特許第6406119号(P6406119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406119
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】合わせガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20181004BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20181004BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C03C27/12 H
   C03C27/12 Z
   B32B17/10
   B32B37/10
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-96437(P2015-96437)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-210654(P2016-210654A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162020
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅彦
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−225053(JP,A)
【文献】 特開平02−064043(JP,A)
【文献】 特開昭58−079851(JP,A)
【文献】 特開平05−286742(JP,A)
【文献】 特開平10−194797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二枚の板ガラスの間に樹脂製中間膜を介在させて積層させた積層体に対して、オートクレーブによる加熱・加圧処理を行うと同時に、前記積層体の周縁部に対して密封部材を嵌装して真空引き処理を行うことにより、前記板ガラスを互いに圧着させて合わせガラスを製造する、合わせガラスの製造方法であって、
前記密封部材は、前記積層体の周縁部に対して嵌装された状態において、
前記樹脂製中間膜の端面を覆って前記樹脂製中間膜が介在する前記板ガラスの間を塞ぐように、前記積層体の端面に当接するリブ部と、
前記リブ部と前記積層体の端面との間に形成される界面を介して前記積層体の積層界面と連通する減圧通路と、
前記積層体を厚み方向に挟持する挟持部と、を備え、
前記真空引き処理は、前記密封部材を前記積層体の周縁部に対して嵌装することにより、
前記リブ部を前記積層体の端面に当接させ、前記挟持部により前記積層体を厚み方向に挟持した状態で、
前記減圧通路を通じて行われる、
ことを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項2】
前記密封部材は、前記積層体の最外層における前記板ガラスの板面に密着するシール部を備え、
前記密封部材を前記積層体の周縁部に対して嵌装することにより、
前記シール部を前記積層体の最外層における前記板ガラスの板面に密着させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項3】
前記減圧通路は、断面視半円形状に形成される、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の合わせガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耐貫通性および耐衝撃性などに優れたガラスとして、合わせガラスが知られている。
合わせガラスは、一般的に、積層工程、仮圧着工程、および本圧着工程などからなるACV法(オートクレーブ法)によって製造される。
具体的には、樹脂製中間膜を介在させつつ少なくとも二枚の板ガラスを積層して製造ラインに投入し(積層工程)、投入した板ガラスを加熱して樹脂製中間膜を軟化させて、板ガラスを仮圧着し(仮圧着工程)、仮圧着した板ガラスをオートクレーブによって加熱・加圧処理することで(本圧着工程)、合わせガラスは製造される。
【0003】
ところで、前述した本圧着工程においては、例えば、板ガラスと樹脂製中間膜との間に気泡などが残って欠陥商品となるのを防止したり、板ガラスおよび樹脂製中間膜の密着性を高めたりするため、オートクレーブの炉内を加圧するのと同時に、当該オートクレーブの炉内に投入された板ガラスの積層界面を真空引きすることとしている。
ここで、特許文献1には、板ガラスの積層界面を真空引きする際の技術として、合わせガラス製造用の空気吸引除去装置に関する技術が開示されている。
具体的には、特許文献1においては、少なくとも二枚の板ガラスの間に熱可塑性の樹脂製中間膜を挟んだ積層体を製造する際に、該積層体の周縁部に長手方向に切開し周方向に開口する耐熱樹脂チューブの開口部を挿入し、該チューブと前記板ガラスとの当接部を粘着テープで封着して減圧室を設けたことを特徴とする合わせガラス製造用の空気吸引除去装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−35400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における、合わせガラス製造用の空気吸引除去装置によれば、耐熱樹脂チューブを減圧室として用いることにより、合わせガラスの形状に影響されることなく、合わせガラスの周縁部を完全に密閉することができ、簡易な装置によって、板ガラスの間隙を真空引きすることが可能となる。
しかしながら、板ガラスの周縁部に耐熱樹脂チューブを用いて減圧する際、耐熱樹脂チューブにより樹脂製中間膜の外周端部を覆うように減圧通路(脱気通路)である減圧室が形成されているため、加熱、加圧工程によって、樹脂製中間膜が軟化した際に減圧室に流出して、合わせガラスの周縁部において樹脂製中間膜の厚さが不均一になることや、合わせガラスの周囲に偏肉が生じることが考えられる。
【0006】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、少なくとも二枚の板ガラスの間に樹脂製中間膜を介在させて積層させた積層体に対して、オートクレーブによる加熱・加圧処理を行うと同時に、積層体の周縁部に対して密封部材を嵌装して真空引き処理を行うことにより、板ガラスを互いに圧着させて合わせガラスを製造する、合わせガラスの製造方法であって、加熱・加圧処理時において、樹脂製中間膜が軟化して減圧通路に流出し、合わせガラスの周縁部に偏肉が生じることを抑えることができる合わせガラスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明に係る合わせガラスの製造方法は、少なくとも二枚の板ガラスの間に樹脂製中間膜を介在させて積層させた積層体に対して、オートクレーブによる加熱・加圧処理を行うと同時に、前記積層体の周縁部に対して密封部材を嵌装して真空引き処理を行うことにより、前記板ガラスを互いに圧着させて合わせガラスを製造する、合わせガラスの製造方法であって、前記密封部材は、前記積層体の周縁部に対して嵌装された状態において、前記樹脂製中間膜の端面を覆って前記樹脂製中間膜が介在する前記板ガラスの間を塞ぐように、前記積層体の端面に当接するリブ部と、前記リブ部と前記積層体の端面との間に形成される界面を介して前記積層体の積層界面と連通する減圧通路と、前記積層体を厚み方向に挟持する挟持部と、を備え、前記真空引き処理は、前記密封部材を前記積層体の周縁部に対して嵌装することにより、前記リブ部を前記積層体の端面に当接させ、前記挟持部により前記積層体を厚み方向に挟持した状態で、前記減圧通路を通じて行われることを特徴とする。
【0009】
このような構成からなる合わせガラスの製造方法によれば、積層体の周縁部に沿って密封部材が嵌装されることにより、樹脂製中間膜の端面を覆って樹脂製中間膜が介在する板ガラスの間を塞ぐように、密封部材のリブ部が積層体の端面に当接し、且つ積層体の周縁部は密封部材によって挟持される。そのため、加熱・加圧処理時において、樹脂製中間膜が軟化して減圧経路に流出し、合わせガラスの周縁部に偏肉が生じることを抑えることができる。
従って、樹脂製中間膜により減圧通路内が封鎖されず、減圧通路により安定して真空引きすることができる。
【0010】
また、本発明に係る合わせガラスの製造方法においては、前記密封部材が、前記積層体の最外層における前記板ガラスの板面に密着するシール部を備え、前記密封部材を前記積層体の周縁部に対して嵌装することにより、前記シール部を前記積層体の最外層における前記板ガラスの板面に密着させることがより好ましい。
【0011】
このように、積層体の周縁部に沿って密封部材が嵌装されることにより、積層体の最外層における板ガラスの板面にシール部が密着されるため、積層体の周縁部を含む密封部材の内周部が、密閉部材自身によって密封される。
よって、例えば、粘着テープなどを用いて、各板ガラスと密接部材との当接部を封着する必要もなく、積層体の周縁部を容易に密閉することができる。また、粘着テープを用いる場合よりも、気密信頼性を向上させることができる。
従って、積層体に対する密封部材の密封作業を容易に行うことができ、積層体の真空引き作業の密封信頼性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る合わせガラスの製造方法において、前記減圧通路は、断面視半円形状に形成されることがより好ましい。
【0013】
このような構成からなる合わせガラスの製造方法によれば、複雑な断面形状ではなく、比較的容易な断面形状であるため、減圧通路の加工は容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明における合わせガラスの製造方法によれば、加熱・加圧処理時において、樹脂製中間膜が軟化して減圧通路に流出し、合わせガラスの周縁部に偏肉が生じることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る合わせガラスの製造方法を具現化する、密封部材の全体的な構成を示した一部断面正面図。
図2】密封部材の断面形状を示した図であって、図1中の矢印Aの方向から見た拡大断面図。
図3】密封部材の内側に形成される減圧通路を示した図であって、図2中の領域Bによって示された箇所の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0017】
[合わせガラスの製造方法]
先ず、本実施形態によって具現化される合わせガラスの製造方法について、図1および図2を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1および図2の上下方向を密封部材1の上下方向と規定して記述する。
【0018】
本実施形態における合わせガラスの製造方法は、図2に示すように、例えば、密封部材1を用いて、合わせガラス50を製造するための方法である。
合わせガラス50は、樹脂製中間膜51と、樹脂製中間膜51を介在させて積層される一対の板ガラス52・52とを備える積層体50Aからなる。
この合わせガラス50は、積層工程、仮圧着工程、および本圧着工程などを有するオートクレーブ法によって製造されるが、本実施形態における合わせガラスの製造方法は、本圧着工程において、オートクレーブ(図示せず)の炉内を加熱・加圧処理して一対の板ガラス52・52を互いに圧着させるのと同時に、炉内に投入された一対の、仮圧着工程後の板ガラス52・52の積層界面53・53に対して真空引きして製造する方法である。
【0019】
ここで、本実施形態においては、密封部材1を用いて一対の板ガラス52・52の積層界面53・53を真空引きすることとしている。
密封部材1は、詳細は後述するが、内周側が開口した断面視略「コ」字状の枠体形状に形成される。そして、開口部を介して密封部材1が一対の板ガラス52・52の周縁部に沿って嵌装された状態において、一対の板ガラス52・52と樹脂製中間膜51との境界部(積層体50Aの積層界面53)の周縁部は、後述するリブ部11cの下端面と積層体50Aの上端面との間に形成される当接界面54を介して密封部材1の減圧通路11b・11bと連通される。
【0020】
そして、密封部材1が嵌装された積層体50Aは、本圧着工程において、オートクレーブの炉内へと投入される。
その後、図1に示すように、密封部材1の減圧通路11bは、配管部材21を介して真空ポンプ22などと連結される。
これにより、一対の板ガラス52・52と樹脂製中間膜51との積層界面53・53は、当接界面54、減圧通路11b・11bおよび配管部材21を介して、真空ポンプ22と連結される。
【0021】
その後、オートクレーブの炉内において、加熱・加圧処理が行われるのと同時に、真空ポンプ22によって、一対の板ガラス52・52と樹脂製中間膜51との積層界面53・53に対する真空引きが行われ、これらの板ガラス52・52が本圧着される。
【0022】
オートクレーブの炉内温度が所定の処理温度に到達した後、所定時間の経過を待って、加熱・加圧が停止される。
その後、炉内温度が所定の温度以下にまで低下したのを確認し、オートクレーブの炉内より積層体50Aが取出され、真空ポンプ22による真空引きが停止される。
こうして、合わせガラスの製造工程は終了し、完成した合わせガラス50が得られる。
【0023】
[密封部材1]
次に、密封部材1の構成について、図1乃至図3を用いて詳述する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図3の上下方向を密封部材1の上下方向と規定して記述する。
【0024】
密封部材1は、図2に示すように、樹脂製中間膜51が介在する、一対の板ガラス52・52の周縁部を密封するための部材である。
【0025】
密封部材1は、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、またはアクリルゴムなどの、耐熱性を有する弾性部材により形成される。
また、密封部材1は、一対の板ガラス52・52の周縁部に沿った枠体形状に形成され、例えば、図1に示すように、本実施形態においては、矩形状の枠体形状に形成される。
【0026】
なお、密封部材1の形状については、本実施形態に限定されるものではない。
即ち、一対の板ガラス52・52の周縁部に沿った形状である限り、例えば、円形状や、矩形状以外の多角形状からなる枠体形状であってもよい。
【0027】
密封部材1は、略「コ」字状の断面形状となるように形成される。
具体的には、図2に示すように、密封部材1は、各々の板ガラス52・52の端面52a・52a(図2においては、上端面)と当接しつつ端面52a・52aに沿って延設される基部11と、基部11における板ガラス52・52との当接面11aから密封部材1の内周側(図2における下側)へ延出し、板ガラス52・52の厚み方向に所定の間隔を有して対向配置される一対の支持部12・12とを備えている。
【0028】
基部11の当接面11aの、板ガラス52・52の各端面52a・52aに対向する部分には、断面視半円形状の溝形状からなる減圧通路11b・11bが、基部11の延設方向に沿って形成される。
基部11の当接面11aの、積層体50Aの厚み方向における中央部には、断面視矩形状(凸形状)のリブ部11cが、基部11の延設方向に沿って形成される。リブ部11cは、積層体50Aの端面に当接する当接面11dを有する。この当接面11dは、気体のみが通気できる表面性状を有し、基部11の当接面11aと略面一である。
【0029】
リブ部11cは、樹脂製中間膜51の端面を覆って樹脂製中間膜51が介在する板ガラス52・52の間を塞ぐように、積層体50Aの端面に当接する部分である。
リブ部11cは、減圧通路11b・11bの間に介装される。具体的には、対向する減圧通路11b・11bの各内側端から連続して形成される肉厚部分である。リブ部11cは、積層体50Aの厚み方向において、少なくとも板ガラス52・52の積層界面53・53間よりも幅広の幅寸法を有する。リブ部11cと板ガラス52・52の端面52a・52aとの当接界面54は、リブ部11cの当接面11d表面の気体のみが通気できる微小な凹凸及び板ガラス52・52の各端面52a・52aの微小な凹凸により通気可能になっている。
そして、一対の板ガラス52・52の周縁部に沿って密封部材1が嵌装された状態において、基部11の当接面11aが板ガラス52・52の端面52aに、リブ部11cが樹脂製中間膜51が介在する板ガラス52・52の間を塞ぐように当接することにより、減圧通路11bは、リブ部11cと積層体50Aの端面との間に形成される当接界面54を介して、一対の板ガラス52・52と樹脂製中間膜51との積層界面53・53と連通する。
【0030】
ここで、図3に示すように、樹脂製中間膜51が介在した状態で積層された板ガラス52・52は、互いに樹脂製中間膜51の厚み寸法分だけ離間しているが、リブ部11cの幅寸法Wbは、一対の板ガラス52・52の離間寸法Waに比べて、大きく(Wb>Wa)なるように設定されている。
これにより、本圧着工程において、オートクレーブの炉内に投入された積層体50Aの真空引きを行う際に、樹脂製中間膜51が積層体50Aの端面52aから突出しないようにすることが可能となり、合わせガラス50の品質向上を図ることができる。
【0031】
即ち、本圧着工程において、オートクレーブの炉内を加熱・加圧処理するのと同時に、例えば、PVB(ポリビニルブチラール)やEVA(エチレンビニルアセテート)などからなる樹脂製中間膜51が介在する、一対の板ガラス52・52に対して真空引きを行う場合、樹脂製中間膜51は、加熱処理の影響によって軟化するとともに、加圧処理および真空引きの影響によって一対の板ガラス52・52の端面52aから突出する方向に移動する場合がある。
この際、一対の板ガラス52・52の端面52a近傍の樹脂製中間膜51は、リブ部11cの当接面11dに到達した時点で塞き止められ、気泡のみが真空引きされる。
【0032】
その結果、樹脂製中間膜51が板ガラス52・52の端面52aから突出しないため、各々の板ガラス52・52の周縁部において、樹脂製中間膜51の肉厚が薄くなりすぎ、各板ガラス52の側端部が湾曲しすぎて、合わせガラス50の品質が低下するような心配もない。
なお、本実施形態の合わせガラス50において、樹脂製中間膜51(図2を参照)は、PVB、EVAなどにより形成されるが、特に限定するものではない。例えば、樹脂製中間膜51をPVB、EVAなどで形成する代わりに、フッ素樹脂で形成することもできる。耐熱性や耐燃性などに優れたフッ素樹脂で樹脂製中間膜51を形成することで、耐熱性や耐燃性などに優れた合わせガラス50を形成することができる。
【0033】
ところで、図2に示すように、互いに対向して配置される一対の支持部12・12において、各支持部12の内側面(対向面)には、突出部12aが形成される。
突出部12aは、支持部12の延設方向に沿って延設される。
また、突出部12aの突出端面は、基部11の当接面11aに対して直交し、且つ支持部12の延設方向に対して平行な平面形状に形成される。
【0034】
そして、一対の支持部12・12において、各々の突出部12a・12a間の間隙寸法は、積層体50Aの厚み寸法(図2中の寸法W)と同程度または若干小さくなっている。
【0035】
このような形状からなる密封部材1を、一対の板ガラス52・52の周縁部に沿って嵌装する場合、一対の板ガラス52・52は、一対の支持部12・12の突出部12a・12aによって、積層体50Aが厚み方向に挟持されて、板ガラス52・52が厚み方向へ位置決めされることとなり、板ガラス52・52の厚み方向への歪みが発生するのを防止できる。
このように、支持部12・12の突出部12a・12aは、密封部材1を一対の板ガラス52・52の周縁部に嵌装した状態で、積層体50Aを厚み方向に挟持する挟持部としての機能を有している。
【0036】
また、積層体50Aに対して密封部材1の嵌装作業が完了した後の状態においては、基部11の当接面11aに積層体50Aの端面52aが当接して、板ガラス52・52は板面方向へ位置決めされることとなる。これにより、板ガラス52・52の板面方向への位置ずれが発生するのを、防止することができる。
このように、基部11の当接面11aは、密封部材1を一対の板ガラス52・52の周縁部に嵌装した状態において、積層体50Aの端面52aと当接することにより、板ガラス52・52の板面方向への位置ずれを防止する当接部としての機能を有している。
【0037】
一方、各支持部12の先端部(基部11側とは反対側の端部)には、内側(対向方向側)且つ基部11側に向かって「レ」字状に屈曲した折返し部12bが形成される。
【0038】
このような形状からなる密封部材1を、積層される一対の板ガラス52・52の周縁部に沿って嵌装する場合、一対の板ガラス52・52の周縁部は、各々の折返し部12b・12bに沿って摺動しながら、一対の支持部12・12の間隙に挿入されることとなる。
これにより、密封部材1が積層体50Aに嵌設された状態において、折返し部12b・12bは、板ガラス52・52の板面に密着することとなり、基部11に形成される減圧通路11b内を外部からシールすることができ、減圧通路11bの気密性を高めることが可能となる。
このように、折返し部12b・12bは、密封部材1を一対の板ガラス52・52の周縁部に嵌装した状態で、減圧通路11bをシールするシール部としての機能を有している。
【0039】
以上のように、本実施形態における密封部材1は、積層体50Aの周縁部に沿って密封部材1が嵌装されることにより、樹脂製中間膜51の端面を覆って樹脂製中間膜51が介在する板ガラス52・52の間を塞ぐように、密封部材1のリブ部11cが積層体50Aの端面に当接し、且つ積層体50Aの周縁部は密封部材1によって挟持される。そのため、加熱・加圧処理時において、樹脂製中間膜51が軟化して減圧通路11bに流出し、合わせガラス50の周縁部に偏肉が生じることを抑えることができる。
従って、樹脂製中間膜51により減圧通路11b内が封鎖されず、減圧通路11bにより安定して真空引きすることができる。
【0040】
また、本実施形態における密封部材1は、各板ガラス52の周縁部において、板ガラス52の厚み方向への歪みや、板面方向(厚み方向との直交方向)への位置ずれなどを規制可能な断面形状(支持部12の突出部12a、および基部11の当接面11aを参照)を有している。
つまり、一対の板ガラス52・52の周縁部に沿って密封部材1が嵌装されることにより、各々の板ガラス52・52の積層姿勢は、堅固に保持される。
従って、本実施形態においては、例えば、各々の板ガラス52・52の積層姿勢を保持するための治具などを別途設けるような必要もなく、積層体50Aの周縁部に対して、板ガラス52・52の位置ずれを生じさせることなく容易に密封部材1を嵌装させることができる。
【0041】
また、本実施形態における密封部材1は、一対の板ガラス52・52の周縁部に沿って嵌装されることにより、内周部の気密性を確保可能な断面形状(支持部12の折返し部12bを参照)を有している。
従って、一対の板ガラス52・52の周縁部に密封部材1が嵌装された後、例えば、粘着テープなどを用いて、板ガラス52と密封部材1との当接部を封着する必要もなく、積層体50Aの周縁部(より具体的には、一対の板ガラス52・52の間隙)を、容易に密閉することができる。
特に、密封部材1においては、内周部の気密性を確保するためのシール部として折返し部12bを形成しているが、それに加えて突出部12aも内周部の気密性を確保するためのシール部として作用するため、2重のシール部を備えていることとなり、減圧通路11bの気密性を確実に確保することが可能となっている。
【0042】
以上のことから、本実施形態における合わせガラスの製造方法においては、積層体50Aに対する密封部材1の嵌装作業、および密封作業の双方を容易に行うことができ、積層体50Aの真空引き作業の効率と密封信頼性との向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 密封部材
11a 当接面(当接部)
11b 減圧通路
11c リブ部
12a 突出部(挟持部)
12b 折返し部(シール部)
50 合わせガラス
50A 積層体
51 樹脂製中間膜
52 板ガラス
53 積層界面
54 当接界面
図1
図2
図3