特許第6406057号(P6406057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406057
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】無線機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/40 20150101AFI20181004BHJP
   H04B 1/3822 20150101ALI20181004BHJP
【FI】
   H04B1/40
   H04B1/3822
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-37086(P2015-37086)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-163062(P2016-163062A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】喜多 仁
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−175512(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0099386(US,A1)
【文献】 特開2014−107678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40
H04B 1/3822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSC個別呼出機能を有する無線機であって、音声による通話ができない旨の応答メッセージを記録する応答メッセージ記録部と、相手方からの音声によるメッセージを記録する相手方メッセージ記録部と、DSC個別呼出を受けた場合の対処について予め選択しておく通話選択部とを具備しており、DSC個別呼出を受けた場合、前記通話選択部で通話不可でかつ記録可能なモードが予め選択されていれば、相手方に通話不可ではあるが記録可能な旨を知らせる受信証を送信するとともに、相手方が指定してきたチャンネルに自動的に移行し、そのチャンネルで前記応答メッセージ記録部に記録された応答メッセージを送信し、前記相手方メッセージ記録部で音声による相手方メッセージの記録を開始することを特徴とする無線機。
【請求項2】
前記相手方メッセージ記録部は、前記応答メッセージの送信と同時に、相手方メッセージの記録を開始することを特徴とする請求項1記載の無線機。
【請求項3】
DSC個別呼出機能を有する無線機の制御方法であって、DSC個別呼出を受けた場合、通話不可でかつ記録可能なモードが予め選択されていれば、相手方に通話不可ではあるが記録可能な旨を知らせる受信証を送信するとともに、相手方が指定してきたチャンネルに自動的に移行し、そのチャンネルで応答メッセージ記録部に記録された応答メッセージを送信し、相手方メッセージ記録部で音声による相手方メッセージの記録を開始することを特徴とする無線機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DSC個別呼出機能を有する無線機とその制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶が使用する無線機のひとつに国際VHFがある。この国際VHFは、沿岸海域では入出港の連絡、船位通報、航行の安全、遭難通信に使用され、外洋では船舶間の相互通信に使用される。
SOLAS条約により国際航海に従事する旅客船、及び総トン数300トン以上の貨物船には、GMDSS認証を得た国際VHF無線機を搭載する義務がある。
GMDSS認証を得た国際VHF無線機にはDSC機能の搭載も義務化されている。
また、GMDSS認証を得た国際VHF無線機においても国際規格ITU−RM493に準拠したDSC機能の搭載が要求されている。
【0003】
このDSCには大別して(1)DSC緊急呼出、(2)DSC全船舶呼出、(3)DSC個別呼出、(4)DSCグループ呼出の4つのモードがある。この4つの呼出モードは、DSCの呼出専用として指定された第70チャンネルで送信される。
(1)DSC緊急呼出
例えば、遭難等の緊急事態が発生した場合に使用されるモードである。特別に割り当てられた緊急ボタンを作動させることにより、緊急である旨、自船のMMSI、自船の位置、緊急事態の内容等の必要情報を自動的に発信する。
なお、MMSIとは、Maritime Mobile Service Identityの略称で、通信装置を搭載した船舶・地上局に固有の認識番号として9桁の数字が割り当てられる。
(2)DSC全船舶呼出
自船の周辺に位置する他船に対して知らせたい事項、例えば流木等の障害物の存在等を他船に知らせる場合に使用されるモードである。このDSC全船舶呼出では、自船のMMSI等の必要事項を発信する。
(3)DSC個別呼出
自船から特定の他船又は特定の地上局を個別的に呼び出す際に使用されるモードである。このDSC個別呼出では、自船の名称、自船のMMSI、通話すべきチャンネル等の必要情報を発信する。
このDSC個別呼出に対しては、受信側には呼出を受けた際に通話可能である旨を知らせる「Able to comply」と、通話不可である旨を知らせる「Unable to comply」との2つの返信モードがある。この返信モードは、予め設定されている。
「Able to comply」の返信モードが選択されている場合には、DSC個別呼出を受けた側は、個別呼出をした側に対して自動的に「Able to comply」の受信証を返信するとともに、指定された通話チャンネルへと自動的に移行し、通話が開始される。
一方、例えば、他の作業を行うために乗組員が無線機の側から離れる場合等で、「Unable to comply」の返信モードが選択されていた場合には、DSC個別呼出を受けた側は、DSC個別呼出をした側に対して自動的に「Unable to comply」の受信証を返信する。
(4)DSCグループ呼出
自船から特定の他船の集団(グループ)を個別的に呼び出す際に使用されるモードである。このDSCグループ呼出では、自船のMMSI、通話すべきチャンネル等の必要情報を発信する。
このDSCグループ呼出を受けたものは、オペレータの操作により指定された通話チャンネルへと移行する。その後、通話が開始される。
【0004】
【特許文献1】特開平6−125292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のDSC機能を有する無線機では、DSC個別呼出が行われた場合、DSC個別呼出を行った側に通話不可である旨を知らせる「Unable to comply」の返信モードが設定されていた場合、DSC個別呼出を行った側には単に「Unable to comply」の受信証が返信されるだけなので以下のような問題点があった。
最初にDSC個別呼出を行った側からすると、ある程度の時間が経過してから再度のDSC個別呼出を行わなければならないという問題点である。
また、DSC個別呼出を受けた側からすると、自己の都合がよくなった時点で先程のDSC個別呼出を行った相手方にDSC個別呼出を行わなければならないという問題点である。
いずれにしても、DSC個別呼出で伝えたいメッセージは短いものであることが多いこともあり、どちらかが再度のDSC個別呼出を行わなければならないのは非常に煩わしいと感じられがちである。
また、いずれの側からDSC個別呼出を行うとしても、DSC個別呼出を行った側と受けた側との距離が電波の到達範囲外になっていた場合には、通話ができないという事態が生じる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、例えば、他の作業を行うために乗組員が無線機の側から離れていたり、すぐには通話できない場合であっても、DSC個別呼出を行った側のメッセージを記録して、DSC個別呼出を行った側が伝達したかったメッセージを確実に伝えることで、再度のDSC個別呼出の煩わしさを低減するとともに利便性を向上させた無線機及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線機は、DSC個別呼出機能を有する無線機であって、音声による通話ができない旨の応答メッセージを記録する応答メッセージ記録部と、相手方からの音声によるメッセージを記録する相手方メッセージ記録部と、DSC個別呼出を受けた場合の対処について予め選択しておく通話選択部とを備えており、DSC個別呼出を受けた場合、前記通話選択部で通話不可でかつ記録可能なモードが予め選択されていれば、相手方に通話不可ではあるが記録可能である旨を知らせる受信証を送信するとともに、相手方が指定してきたチャンネルに自動的に移行し、そのチャンネルで前記応答メッセージ記録部に記録された応答メッセージを送信し、前記相手方メッセージ記録部で音声による相手方メッセージの記録を開始するようになっている。
【0008】
また、本発明に係る無線機の制御方法は、DSC個別呼出機能を有する無線機の制御方法であって、DSC個別呼出を受けた場合、通話不可でかつ記録可能なモードが予め選択されていれば、相手方に通話不可ではあるが記録可能な旨を知らせる受信証を送信するとともに、相手方が指定してきたチャンネルに自動的に移行し、そのチャンネルで応答メッセージ記録部に記録された応答メッセージを送信し、相手方メッセージ記録部で音声による相手方メッセージの記録を開始するようになっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る無線機や無線機の制御方法によれば、DSC個別呼出が行われた場合、通話不可であっても記録可能なモードが選択されていれば、通話不可である旨だけでなく、相手方メッセージを記録可能な旨を伝えるとともに、相手方メッセージを記録することができるので、伝達したかったメッセージを確実に伝えることができ、再度のDSC個別呼出を行うといった煩わしさを低減することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る無線機の概略的ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る無線機の表示ディスプレイ等を示す概略的正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る無線機の表示ディスプレイに表示される各種アイコンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の実施の形態に係る無線機100の詳細を説明する前に、この無線機100の表示ディスプレイ200やその周囲に配置されるスイッチ類やその機能について図2図3を参照しつつ説明する。
この無線機100の正面の中央には液晶パネルからなる表示ディスプレイ200が、その向かって左側にはスピーカー300が、その向かって右側には、左右キー310、上下/チャンネル選択キー320、エンターキー330、クリアキー340、メニューキー350及びダイヤル/電源キー355が配置されている。
また、表示ディスプレイ200の下側には4つのソフトキー360、スケルチツマミ370、ボリュームツマミ380及びチャンネル16/コールチャンネルキー390が配置されている。
さらに、スピーカー300の下側には、マイク用コネクタ400と、ディストレスキー410が設けられている。このディストレスキー410は、遭難信号を送出するキーなので、誤動作防止のため、透明な保護カバー411で覆われている。
【0012】
前記左右キー310は、表示ディスプレイ200に表示されたソフトキー360の機能を切り替えるときに操作する。また、チャンネル名やMMSIコードの設定時、表示された一覧から文字を選択する際にも使用する。
前記上下/チャンネル選択キー320は、運用チャンネルやメニュー項目を選択するとき、又は設定を変更する際に使用する。スキャン中にスキャン対象チャンネルを確認するときやスキャンの方向を変更するとき、またスキャンを手動で再スタートする際にも使用する。
これらの左右キー310と上下/チャンネル選択キー320とはいわゆる十字キーのように配置されている。
十字キーのように配置された左右キー310と上下/チャンネル選択キー320との中心位置には、入力内容や選択項目を設定する際に操作するエンターキー330が配されている。
これらの左右キー310、上下/チャンネル選択キー320及びエンターキー330は、メニュー画面に応じて後述する通話選択部510として機能する。
【0013】
前記クリアキー340は、直前の操作を取り消したり、操作中のモードを終了したりする際に操作する。
また、前記メニューキー350は、メニュー画面を選択する際に操作する。
さらに、前記ダイヤル/電源キー355は、回転及びプッシュ操作が可能な複合スイッチであって、長押しすると電源がオンになり、再度長押しすると電源がオフになるようになっている。また、運用チャンネルやメニュー項目を選択する際、又は設定を変更する際に回転させる。回転させることで選択した入力内容やメニュー項目を確定する際には短押しする。
【0014】
前記スケルチツマミ370は、スケルチを調整する。ボリュームツマミ380は、受信音量を調整する。また、チャンネル16/コールチャンネルキー390は、短押しするとチャネル16が選択され、長押しするとコールチャンネルが選択される。なお、コールチャンネルが選択されると、後述するコールチャンネル表示アイコン205である『CALL』表示が点灯する。
【0015】
4つのソフトキー360には、各種機能から使用者が自分の必要に応じて選択した機能を割り当てることができる。
各種機能には以下のようなものがある。
(1)スキャン機能
スキャン機能が割り当てられたソフトキー360を押すごとに、ノーマルスキャン又はプライオリティスキャンが開始/解除される。
(2)2波同時受信/3波同時受信機能
2波同時受信チ/3波同時受信機能が割り当てられたソフトキー360を押すごとに、2波同時受信チ又は3波同時受信が開始/解除される。
(3)チャンネル/ウェザーチャンネル機能
チャンネル/ウェザーチャンネル機能が割り当てられたソフトキー360を押すごとに、通常チャンネルとウェザーチャンネルとを切り換える。
(4)送信出力機能
送信出力機能が割り当てられたソフトキー360を押すごとに、送信出力をハイパワーとローパワーに切り換える。
(5)ボイスレコーダー機能
ボイスレコーダー機能が割り当てられたソフトキー360を押すと、録音した内容が再生される。
(6)RXヘイラー機能
RXヘイラー機能が割り当てられたソフトキー360を押すごとに、RXヘイラー機能がオン/オフされる。
(7)アッテネーター機能
アッテネーター機能が割り当てられたソフトキー360を押すごとに、アッテネーター機能がオン/オフされる。
(8)スキャン対象チャンネル機能
スキャン対象チャンネル機能が割り当てられたソフトキー360を長押しすることで、表示されているチャンネルをスキャン対象にしたり、解除したりする。また、ソフトキー360を短押しすることで、すべてのチャンネルをスキャン対象にしたり、解除したりする。
(9)チャネル名称編集機能
チャネル名称編集機能が割り当てられたソフトキー360を押すと、チャンネルの名称を編集できるモードとする。
(10)バックライト機能
バックライト機能が割り当てられた表示ディスプレイ200やバックライトの輝度等を調整する。
(11)ログ機能
ログ機能が割り当てられたソフトキー360を押すと、DSC呼出機能で受信した履歴を表示するモードとなる。
(12)メッセージ機能
メッセージ機能が割り当てられたソフトキー360を押すと、相手方メッセージ記録部501に記録された相手方メッセージが再生される。
【0016】
また、表示ディスプレイ200には、図3に示すように、各種の機能アイコンが表示される。
(1)送受信表示アイコン201
信号受信中やスケルチが開いているときは『BUSY』表示が点灯し、送信中は『TX』表示が点灯する。
(2)送信出力表示アイコン202
送信出力がハイパワーが選択されているときは『25W』表示が点灯し、ローパワーが選択されているときは『1W』表示が点灯する。
(3)RXヘイラーアイコン203
RXヘイラー機能が作動しているときには『RX』表示が点灯する。
(4)チャンネルグループ表示アイコン204
国際チャンネルが選択されているときは『INT』表示が点灯し、ウェザーチャンネル選択時は『WX』表示が点灯する。
(5)コールチャンネル表示アイコン205
コールチャンネルが選択されているときは『CALL』表示が点灯する。
(6)デュプレックス表示アイコン206
デュプレックスチャンネルが選択されているときは『DUP』表示が点灯する。
(7)スキャン対象チャンネル表示アイコン207
スキャン対象チャンネルが選択されているときは『★』表示が点灯する。
(8)呼出表示アイコン208
未読のCDS呼出があるときには手紙をアイコン化した『メール』表示が点減する。
また、相手方メッセージが記録されているときにも『メール』表示が点灯する。
(9)GPS情報表示アイコン209
GPS受信機が接続されている状態で位置情報を取得すると、この『GPS情報表示アイコン』が点灯する。
位置情報が取得できないときには、『GPS情報表示アイコン』が点減する。
なお、この『GPS情報表示アイコン』は、人工衛星を模したシンボルで表される。
(10)チャンネル16スイッチ表示アイコン210
DSC機能の16チャンネル(遭難通信・安全通信及び呼出に割り当てられている)をオフにしていると、『チャンネル16スイッチ表示アイコン』が点灯する。
(11)バッテリー電圧低下表示アイコン211
バッテリーが予め定められた電圧以下(例えば、10V以下)になると、『バッテリー電圧低下表示アイコン』が点減する。なお、この『バッテリー電圧低下表示アイコン』は、バッテリーを模したシンボルで表される。
(12)チャンネル番号表示アイコン212
選択された運用中のチャンネル番号を表示する。なお、各種アイコンのうち、このチャネル番号表示アイコン212が最も大きく表されている。
(13)チャンネル名称表示アイコン213
設定されたチャンネル名称が表示される。
(14)ソフトキー機能表示アイコン214
上述した4つのソフトキー360に割り当てられた機能が表示される。このソフトキー機能表示アイコン214は、対応したソフトキー360のすぐ上側に表示されるようになっている。
(15)タイムゾーン表示アイコン215
GPS受信機が接続されている場合には現在時刻を表示し、協定世界時との時差を設定すると『LOCAL』表示が点灯し、手動で時刻情報を入力すると『MNL』表示が点灯する、など時刻情報が表示される。
(16)位置情報表示アイコン216
位置情報、すなわち経度及び緯度が表示される。
(17)進行方向/速度表示アイコン217
GPS受信機が接続されている場合には、自船の進行方向及び速度が表示される。
(18)スキャン表示アイコン218
チャンネルのモニターモードを表示する。
特定のチャンネルを受信しつつ定期的にチャンネル16をモニターする2波同時受信チ作動時には『DUAL16』と表示され、特定のチャンネルを受信しつつ定期的にチャンネル16及びコールチャンネルをモニターする3波同時受信作動時には『TRI16』と表示される。また、チャンネル16をモニターしながら、すべてのタグチャンネルを順次モニターするプライオリティースキャン作動時には『SCAN16』と表示される。
(19)LOCAL表示アイコン219
アッテネーター機能が動作している場合、『LOC』表示が点灯する。
【0017】
なお、上述した表示ディスプレイ200やその周囲に配置されるスイッチ類やその機能、各種アイコンは一例であって、本件発明がこれに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0018】
本発明の実施の形態に係る無線機100は、DSC個別呼出機能を有する無線機であって、音声による通話ができない旨の応答メッセージを記録する応答メッセージ記録部502と、相手方からの音声によるメッセージを記録する相手方メッセージ記録部501と、DSC個別呼出を受けた場合の対処について予め選択しておく通話選択部510とを備えており、DSC個別呼出を受けた場合、前記通話選択部510で通話不可でかつ記録可能なモードが予め選択されていれば、相手方に通話不可ではあるが記録可能である旨を知らせる受信証を送信するとともに、相手方が指定してきたチャンネルに自動的に移行し、そのチャンネルで前記応答メッセージ記録部502に記録された応答メッセージを送信し、前記相手方メッセージ記録部501で音声による相手方メッセージの記録を開始するようになっている。
【0019】
この無線機100の構成及び動作を図1等を参照しつつ説明する。
前記応答メッセージ記録部502と相手方メッセージ記録部501とは、記録すべき内容が送信するものか受信したものかの違いはあるが、音声によるメッセージを記録する点では共通しているので、録音再生部500のメモリーとして存在している。
この録音再生部500は、受信部520で受信した音声による相手方メッセージの信号が入力されるとともに、応答メッセージを変調部530を介して送信部540に出力するようになっている。
また、前記受信部520と送信部540とは、送受信切替部550を介してアンテナANTに接続されている。
【0020】
前記応答メッセージ記録部502に記録された応答メッセージとは、例えば「ただいま留守にしております。用件を30秒間録音できます」のように、直ちに応答できない旨と、録音可能である旨を相手方に伝えるものである。
この応答メッセージは、応答メッセージ記録部502に使用者が記録したものであってもよいし、応答メッセージ記録部502に出荷当初から記録されたものであってもよい。例えば、使用者が記録する場合には、無線機100のメニュー画面から録音再生機能を選択し、さらにメッセージ録音を選択する。その状態で録音開始スイッチを入れると録音(記録)が開始される。無線機100のマイクMICを用いて応答メッセージを入力することで、低周波増幅器560を介して応答メッセージ記録部502に記録される。
【0021】
また、船舶間での通話は英語で行われることもに多いので、出荷当初から記録された応答メッセージには日本語バージョン以外に英語バージョンやその他の外国語バージョンもあることが望ましい。どの言語を選択するかは、メニュー画面から選択することができるようになっている。なお、この出荷当初からの対応メッセージは対応メッセージ記録部502に記録されている。
【0022】
前記相手方メッセージ記録部501は、相手方からの相手方メッセージを録音(記録)するものであって、後述する通話選択部510において、通話不可ではあるが記録可能であるモードが選択されている場合にのみ作動する。
【0023】
前記通話選択部510は、通話可能であるか通話不可であるかのモードを含む下記の4種のモードを選択するものである。
すなわち、この通話選択部510では、通話可能な「Able to comply」モード、通話不可ではあるが記録可能である旨を示す「Able to comply(Auto record) 」モード、通話不可である旨を示す「Unable to comply」モード、新たなチャンネルへの移行を促す「Propose New Channel 」モードを選択することができる。
【0024】
この通話選択部510でのモードの選択は、メニュー画面から左右キー310、上下/チャンネル選択キー320及びエンターキー330で選択するようになっていてもよいし、ダイヤル/電源キー355で選択するようになっていてもよいし、メニュー画面からは独立したスイッチで行うようになっていてもよい。
なお、この通話選択部510によって選択されたモードは、CPU570に入力されている。
【0025】
ここで、通話選択部510において通話不可ではあるが記録可能であるモードが選択されている場合に、DSC個別呼出を受けると、相手方に通話不可ではあるが記録可能である旨を知らせる「Able to comply(Auto record) 」の受信証を送信するとともに、相手方が指定してきたチャンネルに自動的に移行する。そして、前記応答メッセージ記録部502に記録されている応答メッセージを移行したチャンネルで相手方に送信する。
【0026】
相手方に通話不可ではあるが記録可能である旨を知らせる「Able to comply(Auto record) 」の受信証の送信と、相手方が指定してきたチャンネルへの自動的な移行と、前記応答メッセージの送信とを行うと同時に、相手方メッセージ記録部501は、相手方メッセージの記録を開始する。
【0027】
ここで、通話不可ではあるが記録可能である対処が選択されている場合、応答メッセージの送信等と同時に、相手方メッセージの記録を開始するのは、いわゆる頭切れを防止するためである。すなわち、DSC個別呼出を行った相手方は、受信証を受信すると同時、すなわち受信した受信証が、単なる「Able to comply」であるか、記録可能である旨を示す「Able to comply(Auto record) 」であるか単なる通話不可である旨を示す「Unable to comply」であるかを確認する前に、音声による相手方メッセージを話し始めることがあるため、応答メッセージの送信が完了した時点から相手方メッセージの記録を開始すると、相手方メッセージの最初の部分の記録が行われない、いわゆる頭切れが発生するおそれがあるからである。
従って、相手方メッセージ記録部501が、応答メッセージの送信等と同時に相手方メッセージの記録を開始すると、相手方メッセージが応答メッセージと被さっても、相手方メッセージを確実に記録することができ、いわゆる頭切れの発生を防止することができるのである。
【0028】
通話選択部510で、通話可能であるモードが選択されている場合に、DSC個別呼出を受けると、相手方に通話可能である旨を知らせる「Able to comply」の受信証を送信するとともに、相手方が指定してきたチャンネルに自動的に移行する。そして、移行したチャンネルで相手方との音声によるメッセージの遣り取りが行われる。
【0029】
なお、通話選択部510において、通話不可であるモードが選択されている場合には、DSC個別呼出を受信すると、「Unable to comply」の受信証を発信する。さらに、通話選択部510において、新たなチャンネルへの移行を促す「Propose New Channel 」が選択されていると、相手方にチャンネルの移行を促す。
【0030】
なお、この通信機100では、通話選択部510でいずれのモードが選択されていたとしても、DSC個別呼出を受けると、DSC個別呼出はDSC受信部580で符号化され、CPU570に送出される。CPU570では、その符号をデコードし、DSC個別呼出を受けた旨、DSC個別呼出を行った相手方の船舶情報を表示ディスプレイ200に表示する。
【0031】
通話選択部510において通話不可ではあるが記録可能なモードが選択されており、かつ相手方メッセージ記録部501が相手方メッセージの記録を行った場合には、相手方メッセージが相手方メッセージ記録部501に記録されている旨を、表示ディスプレイ200の呼出表示アイコン208の『メール』表示を点灯させて知らせる。表示ディスプレイ200の呼出表示アイコン208を確認した者は、メッセージ機能が割り当てられたソフトキー360を押すことで、相手方メッセージ記録部501に記録された相手方メッセージを低周波増幅器561を介してスピーカーSPで再生して確認することができる。
なお、この表示呼出アイコン208は、表示ディスプレイ200に表示するとしたが、表示ディスプレイ200とは別個のパイロットランプを点灯させるようにしたものであってもよい。
【0032】
相手方メッセージ記録部501に記録された相手方メッセージは、メニュー画面から指示することで消去することができるようにするとよい。また、相手方メッセージ記録部501の記録容量の残量が予め設定された値以下になった場合には、記録容量の残量が予め設定された値以上になるように相手方メッセージを古い順に自動的に消去するようにしてもよい。
【0033】
なお、上述した説明では、応答メッセージの送信と同時に相手方メッセージの記録を開始するとしたが、応答メッセージの送信が完了してから相手方メッセージの記録を開始するようにしてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
100 無線機
501 相手方メッセージ記録部
502 応答メッセージ記録部
510 通話選択部
図1
図2
図3