特許第6406260号(P6406260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6406260形状測定装置の校正方法および形状測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406260
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】形状測定装置の校正方法および形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20181004BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   G01B11/24 D
   G01B9/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-537609(P2015-537609)
(86)(22)【出願日】2014年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2014071709
(87)【国際公開番号】WO2015040995
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-192575(P2013-192575)
(32)【優先日】2013年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】石田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】曽和 誠司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊一郎
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−002726(JP,A)
【文献】 特開2004−045231(JP,A)
【文献】 特開2012−242085(JP,A)
【文献】 特開平11−160038(JP,A)
【文献】 特開平11−281306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01B 9/00 − 9/10
G01B 21/00 − 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1軸方向に移動するステージに載置した被測定物の形状を測定するために、前記ステージの移動方向に沿って対向して配置された2つの干渉計を有する形状測定装置の校正方法であって、
前記ステージに載置された平行平板を前記2つの干渉計の間に配置して前記2つの干渉計の検出軸線の相対傾角を検出する工程と、
異なる径の複数の基準球を用いて、前記干渉計の検出軸線のずれ量と、前記干渉計の検出軸線に対する前記ステージ移動軸のチルト角とを含む情報を取得し、前記情報から、前記ずれ量と前記チルト角とを算出する工程と、を有することを特徴とする形状測定装置の校正方法。
【請求項2】
算出された前記ずれ量と前記チルト角と検出された前記2つの干渉計の検出軸線の相対傾角に基づいて、前記ステージと前記2つの干渉計とを位置決めする工程を有することを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項3】
算出された前記ずれ量と前記チルト角と検出された前記2つの干渉計の検出軸線の相対傾角に基づいて、前記ステージと前記2つの干渉計との位置関係を補正する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項4】
前記複数の基準球は、互いに異なる径の3つの球であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項5】
1軸方向に移動するステージに載置した被測定物の形状を測定するために、前記ステージの移動方向に沿って対向して配置された2つの干渉計を有し、請求項1〜のいずれかの校正方法により校正されてなることを特徴とする形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光学素子の形状等を測定できる形状測定装置の校正方法および形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に光ピックアップ装置や撮像装置等に用いられる光学素子は、プラスチックやガラスを成形することによって形成されるが、高精度であることが要求されるため、成形された光学素子の形状測定を行うことがしばしば行われる。
【0003】
特許文献1には、XYZ軸方向に可動できる測定センサを上下に配置した3次元測定機において、任意に配置された3つの球を上下2つのセンサで測定し,この2つのセンサの位置関係を求めることが開示されている。しかるに、特許文献1に開示された3次元測定機は,構成が大がかりなものであり、より簡素な形状測定装置が望まれている。又、特許文献1で使用される3つの球は、外径を等しくすることが要求されているためコストがかかる。更に配置された3つの球を測定するためにXYZの3軸が必要であり、比較的安価な1軸の厚さ測定機などを使用することができないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−160038号公報
【特許文献2】特開平11−281306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献2には、曲率半径が異なる2つの基準球面の形状測定を行い,一方の基準球面の形状データを用いて行う直角度補正値の推定と,他方の基準球面の形状データを用いて行う接触子補正値の推定を繰り返す技術が開示されている。しかるに、特許文献2の形状測定によれば、形状データ取得のため測定に時間が掛かることや,複数軸の直交度の分離が複雑になるなどの問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、より簡素な形状測定装置を、簡便な方法で校正することができる形状測定装置の校正方法及びそれにより校正された形状測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した形状測定装置の校正方法は、1軸方向に移動するステージに載置した被測定物の形状を測定するために、前記ステージの移動方向に沿って対向して配置された2つの干渉計を有する形状測定装置の校正方法であって、
前記ステージに載置された平行平板を前記2つの干渉計の間に配置して前記2つの干渉計の検出軸線の相対傾角を検出する工程と、
異なる径の複数の基準球を用いて、前記干渉計の検出軸線のずれ量と、前記干渉計の検出軸線に対する前記ステージ移動軸のチルト角とを含む情報を取得し、前記情報から、前記ずれ量と前記チルト角とを算出する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この形状測定装置の校正方法によれば、複数の基準球の測定を行って、その頂点位置をそれぞれ検出することにより、前記干渉計の検出軸線のずれ量と、前記干渉計の検出軸線に対する前記ステージ移動軸のチルト角とを含む情報を取得し、前記情報から、前記干渉計の検出軸線のずれ量と、前記干渉計の検出軸線に対する前記ステージ移動軸のチルト角を容易に分離できる。ここで、チルトについては、その前工程で、前記2つの干渉計の検出軸線の相対傾角を検出する(例えば前記干渉計の検出軸線を平行にすれば、相対傾角は0として検出される)ことにより、検出軸線同士のチルトの影響を除去することで、前記干渉計の検出軸線に対する前記ステージ移動軸のチルトのみが残るようにできるため、前記情報にノイズが含まれず,前記ステージ移動軸のチルト角を高精度に求めることができるから、形状測定装置の校正や補正の際の補正値として利用することができる。
【0009】
本形状測定装置は、1軸方向に移動するステージに載置した被測定物の形状を測定するために、前記ステージの移動方向に沿って対向して配置された2つの干渉計を有し、上述の校正方法により校正されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡素な形状測定装置を、簡便な方法で校正することができる形状測定装置の校正方法及びそれにより校正された形状測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の形状測定装置に用いる干渉計10の一例を示す模式図である。
図2】干渉計の検出軸線を平行にする工程を示す図である。
図3】基準球を測定する状態を示す図である。
図4】基準球の干渉縞の例を示す図である。
図5】(a)は、XZ座標系における直線X=aZ+bを示す図であり、(b)は、YZ座標系における直線Y=cZ+dを示す図である。
図6】校正された形状測定装置で光学素子の形状を測定する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる実施形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲は以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態の形状測定装置に用いる干渉計10の一例を示す模式図である。干渉計10は、マイケルソン型干渉計であるが、このタイプに限られることはない。光源11から出射された光束は、フィルター12を通過し、ビームスプリッタ13で反射されて、被測定物(ここでは球)OBJ側に向かい、対物レンズ14を通過し,ビームスプリッタ15に入射して分岐される。ビームスプリッタ15を通過した一部の光束は、被測定物OBJに入射し、残りの光束はビームスプリッタ15で反射して,光路長が既知であるミラー16に入射する。
【0014】
被測定物OBJからの反射光束と、ミラー16からの反射光束は、再びビームスプリッタ15で結合され、対物レンズ14、ビームスプリッタ13を通過し、CCDカメラ17で干渉画像が検出される。尚、対物レンズ14,ビームスプリッタ15,ミラー16は、アクチュエータ18により一体的に移動可能となっている。対物レンズ14及びビームスプリッタ15の光軸が、検出軸線となる。
【0015】
次に、形状測定装置の校正方法を、図2、3を参照して説明する。図2、3において、20は、不図示の駆動手段によりZ軸方向(ここでは上下方向に対して傾いているものとする)に移動可能なステージである。
【0016】
まず、干渉計10の検出軸線を平行にする工程について説明する。図2に示すように、干渉計10を互いに対向するように、上下に配置する。上方の干渉計の検出軸線をAX1とし、下方の干渉計の検出軸線をAX2とする。次に、ステージ20に取り付けた平行平板21を、2つの干渉計10の間に配置する。上方干渉計10のCCDカメラ17により撮像された画像が干渉縞を持つ場合、実線で示すように、その検出軸線AX1は平行平板21の表裏面に対して傾いていることがわかる。そこで、干渉縞が検出されなくなるまで、点線で示すように干渉計10をチルトさせれば、検出軸線AX1は平行平板21の表裏面に対して垂直となる。そのほか得られた干渉縞から算出されるチルト量を補正値として使用しても良い。下方の干渉計10についても同様である。以上により、平行平板21の表裏面が平行であれば検出軸線AX1,AX2は互いに平行になる、または干渉縞からの算出により検出軸線AX1とAX2とのチルト量(相対傾角という)は判明する。相対傾角が分かれば、検出軸線AX1とAX2が必ずしも平行でなくても算出時に補正できる。但し、検出軸線AX1,AX2のずれ量と、検出軸線AX1,AX2に対するステージ20移動軸(チルト角)は不明のままである。
【0017】
次に、異なる径の複数の基準球を用いて、干渉計10の検出軸線AX1,AX2のずれ量と、干渉計10の検出軸線AX1,AX2に対するステージ20移動軸のチルト角とを含む情報を取得し、この情報から、ずれ量とチルト角とを算出する工程について説明する。まず、図3(a)に示すように、直径R1を持つ基準球31をステージ20に載置して、基準球31の最も低い位置(頂点)が、下方の干渉計10の軸線AX2上に位置(Pとする)するようにセットする。かかる状態は、図4に示すような輪帯状の干渉縞の中心が、下方の干渉計10のCCDカメラ17の中心に来ることで検出できる。
【0018】
その後、ステージ20をZ軸方向に移動させて、基準球31を上方の干渉計10のピントが合う範囲に移動させるが、Z軸方向は上下方向に対して傾いているので、基準球31は、上方(検出軸線AX1の方向)に移動するとともに検出軸線AX1に交差する方向へも移動する。このとき、図4に示すような輪帯状の干渉縞の中心と、下方の干渉計10のCCDカメラ17の中心Pとのx方向のずれ量x1と、y方向のずれ量y1と、ステージ20のZ軸方向の移動量z1とが検出される。
【0019】
次いで、図3(b)に示すように、直径R1より小さい直径R2を持つ基準球32をステージ20に載置して、基準球32の最も低い位置が、下方の干渉計10の軸線AX2上に位置するようにする。
【0020】
その後、ステージ20をZ軸方向に移動させて、基準球32を上方の干渉計10のピントが合う範囲に移動させる。このとき、図4に示すような輪帯状の干渉縞の中心と、下方の干渉計10のCCDカメラ17の中心Pとのx方向のずれ量x2と、y方向のずれ量y2と、ステージ20のZ軸方向の移動量z2とが検出される。
【0021】
次いで、図3(c)に示すように、直径R2より小さい直径R3を持つ基準球33をステージ20に載置して、基準球33の最も低い位置が、下方の干渉計10の軸線AX2上に位置するようにする。
【0022】
その後、ステージ20をZ軸方向に移動させて、基準球33を上方の干渉計10のピントが合う範囲に移動させる。このとき、図4に示すような輪帯状の干渉縞の中心と、下方の干渉計10のCCDカメラ17の中心Pとのx方向のずれ量x3と、y方向のずれ量y3と、Z軸方向の移動量z3とが検出される。このようにして求めた3次元座標(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x3,y3,z3)が、干渉計10の検出軸線AX1,AX2のずれ量と、干渉計10の検出軸線AX1,AX2に対するステージ20の移動軸のチルト角とを含む情報となる。これから、ずれ量とチルト角とを求める。
【0023】
以上の3次元座標(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x3,y3,z3)を、2次元の座標系にプロットし、各点を通過する直線を引く。まずxz座標系においては、図5(a)に示す直線X=aZ+bが得られる。ここで、Z=0である時、X=bとなるが、xz面に投影された状態で、このbが軸線AX1,AX2のずれ量であり、直線の傾きaはステージ20のチルト角をθxとするとa=sinθxの関係が成り立つ。更に、yz座標系においては、図5(b)に示す直線Y=cZ+dが得られる。ここで、Z=0である時、Y=dとなるが、yz面に投影された状態で、このdがy方向の軸線AX1,AX2のずれ量であり、直線の傾きcはステージ20のチルト角をθyとするとc=sinθyの関係が成り立つ。よって、a、b、c、dの値が0になるように、干渉計10を相互に調整し、又干渉計10の検出軸に対してステージ20の移動軸を調整する、または求められたずれ量やチルト角を使用して軸線AX1,AX2、ステージ20の移動軸の軸間関係を補正することで、形状測定装置の校正(ステージ20と2つの干渉計10とを位置決めする工程)が完了する。
【0024】
図6は、このようにして干渉計10のずれ量とチルト校正を行った形状測定装置で、ステージ20上に載置された光学素子であるレンズLの形状測定を行う状態を示す図である。検出軸線AX1,AX2が一致し、且つステージ20の移動方向(Z軸方向)が検出軸線AX1,AX2と一致しているので、高精度な測定を行える。尚、干渉計を用いた形状測定については知られているので、詳細な説明は省略する。更に、検出軸が校正された形状測定装置において上下検出軸により基準球の面頂を測定する事で、1軸方向のステージ移動量と基準球の直径から上下干渉計の検出点間隔を知る事ができる。光学素子の測定時に上記検出点間隔とステージ移動量から光学素子の厚みを算出する事ができる。
【0025】
以下、好ましい実施態様についてまとめて説明する。
【0026】
上記校正方法において、算出された前記ずれ量と前記チルト角と前記2つの干渉計の検出軸線の相対傾角に基づいて、前記ステージと前記2つの干渉計とを位置決めする工程を有することが好ましい。これにより、前記ずれ量と前記チルト角とを算出することができるから、これら及び相対傾角に基づいて、前記ステージと前記2つの干渉計とを精度良く位置決めすることができる。
【0027】
また、算出された前記ずれ量と前記チルト角と前記2つの干渉計の検出軸線の相対傾角に基づいて、前記ステージと前記2つの干渉計との位置関係を補正する工程を有することが好ましい。これにより、前記ずれ量と前記チルト角とを算出することができるから、これら及び相対傾角に基づいて、前記ステージと前記2つの干渉計との位置関係を精度良く補正することができる。
【0028】
また、前記複数の基準球は、互いに異なる径の3つの球であることが好ましい。これにより、前記複数の基準球を2つ用いる場合に比べて、校正の精度をより高めることができる。尚、4つ以上の基準球を用いることは任意である。
【0029】
また、前記ステージに載置された平行平板を前記2つの干渉計の間に配置して前記相対傾角の検出を行い、その検出結果に基づいて前記干渉計の検出軸線を位置決めすることが好ましい。かかる工程において、前記干渉計により観察される干渉縞を用いて、前記検出軸線の相対傾角を検出でき、それにより例えば前記干渉計の検出軸線を平行に出来る。
【0030】
本発明は、本明細書に記載の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施形態や技術思想から本分野の当業者にとって明らかである。例えば、基準球は最低2つであっても良く、4つ以上用いても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 干渉計
11 光源
12 フィルター
13 ビームスプリッタ
14 対物レンズ
15 ビームスプリッタ
16 ミラー
17 カメラ
18 アクチュエータ
20 ステージ
21 平行平板
31 基準球
32 基準球
33 基準球
AX1,AX2 検出軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6