特許第6406279号(P6406279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406279
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】自動車の制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20181004BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20181004BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B60T8/00 Z
   B60T7/02 B
   B60T7/12 E
   B60T8/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-30714(P2016-30714)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-149172(P2017-149172A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】大塚 孝江
(72)【発明者】
【氏名】松元 公平
(72)【発明者】
【氏名】立石 啓太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 史学
(72)【発明者】
【氏名】大西 広泰
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−002225(JP,A)
【文献】 特開2011−034437(JP,A)
【文献】 特開平11−189141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/00
B60T 7/02
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席側に設けられた主ブレーキペダルと、該主ブレーキペダルの操作により制動力を調節する制動力調整装置と、助手席側に設けられ、前記主ブレーキペダルの操作とは独立して該制動力調整装置制御可能に前記制動力調整装置に接続された補助ブレーキペダルとを備えた自動車の制動装置において、
運転者が車両を減速させる車両減速意図を有しているか否かを、車速、車両加速度、及び車両の進行方向のうち少なくとも1つ、シフトレバーポジション、アクセル開度、及び主ブレーキペダルの操作量のうち少なくとも1つとに基づいて判定する判定手段
該判定手段の判定結果に応じて前記補助ブレーキペダルの制動特性を変更する補助制動特性変更手段を備えた
自動車の制動装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記主ブレーキペダルの操作量が0より大きい状態、シフトレバーポジションが示す方向とは異なる方向に車両が進行する状態、又は車両が所定速度以下の下で減速しながら走行しつつアクセル開度量が減少或いはアクセル開度が0以下の状態である場合に車両減速意図が有りと判定し、
前記補助制動特性変更手段は、前記判定手段が前記車両減速意図有りと判定したとき、前記車両減速意図無しと判定したときよりも前記補助制動特性を制動力が強化される方向に変更する構成とした
請求項1に記載の自動車の制動装置。
【請求項3】
前記判定手段は、アクセル開度が0より大きい状態、車速が所定値以上の状態、又は車両が加速している状態である場合に車両減速意図が無しと判定し、
前記補助制動特性変更手段は、前記判定手段が前記車両減速意図無しと判定したとき、車両減速意図有りと判定したときよりも前記補助制動特性を制動力を緩和する方向に変更する構成とした
請求項1、又は2に記載の自動車の制動装置。
【請求項4】
前記補助制動特性変更手段は、前記補助ブレーキペダルの操作量が所定値以上であるとき、前記補助制動特性を、前記補助ブレーキペダルの操作量が所定値未満のときよりも制動力を強化する方向に変更する構成とした
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の自動車の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転席側の主ブレーキペダルと助手席側の補助ブレーキペダルとを備えた自動車の制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の補助ブレーキペダルを備えた自動車の制動装置としては、主ブレーキペダル側と補助ブレーキペダル側とをワイヤやリンク等で連結して、補助ブレーキペダル側の踏力を主ブレーキペダル側に伝達可能に構成したものが知られている。
【0003】
この種の自動車の制動装置は、例えば、運転者によるブレーキ操作が遅れたり、制動力が不足する場合に、補助ブレーキペダルを踏み込むことで主ブレーキペダルを作動させ、運転者のブレーキ操作を補助するものであった。
【0004】
しかし、補助ブレーキペダルの踏み込みに応じて主ブレーキペダルの踏力に対する反力が変動するため、補助ブレーキによって主ブレーキペダルの操作を補助しているときと、していないときとで運転者による主ブレーキペダルの操作感にずれが生じ、運転者が違和感を持つおそれがあった。
【0005】
ところで、自動車の制動装置には、主ブレーキペダルに接続されたマスタシリンダと各車輪のホイールシリンダとの間にハイドロ/ユニット(H/U)を介在させ、該ハイドロ/ユニットに備えた制動力調整装置(ハイドロユニットコントローラ)によって、主ブレーキペダルの操作に拘わらず、主ブレーキペダルとは独立して車輪に対して制動力を制御できるようにしたものが知られている。
【0006】
このような制動力調整装置により、近年では例えば、車両に設けられた各種センサから入力される信号に基づいて、回生協調ブレーキ制御システム、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(Antilock Brake System)、加速時などの車輪空転を防ぐTCS(Traction Control System)、車が横滑りなどの不安定な状態になることを防ぐESC(Electric Stability Control System)といったシステムが達成されている。
【0007】
そこで、下記特許文献1に例示されるように、補助ブレーキペダルを、上述したリンクやワイヤ等を用いて主ブレーキペダルと連結せずに、ハイドロ/ユニット(H/U)側に主ブレーキペダルを介さずに接続することが考えられる。
【0008】
特許文献1の車両用ブレーキシステムは、運転者側ブレーキペダル(主ブレーキペダル)の操作を介さずに助手席側ブレーキペダル(補助ブレーキペダル)の操作によって直接、制動力を作用させることができるものである。
【0009】
さらに特許文献1の車両用ブレーキシステムは、主ブレーキペダル側に対する補助ブレーキペダル側の踏力に基づく制動力の影響度をあらわす最終アシスト係数を自動又は手動で変更し、非緊急時の補助ブレーキ操作によるサポート時に運転者に違和感や不満を与える急制動(所謂かっくんブレーキ)を防止することができるものである。
【0010】
しかしながら補助ブレーキは、運転者による主ブレーキの操作の様子を見てから踏み込まれることが多いことから補助ブレーキペダルを踏み込むタイミングが遅れがちとなる。しかも、例えば、車両が坂道の途中で停車している状態から発進時に進行方向と逆方向の下り方向へ運転者の意に反して動き出した、所謂坂道でのずり動きの状況で運転者による主ブレーキペダルの制動操作が遅れている場合等においては、補助ブレーキペダルによる補助制動特性を、助手席側の乗員の意図により素早く強力に行う必要があるが特許文献1の車両用ブレーキシステムの場合、助手席側の乗員の意図に沿った補助ブレーキペダルによる十分な制動サポートを素早く行うという思想については見受けられず、さらなる検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−298242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこでこの発明は、主ブレーキの制動特性に対する補助ブレーキの制動特性を、運転者に不快な補助急制動(所謂かっくんブレーキ)の防止と、これと相反する、坂道でのずり動きなどの状況において素早い補助制動を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の自動車の制動装置は、運転席側に設けられた主ブレーキペダルと、該主ブレーキペダルの操作により制動力を調節する制動力調整装置と、助手席側に設けられ、前記主ブレーキペダルの操作とは独立して該制動力調整装置制御可能に前記制動力調整装置に接続された補助ブレーキペダルとを備えた自動車の制動装置において、運転者が車両を減速させる車両減速意図を有しているか否かを、車速、車両加速度、及び車両の進行方向のうち少なくとも1つ、シフトレバーポジション、アクセル開度、及び主ブレーキペダルの操作量のうち少なくとも1つとに基づいて判定する判定手段該判定手段の判定結果に応じて前記補助ブレーキペダルの制動特性(補助制動特性)を変更する補助制動特性変更手段を備えたものである。
【0014】
上記構成によれば、運転者の意図に補助制動特性を連動させることで、補助ブレーキペダルの操作による運転者に与える不快感の軽減と、補助ブレーキペダルの操作性の向上とを両立することができる。
【0015】
従って、補助ブレーキペダルの操作によって運転者に不快な補助急制動(かっくんブレーキ)の防止と、これと相反する、坂道でのずり動きなどを防止できる素早い補助制動とを両立させることができる。
【0016】
この発明の態様として、前記判定手段は、前記主ブレーキペダルの操作量が0より大きい状態、シフトレバーポジションが示す方向とは異なる方向に車両が進行する状態、又は車両が所定速度以下の下で減速しながら走行しつつアクセル開度量が減少或いはアクセル開度が0以下の状態である場合に車両減速意図が有りと判定し、前記補助制動特性変更手段は、前記判定手段が前記車両減速意図有りと判定したとき、前記車両減速意図無しと判定したときよりも前記補助制動特性を制動力が強化される方向に変更する構成とすることができる。
【0017】
上記構成によれば、運転者の減速意図と補助制動特性の相関を高めることができる。
【0018】
ここで車両減速意図有りの状態とは、車両が停車に向かう状態であり、運転者が積極的に車両の減速意図を有している状態に加え、運転者が積極的に車両の減速意図を有していなくて運転者の不注意等により、運転者の停車意志に反して或いは意に反する方向と異なる方向に車両が動き始めたときも含む。
【0019】
車両減速意図無しの状態とは、運転者が現状の走行速度を維持又は加速しながら走行する走行継続意図を有している状態である。なお、現状の走行速度を維持とは、完全に等速を維持して走行する場合に限らず、所定の範囲内で車速が変動しながら走行する場合も含む。
【0020】
またこの発明の態様として、前記判定手段は、アクセル開度が0より大きい状態、車速が所定値以上の状態、又は車両が加速している状態である場合に車両減速意図が無しと判定し、前記補助制動特性変更手段は、前記判定手段が前記車両減速意図無しと判定したとき、車両減速意図有りと判定したときよりも前記補助制動特性を制動力を緩和する方向に変更する構成とすることができる。
【0021】
上記構成によれば、運転者の車両減速意図無しと補助制動特性の相関を高めることができ、運転者に不快感を与える補助ブレーキペダル操作による補助急制動(かっくんブレーキ)を防止できるように補助ブレーキペダルのみでその制動特性を調整することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記補助制動特性変更手段は、前記補助ブレーキペダルの操作量が所定値以上であるとき、前記補助制動特性を、前記補助ブレーキペダルの操作量が所定値未満のときよりも制動力を強化する方向に変更する構成とすることができる。
【0023】
上記構成によれば、補助ブレーキペダルの操作のみで制動力が強化する方向に前記補助制動特性が変更されるため、緊急時に迅速に対応できる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、主ブレーキの制動特性に対する補助ブレーキの制動特性を、運転者に不快な補助急制動(所謂かっくんブレーキ)の防止と、これと相反する、坂道でのずり動きなどの状況において素早い補助制動を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態の制動装置の概略構成図
図2】本実施形態におけるペダル踏力とブレーキ液圧との関係を示すマップ図
図3】本実施形態の制動装置の判定テーブルの一例を示す図
図4】本実施形態の制動装置の実施例を示すフローチャート
図5】判定処理の一例を示すフローチャート
図6】本実施形態における他の実施例のペダル踏力とブレーキ液圧との関係を示すマップ図
図7】本実施形態の制動装置の他の実施例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施の形態による制動装置1を、運転教習用の四輪自動車(教習車)に搭載した一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1ないし図5は、この発明の本実施形態に関し、図1は本発明の実施形態の制動装置の概略構成図、図2は本実施形態におけるペダル踏力とブレーキ液圧との関係を示すマップ図、図3は本実施形態の制動装置の判定テーブルの一例を示す図、図4は本実施形態の制動装置の実施例を示すフローチャート、図5は判定処理の一例を示すフローチャートを示す。
【0027】
制動装置1には、図1に示すように、車両のブレーキ操作時に運転者(主に生徒)によって踏込み操作される主ブレーキペダル2と、車両のブレーキ操作時に助手席側の乗員(主に教官)によって踏込み操作される補助ブレーキペダル3と、これらブレーキペダル操作量としての踏力を検出する踏力検出センサ5(5a,5b)と、ブレーキペダル操作量としての踏込量(ストローク)を検出するストローク検出センサ6(6a,6b)と、ECU7(Electronic Control Unit)と、ブレーキアクチュエータ8と、液圧制御装置15と、不図示の各種車輪に対応して設けられたブレーキ手段16FL,16RR,16FR,16RLと、上記踏力検出センサ5およびストローク検出センサ6以外の各種センサとしてアクセルペダル4の開度を検出するアクセル開度センサ17、車速センサ21、シフトレバーポジション検出センサ22(シフトレバーP検出センサ)およびイグニッションスイッチON/OFF検出センサ23(IGセンサ)等を備えている。
【0028】
主ブレーキペダル2は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルの運転席側の足元の位置に設けられ、補助ブレーキペダル3は、ダッシュパネルの助手席側の足元の位置に設けられている。
【0029】
踏力検出センサ5およびストローク検出センサ6は、主ブレーキペダル2と補助ブレーキペダル3との夫々の側に設けられ、対応するブレーキペダル2又は3の操作量として踏力および踏込量(ストローク)を検出するとともに必要に応じて踏込み操作の有無を検出する構成としている。
【0030】
主ブレーキペダル2側の踏力検出センサ5aおよびストローク検出センサ6aと補助ブレーキペダル3側の踏力検出センサ5aおよびストローク検出センサ6aとは、同様の構成であるため、特に示す場合を除いて主ブレーキペダル2側の踏力検出センサ5aおよびストローク検出センサ6aに基づいて説明する。
【0031】
この踏力検出センサ5には主ブレーキペダル2の踏み込に応じて撓み変形するスプリング5sが内蔵されており、スプリング5sの撓み量に基づいてペダル操作量として、例えばペダル踏力や踏込量(ストローク)を検出できるようになっており、検出したペダル操作量に関する信号がECU7へ送信される。すなわち、主ブレーキペダル2側に設けた踏力検出センサ5aと補助ブレーキペダル3側に設けた踏力検出センサ5bとは、独立してペダル操作量に基づく電気信号をECU7に対して出力可能に構成している。
【0032】
さらに、主ブレーキペダル2の踏み込みが成されると、スプリング5sからの付勢力によってペダル操作量に応じた反力とストロークが主ブレーキペダル2に加えられるようになっている。
【0033】
ストローク検出センサ6は、主ブレーキペダル2の回転時(搖動時)の抵抗に基づいて踏込角度(回転角度)を検出するポテンショメータや、パルスに基づいて踏込角度を検出するエンコーダなどの角度検出センサで構成している。
また、アクセル開度センサ17についても、ストローク検出センサ6と同様に角度検出センサで構成し、アクセル開度を検出可能としている。
【0034】
車速センサ21は、本実施例においては車輪の回転数を検出可能に車輪ごとに備えた回転数センサ21a(車輪速センサ)であり、該回転数センサ21aにより検出した車輪ごとの回転数の平均値出に基づいて車両の走行速度情報を取得している。
【0035】
ECU7は、入出力部などが搭載されたHBコントローラであり、図示しないが、電子回路基板にCPU(Central Processing Unit)、該CPUの指令により実行される各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備え、CPUがROMに記憶された制御プログラムを読み出してRAMに展開し、各種処理を実行する。
【0036】
ECU7は、上述した踏力検出センサ5、ストローク検出センサ6、車速センサ21およびアクセル開度センサ17以外にもシフトレバーポジション検出センサ22およびイグニッションスイッチON/OFF検出センサ23にも電気的に接続され、ペダル踏力、踏込量、車速およびアクセル開度以外にもシフトレバーポジション、イグニッションスイッチのON/OFF状態などの情報を取得するように構成している。
【0037】
なお、これら検出信号は、制動装置1に備えたECU7に直接入力する構成に限らず、図示しないエンジンECU等の他のECUを介して制動装置1に備えたECU7(ブレーキECU7)に入力する構成としてもよい。また、本実施例においてはECU7は、車速センサ21で検出した車速に基づいて(車速を微分することにより)車両の加速度情報を取得可能に構成している。但し、車両の加速度情報はこのような取得方法に限らず、車両に加速度センサを備え、該加速度センサの検出信号に基づいて取得してもよい。
【0038】
上述により、ECU7は、上述した各種センサからの取得情報に基づいて、液圧制御装置15に備えた図示省略する各バルブの開閉制御やブレーキアクチュエータ8に備えたポンプ用モータ12の制御を行う。
【0039】
さらにECU7は、主ブレーキペダル2の踏力(踏込み力)に対して車両に作用させるべき制動力に対応するブレーキ液圧(油圧)を図2に例示するマップから導出する。またECU7は、主ブレーキペダル2の踏込みとは独立して補助ブレーキペダル3の踏力(踏込み力)に対して車両に作用させるべき制動力に対応するブレーキ液圧を図2に例示するマップから導出する。そしてECU7は、主ブレーキペダル2と補助ブレーキペダル3とに基づく制動力を足し合わせた制動力が作用するように、各ブレーキ手段16FL,16RR,16FR,16RLのブレーキ液圧の増圧や保持、減圧を行なうブレーキ液圧制御を実行する。これにより主ブレーキペダル2と補助ブレーキペダル3とはそれぞれの踏込量に応じた制動力が独立して発生するように構成している。
さらに本実施形態のECU7は、補助ブレーキペダル3の操作量に基づいて緊急状態であるか否かに加えて、運転者が車両を減速させる車両減速意図を有しているか否か、換言すると、運転者が走行継続意図を有している状態(車両が走行状態)又は車両減速意図を有している状態(車両が停車に向かう状態)を、車両状態および運転者の操作状態に基づいて図3に示す判定テーブル27を用いて判定する判定処理と、判定結果に応じて補助制動特性を変更する処理を実行する。
【0040】
ここで本実施例における車両状態とは、例えば、車速、車両加速度、さらには車両が停止しているか否か、車両の進行方向のうち少なくとも1つを示す。
【0041】
本実施例における運転者の操作状態とは、シフトレバーポジション、アクセル開度、主ブレーキペダル2の踏込み操作量(ストローク(踏込量)、踏力)のうち少なくとも1つを示す。
【0042】
また、判定テーブル27は、ECU7に備えた記憶手段としてのROMに記憶され、図3の判定テーブルの概念図に示すように、補助ブレーキペダル3の踏込速度Xが所定値Xb以上の場合を「緊急性有り」とし、補助ブレーキペダル3の踏込速度Xが所定値Xb未満の場合であって、図3中の条件a1〜a4のいずれかを満たす場合を、「車両減速意図有り」とし、さらに上述以外の場合を「車両減速意図無し」としたものである。
【0043】
そして、ECU7は、図3の判定テーブル27に基づいて「緊急性有り」と判定したとき、図2のマップに示すように、減速意図無し制動特性X31(或いは減速意図有り制動特性X36)から緊急制動特性X32へ補助制動特性を変更する構成としたものであり、「車両減速意図有り」と判定したとき、図2のマップに示すように、減速意図無し制動特性X31から減速意図有り制動特性X36へ補助制動特性を変更する構成としたものであり、「車両減速意図無し」と判定したとき、図2のマップに示すように、減速意図有り制動特性X36から減速意図無し制動特性X31へ補助制動特性を変更する構成としたものである。
【0044】
図2は、ブレーキペダル踏力とブレーキ液圧との関係を示す本実施形態の制動特性が定められたマップを示している。
【0045】
図2中の補助ブレーキペダル3の踏力Tが0以上Ta未満の範囲を、速度調整領域とし、補助ブレーキペダル3の踏力TがTa以上Tb未満の範囲を、補助ブレーキ領域とし、補助ブレーキペダル3の踏力TがTb以上の範囲を、緊急/危険回避領域としている。さらに図2中の補助ブレーキペダル3の踏力Tが0以上Tb未満の範囲(速度調整領域と補助ブレーキ領域に相当する領域)を初期制動領域としている。
【0046】
図2中の符号Yは、主ブレーキペダル2の制動特性(以下、「主制動特性」とする。)を示し、符号X31は補助ブレーキペダル3の制動特性(以下、「補助制動特性」とする。)の中でも減速意図無し制動特性を示し、符号X32は、補助制動特性の中でも緊急制動特性を示し、符号X36は補助制動特性の中でも減速意図有り制動特性を示している。さらに符号X33は、補助制動特性の中でも減速意図無し制動特性X31から緊急制動特性X32へ移行するための緊急移行制動特性を示し、符号X34は、補助制動特性の中でも緊急制動特性X32から減速意図無し制動特性X31へ移行するための非緊急移行制動特性を示し、符号X38は、補助制動特性の中でも減速意図有り制動特性X36から減速意図無し制動特性X31へ移行するための減速意図無し移行制動特性を示している。
【0047】
本実施例においては図2のマップに示すとおり、補助ブレーキペダル3の緊急制動特性X32は、主制動特性Yと同じ波形に設定しており、速度調整領域および補助ブレーキ領域だけでなく、緊急/危険回避領域においても踏力に対してブレーキ液圧が一定の割合で増加する線形特性を示す。
【0048】
減速意図無し制動特性X31は、図2に示すように、主ブレーキペダル2と同操作量で該主制動特性Yよりも小さな制動力に抑制した特性を示す。詳しくは、減速意図無し制動特性X31は、主制動特性Yよりもペダル踏込みを開始してから液圧が発生するまでのカットイン(遊び)領域が長く(T1<T2)、また、主制動特性Yの場合には、主ブレーキペダル2の踏込開始時の踏力に対するブレーキ液圧の立ち上がり(ジャンプアップ)がP1であるのに対して減速意図無し制動特性X31の場合には、補助ブレーキペダル3の踏込開始時のジャンプアップがなく緩やかに立ち上がる。
【0049】
さらに、減速意図無し制動特性X31は、カットイン領域を経て補助ブレーキ領域における踏力TがT2以上Tb未満の範囲の特性であり、踏力TがT3(>Ta)に達するまでは補助ブレーキペダル3の主ブレーキ特性Yのジャンプアップ後の線形特性と略同じ勾配で徐々に立ち上がる線形特性を示し、補助ブレーキ領域における踏力TがT3以上Tb未満においては、踏力が増加するに従って例えば、指数関数や2次関数を示すように徐々にブレーキ液圧の増加率が大きくなる特性を示す。そして、踏力TがT3に達するとブレーキ液圧Pは、緊急制動特性X12のブレーキ液圧P2となる。
【0050】
減速意図有り制動特性X36は、補助ブレーキペダル3の同操作量で減速意図無し制動特性X31よりも高い制動力を発生させるように減速意図無し制動特性X31よりも勾配が急峻な線形特性としている。
【0051】
これにより、ECU7は、後述する判定処理(図5参照)を実行することにより、各種センサの取得情報および判定テーブル27に基づいて図2に示すマップ中の補助制動特性に従って踏力に基づくブレーキ液圧を発生させる。
【0052】
また、図1に示すように、上述したブレーキアクチュエータ8は、ポンプ11とモータ12とリザーバタンク13等を備え、ECU7および液圧制御装置15に接続されている。
モータ12は、ポンプ11駆動用のモータであり、ECU7に接続され、ECU7から出力された制御信号に基づいて回転駆動する。モータ12には、図示省略するが、必要に応じてボールネジやギアなどの駆動伝達機構を介してモータ12の駆動を増幅させてポンプ11内に備えたピストンを駆動する。
【0053】
ポンプ11は、ブレーキ液加圧用のポンプであり、リザーバタンク13から供給される作動液としてのブレーキ液によりモータ12の回転駆動力に応じた液圧を発生させ、液圧制御装置15に送る。
【0054】
ブレーキ手段16FL,16RR,16FR,16RLは、車両の4個の車輪(図示省略)、例えば左右の前輪と左右の後輪とに設けられ、各ブレーキ手段16FL,16RR,16FR,16RLは、それぞれ車輪と一体回転するディスクロータ16aと該ディスクロータ16aの回転を制動するキャリパ16bとで構成されている。これにより、車輪(各前輪、各後輪)毎に制動力が付与される。
【0055】
液圧制御装置15は、ECU7からの信号に基づいて開閉制御される図示しない各種バルブを備え、ブレーキアクチュエータ8からの液圧をブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して左右の前輪用および後輪用に備えた各ブレーキ手段16FL,16RR,16FR,16RLのキャリパ16bに分配、供給する。これにより、キャリパ16bのそれぞれに発生させるブレーキ液圧の増圧、保持、減圧を車輪毎に独立して制御できるように構成されている。
【0056】
上述した制動装置1を搭載した教習車を用いて運転教習を行う実施例を図4および図5に示すフローチャートに基づいて説明する。ただし、補助制動特性の初期設定は、減速意図無し制動特性X31に設定しているものとする。
【0057】
運転者(生徒)の操作によるイグニッションスイッチON等車両システムの起動により(図4中のステップ1:Yes)、ECU7は各種センサ値を読み込む処理を実行する(図4中のステップ2)。例えばステップ2では、ECU7は、補助ブレーキペダル3に備えたストローク検出センサ6bから検出したストローク(ペダル踏込量)に基づいて補助ブレーキペダル3の踏込速度を演算するとともに、車速センサ21により検出した車速に基づいて車両加速度を演算する処理を行う。
【0058】
次に、ステップ3の判定処理では、ECU7は、緊急性の有無に加えて運転者が車両を減速させる車両減速意図を有しているか否かを各種センサから取得した車両状態情報と運転者の操作状態に関する情報に基づいて判定する。
【0059】
このステップ3の判定処理の詳細を図5に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップ31においてECU7は、補助ブレーキペダル3の操作量としての踏込速度Xが所定値Xb以上であるか否かを判定する。具体的には補助ブレーキペダル3の踏込速度Xが所定値Xb以上である場合(ステップ31:Yes)には、ECU7は図3に示す判定テーブル27に基づいて「緊急性有り」と判定する(ステップ39)。
【0060】
一方、補助ブレーキペダル3の踏込速度Xが所定値Xb未満である場合(ステップ31:No)には、ECU7は図3に示す判定テーブル27に基づいて「緊急性無し」と判定してステップ32の判定処理へ進む。
【0061】
ステップ32においてECU7は、主ブレーキペダル2の操作量としての踏込ストロークが0以下であるか否かを判定する。主ブレーキペダル2の踏込ストロークが0より大きい場合(ステップ32:Yes)、明らかな減速意図が認められるとして図3に示す判定テーブル27に基づいて「減速意図有り」判定を行う(ステップ37、図3中の条件a1参照)。
【0062】
一方、ステップ32において主ブレーキペダル2の踏込ストロークが0以下である場合(ステップ32:No)、すなわち、運転者が主ブレーキペダル2を全く踏んでいない場合や遊びの範囲でしか踏み込んでいない場合、ECU7はステップ33の判定処理へ進む。
【0063】
ステップ33において、ECU7は、車速や車両加速度およびシフトポジションに関する情報を基に、シフトポジションが示す方向とは異なる方向に車両が進行しているか否かを判定する。車両が、シフトポジションが示す方向とは異なる方向に進行している場合(ステップ33:Yes)、例えば、登り坂の途中で停車している状況でシフトレバーをニュートラルポジションにしているにも関わらず、車両がバックし始めた場合には、ステップ32と同様に明らかな減速意図が認められるとして(すなわち、運転者の意図する方向と異なる方向に車両が動き出したとして)図3に示す判定テーブル27に基づいて「減速意図有り」判定を行う(ステップ37、図3中の条件a2参照)。
【0064】
一方、ステップ33において、車両がシフトポジションが示す方向とは異なる方向に進行していない場合には(ステップ33:No)、ECU7はステップ34の判定処理へ進む。
【0065】
ステップ34において、ECU7は、アクセル開度量および車両加速度(車速の変化量)に関する情報を基に、アクセル開度量が減少、且つ車両が減速しているかという条件を満たすか否かを判定する。具体的にはステップ34において、アクセル開度量が一定又は増加、又は車速が一定又は増加した場合(ステップ34:No)、運転者に車両減速意図が無いと認められるため、ECU7は図3に示す判定テーブル27に基づいて「減速意図無し」判定を行う(ステップ38、図3中の条件a3参照)。
【0066】
一方、アクセル開度量が減少、且つ車両が減速している場合(ステップ34:Yes)、運転者が車両減速意図を有していると推測されるため、ECU7はステップ35の判定処理へ進む。
【0067】
ステップ35において、ECU7は、アクセル開度量および車速に関する情報を基に、アクセル開度が0以下(アクセルペダル4を全く踏んでいない場合や遊びの範囲でしか踏み込んでいない場合)、且つ車両が減速しているかという条件を満たすか否かを判定する。ステップ35において、アクセル開度が0より大、又は車速が一定又は増加した場合(ステップ35:No)、運転者に車両減速意図が無いと認められるため、ECU7は図3に示す判定テーブル27に基づいて「減速意図無し」判定を行う(ステップ38、図3中の条件a4参照)。
【0068】
一方、アクセル開度が0以下、且つ車両が減速した場合(ステップ35:Yes)、運転者が車両減速意図を有していると推測されるため、ECU7はステップ36の判定処理へ進む。
【0069】
ステップ36において、ECU7は、車速に関する情報を基に、車速が所定値(例えば50km/h以上の範囲の所定の値)より大きいか否かを判定する。ステップ36において、車速が所定値より大きい場合(ステップ36:No)、ECU7は図3に示す判定テーブル27に基づいて「減速意図無し」判定を行う(ステップ38、図3中の条件a3,a4参照)。
【0070】
一方、車速が所定値以下である場合(ステップ36:Yes)、ECU7は「車両減速意図有り」であると判定し(ステップ37、図3中の条件a3,a4参照)、図4中のステップ3の判定処理を終了する。
【0071】
上述した図5中のステップ34〜36の判定処理では、単に車両が減速しているか否かを基準に運転者の車両減速意図の有無を判定するのではなく、アクセル開度量、アクセル開度が0以下であるか否かに加えて車速が所定値以下であるか否かも併せて複合的に判定することで、例えば、エンジンブレーキをかけながら(主ブレーキペダル2を踏み込まずに)坂道を下っている状況において誤って「減速意図有り」(ステップ38)と判定してしまうことを排除し、判定精度を高めることができる。
【0072】
また、運転者のアクセルペダル4の操作によりアクセル開度量を減少させたり、アクセル開度を0以下にすることで車両を減速させた場合であっても(ステップ34:Yes、ステップ35:Yes)、高速道路を略80km/hで走行する場合など、ある程度の車速を維持しながら走行する際には、アクセル開度量を略一定に保つなどして速度調整しながら走行する場合が多い。このようにある程度車速が出ている走行状態において補助制動特性を強くすれば補助ブレーキペダル3の操作によって運転者が意図しない急制動(所謂かっくんブレーキ)につながるおそれが高くなる。
【0073】
これに対して本実施例では図5中のステップ36の判定処理において、車速が所定値より大きい場合に(ステップ36:No)、ECU7は、判定テーブル27に基づいて「減速意図無し」(ステップ38)と判定するため、補助制動特性を後述するように制動力を弱めた図4中の後述するステップ41の減速意図無し設定に基づく制動特性(図2中の減速意図無し制動特性X31参照)とすることで運転者の快適な走行を確保することができる。
【0074】
続く図4中のステップ4において、ステップ3の判定処理で「緊急性有り」(図5中のステップ39)と判定された場合(ステップ4:No.1)、補助制動特性は、図2に示すように、初期設定である減速意図無し制動特性X31からステップ5の緊急移行設定に基づく制動特性X33(緊急移行制動特性X33)を経て緊急設定に基づく制動特性X32(緊急制動特性X32)となり(ステップ6)、図2のマップ中の緊急制動特性X32に従って補助ブレーキペダル3の踏力に応じたブレーキ液圧が作動する。
【0075】
ここで、上記ステップ5の緊急移行制動特性X33は、減速意図無し制動特性X31から緊急制動特性X32へ移行する際の補助制動特性であり、ステップ4で「No.1」と判定された時点から図2のマップに示すように、減速意図無し制動特性X31に対して分岐して緊急制動特性X32に移行するまで急峻に上昇する補助制動特性であり、本実施例では線形な特性としている。
【0076】
続くステップ7において上述したステップ3と同じ判定処理を行い、ECU7は、「緊急性有り」と判定される間は(ステップ8:Yes)、補助制動特性をステップ6で設定した緊急制動特性X32に維持する。
【0077】
一方、ステップ7の判定処理において、「緊急性無し」と判定された場合(ステップ8:No)、補助制動特性は、図2のマップ中の非緊急移行制動特性X34を経て(ステップ9)、同図のマップ中の減速意図無し制動特性X31に設定される(ステップ41)。
【0078】
ここで、上述したステップ9の非緊急移行制動特性X34は、緊急制動特性X32から減速意図無し制動特性X31へ移行するための補助制動特性であり、ステップ8で「No」と判定された時点で図2のマップに示すように、緊急制動特性X32から分岐して、減速意図無し制動特性X31に移行するまで緊急移行制動特性X33よりも緩やかな勾配で下降する線形特性を示す。
【0079】
また、上述したステップ4において、ステップ3の判定処理で「減速意図有り」(図5中のステップ37)と判定された場合(ステップ4:No.2)、補助制動特性は、減速意図有り制動特性X36の設定となり(ステップ21)、図2のマップ中の減速意図有り制動特性X36に従って補助ブレーキペダル3の踏力に応じたブレーキ液圧が作動する。
【0080】
ここで、ステップ21の減速意図有り制動特性X36は、ステップ4で「減速意図無し」と判定された時点で図2のマップ中に示すように、減速意図無し制動特性X31から分岐して該減速意図無し制動特性X31の接線勾配よりも急峻な勾配で立ち上がる特性を示し、減速意図無し制動特性X31の場合よりも補助ブレーキペダル3の同じ踏込量で大きな制動力を発生する。
【0081】
続くステップ22において上述したステップ3と同じ判定処理を行い、ECU7は、「減速意図有り」と判定された場合(ステップ23:Yes)、その判定結果が維持され(ステップ23:Yes)、且つ車両が停車してイグニッションスイッチがOFFにされるまでの間(ステップ24:No)、補助制動特性をステップ21で設定した減速意図有り制動特性X36に維持する。
やがて車両が停車してイグニッションスイッチがOFFにされると(ステップ24:Yes)本実施例を終了する。
【0082】
一方、ステップ22の判定処理において、「減速意図無し」と判定された場合(ステップ23:No)、補助制動特性は、図2のマップ中の減速意図無し移行制動特性X38を経て(ステップ25)、同図のマップ中の減速意図無し制動特性X31に設定される(ステップ41)。
【0083】
ここで、ステップ25の減速意図無し移行制動特性X38は、ステップ23で「No」と判定された時点で図2のマップ中に示すように、減速意図有り制動特性X36から分岐して減速意図無し制動特性X31に達するまで減速意図有り制動特性X36の勾配よりも緩やかな勾配で移行(下降)する線形特性を示す。
【0084】
また、上述したステップ4において、ステップ3の判定処理で「減速意図無し」(図5中のステップ38)と判定された場合(ステップ4:No.3)、補助制動特性は、図2のマップ中の減速意図無し制動特性X31に設定される(ステップ41)。
【0085】
その後、ECU7は、上述したステップ3の判定処理以降の処理を継続し、最終的に上述したように、車両が停車してイグニッションスイッチがOFFにされると(ステップ24:Yes)本実施例のブレーキ制御を終了する。
【0086】
なお、図4中のステップ25において、減速意図無し移行制動特性X38に従って減速意図有り制動特性X36から減速意図無し制動特性X31へ移行している最中においても図4のフローチャート中に図示していないが、これら車両状態および運転者の操作状態に基づいてステップ3と同様の判定処理を行い、適宜補助制動特性を変更してもよい。
【0087】
本実施形態の制動装置1における図4のフローチャートを用いて説明した上述した実施例では、減速意図有り制動特性X36は、ステップ3の判定処理で減速意図有り(図5中のステップ37)と判定された時点で(ステップ4:No.2)、図2のマップ中に示すように、減速意図無し制動特性X31から分岐して減速意図無し制動特性X31の接線勾配よりも急峻な勾配で立ち上がる特性としたが(ステップ21)、減速意図無し制動特性X31よりも補助ブレーキペダル3の同じ踏込量で大きな制動力が発生できる特性であれば、上述した特性に限定しない。
【0088】
具体的には、図6のマップ中に示すように、減速意図有り制動特性X46は、減速意図無し制動特性X41から分岐(派生)する波形ではなく、該減速意図無し制動特性X41とは独立した特性とすることができる。
【0089】
さらに、図6のマップ中に示すように、補助制動特性を減速意図無し制動特性X41から減速意図有り制動特性X46へ変更する際には、減速意図有り移行制動特性X48に従って移行することができる。この減速意図有り移行制動特性X48は、減速意図有り制動特性X46へ向かうように減速意図無し制動特性X41の接線勾配よりも急峻に該減速意図無し制動特性X41から立ち上がる移行特性である。
【0090】
一方、図6のマップ中に示すように、減速意図有り制動特性X46から減速意図無し制動特性X41へ補助制動特性を変更する際には、減速意図無し移行制動特性X49に従って移行することができる。この減速意図無し移行制動特性X49は、減速意図無し制動特性X41へ向かうように減速意図有り移行制動特性X48よりも緩やかに減速意図有り制動特性X46から降下する移行特性である。
【0091】
図6に示すマップが記憶されたECU7を備えた本実施形態の制動装置1の他の実施例を図7のフローチャートを参照しながら説明する。
但し、図4のフローチャートと同じ処理については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
ステップ4において、ステップ3の判定処理で「減速意図有り」(図5中のステップ37)と判定された場合であって(ステップ4:No.2)、現状の補助制動特性が減速意図有り制動特性X46の場合(ステップ21:Yes)、そのまま図6のマップ中の減速意図有り制動特性X46の設定が維持される(ステップ23)。
【0093】
一方、上述したステップ4において、ステップ3の判定処理で「減速意図有り」(図5中のステップ37)と判定された場合であって(ステップ4:No.2)、現状の補助制動特性が減速意図有り制動特性X46でなければ(ステップ21:No)、ステップ22の処理、すなわち図6のマップ中の減速意図有り移行制動特性X48を経て同図のマップ中の減速意図有り制動特性X46の設定がなされる(ステップ23)。
【0094】
その後のステップ24の判定処理の結果、「減速意図有り」(図5中のステップ37)と判定された場合(ステップ25:Yes)以降から本実施例が終了するまでの処理は、上述した図4のステップ23以降の処理と同じ処理が実行され、本実施例が終了する。
【0095】
一方、ステップ24の判定処理の結果、「減速意図無し」(図5中のステップ38)と判定された場合(ステップ25:No)、又は、上述したステップ4において、ステップ3の判定処理で「減速意図無し」(図5中のステップ38)と判定され(ステップ4:No.3)且つ、現状の補助制動特性が減速意図有り制動特性X46である場合には(ステップ41:Yes)、ステップ42の処理、すなわち図6のマップ中の減速意図無し移行制動特性X49を経て同図のマップ中の減速意図無し制動特性X41の設定がなされる(ステップ43)。
【0096】
またステップ4において、ステップ3の判定処理で「減速意図無し」(図5中のステップ38)と判定された場合であって(ステップ4:No.3)、現状の補助制動特性が減速意図無し制動特性X41の場合(ステップ41:No)、そのまま図6のマップ中の減速意図無し制動特性X41の設定が維持される(ステップ43)。
【0097】
その後、ECU7は、上述したステップ3の判定処理以降の処理を継続し、最終的に上述したように、車両が停車してイグニッションスイッチがOFFにされると(ステップ26:Yes)本実施例のブレーキ制御を終了する。
【0098】
上述した自動車の制動装置1によれば、運転席側に設けられた主ブレーキペダル2と、該主ブレーキペダル2の操作により制動力を調節する制動力調整装置としてのECU7と、助手席側に設けられ、主ブレーキペダル2の操作とは独立して該ECU7に制御可能に接続された補助ブレーキペダル3とを備え(図1参照)、運転者が車両を現状の走行速度に対して減速させる車両減速意図を有しているか否かを車両状態(車速、車両の加減速および車両の進行方向)と運転者の操作状態(シフトレバーポジション、アクセル開度、主ブレーキペダル2の踏込み操作量(ストローク、踏力))に基づいて判定する判定手段としてのECU7(すなわち、図5の判定処理(ステップ32〜36)を実行するECU7、換言すると図3の判定テーブル27を記憶したECU7)が設けられ、判定結果に応じて補助制動特性を変更する補助制動特性変更手段としてのECU7(図2図6)のマップを記憶するとともに図4中のステップ21,41、図7中のステップ23,43を実行するECU7)、ブレーキアクチュエータ8および液圧制御装置15を備えたものである(図1図7参照)。
【0099】
上記構成によれば、運転者の意図に補助ブレーキペダル3の制動特性を連動させることで、補助ブレーキペダル3の操作による運転者に与える不快感の軽減と、補助ブレーキペダル3の操作性の向上とを両立することができる。
【0100】
従って、補助ブレーキペダル3の操作によって運転者に不快な急制動(所謂かっくんブレーキ)の防止と、これと相反する、坂道でのずり動きなどを防止できる素早い補助制動とを両立させることができる。
【0101】
さらに自動車の制動装置1として備えるセンシング量を少なくすることができ、必要な情報量も既存のセンサから取得することができる。具体的には、車差間距離や、ヨーレイト等様々な車両走行状態や車両周辺の状態を検出する必要がなく、基本的に運転者のアクセル開度量、主ブレーキペダル2の操作量、必要に応じて補助ブレーキペダル3の操作量のみを検出するだけで足りるため、低コストで実現できる。
【0102】
この発明の態様として、判定手段としてのECU7は、図3の判定テーブル27に基づいて主ブレーキペダル2の操作量(ストローク又は踏力)が0より大きい状態(条件a1)、シフトレバーポジションが示す方向とは異なる方向に車両が進行する状態(条件a2)、又は車両が所定速度以下の下で減速しながら走行しつつアクセル開度量が減少或いはアクセル開度が0以下の状態(条件a3、又はa4の要件参照)である場合に車両減速意図が有りと判定し(図5中のステップ37参照)、補助制動特性変更手段としてのECU7等は、「車両減速意図有り」と判定したとき(図4及び図7中のステップ4:No.2、図4中のステップ23:Yes、図7中のステップ25:Yes参照)、「車両減速意図無し」(図5中のステップ38参照)と判定したとき(図4及び図7中のステップ4:No.3、図4中のステップ23:No、図7中のステップ25:No参照)よりも補助制動特性を制動力が強化される方向に変更する構成としたものである(図2中の減速意図有り制動特性X36、図4中のステップ21、図6中の減速意図有り制動特性X46、図7中のステップ22参照)。
【0103】
上記構成によれば、運転者の減速意図の有無と補助制動特性の相関を高めることができ、補助ブレーキペダル3の操作性がさらに向上し、補助ブレーキペダル3による素早い補助制動を実現できる。
【0104】
またこの発明の態様として、判定手段としてのECU7は、図3の判定テーブル27に基づいて上述した条件a1〜a4のいずれをも満たさない場合、具体的には、アクセル開度が0より大きい状態、車速が所定値以上の状態、又は、車両が一定或いは加速している状態である場合に車両減速意図が無しと判定し(図5中のステップ38参照)、補助制動特性変更手段としてのECU7等は、「車両減速意図無し」と判定したとき(図4及び図7中のステップ4:No.3、図4中のステップ23:No、図7中のステップ25:No参照)、「車両減速意図有り」(図5中のステップ37参照)と判定したとき(図4及び図7中のステップ4:No.2、図4中のステップ23:Yes、図7中のステップ25:Yes参照)よりも補助制動特性を制動力を緩和する方向に変更する構成とすることができる(図2中の減速意図無し制動特性X31、図4中のステップ25,41、図6中の減速意図無し制動特性X41、図7中のステップ42,43参照)。
【0105】
上記構成によれば、運転者の減速意図の有無と補助制動特性の相関を高めることができ、補助ブレーキペダル3の操作性がさらに向上し、補助ブレーキペダル3による素早い補助制動を実現できる。
【0106】
またこの発明の態様として、補助制動特性変更手段としてのECU7(図5のステップ31,39、図4及び図7のステップ5,6を実行するECU7)は、図3の判定テーブル27に基づいて補助ブレーキペダル3の踏込速度Xが所定値Xb以上であるとき、補助制動特性を、補助ブレーキペダル3の踏込速度Xが所定値Xb未満のときよりも制動力を強化する方向に変更する構成とすることができる(図2図6中の緊急制動特性X32、緊急移行制動特性X33、図4及び図7中のステップ5,6参照)。
【0107】
上記構成によれば、補助ブレーキペダル3の操作のみで制動力が強化する方向に補助制動特性が変更されるため、緊急時に迅速に対応することができる。
【0108】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の制動力調整装置は、本実施例のECU7に対応し、以下同様に、
運転者の操作状態は、シフトレバーポジション、アクセル開度および主ブレーキペダル2の踏込速度に対応し、
車両状態は、車速度、車両の加減速および車両の進行方向に対応し、
判定手段は、図5の判定処理を実行するECU7、又は図3の判定テーブル27を記憶したECU7に対応し、
補助制動特性変更手段は、図2図6中のマップを記憶するとともに図4中のステップ21,41、図7中のステップ23,43を実行するECU7、ブレーキアクチュエータ8、および液圧制御装置15に対応し、
「車両減速意図有り」判定は、図4及び図7中のステップ4:No.2、図4中のステップ23:Yes、又は図7中のステップ25:Yesの処理に対応し、
「車両減速意図無し」判定は、図4及び図7中のステップ4:No.3、図4中のステップ23:No、又は図7中のステップ25:Noの処理に対応し、
請求項2における制動力が強化された補助制動特性は、図2中の減速意図有り制動特性X36又は図6中の減速意図有り制動特性X46に対応し、
請求項3における制動力を緩和された補助制動特性は、図2中の減速意図無し制動特性X31、又は図6中の減速意図無し制動特性X41に対応し、
請求項4における制動力が強化された補助制動特性は、図2及び図6中の緊急移行制動特性X32に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0109】
例えば、図5の判定処理のステップ31では、補助ブレーキペダル3の操作量を踏込速度Xとして判定処理を行ったが、この操作量に限らず、補助ブレーキペダル3の踏込速度X、踏力Tおよび踏込ストロークのうち少なくとも1つの操作量を採用してもよく、また、図5の判定処理のステップ32では、主ブレーキペダル2の操作量を踏込ストロークとして判定処理を行ったが、この操作量に限らず、主ブレーキペダル2の踏込ストロークおよび踏力のうち少なくとも1つの操作量を採用してもよい。
【0110】
図5の判定処理のステップ34では、アクセル開度量が減少したことを判定条件の要件としていたが(図3中の条件a3参照)、これに限らず、アクセル開度が所定の範囲を超えて減少した場合のみアクセル開度量が減少したものとみなしてもよく、同様に、ステップ34、35においては、車両が所定範囲を超えて減速した場合のみ車速が減少したものとみなしてもよい。
【0111】
上述した主制動特性Y、補助制動特性X31,X32,X33,X34,X36,X38,X41,X46,X48,X49は、図2図6に示す波形に限らず、2次関数、指数関数など増加率が変動する非線形、線形、或いはこれらを組み合わせた波形としてもよい。
【0112】
本実施例の制動装置1に備えたアクセル開度センサ17は、例えば、回転時(搖動時)の抵抗に基づいてアクセル開度(踏込角度)を検出するポテンショメータや、パルスに基づいてアクセル開度を検出するエンコーダなどで構成することができるが、アクセルペダル4の回転角度を検出する構成に限らず、アクセルペダル4の位置や変位量を検出する構成としてもよい。
【0113】
主ブレーキペダル2や補助ブレーキペダル3に備えたストローク検出センサ6(6a,6b)についてもアクセル開度センサ17と同様に、ポテンショメータやエンコーダなどで構成するに限らず、これらペダル2,3の位置や変位量を検出する構成であってもよい。
【0114】
また、本実施例の制動装置1は、図1に示すように、主ブレーキペダル2および補助ブレーキペダル3とブレーキアクチュエータ8とがECU7を介して電気的に接続され、ブレーキアクチュエータ8がブレーキ手段16FL,16RR,16FR,16RLを作動させる所謂バイ・ワイヤ式のブレーキシステムを採用したが、これに限らず、図示しないが、リザーバタンクから供給されるブレーキ液により液圧を発生させるマスタシリンダや、主ブレーキペダル2や補助ブレーキペダル3の踏力を増力してマスタシリンダに伝える倍力装置等を備え、リザーバタンクから供給されるブレーキ液により発生するブレーキ液圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムを採用してもよい。
【0115】
また、ブレーキ液圧は、制動力と比例関係など所定の関係性があるため、本実施例では、このブレーキ液圧を制御することにより、間接的に制動力を制御したが、これに限らず、制御量としてブレーキ液圧を用いずに制動力を直接制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上説明したように、本発明は、運転席側に設けられた主ブレーキペダルと、該主ブレーキペダルの操作により制動力を調節する制動力調整装置と、助手席側に設けられ、前記主ブレーキペダルの操作とは独立して該制動力調整装置に制御可能に接続された補助ブレーキペダルとを備えた自動車の制動装置について有用である。
【符号の説明】
【0117】
1…制動装置
2…主ブレーキペダル
3…補助ブレーキペダル
6(6a,6b)…ストローク検出センサ
7…ECU
8…ブレーキアクチュエータ
15…液圧制御装置
X31,X41…減速意図無し制動特性
X32…緊急移行制動特性
X36…減速意図有り制動特性
X48…減速意図有り移行制動特性
X38,X49…減速意図無し移行制動特性
X…補助ブレーキペダルの踏込速度
T…補助ブレーキペダルの踏力
Xb…所定値(補助ブレーキペダルの所定の踏込速度)
Tb…所定値(補助ブレーキペダルの所定の踏力)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7