特許第6406275号(P6406275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406275
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】車両用電池搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20181004BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B62D25/20 G
   B60K1/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-26787(P2016-26787)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-144825(P2017-144825A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 行矢
(72)【発明者】
【氏名】岸 理
(72)【発明者】
【氏名】玉野 雅和
(72)【発明者】
【氏名】下森 実
(72)【発明者】
【氏名】芝 義博
(72)【発明者】
【氏名】楠元 慧
【審査官】 中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−077896(JP,A)
【文献】 特開2013−067334(JP,A)
【文献】 特開平03−279086(JP,A)
【文献】 特開2007−153236(JP,A)
【文献】 特開平09−052534(JP,A)
【文献】 特開2014−125097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトネルサイドフレームと、このトネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、
前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、
前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け
前記回動許容支持手段が、前記トンネルサイドフレームの車幅方向外側壁部又はフロアフレームの車幅方向内側壁部に固定された1又は複数のヒンジ機構で構成されたことを特徴とする車両用電池搭載構造。
【請求項2】
車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトンネルサイドフレームと、このトンネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トンネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、
前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、
前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け、
前記回動許容支持手段が、前記トンネルサイドフレームの下部又はフロアフレームの下部に前記車両用電池を取り付けるための1又は複数の取付プレートであって、前記トンネルサイドフレームの下部又は前記フロアフレームの下部と前記車両用電池との間に前記回動部としての脆弱部を有する1又は複数の取付プレートで構成されたことを特徴とする車両用電池搭載構造。
【請求項3】
車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトンネルサイドフレームと、このトンネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トンネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、
前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、
前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け、
前記変換手段が、前記トンネルサイドフレームの車幅方向外側程上方に移行する車幅方向外側壁部又は前記フロアフレームの車幅方向外側程下方に移行する車幅方向内側壁部を有することを特徴とする車両用電池搭載構造。
【請求項4】
車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトンネルサイドフレームと、このトンネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トンネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、
前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、
前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け、
前記回動許容支持手段が前記トンネルサイドフレームの車幅方向外側壁部に固定されたヒンジ機構で構成され、前記変換手段が前記フロアフレームの車幅方向外側程下方に移行する車幅方向内側壁部を有することを特徴とする車両用電池搭載構造。
【請求項5】
前記変換手段が、前記トンネルサイドフレームの車幅方向外側程上方に移行する車幅方向外側壁部又は前記フロアフレームの車幅方向外側程下方に移行する車幅方向内側壁部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電池搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池搭載構造に関し、特にフロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、定格電圧を12Vとする車両用電池、所謂バッテリはエンジンルーム内に配置されている。
近年増加傾向にある電気自動車やハイブリッド車両は、大型のバッテリユニットを搭載している。また、回生制動させた回生発電によって充電する電源装置を備えた車両には、通常の鉛バッテリの他にリチウムイオンバッテリ等の補助バッテリが搭載されている。
このような大型のバッテリユニットや補助バッテリ(以下、単にバッテリと総称する)は、エンジンルーム内が高温になる上、スペース的にも厳しいことから、従来と同様にエンジンルーム内に搭載することは容易ではない。
そこで、レイアウト設計の観点から、エンジンルームの外部空間、例えばフロアパネルの下方を利用してバッテリを配設したバッテリ搭載構造が提案されている。
【0003】
特許文献1の車両のバッテリ搭載構造は、フロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向に沿って設けられたシートクロスメンバと、フロアパネルの車幅方向中央下方に取り付けたバッテリーパックと、このバッテリーパックの車幅方向外側に取り付けた電気温水ヒーターとを備え、シートクロスメンバに、バッテリーパックと電気温水ヒーターとの間に位置する車幅方向位置に弱部を設けている。
これにより、側突時、シートクロスメンバはバッテリーパックと電気温水ヒーターとの間に位置する車幅方向部位で折れ曲がることから、バッテリーパックが下方に移行し、電気温水ヒーターが上方に移行する。それ故、電気温水ヒーターの車室内側に向かう侵入方向をバッテリーパックから逸らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−226972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両のバッテリ搭載構造は、シートクロスメンバの折れ曲がり変形によってバッテリーパックを下方に移行させるため、バッテリーパックを下方に移行させる荷重が大きい場合、バッテリーパックをフロアストリンガ(フロアフレーム)に取り付けている取付ブラケットが破壊される可能性があり、その結果、バッテリーパックが車体から脱落する虞があることから、安全性の観点で問題がある。
【0006】
側突時におけるシートクロスメンバの折れ曲がり変形は、様々な衝突形態の影響を受けることから、その折れ曲がり方向を規定することは容易ではない。
また、シートクロスメンバによる折れ曲がり変形は、構造上、フロアフレームの車幅方向内方への変位に起因して生じるため、バッテリーパックがフロアフレームとトンネルサイドフレームとの間の床下のように狭いスペースに配置された場合には、フロアフレーム(又はトンネルサイドフレーム)とバッテリーパックとの干渉がバッテリーパックの下方への移動タイミングよりも早く発生するという虞もある。
【0007】
本発明の目的は、車両用電池の車体からの脱落を防止しつつ車両用電池の損傷を回避可能な車両用電池搭載構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の車両用電池搭載構造は、車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトネルサイドフレームと、このトネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け、前記回動許容支持手段が、前記トンネルサイドフレームの車幅方向外側壁部又はフロアフレームの車幅方向内側壁部に固定された1又は複数のヒンジ機構で構成されたことを特徴としている。
【0009】
この車両用電池搭載構造では、前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段を備えたため、フロアフレームによる車幅方向内方への変位と略同時期に車両用電池を下方変位させることができる。
また、前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段を備えたため、車両用電池を車体から脱落させることなく、車両用電池とフロアフレーム又はトンネルフレームとの干渉を回避することができる。また、車両用電池上の折れ曲がったフロアパネルにより車両用電池に大きな荷重が作用することを回避することができる。
【0010】
そして、車両用電池を車体に支持させた状態で、車両用電池を確実に下方に回動変位させることができる。
【0011】
請求項の発明は、車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトンネルサイドフレームと、このトンネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トンネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け、前記回動許容支持手段が、前記トネルサイドフレームの下部又はフロアフレームの下部に前記車両用電池を取り付けるための1又は複数の取付プレートであって、前記トネルサイドフレームの下部又は前記フロアフレームの下部と前記車両用電池との間に前記回動部としての脆弱部を有する1又は複数の取付プレートで構成されたことを特徴としている。
この構成によれば、前記段落[0009]に記載したのと同様の効果が得られる上、
簡単な構成で且つ車体重量を増加させることなく、車両用電池を下方に回動変位させることができる。
【0012】
請求項の発明は、車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトンネルサイドフレームと、このトンネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トンネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け、前記変換手段が、前記トネルサイドフレームの車幅方向外側程上方に移行する車幅方向外側壁部又は前記フロアフレームの車幅方向外側程下方に移行する車幅方向内側壁部を有することを特徴としている。
この構成によれば、前記段落[0009]に記載したのと同様の効果が得られる上、簡単な構成で水平方向の荷重を車両用電池を下方に変位させる鉛直方向の荷重に変換することができる。
【0013】
【0014】
請求項の発明は、車幅方向中央部分において車室側へ突出して前後方向に延びるトンネル部が形成されたフロアパネルと、前記トンネル部の車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するトンネルサイドフレームと、このトンネルサイドフレームの車幅方向外側且つ前記フロアパネルの下面側にフロアパネルと協働して前後方向に延びる閉断面を構成するフロアフレームと、前記トンネルサイドフレームとフロアフレームの間で且つ前記フロアパネルの下方に車両用電池を取り付けた車両用電池搭載構造において、前記車両用電池の車幅方向一端側に設けられ且つ前記フロアフレームを車幅方向内方へ変位させる荷重を前記車両用電池を下方に変位させる荷重に変換する変換手段と、前記車両用電池の車幅方向他端側に設けられ且つ車体前後方向に延びる回動部回りに前記車両用電池を回動可能に支持する回動許容支持手段とを設け、前記回動許容支持手段が前記トネルサイドフレームの車幅方向外側壁部に固定されたヒンジ機構で構成され、前記変換手段が前記フロアフレームの車幅方向外側程下方に移行する車幅方向内側壁部を有することを特徴としている。
この構成によれば、前記段落[0009]に記載したのと同様の効果が得られる上、ヒンジ機構の信頼性を確保しつつ車両用電池を下方に変位させることができる。
請求項5の発明は、請求項1又は2の発明において、前記変換手段が、前記トンネルサイドフレームの車幅方向外側程上方に移行する車幅方向外側壁部又は前記フロアフレームの車幅方向外側程下方に移行する車幅方向内側壁部を有することを特徴としている。
この構成によれば、簡単な構成で水平方向の荷重を車両用電池を下方に変位させる鉛直方向の荷重に変換することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用電池搭載構造によれば、側突時、車両用電池の車体からの脱落を防止しつつ車両用電池の損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る車両用電池搭載構造を備えた車両の右側下部車体の斜視図である。
図2】下部車体の底面図である。
図3】バッテリトレイを省略した図2相当図である。
図4】バッテリトレイとヒンジ機構と取付プレートの斜視図である。
図5】荷重伝達部材の斜視図である。
図6図2のVI−VI線断面図である。
図7】側突後の図6相当図である。
図8】実施例2に係る図6相当図である。
図9】側突後の図8相当図である。
図10】実施例3に係る図6相当図である。
図11】バッテリトレイとヒンジ機構の斜視図である。
図12】側突後の図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について図1図7に基づいて説明する。
図1図3図6に示すように、本実施例の車両Vは、車室の床面を構成する鋼板製の矩形状フロアパネル1と、このフロアパネル1の下面側にフロアパネル1と協働して前後に延びる閉断面を構成する左右1対のフロアフレーム2と、フロアパネル1の下面側にフロアパネル1と協働して前後に延びる閉断面を構成する左右1対のトンネルサイドフレーム3と、フロアパネル1の下方に車載電装品に対して供給する電力を蓄電可能なバッテリ4(車両用電池)と、バッテリ4と隣り合うフロアフレーム2を車幅方向内方へ変位させる荷重をバッテリ4を下方に変位させる荷重に変換する変換手段Tと、前後に延びる回動部回りにバッテリ4を回動可能に支持する回動許容支持手段S等を備えている。
以下、矢印F方向を前方、矢印L方向を左方、矢印U方向を上方として説明する。
【0019】
まず、フロアパネル1について説明する。
図1に示すように、フロアパネル1は、車幅方向中央部分に車室側に突出して前後に延びるように形成されたトンネル部11と、トンネル部11よりも右側部分に車室側に膨出した膨出部12とが形成されている。
このフロアパネル1は、トンネル部11を下方から部分的に覆う略矩形状の前側及び後側ブレース5,6と、フロアパネル1の上面側にフロアパネル1と協働して左右に延びる閉断面を構成する左右1対のフロアクロスメンバ7と、フロアパネル1の上面側にフロアパネル1と協働して前後に延びる閉断面を構成する左右1対のフロア上部フレーム8と、フロアクロスメンバ7の後方においてフロアパネル1の上面側にフロアパネル1と協働して左右に延びる閉断面を構成する左右1対の後側フロアクロスメンバ9等を備えている。
フロアパネル1は、ダッシュパネル(図示略)の傾斜部下端から後方へ略水平状に拡がるように形成され、左右両端部が前後に延びる左右1対のサイドシル10の車幅方向内側壁部の下端部分に夫々連結されている。
【0020】
図2図3に示すように、前側ブレース5は、フロアパネル1の前端側部分に対応したトンネル部11の左右両端位置を連結し、後側ブレース6は、フロアパネル1の中間部分に対応したトンネル部11の左右両端位置を連結している。これらブレース5,6は、フロアパネル1の振動抑制のために設けられた補強部材である。
1対のフロアクロスメンバ7は、トンネル部11を間に介して左右1対のサイドシル10の車幅方向内側壁部をトンネル部11に夫々連結している。これら1対のフロアクロスメンバ7は、断面略ハット状に形成され、前側ブレース5の後端近傍に対応する部位においてフロアパネル1の上面に前後両フランジ部が夫々接合されている。
1対のフロアクロスメンバ7の前後両縦壁部には、トンネル部11寄りの部位に後席シートの乗員用空調ダクト13を挿通可能な略矩形状の開口部7aが夫々形成されている。右側の開口部7aは、その一部又は全部が膨出部12の上方部位に対応するように配置されている。
【0021】
図1に示すように、1対のフロアクロスメンバ7の後方には、左右1対の後側フロアクロスメンバ9が設けられている。これら1対の後側フロアクロスメンバ9は、トンネル部11を間に介して左右1対のサイドシル10の車幅方向内側壁部をトンネル部11に夫々連結している。フロアクロスメンバ7と後側フロアクロスメンバ9は、左右の前席シートをスライドレールを介して支持している(何れも図示略)。
1対のフロア上部フレーム8は、断面略ハット状に形成され、フロアクロスメンバ7の前側壁部にその後端部が夫々接合されている。これら1対のフロア上部フレーム8は、前端部から後端部に亙ってフロアパネル1の上面に左右両フランジ部が夫々接合されている。
【0022】
膨出部12は、フロアパネル1の右半部において右側の後側フロアクロスメンバ9よりも前側位置で且つ右側のサイドシル10とトンネル部11の間に形成されている。
この膨出部12は、フロアパネル1の大半を占める一般面よりも高い高さ位置に略矩形状の平坦部を形成する上側折曲部と、この上側折曲部よりも下方に形成され且つ一般面から上方に向けて折れ曲がった下側折曲部とを備え、断面略台形状に突出形成されている。
図6に示すように、フロアクロスメンバ7が膨出部12の上側を横切るように形成され、上側折曲部と下側折曲部の左端側部分がトンネルサイドフレーム3の閉断面内に配設され、上側折曲部と下側折曲部の右端側部分がフロアフレーム2の閉断面内に配設されている。
【0023】
次に、1対のフロアフレーム2について説明する。
図2図3図6に示すように、1対のフロアフレーム2は、前端側部分においてトンネルサイドフレーム3とサイドシル10との中間位置に夫々配置され、後側程車幅方向外側に移行するように夫々形成されている。
これら1対のフロアフレーム2は、縦断面略台形状に形成され、車幅方向外側の外側壁部2aと、車幅方向内側の内側壁部2bと、外側壁部2aと内側壁部2bの下端部を連結する下側壁部2cとを備え、外側壁部2aと内側壁部2bの上端部に設けられた左右両フランジ部がフロアパネル1の下面に夫々接合されている。
図6に示すように、右側フロアフレーム2の内側壁部2bは、バッテリ4の右側壁部に対向するように配設され、少なくともバッテリ4の前端部から後端部に亙る前後領域において、左側(車幅方向内側)程高い高さ位置になるように形成されている。
右側フロアフレーム2の内側壁部2bは、変換手段Tに相当する。
【0024】
次に、1対のトンネルサイドフレーム3について説明する。
1対のトンネルサイドフレーム3は、車幅方向外側の外側壁部3aと、車幅方向内側の内側壁部3bと、外側壁部3aと内側壁部3bの下端部を連結する下側壁部3cとを備え、外側壁部3aと内側壁部3bの上端部に設けられた左右両フランジ部がフロアパネル1の下面に夫々接合されている。
トンネルサイドフレーム3の下側壁部3cは、フロアフレーム2の下側壁部2cよりも高い高さ位置になるように配設されている。
【0025】
図6に示すように、右側トンネルサイドフレーム3の外側壁部3aは、バッテリ4の左側壁部に対向するように配設され、ヒンジ機構20の軸支部21が前後に並ぶように固着されている。前後1対のヒンジ機構20は、前後に延びる回動軸22(回動部)と、この回動軸22を軸支する軸支部21と、回動軸22回りに回動可能で且つバッテリ4と連動して一体運動可能な回動部23とを夫々備えている(図4参照)。
これらヒンジ機構20は、回動許容支持手段Sに相当する。
【0026】
バッテリ4は、略直方体状ユニットに形成され、膨出部12の下方にフロアパネル1から僅かに離隔した状態で配設されている。このバッテリ4は、充放電可能な複数(例えば8つ)のバッテリモジュール(二次電池)を備え、バッテリトレイ14に固定されている。
バッテリトレイ14をヒンジ機構20及び後述する左右1対の取付プレート15A,15Bを介して車体に連結することによって、バッテリ4を車体に取り付けている。
【0027】
次に、バッテリトレイ14について説明する。
バッテリトレイ14は、バッテリ4及び後述する荷重伝達部材16を下方から支持すると共に、これらを車体に対して取付可能に構成されている。
図4に示すように、バッテリトレイ14は、鋼板によって成形され、バッテリ4及び荷重伝達部材16を支持する本体部14aと、車体側に取り付けるための取付部14bと、回動部23等を一体的に備えている。
【0028】
本体部14aは、トンネルサイドフレーム3の下側壁部3cと略同じ高さ位置になるように配設されている。この本体部14aには、バッテリ4をボルト(図示略)を介して固着するための複数のボルト穴b1と、荷重伝達部材16をボルト(図示略)を介してバッテリトレイ14に固着するための複数のボルト穴b2と、取付プレート15A,15Bをボルトを介してバッテリトレイ14に夫々連結するための複数のボルト穴b3が形成されている。
複数のボルト穴b1は、本体部21aの左端側部分及び右端側部分に夫々前後に整列するように4つづつ、計8つ設けられている。複数のボルト穴b2は、本体部21aの右端側部分の支持ボルト穴b1よりも右側位置において本体部21aの後半部に前後1対設けられ、複数のボルト穴b3は、前後方向中間部に左右1対設けられている。
【0029】
取付部14bは、本体部21aの後端部から略水平状に後側に張り出すように形成され、バッテリトレイ14をボルト(図示略)を介してフロアパネル1に固着するための複数のボルト穴b4を有している。複数のボルト穴b4は、左右1対設けられている。
図4に示すように、前後1対の回動部23は、本体部15aの左端部から上方に延びるように形成され、挿通された回動軸22に対して回動自在に夫々構成されている。
前側の回動部23は、前端位置のボルト穴b1よりも前方に配置され、後側の回動部23は、後端位置のボルト穴b1よりも後方に配置されている。
【0030】
次に、1対の取付プレート15A,15Bについて説明する。
1対の取付プレート15A,15Bは、鋼板によって夫々プレス成形されている。
図4に示すように、左側の取付プレート15Aは、左右両端部にボルト穴が形成され、その中間部分に前後に延びる上方に突出した山折れノッチ部が形成され、左右方向の圧縮荷重が作用したとき、山折れ変形可能に構成されている。
左側ボルト穴は、トンネルサイドフレーム3の下側壁部3cに締結固定され、右側ボルト穴は、バッテリトレイ14の左側ボルト穴b3に締結固定されている。
この取付プレート15Aは、回動許容支持手段Sに相当する。
【0031】
右側の取付プレート15Bは、左右両端部にボルト穴が形成され、その中間部分に前後に延びる上方に突出した山折れノッチ部とこのノッチ部よりも左側において下方に突出した谷折れノッチ部とが形成され、左右方向の圧縮荷重が作用したとき、略Z字状に変形可能に構成されている。左側ボルト穴は、バッテリトレイ14の右側ボルト穴b3に締結固定され、右側ボルト穴は、フロアフレーム2の下側壁部2cに締結固定されている。
【0032】
次に、荷重伝達部材16について説明する。
後側程車幅方向外側に移行するフロアフレーム2の車幅方向内側に直方体状のバッテリ4を配置した場合、バッテリ4とフロアフレーム2との離隔距離が前後方向で異なり、側突時、側突荷重がバッテリ4に局所的に作用する虞がある。
図3に示すように、荷重伝達部材16は、フロアパネル1の下方において、フロアフレーム2とバッテリ4との間に介装され、車両Vの側突時、バッテリ4に局所的に作用する側突荷重を回避可能に構成されている。この荷重伝達部材16は、衝撃吸収能率に優れた金属材料、例えばアルミ合金材料で一体的に構成されている。
【0033】
図5に示すように、荷重伝達部材16は、前後方向に対して略直交して左右に延びる前側壁部16aと、この前側壁部16aに略平行な後側壁部16bと、フロアフレーム2の内側壁部2bに沿って延びる右側壁部16cと、バッテリ4の右側壁部に沿って延びる左側壁部16dと、右側壁部16cと左側壁部16dを連結する第1〜第4リブ部16e〜16h等を備えている。
第1リブ部16e及び第3リブ部16gの左側下端部分には、ねじ穴を有する取付部16i,16jが夫々形成されている。これら取付部16i,16jは、バッテリトレイ14の1対のボルト穴b2にボルトによって締結固定されている。
【0034】
次に、上記車両用電池搭載構造の作用・効果について説明する。
図7に示すように、左方への衝突荷重が作用する右側突時、フロアフレーム2が左方に変位した場合、フロアフレーム2とトンネルサイドフレーム3との相対距離が短縮する。
これにより、フロアフレーム2の内側壁部2bがバッテリ4の右側上端部を摺接させながら下方に誘導し、右側フロアクロスメンバ7が谷折れ変形してバッテリ4の上側壁部を下方に押圧している。
【0035】
バッテリ4(バッテリトレイ14)は、ヒンジ機構20を介してトンネルサイドフレーム3の外側壁部3aに支持され、取付プレート15Aを介してトンネルサイドフレーム3の下側壁部3cに支持されているため、トンネルサイドフレーム3とバッテリ4との連結関係を維持した状態で、バッテリ4は回動軸22及び山折れノッチ部を回動部として反時計回りに回動する。しかも、バッテリ4は、取付プレート15Bを介してフロアフレーム2の下側壁部2cに支持されているため、フロアフレーム2とバッテリ4との連結関係を維持した状態で、フロアフレーム2とトンネルサイドフレーム3との離隔距離を短縮させることができる。
【0036】
この構成によれば、バッテリ4の車幅方向外側に設けられ且つフロアフレーム2を車幅方向内方へ変位させる荷重をバッテリ4を下方に変位させる荷重に変換する変換手段T(フロアフレーム2の内側壁部2b)を備えたため、フロアフレーム2による車幅方向内方への変位と略同時期にバッテリ4を下方変位させることができる。また、バッテリ4の車幅方向内側に設けられ且つ前後に延びる回動部回りにバッテリ4を回動可能に支持する回動許容支持手段S(ヒンジ機構20、取付プレート15A)を備えたため、バッテリ4を車体から脱落させることなく、バッテリ4とトンネルフレーム3との干渉を回避することができる。また、バッテリ4上の折れ曲がったフロアパネル1によりバッテリ4に大きな荷重が作用することを回避することができる。
【0037】
回動許容支持手段Sが、トネルサイドフレーム3の外側壁部3aに固定された複数のヒンジ機構20で構成されたため、バッテリ4を車体に支持させた状態で、バッテリ4を確実に下方に回動変位させることができる。
【0038】
回動許容支持手段Sが、トンネルサイドフレーム3の下側壁部3cにバッテリ4を取り付けるための取付プレート15Aであって、トネルサイドフレーム3の下側壁部3cとバッテリ4との間に回動部としてのノッチ部を有する取付プレート15Aで構成されたため、簡単な構成で且つ車体重量を増加させることなく、バッテリ4を下方に回動変位させることができる。
【0039】
変換手段Tが、フロアフレーム2の車幅方向外側程下方に移行する内側壁部2bを有するため、簡単な構成で水平方向の荷重をバッテリ4を下方に変位させる鉛直方向の荷重に変換することができる。
【0040】
回動許容支持手段Sがトネルサイドフレーム3の外側壁部3aに固定されたヒンジ機構20で構成され、変換手段Tがフロアフレーム2の車幅方向外側程下方に移行する内側壁部2bを有するため、回動軸22の変形を生じることなく、ヒンジ機構20の信頼性を確保しつつバッテリ4を下方に変位させることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2に係る車両用電池搭載構造ついて図8図9に基づいて説明する。
尚、実施例1と同様の部材には、同じ符号を付している。
実施例1では、回動許容支持手段Sをヒンジ機構20と取付プレート15Aで構成し、変換手段Tをフロアフレーム2の内側壁部2bで構成したのに対し、実施例2では、ヒンジ機構20を省略し、回動許容支持手段SAを取付プレート15Dで構成し、変換手段TAをトネルサイドフレーム3の外側壁部3dとフロアクロスメンバ7で構成している。
【0042】
図8に示すように、1対のフロアフレーム2Aは、断面略矩形状に形成されている。
これらフロアフレーム2Aは、車幅方向外側の外側壁部2aと、車幅方向内側の内側壁部2dと、外側壁部2aと内側壁部2dの下端部を連結する下側壁部2cとを備え、外側壁部2aと内側壁部2dの上端部に設けられた左右両フランジ部がフロアパネル1の下面に夫々接合されている。
【0043】
1対のトンネルサイドフレーム3Aは、車幅方向外側の外側壁部3dと、車幅方向内側の内側壁部3bと、外側壁部3dと内側壁部3bの下端部を連結する下側壁部3cとを備え、外側壁部3dと内側壁部3bの上端部に設けられた左右両フランジ部がフロアパネル1の下面に夫々接合されている。右側トンネルサイドフレーム3Aの外側壁部3dは、バッテリ4の左側壁部に対向するように配設され、少なくともバッテリ4の前端部から後端部に亙る前後領域において、左側(車幅方向内側)程低い高さ位置になるように縦断面略台形状に形成されている。
【0044】
左側の取付プレート15Cは、左右両端部にボルト穴が形成され、その中間部分に前後に延びる下方に突出した谷折れノッチ部とこのノッチ部よりも左側において上方に突出した山折れノッチ部とが形成され、左右方向の圧縮荷重が作用したとき、略Z字状に変形可能に構成されている。右側の取付プレート15Dは、左右両端部にボルト穴が形成され、その中間部分に前後に延びる上方に突出した山折れノッチ部が形成され、左右方向の圧縮荷重が作用したとき、山折れ変形可能に構成されている。
【0045】
図9に示すように、左方への衝突荷重が作用する右側突時、フロアフレーム2Aが左方に変位した場合、フロアフレーム2Aとトンネルサイドフレーム3Aとの相対距離が短縮する。これにより、変換手段TAとしてのトンネルサイドフレーム3Aの内側壁部3dがバッテリ4の左側上端部を摺接させながら下方に誘導し、変換手段TAとしての右側フロアクロスメンバ7が谷折れ変形してバッテリ4の上側壁部を下方に押圧している。
【0046】
バッテリ4は、回動許容支持手段SAとしての取付プレート15Dを介してフロアフレーム2Aの下側壁部2cに支持されているため、フロアフレーム2Aとバッテリ4との連結関係を維持した状態で、バッテリ4は山折れノッチ部を回動部として時計回りに回動する。しかも、バッテリ4は、取付プレート15Cを介してトンネルサイドフレーム3Aの下側壁部3cに支持されているため、トンネルサイドフレーム3Aとバッテリ4との連結関係を維持した状態で、フロアフレーム2Aとトンネルサイドフレーム3Aとの離隔距離を短縮させることができる。
【実施例3】
【0047】
次に、実施例3に係る車両用電池搭載構造ついて図10図12に基づいて説明する。
尚、実施例1,2と同様の部材には、同じ符号を付している。
実施例1では、ヒンジ機構20をトンネルサイドフレーム3側位置に配設したのに対し、実施例2では、ヒンジ機構20Aをフロアフレーム2A側位置に配設している。
【0048】
図10に示すように、1対のフロアフレーム2A及び1対のトンネルサイドフレーム3は、断面略矩形状に夫々形成されている。
右側フロアフレーム2Aの内側壁部2dは、バッテリ4の右側壁部に対向するように配設され、ヒンジ機構20Aの軸受部21Aが前後に並ぶように固着されている。前後1対のヒンジ機構20Aは、前後に延びる回動軸22A(回動部)と、この回動軸22Aを軸支する軸支部21Aと、回動軸22Aと一体形成された回動部23Aとを夫々備えている。軸受部21Aは、左右径が上下径よりも長くなるように設定された長穴21aが形成され、バッテリ4とフロアフレーム2Aとの左右方向の相対距離を変更可能に構成されている。
側突前の状態において、回動軸22Aは、長穴21aの車幅方向内側端部に配設されている。
これらヒンジ機構20Aは、回動許容支持手段SBに相当する。
【0049】
図11に示すように、バッテリトレイ14Aは、バッテリ4及び荷重伝達部材16を支持する本体部14aと、車体側に取り付けるための取付部14bと、回動部23A等を一体的に備えている。前側の回動部23Aは、右側前端位置のボルト穴b1よりも前方に配置され、後側の回動部23Aは、右側後端位置のボルト穴b1よりも後方に配置されている。このバッテリトレイ14Aには、取付プレート15B,15Cをボルトを介してバッテリトレイ14に連結するための複数のボルト穴b3が形成されている。
【0050】
図12に示すように、左方への衝突荷重が作用する右側突時、フロアフレーム2Aが左方に変位した場合、軸受部21Aの長穴21aが回動軸22Aの移動を許容して、フロアフレーム2Aとトンネルサイドフレーム3との相対距離を短縮している。
これにより、変換手段TBとしての右側フロアクロスメンバ7が谷折れ変形してバッテリ4の上側壁部を下方に押圧している。
【0051】
バッテリ4は、ヒンジ機構20Aを介してフロアフレーム2Aの内側壁部2dに支持され、取付プレート15Bを介してフロアフレーム2Aの下側壁部2cに支持されているため、フロアフレーム2Aとバッテリ4との連結関係を維持した状態で、バッテリ4は回動軸22Aを回動部として時計回りに回動する。しかも、バッテリ4は、取付プレート15Cを介してトンネルサイドフレーム3の下側壁部3cに支持されているため、トンネルサイドフレーム3とバッテリ4との連結関係を維持した状態で、フロアフレーム2Aとトンネルサイドフレーム3との離隔距離を短縮させることができる。
【0052】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、充放電可能なバッテリであれば良く、通常の鉛バッテリ、電気自動車の駆動用バッテリ、ハイブリッド車両用バッテリ、回生発電によって充電する電源装置を備えた車両の補助バッテリ等何れのバッテリの搭載にも適用可能である。
【0053】
2〕前記実施形態においては、膨出部がフロアパネルの右半部に形成された例を説明したが、フロアパネルの左半部に形成しても良く、右半部と左半部の双方に形成しても良い。
また、バッテリの高さ位置を確保できる場合、膨出部を省略しても良い。
【0054】
3〕前記実施形態においては、後方程車幅方向外側に移行する左右1対のフロアフレームを備えた車両の例を説明したが、前後方向に平行な左右1対のフロアフレームを備えた車両に適用しても良い。この場合、荷重伝達部材を省略することができる。
【0055】
4〕前記実施形態1,3においては、1つのバッテリに2つのヒンジ機構と左右1対の取付プレートを設けた例を説明したが、ヒンジ機構は1でも良く、3以上であっても良い。
また、取付プレートは、左右2対以上であっても良く、左右で取付プレートの数を変えても良い。
【0056】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0057】
V 車両
T,TA,TB 変換手段
S,SA,SB 回動許容支持手段
1 フロアパネル
2,2A フロアフレーム
2b 内側壁部
3,3A トンネルサイドフレーム
3d 外側壁部
4 バッテリ
7 フロアクロスメンバ
7a 開口部
11 トンネル部
13 空調ダクト
15A,15D 取付プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12