【実施例1】
【0020】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る印刷システム及び制限印刷方法並びに制限印刷制御プログラムについて、
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1及び
図2は、本実施例の印刷システムの構成例を示す模式図であり、
図3乃至
図5は、各々、クライアント端末、権限管理サーバ、画像形成装置の構成を示すブロック図である。また、
図6は、本実施例の印刷システムの全体動作を示すシーケンス図である。
【0021】
なお、以下の説明において、権限情報は、原稿ファイルの閲覧、編集、保存、印刷などの処理に対する権限を規定する情報であり、印刷に対する権限には、印刷部数や印刷回数によって印刷が制限される部数(印刷許可部数と呼ぶ。)が含まれる。また、権限情報の印刷許可部数は、印刷部数及び印刷回数が制限される場合は、印刷部数と印刷回数とを乗算した部数となり、印刷部数又は印刷回数の一方が制限される場合は、印刷部数又は印刷回数と同じ部数となる。
【0022】
図1に示すように、本実施例の印刷システムは、1又は複数のクライアント端末10と、権限管理サーバ20と、1又は複数の画像形成装置30(ここではMFP1とプリンタ1とする。)とで構成される。これらは、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI(Fiber-Distributed Data Interface)等の規格により定められるLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の通信ネットワーク50によって接続されている。なお、
図1では、印刷システムをクライアント端末10と権限管理サーバ20と画像形成装置30とで構成したが、
図2に示すように、通信ネットワーク50にコントローラ40を接続し、コントローラ40でラスタライズ処理を行う構成としてもよい。以下、
図1の印刷システムを前提にして各装置について詳細に説明する。
【0023】
[クライアント端末]
クライアント端末10は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置であり、
図3(a)に示すように、制御部11、記憶部15、ネットワークI/F部16、表示部17、操作部18などで構成される。
【0024】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)12とROM(Read Only Memory)13やRAM(Random Access Memory)14などのメモリとで構成され、CPU12は、ROM13や記憶部15に記憶した制御プログラムをRAM14に展開して実行することにより、クライアント端末10全体の動作を制御する。上記制御部11は、
図3(b)に示すように、アプリケーション11a、暗号化/復号化処理部11b、印刷指示部11c、権限情報更新指示部11dなどとして機能する。
【0025】
アプリケーション11aは、Microsoft(登録商標)のOfficeやAdobe SystemsのAdobe Reader(登録商標)などであり、印刷対象の原稿ファイルの作成や閲覧を行う。
【0026】
暗号化/復号化処理部11bは、原稿ファイルに対する権限付与を権限管理サーバ20に依頼し、権限管理サーバ20から取得した暗号化キーを用いて、原稿ファイルを暗号化する(暗号化した原稿ファイルを暗号化ファイルと呼ぶ。)と共に、暗号化ファイルに権限を付与する。また、暗号化ファイルを利用(例えば、閲覧、編集、保存、印刷)する場合、権限管理サーバ20に権限を問い合わせ、権限管理サーバ20から取得した復号化キーを用いて暗号化ファイルを復号化すると共に、復号化した原稿ファイルに権限を付与して利用可能にする。
【0027】
印刷指示部11cは、プリンタドライバなどであり、アプリケーション11aが作成した原稿ファイルや暗号化/復号化処理部11bが復号化した原稿ファイルを、PJL(Printer Job Language)やPS(PostScript)、PCL(Printer Control Language)等のページ記述言語で記述されたPDL(Page Description Language)の印刷データに変換し、印刷データを画像形成装置30に送信して印刷を指示する。その際、権限管理サーバ20から権限情報を取得し、権限情報の印刷許可部数を超えない範囲で印刷部数を設定した印刷データを生成し、その印刷データに、権限情報によって印刷が制限されていることを示す印刷制限情報(例えば、フラグなど)を付与して画像形成装置30に送信する。なお、印刷制限情報は印刷データのヘッダなどに格納されていてもよいし、印刷データと印刷制限情報とは別々のデータとしてもよい。また、印刷指示部11cは、印刷許可部数で部数が制限されておらず、回数のみが制限されている場合は、1回の印刷に際して、印刷データの印刷部数を1部に設定して画像形成装置30に送信する。
【0028】
権限情報更新指示部11dは、権限管理サーバ20に対して、所定のタイミングで、権限情報の更新を指示する。具体的には、印刷指示部11cが画像形成装置30に印刷データを送信したら、権限情報の印刷許可部数から、印刷データに基づいて印刷される部数(印刷データに基づく印刷部数と印刷回数とを乗算した部数)を減算して、印刷が可能な残部数(印刷可能部数と呼ぶ。)を算出し、算出した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して権限情報の更新を指示(権限情報の印刷許可部数を印刷可能部数に更新するように指示)する。また、必要に応じて、画像形成装置30から印刷データの受信完了情報や印刷完了情報を受信した時、印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して権限情報の更新を指示する。
【0029】
なお、上記アプリケーション11a、暗号化/復号化処理部11b、印刷指示部11c、権限情報更新指示部11dはハードウェアとして構成してもよいし、制御部11をアプリケーション11a、暗号化/復号化処理部11b、印刷指示部11c、権限情報更新指示部11d(特に、印刷指示部11c、権限情報更新指示部11d)として機能させる制限印刷制御プログラムとして構成し、当該制限印刷制御プログラムをCPU12に実行させるようにしてもよい。
【0030】
記憶部15は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などで構成され、CPU12が各部を制御するためのプログラム、自装置の処理機能に関する情報、アプリケーション11aが作成又は暗号化/復号化処理部11bが復号化した原稿ファイル、暗号化/復号化処理部11bが暗号化した暗号化ファイル、印刷指示部11cが生成した印刷データなどを記憶する。
【0031】
ネットワークI/F部16は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどで構成され、クライアント端末10を通信ネットワーク50に接続し、権限管理サーバ20及び画像形成装置30との通信を可能にする。
【0032】
表示部17は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)表示装置などで構成され、原稿ファイル作成画面や権限管理サーバ20に対する権限確認、復号化キーの要求などを行う画面、印刷指示画面などを表示する。
【0033】
操作部18は、マウスやキーボードなどで構成され、原稿ファイルの作成、原稿ファイルの暗号化、暗号化ファイルの復号化、原稿ファイルの印刷指示などの操作を可能にする。
【0034】
[権限管理サーバ]
権限管理サーバ20は、コンピュータ装置などであり、
図4(a)に示すように、制御部21、記憶部25、ネットワークI/F部26、必要に応じて、表示部27及び操作部28などで構成される。
【0035】
制御部21は、CPU22とROM23やRAM24などのメモリとで構成され、CPU22は、ROM23や記憶部25に記憶した制御プログラムをRAM24に展開して実行することにより、権限管理サーバ20全体の動作を制御する。上記制御部21は、
図4(b)に示すように、権限管理部21a、権限情報更新部21bなどとして機能する。
【0036】
権限管理部21aは、権限情報を記憶部25などに保存して管理する。具体的には、クライアント端末10からの権限付与の依頼に対して、クライアント端末10が作成した原稿ファイルに対して閲覧や編集、保存、印刷などの権限を付与する。そして、原稿ファイルを暗号化するための暗号化キーを生成してクライアント端末10に送信すると共に、付与した権限を権限情報として記憶部25などに保存する。また、クライアント端末10からの権限の問い合わせに対して、権限情報を参照して権限の確認を行い、権限を付与する場合は、暗号化ファイルを復号化するための復号化キーを生成し、復号化キーと権限情報(印刷許可部数を含む。)をクライアント端末10に送信する。
【0037】
権限情報更新部21bは、クライアント端末10からの指示に従って、権限情報の更新を行う。具体的には、クライアント端末10から印刷可能部数が通知された場合に、権限管理部21aが管理する権限情報の印刷許可部数を、クライアント端末10から通知された印刷可能部数に更新する。
【0038】
記憶部25は、HDDやSSDなどで構成され、CPU22が各部を制御するためのプログラム、クライアント端末10から受信した原稿ファイル、権限情報、暗号化キーや復号化キーなどを保存する。
【0039】
ネットワークI/F部26は、NICやモデムなどで構成され、権限管理サーバ20を通信ネットワーク50に接続し、クライアント端末10及び画像形成装置30との通信を可能にする。
【0040】
[画像形成装置]
画像形成装置30は、MFPやプリンタなどであり、
図5(a)に示すように、制御部31、記憶部35、ネットワークI/F部36、表示操作部37、画像処理部38、印刷処理部39などで構成される。
【0041】
制御部31は、CPU32とROM33やRAM34などのメモリとで構成され、CPU32は、ROM33や記憶部35に記憶した制御プログラムをRAM34に展開して実行することにより、画像形成装置30全体の動作を制御する。上記制御部31は、
図5(b)に示すように、印刷制御部31a、状態情報通知部31b、印刷データ削除部31cなどとして機能する。
【0042】
印刷制御部31aは、クライアント端末10から受信した印刷データを記憶部35などに保存し、当該印刷データに基づいて印刷を行う。その際、印刷データに印刷権限情報が付与されているかを判断し、印刷権限情報が付与されていない(印刷制限がない)場合は、印刷データの受信完了を待たずに印刷処理部39に印刷を開始させる印刷(通常印刷と呼ぶ。)を行い、印刷権限情報が付与されている(印刷制限がある)場合は、印刷データの受信が完了した後に印刷処理部39に印刷を開始させる印刷(制限印刷と呼ぶ。)を行う。また、印刷制御部31aは、印刷制限情報で部数が制限されておらず、回数のみが制限されている場合は、印刷データに基づく印刷を、1回あたり1部のみ行うように制御する。
【0043】
状態情報通知部31bは、制限印刷を行う場合に、ネットワークI/F部36や印刷処理部39を監視し、印刷データの受信開始から印刷完了までの任意のタイミング(例えば、印刷データの受信を開始した時、印刷データの受信が完了した時、印刷処理を開始した時、印刷処理が完了した時)において、印刷状態を示す情報(受信完了情報や印刷完了情報など)をクライアント端末10に通知する。
【0044】
印刷データ削除部31cは、状態情報通知部31bから印刷データに基づく印刷が完了した通知を受け取ったら、当該印刷データを記憶部35などから削除する。
【0045】
記憶部35は、HDDやSSDなどで構成され、CPU32が各部を制御するためのプログラム、自装置の処理機能に関する情報、印刷データなどを記憶する。
【0046】
ネットワークI/F部36は、NICやモデムなどで構成され、画像形成装置30を通信ネットワーク50に接続し、クライアント端末10及び権限管理サーバ20との通信を可能にする。
【0047】
表示操作部37は、表示部上に透明電極が格子状に配置された感圧式の操作部(タッチセンサ)を設けたタッチパネルなどであり、画像形成処理に関する各種画面を表示し、画像形成処理に関する各種操作を可能にする。
【0048】
画像処理部38は、RIP部(Raster Image Processor)として機能し、印刷データのラスタライズ処理を行ってビットマップ画像データを生成する。また、画像処理部38は、必要に応じて、ビットマップ画像データに対して、スクリーン処理、階調補正、濃度バランス調整、細線化、網点処理などを行う。そして、画像処理部38は、生成したビットマップ画像データを印刷処理部39に出力する。
【0049】
印刷処理部39は、ビットマップ画像データに基づいて印刷処理を実行する。この印刷処理部39は、ビットマップ画像データに基づいてレーザ光を照射して露光する露光部と、感光体ドラムと現像部と帯電部と感光体クリーニング部と1次転写ローラとを備え、CMYKの各色のトナー像を形成する画像形成部と、ローラによって回転され、画像形成部で形成されたトナー像を用紙に搬送する中間転写体として機能する中間ベルトと、中間ベルト上に形成されたトナー像を用紙に転写する2次転写ローラと、用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部と、用紙を搬送する給紙ローラやレジストローラ、ループローラ、反転ローラ、排紙ローラ等の搬送部などで構成される。
【0050】
なお、
図1乃至
図5は、本実施例の印刷システムの一例であり、本実施例の印刷制御が実現可能な限りにおいて、各装置の構成や制御は適宜変更可能である。
【0051】
例えば、上記では、クライアント端末10が権限管理サーバ20から暗号化キーや復号化キーを取得して暗号化/復号化処理を実行する構成としたが、権限管理サーバ20が暗号化/復号化処理を行い、原稿ファイルを暗号化した暗号化ファイルや暗号化ファイルを復号化した原稿ファイルをクライアント端末10に送信する構成としてもよい。
【0052】
以下、本実施例の印刷システムの全体動作について、
図6のシーケンス図を参照して説明する。なお、クライアント端末10のアプリケーション11aによって作成された原稿ファイルは、暗号化キーによって暗号化されており、閲覧や編集、印刷、保存などの権限(特に、印刷部数や印刷回数)が設定され、権限情報は権限管理サーバ20の記憶部25などに保存されているものとする。
【0053】
クライアント端末10の制御部11(アプリケーション11a)は、記憶部15などから権限管理されている暗号化ファイルを読み込み、当該暗号化ファイルを閲覧する際、制御部11(暗号化/復号化処理部11b)は、権限管理サーバ20に権限の問い合わせを行う。
【0054】
権限管理サーバ20の制御部21(権限管理部21a)は、クライアント端末10からの問い合わせに対して、予め記憶部25などに記憶されている権限情報を参照して、暗号化ファイルに対する権限を確認し、権限を付与する場合は、クライアント端末10に、暗号化ファイルを復号化するための復号化キーと復号化した原稿ファイルに付与する権限情報(印刷許可部数を含む。)とを送信する。
【0055】
クライアント端末10の制御部11(暗号化/復号化処理部11b)は、権限管理サーバ20から受信した復号化キーを用いて暗号化ファイルを復号化すると共に、復号化した原稿ファイルに権限を付与する。原稿ファイルに閲覧権限が付与されている場合は、原稿ファイルを権限情報に応じた内容で表示部17に表示する。そして、原稿ファイルに印刷権限が付与されている場合は、クライアント端末10の制御部11(印刷指示部11c)は、原稿ファイルをPDL等の印刷データに変換し、印刷データに、権限情報の印刷許可部数を超えない範囲で印刷部数を設定すると共に、権限情報によって印刷が制限されていることを示す印刷制限情報を付与して画像形成装置30に送信する。そして、制御部11(権限情報更新指示部11d)は、権限情報の印刷許可部数から、印刷データに設定した印刷部数(例えば、印刷データに基づく印刷部数と印刷回数とを乗算した部数)を減算して印刷可能部数を算出し、算出した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して権限情報の更新を指示する。なお、算出した印刷可能部数は後の処理で利用できるように、記憶部15などに保存する。
【0056】
権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、当該印刷可能部数に基づいて権限情報を更新(権限情報の印刷許可部数を印刷可能部数に更新)する。なお、クライアント端末10が画像形成装置30に印刷データを送信したら、直ちに権限情報を更新するのは、自端末若しくは他のクライアント端末10が同じ原稿ファイルを印刷しようとした場合に、権限情報が更新されていないと、権限管理サーバ20は権限情報によって制限される部数や回数を超えてクライアント端末10に印刷を許可する可能性があるからである。
【0057】
また、画像形成装置30の制御部31(印刷制御部31a)は、クライアント端末10から送信されるデータから印刷制限情報を検出し、印刷制限がない(印刷制限情報が検出されない)場合は、通常印刷を行う。一方、印刷制限がある(印刷制限情報が検出された)場合は、制御部31(印刷制御部31a)は、通常印刷のように印刷データを受信しながら印刷を開始することはせず、印刷データの受信・保存が完了するまでは印刷を開始しない。これは、印刷データの受信中に異常が発生した際に、途中まで印刷してしまうと、実際の印刷部数と権限情報の印刷許可部数とが一致せず、制限を超えて印刷が行われる可能性があるからである。
【0058】
そして、制御部31(印刷制御部31a)は、印刷データの受信が完了し、受信した印刷データを記憶部35などに保存した後に、必要に応じて、クライアント端末10に印刷データの受信が完了したことを示す受信完了情報を送信し、その後、印刷を開始する。なお、受信完了情報を送信するのは、クライアント端末10は、画像形成装置30に印刷データを送信した後、権限管理サーバ20に権限情報の更新を指示するが、画像形成装置30が何らかの理由(例えば、通信ネットワークの障害等)で印刷データを受信できなかった場合、画像形成装置30で印刷が行われないにもかかわらず、権限情報が更新されたままになってしまう不都合を回避するためである。
【0059】
クライアント端末10の制御部11(権限情報更新指示部11d)は、必要に応じて、画像形成装置30から受信完了情報を受信したら、記憶部15などに保存した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して権限情報の更新を指示する。なお、印刷可能部数は、権限管理サーバ20から取得した権限情報に基づいて改めて算出してもよい。
【0060】
権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、必要に応じて、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、印刷可能部数に基づいて権限情報を更新する。
【0061】
また、画像形成装置30の制御部31(印刷制御部31a)は、印刷完了後に、必要に応じて、クライアント端末10に印刷が完了したことを示す印刷完了情報を送信する。なお、印刷完了通知を送信するのは、クライアント端末10は、画像形成装置30に印刷データを送信した後、権限管理サーバ20に権限情報の更新を指示するが、画像形成装置30が何らかの理由(例えば、用紙切れ等)で印刷ができなかった場合、画像形成装置30で印刷が行われないにもかかわらず、権限情報が更新されたままになる不都合を回避するためである。
【0062】
クライアント端末10の制御部11(権限情報更新指示部11d)は、必要に応じて、画像形成装置30から印刷完了情報を受信したら、記憶部15などに保存した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して権限情報の更新を指示する。なお、上記と同様に、印刷可能部数は、権限管理サーバ20から取得した権限情報に基づいて改めて算出してもよい。
【0063】
権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、必要に応じて、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、印刷可能部数に基づいて権限情報を更新する。
【0064】
印刷完了後、画像形成装置30の制御部31(印刷データ削除部31c)は、印刷データを記憶部35などから削除する。なお、印刷完了後に印刷データを削除するのは、画像形成装置30の表示操作部37(パネル)からの指示等による再印刷で、制限された部数や回数以上の印刷を未然に防止するためである。
【0065】
以上説明したように、クライアント端末10は、画像形成装置30に印刷部数や印刷回数が制限された印刷データを送信したら、印刷可能部数を算出して権限管理サーバ20に通知し、権限管理サーバ20は、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、権限情報の印刷許可部数を印刷可能部数に更新することにより、権限情報をほぼリアルタイムで適確に更新することができる。また、画像形成装置30は、印刷完了後に印刷データを削除することにより、制限を超えた印刷を適確に抑制することができる。
【実施例2】
【0066】
次に、本発明の第2の実施例に係る印刷システム及び制限印刷方法並びに制限印刷制御プログラムについて、
図7を参照して説明する。
図7は、本実施例の印刷システムの全体動作を示すシーケンス図である。
【0067】
前記した第1の実施例では、画像形成装置30は、印刷完了後に必要に応じてクライアント端末10に印刷完了情報を送信したが、印刷時に復帰できない異常(例えば、定着器の温度異常等)が発生した場合、印刷完了情報を送信することができず、権限管理サーバ20が管理する権限情報は、印刷データ送信時や印刷データ受信時に更新された状態のままとなり、実際の印刷部数と権限情報の印刷許可部数との不一致が生じ、権限情報に基づいて印刷を適切に制限することができなくなる。そこで、本実施例では、画像形成装置30は復帰不可能な異常が発生したかを判断し、復帰不可能な異常が発生した場合は、印刷できた部数と印刷が完了できなかった旨の情報とをクライアント端末10に送信して実際の印刷部数と権限情報の印刷許可部数との不一致を未然に防止する。
【0068】
その場合、印刷システムの構成は第1の実施例の
図1乃至
図5と同様であるが、画像形成装置30の制御部31(状態情報通知部31b)は、印刷処理部39の動作を監視して復帰不可能な異常が発生したかを判断し、復帰不可能な異常が発生した場合は、印刷できた部数(印刷済み部数と呼ぶ。)と復帰不可能な異常が発生したことにより印刷が完了できなかった旨を通知する情報(異常終了情報と呼ぶ。)とをクライアント端末10に通知するように制御する。また、クライアント端末10の制御部11(権限情報更新指示部11d)は、画像形成装置30から印刷済み部数と異常終了情報とを受信したら、印刷済み部数に基づいて印刷可能部数を修正し、修正した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して権限情報の更新を指示する。また、権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、クライアント端末10から修正した印刷可能部数が通知されたら、権限情報の印刷許可部数を修正した印刷可能部数に更新する。
【0069】
以下、本実施例の印刷システムの全体動作について、
図7のシーケンス図を参照して説明する。なお、第1の実施例と同様に、クライアント端末10のアプリケーション11aによって作成された原稿ファイルは、暗号化キーによって暗号化されており、閲覧や編集、印刷、保存などの権限(特に、印刷部数や印刷回数)が設定され、権限情報は権限管理サーバ20の記憶部25などに保存されているものとする。また、画像形成装置30が印刷を開始するまでの処理が第1の実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
画像形成装置30の制御部31(印刷制御部31a)は、印刷制限がある場合、印刷データの受信・保存が完了した後に制限印刷を開始する。ここで、印刷中に異常が起きた場合(例えば、用紙切れのような場合)、ユーザが用紙補給することで継続印刷できるため問題は生じないが、定着器の温度異常等の復帰不可能な異常が発生した場合、印刷を中断せざるを得なくなる。そこで、画像形成装置30の制御部31(状態情報通知部31b)は、印刷処理部39の動作を監視して復帰不可能な異常が発生したかを判断し、復帰不可能な異常が発生した場合は、印刷済み部数及び異常終了情報をクライアント端末10に通知する。
【0071】
クライアント端末10の制御部11(権限情報更新指示部11d)は、画像形成装置30から印刷済み部数及び異常終了情報が通知されたら、印刷済み部数に基づいて印刷可能部数を修正(例えば、印刷可能部数に、印刷データに設定した部数から印刷済み部数を減算した部数(すなわち、未印刷部数)を加算)し、修正した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して、権限情報の更新を指示する。
【0072】
権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、クライアント端末10から修正した印刷可能部数が通知されたら、修正した印刷可能部数に基づいて権限情報を更新(権限情報の印刷許可部数を修正した印刷可能部数に更新)する。
【0073】
そして、印刷完了後、画像形成装置30の制御部31(印刷データ削除部31c)は、印刷データを記憶部35などから削除する。
【0074】
このように、クライアント端末10は、画像形成装置30に印刷部数や印刷回数が制限された印刷データを送信したら、印刷可能部数を算出して権限管理サーバ20に通知し、権限管理サーバ20は、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、権限情報の印刷許可部数を印刷可能部数に更新することにより、権限情報をほぼリアルタイムで適確に更新することができる。また、画像形成装置30は、復帰不可能な異常が発生した場合、印刷済み部数と異常終了情報とをクライアント端末10に送信し、クライアント端末10は、印刷可能部数を修正して権限管理サーバ20に通知し、権限管理サーバ20は、修正した印刷可能部数に基づいて権限情報を更新することにより、実際の印刷部数と権限情報の印刷許可部数との不一致を未然に防止することができる。また、画像形成装置30は、印刷完了後に印刷データを削除することにより、制限を超えた印刷を適確に抑制することができる。
【実施例3】
【0075】
次に、本発明の第3の実施例に係る印刷システム及び制限印刷方法並びに制限印刷制御プログラムについて、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施例の印刷システムの全体動作を示すシーケンス図である。
【0076】
前記した第1及び第2の実施例では、1台の画像形成装置30で印刷処理を実行したが、例えば、著作権のある電子教材を100人分のように多部数印刷する場合、複数の画像形成装置30に分散して印刷することで、著作権に沿った部数内で早く印刷することが可能となる。そこで、本実施例では、複数の画像形成装置30に分散して印刷する場合においても、制限を超えた印刷を適確に抑制できるようにする。
【0077】
その場合、印刷システムの構成は第1の実施例の
図1乃至
図5と同様であるが、クライアント端末10の制御部11(印刷指示部11c)は、権限情報の印刷許可部数を複数の画像形成装置30に振り分け、各々の前記画像形成装置30に、印刷制限情報を付与した印刷データを送信する。また、クライアント端末10の制御部11(権限情報更新指示部11d)は、各々の画像形成装置30に印刷データを送信した後、権限情報の印刷許可部数から、順次、印刷データに基づいて印刷される部数を減算して印刷可能部数を算出し、算出した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して、権限情報の更新を指示する。また、権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、クライアント端末10から印刷可能部数が通知される度に、権限情報の印刷許可部数を、クライアント端末10から通知された印刷可能部数に更新する。なお、クライアント端末10は、予め記憶したテーブルなどを参照して、複数の画像形成装置30を一群の画像形成装置として予め設定して管理し、印刷データの送信対象とする。
【0078】
以下、本実施例の印刷システムの全体動作について、
図8のシーケンス図を参照して説明する。なお、第1の実施例と同様に、クライアント端末10のアプリケーション11aによって作成された原稿ファイルは、暗号化キーによって暗号化されており、閲覧や編集、印刷、保存などの権限(特に、印刷部数や印刷回数)が設定され、権限情報は権限管理サーバ20の記憶部25などに保存されているものとする。
【0079】
クライアント端末10の制御部11(アプリケーション11a)は、記憶部15などから権限管理されている暗号化ファイルを読み込み、当該暗号化ファイルを閲覧する際、制御部11(暗号化/復号化処理部11b)は、権限管理サーバ20に権限の問い合わせを行う。
【0080】
権限管理サーバ20の制御部21(権限管理部21a)は、クライアント端末10からの問い合わせに対して、予め記憶部25などに記憶されている権限情報を参照して、暗号化ファイルに対する権限を確認し、権限を付与する場合は、クライアント端末10に、暗号化ファイルを復号化するための復号化キーと復号化した原稿ファイルに付与する権限情報とを送信する。
【0081】
クライアント端末10の制御部11(暗号化/復号化処理部11b)は、権限管理サーバ20から受信した復号化キーを用いて暗号化ファイルを復号化すると共に、復号化した原稿ファイルに権限を付与し、印刷制限情報を記憶部15などに保存する。原稿ファイルに閲覧権限が付与されている場合は、原稿ファイルを権限情報に応じた内容で表示部17に表示する。そして、印刷権限が与えられている場合は、クライアント端末10の制御部11(印刷指示部11c)は、画像形成装置30に印刷を指示するが、その際、制権限情報の印刷許可部数を複数の画像形成装置30に振り分ける。例えば、画像形成装置30(MFP1)で60部、画像形成装置30(プリンタ1)で40部印刷する場合、クライアント端末10の制御部11(印刷指示部11c)は、原稿ファイルをPDLの印刷データに変換し、印刷データの印刷部数を60部に設定すると共に、印刷データに印刷制限情報を付与して画像形成装置30(MFP1)に送信する。同様に、制御部11(印刷指示部11c)は、印刷データの印刷部数を40部に設定すると共に、印刷データに印刷制限情報を付与して画像形成装置30(プリンタ1)に送信する。
【0082】
そして、制御部11(権限情報更新指示部11d)は、各々の画像形成装置30に印刷データを送信した後、権限情報の印刷許可部数から、順次、印刷データに基づいて印刷される部数を減算して印刷可能部数を算出し、算出した印刷可能部数を権限管理サーバ20に通知して、権限情報の更新を指示する。例えば、100部を振り分ける場合、画像形成装置30(MFP1)に60部の印刷を指示する印刷データを送信した後、100部から60部を減算し、印刷可能部数として40部を権限管理サーバ20に通知し、その後、画像形成装置30(プリンタ1)に40部の印刷を指示する印刷データを送信した後、40部から40部を減算し、印刷可能部数として0部を権限管理サーバ20に通知する。
【0083】
権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、権限情報の印刷許可部数を、クライアント端末10から通知された印刷可能部数に更新する。
【0084】
画像形成装置30(MFP1)及び画像形成装置30(プリンタ1)の制御部31(印刷制御部31a)は、クライアント端末10から送信されるデータから印刷制限情報を検出し、印刷制限がない場合は、通常印刷を行う。一方、印刷制限がある場合、制御部31(印刷制御部31a)は、印刷データの受信・保存が完了するまでは印刷を開始しないように制御する。
【0085】
そして、画像形成装置30(MFP1)及び画像形成装置30(プリンタ1)の制御部31(印刷制御部31a)は、印刷データの受信が完了し、受信した印刷データを記憶部35などに保存した後に、必要に応じて、クライアント端末10に印刷データの受信が完了したことを示す受信完了情報を送信し、その後、印刷を開始する。
【0086】
クライアント端末10の制御部11(権限情報更新指示部11d)は、必要に応じて、画像形成装置30(MFP1)から受信完了情報を受信したら、その都度、記憶部15などに保存した印刷可能部数を権限管理サーバ20に送信して権限情報の更新を指示する。
【0087】
権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、必要に応じて、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、その都度、印刷可能部数に基づいて権限情報を更新する。
【0088】
また、画像形成装置30(MFP1)及び画像形成装置30(プリンタ1)の制御部31(印刷制御部31a)は、印刷完了後に、必要に応じて、クライアント端末10に印刷が完了したことを示す印刷完了情報を送信する。
【0089】
クライアント端末10の制御部11(権限情報更新指示部11d)は、必要に応じて、画像形成装置30から印刷完了情報を受信したら、その都度、記憶部15などに保存した印刷可能部数を権限管理サーバ20に送信して権限情報の更新を指示する。
【0090】
権限管理サーバ20の制御部21(権限情報更新部21b)は、必要に応じて、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、その都度、印刷可能部数に基づいて権限情報を更新する。
【0091】
印刷完了後、画像形成装置30(MFP1)及び画像形成装置30(プリンタ1)の制御部31(印刷データ削除部31c)は、印刷データを記憶部35などから削除する。
【0092】
なお、上記フローでは、クライアント端末10は、各々の画像形成装置30に印刷データを送信する度に、印刷可能部数を算出して、権限管理サーバ20に権限情報の更新を指示したが、複数の画像形成装置30に印刷データを送信した後に印刷可能部数を算出して、権限管理サーバ20に権限情報の更新を指示するようにしてもよい。
【0093】
以上説明したように、クライアント端末10は、分散印刷に際して、各々の画像形成装置30(又は複数の画像形成装置30)に印刷部数や印刷回数が制限された印刷データを送信したら、印刷制限情報から印刷可能部数を算出して権限管理サーバ20に通知し、権限管理サーバ20は、クライアント端末10から印刷可能部数が通知されたら、権限情報の印刷許可部数を印刷可能部数に更新することにより、権限情報をほぼリアルタイムで適確に更新することができ、1台の画像形成装置30だけに制限印刷を依存せず、著作権に抵触しないように制御しながら早く印刷することができる。また、各々の画像形成装置30は、印刷完了後に印刷データを削除することにより、制限を超えた印刷を適確に抑制することができる。
【0094】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成や制御は適宜変更可能である。
【0095】
例えば、上記実施例では、画像形成装置30は、印刷データの受信完了時、印刷完了時、復帰不可能な異常発生時に、クライアント端末10に情報を送信したが、これらのタイミングに加えて、若しくは、これらのタイミングに代えて、印刷データの受信開始時や印刷開始時などにクライアント端末10に情報を送信して権限情報をより細かく更新するようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施例では、画像形成装置30はクライアント端末10に情報を送信し、クライアント端末10は権限管理サーバ20に情報を送信して権限情報の更新を指示したが、画像形成装置30の状態情報通知部31bに権限情報更新指示部としての機能を持たせ、画像形成装置30から権限管理サーバ20に直接情報を送信して権限情報の更新を指示するようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施例では、RMSにより権限が管理された暗号化ファイルについて記載したが、他の技術を利用して権限が管理された暗号化ファイルに対しても、本発明の制限印刷方法を同様に適用することができる。また、暗号化されていないファイルに対して本発明の制限印刷方法を適用しても、本願に記載した効果を得ることができる。