値を繰り返し決定する。
【0036】
具体的には、
図2のように決定する。制御装置2は、まず、圧力検出手段13a、13bからの入力に基づいて、2つのサブシステム1における残圧の差を算出し、差の絶対値を圧力差ΔPとする。ここでは、サブシステム1−1が備える2つの燃料タンク12a−1、12b−1の残圧の平均を、サブシステム1−1における残圧とする。また、サブシステム1−2が備える2つの燃料タンク12a−2、12b−2の残圧の平均を、サブシステム1−2における残圧とする。2つのサブシステム1−1、1−2のうち、残圧の高い方が本発明の第1サブシステムに相当し、残圧の低い方が本発明の第2サブシステムに相当する。
【0037】
制御装置2は、目標値P
totalと圧力差ΔPを用いて、サブシステム1−1、1−2への要求出力を算出する。具体的には、ステップS1において、目標値P
totalの半分を、残圧が高い方のサブシステムへの補正前の要求出力とする。また、ステップS2において、圧力差ΔPに基づいて補正率kを算出する。ここでは、k=k
0ΔPとする。
【0038】
ここで、補正割合k
0は、燃料タンク12a、12bの容量、最大圧力、燃料電池16の出力性能等により適宜設定されるものである。例えば、最大圧力70MPaの燃料タンク12a、12bと最大出力100kWの燃料電池16を用いる場合、圧力差1MPaあたり補正率10%というように補正割合k
0をあらかじめ設定しておく。この場合、k
0=0.1[MPa
−1]である。
【0039】
制御装置2は、ステップS3において、各サブシステムへの補正後の要求出力がサブシステムの所定の最大出力P
maxを超えたり、負になったりしないように、補正率kの範囲を制限する。具体的には、補正率kはk
0ΔP、1、k
maxのうち最小の値になる。ここで、k
maxは、残圧が高い方のサブシステムへの補正後の要求出力がP
maxとなるkであり、k
max=2P
max/P
total−1である。
【0040】
制御装置2は、ステップS4において、残圧が高い方のサブシステムへの補正前の要求出力に、算出した補正率分を加えた出力を、残圧が高い方のサブシステムへの要求出力とする。また、ステップS5において、目標値P
totalから、残圧が高い方のサブシステムへの補正後の要求出力を引いた出力を、残圧が低い方のサブシステムへの要求出力とする。
【0041】
これにより、2つのサブシステム1−1、1−2のうち、燃料タンクの残圧が高い方への要求出力をP
req1、残圧が低い方への要求出力をP
req2とすると、P
req1=(1+k)P
total/2、P
req2=(1−k)P
total/2となる。
【0042】
つまり、目標値P
totalの半分を各サブシステムへの補正前の要求出力としたとき、P
req1は、補正前の要求出力に補正率分を加えたものであり、P
req2は、補正前の要求出力から補正率分を引いたものである。
【0043】
制御装置2は、サブシステム1−1、1−2への要求出力を決定すると、決定した要求出力に応じた信号をサブシステム1−1、1−2のPCU17−1、17−2に出力する。PCU17−1、17−2は、制御装置2からの入力に応じて、燃料電池16−1、16−2の出力が要求出力と等しくなるように、燃料電池16−1、16−2の出力を制御する。
【0044】
このように、本実施形態では、目標値P
totalの半分を各サブシステムへの補正前の要求出力とし、各サブシステムへの補正前の要求出力に補正率分を加えたものを残圧が高い方のサブシステムへの要求出力P
req1としている。また、各サブシステムへの補正前の要求出力から補正率分を引いたものを残圧が低い方のサブシステムへの要求出力P
req2としている。そのため、残圧が高い方のサブシステムは発電量が多くなり、燃料ガスを多く消費するので、残圧が低い方のサブシステムよりも残圧が早く低下する。これにより、2つのサブシステム1−1、1−2の圧力差ΔPを小さくして、各サブシステムの残圧を均一化することができる。
【0045】
なお、P
req1+P
req2=P
totalであるので、本実施形態では、上記の方法で残圧を調整すると同時に、燃料電池システム100全体での要求出力を目標値P
totalに達するものとし、燃料電池システム100全体での出力が不足することを抑制している。
【0046】
なお、本実施形態では、各サブシステムへの補正後の要求出力が負にならないように補正率kの範囲を制限したが、一方のサブシステムへの補正後の要求出力が0以下にならないように補正量の上限を設定してもよい。
【0047】
2つのサブシステムを有し、一方のサブシステムの燃料消費が他方のサブシステムよりも大きい燃料電池システムにおいて、各サブシステムへの要求出力を上記の方法で補正する場合と、要求出力を補正しない場合における圧力差の変化を
図3に示す。
【0048】
図3に示すように、初期状態において2つのサブシステム間に圧力差がなく、要求出力を補正しない場合、運転時間の経過にしたがってサブシステム間の圧力差が増加した。これに対し、初期状態において圧力差がなく、要求出力を補正する場合、圧力差の増加量は補正しない場合に比べて小さくなった。また、初期状態で圧力差があり、要求出力を補正する場合、運転時間の経過にしたがってサブシステム間の圧力差は小さくなった。このように、本実施形態の燃料電池システム100で用いる要求出力の補正方法により、サブシステム間の圧力差を一定量以下に抑えることができた。
【0049】
ステーションから燃料タンクへ燃料ガスを充填するとき、ステーションは供給圧を徐々に上げて、燃料ガスが入り始めたときの圧力を検知し、充填時の断熱圧縮に伴う温度上昇を考慮して目標充填圧を決定する。例えば残圧の差がある2本のタンクに燃料ガスを充填する場合、最初は低圧側の燃料タンクのみに燃料ガスが入り始める。このとき、充填口からは高圧側の燃料タンクの圧力を検知できない。
【0050】
この状態で充填を続けると、2本の燃料タンクの残圧が等しくなった時点で高圧側だった燃料タンクにも燃料ガスが入り始め、均等に残圧が上昇し始める。このとき、充填開始時に低圧側だった燃料タンクは、充填時の断熱圧縮に伴い充填開始時よりも温度が上昇している。一方、高圧側だった燃料タンクは温度上昇していない。
【0051】
そのため、2本の燃料タンクの残圧が等しくなった時点では、高圧側だった燃料タンクは、低圧側だった燃料タンクよりも温度が低いためにSOCが高い状態にある。しかし、目標充填圧は、低圧側だった燃料タンクに燃料ガスが入り始めたときの圧力に基づいて決められている。そのため、2つの燃料タンクの残圧が目標充填圧に達したとき、低圧側だった燃料タンクのSOCが100%以下になるようにしていたとしても、同一圧力でより温度の低い高圧側だった燃料タンクのSOCが100%を超えてしまうおそれがある。
【0052】
このように、燃料タンクの残圧に差が生じた状態で燃料ガスの充填を行うと、残圧が高い燃料タンクのSOCが100%を超えてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、燃料電池システムの運転中に、上記の方法で各サブシステムの燃料タンクの残圧を制御し、複数のサブシステム間で燃料タンクの残圧に差が生じることを抑制した。
【0053】
本実施形態の燃料電池システム100では、各サブシステムにおける燃料タンクの残圧に応じて各サブシステムへの要求出力を決定することにより、サブシステム間の要求出力に差を生じさせている。そのため、要求出力の決定の際に補機消費電力や燃料電池16の劣化を考慮する必要がない。これにより、簡単な構成で、独立した各サブシステムの燃料消費量を調整し、各燃料タンクから消費された燃料の量を均一化して、各燃料タンクの残圧を均一化できる。また、簡単な構成であるため、燃料電池システムの製造コスト等の削減を図ることができる。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について
図4ないし
図6を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してサブシステムの数を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
本実施形態の燃料電池システム100は、2つ以上、より典型的には3つ以上のサブシステムを備えている。本実施形態の燃料電池システム100が備えるサブシステムの数をNとする。ただし、Nは2以上の整数である。
【0056】
図4では、サブシステム群に含まれるN個のサブシステムをそれぞれサブシステム1−1、1−2、・・・、1−Nとし、mを1以上N以下の整数とし、各サブシステムが備える構成のうち、特にサブシステム1−mが備えるものを符号に−mを付して表している。
【0057】
図5、
図6を用いて、本実施形態における燃料電池システム100の動作のうち、第1実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態の制御装置2は、
図5の要求出力算出処理を繰り返し実行することで、各サブシステムに対する要求出力を繰り返し決定する。
【0058】
制御装置2が要求出力の算出処理を開始すると、制御装置2はステップS11に進む。制御装置2は、ステップS11において、すべてのサブシステム1−1、1−2、・・・、1−Nのうち、n番目に燃料タンクの残圧が高いものをn番目のサブシステムとして、ステップS12に進む。
【0059】
すべてのサブシステム1−1、1−2、・・・、1−Nの残圧が等しい場合を除けば、少なくとも1番目のサブシステムが本発明の第1サブシステムに相当し、少なくともN番目のサブシステムが本発明の第2サブシステムに相当する。また、サブシステム群に属する2つのサブシステムに着目したとき、それらの間で燃料タンクの残圧に差があれば、残圧の高い方が本発明の第1サブシステムに相当し、残圧の低い方が本発明の第2サブシステムに相当する。制御装置2は、ステップS12において、n=1として、ステップS13に進む。
【0060】
制御装置2は、ステップS13において、n番目のサブシステムへの要求出力を決定する。具体的には、制御装置2は、ステップS13に進むと、ステップS21に進み、n=1か否かの判定を行い、n=1であればステップS22に進む。制御装置2は、ステップS22において、n番目のサブシステムへの要求出力P
req(n)を、目標値P
totalをNで割った値P
total/Nとし、ステップS24に進む。
【0061】
ステップS21においてn=1でなければ、制御装置2はステップS23に進む。制御装置2は、ステップS23において、要求出力P
req(n)を、要求出力を補正したサブシステムへの要求出力の和を、目標値P
totalから引いたものを、要求出力を補正していない残りのサブシステムの数で割った値とする。つまり、制御装置2は、P
req(n)=(P
total−ΣP’
req)/(N−n+1)とし、ステップS24に進む。ここで、ΣP’
reqは、P’
req(1)からP’
req(n−1)までの和を表し、P’
req(n)は、n番目のサブシステムへの補正後の要求出力である。
【0062】
制御装置2は、ステップS24〜S27において、n番目のサブシステムにおける燃料タンクの残圧と、n+1番目からN番目のサブシステムにおける燃料タンクの残圧との関係に基づいて、補正後の要求出力P’
req(n)を決定する。
【0063】
制御装置2は、ステップS24において、n番目のサブシステムにおける燃料タンクの残圧P(n)から、n番目からN番目のサブシステムにおける燃料タンクの残圧の平均を引いて、圧力差ΔP(n)を求め、ステップS25に進む。
【0064】
制御装置2は、ステップS25において、圧力差ΔP(n)に基づいて補正率kを算出する。ここでは、k=k
0ΔP(n)とする。
【0065】
ここで、圧力差ΔP(n)を基準圧力下における燃料タンクの充填率に換算したものを充填率の差ΔSOC(n)とし、充填率の差ΔSOC(n)1%あたり補正率kが0.05以上0.30以下となるように補正割合k
0を定めてもよい。基準圧力は、例えば、標準状態における圧力である。
【0066】
制御装置2は、補正率kを算出した後、ステップS26に進む。制御装置2は、ステップS26において、n番目からN番目のサブシステムへの補正後の要求出力P’
req(n)〜P’
req(N)が、n番目からN番目のサブシステムの出力範囲を超えないように、補正率kの範囲を制限する。
【0067】
具体的には、n番目のサブシステムへの補正後の要求出力P’
req(n)が0以上P
max以下となり、P
total−ΣP’
reqが0以上(N―n)P
max以下となるように、補正率kの範囲を制限する。ここで、ΣP’
reqは、P’
req(1)からP’
req(n)までの和を表し、P
maxは、所定の最大出力である。
【0068】
これにより、補正率kは、k
0ΔP(n)、N−n、k
maxのうち最小のものとなる。ここで、k
maxは、n番目のサブシステムへの補正後の要求出力P’
req(n)が最大出力P
maxとなるkであり、k
max=P
max/P
req(n)−1である。
【0069】
また、補正率kの下限を、k
minとする。k
minは、P
total−ΣP’
req=(N―n)P
maxとなるkであり、k
min=(N−n){1−P
max/P
req(n)}である。ここで、ΣP’
reqは、P’
req(1)からP’
req(n)までの和を表す。
【0070】
補正率kがN−nのとき、後述のステップS27においてP’
req(n)=(N−n+1)P
req(n)となり、n+1番目のサブシステムについてのステップS23において、P
req(n+1)=0となり、ステップS27においてP’
req(n+1)=0となる。同様に、P’
req(n+2)〜P’
req(N)も0となる。
【0071】
このように補正率kの範囲を制限することにより、すべてのサブシステムに対する補正後の要求出力が0以上となり、最大出力P
max以下となる。
【0072】
制御装置2は、補正率kの範囲を制限した後、ステップS27に進む。制御装置2は、ステップS27において、要求出力の補正を行う。具体的には、n番目のサブシステムへの補正後の要求出力P’
req(n)を、補正前の要求出力P
req(n)に、圧力差ΔP(n)に応じた補正量kP
req(n)の分だけ足したものとする。つまり、制御装置2は、P’
req(n)を(1+k)P
req(n)とする。
【0073】
制御装置2は、要求出力の補正を行った後、ステップS14に進む。制御装置2は、ステップS14においてnに1を加算し、ステップS15に進む。制御装置2は、ステップS15においてn>Nであるか否かの判定を行い、n>Nであれば各サブシステムに対する要求出力の算出処理を終了し、n>NでなければステップS13に進む。制御装置2は、このように決定した要求出力に応じた信号をPCU17−1、17−2、・・・、17−Nに出力する。
【0074】
このように、本実施形態では、n番目のサブシステムへの補正前の要求出力P
req(n)に、圧力差ΔP(n)に応じた補正率分を加えたものを、n番目のサブシステムへの要求出力P’
req(n)としている。そのため、残圧が高いサブシステムの発電量が多くなり、燃料ガスを多く消費するので、残圧が低い他のサブシステムよりも残圧が早く低下する。これにより、複数のサブシステムの圧力差を小さくして、各サブシステムの残圧を均一化することができる。
【0075】
また、P’
req(1)〜P’
req(N)の和は目標値P
totalと等しい。これにより、本実施形態においても、上記の方法で残圧を調整すると同時に、燃料電池システム100全体での要求出力を目標値P
totalに達するものとし、燃料電池システム100全体での出力が不足することを抑制している。
【0076】
本実施形態においても、各サブシステムの燃料タンクの残圧に応じて各サブシステムへの要求出力を決定するため、簡単な構成で各サブシステムの燃料タンクの残圧を均一化することができる。また、燃料電池システムの製造コスト等の削減を図ることができる。
【0077】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0078】
例えば、上記第1実施形態では、各サブシステムが2つの燃料タンク12a、12bを備えているが、各サブシステムが1つ、または3つ以上の燃料タンクを備えていてもよい。
【0079】
また、上記第1実施形態では、PCU17が制御装置2からの信号に応じて燃料電池16の出力を制御しているが、制御装置2が要求出力に基づいて燃料供給弁15を操作し、燃料ガスの供給量を調整して、燃料電池16の出力を制御してもよい。この場合、制御装置2および燃料供給弁15が本発明の出力制御手段に相当する。
【0080】
また、上記第1、第2実施形態では、残圧の高いサブシステムから順に要求出力を算出しているが、結果的に残圧が高いサブシステムほど要求出力が大きくなれば、要求出力の算出方法はこれに限らない。例えば、残圧の低いサブシステムから順に処理してもよい。また、未処理のサブシステムの残圧の平均と、未処理の各サブシステムの残圧との差を求め、未処理のサブシステムのうち、求めた差の絶対値が最も大きいサブシステムを処理してもよい。この場合、上記第2実施形態と異なり、圧力差ΔP(n)が0未満になることがあるが、圧力差ΔP(n)が0未満のときには、補正量kP
req(n)も0未満となる。上記第2実施形態において、残圧の低いサブシステムから順に処理する場合、ステップS26において、補正率kを、k
0ΔP(n)、−1、k
minのうち最大のものとすればよい。ここで、k
minは、P
total−ΣP’
req=(N―n)P
maxとなるkであり、ΣP’
reqは、P’
req(1)からP’
req(n)までの和を表す。
【0081】
また、目標値P
total以外のものに基づいて補正することで各サブシステムの燃料タンクの残圧を均一化してもよい。例えば、燃料電池システム100に入力されたアクセル開度や、要求電流に基づいて補正を行ってもよい。
【0082】
また、サブシステムの許容範囲、つまり、サブシステムへの要求出力が所定の最大出力P
maxを超えない範囲において、燃料タンクの残圧がすべてのサブシステムにおける残圧の平均より高いサブシステムのみに電力を出力させるような補正率kを用いてもよい。
【0083】
また、補正率kは圧力差ΔP、ΔP(n)に対して非線形であってもよく、補正率kを圧力差ΔP、ΔP(n)に対するマップによって定めてもよい。例えば、補正率kを圧力差ΔP、ΔP(n)の範囲によってステップ状に定めてもよい。また、一定の範囲において補正率kの上限、下限を設けてもよい。
【0084】
また、圧力差ΔP、ΔP(n)以外の条件によって補正率kを動的に変化させてもよい。例えば、圧力差ΔP、ΔP(n)が一定のとき、目標値P
totalが大きいほど補正率kが大きくなるようにしてもよいし、目標値P
totalが小さいほど補正率kが大きくなるようにしてもよい。サブシステムの残圧の変動量は目標値P
totalが小さいほど小さいため、目標値P
totalが小さい運転が続くと補正に時間がかかる。一方、目標値P
totalが大きいと補正も早まるが、燃料電池は高出力で運転すると補機類の電力消費も大きくなるため、発電効率は低下する。そこで、低負荷運転が多い燃料電池システムでは目標値P
totalが小さいほどkが大きくなるような補正をすれば補正を早めることができる。また、低負荷から高負荷まで使用するような燃料電池システムでは、目標値P
totalが大きいほど補正率kが大きくなるようにすれば、補正を早めることができる。