特許第6405993号(P6405993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405993シムセット及びそれを備えるキャリパアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405993
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】シムセット及びそれを備えるキャリパアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/095 20060101AFI20181004BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   F16D65/095 K
   F16D65/092 D
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-260710(P2014-260710)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121715(P2016-121715A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】横山 智宏
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241951(JP,A)
【文献】 特開2006−046561(JP,A)
【文献】 特開2008−095832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材によりディスクロータに向けて押圧されるブレーキパッドに組み付けられるシムセットであって、
前記ブレーキパッドと前記押圧部材の間における前記ブレーキパッド側に配置される内シムと、
前記ブレーキパッドと前記押圧部材の間における前記押圧部材側に前記内シムに重なって配置される外シムと、
を備え、
前記ディスクロータの径方向をロータ径方向と称し、前記ディスクロータの周方向をロータ周方向と称し、前記ディスクロータの軸方向をロータ軸方向と称すると、
前記内シムは、内シム本体部と、前記内シム本体部に形成され前記ブレーキパッドに対して締め代を有して前記ブレーキパッドに嵌合する嵌合部と、前記内シム本体部の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた内シム側第一係合部と、前記内シム本体部の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた内シム側第二係合部と、を有し、
前記外シムは、外シム本体部と、前記外シム本体部の前記ブレーキパッドに対するロータ周方向の相対移動を所定量に規制する規制部と、前記外シム本体部の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた外シム側第一係合部と、前記外シム本体部の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた外シム側第二係合部と、を有し、
前記内シム側第一係合部と前記外シム側第一係合部、及び前記内シム側第二係合部と前記外シム側第二係合部は、前記内シム本体部と前記外シム本体部を重ねてロータ周方向に相対的にスライドさせることで、前記外シムが前記内シムに対してロータ周方向及びロータ径方向に所定量相対移動可能に、ロータ軸方向に係合するシムセット。
【請求項2】
前記内シムと前記外シムが少なくとも前記ロータ軸方向に係合した状態において、
前記外シム側第一係合部の一部は、前記内シム側第一係合部の前記ディスクロータ側に配置され、
前記外シム側第二係合部の一部は、前記内シム側第二係合部の前記ディスクロータ側に配置される請求項1に記載のシムセット。
【請求項3】
前記内シムと前記外シムが少なくとも前記ロータ軸方向に係合した状態において、
前記内シム側第一係合部は、前記内シム本体部からロータ軸方向の前記ブレーキパッド側に突出し、
前記外シム側第一係合部は、前記外シム本体部からロータ軸方向の前記ブレーキパッド側に突出し、前記内シム側第一係合部を覆う側で前記内シム側第一係合部に重なり、前記ブレーキパッドの裏板の前記ディスクロータ側の面に対向する位置まで延在する請求項1又は2に記載のシムセット。
【請求項4】
前記内シムと前記外シムが少なくとも前記ロータ軸方向に係合した状態において、
前記内シム側第二係合部は、前記内シム本体部からロータ径方向内側に突出し、
前記外シム側第二係合部は、前記外シム本体部からロータ軸方向の前記ブレーキパッド側に突出し、一部が前記内シム側第二係合部の前記ディスクロータ側に配置される請求項1〜3の何れか一項に記載のシムセット。
【請求項5】
一対の請求項1〜4の何れか一項に記載のシムセットと、
一対の前記ブレーキパッドと、
前記ディスクロータの外周部の一部分を跨ぐように配置されるキャリパと、
前記キャリパ内で前記ブレーキパッドをロータ軸方向に移動可能に支持する支持軸部と、
前記キャリパに組み付けられた前記押圧部材と、
を備え、
前記ブレーキパッドは、前記ディスクロータに対して摺接して摩擦力を発生させるための摩擦材と、前記摩擦材の裏面を支持する裏板と、を有し、
前記裏板のロータ径方向外側には第一溝部が形成され、前記裏板のロータ径方向内側には第二溝部が形成され、
前記支持軸部は、前記キャリパに設けられ前記第一溝部に係合する外周支持軸、及び前記キャリパに設けられ前記第二溝部に係合する内周支持軸で構成され、
前記押圧部材と前記外シムの間の摩擦係数が前記外シムと前記内シムの間の摩擦係数より大きくなるように設定され、
前記シムセットは、前記ブレーキパッドに組み付けられ、
前記ブレーキパッドは、前記内周支持軸の軸心回りに所定量回転可能に、前記支持軸部に組み付けられるキャリパアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シムセット及びそれを備えるキャリパアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
シムセットは、内シムと外シムで構成され、ディスクブレーキ装置におけるブレーキパッドとピストンの間に配置される部材である。内シムと外シムは、キャリパアセンブリ内において、ブレーキパッドの裏板への面圧を均一化し、ブレーキパッドの振動を吸収してブレーキ鳴きを抑制する役割を担っている。内シム及び外シムを備えるキャリパアセンブリの一例は、例えば特開2011−241951号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−241951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内シムと外シムは、キャリパアセンブリを組み立てる工程において、重ね合わせた状態でブレーキパッドに組み付けられる。ここで、作業者は、内シムと外シムが分離して脱落しないように注意して作業をしなければならない。また、一方で内シムと外シムを完全に嵌合させる構成であると、シムセットの役割を十分に果たすことができないおそれがある。本発明者は、内シムと外シムの構成には組立工程の観点において改良の余地があることを新たに発見した。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、内シムと外シムの役割を損なうことなく、作業時における内シムと外シムの脱落を抑制することができるシムセット及びキャリパアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシムセットは、押圧部材によりディスクロータに向けて押圧されるブレーキパッドに組み付けられるシムセットであって、前記ブレーキパッドと前記押圧部材の間における前記ブレーキパッド側に配置される内シムと、前記ブレーキパッドと前記押圧部材の間における前記押圧部材側に前記内シムに重なって配置される外シムと、を備え、前記ディスクロータの径方向をロータ径方向と称し、前記ディスクロータの周方向をロータ周方向と称し、前記ディスクロータの軸方向をロータ軸方向と称すると、前記内シムは、内シム本体部と、前記内シム本体部に形成され前記ブレーキパッドに対して締め代を有して前記ブレーキパッドに嵌合する嵌合部と、前記内シム本体部の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた内シム側第一係合部と、前記内シム本体部の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた内シム側第二係合部と、を有し、前記外シムは、外シム本体部と、前記外シム本体部の前記ブレーキパッドに対するロータ周方向の相対移動を所定量に規制する規制部と、前記外シム本体部の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた外シム側第一係合部と、前記外シム本体部の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた外シム側第二係合部と、を有し、前記内シム側第一係合部と前記外シム側第一係合部、及び前記内シム側第二係合部と前記外シム側第二係合部は、前記内シム本体部と前記外シム本体部を重ねてロータ周方向に相対的にスライドさせることで、前記外シムが前記内シムに対してロータ周方向及びロータ径方向に所定量相対移動可能に、ロータ軸方向に係合する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内シムと外シムとをロータ周方向に相対移動(スライド)させることにより、内シム側第一係合部と外シム側第一係合部がロータ軸方向に係合し、内シム側第二係合部と外シム側第二係合部もロータ軸方向に係合する。ロータ軸方向とは、重なり合う内シム本体部と外シム本体部の両面に垂直な方向である。これにより、組み合わせた後には、内シムと外シムがロータ軸方向に分解されることなく、作業中における内シム又は外シムの脱落は抑制される。また、シムセットとして組み合わされた状態で、外シムは、内シムに対してロータ径方向及びロータ周方向に所定用相対移動可能に形成されている。これにより、内シムと外シムの役割は十分に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のディスクブレーキ装置の構成を示す断面図である。
図2】本実施形態のシリンダ及びピストンの構成を示す断面図である。
図3】本実施形態のキャリパアセンブリの開口部側の構成を示す平面図である。
図4】本実施形態のブレーキパッドセットの構成を示す正面図である。
図5】本実施形態のブレーキパッドセットの構成を示す斜視図である。
図6図5のX1部分を拡大した部分拡大図である。
図7図5のX1部分を図6とは別の角度から見た部分拡大図である。
図8】本実施形態のブレーキパッドセットの構成を示す平面図である。
図9】本実施形態のブレーキパッドセットの構成を示す底面図である。
図10図10のX2部分を拡大した部分拡大図である。
図11図10のX3部分を拡大した部分拡大図である。
図12】本実施形態のブレーキパッドセットの構成を示す右側面図である。
図13】本実施形態の内シムの構成を示す正面図である。
図14】本実施形態の内シムの構成を示す平面図である。
図15】本実施形態の内シムの構成を示す底面図である。
図16】本実施形態の内シムの構成を示す右側面図である。
図17】本実施形態の外シムの構成を示す正面図である。
図18】本実施形態の外シムの構成を示す平面図である。
図19】本実施形態の外シムの構成を示す底面図である。
図20】本実施形態の外シムの構成を示す右側面図である。
図21】本実施形態のシムセットの構成を示す正面図である。
図22】本実施形態のシムセットの構成を示す平面図である。
図23】本実施形態のシムセットの構成を示す底面図である。
図24】本実施形態のシムセットの構成を示す斜視図である。
図25】本実施形態のシムセットの一部を拡大した部分拡大図である。
図26】本実施形態の検査について説明するための説明図である。
図27】本実施形態のシムセットの変形態様を示す説明図である。
図28】本実施形態のシムセットの変形態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図1図28を参照して、車両用のピストン対向型のディスクブレーキ装置を例に説明する。図1に示すように、ディスクブレーキ装置Aは、ディスクロータ1と、キャリパアセンブリ2と、を備えている。ディスクロータ1は、図示しない車軸ハブに組み付けられて車輪と一体的に回転する円盤部材である。なお、説明において、ディスクロータ1の径方向を「ロータ径方向」と称し、ディスクロータ1の周方向を「ロータ周方向」と称し、ディスクロータ1の軸方向を「ロータ軸方向」と称する。また、「ロータ軸方向のピストン3側」の「ピストン3」は、一方側の部位(ブレーキパッドセット等)の説明における一方側のピストン3を意味する。また、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。図1は、キャリパアセンブリ2をロータ軸方向及びロータ径方向に広がる平面で切断した断面図であり、シリンダ211、221、ピストン3、及びブリッジ231が省略された説明図である。
【0010】
(キャリパアセンブリ)
キャリパアセンブリ2は、ディスクロータ1の回転に対して制動力を発生させる装置である。図1図3に示すように、キャリパアセンブリ2は、キャリパ20と、6つのピストン(「押圧部材」に相当する)3と、一対のブレーキパッド4と、一対の内シム5と、一対の外シム6と、を備えている。
【0011】
キャリパ20は、主に車両の支持体(図示せず)に固定されるハウジング部分である。キャリパ20は、インナーハウジング部21と、アウターハウジング部22と、連結部23と、支持軸部24と、を備えている。まず、支持軸部24は、キャリパ20内でブレーキパッド4をロータ軸方向に移動可能に支持する部材である。詳細は後述するが、支持軸部24は、外周支持軸241と、内周支持軸242、243で構成されている。
【0012】
インナーハウジング部21とアウターハウジング部22は、ディスクロータ1を跨ぐように対向配置されている。インナーハウジング部21は、ディスクロータ1のロータ軸方向内側に配置されている。インナーハウジング部21には、図2及び図4に示すように、3つのピストン3に対応して3つのシリンダ211が形成されている。シリンダ211は、インナーハウジング部21のロータ周方向一端側、ロータ周方向中央部、及びロータ周方向他端側のそれぞれに設けられている。シリンダ211は、ブレーキパッド4のロータ周方向中央位置でロータ径方向に延びる仮想線Zに対して線対称になるように配置されている。また、インナーハウジング部21のロータ径方向外側部位には、外周支持軸241の一端を支持する支持部212が形成されている。インナーハウジング部21のロータ径方向内側部位には、内周支持軸242の一端を支持する支持部213が形成されている。
【0013】
アウターハウジング部22は、ディスクロータ1のロータ軸方向外側に配置されている。アウターハウジング部22には、3つのピストン3に対応して3つのシリンダ221が形成されている。シリンダ221は、シリンダ211同様、アウターハウジング部22のロータ周方向一端側、ロータ周方向中央部、及びロータ周方向他端側のそれぞれに設けられている。シリンダ221は、シリンダ211に対向するように形成されている。また、アウターハウジング部22のロータ径方向外側部位には、外周支持軸241の他端を支持する支持部222が形成されている。アウターハウジング部22のロータ径方向内側部位には、内周支持軸243の一端を支持する支持部223が形成されている。連結部23は、インナーハウジング部21とアウターハウジング部22を連結する部位である。連結部23は、複数のブリッジ231で構成されている。複数のブリッジ231は、キャリパアセンブリ2の内部を露出させる開口部23aを形成している。
【0014】
外周支持軸241は、一端がインナーハウジング部21の支持部212に支持され、他端がアウターハウジング部22の支持部222に支持された円柱状部材である。外周支持軸241は、軸方向がロータ軸方向と平行になるように、キャリパ20のロータ径方向外側部位に配置されている。外周支持軸241は、インナーハウジング部21とアウターハウジング部22に一体的に設けられている。
【0015】
内周支持軸242は、一端がインナーハウジング部21の支持部213に支持された円柱状部材である。内周支持軸242は、軸方向がロータ軸方向と平行になるように、キャリパ20のロータ径方向内側部位に配置されている。内周支持軸242は、インナーハウジング部21に一体的に設けられている。内周支持軸243は、一端がアウターハウジング部22の支持部223に支持された円柱状部材である。内周支持軸243は、軸方向がロータ軸方向と平行になるように、キャリパ20のロータ径方向内側部位に配置されている。内周支持軸243は、アウターハウジング部22に一体的に設けられている。支持軸部24は、支持部212、222、213、223にねじ止めされても良い。
【0016】
ピストン3は、ブレーキパッド4をディスクロータ1に向けて押圧するための部材である。ピストン3は、図2に示すように、ブレーキパッド4側が開口し、シリンダ211、221の底面側に底面を有する有底筒状部材である。キャリパ20内には、6つのピストン3が配置されている。図4に示すように、インナーハウジング部21側の3つのピストン3は、対応するシリンダ211に配置されている。アウターハウジング部22側の3つのピストン3は、対応するシリンダ221に配置されている。ピストン3は、シリンダ211、221に液密的に且つロータ軸方向に摺動可能に組み付けられている。ピストン3とシリンダ211、221の間には油室3aが形成されている。ピストン3は、制動時、油室3aに供給される作動液によってロータ軸方向に前進し、一対のブレーキパッド4をディスクロータ1に向けて押圧する。なお、各油室3aは、図示しない油路により連通している。また、油室3aへの作動液の供給は、例えばマスタシリンダやアクチュエータ等により行われる。
【0017】
(ブレーキパッド)
一対のブレーキパッド4は、キャリパ20に組み込まれている。一対のブレーキパッド4は、インナーハウジング部21側に配置されたブレーキパッド4と、アウターハウジング部22側に配置されたブレーキパッド4で構成されている。インナーハウジング部21に配置されるブレーキパッド4と、アウターハウジング部22に配置されるブレーキパッド4は、同様の構成であり、一方のブレーキパッド4について主に図4図12を参照して説明する。
【0018】
図4及び図5に示すように、ブレーキパッド4は、ディスクロータ1に対して摺接して摩擦力を発生させるための摩擦材41と、摩擦材41の裏面を支持する裏板42と、を備えている。本実施形態の摩擦材41は、全体として長手方向がロータ周方向なるように形成されている。摩擦材41は、市場においてライニングと呼ばれる場合もある。
【0019】
裏板42は、裏板本体部420と、第一溝部421と、第二溝部422と、突起部423と、を備えている。裏板本体部420は、ディスクロータ1側の第一面420aに摩擦材41が固定され、ピストン3側の第二面420bに内シム5が配置されている板状部材である。裏板本体部420のロータ周方向一方側は、板バネ(図示せず)によりロータ径方向内側に向けて付勢されている。
【0020】
第一溝部421は、裏板42のロータ径方向外側に形成されている。具体的に、第一溝部421は、裏板本体部420のロータ軸方向外側部位におけるロータ周方向中央部分に形成されている。第一溝部421は、外周支持軸241と係合可能に、ロータ径方向内側に凹んだ凹形状(例えばV字状又はU字状)に形成されている。換言すると、第一溝部421は、裏板本体部420からロータ径方向外側に凹形状に突出した部位である。第一溝部421は、ブレーキパッド4が内周支持軸242、243の軸心回りに所定量回転可能となるように、外周支持軸241のロータ周方向の少なくとも一方側に対して離間して配置されている。
【0021】
第二溝部422は、裏板42のロータ径方向内側に形成されている。具体的に、第二溝部422は、裏板本体部420のロータ軸方向内側部位におけるロータ周方向中央部分に形成されている。第二溝部422は、内周支持軸242、243と係合可能に、ロータ径方向外側に凹んだ凹形状(例えばV字状又はU字状)に形成されている。第二溝部422は、内周支持軸242、243に対して摺動可能に配置されている。本実施形態のブレーキパッド4は、内周支持軸242、243の軸心回りに所定量(微量)回転可能に、支持軸部24に組み付けられる。
【0022】
突起部423は、裏板42の内シム5側の面、すなわち裏板本体部420の第二面420bに形成されている。突起部423は、根本を除く先端側部位4aがピストン3の開口3b内に配置されるように、ピストン3の開口3bに対応する位置に形成されている。本実施形態の突起部423は、第一突起423aと、第二突起423bと、を備えている。
【0023】
第一突起423aは、ロータ周方向一端側のピストン3に対応する部位であって、第二面420bのロータ周方向一端側の部位に形成されている。第一突起423aは、第二面420bから円柱状に突起している。第一突起423aの先端側部位4aは、ピストン3の開口3b内に配置される。第二突起423bは、ロータ周方向他端側のピストン3に対応する部位であって、第二面420bのロータ周方向他端側の部位に形成されている。第二突起423bは、第二面420bから円柱状に突起している。第二突起423bの先端側部位4aは、ピストン3の開口3b内に配置される。第一突起423a及び第二突起423bは、裏板42のロータ周方向中央位置でロータ径方向に延びる仮想線Zに対して線対称になるように配置されている。ブレーキパッド4、内シム5、及び外シム6は、ブレーキパッドセットを構成する。
【0024】
(シムセット)
一対の内シム5は、インナーハウジング部21側に配置される内シム5と、アウターハウジング部22側に配置される内シム5で構成されている。両側の内シム5は、互いに同様の構成であるため、一方の構成を説明する。ブレーキパッド4とピストン3の間には、内シム5と、外シム6が配置されている。内シム5は、ブレーキパッド4とピストン3の間におけるブレーキパッド4側に配置されている。内シム5は、ステンレス材(SUS材)で形成されており、一方の面である第一面5a全面にゴム材(耐熱ゴム)によるゴム層が形成されている。つまり、内シム5の第一面5aはゴム材で形成され、内シム5の他方の面(第二面)5bはステンレス材で形成されている。素材の色から、第一面5aは黒系色となり、第二面5bは白系色となっている。
【0025】
具体的に、内シム5は、図13図16に示すように、内シム本体部51と、嵌合部52と、内シム側第一係合部53と、内シム側第二係合部54と、を備えている。内シム本体部51は、長手方向がロータ周方向となる平板状部材である。内シム本体部51は、第一面5aがブレーキパッド4側となり、第二面5bが外シム6側となるように、ブレーキパッド4と外シム6の間に配置されている。内シム本体部51には、第一突起423a及び第二突起423bに対応する位置に内シム貫通孔511、512が形成されている。本実施形態では、内シム貫通孔511、512は、内シム5のロータ周方向中央位置でロータ径方向に延びる仮想線Zに対して線対称な位置に形成されている。内シム貫通孔511には第一突起423aが挿通され、内シム貫通孔512には第二突起423bが挿通されている。
【0026】
嵌合部52は、内シム本体部51の外縁部のうち、ロータ径方向外側とロータ径方向内側にそれぞれ2か所(合計4か所)設けられた爪状部位である。嵌合部52は、ブレーキパッド4の裏板42に対して締め代を有するように、内シム本体部51からブレーキパッド4側に突出している。組み付け前において、嵌合部52の突出した先端部同士の離間距離は、対応する裏板42の長さよりも締め代分小さくなっている。本実施形態では、4つの嵌合部52のうち、ロータ径方向内側の2つの嵌合部52が、組み付け時に弾性変形するようにロータ径方向外側に湾曲されている。つまり、組み付け状態において、ロータ径方向内側の嵌合部52が、裏板42をロータ径方向外側に押圧している。
【0027】
ロータ径方向外側の2つの嵌合部52は、裏板本体部420のうちロータ径方向に段差が形成された段差部420zの隣の部位に当接している。嵌合部52が裏板42に嵌合し、内シム本体部51が裏板42に組み付けられる。このように、内シム5は、嵌合部52により、ブレーキパッド4に対して少なくともロータ径方向及びロータ周方向に相対移動できないように組み付けられている。
【0028】
内シム側第一係合部53は、内シム本体部51の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた爪状部位である。内シム側第一係合部53は、内シム本体部51のロータ周方向一方側とロータ周方向他方側に1か所ずつ(合計2か所)形成されている。内シム側第一係合部53は、矩形状に形成されている。内シム側第一係合部53は、内シム本体部51からロータ軸方向のブレーキパッド4(ディスクロータ1)側に向けて突出している。
【0029】
本実施形態では、内シム側第一係合部53は、内シム5の一部をロータ軸方向のブレーキパッド4側に屈曲させて形成されている。つまり、内シム側第一係合部53は、ステンレス材で形成された第二面5bがロータ径方向外側に露出するように、裏板42上に配置されている。内シム側第一係合部53は、裏板本体部420のロータ径方向外側の面である第三面420cに当接し、第三面420cの一部を覆うように配置されている。内シム側第一係合部53のロータ軸方向の幅は、第三面420cのロータ軸方向の幅以下に設定されている。つまり、内シム5が裏板42に嵌合している状態で、内シム側第一係合部53は、裏板42の第一面420aから突出していない。内シム側第一係合部53は、裏板42に対してロータ軸方向に係合している。内シム側第一係合部53は、「第一突出部」にも相当する。
【0030】
内シム側第二係合部54は、内シム本体部51の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた爪状部位である。内シム側第二係合部54は、内シム本体部51のロータ周方向一方側とロータ周方向他方側に1か所ずつ(合計2か所)形成されている。内シム側第二係合部54は、矩形状に形成されている。内シム側第二係合部54は、内シム本体部51からロータ径方向内側に向けて突出している。
【0031】
一対の外シム6は、インナーハウジング部21側に配置される外シム6と、アウターハウジング部22側に配置される外シム6で構成されている。両側の外シム6は、互いに同様の構成であるため、一方の構成を説明する。外シム6は、ブレーキパッド4とピストン3の間におけるピストン3側に配置されている。つまり、外シム6は、ピストン3と内シム5の間に配置されている。外シム6は、内シム5同様、ステンレス材(SUS材)で形成されており、一方の面である第二面6b全面にゴム材によるゴム層が形成されている。つまり、外シム6の他方の面(第一面)6aはステンレス材で形成され、外シム6の第二面6bはゴム材で形成されている。素材の色から、第一面6aは白系色となり、第二面6bは黒系色となっている。
【0032】
具体的に、外シム6は、図17図20に示すように、外シム本体部61と、第一規制部(「規制部」に相当する)62と、第二規制部(「規制部」に相当する)63と、第三規制部64と、外シム側第一係合部65と、外シム側第二係合部66と、を備えている。外シム本体部61は、内シム本体部51とほぼ同様の形状であって、長手方向がロータ周方向となる平板状部材である。外シム本体部61は、第一面6aが内シム5側となり、第二面6bがピストン3側となるように、内シム5とピストン3の間に配置されている。外シム本体部61には、第一突起423a及び第二突起423bに対応する位置に外シム貫通孔611、612が形成されている。本実施形態では、外シム貫通孔611、612は、外シム6のロータ周方向中央位置でロータ径方向に延びる仮想線Zに対して線対称な位置に形成されている。外シム貫通孔611には第一突起423aが挿通され、外シム貫通孔612には第二突起423bが挿通されている。外シム貫通孔611、612の径は、内シム貫通孔511、512の径よりも大きい。
【0033】
また、外シム本体部61のロータ径方向内側の部位のうち、嵌合部52に対応する位置(2か所)には、切欠き613が形成されている。これによれば、嵌合部52の押圧により内シム5の嵌合部52周辺部位が浮き上がった場合でも、切欠き613により内シム5と外シム6が干渉することが抑制される。つまり、切欠き613を設けることにより、嵌合部52周辺部位の浮きが発生しても、外シム6の内シム5に対する相対移動の阻害は抑制される。切欠き613は、嵌合部52周辺部位が浮き上がった場合でも、外シム6が内シム5に対して所定量相対移動できる範囲に形成されている。
【0034】
第一規制部62は、外シム本体部61の外縁部のうちロータ周方向の一方側に設けられている。第一規制部62は、矩形状の爪状部位であって、外シム本体部61からロータ軸方向のブレーキパッド4側に突出している。第一規制部62は、裏板本体部420のロータ周方向の一方側の面(第四面)420dから離間して、第四面420dの一部を覆うように配置されている。
【0035】
第二規制部63は、外シム本体部61の外縁部のうちロータ周方向の他方側に設けられている。第二規制部63は、第一規制部62同様の矩形状の爪状部位であって、外シム本体部61からロータ軸方向のブレーキパッド4側に突出している。第二規制部63は、裏板本体部420のロータ周方向の他方側の面(第五面)420eから離間して、第五面420eの一部を覆うように配置されている。第一規制部62と第二規制部63は、外シム6がブレーキパッド4に組み付けられた状態で、外シム本体部61のブレーキパッド4に対するロータ周方向の相対移動を所定量に規制している。換言すると、第一規制部62と第二規制部63により、外シム6のロータ周方向の可動範囲が所定範囲に規制されている。なお、裏板本体部420のロータ径方向内側の面は、第六面420fである。
【0036】
第三規制部64は、外シム本体部61の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられている。第三規制部64は、外シム本体部61のうち第一溝部421の両サイドに対応する位置(2か所)に設けられている。第三規制部64は、矩形状の爪状部位であり、外シム本体部61からロータ軸方向のブレーキパッド4側に突出している。第三規制部64は、外シム6がブレーキパッド4に組み付けられた状態で、外シム6の自重により裏板本体部420の第三面420cに当接する。第三規制部64は、ブレーキパッド4に対して少なくともロータ径方向に係合している。本実施形態では、2つの第三規制部64は、正面から見てハの字状に傾斜しており、第一溝部421の両サイドもハの字状に傾斜している。
【0037】
外シム側第一係合部65は、外シム本体部61の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた爪状部位である。外シム側第一係合部65は、外シム本体部61のロータ周方向一方側とロータ周方向他方側に1か所ずつ(合計2か所)形成されている。外シム側第一係合部65は、外シム本体部61からロータ軸方向のブレーキパッド4側に向けて突出している。外シム側第一係合部65は、内シム側第一係合部53に対応する位置に形成され、内シム側第一係合部53上に配置されている。換言すると、外シム側第一係合部65は、内シム側第一係合部53を覆う側で内シム側第一係合部53に重なっている。
【0038】
外シム側第一係合部65は、図20に示すように、裏板42の第一面420aに対向する位置まで延在している。つまり、外シム側第一係合部65は、裏板42を巻き込むように、外シム6が裏板42に対してロータ軸方向に係合するように形成されている。換言すると、外シム側第一係合部65の一部は、内シム側第一係合部53のディスクロータ1側に配置されている。また、外シム側第一係合部65は、内シム側第一係合部53の一部を覆うように形成されている。具体的に、外シム側第一係合部65は、外シム本体部61からロータ軸方向に突出する第一部位651と、第一部位651の先端からロータ径方向内側に突出する第二部位652と、で構成されている。第一部位651は、内シム側第一係合部53のロータ径方向外側に配置されている。
【0039】
第一部位651の先端部分(ロータ軸方向のブレーキパッド4側の部位)には、切欠き651aが形成されている。本実施形態の第一部位651は、先端部分のロータ周方向一方側に設けられた切欠き651aにより、L字状に形成されている。つまり、第一部位651の根元部分(ロータ軸方向のピストン3側)におけるロータ周方向の幅は、先端部分のロータ周方向の幅よりも大きくなっている。第二部位652は、裏板42の第一面420aに対向配置されている。
【0040】
ここで、第一部位651の根元部分におけるロータ周方向の幅は、内シム側第一係合部53のロータ周方向の幅とほぼ同じである。したがって、外シム側第一係合部65と内シム側第一係合部53がロータ周方向にずれることなく重なっている場合、切欠き651aにより内シム側第一係合部53の一部がロータ径方向外側に露出する。外シム側第一係合部65は外シム6の一部を屈曲させて形成されており、第一部位651のロータ径方向外側はゴム材で形成された第二面6bである。つまり、外シム6が内シム5に組み付けられた状態において、作業者がロータ径方向外側から外シム6と内シム5を見た場合、黒系色の外シム側第一係合部65と切欠き651aにより露出した白系色の内シム側第一係合部53が見えることとなる。内シム側第一係合部53のロータ径方向外側の面(第二面5b)は、第一検査面53bを構成する。外シム側第一係合部65の第一部位651のロータ径方向外側の面(第二面6b)は、第二検査面65bを構成する。第一検査面53bの色は、第二検査面65bの色とは異なる。外シム側第一係合部53は、「第二突出部」にも相当する。
【0041】
外シム側第二係合部66は、外シム本体部61の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた爪状部材である。外シム側第二係合部66は、外シム本体部61のロータ周方向一方側とロータ周方向他方側に1か所ずつ(合計2か所)形成されている。外シム側第二係合部66は、外シム本体部61からロータ軸方向のブレーキパッド4側に向けて突出している。外シム側第二係合部66は、内シム側第二係合部54に対応する位置に形成されている。外シム側第二係合部66の一部は、内シム側第二係合部54のディスクロータ1側に配置されている。
【0042】
具体的に、外シム側第二係合部66は、ロータ径方向内側に突出する第一部位661と、第一部位661の先端部分からロータ軸方向のブレーキパッド4側に突出する第二部位662と、第二部位662の先端部分(又はロータ周方向一端部)からロータ周方向一方側に突出する第三部位663と、で構成されている。第一部位661、第二部位662、及び第三部位663は、それぞれ矩形状に形成されている。第二部位662は、内シム側第二係合部54から離間し、内シム側第二係合部54よりもロータ軸方向のブレーキパッド4側まで延在している。第三部位663は、一部が内シム側第二係合部54のディスクロータ1側に配置されるように形成されている。つまり、第三部位663の一部は、ロータ軸方向において、内シム側第二係合部54に重なっている。
【0043】
ここで、図21図26を参照してシムセット(内シム5及び外シム6)についてさらに説明する。内シム側第一係合部53と外シム側第一係合部65、及び内シム側第二係合部54と外シム側第二係合部66は、互いにロータ周方向にずれた状態で内シム本体部51と外シム本体部61を重ね、ロータ周方向に相対的にスライドさせることで、ロータ軸方向に係合する。図21には、外シム6をスライドさせる場合のスライド方向が示されている。当該係合状態において、外シム6は、内シム5に対してロータ周方向及びロータ径方向に所定量相対移動可能になっている。すなわち、外シム6は、内シム5に対して所定量相対回転可能に、ロータ軸方向に係合している。第一係合部53、65同士及び第二係合部54、66同士を、ロータ周方向にスライドさせてロータ軸方向に係合させることでシムセットが形成される。シムセットは、内シム5と外シム6で構成される。
【0044】
内シム5と外シム6は、第二面5bと第一面6aが対向するように配置されている。ブレーキ作動時(ピストン3駆動時)の内シム5と外シム6の間の摩擦係数は、ステンレス材同士が当接するため、比較的小さい。一方、ブレーキ作動時の内シム5と裏板42の間の摩擦係数は、内シム5のゴム材で形成された第一面5aが裏板42に当接するため、上記内シム5と外シム6の間の摩擦係数よりも大きい。また同様に、ブレーキ作動時の外シム6とピストン3の間の摩擦係数も、外シム6のゴム材で形成された第二面6bがピストン3と当接するため、上記内シム5と外シム6の間の摩擦係数よりも大きい。なお、本実施形態の内シム5と裏板42の間には、グリスが挿入されている。
【0045】
このように、内シム5は、裏板42に対して、ロータ径方向及びロータ周方向に一体的に移動可能に組み付けられている。また、外シム6は、裏板42に対して、ロータ径方向及びロータ周方向に所定量相対移動可能に、ロータ軸方向に若干の相対移動可能に、且つ内周支持軸242、243の軸心回りに所定量回転可能に、組み付けられている。
【0046】
(ブレーキ作動時の動作)
ここで、本実施形態のディスクブレーキ装置におけるブレーキ制動時(制動時)の動作について説明する。ブレーキペダル(図示せず)の踏み込みに伴って各油室3aに作動液が供給されると、当該液圧によって各ピストン3がディスクロータ1に向けて駆動し、両方のブレーキパッド4がディスクロータ1に向けて押圧される。これにより、摩擦材41がディスクロータ1に摺動可能に圧接して、ディスクロータ1が制動される。ブレーキペダルの踏み込みが解除されると、各油室3aから作動液が排出され、ディスクロータ1の制動が解除される。
【0047】
このブレーキ作動時において、ブレーキパッド4は、内周支持軸242、243の軸心回りに回転し、第一溝部421のロータ周方向一方側の内周面(トルク受け面)が外周支持軸241に当接した状態となる。制動時のトルクは、第一溝部421と外周支持軸241の係合部分と、第二溝部422と内周支持軸242、243との係合部分で受けることとなる。これにより、制動時のトルクを不安定な平面で受ける構成に比べて、ブレーキパッド4の挙動が安定する。このため、制動時の不安定な挙動に伴うブレーキ鳴きの発生が抑制される。
【0048】
また、本実施形態では、外シム6が、ブレーキパッド4に対して、内周支持軸242、243の軸心回りに所定量回転可能に組み付けられている。このため、制動時にブレーキパッド4が内周支持軸242、243の軸心回りに回転(傾動)する際、当該ブレーキパッド4の傾動が外シム6によって阻害されることが抑制される。つまり、制動の初期段階において、ブレーキパッド4を素早く傾動させ、トルク受けが可能な状態に素早く移行することができる。内シム5と外シム6の間の相対移動によるブレーキ鳴き抑制機能が有効に発揮される。また、内シム5と外シム6とによるダンピング効果も発揮される。
【0049】
(シムセットの作用効果)
本実施形態では、上述のとおり、内シム5と外シム6によりシムセットが構成されている。シムセットは、内シム5と外シム6を組み合せる(重ねる)ことで形成される。本実施形態のシムセットの組み合わせ手順を説明する。まず、作業者は、内シム本体部51と外シム本体部61を、第一係合部53、65同士及び第二係合部54、66同士の位置をロータ周方向にずらして、重ね合わせる。そして、作業者は、外シム側第一係合部65が内シム側第一係合部53と重なるように、且つ、外シム側第二係合部66の第三部位663が内シム側第二係合部54の第一面5a側に配置されるように、内シム5と外シム6の少なくとも一方をロータ周方向にスライドさせる。こうして組み合わされたシムセットは、内シム側第一係合部53と外シム側第一係合部65、及び内シム側第二係合部54と外シム側第二係合部66が、第一面5a、6a及び第二面5b、6bに垂直な方向(ロータ軸方向)に係合し、作業時に外シム6が内シム5から脱落すること及び内シム5が外シム6から脱落することが抑制される。
【0050】
このシムセットの組み合わせ工程は、キャリパアセンブリ2の組み付け工程における1つの工程であり、工程内においてシムセットが1つのサブアセンブリ(ユニット)化される。シムセットは、後の工程でブレーキパッド4に組み付けられる。本実施形態によれば、内シム5と外シム6が内シム本体部51及び外シム本体部61に垂直な方向(ロータ軸方向)に係合しているため、サブアセンブリとして機能し作業中に一方のシムが脱落しにくいシムセットを実現することができる。これにより、作業者の組み付け作業性は向上する。
【0051】
また、シム同士が互いに係合したシムセットの状態で、内シム5と外シム6は、ロータ周方向及びロータ径方向に所定量相対移動可能となっている。これにより、外シム6が内シム5(ブレーキパッド4)に対して回転挙動可能となるため、本実施形態のシムセットは、ブレーキパッド4が支持軸部24に組み付けられるディスクブレーキ装置に適用されることで、上記効果(素早くトルク受け状態を形成できる等)が発揮され、特に有効である。
【0052】
また、本実施形態では、シムセットのロータ軸方向への係合構造として、外シム側第一係合部65の一部が内シム側第一係合部53のディスクロータ1側に配置され、外シム側第二係合部66の一部が内シム側第二係合部54のディスクロータ1側に配置されるように構成されている。これにより、シムセットの構造の複雑化が抑制され、シムセットの製造が容易となる。
【0053】
また、キャリパアセンブリ2が作業机等に置かれる場合、通常、ロータ径方向外側が上方となるように置かれる。ここで、本実施形態のシムセットでは、内シム5及び裏板42を巻き込むように形成された巻き込み型の外シム側第一係合部65が、ロータ径方向外側に形成されている。これにより、上記載置状態において、外シム側第一係合部65に外シム6の自重が加わった場合でも、巻き込み型の外シム側第一係合部65により安定した係合状態を保つことが可能となる。また、後述するシムセットの欠品検査においても、ロータ径方向外側(すなわち開口部23a側)において、検査面の面積確保の観点から本構成が有利となる。
【0054】
また、キャリパアセンブリ2をロータ軸方向の車外側から見た場合、キャリパアセンブリ2のロータ径方向内側からブレーキパッド4が見えてしまうと意匠としては好ましくない。ここで、本実施形態のシムセットのロータ径方向内側では、上記のような巻き込み型でなく、裏板42の第一面420a側にまで外シム6が巻き込まないスライド型の外シム側第二係合部66が、ロータ径方向内側に形成されている。これにより、摩擦材41が裏板42のロータ径方向内側端部にまで配置されている場合でも、裏板42に巻き込みをひっかけるための領域を設ける必要がなく、裏板42の大型化・重量化を抑制し、且つ意匠の阻害を抑制することができる。
【0055】
(キャリパアセンブリの検査)
ここで、完成したキャリパアセンブリ2のシムセットを検査する工程について説明する。作業者又はセンサは、図3に示すように、開口部23aを介して、キャリパアセンブリ2の内部を目視又は検知することができる。特に本実施形態では、開口部23aを介して、キャリパアセンブリ2の内部に配置されたシムセットの組み付けについて検査することができる。具体的に、シムセットが内シム5と外シム6で構成されている場合(すなわち正常な場合)、開口部23aに対応する位置に配置された内シム側第一係合部53の一部と外シム側第一係合部65を視認又は検知することができる。
【0056】
本実施形態の構成は、ロータ軸方向に係合したシムセットの状態で、内シム側第一係合部53と外シム側第一係合部65は重なっており、外シム側第一係合部65の切欠き651a及び/又は一端側(切欠き651aの反対側)から内シム側第一係合部53の一部が露出する構成となっている。つまり、正常な場合、開口部23aから、黒系色である外シム側第一係合部65の第二面6b(第二検査面65b)が露出するとともに、白系色である内シム側第一係合部53の第二面5b(第一検査面53b)が露出していることとなる。一方、内シム5又は外シム6が欠品している場合、開口部23aからは、黒系色か白系色の何れか一方しか露出しないこととなる。
【0057】
この構成によれば、イメージセンサやカメラ等の色彩及び/又は明暗を識別可能な識別手段(図示せず)を用いて、キャリパアセンブリ2のロータ径方向外側から、開口部23a内の第一検査面53b及び第二検査面65bに対応する所定範囲をセンシングすることができる。これによれば、例えば所定範囲の色の割合に基づいて、シムセットに欠品があるか否かを検知することができる。検査工程では、例えば、カメラ又はイメージセンサの下方に開口部23aを上方にしたキャリパアセンブリ2がライン等で運ばれる構成にすることもできる。カメラ又はイメージセンサは、設定された所定範囲を検出(撮像)することで、色の違いを認識することができ、認識した色に基づいて正常か欠品有りかを判別することができる。当該判別は、カメラ又はイメージセンサだけに限らず、それらに接続されたコンピュータにより為されても良い。また、判別については、所定範囲内における色や明暗に基づいて、行うことができる。シムセットの欠品の有無は、例えば、所定範囲内に、黒系色の検出数値及び白系色の検出数値が閾値以上存在するか否かにより判断できる。このように、キャリパアセンブリ2によれば、カメラ等により容易に欠品検査が可能となり、内シム5と外シム6の装着忘れを抑制することができる。なお、第一検査面53bと第二検査面65bの色については、互いに識別可能に異なれば良く、上記の色に限られない。
【0058】
また、本実施形態によれば、切欠き651aが設けられていることで、外シム側第一係合部65の根元部分(外シム本体部61との屈曲部分)の幅(ロータ周方向の長さ)が確保され、大型化・重量化することなく外シム側第一係合部65の強度確保が可能となる。本実施形態では、外シム側第一係合部65の根元部分の幅は、内シム側第一係合部53の幅と同じに設計されており、外シム側第一係合部65の強度を内シム側第一係合部53の強度と同程度に維持することができる。このように、本実施形態によれば、切欠き651aにより、外シム側第一係合部65を、強度維持可能で、軽量化可能で、欠品検査可能な構成にすることができる。また、切欠き651aを設けることで、例えば図26に示すように(二点鎖線の小さい方の領域)、カメラ等の所定範囲(識別対象範囲)を小さく限定することができ、検査精度の向上が可能となる。また、図26に示すように(二点鎖線の大きい方の領域)、開口部23aの構造に応じてカメラ等の所定範囲を大きくすることもでき、検査位置のずれやシム同士のずれ等を大きく許容することも可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、内シム5の一方面がステンレス材で形成され、外シム6の一方面がゴム材で形成されているため、適切な摩擦係数を実現できる構成を利用して検査可能な色彩の差を作り出すことができるため、製造の複雑化が抑制される。本実施形態によれば、内シム5の第一検査面53bと外シム6の第二検査面65bを検査のためだけに着色する必要がなくなる。
【0060】
また、本実施形態では、シムセットの脱落抑制のための両第一係合部53、65を検査面として利用し、欠品検査するため、別途検査のための部位を形成する必要がない。つまり、本実施形態によれば、両第一係合部53、65が検査面としても機能する(すなわち検査面を兼ねている)ため、製造が容易となり、重量化も抑制される。なお、本実施形態のシムセットは、内シム5に第一突出部(爪状部位)を設け、外シム6にも第一突出部と異なる色の第二突出部(爪状部位)を設けて、正常な場合に両方の突出部が開口部23aから露出するような構成であっても良い。これによっても、欠品検査が可能となる。本実施形態では、内シム側第一係合部53が第一突出部を構成し、外シム側第一係合部65が第二突出部を構成している。
【0061】
また、切欠き651aは、外シム側第一係合部65の根元部分(外シム本体部61側の端部)以外の部位に形成されておれば良く、形状等は上記に限られない。例えば図27に示すように、切欠き651aは、傾斜するような形状(三角形状)であっても良い。また、検査可能な構成としては、切欠き651aを設けず、図28に示すように、外シム側第一係合部65の第一部位651に開口部651bを設けても良い。また、内シム側第一係合部53のロータ周方向の幅を、外シム側第一係合部65のロータ周方向の幅よりも大きくすることでも、カメラ等により識別可能となる。ただし、重量の観点及びブレーキパッド4への組み付け性の観点から、本実施形態のように切欠き651aを設けた構成のほうが有利である。また、開口部23aは、ブリッジ231によるものに限らず、キャリパアセンブリ2のロータ径方向外側の対応する一部が開口していれば良い。ただし、本実施形態のようにブリッジ231を利用して開口部23aを形成することで、キャリパアセンブリ2の剛性を強化しつつ検査可能な構成を実現することができる。
【0062】
(ブレーキパッドセットの作用効果)
本実施形態のブレーキパッド4は、突起部423(第一突起423a及び第二突起423b)を有している。このため、たとえ内シム5や外シム6が有する嵌合や係合のための部位(爪状部位)が破損した場合でも、ブレーキパッド4から脱落しそうな内シム5及び/又は外シム6が突起部423にひっかかり、その脱落が抑制される。また、外シム貫通孔611、612は、ブレーキパッド4に対する外シム5の可動範囲内で、突起部423と外シム本体部61が当接しないように形成されている。したがって、突起部423は、制動時の外シム6の回転挙動を阻害しない。このように、本実施形態のブレーキパッドセットによれば、外シム6の回転挙動が阻害されることなく、内シム5と外シム6の脱落が抑制される。
【0063】
本実施形態のブレーキパッドセットは、ブレーキパッド4に対する外シム6の回転挙動にも対応でき、ブレーキパッド4が支持軸部24で支持されるディスクブレーキ装置Aに特に有効である。また、突起部423がピストン3の開口3b内に配置されているため、本構成の実現において、キャリパ20側の構造に変更を加える必要はなく、キャリパ20のロータ軸方向の幅を大きくする必要もない。つまり、キャリパ20等の構造の複雑化が抑制される。
【0064】
また、本実施形態では、突起部423が仮想線Zに対して線対称に配置された2つの突起(第一突起423a及び第二突起423b)で構成されているため、シム5、6の脱落防止時にシム5、6がバランスよく安定して突起部423にひっかかり、脱落をより確実に抑制することができる。また、第一突起423aと第二突起423b、及び内シム貫通孔511、512同士が、それぞれ線対称に配置されているため、裏板42と内シム5との間にグリスを配置する場合、作業者が対称的に作業するだけで済み、作業の複雑化が抑制される。グリスは内シム貫通孔511、512から漏れ出ないように配置しなければならないが、本実施形態であればロータ周方向の一方と他方に対して同じ作業をすることで足り、作業が容易且つ効率的となる。
【0065】
また、本実施形態では、外シム貫通孔611、612の開口面積が内シム貫通孔511、512の開口面積よりも大きくなっている。これにより、ロータ軸方向のピストン3側(外シム6の第二面6b側)から内シム貫通孔511、512を目視することができる。したがって、作業者は、内シム貫通孔511、512からグリスが漏れ出ているか否かを確認することができる。内シム5と外シム6の間には、小さい摩擦係数を保つために、グリスが入らないことが好ましい。本実施形態によれば、グリスの漏れ等を確認することができる。また、この構成により、泥や砂が外シム貫通孔611、612から排出されやすくなり、泥や砂等が外シム6と内シム5の間に堆積することが抑制される。
【0066】
なお、内シム貫通孔511、512は、各突起423a、423bが挿通可能な最小の径に形成されていても良い。これにより、グリスの漏れをさらに抑制することができる。また、突起部423は、1つの突起で構成されていても良い。これによっても、シム5、6の脱落を抑制することができる。また、突起部423は、本実施形態のように複数の突起で構成されていても良く、各ピストン3に1つの突起が対応するように構成されていても良い。
【0067】
(その他)
本実施形態のシムセットは、作業者がシム5、6を誤って逆に組み合わせようとした場合、すなわち内シム5の第一面5a側に外シム6の第二面6bが配置されるように組み合わせようとした場合、少なくとも一方の爪状部位が他方に干渉して組み合わせられないように構成されている。具体的に、シム5、6を逆に組み合わせようとした場合、内シム側第一係合部53が外シム側第一係合部65を覆う側に配置される。これに伴い、内シム5のロータ径方向内側の嵌合部52が、正常時よりもロータ径方向外側に移動し、外シム本体部61の切欠き613周辺部位と当接して干渉する(図4のX0周辺参照)。これにより、シム同士を逆に組み合わせようとした場合、両者が組み合わないようになっている。本実施形態の嵌合部52と外シム本体部61は、ロータ径方向内側において、逆に組み合わせた場合に両者が干渉するような寸法関係で形成されている。また、ずらす等により両者を逆に組み合わせたとしても、内シム5と外シム6がロータ軸方向に係合せず、分解・脱落しやすい構成となる。また、逆の状態では、嵌合部52とブレーキパッド4との離間距離が大きくなり、うまく嵌合できなくなる。このように、本実施形態のシムセットは、内シム5と外シム6とを逆に組み合わせる誤りの発生を抑制することができる。また、各係合部53、54、65、66の配置や構造は、上記に限られず、例えば、ロータ径方向の内外で逆の配置であっても良く、あるいはすべてが同じ構造(例えば係合部53、65で統一)であっても良い。
【0068】
(まとめ1)
本実施形態は以下のように記載することができる。本実施形態のシムセットは、押圧部材3によりディスクロータ1に向けて押圧されるブレーキパッド4に組み付けられるシムセットであって、ブレーキパッド4と押圧部材3の間におけるブレーキパッド4側に配置される内シム5と、ブレーキパッド4と押圧部材3の間における押圧部材3側に内シム5に重なって配置される外シム6と、を備え、ディスクロータ1の径方向をロータ径方向と称し、ディスクロータ1の周方向をロータ周方向と称し、ディスクロータ1の軸方向をロータ軸方向と称すると、内シム5は、内シム本体部51と、内シム本体部51に形成されブレーキパッド4に対して締め代を有してブレーキパッド4に嵌合する嵌合部52と、内シム本体部51の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた内シム側第一係合部53と、内シム本体部51の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた内シム側第二係合部54と、を有し、外シム6は、外シム本体部61と、外シム本体部61のブレーキパッド4に対するロータ周方向の相対移動を所定量に規制する規制部62、63と、外シム本体部61の外縁部のうちロータ径方向外側に設けられた外シム側第一係合部65と、外シム本体部61の外縁部のうちロータ径方向内側に設けられた外シム側第二係合部66と、を有し、内シム側第一係合部53と外シム側第一係合部65、及び内シム側第二係合部54と外シム側第二係合部66は、内シム本体部51と外シム本体部61を重ねてロータ周方向に相対的にスライドさせることで、外シム6が内シム5に対してロータ周方向及びロータ径方向に所定量相対移動可能に、ロータ軸方向に係合する。
このシムセットにおいて、外シム側第一係合部65の一部は、内シム側第一係合部53のディスクロータ1側に配置され、外シム側第二係合部66の一部は、内シム側第二係合部54のディスクロータ1側に配置されている。
また、このシムセットにおいて、内シム側第一係合部53は、内シム本体部51からロータ軸方向のブレーキパッド4側に突出し、外シム側第一係合部65は、外シム本体部61からロータ軸方向のブレーキパッド4側に突出し、内シム側第一係合部53を覆う側で内シム側第一係合部53に重なり、ブレーキパッド4の裏板42のディスクロータ1側の面420aに対向する位置まで延在している。
また、このシムセットにおいて、内シム側第二係合部54は、内シム本体部51からロータ径方向内側に突出し、外シム側第二係合部66は、外シム本体部61からロータ軸方向のブレーキパッド4側に突出し、一部が内シム側第二係合部54のディスクロータ1側に配置されている。
また、本実施形態のキャリパアセンブリ2は、一対の上記シムセット5、6と、一対のブレーキパッド4と、ディスクロータ1の外周部の一部分を跨ぐように配置されるキャリパ20と、キャリパ20内でブレーキパッド4をロータ軸方向に移動可能に支持する支持軸部24と、キャリパ20に組み付けられた押圧部材3と、を備え、ブレーキパッド4は、ディスクロータ1に対して摺接して摩擦力を発生させるための摩擦材41と、摩擦材41の裏面を支持する裏板42と、を有し、裏板42のロータ径方向外側には第一溝部421が形成され、裏板42のロータ径方向内側には第二溝部422が形成され、支持軸部24は、キャリパ20に設けられ第一溝部421に係合する外周支持軸241、及びキャリパ20に設けられ第二溝部422に係合する内周支持軸242、243で構成され、押圧部材3と外シム6の間の摩擦係数が外シム6と内シム5の間の摩擦係数より大きくなるように設定され、シムセットは、ブレーキパッド4に組み付けられ、ブレーキパッド4は、内周支持軸242、243の軸心回りに所定量回転可能に、支持軸部24に組み付けられている。
【0069】
(まとめ2)
また、本実施形態のキャリパアセンブリ2は、ディスクロータ1の外周部の一部分を跨ぐように配置されるキャリパ20と、キャリパ20に組み込まれる一対のブレーキパッド4と、ブレーキパッド4をディスクロータ1に向けて押圧する押圧部材3と、ブレーキパッド4と押圧部材3の間におけるブレーキパッド4側に配置される内シム5と、ブレーキパッド4と押圧部材3の間における押圧部材3側に内シム5に重なって配置される外シム6と、を備えるキャリパアセンブリであって、キャリパ20のロータ径方向外側の部位には、内部を露出させる開口部23aが形成され、内シム5は、内シム本体部51と、開口部23aに対応する位置に形成され且つブレーキパッド4のロータ径方向外側の端面420cの一部を覆うように内シム本体部51から突出した第一突出部(53)を有し、外シム6は、外シム本体部61と、開口部23aに対応する位置に形成され且つ第一突出部53のロータ径方向外側で第一突出部53の一部を覆うように外シム本体部61から突出した第二突出部(65)を有し、第一突出部53のロータ径方向外側の面である第一検査面53bの色は、第二突出部65のロータ径方向外側の面である第二検査面65bの色とは異なっている。
このキャリパアセンブリ2において、開口部23aは、キャリパ20のロータ径方向外側に形成された複数のブリッジ231により区画されている。また、第二突出部65の外シム本体部61側の端部を除く部位には、切欠き651aが形成されている。また、第一検査面53bを含む内シム5の一方面5bは、ステンレス材で形成され、第二検査面65bを含む外シム6の一方面6bは、ゴム材で形成されている。
また、このキャリパアセンブリ2において、内シム側第一係合部53と外シム側第一係合部65、及び内シム側第二係合部54と外シム側第二係合部66は、内シム5と外シム6を重ねてロータ周方向に相対的にスライドさせることで、外シム6が内シム5に対してロータ周方向及びロータ径方向に相対移動可能に、ロータ軸方向に係合し、内シム側第一係合部53は、上記第一突出部を構成し、外シム側第一係合部65は、上記第二突出部を構成している。
【0070】
(まとめ3)
本実施形態のブレーキパッドセットは、筒状のピストン3によりディスクロータ1に向けて押圧されるブレーキパッド4と、ブレーキパッド4とピストン3の間におけるブレーキパッド4側に配置される内シム5と、ブレーキパッド4とピストン3の間におけるピストン3側に内シム5に重なって配置される外シム6と、を備え、内シム5の外縁部には、ブレーキパッド4に対して締め代を有してブレーキパッド4に嵌合する嵌合部52が形成され、外シム6の外縁部には、所定の可動範囲で内シム5に対してロータ径方向及びロータ周方向に相対移動可能となるように、内シム5及びブレーキパッド4の少なくとも一方に係合する複数の係合部が形成され、ブレーキパッド4は、ディスクロータ1に対して摺接して摩擦力を発生させるための摩擦材41と、摩擦材41の裏面を支持する裏板42と、を有し、裏板42の内シム5側の面420bには、先端側部位4aがピストン3の開口3b内に配置されるようにピストン3の開口3bに対応する位置に突起部423が形成され、内シム5には、突起部243が挿通される内シム貫通孔511、512が形成され、外シム6には、突起部423が挿通される外シム貫通孔611、612が形成され、外シム貫通孔611、612は、上記可動範囲で外シム6と突起部423が当接しないように形成されている。
突起部423は、第一突起423a及び第二突起423bで構成され、第一突起423a及び第二突起423bは、それぞれ異なるピストン3の開口3bに対応し、裏板42のロータ周方向中央位置でロータ径方向に延びる仮想線Zに対して線対称に配置されている。また、外シム貫通孔611、612の開口面積は、内シム貫通孔511、512の開口面積よりも大きくなっている。
【符号の説明】
【0071】
1:ディスクロータ、 2:キャリパアセンブリ、 20:キャリパ、
23a:開口部、 3:ピストン(押圧部材)、 3b:開口、 4:ブレーキパッド、
41:摩擦材、 42:裏板、 420:裏板本体部、 421:第一溝部、
422:第二溝部、 423:突起部、 423a:第一突起、 423b:第二突起、
420a:第一面、 420b:第二面、 430c:第三面、 430d:第四面、
430e:第五面、 4a:先端側部位、 5:内シム、 51:内シム本体部、
52:嵌合部、 53:内シム側第一係合部、
54:内シム側第二係合部、 5a:第一面、 5b:第二面、 53b:第一検査面、
511、512:内シム貫通孔、 6:外シム、 61:外シム本体部、
62:第一規制部(規制部)、 63:第二規制部(規制部)、 64:第三規制部、
65:外シム側第一係合部、 66:外シム側第二係合部、 6a:第一面、
6b:第二面、 65b:第二検査面、 611、612:外シム貫通孔、
A:ディスクブレーキ装置、 Z:仮想線

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