特許第6406312号(P6406312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000002
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000003
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000004
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000005
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000006
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000007
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000008
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000009
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000010
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000011
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000012
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000013
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000014
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000015
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000016
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000017
  • 特許6406312-構造物製造システム 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406312
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】構造物製造システム
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20181004BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181004BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B41M3/06 F
   B41J2/01 123
   B41J2/01 127
   B41J29/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-99151(P2016-99151)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-205923(P2017-205923A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】牛込 洋一
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 諭
(72)【発明者】
【氏名】小野 純一
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−132765(JP,A)
【文献】 特開2013−136171(JP,A)
【文献】 特開2013−180559(JP,A)
【文献】 特開2013−220641(JP,A)
【文献】 特開2013−220647(JP,A)
【文献】 特開2014−083740(JP,A)
【文献】 特開平11−254788(JP,A)
【文献】 特開2000−071554(JP,A)
【文献】 特開2008−143069(JP,A)
【文献】 特開2001−212947(JP,A)
【文献】 米国特許第04268615(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/00 − 3/18
B29C 59/00
B41J 2/01
B41J 29/00 −29/70
B41M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により膨張する膨張層を含む媒体に対し、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層を印刷する印刷装置と、
前記印刷装置と横に並ぶように配置され、前記媒体に向けて電磁波を照射することにより前記膨張層を膨張させる膨張装置と、
前記印刷装置と前記膨張装置との上方を覆うように配置された天板と、を備え
前記印刷装置及び前記膨張装置のそれぞれは、前記媒体を吸入するための吸入部と、前記媒体を排出するための排出部と、を有し、
前記印刷装置の前記吸入部と前記膨張装置の前記吸入部とは、前記印刷装置と前記膨張装置とが並ぶ横方向に対し交差する方向において、前記天板に対し一方の側に前記横方向に沿って並んで配置され、
前記印刷装置の前記排出部と前記膨張装置の前記排出部とは、前記交差する方向において、前記天板に対し前記一方の側とは反対側に前記横方向に沿って並んで配置されている、
ことを特徴とする構造物製造システム。
【請求項2】
前記印刷装置及び前記膨張装置のうちの少なくとも一方に関する情報を表示する表示ユニットを更に備え、
前記表示ユニットは、前記天板に組み込まれている、
ことを特徴とする請求項1記載の構造物製造システム。
【請求項3】
前記表示ユニットの上面は、前記天板の上面と同一面上に位置する、
ことを特徴とする請求項2記載の構造物製造システム。
【請求項4】
前記表示ユニットは、前記印刷装置と前記膨張装置とが並ぶ横方向において、前記天板の端に寄った位置に組み込まれている、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の構造物製造システム。
【請求項5】
前記天板を前記印刷装置と前記膨張装置とが並ぶ横方向に対し交差する方向にスライドさせるスライド機構を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の構造物製造システム。
【請求項6】
前記印刷装置の直下に配置された制御ユニットを更に備える、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の構造物製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を製造する構造物製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収した熱量に応じて発泡膨張する膨張層を一方の面上に有する媒体(例えば、熱膨張性シート)上に、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層を印刷により形成し、膨張層のうち媒体に電磁波熱変換層が形成された部位を電磁波の照射によって膨張させて盛上げることにより、構造物を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−28660号公報
【特許文献2】特開2001−150812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような構造物を製造するためには、媒体上に電磁波熱変換層を形成するための装置と、媒体に電磁波を照射するための装置が必要になると考えられるが、それらの装置を組み合わせたシステムを用いて構造物を製造する際に、いかに作業性を高めるかということについては何ら考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、電磁波熱変換層を形成するための装置と電磁波を照射するための装置とを組み合わせたシステムを用いて構造物を製造する際、その作業性を高めることができる構造物製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、構造物製造システムは、加熱により膨張する膨張層を含む媒体に対し、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層を印刷する印刷装置と、前記印刷装置と横に並ぶように配置され、前記媒体に向けて電磁波を照射することにより前記膨張層を膨張させる膨張装置と、前記印刷装置と前記膨張装置との上方を覆うように配置された天板と、を備え、前記印刷装置及び前記膨張装置のそれぞれは、前記媒体を吸入するための吸入部と、前記媒体を排出するための排出部と、を有し、前記印刷装置の前記吸入部と前記膨張装置の前記吸入部とは、前記印刷装置と前記膨張装置とが並ぶ横方向に対し交差する方向において、前記天板に対し一方の側に前記横方向に沿って並んで配置され、前記印刷装置の前記排出部と前記膨張装置の前記排出部とは、前記交差する方向において、前記天板に対し前記一方の側とは反対側に前記横方向に沿って並んで配置されている、ことを特徴とする構造物製造システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電磁波熱変換層を形成するための装置と電磁波を照射するための装置とを組み合わせたシステムを用いて構造物を製造する際、その作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムを模式的に示す正面図である。
図1B】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムを模式的に示す平面図である。
図1C】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムの天板を引き出す前の閉状態を模式的に示す平面図である。
図1D】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムの天板を引き出した後の開状態を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムを正面左上から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムを背面右上から見た斜視図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムの天板を引き出した後の開状態を正面左上から見た斜視図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムを示す正面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムを示す右側面図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムを正面右上から見た斜視図である。
図8】本発明の一実施の形態におけるフレームを正面右上から見た斜視図である。
図9A】本発明の一実施の形態における構造物製造用の媒体を示す断面図である。
図9B】本発明の一実施の形態における構造物を示す断面図である。
図10】本発明の一実施の形態における構造物製造方法を説明するためのフローチャートである。
図11】本発明の一実施の形態における制御ユニットとして動作することが可能なコンピュータのハードウェア構成例である。
図12】本発明の一実施の形態における印刷ユニット本体を示す斜視図である。
図13】本発明の一実施の形態における膨張ユニットの内部構造を簡略化した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る構造物製造システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1A及び図1Bは、構造物製造システム1を模式的に示す正面図及び平面図である。
【0010】
図1C及び図1Dは、構造物製造システム1の天板30を引き出す前の閉状態及び引き出した後の開状態を模式的に示す平面図である。
図2及び図3は、構造物製造システム1を正面左上から見た斜視図及び背面右上から見た斜視図である。
【0011】
図4は、構造物製造システム1の天板30を引き出した後の開状態を正面左上から見た斜視図である。
図5図6、及び図7は、構造物製造システム1を示す正面図、右側面図、及び正面右上から見た斜視図である。
【0012】
図8は、フレーム60を正面右上から見た斜視図である。
なお、図1A図8並びに後述する図12及び図13において、X方向(第1の方向)は、印刷ユニット10と膨張ユニット20とが並ぶ方向(水平方向)と同一であり、Y方向(第2の方向)は、図12及び図13に示す媒体M11〜M14が搬送される搬送方向Dと同一であり、Z方向は鉛直方向と同一であり、X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。
【0013】
図1A図7に示すように、構造物製造システム1は、印刷装置の一例である印刷ユニット10と、膨張装置の一例である膨張ユニット20と、天板30と、表示ユニット40と、制御ユニット50と、フレーム60と、を備える。
【0014】
印刷ユニット10は、後述する図12に示す印刷ユニット本体300と、媒体M11〜M13を吸入するための吸入部11と、この媒体M11〜M13に印刷が行われてなる媒体M12〜M14を排出するための排出部12と、を有する。詳しくは後述するが、印刷ユニット10は、媒体M11,M13に対し、図9Aに示す表側電磁波熱変換層104及び裏側電磁波熱変換層106を印刷する。また、印刷ユニット10は、媒体M12に対し、図9Aに示すカラーインク層105を印刷する。
【0015】
膨張ユニット20は、媒体M14を吸入するための吸入部21と、媒体M14を排出するための排出部22と、を有し、図13に示す照射部24によって、媒体M14に向けて電磁波を照射することにより図9Aに示す発泡樹脂層102を膨張させることにより、図9Bに示す構造物M15を製造する。
【0016】
印刷ユニット10と膨張ユニット20とは、第1の方向(X方向)に並ぶように配置されている。印刷ユニット10の吸入部11と膨張ユニット20の吸入部21とは、第1の方向に交差する第2の方向であるY方向の一方側(背面側)に配置され、印刷ユニット10の排出部12と膨張ユニット20の排出部22とは、Y方向の他方側(正面側)に配置されている。言い換えると、印刷ユニット10の吸入部11と膨張ユニット20の吸入部21とは、印刷ユニット10と膨張ユニット20とが並ぶX方向に対し交差する方向(Y方向)において、天板30に対し一方の側にX方向に沿って並んで配置され、印刷ユニット10の排出部12と膨張ユニット20の排出部22とは、該交差する方向において、天板30に対し該一方の側とは反対側にX方向に並んで配置されている。
【0017】
ここで、正面側とは、通常、図1B図1Dに示すオペレータ400が構造物製造システム1に対して対峙する側である。また、正面側は、表示ユニット40における表示内容の上下方向の下側といえる。そして、背面側は、表示ユニット40における表示内容の上下方向の上側である。なお、表示ユニット40が表示の向きを任意に変更可能であってもよい。ここで、上述のようにY方向の一方側が背面側でY方向の他方側が正面側であるため、Y方向に直交(交差)する水平方向であるX方向は横方向、或いは左右方向とも称する。図1Bには、表示ユニット40に表示されている表示内容(山を描いた絵画)の一例を示している。
【0018】
なお、印刷ユニット10及び膨張ユニット20は正面パネル65を取り外した状態で、例えば正面側に引き出し可能に配置されていることが望ましい。また、後述する制御ユニット50も、例えば正面側に引き出し可能に配置されていることが望ましい。
【0019】
天板30は、印刷ユニット10と膨張ユニット20との上方を覆うように配置されている。天板30は、図8に示すフレーム60の左右一対のスライド機構67によって、図1Cに示す閉状態、すなわち印刷ユニット10と膨張ユニット20との上方を覆う状態と、図1Dに示す開状態S、すなわち印刷ユニット10と膨張ユニット20との上方を開放する引き出した状態とに、Y方向に沿ってスライドする。即ち、天板30は、このスライド機構67によって、印刷ユニット10と膨張ユニット20とが並ぶX方向に対し交差する方向(Y方向)にスライド可能となっている。なお、天板30は、印刷ユニット10と膨張ユニット20との上方全体を開放する位置までスライドしなくともよいが、印刷ユニット10及び膨張ユニット20のメンテナンスなどの作業を行うことが可能な位置までスライド可能であることが望ましい。図1Dには、構造物製造システム1を用いて製造される構造物M15と、構造物M15を製造する途中の作製物である媒体M12〜M14とをあわせて示した。また、この図1Dでは、表示ユニット40の表示内容と上下方向が同じ向きに印刷された媒体M12〜M14が出力されている。
【0020】
表示ユニット40は、印刷ユニット10及び膨張ユニット20のうちの少なくとも一方に関する情報を表示する。図1Aに示すように、表示ユニット40の上面は、天板30の上面と同一面上に位置することが望ましい。表示ユニット40は、印刷ユニット10及び膨張ユニット20のうちの少なくとも一方の操作を行うためのタッチパネルを有するとよい。
【0021】
表示ユニット40のX方向における中心C2は、天板30のX方向における中心C1よりも膨張ユニット20側にシフトした位置に組み込まれている。換言すると、表示ユニット40は、X方向において、天板30の中心C1よりも膨張ユニット20側にシフトした位置、即ち、X方向において天板30の端に寄った位置に組み込まれている。なお、表示ユニット40は、X方向において、天板30の中心C1よりも印刷ユニット10側にシフトした位置に組み込まれていてもよい。但し、後述するように印刷ユニット10の直下には制御ユニット50が位置するため、座った状態のオペレータ400の足が制御ユニット50に接触することを避けるためにオペレータ400が膨張ユニット20に対峙するように座る場合、この場合のオペレータ400の見やすさの観点からは、表示ユニット40は膨張ユニット20側にシフトしていることがより望ましい。
【0022】
なお、印刷ユニット10及び膨張ユニット20のうちの少なくとも一方を操作する操作ユニットが、表示ユニット40に代えて配置されるか或いは表示ユニット40とともに配置されてもよい。この場合、操作ユニットは、例えば、ボタン、スイッチ、ダイヤルなどを有し、天板30に組み込まれるか或いは天板30上に配置されているとよい。
【0023】
図1Aに示すように、制御ユニット50は、印刷ユニット10の直下に配置されている。ここで、直下とは、印刷ユニット10のX方向及びY方向の中心の下に制御ユニット50の少なくとも一部が位置し、且つ、制御ユニット50のX方向及びY方向の中心の上に印刷ユニット10の少なくとも一部が位置する場合をいうものとする。
【0024】
制御ユニット50は、印刷ユニット10、膨張ユニット20、及び表示ユニット40のうちの少なくとも1つを制御するための制御部を有する。また、制御ユニット50は、印刷ユニット10、膨張ユニット20、及び表示ユニット40のうちの少なくとも1つに電源を供給する電源供給部を有するとよい。図2及び図5に示すように、制御ユニット50の下部には、印刷ユニット10及び膨張ユニット20のうちの少なくとも一方の動作を停止させるための緊急停止ボタン51が設けられている。この緊急停止ボタン51は、制御ユニット50のうちオペレータ400側である正面側に設けられることが望ましい。
【0025】
図6に示すように、制御ユニット50の正面側の端部(図6における左端)は、印刷ユニット10(及び膨張ユニット20)の正面側の端部よりも背面側(図6における右側)に奥まって配置されている。また、図5に示すように、制御ユニット50の右側面側の端部は、印刷ユニット10の右側面側の端部よりも左方に位置する。そのため、図7に示すように、制御ユニット50は、正面側及び右側面側から視認しづらくなっている。なお、制御ユニット50が視認されない場合、視認される場合よりもすっきりした外観イメージをオペレータ400に与えることで、デザイン性が高まるといえる。
【0026】
図8に示すように、フレーム60は、一対の側面ベース61,61と、一対の側面パネル62,62と、4つの可動脚63と、4つの固定脚64と、図2図5、及び図7に示す正面パネル65と、図3に示す背面パネル66と、一対のスライド機構67,67と、2本の上連結ビーム68,68と、3本の下連結ビーム69,69,69と、を有する。
【0027】
一対の側面ベース61,61は、側面視において、上辺よりも下辺が長く且つ角部が丸まった台形の枠状(或いは略矩形の枠状)を呈する。一対の側面ベース61,61には、印刷ユニット10及び膨張ユニット20が上部に固定される3本の下連結ビーム69それぞれの端部を支持する支持ビーム61aがY方向に延びるように設けられている。
【0028】
一対の側面パネル62,62は、側面視において、側面ベース61の中空部分のうち上側半分以上を多い且つ下側に中空部分を残すように、側面ベース61の上端から支持ビーム61aに亘って設けられている。また、図5及び図6に示すように、一対の側面パネル62,62は、側面視において、側面ベース61の上端から印刷ユニット10及び膨張ユニット20の下端よりも下方に亘って設けられている。そして、印刷ユニット10及び膨張ユニット20は、側面視において、吸入部11,21を除いて側面ベース61及び側面パネル62からはみ出さない。なお、すっきりした外観イメージをオペレータ400に与えることでデザイン性を高める観点では、上述のように印刷ユニット10及び膨張ユニット20が左右から視認されにくくなっていることが望ましい。また、側面パネル62が側面ベース61の中空部分の全体を覆ってもよいが、材料費を抑制する観点では、中空部分の一部のみを覆うことがより望ましい。
【0029】
可動脚63は、構造物製造システム1を運搬可能にするためのキャスターであり、各側面ベース61に2つずつ計4つ設けられている。固定脚64は、各側面ベース61において、2つの可動脚63の間に2つずつ計4つ設けられている。固定脚64は、構造物製造システム1の運搬を許容する上方の位置と、地面に接触し構造物製造システム1を移動不能にするための下方の位置とに高さ調整自在に設けられていることが望ましい。
【0030】
図2図5、及び図7に示すように、正面パネル65は、印刷ユニット10及び膨張ユニット20の正面側を覆い、排出部12,22において開口する。また、正面パネル65は、側面パネル62と同様にデザイン性を高めるために、側面ベース61の上端から印刷ユニット10及び膨張ユニット20の下端よりも下方に亘って設けられている。正面パネル65の下端は、一対の側面パネル62,62の下端や支持ビーム61aと同程度の高さに位置する。なお、正面パネル65は、着脱容易であることが望ましい。
【0031】
正面パネル65のうち印刷ユニット10の正面側に位置する第1面65aは、膨張ユニット20の正面側に位置する第2面65bよりも正面側に突出している。そのため、それぞれX方向及びZ方向に拡がる第1面65aと第2面65bとの間は段差になっている。なお、正面パネル65の第1面65a及び第2面65bは、側面ベース61の正面側の端部よりも背面側に奥まった位置に設けられている。
【0032】
図3に示すように、背面パネル66は、印刷ユニット10及び膨張ユニット20の背面側を覆い、吸入部11,21において開口する。また、背面パネル66は、一対の側面ベース61,61の間において、側面パネル62と同様にデザイン性を高めるために、側面ベース61の上端から印刷ユニット10及び膨張ユニット20の下端よりも下方に亘って設けられている。背面パネル66の下端は、一対の側面パネル62,62の下端や支持ビーム61aと同程度の高さに位置する。なお、背面パネル66は、着脱容易であることが望ましい。
【0033】
背面パネル66は、側面ベース61の背面側の端部に沿うように設けられている。そのため、背面パネル66の上部には、側面ベース61の正面側上端の湾曲部分に沿うように湾曲する湾曲部66aが設けられている。
【0034】
図8に示す一対のスライド機構67,67は、一対の側面ベース61,61aの互いに対向する面の上端にそれぞれ設けられている。各スライド機構67は、天板30のうち例えばX方向の両端から下方に突出する部分に固定されたスライダ67aと、このスライダ67aがY方向に移動するのをガイドするガイドレール67bと、を有する。これにより、各スライド機構67は、上述のように、天板30をY方向にスライドさせる。
【0035】
2本の上連結ビーム68,68は、一対の側面ベース61,61を連結するために、一対の側面ベース61,61の間に架け渡されるように設けられている。2本の上連結ビーム68,68のうちの一方は、一対の側面ベース61,61の上端のうち背面側の端部に固定され、他方は、ガイドレール67bの正面側の端部の下部において、側面ベース61及びガイドレール67bに固定されている。
【0036】
3本の下連結ビーム69,69,69は、一対の側面ベース61,61を連結するために、一対の側面ベース61,61の支持ビーム61a,61aの間に架け渡されるように、Y方向に互いに間隔を隔てて設けられている。3本の下連結ビーム69,69,69の上部には、印刷ユニット10及び膨張ユニット20が固定されている。また、3本の下連結ビーム69,69,69の下部には制御ユニット50が固定されている。
【0037】
3本の下連結ビーム69,69,69のうちの1本は、支持ビーム61aの背面側の端部に固定され、残りの2本は支持ビーム61aのY方向の中心付近に配置されている。そして、3本の下連結ビーム69,69,69は、構造物製造システム1のメンテナンス時などにオペレータ400の作業を邪魔しないように、支持ビーム61aの正面側には設けられていない。
【0038】
なお、2本の上連結ビーム68,68上には天板30が位置し、3本の下連結ビーム69,69,69上には印刷ユニット10及び膨張ユニット20が位置することで、上連結ビーム68及び下連結ビーム69も外部から視認されづらいといえる。
【0039】
図9Aは、本実施の形態における構造物製造用の媒体M14を示す断面図であり、図9Bは、本実施の形態における構造物M15を示す断面図である。
図9Aに示す媒体M14は、発泡樹脂層102を加熱により膨張させる前の状態であり、図13に示すように、膨張ユニット20の吸入部21から膨張ユニット20に挿入され、照射部24により電磁波を照射されることで発泡樹脂層102が加熱により膨張し、図9Bに示す構造物M15が製造される。
【0040】
また、基材101と発泡樹脂層102とインク受容層103とが順に積層された媒体M11は、印刷ユニット10の吸入部11から印刷ユニット10に挿入され、例えば図12に示す印刷ユニット本体300において、表側電磁波熱変換層104が印刷されて排出部12から排出される。この表側電磁波熱変換層104が印刷された媒体M12には、カラーインク層105が印刷される。また、このカラーインク層105が印刷された媒体M13には、裏側電磁波熱変換層106が印刷される。なお、表側電磁波熱変換層104及び裏側電磁波熱変換層106は、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層の一例である。また、カラーインク層105は、画像層の一例である。
【0041】
基材101は、紙、キャンバス地などの布、プラスチックなどのパネル材などからなり、材質は特に限定されるものではない。
発泡樹脂層102には、基材101上に設けられた熱可塑性樹脂であるバインダー内に熱発泡剤(熱膨張性マイクロカプセル)が分散配置されている。これにより、発泡膨張層102は、吸収した熱量に応じて発泡膨張する。なお、発泡樹脂層102は、加熱により膨張する膨張層の一例である。
【0042】
インク受容層103は、発泡樹脂層102の上面全体を覆うように、例えば、10μmの厚さに形成されている。インク受容層103は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペンや万年筆のインク、鉛筆の黒鉛などを受容し、少なくともその表面に定着させるために好適な材料からなり、インクジェット用紙などに用いられている汎用的なインク受容層を用いることができる。
【0043】
インク受容層103、表側電磁波熱変換層104、及び裏側電磁波熱変換層106は、それぞれ伸縮性を有する場合、発泡樹脂層102の発泡膨張に追従して変形することで、発泡樹脂層102とインク受容層103との間、インク受容層103と表側電磁波熱変換層104との間、及び基材101と裏側電磁波熱変換層106との間に隙間が生じにくくなる。このような隙間が生じると、表側電磁波熱変換層104から発泡樹脂層102への熱伝導量が抑制されるおそれがある。
【0044】
図10は、本実施の形態における構造物製造方法を説明するためのフローチャートである。
まず、上述の媒体M11を準備し、次いで、媒体M11の膨張層102が設けられた側の面である第1面、即ち、インク受容層103の表面において、膨張層102を膨張させたい部分に表側電磁波熱変換層104として、カーボンブラックを含む黒色インク(黒色材料)を、図12に示す汎用的なインクジェットプリンタである印刷ユニット本体300を用いてインクジェット方式により印刷することにより、表側電磁波熱変換層104が形成される(ステップS11:第1面電磁波熱変換層形成工程)。表側電磁波熱変換層104が形成された媒体M11を媒体M12と称する。
【0045】
印刷ユニット本体300は、座標毎に設定されたグレースケール値を読み取り、読み取った値に基づいて、黒色材料(黒色インク)を、例えば、面積階調によりその濃度を制御しながら印刷する。なお、表側電磁波熱変換層104は、媒体M11に含まれる、基材101、発泡樹脂層102、及びインク受容層103の各材料よりも、電磁波を熱エネルギーに変換しやすい材料により形成される。また、表側電磁波熱変換層104は、電磁波を熱に変換するものであればよく、印刷ユニット本体300によって形成される層以外の層であってもよい。
【0046】
なお、裏側電磁波熱変換層106についても同様であるが、表側電磁波熱変換層104が同量の電磁波を照射された場合、表側電磁波熱変換層104の濃度(例えば、面積階調)が濃い部分に対応する領域ほど、発泡樹脂層102は、より多くの熱エネルギーを吸収する。基本的には、発泡樹脂層102の発泡高さは、発泡樹脂層102の吸収する熱量に正の相関を有するため、結局、表側電磁波熱変換層104や裏側電磁波熱変換層106の濃度がより濃く形成された部分ほど、発泡樹脂層102の発泡高さは高くなる。そこで、表側電磁波熱変換層104は、後述する裏側電磁波熱変換層106とともに、発泡樹脂層102が発泡膨張することにより形成される立体形状の目標高さに対応するように濃淡が決定される。
【0047】
次いで、媒体M12の第1面、即ち、表側電磁波熱変換層104が設けられた表面に、彩色材料としてのシアンC、マゼンタM、及びイエローYの3色のカラーインクを、図12に示す印刷ユニット本体300を用いてインクジェット方式により印刷することにより、カラーインク層105が形成される(ステップS12:画像層形成工程)。このカラーインク層105が形成された媒体M12を媒体M13と称する。
【0048】
ここで、画像層形成工程S12においてカーボンブラックを含む黒インクを用いると、この黒インク部分が電磁波から変換した熱が発泡膨張層102に伝導することにより、発泡樹脂層102の所望の発泡状態を得ることができなくなる。そのため、カラーインク層105における黒又はグレーの色合いは、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの混色により形成するか、又は、熱エネルギーを吸収しない黒インク、即ちカーボンブラックを含まないブラックKのインクを用いて形成するとよい。或いは、上述のように、カラーインク層105の部位ごとの熱吸収性を考慮して、この熱吸収性を差し引いて表側熱変換層104の熱吸収性、即ち濃淡が決定されてもよい。
【0049】
また、発泡樹脂層102が発泡膨張して発泡樹脂層102の表面積が拡がるのに伴い、カラーインク層105の密度が小さくなることで、発泡樹脂層102の後述する発泡膨張後に、発泡膨張前に比べて、視覚的な色合いが薄くなる。このため、カラーインク層105は、発泡樹脂層102の膨張後において視覚的に所望の色合いになるように設定されるとよい。即ち、発泡樹脂層102の膨張量が大きく設定された部分ほど、その部分へ形成されるカラーインク層105の形成濃度が高くなるとよい。
【0050】
なお、画像層形成工程S12において、カラーインク層105を形成するのに代えて、白黒印刷によって黒インク層を形成してもよい。また、これらのカラーインク層105及び黒インク層は、インクジェットプリンタである印刷ユニット本体300以外の手段、例えばレーザープリンタなどによって形成されてもよい。
【0051】
次いで、媒体M11の膨張層102が設けられた側の面である第1面とは反対側の第2面、即ち、基材101の裏面において、カーボンブラックを含む黒色インク(黒色材料)を、図12に示す印刷ユニット本体300を用いてインクジェット方式により印刷することにより、裏側電磁波熱変換層106が形成される(ステップS13:第2面電磁波熱変換層形成工程)。裏側電磁波熱変換層106が形成された媒体M13を媒体M14と称する。裏側電磁波熱変換層106の形成方法については、上述の表側電磁波熱変換層104と同様にすることができる。なお、表側電磁波熱変換層104及び裏側電磁波熱変換層106のうちの一方を省略してもよい。また、裏側電磁波熱変換層106の形成を、表側電磁波熱変換層104の形成前、或いは、表側電磁波熱変換層104の形成後で且つカラーインク層105の形成前に行ってもよい。
【0052】
次いで、媒体M14は、第2面側、即ち裏側電磁波熱変換層106側から、電磁波を放射され(ステップS14:第2面側電磁波照射工程)、その後、第1面側、即ちカラーインク層105側から、電磁波を放射される(ステップS15:第1面側電磁波照射工程)。なお、第2面側電磁波照射工程S14の前又は第2面側電磁波照射工程S14と同時に第1面側電磁波照射工程S15を行ってもよい。また、表側電磁波熱変換層104及び裏側電磁波熱変換層106のうちの一方を省略した場合には、それに合わせて第2面側電磁波照射工程S14又は第1面側電磁波照射工程S15が省略される。
【0053】
これらの第2面側電磁波照射工程S14及び第1面側電磁波照射工程S15は、裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104により吸収される波長領域の電磁波を照射することによって発泡樹脂層102を加熱により膨張させる工程であればよく、図13に示す照射部24によって行われる。これにより、特に裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104が電磁波を熱に変換し、その熱が発泡樹脂層102に含まれる熱発泡剤に伝導し、熱発泡剤が膨張反応を起こす。そのため、特に裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104の黒濃度に応じた程度、発泡樹脂層102が発泡膨張する。以上のようにして、媒体M11から構造物が製造される。なお、発泡樹脂層102のうち裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104の両方とも形成されていない部分が熱エネルギーを吸収したとしてもその熱量は十分小さく抑えられており、実質的に高さが変化しないか、裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104を形成された部分に比べれば高さの変化は十分小さい。
【0054】
ここで、裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104へ向けて照射される電磁波の波長は、裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104に応じて適宜変更してよい。裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104に用いられるカーボンブラックは、他の波長の電磁波に比べ、近赤外領域(750〜1400nm)を中心に、可視光領域(380〜750nm)及び中赤外領域(1400〜4000nm)を含む波長の電磁波を吸収しやすい。カーボンブラック以外の材料を裏側電磁波熱変換層106及び表側電磁波熱変換層104として用いてもよく、用いる材料に応じて、全波長領域のうちから所望の波長領域の電磁波を照射すればよい。従って、材料によっては、近紫外領域(200〜380nm)、遠紫外領域(10〜200nm)、近赤外、中赤外を除く赤外領域(4000〜15000nm)等、他の波長の電磁波を照射してもよい。なお、上記の数値は一例であり、波長領域の境界はこの数値に限らない。
【0055】
上述の制御ユニット50としては、図11に示すコンピュータ200、即ち、CPU(Central Processing Unit)201と、記憶部202と、入力部203と、インターフェース部204と、記録媒体駆動部205とを備えるコンピュータを用いることができる。これらの構成要素は、バスライン206を介して接続されており、各種のデータを互いに授受する。
【0056】
CPU201は、コンピュータ200全体の動作を制御する演算処理装置である。CPU201は、構造物製造用のプログラムを読み出して実行することにより、構造物の製造の制御を行う。
【0057】
記憶部202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどを含む。
ROMは、所定の基本制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリである。なお、ROMとして、フラッシュメモリ等の、電力供給の停止に対して記憶データが不揮発性であるメモリを使用してもよい。
【0058】
RAMは、CPU201が各種の制御プログラムを実行する際に、必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリである。
ハードディスクは、CPU201によって実行される各種の制御プログラムや各種のデータを記憶する。
【0059】
入力部203は、例えばキーボード装置やマウス装置であり、コンピュータ200のユーザにより操作されると、その操作内容に対応付けられているユーザからの各種の入力情報を取得し、取得した入力情報をCPU201に送る。
【0060】
インターフェース部204は、各種機器との間での各種情報の授受の管理を行う。
記録媒体駆動部205は、可搬型記録媒体207に記録されている各種の制御プログラムやデータの読み出しを行う装置である。CPU201は、可搬型記録媒体207に記録されている所定の制御プログラムを、記録媒体駆動部205を介して読み出して実行することによって、構造物製造の各処理を行うようにすることもできる。
【0061】
なお、可搬型記録媒体207としては、例えばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)やDVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、USB規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリなどがある。
【0062】
このようなコンピュータ200を構造物製造システム1の制御ユニット50として動作させるために、まず、各処理をCPU201に行わせるための制御プログラムが作成される。この作成された制御プログラムは、記憶部202のハードディスク装置又は可搬型記録媒体207に予め格納される。そして、CPU201に所定の指示が与えられることで、制御プログラムが読み出されて実行される。これにより、コンピュータ200が、制御ユニット50として動作する。
【0063】
図12は、本実施の形態における印刷ユニット本体300を示す斜視図である。
印刷ユニット本体300は、印刷ユニット10の内部に配置され、媒体搬送方向に直交する両方向矢印aで示す方向に往復移動可能に設けられたキャリッジ301を備える。このキャリッジ301には、印刷を実行する印刷ヘッド302とインクを収容しているインクカートリッジ303(303w,303c,303m,303y)とが取り付けられている。
【0064】
カートリッジ303w,303c,303m,303yは、それぞれ、ホワイトW,シアンC,マゼンタM,イエローYの色インクを収容する。これらのカートリッジは、個別に独立して配置されているか、又は各インク室が1個の筐体内に一体化された構成をしており、各色インクを吐出するそれぞれのノズルを有する印刷ヘッド302に連結されている。
【0065】
また、キャリッジ301は、一方ではガイドレール304により滑動自在に支持され、他方では歯付き駆動ベルト305に固着している。これにより、印刷ヘッド302及びインクカートリッジ303(303w,303c,303m,303y)は、キャリッジ301と共に、図12の両方向矢印aで示す、搬送方向Dに直交する方向つまり印刷の主走査方向に往復駆動される。
【0066】
印刷ヘッド302と上述の制御ユニット50との間には、フレキシブル通信ケーブル306が内部フレーム307を介して接続されている。これにより、フレキシブル通信ケーブル306を通して印刷データ及び印刷制御データが印刷ヘッド302に送出され、これらのデータに基づいて印刷ヘッド302が制御される。
【0067】
内部フレーム307の下部には、印刷ヘッド302に対向する位置に、印刷ヘッド302の上記主走査方向に延在するように、プラテン308が配設されている。このプラテン308は、媒体搬送路の一部を構成している。表側電磁波熱変換層104を形成される媒体M11、カラーインク層105が形成される媒体M12、及び、裏側電磁波熱変換層106を形成される媒体M13のそれぞれは、下面がプラテン308上に接した状態で、吸入ローラ対409(下のローラは媒体M11,M12,M13の陰になっていて図12では見えない)及び排出ローラ対310(下のローラは同様に見えない)により上述の搬送方向Dである図12の矢印bで示す印刷副走査方向に間欠的に搬送される。吸入ローラ309及び排出ローラ対310は、制御ユニット50によって制御される。
【0068】
制御ユニット50は、モータ311、印刷ヘッド302、吸入ローラ対309、及び排出ローラ対310を制御することで、モータ311に連結された駆動ベルト305を介してキャリッジ301とともに印刷ヘッド302を主走査方向の適切な位置へと搬送させるとともに、媒体M12の搬送の停止期間中に、印刷ヘッド302によりシアンC、マゼンタM、イエローYの各カラーインク滴、及び、ブラックKの黒色インク滴を媒体M12へ向けて噴射させることにより、媒体M12上にカラーインク層105の印刷が行われる。また、媒体M11又は媒体M13の搬送の停止期間中に、印刷ヘッド302によりブラックKの黒色インク滴を媒体M11又は媒体M13へ向けて噴射させることにより、媒体M11には表側電磁波熱変換層104の印刷が行われ、媒体M13には裏側電磁波熱変換層106の印刷が行われる。
【0069】
図13は、本実施の形態における膨張ユニット20の内部構造を簡略化した断面図である。
図13に示すように、膨張ユニット20は、上述の吸入部21及び排出部22と、筐体23と、この筐体23の内部に設けられた照射部24と、を有する。膨張ユニット20においては、吸入部21から吸入された媒体M14は、吸入部21の搬送ガイド21b及び筐体23の搬送ガイド23bによってガイドされながら、搬送部の一例である、吸入部21の搬送ローラ21a及び筐体23の搬送ローラ23aによって搬送される。
【0070】
照射部24は、上述のように、媒体M14に対し電磁波を照射する。照射部24は、例えば、ハロゲンランプであり、近赤外領域(750〜1400nm)の光を照射する。
【0071】
以上説明した本実施の形態では、構造物製造システム1は、加熱により膨張する膨張層の一例である発泡樹脂層102を含む媒体M11,M13に対し、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層の例である表側電磁波熱変換層104及び裏側電磁波熱変換層106を印刷する印刷装置の一例である印刷ユニット10と、この印刷ユニット10と横(X方向)に並ぶように配置され、媒体M14に向けて電磁波を照射することにより発泡樹脂層102を膨張させる膨張装置の一例である膨張ユニット20と、印刷ユニット10と膨張ユニット20との上方を覆うように配置された天板30と、を備える。
【0072】
ところで、電磁波熱変換層の形成と電磁波の照射とをそれぞれ独立した印刷ユニット10及び膨張ユニット20において互いに独立して行うことによって、電磁波熱変換層の形成と電磁波の照射とを望ましいタイミングで且つ専用の装置で行うことができるため、所望の発泡膨張状態の構造物を製造しやすくすることができる。一方で、オペレータ400は、印刷ユニット10及び膨張ユニット20に対して、それぞれ媒体M12,M13又は媒体M14の挿入及び取り出しの作業を行うことになる。しかしながら、本実施の形態では、上述のように、印刷ユニット10と膨張ユニット20とが横に並ぶように配置され、これら印刷ユニット10及び膨張ユニット20の上方に天板30が位置することで、オペレータ400は、構造物製造システム1に対峙するのみで移動せずに或いはわずかな移動で上述の印刷ユニット10及び膨張ユニット20の作業を互いに同程度の高さで行うことができるため、作業性を高めることができる。また、天板30上に媒体M11〜M14や、他の作業に関する物を載置することができることによっても、作業性を高めることができる。よって、本実施の形態によれば、磁波熱変換層を形成するための装置(印刷ユニット10)と電磁波を照射するための装置(膨張ユニット20)とを組み合わせたシステムを用いて構造物を製造する際、その作業性を高めることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、印刷ユニット10及び膨張ユニット20のうちの少なくとも一方に関する情報を表示する表示ユニット40が、天板30に組み込まれている。これにより、オペレータ400は、天板30に組み込まれた表示ユニット40を見ながら、天板30上で他の作業を行うことができるため、更に作業性を高めることができる。
【0074】
また、本実施の形態では、表示ユニット40の上面は、天板30の上面と同一面上に位置する。そのため、天板30上での作業が容易になり、更に作業性を高めることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、表示ユニット40は、印刷ユニット10と膨張ユニット20とが並ぶ横方向(X方向)において、天板30の端に寄った位置に組み込まれている。これにより、天板30上のうち、表示ユニット40が端に寄った向きとは反対側の天板30上のスペースで作業を行うことができるため、更に作業性を高めることができる。
【0076】
また、本実施の形態では、印刷ユニット10の吸入部11と膨張ユニット20の吸入部21とは、印刷ユニット10と膨張ユニット20とが並ぶ横方向(X方向)に対し交差する方向(Y方向)において、天板30に対し一方の側に横方向に沿って並んで配置され、印刷ユニット10の排出部12と膨張ユニット20の排出部22とは、上記交差する方向(Y方向)において、天板30に対し上記一方の側とは反対側に横方向(X方向)に沿って並んで配置されている。これにより、印刷ユニット10及び膨張ユニット20に対する媒体の挿入と取り出しとをそれぞれ同一側から行うことができる。そのため、排出部12,22が設けられた正面側から印刷状態や発泡膨張状態を確認しやすくなるなど、更に作業性を高めることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、スライド機構67,67は、天板30を印刷ユニット10と膨張ユニット20とが並ぶ横方向(X方向)に対し交差する方向(Y方向)にスライドさせる。このように、天板30をスライドさせ、印刷ユニット10及び膨張ユニット20の上方を開放させることで、印刷ユニット10におけるインク交換、印刷ユニット10及び膨張ユニット20におけるジャムの解消などのメンテナンスやその他の作業を行うことができる。そのため、更に作業性を高めることができる。
【0078】
また、本実施の形態では、制御ユニット50は、印刷ユニット10の直下に配置されている。そのため、印刷ユニット10よりも高温になりやすい膨張ユニット20の直下に配置される場合と比較して、制御ユニット50を構成する電子部品などが高温環境に起因して破損するのを防ぐことができる。
【0079】
以上、本発明の一実施の形態を説明したが、本願発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含む。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0080】
[付記1]
加熱により膨張する膨張層を含む媒体に対し、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層を印刷する印刷装置と、
前記印刷装置と横に並ぶように配置され、前記媒体に向けて電磁波を照射することにより前記膨張層を膨張させる膨張装置と、
前記印刷装置と前記膨張装置との上方を覆うように配置された天板と、
を備えることを特徴とする構造物製造システム。
【0081】
[付記2]
前記印刷装置及び前記膨張装置のうちの少なくとも一方に関する情報を表示する表示ユニットを更に備え、
前記表示ユニットは、前記天板に組み込まれている、
ことを特徴とする付記1記載の構造物製造システム。
【0082】
[付記3]
前記表示ユニットの上面は、前記天板の上面と同一面上に位置する、
ことを特徴とする付記2記載の構造物製造システム。
【0083】
[付記4]
前記表示ユニットは、前記印刷装置と前記膨張装置とが並ぶ横方向において、前記天板の端に寄った位置に組み込まれている、
ことを特徴とする付記2又は3記載の構造物製造システム。
【0084】
[付記5]
前記印刷装置及び前記膨張装置のそれぞれは、前記媒体を吸入するための吸入部と、前記媒体を排出するための排出部と、を有し、
前記印刷装置の前記吸入部と前記膨張装置の前記吸入部とは、前記印刷装置と前記膨張装置とが並ぶ横方向に対し交差する方向において、前記天板に対し一方の側に前記横方向に沿って並んで配置され、
前記印刷装置の前記排出部と前記膨張装置の前記排出部とは、前記交差する方向において、前記天板に対し前記一方の側とは反対側に前記横方向に沿って並んで配置されている、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか記載の構造物製造システム。
【0085】
[付記6]
前記天板を前記印刷装置と前記膨張装置とが並ぶ横方向に対し交差する方向にスライドさせるスライド機構を更に備える、
ことを特徴とする付記1から5のいずれか記載の構造物製造システム。
【0086】
[付記7]
前記印刷装置の直下に配置された制御ユニットを更に備える、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか記載の構造物製造システム。
【符号の説明】
【0087】
1…構造物製造システム、10…印刷ユニット、20…膨張ユニット、11,21…吸入部、12,22…排出部、30…天板、40…表示ユニット、50…制御ユニット、60…フレーム、67…スライド機構、300…印刷ユニット本体、M11,M12,M13,M14…媒体、M15…構造物
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13