(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態1.
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態にかかるアンテナ装置の例を示す模式図である。
図1に示すアンテナ装置10は、双方向通信を行う通信装置に用いられるアンテナ装置であって、かつ可搬性を有しているアンテナ装置の例である。なお、本例におけるアンテナ装置の可搬性は、例えば移動体を利用して実現される。
【0018】
図1に示すアンテナ装置10は、一次放射器2と、反射鏡3と、放射器支持機構4と、駆動手段5と、偏波面制御装置6と、支持機構7とを備える。
【0019】
一次放射器2は、導波管(図示せず)から入力される電波を反射鏡3に向けて放射し、また反射鏡3を反射して当該一次放射器2に入力される電波を導波管に出力する。一次放射器2は、例えば、ホーンアンテナや導波管ホーンと呼ばれる、給電導波管の一端を徐々に広げて所要の開口をもたせたものであってもよい。また、一次放射器2は、平面アンテナやモノポールアンテナ等であってもよく、形状および構造は特に限定されない。
【0020】
本実施形態において、一次放射器2は、導波管および光ケーブルや導軸ケーブル等を介して、送信機21と受信機22とを備える無線装置20に接続されている。なお、
図1では、1つの一次放射器2が、送受信スイッチ23を介して送信機21と受信機22とに接続される例を示しているが、受信用と送信用とで異なる一次放射器2を備える場合には、送信用の一次放射器2が送信機21に接続され、受信用の一次放射器2が受信機22に接続される構成であってもよい。
【0021】
反射鏡3は、受信電波を所定の集束位置に集束させる機能を有していればよい。反射鏡3は、例えば、回転放物面の少なくとも一部を有する反射鏡であってもよい。なお、アンテナ装置10が備える反射鏡3は1つに限られない。例えば、グレゴリアン・タイプやカセグレン・タイプの主反射鏡と副反射鏡といったように、反射鏡3は2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0022】
放射器支持機構4は、一次放射器2を、反射鏡3の集束位置に該一次放射器2の中心軸(より具体的には、一次放射器2が放射または受信する電波の中心軸)に対して回転自在に支持する支持構造体である。放射器支持機構4は、例えば、一次放射器2を回転自在に収容する放射器筐体と、該放射器筐体を反射鏡の集束位置に配すための、一般にステイとも呼ばれるロッド(支柱)とを備えていてもよい。また、放射器筐体は、例えば、駆動手段5からの回転駆動力を受けて回転動作する回転軸と、該回転軸を支持する軸受と、該回転軸に一次放射器2を固定するための固定機構と、該回転軸に駆動手段5からの回転駆動力を伝えるベルトドライブや歯車やカップリング等の回転伝達機構とを有していてもよい。なお、
図1において、αは一次放射器2の中心軸すなわち回転軸を表している。
【0023】
駆動手段5は、放射器支持機構4が有する回転伝達機構に回転駆動力を与えるものであればよく、例えばステッピングモータ等の電動機であってもよい。駆動手段5は、例えば、放射器支持機構4の回転伝達機構を介して、一次放射器2を収容する筐体の回転軸に連結される。
【0024】
なお、
図1に示す例では、駆動手段5を、反射鏡3の正面側に配された一次放射器2の近傍に配置する例を示しているが、駆動手段5は、例えば反射鏡3の背面側に設けられていてもよい。例えば、副反射鏡と主反射鏡といったように反射鏡3を複数組み合わせることにより、主反射鏡頂点付近に一次放射器2が配されるよう構成した場合や、放射器支持機構4が、反射鏡3の背面側でステイごと回転させるような回転機構を有している場合には、反射鏡3の背面側に駆動手段5を設けることができる。
【0025】
偏波面制御装置6は、自装置で取得可能な所定の評価データに基づいて、一次放射器2が送受信する電波の偏波方向を制御(調整)する装置である。偏波面制御装置6は、例えば、駆動手段5や送信機21や受信機22や各種センサといった外部機器とのインタフェースと、プログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)等と、記憶装置とを備えたコンピュータ(情報処理装置)等であってもよい。
【0026】
支持機構7は、少なくとも反射鏡3を支持する支持構造体であればよい。支持機構7は、例えば
図1に示すように、反射鏡3が搭載される基台7bと、基台7b上で反射鏡3を支えるポール7aと、基台7bを支える複数の脚部7cとを含んでいてもよい。なお、本例の脚部7cの各々には、少なくとも上下方向に伸縮可能な伸縮機構7d(例えば、油圧シリンダ)が設けられている。このような各脚部7cをトラック等の移動体の車幅方向に張り出した状態で上下方向に伸縮させることにより、アンテナ装置10を、接地した状態から移動体に搭載させた状態にできる。これにより、移動体を利用してアンテナ装置10を移動させることができる。
【0027】
また、支持機構7は、被支持体を設置場所に展開する際に、所定の傾斜角度範囲であれば地表の傾斜に合わせて各脚部7cの伸縮量を調整して接地させることで、被支持体を水平に保つことも可能である。
【0028】
図2は、本実施形態のアンテナ装置10の機能面に着目した構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態のアンテナ装置10は、アンテナ部11と、放射器回転機構12と、偏波面制御部13とを少なくとも含む。
図2において、アンテナ部11は、一般的なアンテナの機能を実現している手段であり、具体的には、一次放射器2と、反射鏡3と、導波管(図示せず)と、放射器支持機構4の少なくとも一部(例えば、一次放射器2を反射鏡3の集束位置に支持している部分)とに相当する。また、放射器回転機構12は、一次放射器2を反射鏡3の集束位置に配したまま回転させる機能を実現している手段であり、具体的には、放射器支持機構4の一部(軸受や回転伝達機構といった一次放射器2を回転自在に支持している部分)と、駆動手段5とに相当する。
【0029】
また、偏波面制御部13は、一次放射器2が送受信する電波の偏波面を制御する手段であり、具体的には、偏波面制御装置6に相当する。
【0030】
また、
図2では、上記以外にも、アンテナ装置10に付随するものとして、無線装置20と、無線装置20とアンテナ装置10とを接続する光ケーブルや導線などの接続用のケーブル14も一緒に示している。また、
図2において、支持機構7は図示省略されている。
【0031】
偏波面制御部13は、
図2に示すように、評価データ取得手段101と、トリガ入力手段102と、偏波面調整手段103とを有していてもよい。
【0032】
評価データ取得手段101は、自装置で取得可能な所定の評価データであって、一次放射器2の偏波方向角φ、偏波方向角φと相関のある自装置の傾き角ξまたは一次放射器2の受信レベルに関する評価データを取得する。評価データ取得手段101は、例えば、傾きセンサや受信機22のレベル検出手段(ともに図示せず)とのインタフェースと、プログラムに従って動作する情報処理手段とによって実現される。
【0033】
ここで、一次放射器2の偏波方向角φは、一次放射器2の偏波面(偏波方向)の水平面に対する角度である。具体的には、偏波方向角φは、一次放射器2から放射される直線偏波が垂直偏波すなわち偏波面が水平面に対して垂直であれば90°、水平偏波すなわち偏波面が水平面に対して平行であれば0°とされるような角度である。なお、偏波方向角φにおいて0°と180°は同じ角度の偏波面として扱う。また、本実施形態の一次放射器2は回転自在に支持されていることから、偏波方向角φは0°〜180°の範囲で任意の角度をとり得る。また、二重偏波レーダを用いるなど、直交する2種類の直線偏波を同時に送受信する場合には、偏波方向角φの範囲を0°〜90°の範囲としてもよい。この場合、偏波方向角φにおける0°と90°は同じ角度の偏波面として扱う。
【0034】
また、自装置の傾き角ξは、一次放射器2の偏波方向角φと相関のある角度であれば、どの部位の傾きであるかは特に問わない。例えば、自装置の傾き角ξは、支持機構7に含まれるポール7aや、基台7bや、脚部7c等の所定面の水平面に対する角度であってもよい。これらの部位は、一次放射器2の回転軸との位置関係が変化せず、また、平坦な面に設置したときに水平面に対して平行もしくは垂直となる領域を有しているからである。このため、そのような領域の水平面に対する傾きと、現在の一次放射器2の所定の基準位置からの回転量を示す回転角θとを合わせれば、一次放射器2の偏波方向角φを容易に求めることができる。なお、自装置の傾き角ξは、例えば、傾きセンサ(重力センサ)を用いて検出すればよい。
【0035】
また、一次放射器2の受信レベルは、例えば、一次放射器2から接続先の受信機22に出力される電波のレベルであってもよいし、受信機22で利得が補正された後に検出される電気信号のレベルであってもよい。
【0036】
トリガ入力手段102は、後述する偏波面調整手段103に偏波面の調整に関する制御のタイミングを与えるトリガを入力する。トリガ入力手段102は、例えば、ユーザ操作に応じて、所定のトリガを入力するスイッチ等の入力装置とのインタフェースであってもよい。また、トリガ入力手段102は、例えば、定められた周期でイベントを発生させる周期割込み手段とのインタフェースであってもよい。また、傾きセンサの出力が所定値を超えた場合や設定値に対して所定値以上ずれた場合にトリガを入力する回路や制御装置であってもよい。
【0037】
偏波面調整手段103は、評価データ取得手段101が取得した評価データに基づき、駆動手段5を駆動させることにより一次放射器2を回転させて、一次放射器2の偏波面を調整する。偏波面調整手段103は、トリガ入力手段102から入力されたトリガによって与えられる制御のタイミングに従い、一次放射器2の偏波面を調整する。偏波面調整手段103は、例えば、プログラムに従って動作するCPU等の情報処理装置によって実現される。
【0038】
図3A〜
図3Fは、一次放射器2の偏波方向角φと自装置の傾き角ξとの関係例を示す説明図である。なお、
図3A〜
図3Fには、水平視におけるアンテナ装置10の正面が模式的に示されている。
図3A〜
図3Fにおいて、方向βは一次放射器2の偏波面の方向を表している。すなわち、一次放射器2は、方向βに沿って電界が振動する電波を放射し、また方向βに沿って電界が振動する電波を最もよく受信する。なお、2偏波共用一次放射器の場合、方向βは、直交する2つの偏波面のうちのいずれか一方の方向、もしくは両者に区別が必要な場合には当該一次放射器において水平偏波と認識される側の偏波面の方向を表すものとする。以下、方向βを、偏波軸βという場合がある。
【0039】
また、方向Xは水平方向、すなわち水平面と平行な方向を表している。なお、本発明では、偏波方向角φを表す際、便宜的に反射鏡3の正面側からみて方向Xの右向きを0°として、左向きを180°とする。なお、正面側から見て反時計回りを正の角度とする。
【0040】
また、方向Uは、支持機構7の被支持体における水平軸を表している。なお、本例では、方向Uを、反射鏡3を搭載する基台7bの面方向としている。また、本例において、一次放射器2の回転角θは、方向βの方向Uに対する角度とされる。また、本例では、方向Uの方向Xとの角度を、上記の自装置の傾き角ξとする。図中の符号16は、そのような自装置の傾き角ξを検出するための傾きセンサ(重力センサ等)を表している。なお、傾き角ξおよび回転角θに関しても、所定の基準値から反射鏡3の正面側からみて反時計周りを正の角とする。そのようにすると、偏波方向角φと傾き角ξとの間に、φ=θ+ξという関係が規定される。すると、傾き角ξと回転角θとが分かれば、偏波方向角φが求めるられる。
【0041】
なお、偏波方向角φにおいて0°と180°とは同じ偏波面を表す。また、例えば、一次放射器2が二重偏波に対応している場合には、偏波方向角φの0°と90°とが同じ偏波面を表すものとしてもよい。この場合、回転角θの範囲も0°〜90°とすればよい。
【0042】
また、方向γは設置場所の地面の方向(傾斜)を表している。
図1に示す例のように、支持機構7が、高さ方向に伸縮可能な伸縮機構7dを有する複数の脚部7cを含む場合、必ずしも地面の傾斜と自装置の水平軸の方向とは一致しない点に注意が必要である。
【0043】
図3Aには、水平面と平行な場所に水平を保って展開されたアンテナ装置10の例が示されている。この場合、傾きセンサ15において傾き角ξ=0°と測定される。一次放射器2はこの時点では回転されていない、すなわち回転角θ=0°である。なお、本例では、回転角θを、方向βの方向Uに対する角度としている。これより、このときの一次放射器2の偏波方向角φは、φ=ξ+θ=0°と計算される。これは、この状態における一次放射器2の少なくとも1つの偏波面が水平方向にあることを表している。したがって、この状態で一次放射器2から電波を放射した場合、水平面に対して平行な方向に電界が振動する水平偏波が少なくとも放射される。
【0044】
また、
図3Bには、
図3Aに示す状態から一次放射器2を+方向に15°回転させたアンテナ装置10の例が示されている。本例において回転角θ=15°である。なお、傾き角ξに変化はない。すると、このときの一次放射器2の偏波方向角φは、φ=ξ+θ=15°と計算される。これは、この状態における、一次放射器2の少なくとも1つの偏波面が、水平方向に対して15°傾斜していることを表している。したがって、この状態で一次放射器2から電波を放射した場合、進行方向に対して時計周りを正とする角度方向において水平面に対して+15°の角度の偏波面を有する直線偏波が少なくとも放射される。
【0045】
また、
図3Cには、水平面に対して15°の傾斜を有する斜面上に、該斜面に対して平行に展開されたアンテナ装置10の例が示されている。図中において、ψは斜面の傾斜角を表している(ψ=15°)。本例では、傾きセンサ15において傾き角ξ=15°と測定される。また、一次放射器2はこの時点では回転されていない、すなわち回転角θ=0°である。これより、このときの一次放射器2の偏波方向角φは、φ=ξ+θ=15°と計算される。したがって、この状態で一次放射器2から電波を放射した場合、進行方向に対して時計回りを正とする角度方向において水平面に対して+15°の角度の偏波面を有する直線偏波が少なくとも放射される。なお、
図3Bと
図3Cで放射される直線偏波は、進行方向に対して時計周りを正とした場合に同じ角度となる直線偏波であるため、仮に
図3Bに示すアンテナ装置10と、
図3Cに示すアンテナ装置10とが対向して配置された場合、送受される偏波は直交関係にある直線偏波となる。
【0046】
また、
図3Dには、
図3Cに示す状態から一次放射器2を+方向に15°回転させたアンテナ装置10の例が示されている。本例の回転角θ=15°である。なお、傾き角ξに変化はない。すると、このときの一次放射器2の偏波方向角φは、φ=ξ+θ=30°と計算される。これは、この状態における、一次放射器2の少なくとも1つの偏波面が、水平方向に対して30°傾斜していることを表している。したがって、この状態で一次放射器2から電波を放射した場合、進行方向に対して時計周りを正とする角度方向において水平面に対して+30°の角度の偏波面を有する直線偏波が少なくとも放射される。
【0047】
また、
図3Eには、水平面に対して15°の傾斜を有する斜面に水平を保って展開されたアンテナ装置10の例が示されている。この場合、傾きセンサ15において傾き角ξ=0°と測定される。また、本例では、一次放射器2は+方向に15°回転されている(θ=15°)。これより、このときの一次放射器2の偏波方向角φは、φ=ξ+θ=15°と計算される。したがって、この状態で一次放射器2から電波を放射した場合、進行方向に対して時計回りを正とする角度方向において水平面に対して+15°の角度の偏波面を有する直線偏波が少なくとも放射される。したがって、設置場所の地点の傾斜具合に関わらず、自装置の(特に基準面の)水平面に対する左右方向の角度である傾き角ξが求まれば、それと回転角θとから偏波方向角φを求めることができる。ここで、左右方向は、電波の進行方向でみた左右方向をいう。
【0048】
また、
図3Fには、水平面に対して15°の傾斜を有する斜面上に水平を保てずに展開されたアンテナ装置10の例が示されている。なお、本例では、水平を保とうとしたが、水平面に対してわずかに(−5°)傾斜して展開されている。この場合、傾きセンサ15において傾き角ξ=−5°と測定される。このような場合において、例えば、一次放射器2の偏波方向角φ=30°としたい場合、回転角θ=φ−ξ=35°となるように、一次放射器2を回転させればよい。これにより、進行方向に対して時計回りを正とする角度方向において水平面に対して+30°の角度の偏波面を有する直線偏波が少なくとも放射される。このように、所望の偏波方向角φがある場合においても、設置場所の地点の傾斜具合に関わらず、自装置の傾き角ξが求まれば、それをもとに最適な回転角θを求めることができる。すると、所望の偏波方向角φを得るために、1回の駆動命令で、現在の回転角から最短の回転数で素早く、一次放射器2の偏波面を調整するといったことも可能である。
【0049】
なお、
図3A〜
図3Fの例では、支持機構7(より具体的には支持機構7の基台7b)に、傾き角ξを検出するための傾きセンサ15を設ける例を示したが、傾きセンサ15の設置場所は上記に限られない。例えば、傾きセンサ15は、支持機構7の他の部位に設けられてもよいし、支持機構7以外の部位(例えば、反射鏡3の背面や、放射器支持機構4の放射器筐体やその回転軸等)に設けられてもよい。
【0050】
次に、本実施形態のアンテナ装置10の動作を説明する。
図4は、本実施形態のアンテナ装置10の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図4には、アンテナ装置10における一次放射器2の偏波面の調整動作の一例が示されている。
【0051】
図4に示すように、本実施形態のアンテナ装置10は、設置場所に展開されて電源が供給されると、必要な初期化処理を行った後、トリガ受付状態となる(ステップS101)。
【0052】
その後、トリガ入力手段102が、ユーザ操作や、初期化処理等で設定された設定内容に応じて、所定のトリガを偏波面調整手段103に入力する(ステップS102)。
【0053】
偏波面調整手段103は、トリガ入力手段102から所定のトリガが入力されると、入力されたトリガによって与えられるタイミングに従い、一次放射器2の偏波面の調整処理を行う。本例では、トリガ入力手段102からトリガが入力されると、入力されたトリガによって与えられるタイミングに従い、評価データ取得手段101に評価データを取得させ、取得された評価データに基づき、一次放射器2を回転させる(ステップS103、ステップS104)。このとき、必要であれば、アンテナ装置10は送信機21と協働して試験電波の放射を行ってもよい。
【0054】
偏波面調整手段103は、一次放射器2が受信用と送信用とで異なる場合には、トリガ入力手段102から入力されるそれぞれの一次放射器2の偏波面の調整処理に対するトリガに従い、対象とされる一次放射器2を回転させてもよい。または、偏波面調整手段103は、送信用の一次放射器2を、所定のまたは指定された偏波方向角となるように自装置の傾き角ξに基づき回転させ、受信用の一次放射器2を、該一次放射器2を用いて受信機22が受信した電波のレベル(受信レベル)に基づき回転させるといったことも可能である。
【0055】
また、ステップS103〜ステップS104の動作を繰り返してもよい。そのような場合であっても、偏波面調整手段103は、トリガによって与えられるタイミングに従い、一次放射器2の偏波面の調整処理を行う。トリガ入力手段102から入力されるトリガによって与えられるタイミングとしては、例えば、偏波面の調整処理に対する開始タイミングや、偏波面の調整処理のうちの受信レベルに基づく調整処理(以下、レベル調整処理という)に対する開始タイミングや休止タイミングや再開タイミングや実施可能タイミング等が挙げられる。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、設置される場所が固定でない双方向通信を行う通信装置間の偏波面の調整を効率よく行うことができる。例えば、本実施形態のアンテナ装置10を利用すれば、通信を行う通信装置の各々において、トリガが入力されたタイミングで、自装置の傾き角ξを利用して一次放射器2の偏波方向が予め定められた方向になるように一次放射器2を回転させられる。すると、移動中は特に動作せず、移動した先で素早く、お互いの偏波面を合わせることができる。このとき、各通信装置において、通信相手の到着も、通信相手からの送波を待つ必要もない。また、一次放射器2を回転させるだけでよいので、例えば、設置場所の地面の傾斜が大きい(例えば、6°以上)であっても、容易にお互いの偏波面を合わせることができ、また合わせる角度も水平偏波や垂直偏波に限られない。
【0057】
例えば、本実施形態のアンテナ装置10は、受信機22から受信レベルを示すレベル評価データを取得して、レベル評価データが示す受信レベルに基づいて、受信レベルが最大となるようにまたは所定のレベル値を満たすように一次放射器2の偏波面を調整するよう構成されてもよい。本実施形態のアンテナ装置10によれば、入力するトリガによって、調整処理のタイミングを自由に設定できるので、移動した先々で最適な偏波面に調整できる。また、調整処理のタイミングを対をなす通信装置同士で異ならせたり、一方だけに調整処理を行わせることもできるので、互いに相手側の偏波面に合わせようとして調整処理が終わらないといった問題を回避しつつ、互いに良好なレベルが得られる偏波方向角に合わせることができる。
【0058】
一例として、トリガ入力手段102は、偏波面調整手段103の偏波面の調整処理にレベル調整処理が含まれる場合に、該レベル調整処理を実施可能なタイミングを示す実施可能タイミングを与えるトリガを入力してもよい。そのような場合に、偏波面調整手段103は、該トリガによって与えられる実施可能タイミングに従って、該実施可能タイミング以外でレベル調整処理を行わないようにしてもよい。例えば、偏波面調整手段103は、レベル調整処理中であっても、実施可能タイミングが終了したら、レベル調整処理を休止させる。
【0059】
また、他の例として、トリガ入力手段102は、偏波面調整手段103の偏波面の調整処理にレベル調整処理が含まれる場合に、該レベル調整処理に対する開始タイミングと休止タイミングと再開タイミングとを与えるトリガを入力してもよい。そのような場合に、偏波面調整手段103は、該トリガによって与えられる開始タイミングに従ってレベル調整処理を開始し、該トリガによって与えられる休止タイミングに従ってレベル調整処理を休止し、該トリガによって与えられる再開タイミングに従ってレベル調整処理を再開してもよい。ここで、開始タイミングおよび再開タイミングは、上述した実施可能タイミングの開始を示すタイミングと読み替えてもよい。また、休止タイミングは、上述した実施可能タイミングの終了を示すタイミングと読み替えてもよい。
【0060】
ここで、該トリガは、レベル調整処理を開始する旨を示すトリガであって、レベル調整処理の実施と休止の繰り返し周期と、レベル調整処理の開始時に実施と休止のどちらから行うかの指定と、レベル調整処理の開始時刻とを含む開始トリガ(以下、周期指定開始トリガという。)であってもよい。例えば、ユーザは、通信を行う2台の通信装置に対して、同じ開始時刻および繰り返し周期で、いずれか一方に「実施」を先に行う指定を含む周期指定開始トリガを入力し、他方に「休止」を先に行う指定を含む周期指定開始トリガを入力してもよい。そのようにすれば、対をなす通信装置間で、トリガ入力手段102が入力するトリガによって与えられるレベル調整処理に対する開始タイミング、休止タイミングおよび再開タイミングを異ならせることができる。なお、周期指定開始トリガは、レベル調整処理の開始時に実施と休止のどちらを先に行うかの指定の代わりに、親局か子局かの指定を含んでもよい。
【0061】
また、例えば、
図5に示すように、偏波面制御部13は、一次放射器2の偏波方向角の設定値を受け付ける偏波方向角受付手段104をさらに備えていてもよい。そのような場合に、偏波面調整手段103は、例えば、傾きセンサ15を利用して検出される傾き角ξに関する評価データに基づき、偏波方向角受付手段104が受け付けた設定値と一次放射器2の偏波方向角とが一致するように一次放射器2を回転させてもよい。このようにすれば、一次放射器2の偏波面を任意の偏波方向角に合わせることができる。なお、
図5には、偏波方向角受付手段104の他にも、自装置の傾き角ξを検出する傾きセンサ15や、受信機22のレベル測定部(図示せず)から評価データを入力するための制御線16も示されている。
【0062】
1対1の見通し外通信では、対をなす通信装置のアンテナ装置が地表面上で略対向するように配置されることが多い。このため、予め通信に用いる偏波方向角を決めておき、各々が独立して一次放射器2の偏波面が予め定めておいた偏波方向角となるように調整すれば、送波を伴うことなくお互いの偏波面を合わせることも可能である。また、本方法によれば、対をなす通信装置間で任意の偏波面の電波を使って通信を行うことができるので、例えば、通信の度に偏波面を変えたり、垂直偏波および水平偏波以外の偏波を用いることもでき、それにより、通信の傍受性を低下させることもできる。ただし、この調整は、対流圏散乱等で送信電波の偏波がそのままの角度で受信側のアンテナ装置に受信されることを前提としている。仮に伝送路中で偏波方向が変化する場合には、一方にのみ偏波方向角を指定して、他方は上述したような受信レベルに基づく調整処理を行うようにしてもよい。そのような調整処理の使い分けも入力するトリガを分けることによって可能である。
【0063】
また、例えば、本実施形態のアンテナ装置10は、自装置の傾き角ξと受信レベルの両方を利用して、一次放射器2の偏波面を調整するよう構成されてもよい。例えば、アンテナ装置10は、第1のトリガが入力されたタイミングで、自装置の傾き角ξを利用して通信装置の各々が一次放射器2の偏波面を調整し、第2のトリガが入力されると、第2のトリガによって与えられるタイミングに従い、通信装置の各々が受信レベルを利用して一次放射器2の偏波面を調整するよう構成されてもよい。このようにすると、受信レベルによる調整処理時間が短縮されるだけでなく、傾き角ξだけでは調整しきれない偏波面のずれも調整できる。例えば、上記の構成によれば、伝送路の影響やアンテナの向きのずれ等により発生する偏波面のずれも調整できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、各脚部7cの伸縮機構に対して最大伸縮量を適用しても被支持体が水平に保てないような設置場所であっても、設置場所の斜面を削るなどの作業を行わずに通信を行うことが可能である。更には、本実施形態によれば、被支持体が水平に保たれていなくても通信を行うことができるので、水平に保つための各脚部7cの伸縮量の調整作業を省くことができ、設置時間を短縮できる。また、見通し外通信に利用されるアンテナ装置には、直径3mを超える反射鏡が採用されることが多く、それを支える支持機構と合わせると数100kgの重量となる場合がある。そのような重量物を急な傾斜面に対しても水平に保った状態で支えられるようにしようとすると、脚部7cの伸縮量を増やさなければならず、脚部7cの耐久性が問題となるが、本実施形態によれば必ずしも水平に保つ必要がないため、耐久性、信頼性を向上できる。また、そのような脚部7cの耐久性向上のための更なる重量化やコストの増加を防止できる。また、本実施形態によれば、設置場所を柔軟に決められる。すなわち、本実施形態によれば、素早く、また労力や重量化やコストの増加を抑えて、またより簡単な方法で設置場所の適用範囲を広げられるとともに、より高精度に、双方向通信を行う通信装置間で送受信する電波の偏波面の調整を行うことができる。
【0065】
実施形態2.
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態にかかる通信装置の例を示す模式図である。なお、
図6(a)はアンテナ装置31と無線装置32とが一体化されて1つの基台7bに搭載された通信装置の例であり、
図6(b)はアンテナ装置31と無線装置32とが別々の基台7bに分かれて搭載された通信装置の例である。以下、
図6(b)に示す例において、アンテナ装置31を搭載する基台7bを有する支持機構を支持機構7−1といい、無線装置32を搭載する基台7bを有する支持機構を支持機構7−2という場合がある。
【0066】
また、
図7は、本実施形態の通信装置30の機能面に着目した構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態の通信装置30は、アンテナ部11と、放射器回転機構12と、偏波面制御部13と、無線処理部201とを少なくとも含む。通信装置30は、さらに、アンテナ部11の傾きを検出する傾きセンサ15を含んでいてもよい。なお、
図6(b)に示すように通信装置30においてアンテナ装置31と無線装置32とが分かれている場合には、傾きセンサ15は、アンテナ装置31を支持している支持機構7−1側に設けられるものとする。
【0067】
以下、本実施形態において、第1の実施形態と同様のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
【0068】
図7においても、アンテナ部11は、一般的なアンテナの機能を実現する手段であり、具体的には、一次放射器2と、反射鏡3と、導波管(図示せず)と、放射器支持機構4の少なくとも一部(例えば、一次放射器2を反射鏡3の集束位置に支持している部分)とによって実現される。また、放射器回転機構12は、一次放射器2を回転させる機能を実現する手段であり、具体的には、放射器支持機構4の一部(軸受や回転伝達機構といった一次放射器2を回転自在に支持している部分)と、駆動手段5とによって実現される。また、偏波面制御部13は、自装置で取得可能な所定の評価データに基づいて、一次放射器2が送受信する電波の偏波方向を制御(調整)する手段であり、具体的には、偏波面制御装置6によって実現される。
【0069】
上述したアンテナ装置31は、例えば、アンテナ部11と放射器回転機構12と傾きセンサ15とを含んでいてもよい。また、無線装置32は、例えば、無線処理部201と偏波面制御部13とを含んでいてもよい。なお、偏波面制御部13は、アンテナ装置31に含まれていてもよい。
【0070】
本例の無線処理部201は、送信処理部202と、受信処理部203と、レベル測定部204とを含む。なお、
図7に示す例では、無線処理部201がさらにデジタル信号処理部(digital signal processor,DSP)205を含む例が示されているが、無線処理部201は、DSP205を含んでいなくてもよい。
【0071】
送信処理部202は、第1の実施形態の送信機21に相当する処理部であって、送信すべきデータを搬送する電波をアンテナ部11に供給する処理を行う。送信処理部202は、例えば、DSP205を介して入力される、送信すべきデータの電気信号(変調波)を所定の変調方式により変調してアンテナ部11に出力してもよい。なお、送信処理部202は、アンテナ部11に接続可能な構成であれば、具体的構成は問わない。
【0072】
受信処理部203は、第1の実施形態の受信機22に相当する処理部であって、アンテナ部11から供給される、送信元のデータが搬送された電波から、送信元のデータを抽出する処理を行う。受信処理部203は、例えば、アンテナ部11が受信した電波に対して復調を行い、送信元の電気信号である変調波を抽出してもよい。なお、受信処理部203は、アンテナ部11に接続可能な構成であれば、具体的構成は問わない。
【0073】
レベル測定部204は、受信処理部203で処理される電波もしくは電気信号のレベルを測定する。レベル測定部204は、例えば、受信処理部203で抽出された変調波(電気信号)の電力レベルを測定してもよいし、また、例えば、受信処理部203がAD変換器(analog-to-digital converter,ADC)を含む場合には、AD変換器の出力レベルを測定してもよい。なお、レベル測定部204は、アンテナ部11の偏波面を介した電波もしくは電気信号の大きさに対応する信号を出力可能なものであれば、具体的構成は問わない。
【0074】
図8は、傾き角ξに基づく偏波面の調整処理にかかる通信装置30のより具体的な構成例を示す構成図である。
図8において、ANTは反射鏡3を表している。また、BPFはバンドパスフィルタを表している。また、LNAは低雑音増幅器(高周波増幅器)を表している。また、D/Cはダウンコンバーション(周波数変換器)を表している。また、AGCは自動利得補正器を表している。また、LMはレベル測定器を表している。また、CNTは制御装置を表している。また、SWは入力装置としてのスイッチを表している。
【0075】
図8において、一次放射器およびANTは、アンテナ部11に相当する。また、BPF、LNA、D/CおよびAGCは、受信処理部203に相当する。また、CNTは、偏波面制御部13の特に偏波面調整手段103に相当する。また、ステッピングモータは、駆動手段5に相当する。また、SWは、偏波面制御部13の特にトリガ入力手段102に相当する。また、重力センサは、アンテナ部11に含まれる一次放射器の偏波方向角φと相関のある自装置の傾き角ξを検出するための傾きセンサ15に相当する。
【0076】
図8に示す例では、アンテナ部11において、対をなす通信装置(図示せず)から放射された電波がANT(反射鏡3)に反射されて一次放射器に受信される。一次放射器が受信した電波は、受信処理部203のBPFを通ることにより所定の周波数のみが選択されて、LNAで増幅される。その後、D/Cで中間周波数に変換され、AGCで利得が補正された後、図示しない検波器(復調器)等に出力されて復調される。
【0077】
CNTは、必要な初期化処理を行った後、SWから傾き調整処理に対する開始タイミングを与えるトリガが入力されるのを待つ。そして、CNTは、SWから傾き調整処理に対する開始タイミングを与えるトリガが入力されると、重力センサを動作させて、所定の軸回転の傾き(当該軸に対して働く重力)に対応する信号を出力させてもよい。CNTは、重力センサから入力された所定の軸回転の傾きに対応する信号が入力されると、該信号を基に自装置の傾き角ξを算出する。そして、CNTは、算出された傾き角ξと一次放射器の現在の回転角θとに基づいてステッピングモータ(駆動手段5)を駆動させ、一次放射器を回転させる。ここで、CNTは、ステッピングモータに、回転方向と回転数とを含む駆動信号を出力してもよい。CNTは、例えば、算出された傾き角ξと一次放射器の現在の回転角θとから一次放射器の現在の偏波方向角φを求めた上で、一次放射器の偏波方向角φが所定の角度となるように、回転方向と回転数とを決定してもよい。
【0078】
また、
図9は、受信レベルに基づく偏波面の調整処理にかかる通信装置30のより具体的な構成例を示す構成図である。なお、
図9において、TMは周期割込み手段を表している。
【0079】
図9に示す例でも
図8と同様、アンテナ部11において、対をなす通信装置(図示せず)から放射された電波がANT(反射鏡3)に反射されて一次放射器2に受信される。一次放射器が受信した電波は、受信処理部203のBPFを通ることにより所定の周波数のみが選択されて、LNAで増幅される。その後、D/Cで中間周波数に変換され、AGCで利得が補正された後、図示しない検波器(復調器)等に出力されて復調される。なお、本例では、AGCからの出力信号は、LN(レベル測定器)にも入力される。LNは、入力される信号のレベルを測定し、その測定結果を示す信号(レベル値に対応する信号)をCNTに出力する。
【0080】
CNTは、必要な初期化処理を行った後、SWを介してユーザからレベル調整処理に対する開始タイミングを与えるトリガが入力されるのを待つ。そして、CNTは、SWを介してユーザからレベル調整処理に対する開始タイミングを与えるトリガが入力されると、調整用パラメータを初期化するとともに、入力されたトリガに従い、レベル調整処理開始時の状態を決定する。ここで、CNTは、レベル調整処理開始時の状態が「実施状態」である場合には、次に休止タイミングを得るためのタイマを起動して、即座にレベル調整処理を開始してもよい。また、CNTは、レベル調整処理開始時の状態が「休止状態」である場合には、次に再開タイミングを得るためのタイマ等を起動して、該タイマが満了するまでの間、レベル調整処理を休止してもよい。また、CNTは、レベル調整処理を開始もしくは再開した後、休止タイマが満了するまでは、レベル調整処理の実施期間であるとして、LNを動作させて、LNからのレベルの測定結果を示す信号に基づいて、ステッピングモータ(駆動手段5)を駆動させる。CNTは、例えば、回転させる前のレベル値と、回転させた後のレベル値とを比較し、回転後のレベルが大きくなった場合には同じ回転方向の回転をさせ、回転後のレベルが小さくなった場合には回転数を減らした逆方向の回転をさせる処理を繰り返し行ってもよい。このようにして、最もレベルが大きくなる回転角度まで一次放射器を回転させてもよい。なお、CNTは、このような繰り返し処理の最中であっても、TMからのトリガによって与えられる休止タイミングがきた場合には、調整処理(少なくとも回転動作)を休止する。また、CNTは、調整処理を休止中に、TMからのトリガによって与えられる再開タイミングがきた場合には、調整処理を再開する。
【0081】
図10は、本実施形態の通信装置30における偏波面調整手段103の動作の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、偏波面調整手段103は、自装置が設置場所に展開されて電源が供給されると、必要な初期化処理を行った後、トリガ受付状態となる(ステップS101)。その後、トリガ入力手段102から、自装置の傾き角ξに基づく偏波面の調整処理に対する開始イベントを与える第1の開始トリガが入力されると(ステップS201)、偏波面調整手段103は、傾きセンサ15で検出される自装置の傾き角ξに関する評価データに基づき、一次放射器2を回転させて、一次放射器2の偏波面を調整する傾き調整処理を行う(ステップS202)。
【0082】
また、偏波面調整手段103は、トリガ入力手段102から、受信レベルに基づく偏波面の調整処理に対する開始イベントを与える第2の開始トリガが入力されると(ステップS203)、調整用パラメータを初期化するとともに、入力されたトリガに従い、レベル調整処理開始時の状態が実施か休止かを判定する(ステップS204、ステップS205)。ここで、偏波面調整手段103は、レベル調整処理開始時の状態が「実施状態」であれば、すなわち実施はじまりであれば(ステップS205のYes)、休止タイマを起動した上で、レベル調整処理を開始する(ステップS207)。
【0083】
ステップS207では、偏波面調整手段103は、休止タイマが満了するまでまたは他のトリガが入力されるまで、レベル調整処理を継続して行う。例えば、偏波面調整手段103は、レベル測定部204によって測定されるレベル(受信レベル)が最も高くなるように、所定の回転角度範囲で一次放射器2を回転させる処理を繰り返し行ってもよい。
【0084】
一方、偏波面調整手段103は、レベル調整処理開始時の状態が「休止状態」であれば、すなわち休止はじまりであれば(ステップS205のNo)、再開タイマを起動して、該再開タイマが満了するまでまたは他のトリガが入力されるまで、そのまま待つ(ステップS208)。
【0085】
また、偏波面調整手段103は、実施状態中に休止タイマが満了すると(ステップS209)、ステップS208に進み、再び再開タイマを起動して、該再開タイマが満了するまでまたは他のトリガが入力されるまで、そのまま待つ。
【0086】
また、偏波面調整手段103は、休止状態中に再開タイマが満了すると(ステップS210)、ステップS206に進み、再び休止タイマを起動した上で、レベル調整処理を再開する。偏波面調整手段103は、レベル調整処理を再開する際に、休止前のパラメータ(回転方向や回転数等)を引き継いでもよいし、引き継がなくてもよい。
【0087】
なお、
図10に示す動作は、第1の実施形態のアンテナ装置10に対しても適用可能である。第1の実施形態のアンテナ装置10の偏波面調整手段103が、
図10に示す動作を行ってもよい。
【0088】
また、
図11は、本実施形態の通信装置30の機能面に着目した他の構成例を示すブロック図である。
図11に示すように、通信装置30は、さらに、ユーザからコマンドを受け付けるコマンド受付手段301と、情報を表示する表示手段302とを備えていてもよい。なお、コマンド受付手段301および表示手段302は、アンテナ装置31と無線装置32のいずれに実装されていてもよい。
【0089】
コマンド受付手段301は、例えば、調整処理に用いる各種パラメータの設定のためのコマンドや、無線処理部201に試験電波の送信処理や受信処理を行わせるためのコマンドを受け付けてもよい。また、コマンド受付手段301は、ユーザから受け付けたコマンドに応じて、トリガ入力手段102にトリガを入力したり、無線処理部201に制御命令や試験信号を入力する機能を有していてもよい。そのような機能を有することによって、一次放射器2の回転動作と、試験信号の送信動作、試験信号の受信動作およびそれに伴うレベル測定動作との間で制御タイミングを合わせることができる。コマンド受付手段301は、例えば、マウスやキーボードやタッチパネルや通信インタフェース等の情報入力手段と、プログラムに従って動作するCPU等とによって実現される。
【0090】
また、表示手段302は、例えば、評価データの内容(受信レベルの値や傾き角)や、一次放射器2の現在の回転角θや、一次放射器2の現在の偏波方向角φを表示してもよい。表示手段302は、例えば、ディスプレイ装置によって実現される。
【0091】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、アンテナ部11と無線処理部201とをより協調させることができるので、任意の設置場所で双方向通信を行う通信装置間の偏波面の調整をさらに効率よく行うことができる。
【0092】
なお、表示手段302や、コマンド受付手段301のうち調整処理に用いる各種パラメータの設定のためのコマンドを受け付ける機能は、第1の実施形態のアンテナ装置10に対しても適用可能である。すなわち、第1の実施形態のアンテナ装置10が、コマンド受付手段301や表示手段302を備えていてもよい。
【0093】
実施形態3.
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図12は、第3の実施形態にかかる通信システム40の構成例を示す構成図である。
図12に示すように、本実施形態の通信システム40は、お互いに双方向通信を行う2台の通信装置(通信装置30Aと通信装置30B)を備える。通信装置30Aおよび通信装置30Bは、第2の実施形態の通信装置30と同様でよい。
【0094】
ただし、トリガ入力手段102が入力するトリガによって与えられるレベル調整処理に対する開始タイミング、休止タイミングおよび再開タイミングが、通信装置30Aと通信装置30B間で異なる。
【0095】
なお、ユーザがトリガを入力するタイミングをずらすことで、通信装置30Aと通信装置30Bとの間で、開始タイミング、休止タイミングおよび再開タイミングを異ならせてもよいが、以下では、上述した周期指定開始トリガを利用して異ならせる例を説明する。
【0096】
図13および
図14は、通信装置30Aと通信装置30Bの制御タイミングの例を示すタイミングチャートである。
図13に示す例において、通信装置30Aと通信装置30Bとには、予め同じ繰り返し周期(例えば、5分毎に実施と休止を繰り返す旨の周期)が設定されている。このような場合において、通信装置30Aのユーザと通信装置30Bのユーザはそれぞれ、例えば、設置場所での展開が完了した時点で、傾き調整処理の開始タイミングを与えるトリガ(図中の斜線塗り矢印T1参照)を入力してもよい。また、通信装置30Aと通信装置30Bはそれぞれ、開始タイミングより前に受け付けた偏波方向角φの設定値と、自装置の傾き角ξとに基づいて、一次放射器2を回転させてもよい。なお、各通信装置に与えられる偏波方向角φの設定値には、お互いに対向した状態で偏波面が揃う角度が指定される。
【0097】
また、通信装置30Aのユーザと通信装置30Bのユーザはそれぞれ、例えば、予め定めておいたレベル調整処理の開始時刻前の任意のタイミングで、該開始時刻の指定と、実施と休止のどちらを先に行うかの指定とを含む周期指定開始トリガを入力してもよい。なお、各ユーザは、予めどちらの通信装置で実施を先に行わせるかを決めておけばよい。これにより、一方の通信装置(例えば、通信装置30A)には実施を先に行う旨の指定を含む周期指定開始トリガ(図中の黒塗り矢印T2参照)が入力され、他方の通信装置(例えば、通信装置30B)には休止を先に行う旨の指定を含む周期指定開始トリガ(図中の白塗り矢印T3参照)が入力される。
【0098】
このようにすれば、通信装置30Aがレベル調整処理を実施している間(図中のON)、通信装置30Bのレベル調整処理を休止させ、逆に、通信装置30Aがレベル調整処理を休止している間、通信装置30Bのレベル調整処理を実施させるといったことができる。なお、
図13に示す例では、一方の通信装置のレベル調整処理の休止タイミングと、他方の通信装置のレベル調整処理の再開タイミングとが重なっているが、例えば、
図14に示すように、通信装置30Aと通信装置30Bとで開始時刻をずらして指定すれば、お互いのレベル調整処理の間に任意のインターバルを設けることも可能である。なお、
図14に示す例では、実施を先に行う旨の指定を含む周期指定開始トリガ(図中の黒塗り矢印T2参照)が入力されたタイミングで試験信号の送波が開始される例を示しているが、試験信号の送波はユーザが指定する任意のタイミングで行えばよい。
【0099】
なお、各通信装置はレベル調整処理でレベルが所定の基準を満たないもしくはレベルが補足できない場合は終了を示すトリガが入力されるまで、レベル調整処理の実施と休止とを繰り返せばよい。
【0100】
また、上記の開始時刻の指定や、実施と休止のどちらを先に行うかの指定等は、別途コマンドを用いて行ってもよい。コマンド受付手段301は、そのような指定コマンドを受け付けると、指定された情報を所定の記憶領域に記憶させてもよい。各通信装置は、開始タイミングを示す開始トリガが入力されると、所定の記憶領域に記憶されているこれらの情報を読み出して、レベル調整処理を行ってもよい。
【0101】
以上のように、本実施形態によれば、相互に見通しの得られない遠距離での双方向通信を行う通信装置間であっても、お互いの偏波面を効率良く合わせることができる。
【0102】
なお、上記の各実施形態は、見通し外通信を行う通信装置を例に用いて説明したが、本発明による偏波面の調整方法は、見通し外通信に限らず、任意の場所で双方向通信を行う無線装置であれば好適に適用可能である。
【0103】
また、上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0104】
(付記1)受信電波を所定の集束位置に集束させる反射鏡と、送信機および受信機を備える無線装置に接続される一次放射器(例えば、一次放射器2)と、一次放射器を、反射鏡の集束位置に一次放射器の中心軸に対して回転自在に支持する放射器支持機構(例えば、放射器支持機構4)と、一次放射器の偏波面の水平方向に対する傾き角である偏波方向角、偏波方向角と相関のある自装置の傾き角または一次放射器が受信した電波の受信機におけるレベルである受信レベルに関するデータである評価データを取得する評価データ取得手段(例えば、評価データ取得手段101)と、評価データに基づき、一次放射器の偏波面を調整する偏波面調整手段(例えば、偏波面調整手段103)と、偏波面調整手段にトリガを入力するトリガ入力手段(例えば、トリガ入力手段102)とを備え、偏波面調整手段は、トリガによって与えられるタイミングに従い、一次放射器を回転させて一次放射器の偏波面を調整することを特徴とするアンテナ装置。
【0105】
(付記2)トリガ入力手段は、ユーザ操作に応じてトリガを入力する付記1に記載のアンテナ装置。
【0106】
(付記3)偏波面調整手段は、放射器支持機構に対して一次放射器の中心軸を中心に回転駆動力を与える駆動手段(例えば、駆動手段5)を制御することにより前記一次放射器を回転させて、前記一次放射器の偏波面を調整する付記1または付記2に記載のアンテナ装置。
【0107】
(付記4)一次放射器の偏波方向角または偏波方向角と相関のある自装置の傾き角を検出する傾きセンサ(例えば、傾きセンサ15)を備え、評価データ取得手段は、傾きセンサによって検出される一次放射器の偏波方向角または偏波方向角と相関のある自装置の傾き角に関する評価データである傾き評価データを取得し、偏波面調整手段は、傾き評価データに基づき、一次放射器を回転させる付記1から付記3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0108】
(付記5)一次放射器の偏波方向角または偏波方向角と相関のある自装置の傾き角を検出する傾きセンサを備え、評価データ取得手段は、傾きセンサによって検出される一次放射器の偏波方向角または偏波方向角と相関のある自装置の傾き角に関する評価データである傾き評価データと、一次放射器が受信した電波の受信機におけるレベルである受信レベルに関する評価データであるレベル評価データとを取得し、偏波面調整手段が行う一次放射器の偏波面の調整には、傾き評価データに基づく一次放射器の回転処理である第1の回転処理と、第1の回転処理の後に行われるレベル評価データに基づく一次放射器の回転処理である第2の回転処理(レベル調整処理)とが含まれる付記1から付記3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0109】
(付記6)一次放射器の偏波方向角の設定値を受け付ける偏波方向角受付手段(例えば、偏波方向角受付手段104)を備え、偏波面調整手段は、傾き評価データに基づく一次放射器の回転処理である第1の回転処理で、一次放射器の偏波方向角が偏波方向角受付手段が受け付けた設定値になるように、一次放射器を回転させる付記4または付記5に記載のアンテナ装置。
【0110】
(付記7)偏波方向角受付手段は、偏波方向角の設定値として0°または90°以外の値を受け付ける付記6に記載のアンテナ装置。
【0111】
(付記8)トリガ入力手段は、傾きセンサの出力値が所定の値以上となった場合に、トリガを入力する付記2から付記7のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0112】
(付記9)評価データ取得手段は、受信レベルに関する評価データであるレベル評価データを少なくとも取得し、偏波面調整手段が行う一次放射器の偏波面の調整には、レベル評価データに基づく一次放射器の回転処理である第2の回転処理が含まれ、トリガ入力手段は、第2の回転処理を実施可能なタイミングを示す実施可能タイミングを少なくとも与えるトリガを偏波面調整手段に入力し、偏波面調整手段は、トリガによって与えられる実施可能タイミング以外で第2の回転処理を行わない付記1から付記8のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0113】
(付記10)トリガ入力手段が入力するトリガによって与えられる第2の回転処理の実施可能タイミングが、対をなす他の通信装置が備えるアンテナ装置に与えられるものと異なる付記9に記載のアンテナ装置。
【0114】
(付記11)1対1の見通し外通信に用いられる付記1から付記10のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0115】
(付記12)評価データの内容と、一次放射器の現在の回転角と、一次放射器の現在の偏波方向角のうちの少なくとも1つを表示する表示手段を備えた付記1から付記11のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0116】
(付記13)少なくとも反射鏡を支持する反射鏡支持機構を備え、反射鏡支持機構は、被支持体を搭載する基台と、該基台に取り付けられ、高さ方向に伸縮可能な伸縮機構を有する複数の脚部とを含み、脚部の各々の伸縮機構を利用して被支持体が移動体に搭載される付記1から付記12のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0117】
(付記14)送信機と受信機とに接続される一次放射器と、反射鏡と、一次放射器を反射鏡の集束位置に、当該一次放射器の中心軸に対して回転自在に支持する放射器支持機構とを備えるアンテナ装置または該アンテナ装置を備える通信装置において、制御装置が、所定のトリガによって与えられるタイミングに従い、一次放射器の偏波面の水平方向に対する傾き角である偏波方向角、偏波方向角と相関のある自装置の傾き角または一次放射器が受信した電波の受信機におけるレベルである受信レベルに関するデータである評価データを取得するとともに、取得した評価データに基づく一次放射器を回転させる処理を実行することを特徴とする偏波面調整方法。
【0118】
(付記15)制御装置が、アンテナ装置が備える傾きセンサによって検出される一次放射器の偏波方向角または偏波方向角と相関のある自装置の傾き角に関する評価データである傾き評価データを取得し、制御装置が、傾き評価データに基づき、一次放射器を回転させる付記14に記載の偏波面調整方法。
【0119】
(付記16)制御装置が、アンテナ装置が備える傾きセンサによって検出される一次放射器の偏波方向角または偏波方向角と相関のある自装置の傾き角に関する評価データである傾き評価データと、受信レベルに関する評価データであるレベル評価データとを取得し、制御装置が、傾き評価データに基づく一次放射器の回転処理である第1の回転処理と、第1の回転処理の後に行われるレベル評価データに基づく一次放射器の回転処理である第2の回転処理とを行う付記14に記載の偏波面調整方法。
【0120】
(付記17)制御装置が、傾き評価データに基づく一次放射器の回転処理である第1の回転処理で、一次放射器の偏波方向角がユーザから受け付けた一次放射器の偏波方向角の設定値になるように、一次放射器を回転させる付記15または付記16に記載の偏波面調整方法。
【0121】
(付記18)制御装置が、0°または90°以外の設定値を受け付ける付記17に記載の偏波面調整方法。
【0122】
(付記19)制御装置が、受信レベルに関する評価データであるレベル評価データ一次放射器の回転処理である第2の回転処理を行う場合において、ユーザ操作に応じて入力されるトリガによって与えられる第2の回転処理を実施可能なタイミングを示す実施可能タイミング以外で第2の回転処理を行わない付記14から付記18のいずれかに記載の偏波面調整方法。
【0123】
(付記20)ユーザ操作に応じて入力されるトリガによって与えられる第2の回転処理を実施可能なタイミングが、対をなす他の通信装置の制御装置に対して与えられるものと異なる付記19に記載の偏波面調整方法。
【0124】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0125】
この出願は、2015年3月17日に出願された日本特許出願2015−053138を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。