【文献】
デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式 ARIB STD-B60,2014年 7月,1.0版,p.122-134,43-47,70-72,9-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アプリケーション送信部は、ペイロードにアプリケーションを含むことを示す第1のペイロード種別情報をパケット・ヘッダーに挿入した第1の伝送パケットでアプリケーションを送信し、
前記制御情報送信部は、ペイロードに制御情報を含むことを示す第2のペイロード識別情報をパケット・ヘッダーに挿入した第2の伝送パケットで制御情報を送信する、
請求項1に記載の送信装置。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0034】
図1には、本明細書で開示する技術を適用したディジタル放送システム10の構成例を模式的に示している。図示のディジタル放送システム10は、放送送出システム11と、受信機12で構成される。
【0035】
放送送出システム11は、放送信号の伝送にMMT方式を適用しており、放送サービスを構成する各コンポーネントをIPパケットにして伝送する。具体的には、放送番組の映像信号や音声信号の符号、並びに、放送番組に関連するコンテンツ(データ放送アプリケーションなど)や字幕の信号は、MMTPペイロードに乗せてMMTPパケット化され、IPパケットで伝送される。また、これらのIPパケットは、放送伝送路ではTLVパケットの形式で伝送される。ここで、映像や音声、字幕などの放送番組本体に関わるコンポーネントは、同期メディアである。また、データ放送に利用されるコンテンツ(HTML:Hyper Text Transfer Protocol)形式で記述されるデータ放送アプリケーションなど)は非同期メディアである。
【0036】
一方、受信機12は、放送送出システム11から放送伝送路で送られてくるIPパケットを受信する。受信機12は、そして、受信機12は、受信パケットから映像や音声、字幕などの伝送メディアを復号して、画像や音声を提示する。また、受信機12は、受信パケットからデータ放送用の各データ・ファイルを取得すると、HTMLブラウザーなどのアプリケーション・エンジンを起動して、放送番組に連動したデータ放送の提示を行なう。
【0037】
図2には、MMT方式を用いる放送システムのプロトコル・スタック200を示している。
【0038】
1つの放送サービスは、映像201、音声202、字幕203、アプリケーション204、コンテンツ・ダウンロード205の各コンポーネントで構成される。映像201はHEVC(High Efficiency Video Coding)形式で符号化211され、音声202はAAC(Advanced Audio Coding)形式で符号化212され、字幕203は字幕符号化213される。また、アプリケーション204は、EPG(Electric Program Guide)を含むが、HTML5形式で符号化214される。
【0039】
MMTレイヤー220上では、これら同期メディア及び非同期メディアの符号化コンポーネント211〜214は、MPUフォーマットにして、MMTPペイロードに乗せてMMTPパケット化される。また、メディア・トランスポート方式であるMMTに関わる(放送番組の構成などを示す)制御情報であるMMT−SI(signaling Information)221も、MMTPペイロードに乗せてMMTPパケット化される。なお、コンテンツ・ダウンロード205のデータ伝送方式215として、字幕・文字スーパー伝送方式、アプリケーション伝送方式、イベント・メッセージ伝送方式、汎用データ伝送方式の4種類が挙げられるが、詳細な説明は省略する。
【0040】
UDP(User Datagram Protocol)/IPレイヤー230では、MMTPパケットはIPパケット化される。また、同期メディアのための現在時刻の情報を含むNTP(Network Time Protocol)パケット206も、IPパケット化される。さらに、これらのIPパケットは、TLVレイヤー240でTLVパケット化され、最下層の物理レイヤーである放送伝送路250で伝送される。また、IPパケットの多重のためのTLV多重化形式に関わるTLV−SI241も、TLVパケット化され、放送伝送路250で伝送される。TLVパケットを多重した伝送スロットは、伝送路のTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号251から、TLVストリーム識別情報(TLV_stream_id)を用いて特定される。
【0041】
図3には、
図2に示した放送信号を送出する放送送出システム11の構成例を示している。放送送出システム11は、例えば放送番組本体の制作元であるキー局(番組制作局)に相当する。図示の放送送出システム11は、時計部301と、信号送出部302と、ビデオ・エンコーダー303と、オーディオ・エンコーダー304と、キャプション・エンコーダー305と、シグナリング・エンコーダー306と、ファイル・エンコーダー307と、電子データ処理システム(Electronic Data Processing System:EDPS)308と、TLVシグナリング・エンコーダー309と、IPサービス・マルチプレクサー(MUX)310と、TLVマルチプレクサー(MUX)311と、変調・送信部312を備えている。
【0042】
時計部301は、NTPサーバー(図示しない)から取得した時刻情報に同期した時刻情報を生成し、この時刻情報を含むIPパケットをIPサービス・マルチプレクサー310に送る。
【0043】
信号送出部302は、例えばTV放送局のスタジオやVTRなどの記録再生機であり、同期メディアである映像、音声、字幕などのストリーム・データや、非同期メディアであるデータ放送アプリケーション用のデータ・ファイル(HTML文書データなど)をそれぞれ、ビデオ・エンコーダー303、オーディオ・エンコーダー304、キャプション・エンコーダー305、ファイル・エンコーダー307に送る。
【0044】
EDPS308は、TV放送局のスケジューラー並びにファイルの供給源であり、非同期メディアであるデータ放送アプリケーションと、放送番組の構成などを示す制御情報と、IPパケットの多重に関する制御情報をそれぞれ、ファイル・エンコーダー307、シグナリング・エンコーダー306、TLVシグナリング・エンコーダー309に送る。
【0045】
ビデオ・エンコーダー303は、信号送出部302から送出される映像信号をHEVC符号化し、さらにパケット化して、映像信号のMMTパケットを含むIPパケットをIPサービス・マルチプレクサー310に送る。また、オーディオ・エンコーダー304は、信号送出部302から送出される音声信号をAAC符号化し、さらにパケット化して、音声信号のMMTパケットを含むIPパケットをIPサービス・マルチプレクサー310に送る。また、キャプション・エンコーダー305は、信号送出部302から送出される字幕信号を字幕符号化し、さらにパケット化して、字幕のMMTパケットを含むIPパケットをIPサービス・マルチプレクサー310に送る。
【0046】
シグナリング・エンコーダー306は、EDPS308から送出される情報に基づいて、放送番組の構成などを示す制御情報を記述したシグナリング・メッセージ(MMT−SI)を生成し、ペイロード部にこのシグナリング・メッセージが配置されたMMTパケットを含むIPパケットをIPサービス・マルチプレクサー310に送る。本実施形態では、シグナリング・メッセージは、PA(Package Access)メッセージ、M2セクション・メッセージ、データ伝送メッセージの3種類に大別される。
【0047】
ファイル・エンコーダー307は、信号送出部302又はEDPS308から送出されるデータ放送アプリケーションをHTML5形式のデータ・ファイルに符号化し、さらにパケット化して、このMMTパケットを含むIPパケットをIPサービス・マルチプレクサー310に送る。
【0048】
放送送出システム11は、送出するチャンネル(放送番組)毎にIPサービス・マルチプレクサー310を装備する。1つのチャンネルのIPサービス・マルチプレクサー310は、各エンコーダー303〜307から送られてくる映像、音声、字幕、シグナリング・メッセージ(MMT−SI)、及びデータ放送アプリケーションの各々を含むIPパケットをマルチプレクスして、1つの放送サービス(チャンネル)を構成するTLVパケットを生成する。
【0049】
TLVシグナリング・エンコーダー309は、EDPS308から送出される情報に基づいて、上記のIPパケットの多重に関する制御情報(TLV−SI)をペイロード部に配置するTLVパケットを生成する。
【0050】
TLVマルチプレクサー311は、各IPサービス・マルチプレクサー310−1〜310−N及びTLVシグナリング・エンコーダー309で生成されるTLVパケットをマルチプレクスして、TLVストリーム識別情報で識別されるTLVストリームを生成する。
【0051】
変調・送信部312は、TLVマルチプレクサー311で生成されたTLVストリームに対してRF変調処理を行なって、放送伝送路に送出する。
【0052】
図3に示した放送送出システム11の動作について説明しておく。
【0053】
時計部301では、NTPサーバー(図示しない)から取得した時刻情報に同期した時刻情報が生成され、この時刻情報を含むIPパケットが生成される。
【0054】
信号送出部302から送出される映像信号は、ビデオ・エンコーダー303に供給される。ビデオ・エンコーダー303では、映像信号がHEVC符号化され、さらにパケット化されて、HEVC符号化映像信号のMMTパケットを含むIPパケットが生成される。このIPパケットは、IPサービス・マルチプレクサー310に送られる。
【0055】
また、信号送出部302から送出される音声信号並びに字幕信号に対しても、同様の処理が行なわれる。すなわち、オーディオ・エンコーダー304で生成されるAAC符号化音声信号のMMTパケットを含むIPパケットがIPサービス・マルチプレクサー310に送られるとともに、キャプション・エンコーダー305で生成される字幕符号化信号のMMTパケットを含むIPパケットがIPサービス・マルチプレクサー310に送られる。
【0056】
また、シグナリング・エンコーダー306では、EDPS308から送出される情報に基づいて放送番組の構成などを示す制御情報を記述したシグナリング・メッセージ(MMT−SI)が生成され、ペイロード部にこのシグナリング・メッセージが配置されたMMTパケットを含むIPパケットが生成される。このIPパケットは、IPサービス・マルチプレクサー310に送られる。
【0057】
また、信号送出部302又はEDPS308から送出されるデータ放送アプリケーションは、ファイル・エンコーダー307に供給される。ファイル・エンコーダー307では、データ放送アプリケーションがHTML5形式に符号化され、さらにパケット化され、このMMTパケットを含むIPパケットが生成される。このIPパケットは、IPサービス・マルチプレクサー310に送られる。
【0058】
各IPサービス・マルチプレクサー310では、各エンコーダー303〜307から送られてくる映像、音声、字幕、シグナリング・メッセージ(MMT−SI)、及びデータ・ファイル(HTML5文書)の各々を含むIPパケットがマルチプレクスされて、1つのチャンネルを構成するTLVパケットが生成される。
【0059】
TLVシグナリング・エンコーダー309では、EDPS308から送出される情報に基づいて、上記のIPパケットの多重に関する制御情報(TLV−SI)をペイロード部に配置するTLVパケットが生成される。
【0060】
TLVマルチプレクサー311では、各IPサービス・マルチプレクサー310−1〜310−N及びTLVシグナリング・エンコーダー309で生成されるTLVパケットがマルチプレクスされて、TLVストリームが生成される。変調・送信部312では、TLVマルチプレクサー311で生成されたTLVストリームに対してRF変調処理が行なわれ、そのRF変調信号が放送伝送路に送出される。
【0061】
図4には、
図2に示した放送信号を受信する受信機12の構成例を示している。図示の受信機12は、チューナー・復調部401と、デマルチプレクサー(DEMUX)402と、時計回復部403と、ビデオ・デコーダー404と、オーディオ・デコーダー405と、キャプション・デコーダー406と、システム制御部407と、アプリケーション制御部408と、アプリケーション・エンジン409と、IPインターフェース(I/F)410と、合成部411を備えている。図示の受信機12は、例えば家庭内に設置されるテレビ受信機やセット・トップ・ボックスの他、IPTVやCATVの再送信機を含むものとする。
【0062】
チューナー・復調部401は、放送信号を選局受信し、復調処理を行なって、TLVストリームを得る。デマルチプレクサー402は、このTLVストリームに対して、デマルチプレクス処理及びデパケット化処理を行なう。本実施形態では、デマルチプレクサー402は、TLVフィルター402−1と、IPフィルター402−2と、UDPフィルター402−3と、MMTフィルター402−4と、SIフィルター402−5を備えている。
【0063】
TLVフィルター402−1は、TLVストリーム識別情報に基づいて、放送伝送されるTLVパケットをフィルタリングする。IPフィルター402−2は、IPアドレスに基づいて、TLVパケットからIPパケットをフィルタリングするとともに、IPインターフェース410経由で受信したIPパケットのフィルタリングも行なう。また、UDPフィルター402−3は、UDPパケットをフィルタリングする。MMTフィルター402−4は、MMTPヘッダー(後述)内の情報に基づいて、IPパケットからMMTPパケットをフィルタリングして、映像、音声、字幕、並びにアプリケーションの各符号化コンポーネントを乗せたMMTPパケットを、それぞれビデオ・デコーダー404、オーディオ・デコーダー405、キャプション・デコーダー406、アプリケーション・エンジン409に振り分ける。SIフィルター402−5は、シグナリング情報SIをフィルタリングして、システム制御部407及びアプリケーション制御部408にそれぞれ振り分ける。SIフィルター402−5は、MMTストリームからMMT−SIをフィルタリングするMMT−SIフィルターと、TLVストリームからTLV−SIをフィルタリングするTLV−SIフィルターを含むものとする。
【0064】
時計回復部403は、デマルチプレクサー402内のIPフィルター402−2並びにUDPフィルター402−3でフィルタリングされたNTPパケットに含まれる現在時刻の情報に基づいて、この時刻情報に同期した時刻情報を生成して、各同期メディアをデコードするにビデオ・デコーダー404、オーディオ・デコーダー405、キャプション・デコーダー406にそれぞれ出力する。
【0065】
ビデオ・デコーダー404は、デマルチプレクサー402で得られる符号化映像信号をデコードして、ベースバンドの映像信号を得る。また、オーディオ・デコーダー405は、デマルチプレクサー402で得られる符号化音声信号をデコードして、ベースバンドの音声信号を得る。また、キャプション・デコーダー406は、デマルチプレクサー402で得られる字幕符号化信号をデコードして、字幕の表示信号を得る。
【0066】
アプリケーション制御部408は、SIフィルター402−5を介して受け取るシグナリング情報に基づいて、データ放送アプリケーションの処理を制御する。例えば、アプリケーション制御部407は、MMT−SIを解析して、デフォルト・エントリーに設定されているデータ放送アプリケーションを見つけると、アプリケーション・エンジン409に対してデータ放送の提示処理を指示する。
【0067】
本実施形態に係る放送システム10では、放送信号並びにIPネットワークという2種類のデリバリー・パスを通じてデータ放送アプリケーションが伝送されることを想定している。前者の系統ではチューナー・復調部401で受信し、後者の系統ではIPインターフェース410で受信し、いずれもデマルチプレクサー402内でパケット化されたMMTパケットがMMTフィルター402−4によってアプリケーション・エンジン409に振り分けられる。
【0068】
アプリケーション・エンジン409は、例えばHTMLブラウザーなどであり、データ放送アプリケーションのエンティティーであるデータ・ファイル(HTML5文書など)の処理を行なって、データ放送の表示信号を生成する。また、アプリケーション・エンジン409は、データ放送の表示に必要なデータ・ファイル(データ放送の表示に使用するモノメディアや、リンク先のアプリケーションなど)をIPインターフェース410経由でIPネットワークから取得することもできる。
【0069】
システム制御部407は、SIフィルター402−5を介して受け取るシグナリング情報や、ユーザー操作部(図示しない)を介したユーザーからの操作情報などに基づいて、当該受信機12の各部の動作を制御する。また、システム制御部407は、各デコーダー404〜406におけるデコード・タイミングをシグナリング情報に基づいて制御し、映像、音声、及び字幕の提示タイミングを調整する。合成部411は、ベースバンドの映像信号に、字幕の表示信号及びデータ放送の表示信号を合成して、映像表示用の映像信号を得る。また、オーディオ・デコーダー405で得られるベースバンドの音声信号は、音声出力用の音声信号となる。映像信号及び音声信号からなる放送番組本編は、図示しないモニター・ディスプレイから映像及び音声出力される。また、データ放送アプリケーション・エンジン409が処理したデータ放送も、モニター・ディスプレイ上で放送番組本編の画面に重畳して表示される。
【0070】
IPインターフェース410は、例えばネットワーク・インターフェース・カードで構成され、インターネットやホーム・ネットワークなどのIPネットワークに接続して、IPパケットの送受信処理を行なう。
【0071】
また、本実施形態では、IPフィルター402−2でIPアドレスに基づいてフィルタリングしたIPパケットを、IPインターフェース410からIPネットワークへ送信若しくは再送信することも想定される。また、放送サービスをIPアドレスだけでフィルタリングできることが判明すると、デマルチプレクサー402内のIPフィルター402−2だけで特定サービスを抽出して、受信機12から外部へ転送することができる。
【0072】
図4に示した受信機12の動作について説明しておく。
【0073】
チューナー・復調部401では、放送信号が受信され、復調処理が行なわれて、TLVストリームが得られる。デマルチプレクサー402では、このTLVストリームに対して、デマルチプレクス処理及びでパケット化処理を行なわれ、NTP時刻情報、映像、音声、字幕、データ放送の各符号化信号、並びに、シグナリング情報が抽出され、ビデオ・デコーダー404、オーディオ・デコーダー405、キャプション・デコーダー406、アプリケーション・エンジン409、システム制御部407、アプリケーション制御部408にそれぞれ振り分けられる。また、IPインターフェース410で受信したIPパケットについても同様に、デマルチプレクス処理及びでパケット化処理を行なわれ、各部に振り分けられる。
【0074】
また、デマルチプレクサー402で抽出されたNTPパケットは、時計回復部403に振り分けられる。時計回復部403では、NTPパケットに載せられた時刻情報に基づいて、この時刻情報に同期した時刻情報が生成される。つまり、時計回復部403では、放送送出システム11側の時計部301で生成された時刻情報に合った時刻情報が生成される。
【0075】
デマルチプレクサー402で抽出された符号化映像信号は、ビデオ・デコーダー404に送られてデコードされ、ベースバンドの映像信号が得られる。また、デマルチプレクサー402で抽出された字幕符号化信号はキャプション・デコーダー406に送られてデコードされ、字幕の表示信号が得られる。
【0076】
アプリケーション制御部408では、SIフィルター402−5を介して受け取るシグナリング情報に基づいて、データ放送アプリケーションの処理が制御される。HTMLブラウザーなどからなるアプリケーション・エンジン409では、アプリケーション制御部408からの指示に従って、デマルチプレクサー402で抽出されたデータ放送アプリケーションの符号化信号(HTML5文書)の処理が行なわれ、データ放送の表示信号が得られる。
【0077】
合成部411では、ベースバンドの映像信号に、字幕の表示信号及びデータ放送の表示信号が合成され、画面表示用の映像信号が得られる。また、デマルチプレクサー402で抽出された符号化音声信号はオーディオ・デコーダー405に送られてデコードされ、音声出力用のベースバンドの音声信号が得られる。そして、映像信号及び音声信号は、図示しないモニター・ディスプレイから映像及び音声出力される。
【0078】
図1に示したディジタル放送システム10では、放送送出システム11から受信機12へ、MMT方式により放送信号を伝送することを想定している。
図5には、MMT方式に従って放送送出システム11から放送伝送路に送出される放送信号500のイメージを示している。
【0079】
1つのサービス(チャンネル:放送番組)の放送信号は、映像、音声、字幕などの放送番組本編に関わる同期メディアと、放送番組に連動するデータ放送に利用されるファイル・データのような非同期メディアで構成される。これらを符号化したメディア・データは、MPUフォーマットにしてMMTPパケット化され、IPパケットで伝送される。また、メディア・トランスポート方式であるMMTに関わる(放送番組の構成などを示す)シグナリング情報(MMT−SI)も、IPパケットで伝送される。これらのIPパケットは、放送伝送路ではTLVパケットの形式でTLVストリームとして伝送される。IPパケットの多重のためのTLV多重化形式に関わるシグナリング情報(TLV−SI)も、TLVパケットの形式で伝送される。
【0080】
MMT方式では、1つのチャンネル(放送番組)を構成する同期メディア及び非同期メディアのデータを異なる伝送路の組み合わせで利用することが容易である。
図5に示す例では、放送信号500として、映像、音声、字幕、データ放送アプリケーションなど、タイプ毎のアセット501〜503が利用されている。なお、図中、字幕データ用のアセットは便宜上、図示を省略している。各アセットは、それぞれ1つのIPデータ・フローに相当する。ここで言うIPデータ・フローとは、IPヘッダー及びUDPヘッダーの送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、IPヘッダーのプロトコル種別、送信元ポート番号、宛先ポート番号の5種類のフィールドの値がすべて同じとなるIPパケットの集合である。
【0081】
MMT方式の放送システム11は、放送伝送路でIPパケットを伝送する方式であるが、放送サービス毎(若しくは、放送局毎)に1つのIPアドレスをマッピングするという運用が可能である。このような場合、受信機側では、IPアドレスに基づいて放送信号500をフィルタリングすることで、所望する放送サービス(若しくは、所望する放送局)の各アセット501〜503にアクセスすることができる。同じIPアドレス内の各アセット501〜503で伝送されるMMTP(MMTプロトコル)パケットは、パケット識別情報(packet_id:PID)で一意に指定することができる。また、異なるIPアドレス上のMMTPパケットは、パケット識別情報と、IPアドレスと、ポート番号の組み合わせにより指定することができる。
【0082】
1つのチャンネル(放送番組)は、映像、音声、字幕、ファイル・データ(データ放送アプリケーション)などタイプの異なる複数のアセットで構成される「パッケージ」と言うことができる。ここで言う「パッケージ」は、アセットを使って伝送されるメディア・データの論理集合である。また、ここで言う「アセット」は、固有のアセット識別情報(asset_id)に関連付けられる、マルチメディアのプレゼンテーションを構成するために使用されるデータのエンティティーである。なお、アセットはコンポーネントと対応関係がある(映像のアセットは映像コンポーネントに対応し、音声のアセットは音声コンポーネントに対応し、データ放送アプリケーションのアセットはデータのコンポーネントに対応する)。
【0083】
各アセットは、同じアセット識別情報を共有する1又はそれ以上のMPUの集合(論理グループ)で構成される。MPUは、MMT方式における伝送単位となるフォーマットということができる。各MPUは、それぞれのアセットに専用のES(Elementary Stream)すなわちアセット501〜503上で伝送される。すなわち、映像アセット501では、同じアセット識別情報を持つ映像信号のMPU論理グループからなる符号化映像信号のMMTPパケットが伝送される。同様に、音声アセット502では同じアセット識別情報を持つ音声信号のMPU論理グループからなる符号化音声信号のMMTパケットが伝送され、データ・アセット503では同じアセット識別情報を持つデータ放送アプリケーションのMPU論理グループからなる符号化アプリケーションのMMTパケットが伝送される。各MPUは、アセット識別情報と、該当するアセット上でのMPUのシーケンス番号で特定される。また、各メディアを伝送するアセットは、アセット識別情報で識別することができる。
【0084】
1つのパッケージ(放送番組)で、タイプが同じ複数の(すなわち、アセット識別情報が異なる)アセットが伝送されることもある。例えば、同じ放送番組に対して、2以上のデリバリー・セグメントからそれぞれデータ放送アプリケーションが提供される場合である。例えば、番組を制作したキー局から提供される放送番組に連動する番組連動型データ放送アプリケーションと、番組を配信する地方局から提供される放送番組に連動しない番組非連動型データ放送アプリケーション(例えば、天気予報やニュースなど)は、通常、別のアセットとして別々のアセット識別情報が割り振られ、別々のMPU論理グループとして異なるアセットで伝送される。
図5に示す例では、デリバリー・セグメント毎に、番組制作局が提供するデータ放送アプリケーション用のアセット503−1と、番組を配信する地方局が提供するデータ放送アプリケーション用のアセット503−2を描いている。
【0085】
また、MMT方式は、放送や通信の複数の伝送路に共通に用いることができる。例えば、データ放送用アプリケーション(HTML5文書など)のような非同期メディアは、
図5に示したようにデータ・アセット503として同期メディアとともに伝送される以外に、IPネットワークなど通信伝送路(図示しない)を介して提供することもできる。
【0086】
シグナリング504では、MMTのパッケージの構成や放送サービスに関連する情報を示す伝送制御信号であるMMT−SIを含んだMMTPパケットが、カルーセル方式により繰り返し伝送される。なお、
図5では、TLV−SI用の伝送路の図示を省略している。
【0087】
シグナリング504で伝送されるMMT−SIのシグナリング・メッセージとして、PAメッセージ510、M2セクション・メッセージ520、データ伝送メッセージ530を挙げることができる。
【0088】
例えば、PAメッセージ510は、放送番組の構成などを示す制御情報であり、アセットのリストやその位置などパッケージを構成する情報を記述するMP(MMT Package)テーブル511などを格納するコンテナーである。
【0089】
PAメッセージ510は、放送サービスのエントリー・ポイントであり、PAメッセージ510を伝送するMMTPパケットには、固定のパケット識別情報(例えば、0x0000)が割り当てられている。したがって、受信機側では、シグナリング504上で、上記固定のパケット識別情報を指定してPAメッセージ510を取得することができる。そして、PAメッセージ510で伝送されるMPテーブル511を参照して、パッケージ(放送番組)を構成する各アセット(映像、音声、字幕、ファイル・データ(データ放送アプリケーション)など)を指定することができる。
【0090】
また、M2セクション・メッセージ520は、MPEG−2 Systemsのセクション拡張形式を伝送するメッセージである。MH−AIT(Application Information Table)521や、EMT(Event Message Table)522といったシグナリング・テーブルが、それぞれ単体でM2セクション・メッセージ520に格納される。
【0091】
MH−AIT521は、アプリケーションに関する動的制御情報及び実行に必要な付加情報を伝送するテーブルであり、具体的には、放送伝送路でデータ・アセットとして送られてくるデータ放送アプリケーション(ファイル・データ)の処理方法(アプリケーションに適用される起動状態など)、並びにロケーション(URL)を指定する。
【0092】
EMT522は、イベント・メッセージ伝送方式に用いるシグナリング・テーブルであり、イベント・メッセージ(放送局から受信機上のアプリケーションに対する同期・非同期のメッセージ)に関する情報(イベント・メッセージ記述子)を格納する。イベント・メッセージ伝送方式は、放送局から受信機で動作しているデータ放送アプリケーションに対して、即座にあるいは指定した時刻に、メッセージ情報を送る手段を提供する。
【0093】
また、データ伝送メッセージ530は、データ放送アプリケーションの伝送に関する制御情報を伝送するためのメッセージである。1つのデータ伝送メッセージ530内には、データ・ディレクトリー管理テーブル(Data Directory management Table:DDMT)531、データ・アセット管理テーブル(Data Asset Management Table: DAMT)532、データ・コンテンツ管理テーブル(Data Content Configuration Table:DCCT)533の各シグナリング・テーブルが格納される。
【0094】
データ・ディレクトリー管理テーブル531は、ディレクトリー単位(言い換えれば、データ放送アプリケーションの制作単位)でデータ放送アプリケーションを管理するためのテーブルである。同テーブル内は、1つのパッケージに含まれるディレクトリー並びにディレクトリーに含まれるサブディレクトリーやファイル(アイテム)に関するディレクトリー構造を記述しているので、アプリケーションのファイル構成とファイル伝送のための構成を分離することができる。
【0095】
データ・アセット管理テーブル532は、アセット単位でデータ放送アプリケーションを管理するためのテーブルであり、アセット内のMPUの構成とのMPU毎のバージョン情報を記述している。
【0096】
データ・コンテンツ管理テーブル533は、提示単位(Presentation Unit:PU)毎にデータ放送アプリケーションを管理するためのテーブルである。同テーブルは、データ放送アプリケーションのファイルの構成情報をデータ放送の提示単位(PU)で記述しており、受信機側ではデータ放送アプリケーション用のファイル・データの柔軟で有効なキャッシュ制御に利用することができる。
【0097】
MMTによるデータ放送アプリケーションの伝送方式において、データ伝送メッセージで伝送する上記3種類のシグナリング・テーブル531〜533を活用することにより、ファイル単位の伝送データ構造やコンテンツ(データ放送アプリケーション)制作におけるディレクトリー構造とは独立して、受信機におけるキャッシュ・メモリーの有効活用のために、アプリケーション単位、提示単位といった利用単位のデータ構造を表現することができる(例えば、本出願人に既に譲渡されている特願2014−88630号明細書を参照のこと)。
【0098】
MMT−SIとして伝送されるメッセージやテーブルのパケット識別情報は、固定されているものや、他のテーブルから間接指定されるものがある。このうち、PAメッセージは、放送サービスのエントリー・ポイントであり、固定のパケット識別情報(例えば、0x0000)が割り当てられている。PAメッセージで伝送されるMPテーブルでは、パッケージ(放送番組)を構成する各アセット(映像、音声、字幕、ファイル・データ(データ放送アプリケーション)など)を指定している。したがって、
図6に示すように、MPテーブルを参照して、パッケージ(放送番組)を構成する各アセット(映像、音声、字幕、ファイル・データ(データ放送アプリケーション)など)を指定することができる。
【0099】
図7には、同一のIPデータ・フローに多重されたデータ放送アプリケーションのアイテムを取得する仕組みを図解している。
【0100】
データ放送アプリケーションを構成するアイテム(データ・ファイル)は、HTML5などのアプリケーション記述内でパス名を指定される。ここで言うパス名は、ディレクトリー・ノード名とファイル名の組み合わせで記述される。また、ディレクトリー・ノードとファイルを統合した記述子としてノード・タグを規定し、各シグナリング・テーブルをリンクする情報として使用する。
【0101】
データ放送アプリケーションからパス名を指定すると、参照番号701で示すように、データ伝送メッセージ内のデータ・ディレクトリー管理テーブルから、指定されたパス名のファイルのノード・タグを得ることができる。
【0102】
次いで、参照番号702で示すように、同じくデータ伝送メッセージ内のデータ・アセット管理テーブルから、データ・ディレクトリー管理テーブルで得られたノード・タグを持つアイテムが伝送されるアセットのコンポーネント・タグ、ダウンロード識別情報、MPUシーケンス番号、及びアイテム識別情報を得ることができる。
【0103】
さらに、参照番号703で示すように、MPテーブルから、データ・アセット管理テーブルで得られたコンポーネント・タグを持つアセットのロケーション情報を取得すると、参照番号704で示すように、該当するファイルが実際に伝送されるデータ・アセットを特定することができる。
【0104】
そして、特定されたデータ・アセット内で、データ・アセット管理テーブルから得られたダウンロード識別情報とアイテムを伝送するMMTPパケットのヘッダー領域に記載されたダウンロード識別情報とにより、カルーセルに対応するファイルの繰り返し伝送の単位を一意に識別することができる。参照番号705で示すように、繰り返し伝送されるアイテムのうち、データ・アセット管理テーブルから得られたMPUシーケンス番号及びアイテム識別情報を持つアイテムを所望のファイルとして指定することができる。ノード・タグは、データ伝送メッセージ内で、MPUシーケンス番号はアセット(IPデータ・フロー)内で、アイテム識別情報はサービス事業者(デリバリー・セグメント)内で、それぞれ一意であるものとする。
【0105】
なお、データ伝送メッセージで伝送される、データ・ディレクトリー管理テーブル、データ・アセット管理テーブル、データ・コンテンツ管理テーブルの各シグナリング・テーブルの詳細な構成については、例えば本出願人に既に譲渡されている特願2014−250279号明細書を参照されたい。
【0106】
ディジタル放送サービスでは、同一の放送番組に対してデータ放送アプリケーションを提供するデリバリー・セグメントが複数存在することが想定される。例えば、放送番組本体の制作元であるキー局が主に放送番組に連動したアプリケーションを付与する一方、配信事業者である各地方局でも自前のアプリケーションを付与するという運用が想定される。各地方局は、必ずしも放送番組本体には連動しないが、天気予報やローカル・ニュースといったその地域に密着した情報を自前のアプリケーションで提供し、地域毎に粒度の細かいデータ放送サービスを実現できるというメリットがある。
図5に示した例では、デリバリー・セグメント毎に、番組制作局が提供するデータ放送アプリケーション用のアセット503−1と、番組を配信する地方局が提供するデータ放送アプリケーション用のアセット503−2を描いている。さらに、番組制作局でも配信局でもない第3者が、インターネットなどの広域ネットワーク経由でデータ放送アプリケーションを提供することも想定される。
【0107】
図8には、同一の放送番組に対して、番組制作局、配信局、第3者の各デリバリー・セグメントがそれぞれ提供するデータ放送アプリケーション間のリンク関係の一例を示している。
【0108】
図8中、App1、App2、App4は、番組制作局であるキー局から提供されるデータ放送アプリケーションである。番組制作局は、App1、App2、App4などの自局で制作したアプリケーションを、例えばビデオやオーディオ、字幕など放送番組本体を構成するアセットとともに、同じIPデータ・フロー(デリバリー・パス)で放送信号として伝送する。番組制作局が提供するデータ放送アプリケーションは、例えば、放送番組に関連し若しくは連動するアプリケーションである。
【0109】
また、App3、App5は、配信局である地方局が提供するデータ放送アプリケーションである。App3やApp5は、例えば天気予報やローカル・ニュースといったその地域に密着した情報を提供する、放送番組に非連動のデータ放送アプリケーションである。配信局は、App3、App5などの自前のデータ放送アプリケーションを、番組制作局とは異なるIPデータ・フロー(すなわち、独立したデリバリー・パス)で放送信号として伝送する。
【0110】
また、App6は、番組制作局でも配信局でもない第3者が提供する、放送番組に連動又は非連動のデータ放送アプリケーションである。第3者は、App6などの自前のアプリケーションを、インターネットなどの広域ネットワーク経由(すなわち、独立したデリバリー・パス)で配信する。なお、番組制作局や配信局も、それぞれが制作したデータ放送アプリケーションを、放送信号ではなく広域ネットワーク経由で配信することもある。
【0111】
図8に示す例では、番組制作局から提供されるデータ放送アプリケーションApp1が、当該放送番組のデフォルト・エントリーに設定されるとともに、番組制作局から提供される他のデータ放送アプリケーションApp2、並びに、配信局から提供されるデータ放送アプリケーションApp3にリンクしている。図示のようなアプリケーション間のリンク関係が形成されている場合に期待されるページ遷移動作について、以下に説明しておく。
【0112】
当該放送番組を受信した受信機は、データ放送を起動時にはまずエントリーに指定されたデータ放送アプリケーションApp1を実行し、その後、ユーザーの操作やイベント・メッセージに応じて、リンク関係が形成されている他のデータ放送アプリケーションApp2又はApp3に遷移する。
【0113】
番組制作局から提供されるデータ放送アプリケーションApp2は、さらに、番組制作局から提供される他のデータ放送アプリケーションApp4、並びに、配信局から提供されるデータ放送アプリケーションApp5にリンクしている。したがって、受信機は、データ放送アプリケーションApp2を実行してページを遷移した後、ユーザーの操作やイベント・メッセージに応じて、データ放送アプリケーションApp4又はApp5に遷移する。
【0114】
また、配信局から提供されるデータ放送アプリケーションApp3は、さらに、第3者から提供されるデータ放送アプリケーションApp6にリンクしている。したがって、受信機は、データ放送アプリケーションApp3を実行してページを遷移した後、ユーザーの操作やイベント・メッセージに応じて、データ放送アプリケーションApp6に遷移する。
【0115】
現状のBMLを利用したデータ放送やハイブリッドキャストの放送局運用では、特に民間放送において責任分界と地方局の配信設備の負担を増大させないという観点から、データ放送アプリケーション並びにアプリケーションに関連する制御情報の伝送を、デリバリー・セグメント(キー局分と地方局分)毎に独立して実施できるように考慮されている。
【0116】
MMTによるメディア・トランスポート方式を適用する次世代の放送規格でも、各地方局や第3者など番組制作局以外でも自前のデータ放送アプリケーションを提供する(すなわち、1つの放送番組に対して、複数のデリバリー・セグメントがそれぞれ自前のデータ放送アプリケーションを提供する)、という民間放送の要求を十分考慮すべきである。
【0117】
ところが、複数のデリバリー・セグメントからそれぞれ提供されるデータ放送アプリケーションをすべて一系統に統合して運用してしまうと、例えばキー局から配信される放送番組に対して地方局でデータ放送アプリケーションを付与する必要がある。このような場合、地方局は、キー局が放送番組並びにそれに付随するアプリケーション並びにアプリケーションの制御情報を伝送するIPデータ・フローに対して、自前のアプリケーションの付け足しや付け替え作業を行なわなければならない。その結果、地方局は、配信設備や配信コストの負担が増大するとともに、アプリケーションの付け足しや付け替え作業を行なう際のリスクが発生し、キー局と地方局間の責任分界が不明になる。
【0118】
本明細書では、MMTによるメディア・トランスポート方式を適用する次世代の放送規格において、番組制作局としてのキー局、配信局としての各地方局、並びに第3者といった、複数のデリバリー・セグメントがそれぞれ独立したデータ放送アプリケーションの運用を実現するための技術について提案する。以下では、提案する内容について、さらに詳細に説明する。
【0119】
シグナリング・メッセージの1つであるPAメッセージが放送番組のエントリー・ポイント(固定のパケット識別子(例えば、0x0000)が割り当てられる)となり、PAメッセージ内には、アセットのリストやその位置などパッケージを構成する情報を記述するMPテーブルが含まれていることは、既に述べた通りである。
【0120】
また、MH−AITテーブル、データ・ディレクトリー管理テーブルと、データ・アセット管理テーブル、データ・コンテンツ管理テーブルは、データ放送アプリケーションの伝送制御に関連する重要なシグナリング・テーブルである。これらに加えて、イベント・メッセージ伝送方式に用いるEMTも、データ放送アプリケーションの運用に重要なシグナリング・テーブルである。
【0121】
そこで、本明細書で開示する技術では、各デリバリー・セグメントによる独立したデータ放送アプリケーションの運用を実現するために、まず、デリバリー・セグメント毎に、シグナリング・メッセージやシグナリング・テーブルをグルーピングする。ここで、グルーピングの対象とするシグナリング・メッセージやシグナリング・テーブルは、データ伝送メッセージ、MH−AIT、EMTといった、データ放送アプリケーションの運用に必要又は重要な制御データである。
【0122】
そして、放送のサービス・レベルの制御情報を記述するMPテーブルに、アプリケーション・サービス記述子という新たな記述子をデリバリー・セグメント毎に配置する。より厳密には、同じデリバリー・セグメントが提供するデータ放送アプリケーションのアプリケーション・タイプ毎に、アプリケーション・サービス記述子を配置する。各アプリケーション・サービス記述子内には、対応するデリバリー・セグメントが提供するデータ放送アプリケーションの運用に必要又は重要な上記の各制御データのロケーション情報を示すようにする。また、アプリケーション・サービス記述子には、該当するアプリケーション情報テーブルがデフォルトの監視対象AIT設定されていることを示すデフォルトAITフラグをさらに示す。
【0123】
なお、アプリケーション・サービス記述子で示すデータ伝送メッセージのロケーション情報により、同メッセージに格納されるデータ・ディレクトリー管理テーブル、データ・アセット管理テーブル、及びデータ・コンテンツ管理テーブルの3つのシグナリング・テーブルのロケーション情報を示すことになる。他方、アプリケーション・サービス記述子で示すMH−AIT、EMTのロケーション情報は、各々のテーブルを単体で格納するM2セクション・メッセージのロケーション情報と等価である。
【0124】
また、アプリケーション・サービス記述子は、対応するデリバリー・セグメントから提供されるデータ放送アプリケーションのフォーマットすなわちアプリケーション・タイプと、アプリケーション・タイプ毎の優先度をさらに示す。
【0125】
図9には、デリバリー・セグメント毎のアプリケーション・サービス記述子に記述した情報に基づいて、同一の放送番組に対する各デリバリー・セグメントのデータ放送アプリケーション及びアプリケーションに関連する制御情報をそれぞれ独立した系統で配信する放送信号の構成例を示している。
【0126】
参照番号910は、番組制作局からの放送信号を伝送するIPデータ・フローである。IPデータ・フロー910は、同じIPアドレス内の複数のアセット及びシグナリング911〜916を含んでいる。IPデータ・フロー910内は、同一のIPアドレスであり、伝送される各MMTPパケットをパケット識別子だけで指定することができる。
【0127】
参照番号911、912で示すアセットは、番組制作局により制作した放送番組本体のビデオ、オーディオの各データをMPUフォーマットでそれぞれ伝送している。また、参照番号913で示すアセットは、番組制作局が上記の放送番組本体に関連して制作した、例えばHTML5形式のデータ放送アプリケーションApp1、App2、App4を伝送している。
【0128】
参照番号914で示すシグナリングは、上記のデータ・アセット913で伝送されるHTML5形式のデータ放送アプリケーションに関連する制御情報、すなわち各種シグナリング・メッセージ並びにシグナリング・テーブルを伝送している。
図9では、図面の簡素化のため、PAメッセージに格納して伝送されるMPテーブル914Aと、データ放送アプリケーションを運用するために必要又は重要となるデータ伝送メッセージ(DTM)914B、MH−AIT914C、EMT914Dのみを描いている。
【0129】
また、参照番号915で示すアセットは、番組制作局が上記の放送番組本体に関連して制作した、HTML5以外の記述形式(例えば、java形式)のデータ放送アプリケーションApp11、App12、App13を伝送している。
【0130】
参照番号916で示すシグナリングは、上記のデータ・アセット915で伝送されるjava形式のデータ放送アプリケーションに関連する制御情報、すなわち各種シグナリング・メッセージ並びにシグナリング・テーブルを伝送している。
図9では、図面の簡素化のため、データ放送アプリケーションを運用するために必要又は重要となるデータ伝送メッセージ(DTM)916B、MH−AIT916C、EMT916Dのみを描いている。
【0131】
参照番号920は、配信局から伝送されるデータ放送アプリケーション並びにこれに関連する制御情報を伝送するIPデータ・フローであり、データ・アセット921とシグナリング922を含んでいる。
【0132】
参照番号921で示すデータ・アセットでは、配信局が、上記の放送番組本体に対応するデータ放送アプリケーションApp3を伝送している。
【0133】
参照番号922で示すシグナリングでは、上記のデータ・アセット921で伝送されるデータ放送アプリケーションApp3に関連する制御情報、すなわち各種シグナリング・メッセージ並びにシグナリング・テーブルを伝送している。
図9では、図面の簡素化のため、データ放送アプリケーションを運用するために必要又は重要となるデータ伝送メッセージ922A、MH−AIT922B、EMT922Cのみを描いている。
【0134】
参照番号930は、インターネットなどのIPネットワークである。配信局は、上記の放送番組本体に対応するデータ放送アプリケーションの1つApp5を、IPネットワーク930上で伝送している。また、第3者は、上記の放送番組本体に対応するデータ放送アプリケーションApp6を、IPネットワーク930上で伝送している。さらに第3者は、自分が提供するデータ放送アプリケーションApp6の処理方法(アプリケーションに適用される起動状態など)並びにロケーション情報(URL)を記述したMH−AIT931を、IPネットワーク930上で配信している。なお、IPネットワーク930(通信伝送路)上で配信するデータ放送アプリケーションApp5、App6については、データ伝送メッセージ並びにEMTの伝送は不要である。
【0135】
シグナリング914で伝送されるPAメッセージに格納されるMPテーブル914Aには、各デリバリー・セグメントについてアプリケーション記述形式毎にアプリケーション・サービス記述子が配置されている。各アプリケーション・サービス記述子内には、対応するデリバリー・セグメントが提供するデータ放送アプリケーションの運用に必要又は重要な上記の各制御データのロケーション情報を示している。
【0136】
具体的には、MPテーブル914A内に配置されたアプリケーション・サービス記述子1は、番組制作局がデータ・アセット913で伝送するデータ放送アプリケーションに対応付けて配置され、シグナリング914で伝送されるデータ伝送メッセージ914B、MH−AIT914C、EMT914Dのロケーション情報(同じIPアドレス内のパケット識別子)を示している。
【0137】
また、MPテーブル914A内に配置されたアプリケーション・サービス記述子2は、番組制作局がデータ・アセット915で伝送するデータ放送アプリケーションに対応付けて配置され、シグナリング916で伝送されるデータ伝送メッセージ916B、MH−AIT916C、EMT916Dのロケーション情報(同じIPアドレス内のパケット識別子)を示している。
【0138】
また、MPテーブル914A内に配置されたアプリケーション・サービス記述子3は、配信局がデータ・アセット921並びにIPネットワーク930で伝送するデータ放送アプリケーションに対応付けて配置され、シグナリング922で伝送されるデータ伝送メッセージ922B、MH−AIT922C、EMT922Dのロケーション情報(同じIPアドレス内のパケット識別子)を示している。
【0139】
また、MPテーブル914A内に配置されたアプリケーション・サービス記述子4は、第3者がIPネットワーク930で伝送するデータ放送アプリケーションに対応付けて配置され、第3者からIPネットワーク930で伝送されるMH−AIT931のロケーション情報(URL)を示している。なお、放送伝送路ではなくIPネットワーク930(通信伝送路)上で配信するデータ放送アプリケーションApp6については、データ伝送メッセージ並びにEMTの伝送は不要である。
【0140】
各アプリケーション・サービス記述子1〜4は、アプリケーションがデフォルト・エントリーに設定されていることを示すデフォルト・フラグを含むとともに、対応するデリバリー・セグメントから提供されるデータ放送アプリケーションのフォーマット(記述形式)のタイプと、アプリケーションのタイプ(記述形式)毎の優先度をさらに示す(前述)。
【0141】
受信機は、番組制作局からの放送信号(シグナリング)914を受信すると、MMT−SIのエントリー・ポイントとなるPAメッセージに格納されているMPテーブル914Aを解析して、データ放送アプリケーションを提供するデリバリー・セグメント毎に配置されたアプリケーション・サービス記述子1〜4を取得することができる。
【0142】
そして、受信機は、アプリケーション・サービス記述子1から、番組制作局がシグナリング914で伝送するデータ伝送メッセージ914B、MH−AIT914C、EMT914Dのロケーション情報を得るとともに、MH−AIT914Cに基づいて番組制作局がデータ・アセット913上で伝送するHTML5形式のデータ放送アプリケーションApp1、App2、App4のアプリケーションの処理方法(アプリケーションに適用される起動状態など)並びにロケーション情報(URL)を取得することができる。また、受信機は、アプリケーション・サービス記述子2から、番組制作局がシグナリング916で伝送するデータ伝送メッセージ916B、MH−AIT916C、EMT916Dのロケーション情報を得るとともに、MH−AIT916Cに基づいて番組制作局がデータ・アセット915上で伝送するjava形式のデータ放送アプリケーションApp11、App12、App13のアプリケーションの処理方法(アプリケーションに適用される起動状態など)並びにロケーション情報(URL)を取得することができる。
【0143】
同様に、受信機は、アプリケーション・サービス記述子3から、配信局が別のIPデータ・フロー920(シグナリング922)で伝送するデータ伝送メッセージ922B、MH−AIT922C、EMT922Dのロケーション情報を得るとともに、MH−AIT922Cに基づいて配信局がIPデータ・フロー920(データ・アセット921)やIPネットワーク930上で伝送するデータ放送アプリケーションApp3のアプリケーションの処理方法(アプリケーションに適用される起動状態など)並びにロケーション情報(URL)を取得することができる。
【0144】
同様に、受信機は、アプリケーション・サービス記述子4から、第3者がIPネットワーク930で伝送するMH−AIT931のロケーション情報を得るとともに、MH−AIT931に基づいて第3者がIPネットワーク930上で伝送するデータ放送アプリケーションApp6のアプリケーションの処理方法(アプリケーションに適用される起動状態など)並びにロケーション情報(URL)を取得することができる。
【0145】
また、各アプリケーション・サービス記述子1〜4には、それぞれがロケーション情報を示すMH−AIT914C、916C、922B、又は931のうちいずれがデフォルトの監視対象AITであるか否かを、デフォルト・フラグにより示している。さらに、MH−AITは制御対象である複数のアプリケーションうち1つのアプリケーションのみapplication_control_codeとして“autostart”(アプリケーションの起動)を指定して唯一自動起動することができ、結果的に特定のアプリケーションがデフォルト・エントリーと認識される。
図9に当てはめて説明すると、例えば、番組制作局に対応付けられたアプリケーション・サービス記述子1でMH−AIT914Cがデフォルトの監視対象AITであることを示すとともに、MH−AIT914C内で番組制作局から伝送されるデータ放送アプリケーションのうちApp1にのみ“autostart”(アプリケーションの起動)を指定しているとする。この場合、受信機は、アプリケーション・サービス記述子1からデフォルト・フラグを見つけると、番組制作局から配信される当該MH−AIT914Cにおいて制御対象であるApp1、App2、App4のうち唯一自動起動を設定したアプリケーションApp1をデフォルト・エントリーとして起動することができる。
【0146】
要するに、
図9を参照しながら説明したように、番組制作局としてのキー局、配信局としての各地方局、並びに第3者といったデリバリー・セグメント毎に対応付けられたアプリケーション・サービス記述子をMPテーブルに配置することで、同一の放送番組に対するデリバリー・セグメント毎のデータ放送アプリケーション及びアプリケーションに関連する制御情報をそれぞれ独立した系統(デリバリー・パス)で伝送することができる。したがって、データ放送アプリケーションを提供するデリバリー・セグメント毎に独立してアプリケーションの運用を実現することができる。アプリケーション・サービス記述子のシンタックスの詳細については、後述に譲る。
【0147】
図10には、同一の放送番組に対するデリバリー・セグメント毎のデータ放送アプリケーション及びアプリケーションに関連する制御情報をそれぞれ独立した系統(デリバリー・パス)で伝送する仕組みを模式的に示している。但し、
図10では、デリバリー・セグメントとして、番組制作局と、2つの配信局1020及び1030を想定している。
【0148】
番組制作局1010では、ビデオ・エンコーダーやオーディオ・エンコーダーなどからなるAVエンコーダー1011が、ビデオやオーディオなどの放送番組本体を構成するデータをエンコードする。また、アプリケーション生成部1012は、例えば放送番組に連動したデータ放送アプリケーション、並びにそのアプリケーションに関連する制御情報を生成する。マルチプレクサー(MUX)1013は、エンコードした放送番組のデータと、データ放送アプリケーション及びその制御情報のデータを多重化する。
【0149】
番組制作局1010では、アプリケーションに関連する制御情報を生成し符号化する際、放送のサービス・レベルの制御情報を記述するMPテーブルに、アプリケーション・サービス記述子という新たな記述子を、自局1010を含む各デリバリー・セグメントに対応付けて配置する。そして、このアプリケーション・サービス記述子内に、デリバリー・セグメント毎のデータ放送アプリケーションの運用に必要又は重要な制御データのロケーション情報を示すようにする。ここで言う、アプリケーションの運用に必要又は重要な制御データは、データ伝送メッセージ、MH−AIT、EMTである。
【0150】
そして、番組制作局1010から、多重化された配信信号を、B2Bなどの通信伝送路1040を介して、各配信局1020、1030に分配する。
【0151】
配信局1020では、アプリケーション生成部1021が、例えば放送番組に非連動のデータ放送アプリケーション、並びにそのアプリケーションに関連する制御情報を生成する。番組非連動のデータ放送アプリケーションは、天気予報やローカル・ニュースといったその地域に密着した情報を提供するアプリケーションである。マルチプレクサー1022は、番組制作局1010から分配された配信信号と、データ放送アプリケーション及びその制御情報のデータを多重化する。
【0152】
配信局1020において自前のアプリケーションに関連する制御情報を生成し符号化する際、番組制作局1010で記述されたMPテーブル内の自分に対応付けて配置されたアプリケーション・サービス記述子で指定されているロケーション情報の通りに、自前のアプリケーションの運用に必要又は重要な制御データを格納する。そして、配信局1020から、多重化された配信信号が、放送波として送出される。
【0153】
同様に、配信局1030では、アプリケーション生成部1031が、例えば放送番組に非連動のデータ放送アプリケーション、並びにそのアプリケーションに関連する制御情報を生成する。マルチプレクサー1032は、番組制作局1010から分配された配信信号と、データ放送アプリケーション及びその制御情報のデータを多重化する。
【0154】
配信局1030において自前のアプリケーションに関連する制御情報を生成し符号化する際、番組制作局1010で記述されたMPテーブル内の自分に対応付けて配置されたアプリケーション・サービス記述子で指定されているロケーション情報の通りに、自前のアプリケーションの運用に必要又は重要な制御データを格納する。そして、配信局1030から、多重化された配信信号が、放送波として送出される。
【0155】
本明細書で開示する技術では、
図10に示すような、複数のデリバリー・セグメント(番組制作局1010、配信局1020、配信局1030)がそれぞれ独立したデータ放送アプリケーションの運用を実現するために、MMT−SIのエントリー・ポイントとなるPAメッセージに格納されるMPテーブル内に、各デリバリー・セグメントに対応付けられたアプリケーション・サービス記述子を配置する。
【0156】
図11には、シグナリング・メッセージの1つであるPAメッセージ1101と、PAメッセージに含まれるMPテーブル1102の構成例を示している。また、
図12には、PAメッセージのシンタックス例1200を示している。以下、PAメッセージの各パラメーターについて説明する。
【0157】
message_idは、各種シグナリング情報において、PAメッセージを識別する16ビットの固定値である。versionは、PAメッセージのバージョンを示す、8ビットの整数値のパラメーターである。例えばPAメッセージを構成する一部のパラメーターでも更新した場合には、versionは+1だけインクリメントされる。lengthは、このフィールドの直後からカウントされる、当該PAメッセージのサイズをバイト単位で示す、32ビット長のパラメーターである。
【0158】
extensionフィールドには、ペイロード(message_payload)のフィールドに配置されるテーブルの属性情報が配置される。具体的には、number_of_tableフィールドには当該PAメッセージに格納するテーブルの数を示し、続くテーブルのインデックス情報のループでは、格納する各テーブルの属性情報として、8ビットのテーブル識別情報(table_id)と、8ビットのテーブル・バージョン(table_version)と、16ビットのテーブル長(table_length)が配置される。table_idは、テーブルを識別する固定値である。table_versionは、テーブルのバージョンを示す。table_lengthは、テーブルのサイズをバイト単位で示す。
【0159】
PAメッセージのmessage_payloadフィールドには、number_of_tablesで示される数分だけテーブルが配置される。このフィールドに格納されるMPテーブルは、すべてのアセットのリストを含むパッケージに関連する情報を示す。なお、MPテーブルの他にも、LC(Layoput Configuration)テーブルやPL(Package List)テーブルもPAメッセージに格納されるが、これらは本明細書で開示する技術に直接関連しないので、詳細な説明は省略する。
【0160】
図13には、PAメッセージに格納されるMPテーブルのシンタックス例1300を示している。以下、MPテーブルの各パラメーターについて説明する。
【0161】
table_idは、当該テーブルがMPテーブルであることを識別する8ビットの固定値(0x20)である。versionは、MPテーブルのバージョンを示す8ビットの整数値である。例えば、MPテーブルを構成する一部のパラメーターでも更新した場合には、versionは+1だけインクリメントされる。lengthは、このフィールドの直後からカウントされる、MPテーブルのサイズをバイト単位で示す、32ビット長のパラメーターである。また、MPT_modeは、このMPテーブルがサブセットに分割されているときの動作を示すが、詳細な説明は省略する。
【0162】
MMT_package_id_lengthは、パッケージ識別情報(MMT_package_id)のテキスト情報のサイズをバイト単位で示す。続くパッケージ識別情報のループでは、MMT_package_idをバイト単位(MMT_package_id_byte)でパッケージ識別情報を示す。パッケージ識別情報は、放送信号(IPデータ・フロー)で伝送されるすべての信号(映像、音声、字幕)、並びにファイル・データ(データ放送アプリケーション)などのアセットをコンポーネントとする全体のパッケージとしての識別情報である。この識別情報は、テキスト情報であり、上位16ビットはサービスを識別するためのサービス識別情報と同じ値とする。
【0163】
MPT_descriptor_lengthは、MPテーブル記述子領域のサイズをバイト単位で示す。続く、参照番号1301で示すMPテーブル記述子のループでは、MPテーブル記述子の内容をバイト単位(MPT_descriptors_byte)で記述する。本実施形態では、アプリケーション・サービス記述子は、MPテーブル記述子の1つとして、デリバリー・セグメント毎に配置される。各アプリケーション・サービス記述子内には、対応するデリバリー・セグメントが提供するデータ放送アプリケーションの運用に必要又は重要な上記の各制御データのロケーション情報を示す。アプリケーション・サービス記述子のシンタックスの詳細については、後述に譲る。
【0164】
number_of_assetsは、パッケージを構成する要素としてのアセット(信号、ファイル)の数を示す、8ビットのパラメーターである。number_of_assetの数分だけ、アセット情報のループが配置される。1つのアセット情報のループ内には、個々のアセットの情報としてのアセット識別情報(asset_id)と、一般ロケーション情報(MMT_general_location_info)と、アセット記述子(asset_descriptor)の各パラメーターが配置される。アセット情報のループ内に配置される情報について、以下に説明する。
【0165】
identifier_typeは、MMTPパケット・フローのID体系を示す。アセット識別情報(asset_id)を示すID体系であれば0x00とする。asset_id_schemeは、アセット識別情報の形式を示す。asset__id_lengthは、アセット識別情報のテキスト情報のサイズをバイト単位で示す。続くアセット識別情報のループでは、アセット識別情報をバイト単位(asset_id_byte)で示す。
【0166】
asset_typeは、アセットの種類を32ビット長の文字列で示す。asset_clock_relation_flagは、アセットのクロック情報フィールドの有無を示すフラグである。当該フラグが1のときは、クロック情報識別フィールド(asset_clock_relation_id)とタイムスケール・フラグ・フィールド(asset_timescale_flag)が存在し、0のときはこれらのフィールドは存在しない。location_countは、アセットのロケーション情報の数を示し、続くlocation_countの数だけ繰り返されるロケーション情報のループでは、該当するアセットのロケーション情報であるMMT_general_location_infoが示される。アセットのロケーション情報は、取得先となるIPデータ・フロー上のパケット識別情報(packet_id:PID)の形式で記述される。したがって、MPテーブル上でアセット識別情報を引いて、IPデータ・フロー上の該当するパケット識別情報を取り出すことができる。MMT_general_location_infoのデータ構造については、後述に譲る。
【0167】
asset__descriptor_lengthは、アセット記述子(asset_descriptor)のテキスト情報のサイズをバイト単位で示す。続くアセット記述子のループでは、アセット毎の記述子の内容をバイト単位(asset_descriptors_byte)で示す。
【0168】
図14には、MPテーブル内にデリバリー・セグメント毎に配置されるアプリケーション・サービス記述子のシンタックス例1400を示している。以下、アプリケーション・サービス記述子の各パラメーターについて説明する。
【0169】
descriptor_tag(記述子タグ)は、8ビットのフィールドで、当該記述子の種類を識別する。descriptors_lengthは、このフィールドより後に続くデータ・バイト数を書き込む領域である。
【0170】
参照番号1401で示すapplication_typeは、当該アプリケーション・サービス記述子の制御対象となる(言い換えれば、対応するデリバリー・セグメントから伝送される)アプリケーションの形式を示す。アプリケーション・タイプの割り当て例を以下の表1に示しておく。また、参照番号1402で示すapplication_priorityは、アプリケーション・タイプ毎の優先度(対応するデリバリー・セグメントから伝送される、上記のアプリケーション・タイプのアプリケーションを起動する優先度)を示す。
【0172】
default_AIT_flagは、対応するデリバリー・セグメントから伝送されるMH−AITがデフォルトの監視対象AITであるか否かを示すフラグである。
【0173】
DT_message_flagは、対応するデリバリー・セグメントから、データ放送アプリケーションの制御情報としてデータ伝送メッセージが伝送されるか否かを示すフラグである。また、EMT_numは、対応するデリバリー・セグメントからのEMTの配信数を示す。デリバリー・セグメントがIPネットワークでのみデータ放送アプリケーションを配信する場合(放送信号ではデータ放送アプリケーションを配信しない場合)には、データ伝送メッセージやEMTは配信されない。
【0174】
AIT_location_infoは、M2セクション・メッセージで伝送されるシグナリング・テーブルの1つであるMIT−AITのロケーション情報を、MMT_general_location_info(一般ロケーション情報)のシンタックスに従って示す。MH−AITが放送信号で伝送される場合のMMT_general_location_infoのlocation_typeは「0x00」であり、通信で伝送される場合のlocation_typeは「0x05」である。MMT_general_location_infoの詳細については、後述に譲る。
【0175】
また、DT_message_flagが1のときには、データ伝送メッセージのロケーション情報DT_message_location_infoが、MMT_general_location_infoのシンタックスに従って示される。データ伝送メッセージは放送信号でのみ伝送されるので、MMT_general_location_infoのlocation_typeは基本的に「0x00」である。
【0176】
また、EMT_numの数分のループで、各EMTのロケーション情報EMT_location_infoが、MMT_general_location_infoのシンタックスに従って示される。EMTは放送信号でのみ伝送されるので、MMT_general_location_infoのlocation_typeは基本的に「0x00」である。
【0177】
図15には、アセットのロケーション情報を示すMMT_general_location_info(一般ロケーション情報)のシンタックス例1500を示している。以下、MMT_general_location_infoの各パラメーターについて説明する。
【0178】
location_typeは、ロケーション情報の種類を8ビットで示し、以下の表2の割り当てに従う。
【0180】
location_typeが0x00のときは、当該ロケーション情報を含むテーブルが伝送されるIPデータ・フローと同一のIPデータ・フローのMMTPパケットのパケット識別情報(packet_id)を示す。
【0181】
location_typeが0x01のときは、ロケーション情報として、IPv4データ・フローのMMTPパケットを示す。具体的には、IPv4データ・フローの送信元アドレス(ipv4_src_addr)と、IPv4データ・フローの宛先アドレス(ipv4_dst_addr)と、IPデータ・フローの宛先ポート番号(dst_port)と、パケット識別情報(packet_id)を示す。
【0182】
location_typeが0x02のときは、ロケーション情報として、IPv6データ・フローのMMTPパケットを示す。具体的には、IPv6データ・フローの送信元アドレス(ipv6_src_addr)と、IPv6データ・フローの宛先アドレス(ipv6_dst_addr)と、IPデータ・フローの宛先ポート番号(dst_port)と、パケット識別情報(packet_id)を示す。
【0183】
location_typeが0x03のときは、ロケーション情報として、MPEG−2 TSの放送ネットワークのMPEG−2 TSパケットを示す。具体的には、放送ネットワークを識別するためのネットワーク識別情報(network_id)と、MPEG−2 TSを識別するためのトランスポート・ストリーム識別情報(MPEG_2_transport_stream_id)と、MPEG−2 TSパケットのパケット識別情報(MPEG_2_PID)を示す。
【0184】
location_typeが0x04のときは、ロケーション情報として、IPv6データ・フローのMPEG−2 TSパケットを示す。具体的には、IPv6データ・フローの送信元アドレス(ipv6_src_addr)と、IPv6データ・フローの宛先アドレス(ipv6_dst_addr)と、IPデータ・フローの宛先ポート番号(dst_port)と、MPEG−2 TSパケットのパケット識別情報(MPEG_2_PID)を示す。
【0185】
location_typeが0x05のときは、 URLでロケーション情報を示す。具体的には、URL_lengthは、URLバイト・フィールドの長さをバイト単位で示し、続くURLバイトのループでは、URL文字列をバイト単位(URL_byte)で示す。
【0186】
図16には、M2セクション・メッセージで伝送されるシグナリング・テーブルの1つであるMH AITのシンタックス例1600を示している。上述したように、MPテーブル内にデリバリー・セグメント毎に配置されるアプリケーション・サービス記述子内のAIT_location_infoが、対応するデリバリー・セグメントから伝送されるMIT−AITのロケーション情報を一般ロケーション情報(
図15を参照のこと)のシンタックスに従って示す。以下、MH AIテーブルの各パラメーターの意味について説明する。
【0187】
table_id(テーブル識別)は、各種シグナリング情報においてアプリケーション情報(AI)テーブルであることを識別する8ビットの固定値であり、本実施形態では0x89とする。section_syntax_indicator(セクション・シンタクス指示)は、1ビットのフィールドで、常に「1」とする。sectoin_length(セクション長)は、12ビットのフィールドで、セクション長フィールドからCRC32を含むセクションの最後までのセクションのバイト長を規定する。この値は4093(16進数で0xEFD)を超えないものとする。
【0188】
application_type(アプリケーション・タイプ)は、16ビットのフィールドで、当該MH−AITの制御対象となる(言い換えれば、対応するデリバリー・セグメントから伝送される)アプリケーションの形式を示す。アプリケーション・タイプの割り当ては、アプリケーション・サービス記述子と同様、上記の表1に従うものとする。
【0189】
version_number(バージョン番号)は、5ビットのフィールドで、サブテーブルのパーション番号である。version_numberは、当該MH AIテーブルのバージョン番号であり、サブテーブル内の情報に変化があった場合に+1だけインクリメントされる。また、バージョン番号の値が「31」になったとき、その次は「0」に戻る。current_next_indicator(カレント・ネクスト指示)は、常に「1」とする。section_number(セクション番号)は、8ビットのフィールドで、セクションの番号を表す。サブテーブル内で最初のセクションのセクション番号は0x00である。セクション番号は、同一のテーブル識別及びアプリケーション・タイプを持つセクションが追加される度に+1だけインクリメントされる。last_section_number(最終セクション番号)は、8ビットのフィールドであり、そのセクションが属するサブテーブルにおける最後のセクション番号を規定する。
【0190】
common_descriptor_length(共通記述子ループ長)は、8ビットのフィールドで、後続のdescriptor(記述領域内記述子)のバイト長を示し、このバイト数分のループからなる一連の領域にdescriptor(記述領域内記述子)が書き込まれる。この共通記述子領域内のdescriptorは、AITサブテーブル内のすべてのアプリケーションに適用される。
【0191】
application_loop_lengthは、このMH AIテーブルに含まれるアプリケーション情報の数を書き込む領域である。そして、application_loop_lengthが示す数分だけ、アプリケーション情報のループが配置される。そして、当該テーブルの最後に、ITU−T勧告H.222.0に従う巡回冗長符号CRC32(CRC)が付加される。
【0192】
1つのアプリケーション情報のループ内には、application_identifier(アプリケーション識別子)と、application_control_code(アプリケーション制御コード)と、アプリケーション情報が配置される。
【0193】
ここで、application_identifier(アプリケーション識別子)は、アプリケーションを識別するパラメーターである。application_control_code(アプリケーション制御コード)は、8ビットのフィールドで、アプリケーションの状態を制御する制御コードを規定する。このフィールドのセマンティックスは、アプリケーション・タイプの値に依存する。アプリケーション・タイプに依存しない場合のアプリケーション制御コードのセマンティックスを表3に示しておく。アプリケーション制御コード0x01は、アプリケーションの自動起動(AUTOSTART)を指定する。
【0195】
application_descriptor_loop_length(アプリケーション情報記述子ループ長)はアプリケーション情報記述子のバイト長を示し、このバイト数分のループからなる一連の領域にdescriptor(アプリケーション情報記述子)が書き込まれる。この記述子領域内のアプリケーション情報記述子は、共通記述子とは相違し、application_identifierで指定したアプリケーションのみに適用される。
【0196】
図17には、MPテーブル内にデリバリー・セグメント毎に配置されるアプリケーション・サービス記述子の他のシンタックス例1700を示している。参照番号1701で示すようにアプリケーション・タイプを示すapplication_typeは配置するが、アプリケーション・タイプ毎の優先度を示すapplication_priorityフィールドを配置しないことと、参照番号1702で示すように記述子の最後にプライベート・データ領域private_dataを配置したことの2点で、
図14に示したアプリケーション・サービス記述子のシンタックス例1400とは相違する。参照番号1701で示すapplication_typeの意味は、
図14に示したシンタックス例1400の場合と同様である。
【0197】
プライベート・データ領域は、データ放送サービスの運用時に必要となる情報を柔軟に定義することができる。プライベート・データ領域に、アプリケーション・タイプ毎の優先度情報を格納するという利用方法も考えられる。
【0198】
図18には、プライベート・データ領域のシンタックス例1800を示している。data_segment_tagは、4ビットのフィールドで、プライベート・データ領域の種類(最大で16種類)を識別する。data_lengthは、このフィールドより後に続く領域(data_segment)のデータ・バイト数(最大で16バイト)を書き込む領域である。data_segmentには、プライベート・データの内容が格納される。
【0199】
また、
図19には、プライベート・データ領域の利用例を示している。ここでは、アプリケーション・タイプ毎の優先度情報を格納するという利用方法を想定している。図示の例では、data_segment_tagが「1」で、当該プライベート・データ領域をアプリケーション・タイプ毎の優先度情報に利用することを識別する。また、data_segmentのデータ長(data_length)を1バイトとし、data_segmentには、当該アプリケーション・タイプの優先度を8ビットの値で示す。
【0200】
図20には、MPテーブル内にデリバリー・セグメント毎に配置されるアプリケーション・サービス記述子のさらに他のシンタックス例2000を示している。
図14に示したアプリケーション・サービス記述子のシンタックス例1400では、アプリケーション・タイプとアプリケーション・タイプ毎の優先度をそれぞれ個別のパラメーター(application_type、application_priority)で示した。これに対し、
図20に示すシンタックス例20では、application_type及びapplication_priorityという2つのパラメーターを配置せず、代わりに参照番号2001で示すように、application_bitmapという8ビットの単一のパラメーターでアプリケーション・タイプとアプリケーション・タイプ毎の優先度の両方を示すという点で相違する。また、
図17に示したシンタックス例1700と同様に、参照番号2002で示すように、記述子の最後にプライベート・データ領域private_dataを配置した。プライベート・データ領域は、データ放送サービスの運用時に必要となる情報を柔軟に定義することができる(同上)。
【0201】
application_bitmapの運用方法に一例について説明する。application_bitmapでは、当該アプリケーション・サービス記述子の制御対象となる(言い換えれば、対応するデリバリー・セグメントから伝送される)アプリケーション・タイプを2ビットで表現するようにしている。2ビットで表現されるアプリケーション・タイプの種別を表4に例示する。
【0203】
また、application_bitmapの8ビット中に上記のアプリケーション・タイプを示すに2ビットの値を格納する位置によってその優先度を示す。
図21には、8ビットのapplication_bitmapでアプリケーション・タイプの優先度を示す方法の一例を図解している。図示の例では、8ビットを2ビット毎のブロックに区切り、各ブロックに対しMSB側から順に優先度1、2、3、4を割り当てている。そして、アプリケーション・タイプを識別する2ビットの値を、そのアプリケーション・タイプに与えられた優先度に対応するブロックに格納し、その他のビットをすべて「0」にする。例えば、
図22に示すように、「01」で識別されるアプリケーション方式1がMSB側に格納されていると、そのアプリケーション・タイプ(HTML5)は最も高い優先度といとうことになる。
【0204】
なお、上記のようなapplication_bitmapの運用方法では、2ビットを用いて3種類のアプリケーション・タイプしか識別することができない。何故なら、「00」にアプリケーション・タイプを割り当てると、application_bitmapの8ビットはすべて「0」になり、空の情報と相違しないからである。第4のアプリケーション・タイプが出現したときには、application_bitmapをすべて0にして、プライベート・データ領域を利用してアプリケーション・タイプとアプリケーション・タイプ毎の優先度を示すようにしてもよい。
【0205】
上述したように、本明細書で開示する技術では、放送のサービス・レベルの制御情報を記述するMPテーブルに、アプリケーション・サービス記述子という新たな記述子を、データ放送アプリケーションを提供するデリバリー・セグメント毎に配置することとした。アプリケーション・サービス記述子のシンタックス例は、
図14、
図17、並びに
図20に示した通りである。アプリケーション・サービス記述子のシンタックスには、デリバリー・セグメントを直接識別する情報は含まない。
【0206】
また、1つのアプリケーション・サービス記述子には1つのアプリケーション・タイプの情報のみを記述するように規定する。各シンタックス例におけるアプリケーション・タイプの表現方法は既に述べた通りである。
【0207】
また、デリバリー・セグメントから複数のアプリケーション・タイプのデータ放送アプリケーションが提供されることを想定して、どちらを優先して起動するかを指定するために、アプリケーション・サービス記述子内でアプリケーション・タイプ毎の優先度(application_priority)を示すように規定する。各シンタックス例におけるアプリケーション・タイプの優先度の表現方法は、
図14、
図17、並びに
図20を参照しながら既に説明した通りである。
【0208】
したがって、受信機側では、
図9に示したような放送信号を受信すると、MPテーブルに配置される複数のアプリケーション・サービス記述子でそれぞれ示されるアプリケーション・タイプ毎の優先度を判断した上で、デフォルトの監視対象AITであることを示すフラグにより、さらに特定のアプリケーション情報テーブル(MH−AIT)及びデータ伝送メッセージを選択することができる。
【0209】
図23には、受信機においてデータ放送アプリケーションを起動するための処理手順をフローチャートの形式で示している。但し、受信機は、
図9に示したような放送信号を受信することを想定している。また、
図23に示す処理手順は、MPテーブルに配置されるアプリケーション・サービス記述子のシンタックスとして、
図14、
図17、並びに
図20のいずれにも対応していることを理解されたい。また、この処理手順は、受信機において選局動作時に起動し、受信機内のアプリケーション制御部408が中心となって実行されるものとする。
【0210】
受信機は、放送信号を受信すると、放送サービスのエントリー・ポイントであるPAメッセージで伝送されるMPテーブルを取得し、その内容を解析する(ステップS2301)。
【0211】
ここで、受信機は、MPテーブル内にアプリケーション・サービス記述子が配置されているかどうかをチェックする(ステップS2302)。
【0212】
ここで、MPテーブル内にアプリケーション・サービス記述子が1つも配置されていない場合には、データ放送アプリケーションの起動処理を行なうことなく、本処理ルーチンを終了する。
【0213】
また、MPテーブル内に複数のアプリケーション・サービス記述子が配置されている場合には、各アプリケーション・サービス記述子の内容をチェックして、当該受信機で動作可能なアプリケーション・タイプを示すアプリケーション・サービス記述子が複数あるかどうかをチェックする(ステップS2306)。
【0214】
動作可能なアプリケーション・タイプが複数ある場合には(ステップS2306のYes)、受信機は、その中で優先度が高いアプリケーション・タイプのアプリケーション・サービス記述子を選択する(ステップS2307)。そして、受信機は、選択したアプリケーション・サービス記述子の中で、デフォルトの監視対象AITフラグが設定されているものを選択する(ステップS2308)。
【0215】
また、動作可能なアプリケーション・タイプを示すアプリケーション・サービス記述子が1つしかない場合には(ステップS2306のNo)、受信機は、動作可能なアプリケーション・タイプを示すアプリケーション・サービス記述子の中で、デフォルトの監視対象AITフラグが設定されているものを選択する(ステップS2308)。
【0216】
ステップS2303では、受信機は、アプリケーション・サービス記述子で指定されたMH−AITを取得する。具体的には、MPテーブル内にただ1つのアプリケーション・サービス記述子が配置されている場合には、そのアプリケーション・サービス記述子でロケーション情報が指定されたMH−AITを取得する。また、MPテーブル内に複数のアプリケーション・サービス記述子が配置されている場合には、ステップS2308で選択された、デフォルトの監視対象AITフラグが設定されているアプリケーション・サービス記述子でロケーション情報が指定されたMH−AITを取得する。
【0217】
次いで、受信機は、MH−AITに指定されたデータ放送アプリケーションを取得する(ステップS2304)。MH−AITに指定されたデータ放送アプリケーションのデータ・ファイルを取得する方法の詳細については、例えば本出願人に既に譲渡されている特願2014−250279号明細書を参照されたい。
【0218】
そして、受信機は、アプリケーション・エンジン409で、取得したデータ放送アプリケーションを起動する(ステップS2305)。
【0219】
図24に示す4つのアプリケーション・サービス記述子2401〜2404がMPテーブルに配置されている場合を例にとって、受信機が
図23に示した処理手順に従ってアプリケーションの優先度とデフォルトの監視対象AITを判定する処理動作について説明する。
【0220】
参照番号2401並びに2402は、番組を制作したキー局に対応して配置されたアプリケーション・サービス記述子である。但し、各アプリケーション・サービス記述子2401、2402は、デリバリー・セグメントとしてのキー局を識別する情報を含まない。一方のアプリケーション・サービス記述子2401は、キー局が提供する、アプリケーション・タイプがHTML5形式のデータ放送アプリケーションの情報並びにそのアプリケーション・タイプの優先度を示す。アプリケーション・サービス記述子2401では、キー局が提供するHTML5形式の優先度が「10」、デフォルトの監視対象AITフラグが「1」に指定されているものとする。他方のアプリケーション・サービス記述子2402は、キー局が提供する、アプリケーション・タイプがjava形式のデータ放送アプリケーションの情報並びにそのアプリケーション・タイプの優先度を示す。アプリケーション・サービス記述子2402では、キー局が提供するjava形式の優先度が「5」、デフォルトの監視対象AITフラグが「0」に指定されているものとする。
【0221】
参照番号2403並びに2404は、ある地方局に対応して配置されたアプリケーション・サービス記述子である。但し、各アプリケーション・サービス記述子2403、2404は、デリバリー・セグメントとしての当該地方局を識別する情報を含まない。一方のアプリケーション・サービス記述子2403は、この地方局が提供する、アプリケーション・タイプがHTML5形式のデータ放送アプリケーションの情報並びにそのアプリケーション・タイプの優先度を示す。アプリケーション・サービス記述子2403では、この地方局が提供するHTML5形式の優先度が「10」、デフォルトの監視対象AITフラグが「0」に指定されているものとする。他方のアプリケーション・サービス記述子2404は、この地方局が提供する、アプリケーション・タイプがjava形式のデータ放送アプリケーションの情報並びにそのアプリケーション・タイプの優先度を示す。アプリケーション・サービス記述子2404では、この地方局が提供するjava形式の優先度が「5」、デフォルトの監視対象AITフラグが「1」に指定されている。
【0222】
受信機は、
図24に示す複数のアプリケーション・サービス記述子2401〜2404がMPテーブルに配置された放送信号を受信したとき、ステップS2302の分岐からステップS2306に進んで、動作可能なアプリケーション・タイプを示すアプリケーション・サービス記述子が複数あるかどうかをチェックする。
【0223】
例えば、受信機がHTML5及びjavaのいずれのアプリケーション・タイプも動作可能な場合には、ステップS2307に進んで、アプリケーション・サービス記述子2401〜2404の中で優先度が高い「10」に指定されたアプリケーション・タイプHTML5を指定するアプリケーション・サービス記述子2401、2403を選択する。そして、ステップS2308では、受信機は、デフォルトの監視対象AITフラグが設定されているアプリケーション・サービス記述子2401を選択する。
【0224】
また、受信機がHTML5のアプリケーション・タイプのみ動作可能な場合には、ステップS2308に進んで、受信機は、アプリケーション・タイプがHTML5を指定するアプリケーション・サービス記述子2401、2403の中で、デフォルトの監視対象AITフラグが設定されているアプリケーション・サービス記述子2401を選択する。
【0225】
このように受信機は、
図23に示した処理手順に従って、MPテーブルに配置されるアプリケーション・サービス記述子で示されるアプリケーション・タイプ毎の優先度を判断した上で、デフォルトの監視対象AITであることを示すフラグにより、さらに特定のMH−AIT及びデータ伝送メッセージを選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0226】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0227】
本明細書で開示する技術は、トランスポート方式としてMMTを採用するさまざまな放送システムに適用することができる。また、本明細書で開示する技術は、データ放送アプリケーションのデリバリー・セグメントが複数存在することが想定される放送システムに適用することができる。
【0228】
要するに、例示という形態により本明細書で開示する技術について説明してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本明細書で開示する技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【0229】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)放送番組に対するアプリケーションを送信するアプリケーション送信部と、
前記アプリケーションに関わるシグナリング・メッセージを送信するシグナリング・メッセージ送信部と、
を具備し、
前記シグナリング・メッセージ送信部は、所定のシグナリング・メッセージで伝送するシグナリング・テーブル内に、アプリケーションを提供するデリバリー・セグメント毎のアプリケーション・サービス記述子を配置して送信する、
送信装置。
(2)前記シグナリング・メッセージ送信部は、各アプリケーション・サービス記述子で、対応するデリバリー・セグメントが提供するアプリケーションの運用に必要又は重要な制御データを格納するシグナリング・メッセージ又はシグナリング・テーブルのロケーション情報を示す、
上記(1)に記載の送信装置。
(3)前記シグナリング・メッセージ送信部は、各アプリケーション・サービス記述子に、対応するデリバリー・セグメントが伝送するデータ伝送メッセージ、アプリケーション情報テーブル、又はイベント・メッセージ・テーブルのロケーション情報を示す、
上記(1)に記載の送信装置。
(4)前記シグナリング・メッセージ送信部は、放送サービスのエントリー・ポイントとなるシグナリング・メッセージで伝送するシグナリング・テーブル内に、デリバリー・セグメント毎のアプリケーション・サービス記述子を配置して送信する、
上記(1)に記載の送信装置。
(5)前記シグナリング・メッセージ送信部は、各アプリケーション・サービス記述子でデリバリー・セグメントが提供するアプリケーション・タイプの情報を示す、
上記(1)に記載の送信装置。
(6)前記シグナリング・メッセージ送信部は、各アプリケーション・サービス記述子でアプリケーション・タイプ毎の優先度の情報をさらに示す、
上記(5)に記載の送信装置。
(7)前記シグナリング・メッセージ送信部は、アプリケーション・タイプ毎の優先度の情報を示すパラメーター(application_priority)を各アプリケーション・サービス記述子に含める、
上記(6)に記載の送信装置。
(8)前記シグナリング・メッセージ送信部は、各アプリケーション・サービス記述子に配置されるプライベート・データ領域で、アプリケーション・タイプ毎の優先度の情報を示す、
上記(6)に記載の送信装置。
(9)前記シグナリング・メッセージ送信部は、所定ビット長のビットマップ情報領域(application_bitmap)でアプリケーション・タイプ及びその優先度を示す、
上記(6)に記載の送信装置。
(10)前記シグナリング・メッセージ送信部は、アプリケーション・タイプを示すnビット情報をmビット長のビットマップ情報領域に格納する位置により当該アプリケーション・タイプの優先度を示す(但し、n<mとする)、
上記(9)に記載の送信装置。
(11)前記シグナリング・メッセージ送信部は、各アプリケーション・サービス記述子で、対応するデリバリー・セグメントについてのアプリケーション情報テーブルがデフォルトの監視対象に指定されているか否かを示す、
上記(1)に記載の送信装置。
(12)前記シグナリング・メッセージ送信部は、各アプリケーション・サービス記述子で、対応するデリバリー・セグメントから伝送されるイベント・メッセージ・テーブルの数の情報を示す、
上記(1)に記載の送信装置。
(13)前記アプリケーション送信部は、ペイロードにアプリケーションを含むことを示す第1のペイロード種別情報をパケット・ヘッダーに挿入した第1の伝送パケットでアプリケーションを送信し、
前記シグナリング・メッセージ送信部は、ペイロードにシグナリング・メッセージを含むことを示す第2のペイロード識別情報をパケット・ヘッダーに挿入した第2の伝送パケットでシグナリング・メッセージを送信する、
上記(1)に記載の送信装置。
(14)放送番組に対するアプリケーションを送信するアプリケーション送信ステップと、
前記アプリケーションに関わるシグナリング・メッセージを送信するシグナリング・メッセージ送信ステップと、
を有し
前記シグナリング・メッセージ送信ステップでは、所定のシグナリング・メッセージで伝送するシグナリング・テーブル内に、アプリケーションを提供するデリバリー・セグメント毎のアプリケーション・サービス記述子を配置して送信する、
送信方法。
(15)放送番組に対するアプリケーションを受信するアプリケーション受信部と、
前記アプリケーションに関わるシグナリング・メッセージを受信するシグナリング・メッセージ受信部と、
を具備し、
前記シグナリング・メッセージ受信部は、伝送するシグナリング・テーブル内に、アプリケーションを提供するデリバリー・セグメント毎のアプリケーション・サービス記述子を配置したシグナリング・テーブルが格納された所定のシグナリング・メッセージを受信する、
受信装置。
(16)前記アプリケーション受信部が受信したアプリケーションの起動を制御するアプリケーション制御部をさらに備え、
前記アプリケーション制御部は、前記シグナリング・テーブルに配置される各アプリケーション・サービス記述子でアプリケーション・タイプ毎の優先度に基づいて、前記シグナリング・メッセージで受信するシグナリング・メッセージ又はシグナリング・テーブルを選択する、
上記(15)に記載の受信装置。
(17)放送番組に対するアプリケーションを受信するアプリケーション受信ステップと、
前記アプリケーションに関わるシグナリング・メッセージを受信するシグナリング・メッセージ受信ステップと、
を有し、
前記シグナリング・メッセージ受信ステップでは、伝送するシグナリング・テーブル内に、アプリケーションを提供するデリバリー・セグメント毎のアプリケーション・サービス記述子を配置したシグナリング・テーブルが格納された所定のシグナリング・メッセージを受信する、
受信方法。