(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁石穴部における径方向の前記第1側とは逆側の第2側の壁面は、周方向両側の壁面に繋がるテーパ面を含み、前記永久磁石は、前記磁石穴部のテーパ面に面接触するテーパ面を有し、
前記塗布工程は、前記磁石穴部の4方の壁面のうちの、前記第1側の壁面に、又は、前記永久磁石における該第1側の壁面に対向する表面に、前記接着剤を塗布することを含む、請求項6に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施例(実施例1)によるロータ10を示す平面図である。尚、
図1には、ロータ10に含まれうる他の構成要素(例えば、シャフト、エンドプレート等)については図示が省略されている。以下では、径方向及び軸方向は、特に言及しない限り、ロータ10の中心軸(=モータの回転軸)Iを基準とする。また、
図1等において、接着層16(接着層16A等も同じ)は、見易さのために、“なし地”でハッチングして示されている。
【0012】
ロータ10は、インナロータ型の回転電機で使用される。例えば、ロータ10は、ハイブリッド車又は電気自動車で使用される走行用モータで使用されてもよい。ロータ10は、
図1に示すように、平面視で円環状の形態を有する。ロータ10は、軸方向に所定の厚みを有する。即ち、ロータ10は、
図1に示す円環状の形態が軸方向に連続する形態を有する。
【0013】
ロータ10は、ロータコア12と、永久磁石14と、接着層16とを含む。
【0014】
ロータコア12は、例えば積層ケイ素鋼板により形成される。ロータコア12は、磁石穴部(スロット穴)120を有する。磁石穴部120は、
図1に示すように、周方向に複数個形成される。磁石穴部120のそれぞれは、同一の形状を有する。
【0015】
ロータコア12は、IPM(Internal Permanent Magnet)モータ用であり、磁石穴部120は、ロータコア12の径方向に開口しない。即ち、磁石穴部120は、ロータコア12の軸方向の両端面において軸方向のみ開口する。但し、磁石穴部120は、径方向外側で永久磁石14が径方向に当接する面を有する限り、ロータコア12の径方向に部分的にのみ開口してもよい。磁石穴部120の平面視の形状(開口形状)は任意であり、いくつかの例は後述する。
図1に示す例では、磁石穴部120は、径方向の内側の壁面121及び外側の壁面122のうちの外側の壁面122は、周方向両側の端部に、周方向両側の壁面123及び124に繋がるテーパ面125及び126を含む。テーパ面125及び126は、それぞれの壁面122(その周方向の中央部)、123及び124に対して斜め方向に延在する。尚、ここでいう“テーパ面”は、永久磁石14の対応する面と面接触する面を意味する。従って、“テーパ面”は、角アールような面であって、永久磁石14と面接触しない面は含まない。
【0016】
永久磁石14は、例えばネオジム磁石により形成される。永久磁石14は、磁石穴部120に挿入される。永久磁石14は、複数の磁石穴部120のそれぞれに対して挿入される。永久磁石14のそれぞれは、同一の形状を有する。永久磁石14の平面視の形状(断面形状)は任意であり、いくつかの例は後述する。
図1に示す例では、各永久磁石14は、径方向の内側の表面141及び外側の表面142のうちの外側の表面142と、周方向両側の表面143及び144とが、それぞれの表面142,143及び144に対して斜め方向に延在するテーパ面145及び146を介して接続される。各永久磁石14のテーパ面145及び146は、それぞれ対応する磁石穴部120のテーパ面125及び126に沿う(面接触する)ように形成される。また、各永久磁石14の表面142は、それぞれ対応する磁石穴部120の壁面122に対して、わずかな距離だけ離間して沿うように形成される。
【0017】
接着層16は、永久磁石14と磁石穴部120の壁面121との間に、永久磁石14と磁石穴部120の壁面121の双方に接着する態様で設けられる。接着層16は、対応する永久磁石14と磁石穴部120との組ごとに設けられる。各組に係る接着層16は、実質的に同一の構成を有する。各接着層16は、対応する永久磁石14を、対向する磁石穴部120の壁面121に固定する。各接着層16は、対応する永久磁石14及び磁石穴部120の軸方向全体にわたって設けられる。以下では、任意の1つの磁石穴部120に着目し、当該一の磁石穴部120と、当該一の磁石穴部120に対して設けられる永久磁石14及び接着層16とについて説明する。
【0018】
図2は、接着層16の構造の説明図であり、加熱前の接着剤90の単体状態(シート状の状態)を概念的に示す斜視図である。
図3は、カプセル体92の加熱膨張前後の状態を概念的に示す図である。
【0019】
接着層16は、加熱膨張するカプセルが多数配合された接着剤を加熱することで形成される。
図2に示す例では、接着剤90は、加熱膨張するカプセル体92が多数配合されたエポキシ樹脂91である。カプセル体92は、
図3の左側に示す加熱前の状態から、
図3の右側に示すように、加熱時に膨張する。この結果、加熱時に接着剤90が全体として膨張し、加熱後(硬化後)に接着層16が形成される。尚、加熱前のカプセル体92は、加熱後も接着層16内に、膨張されたカプセル体として残る。
【0020】
図4A及び
図4Bは、磁石穴部120内における接着層16の形成態様の説明図であり、
図4Aは、加熱前の接着剤90が塗布又は貼付けされた永久磁石14が磁石穴部120に挿入された状態を示し、
図4Bは、加熱後の接着層16が形成された状態を示す。
【0021】
磁石穴部120内には、
図4Aに示すように、接着剤90が塗布又は貼付け(以下、「塗布」で代表する)された永久磁石14が軸方向に挿入される。接着剤90は、永久磁石14における径方向内側の表面141(磁石穴部120の壁面121に対向する表面141)のみに塗布される。
図4Aに示す状態において加熱処理を行うと、
図4Bに示すように、膨張した接着剤90により接着層16が形成される。尚、ここでは、永久磁石14側に接着剤90が塗布されているが、磁石穴部120側に接着剤90が塗布されてもよい。
【0022】
ここで、加熱処理の際、接着剤90の膨張によって、接着層16は、径方向内側が磁石穴部120の径方向内側の壁面121に接触する。接着剤90が更に膨張することによって、磁石穴部120内の永久磁石14には、主に、径方向外側に力が付与される。これにより、接着剤90の膨張過程で、磁石穴部120内の永久磁石14は、磁石穴部120の径方向外側の壁面122に向って移動される。永久磁石14が壁面122に向って移動されると、永久磁石14のテーパ面145及び146が、磁石穴部120のテーパ面125及び126に接触する。これにより、永久磁石14は、磁石穴部120のテーパ面125及び126に沿ってガイドされる態様(周方向に位置決めされる態様)で、径方向に位置決めされる。この結果、永久磁石14は、磁石穴部120に対して周方向及び径方向で位置決めされる。即ち、永久磁石14は、テーパ面145及び146が磁石穴部120のテーパ面125及び126に沿う(面接触する)状態で、ロータコア12に対して固定される。このとき、表面142と磁石穴部120の壁面122の周方向の中央部との間に僅かな隙間が形成されてよい。これにより、壁面122のテーパ面125及び126による位置決め機能を高めることができる。
【0023】
図5は、比較例による接着層16’を備えるロータを示す図である。比較例では、カプセル体92が配合されない接着剤を用いて接着層16’が形成されている。かかる比較例によれば、
図5に示すように、硬化処理中の接着剤の液だれなどに起因して磁石穴部120の径方向外側の壁面と永久磁石との間に隙間ができ、永久磁石を磁石穴部に対して位置決めできない場合がある。
【0024】
この点、本実施例によれば、熱膨張する接着剤90を用いるので、塗布状態の接着剤90の厚みにばらつきがあっても、
図4Bに示すように、磁石穴部120の径方向外側の壁面122の周方向の中央部と永久磁石14との間の径方向の隙間に関する個体差を低減できる。また、上述の如く、接着剤90の熱膨張を利用して永久磁石14を磁石穴部120に対して位置決めして固定できる。この結果、各磁石穴部120における各永久磁石14の位置のばらつきに起因したモータトルク変動、バラツキ等を低減できる。
【0025】
次に、
図6及び
図7を参照して、他の一実施例(実施例2)によるロータ10Aについて説明する。
【0026】
実施例2によるロータ10Aは、上述した実施例1によるロータ10に対して、接着層16が、接着層16Aに置換された点、及び、シャフト18及びエンドプレート191及び192に油路74,73及び72が形成されている点が主に異なる。以下、上述した実施例1によるロータ10と同一である構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0027】
図6は、ロータ10Aの1つの磁石穴部120を含む部分に係る平面図である。
図7は、ロータ10Aの中心軸Iを含む平面によって切断されたロータ10Aの断面図であり、中心軸Iに対して一方側のみの半分を示す断面図である。
【0028】
接着層16Aは、上述した実施例1による接着層16に対して形成個所が異なる以外は同じである。即ち、接着層16Aは、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。
【0029】
接着層16Aは、永久磁石14の周方向の両端間に、周方向の両側が閉塞された油路70を形成する。具体的には、接着層16Aは、第1接着層161と第2接着層162とを含む。第1接着層161は、永久磁石14の径方向内側の表面141における周方向の一端に設けられ、第2接着層162は、同表面141における周方向の他端に設けられる。第1接着層161及び第2接着層162は、永久磁石14の軸方向の全体にわたり設けられる。第1接着層161及び第2接着層162は、周方向に互いに対して離反する。周方向で第1接着層161及び第2接着層162間に油路70が形成される。油路70は、
図7に示すように、ロータコア12の軸方向の両端で開口し、エンドプレート191及び192の各油路73及び72に連通する。
【0030】
エンドプレート191は、軸方向でロータ10Aの一端側の端面を覆うようにシャフト18まわりに設けられる。エンドプレート192は、軸方向でロータ10Aの他端側の端面を覆うようにシャフト18まわりに設けられる。エンドプレート191は、油路70に対応した各位置に、軸方向に貫通する油路73が形成される。エンドプレート192は、油路70に対応した各位置に、軸方向に貫通しない油路72が形成される。油路72は、
図7に示すように、径方向に延在し、シャフト18に形成される油路74に連通する。油路72は、軸方向に視て、中心軸I側から放射状に延在する形態で形成されてよい。
【0031】
シャフト18は、中空部により油路75が形成される。油路75は、軸方向に延在する。油路74は、径方向に延在し、油路54に連通する。
【0032】
ロータ10Aの動作時、ロータ10Aが回転されると、油路75内の油は、遠心力又は吐出圧の作用により、油路74及び油路72を通って径方向外側に流れる。その後、油は、油路70を通って軸方向に流れ、油路73を介して更に後流側へと流れる。油が油路70を通る際、永久磁石14が冷却される。このようにして、接着層16Aにより油路70を形成することで、永久磁石14の冷却を実現できる。
【0033】
このように実施例2によれば、上述した実施例1による効果に加えて、接着層16Aにより油路70を形成することで、永久磁石14の冷却を実現できる。油路70は、周方向両側が第1接着層161及び第2接着層162により閉塞され、且つ、径方向外側が永久磁石14により閉塞されるので、流れる油の漏れを低減できる。
【0034】
ところで、油路が、積層鋼板により形成されるロータコア12により形成される場合は、ロータコア12の積層プレート間を通って径方向外側に油が漏れ出る可能性がある。例えば、接着層16Aが永久磁石14に対して径方向内側ではなく径方向外側に設けられる場合には、ロータコア12の積層プレート間を通って径方向外側に油が漏れ出る可能性がある。これに対して、実施例2によれば、油路70は、径方向外側が永久磁石14により閉塞されるので、遠心力によって径方向外側に油が漏れ出ることを効果的に防止できる。
【0035】
次に、
図8乃至
図11を参照して、他の実施例によるロータ10B乃至10E(磁石穴部及び接着層の他の構成例)について説明する。
【0036】
図8乃至
図11は、それぞれ、ロータ10B乃至10Eの1つの磁石穴部120B及び120Cを含む部分に係る平面図である。
【0037】
図8に示す例では、ロータ10Bは、ロータコア12Bと、永久磁石14A及び14Bと、接着層16Bとを含む。
【0038】
ロータコア12Bは、上述した実施例1によるロータコア12に対して、磁石穴部120が磁石穴部120Bに置換された点が異なる。磁石穴部120Bは、V字状に配置された第1磁石穴121B及び第2磁石穴122Bを含む。第1磁石穴121B及び第2磁石穴122Bには、それぞれ、永久磁石14A及び14Bが挿入される。
【0039】
永久磁石14A及び14Bのそれぞれは、上述した実施例1による永久磁石14に対して、形状が異なり、テーパ面145及び146を備えていない。永久磁石14A及び14Bは、それぞれ、第1磁石穴121B及び第2磁石穴122Bに略対応した形状を備える。
【0040】
接着層16Bは、上述した実施例1による接着層16と同様、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。接着層16Bは、
図8に示すように、第1磁石穴121Bに対して設けられる接着層161Bと、第2磁石穴122Bに対して設けられる接着層162Bとを含む。
【0041】
接着層161Bは、永久磁石14Aを第1磁石穴121Bに対して固定する。接着層161Bは、
図8に示すように、第1磁石穴121Bの径方向の内側の壁面131A及び外側の壁面132Aのうちの、径方向内側の壁面131Aと、第1磁石穴121Bの周方向両側の壁面133A及び134Aのうちの一方側(本例では第2磁石穴122Bに近い側)の壁面134Aのみに対して設けられる。これにより、接着層161Bの形成時の接着剤の熱膨張によって、
図8に示すように、永久磁石14Aは、第1磁石穴121Bの径方向外側の壁面132Aと接触し且つ周方向の他方側の壁面133Aと接触する態様(即ち径方向及び周方向に位置決めされる態様)で、第1磁石穴121Bに対して位置決めされて固定される。
【0042】
接着層162Bは、永久磁石14Bを第2磁石穴122Bに対して固定する。接着層162Bは、
図8に示すように、第2磁石穴122Bの径方向の内側の壁面131B及び外側の壁面132Bのうちの、径方向内側の壁面131Bと、第2磁石穴122Bの周方向両側の壁面133B及び134Bのうちの一方側(本例では第1磁石穴121Bに近い側)の壁面134Bのみに対して設けられる。これにより、接着層162Bの形成時の接着剤の熱膨張によって、
図8に示すように、永久磁石14Bは、第2磁石穴122Bの径方向外側の壁面132Bと接触し且つ周方向の他方側の壁面133Bとの接触する態様(即ち径方向及び周方向に位置決めされる態様)で、第2磁石穴122Bに対して位置決めされて固定される。
【0043】
図9に示す例では、ロータ10Cは、ロータコア12Cと、永久磁石14Cと、接着層16Cとを含む。
【0044】
ロータコア12Cは、上述した実施例1によるロータコア12に対して、磁石穴部120が磁石穴部120Cに置換された点が異なる。磁石穴部120Cは、上述した実施例1による磁石穴部120とは異なり、テーパ面125及び126を備えていない。即ち、磁石穴部120Cは、径方向の内側の壁面131C及び外側の壁面132Cのうちの径方向外側の壁面132Cと、周方向両側の壁面133C及び134Cとが、テーパ面を介さずに接続される。
【0045】
永久磁石14Cは、上述した実施例1による永久磁石14に対して、形状が異なり、テーパ面145及び146を備えていない。永久磁石14Cは、磁石穴部120Cに略対応した形状を備える。
【0046】
接着層16Cは、上述した実施例1による接着層16と同様、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。接着層16Cは、
図9に示すように、磁石穴部120Cの4方の壁面のうちの、径方向内側の壁面131Cと、周方向両側の壁面133C及び134Cのみに対して設けられる。即ち、接着層16Cは、
図9に示すように、磁石穴部120Cの4方の壁面のうちの、径方向外側の壁面132Cに対して設けられない。これにより、接着層16Cの形成時の接着剤の熱膨張によって、
図9に示すように、永久磁石14Cは、磁石穴部120Cの径方向外側の壁面132Cと接触する態様(即ち径方向に位置決めされる態様)で、磁石穴部120Cに対して位置決めされて固定される。
【0047】
図10に示す例では、ロータ10Dは、ロータコア12Cと、永久磁石14Cと、接着層16Dとを含む。ロータ10Dは、
図9に示したロータ10Cに対して、接着層16Cが接着層16Dに置換された点が異なる。
【0048】
接着層16Dは、上述した実施例1による接着層16と同様、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。接着層16Dは、
図10に示すように、磁石穴部120Cの4方の壁面のうちの、径方向外側の壁面132Cと、周方向両側の壁面133C及び134Cのみに対して設けられる。即ち、接着層16Dは、
図10に示すように、磁石穴部120Cの4方の壁面のうちの、径方向内側の壁面131Cに対して設けられない。これにより、接着層16Dの形成時の接着剤の熱膨張によって、
図10に示すように、永久磁石14Cは、磁石穴部120Cの径方向内側の壁面131Cと接触する態様(即ち径方向に位置決めされる態様)で、磁石穴部120Cに対して位置決めされて固定される。
【0049】
図11に示す例では、ロータ10Eは、ロータコア12Cと、永久磁石14Cと、接着層16Eとを含む。ロータ10Eは、
図9に示したロータ10Cに対して、接着層16Cが接着層16Eに置換された点が異なる。
【0050】
接着層16Eは、上述した実施例1による接着層16と同様、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。接着層16Eは、
図11に示すように、磁石穴部120Cの4方の壁面のうちの、径方向内側の壁面131Cと、周方向両側の壁面133C及び134Cのうちの、一方側の壁面133Cのみに対して設けられる。即ち、接着層16Eは、
図11に示すように、磁石穴部120Cの4方の壁面のうちの、壁面132Cと壁面134Cに対して設けられない。これにより、接着層16Eの形成時の接着剤の熱膨張によって、
図11に示すように、永久磁石14Cは、磁石穴部120Cの径方向外側の壁面132Cと接触し且つ壁面134Cと接触する態様(即ち径方向及び周方向に位置決めされる態様)で、磁石穴部120Cに対して位置決めされて固定される。
【0051】
次に、
図12乃至
図15を参照して、他の実施例によるロータ10F乃至10Iについて説明する。
【0052】
図12乃至
図15は、それぞれ、ロータ10F乃至10Iの1つの磁石穴部120F乃至120Iを含む部分に係る平面図である。
【0053】
図12に示すロータ10Fは、上述した実施例1によるロータ10に対して、ロータコア12がロータコア12Fに置換され、接着層16が、接着層16Fに置換された点が異なる。以下、上述した実施例1によるロータ10と同一である構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0054】
ロータコア12Fは、上述した実施例1によるロータコア12に対して、磁石穴部120Fに突出部128Fが形成される点が異なる。突出部128Fは、磁石穴部120Fの径方向内側の壁面121Fに設けられる。突出部128Fは、永久磁石14の周方向の中央部に向けて径方向に突出する。即ち、突出部128Fは、永久磁石14の周方向の両端部とは径方向で対向しない。突出部128Fは、ロータコア12Fの軸方向の全体にわたり設けられる。突出部128Fと、永久磁石14の周方向の中央部との間の径方向の隙間は、永久磁石14の磁石穴部120Fへの組み付けの際に必要な最小限の隙間であってよい。
【0055】
接着層16Fは、上述した実施例1による接着層16に対して形成個所が異なる以外は同じである。即ち、接着層16Fは、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。
【0056】
接着層16Fは、永久磁石14の周方向の両端に、周方向に離間して設けられる。具体的には、接着層16Fは、第1接着層161Fと第2接着層162Fとを含む。第1接着層161Fは、磁石穴部120Fの径方向内側の壁面121Fにおける周方向の一端に設けられ、第2接着層162Fは、同壁面121Fにおける周方向の他端に設けられる。第1接着層161F及び第2接着層162Fは、永久磁石14の軸方向の全体にわたり設けられる。第1接着層161F及び第2接着層162Fは、周方向に互いに対して離反する。周方向で第1接着層161F及び第2接着層162Fの間には、突出部128Fが位置する。換言すると、第1接着層161F及び第2接着層162Fは、突出部128Fよりも周方向の外側に設けられる。
【0057】
図12に示す例によれば、上述した実施例1と同様の効果が得られる。即ち、接着層16Fの形成時の接着剤の熱膨張によって、永久磁石14は、磁石穴部120の径方向外側の壁面122のテーパ面125及び126(
図4A及び
図4B参照)と接触する態様(即ち径方向に位置決めされる態様)で、磁石穴部120に対して位置決めされて固定される。
【0058】
ところで、一般的に、ロータコア12Fの周方向の各位置における磁気飽和は、周方向の磁石穴部120Fの両端に対応する位置の方が、周方向の磁石穴部120Fの中央部に対応する位置よりも生じやすい。即ち、ロータコア12Fにおける周方向の磁石穴部120Fの端部に近い領域では磁気飽和が生じやすい。
【0059】
この点、
図12に示す例によれば、ロータコア12Fは、周方向の磁石穴部120Fの中央部に対応する位置に、突出部128Fを備える。これにより、突出部128Fを備えない場合に比べて、磁気抵抗を低減でき、その結果、回転電機のトルク特性を改善できる。また、
図12に示す例によれば、周方向の磁石穴部の両端に対応する位置に同様の突出部を備える場合に比べて、磁気抵抗を効率的に低減できる。これは、上述のように、周方向の磁石穴部120Fの両端に対応する位置では磁気飽和が生じやすいためである。このようにして、
図12に示す例によれば、周方向で磁気飽和が生じやすい領域には接着層16Fを設けつつ、周方向で磁気飽和が生じ難い領域に突出部128Fを設けることで、接着層16Fによる上述の効果を享受しつつ、磁気抵抗を効率的に低減できる。
【0060】
図13に示すロータ10Gは、上述した
図8に示したロータ10Bに対して、ロータコア12Bがロータコア12Gに置換され、接着層16Bが、接着層16Gに置換された点が異なる。以下、上述した
図8に示したロータ10Bと同一である構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0061】
ロータコア12Gは、上述した
図8に示した例によるロータコア12Bに対して、磁石穴部120Gに突出部128Gが形成される点が異なる。突出部128Gは、磁石穴部120Gの第1磁石穴121G及び第2磁石穴122Gのそれぞれに設けられる。突出部128Gは、
図12に示すロータ10Fと同様、第1磁石穴121G及び第2磁石穴122Gのそれぞれにおける径方向内側の壁面1311A及び1311Bに設けられる。第1磁石穴121Gの突出部128Gは、永久磁石14Aの周方向の中央部に向けて径方向に突出する。即ち、第1磁石穴121Gの突出部128Gは、永久磁石14Aの周方向の両端部とは径方向で対向しない。第2磁石穴122Gの突出部128Gは、永久磁石14Bの周方向の中央部に向けて径方向に突出する。即ち、第2磁石穴122Gの突出部128Gは、永久磁石14Bの周方向の両端部とは径方向で対向しない。各突出部128Gは、ロータコア12Gの軸方向の全体にわたり設けられる。各突出部128Gと、永久磁石14の周方向の中央部との間の径方向の隙間は、永久磁石14A及び14Bの磁石穴部120Gへの組み付けの際に必要な最小限の隙間であってよい。
【0062】
接着層16Gは、上述した
図8に示した例による接着層16Bに対して形成個所が異なる以外は同じである。即ち、接着層16Gは、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。
【0063】
接着層16Gは、
図13に示すように、第1磁石穴121Gに対して設けられる接着層161G及び接着層1611Gと、第2磁石穴122Gに対して設けられる接着層162G及び接着層1612Gとを含む。
【0064】
接着層161G及び接着層1611Gは、永久磁石14Aを第1磁石穴121Gに対して固定する。接着層161G及び接着層1611Gは、
図13に示すように、第1磁石穴121Gの径方向の内側の壁面1311A及び外側の壁面132Aのうちの、径方向内側の壁面1311Aと、第1磁石穴121Gの周方向両側の壁面133A及び134Aのうちの一方側(本例では第2磁石穴122Gに近い側)の壁面134Aのみに対して設けられる。これにより、接着層161G及び接着層1611Gの形成時の接着剤の熱膨張によって、
図13に示すように、永久磁石14Aは、第1磁石穴121Gの径方向外側の壁面132Aと接触し且つ周方向の他方側の壁面133Aと接触する態様(即ち径方向及び周方向に位置決めされる態様)で、第1磁石穴121Gに対して位置決めされて固定される。
【0065】
接着層161G及び接着層1611Gは、永久磁石14Aの周方向の両端に、周方向に離間して設けられる。具体的には、接着層161Gは、径方向の内側の壁面1311Aにおける周方向の一端に設けられ、接着層1611Gは、径方向の内側の壁面1311Aにおける周方向の他端に設けられる。接着層161G及び接着層1611Gは、永久磁石14Aの軸方向の全体にわたり設けられる。接着層161G及び接着層1611Gは、周方向に互いに対して離反する。周方向で接着層161G及び接着層1611Gの間には、突出部128Gが位置する。換言すると、接着層161G及び接着層1611Gは、突出部128Gよりも周方向の外側に設けられる。
【0066】
接着層162G及び接着層1612Gは、永久磁石14Bを第2磁石穴122Gに対して固定する。接着層162G及び接着層1612Gは、
図13に示すように、第2磁石穴122Gの径方向の内側の壁面1311B及び外側の壁面132Bのうちの、径方向内側の壁面1311Bと、第2磁石穴122Gの周方向両側の壁面133B及び134Bのうちの一方側(本例では第1磁石穴121Gに近い側)の壁面134Bのみに対して設けられる。これにより、接着層162G及び接着層1612Gの形成時の接着剤の熱膨張によって、
図13に示すように、永久磁石14Bは、第2磁石穴122Gの径方向外側の壁面132Bと接触し且つ周方向の他方側の壁面133Bとの接触する態様(即ち径方向及び周方向に位置決めされる態様)で、第2磁石穴122Gに対して位置決めされて固定される。
【0067】
接着層162G及び接着層1612Gは、永久磁石14Bの周方向の両端に、周方向に離間して設けられる。具体的には、接着層162Gは、径方向の内側の壁面1311Bにおける周方向の一端に設けられ、接着層1612Gは、径方向の内側の壁面1311Bにおける周方向の他端に設けられる。接着層162G及び接着層1612Gは、永久磁石14Bの軸方向の全体にわたり設けられる。接着層162G及び接着層1612Gは、周方向に互いに対して離反する。周方向で接着層162G及び接着層1612Gの間には、突出部128Gが位置する。換言すると、接着層162G及び接着層1612Gは、突出部128Gよりも周方向の外側に設けられる。
【0068】
図13に示す例によれば、上述した
図8に示した例と同様の効果に加えて、上述した
図12に示した例と同様の効果が得られる。
【0069】
図14に示すロータ10Hは、上述した
図9に示したロータ10Cに対して、ロータコア12Cがロータコア12Hに置換され、接着層16Cが、接着層16Hに置換された点が異なる。以下、上述した
図9に示したロータ10Cと同一である構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0070】
ロータコア12Hは、上述した
図9に示した例によるロータコア12Cに対して、磁石穴部120Hに突出部128Hが形成される点が異なる。突出部128Hは、磁石穴部120Hの径方向内側の壁面131Hに設けられる。突出部128Hは、永久磁石14Cの周方向の中央部に向けて径方向に突出する。即ち、突出部128Hは、永久磁石14Cの周方向の両端部とは径方向で対向しない。突出部128Hは、ロータコア12Hの軸方向の全体にわたり設けられる。突出部128Hと、永久磁石14Cの周方向の中央部との間の径方向の隙間は、永久磁石14Cの磁石穴部120Hへの組み付けの際に必要な最小限の隙間であってよい。
【0071】
接着層16Hは、上述した
図9に示した例による接着層16Cに対して形成個所が異なる以外は同じである。即ち、接着層16Hは、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。
【0072】
接着層16Hは、永久磁石14Cの周方向の両端に、周方向に離間して設けられる。具体的には、接着層16Hは、第1接着層161Hと第2接着層162Hとを含む。第1接着層161Hは、磁石穴部120Hの径方向の内側の壁面131Hにおける周方向の一端及び壁面133Cに設けられ、第2接着層162Hは、同壁面131Hにおける周方向の他端及び壁面134Cに設けられる。第1接着層161H及び第2接着層162Hは、永久磁石14Cの軸方向の全体にわたり設けられる。第1接着層161H及び第2接着層162Hは、周方向に互いに対して離反する。周方向で第1接着層161H及び第2接着層162Hの間には、突出部128Hが位置する。換言すると、第1接着層161H及び第2接着層162Hは、突出部128Hよりも周方向の外側に設けられる。
【0073】
図14に示す例によれば、上述した
図9に示した例と同様の効果に加えて、上述した
図12に示した例と同様の効果が得られる。
【0074】
図15に示すロータ10Iは、上述した
図10に示したロータ10Dに対して、ロータコア12Cがロータコア12Iに置換され、接着層16Dが、接着層16Iに置換された点が異なる。以下、上述した
図10に示したロータ10Dと同一である構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0075】
ロータコア12Iは、上述した
図10に示した例によるロータコア12Dに対して、磁石穴部120Iに突出部128Iが形成される点が異なる。突出部128Iは、磁石穴部120Iの径方向外側の壁面132Iに設けられる。突出部128Iは、永久磁石14Cの周方向の中央部に向けて径方向に突出する。即ち、突出部128Iは、永久磁石14Cの周方向の両端部とは径方向で対向しない。突出部128Iは、ロータコア12Iの軸方向の全体にわたり設けられる。突出部128Iと、永久磁石14Cの周方向の中央部との間の径方向の隙間は、永久磁石14Cの磁石穴部120Fへの組み付けの際に必要な最小限の隙間であってよい。
【0076】
接着層16Iは、上述した
図10に示した例による接着層16Cに対して形成個所が異なる以外は同じである。即ち、接着層16Iは、加熱膨張するカプセルが配合された接着剤を加熱することで形成される。
【0077】
接着層16Iは、永久磁石14Cの周方向の両端に、周方向に離間して設けられる。具体的には、接着層16Iは、第1接着層161Iと第2接着層162Iとを含む。第1接着層161Iは、磁石穴部120Iの径方向の外側の壁面132Iにおける周方向の一端及び壁面133Cに設けられ、第2接着層162Iは、同壁面132Iにおける周方向の他端及び壁面134Cに設けられる。第1接着層161I及び第2接着層162Iは、永久磁石14Cの軸方向の全体にわたり設けられる。第1接着層161I及び第2接着層162Iは、周方向に互いに対して離反する。周方向で第1接着層161I及び第2接着層162Iの間には、突出部128Iが位置する。換言すると、第1接着層161I及び第2接着層162Iは、突出部128Iよりも周方向の外側に設けられる。
【0078】
図15に示す例によれば、上述した
図10に示した例と同様の効果に加えて、上述した
図12に示した例と同様の効果が得られる。
【0079】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0080】
例えば、上述した実施例1では、テーパ面125は、壁面122の周方向の中央部に対して連続して形成されているが、壁面122の周方向の中央部とテーパ面125との間に、他の面が介在してもよい。これは、テーパ面126についても同様である。
【0081】
また、上述した各実施例は、インナロータタイプに対する適用例であるが、アウタロータタイプに適用することも可能である。アウタロータタイプの場合、基本的に、径方向の内外が逆になるだけであるためである。
【0082】
また、
図8乃至
図11に示す各実施例において、実施例2による冷却構造が適用されてもよい。即ち、各接着層(接着層16B等)に油路70が形成されてもよい。
【0083】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下を開示する。
(1)
磁石穴部(120、120B〜I)を有するロータコア(12、12B〜I)と、
磁石穴部(120、120B〜I)に挿入される永久磁石(14,14A,14B,14C)と、
永久磁石(14,14A,14B,14C)と磁石穴部(120、120B〜I)の壁面との間に設けられ、複数のカプセル体(92)を内部に含み、永久磁石(14,14A,14B,14C)を磁石穴部(120、120B〜I)の壁面に固定する接着層(16,16A乃至16I)とを含み、
接着層(16,16A乃至16I)は、磁石穴部(120、120B〜I)の径方向の内側の壁面(121,121F,131A乃至C、131H,131I、1311A,1311B)及び外側の壁面(122,132A乃至C、132I)のうちの、いずれか一方側である第1側の壁面のみに対して設けられる、回転電機用のロータ(10,10A乃至10I)。
(1)に記載の構成によれば、複数のカプセル体(92)を内部に含む接着層(16,16A乃至16I)によって、接着層(16,16A乃至16I)が設けられる第1側の壁面とは逆側(第2側)の磁石穴部(120、120B〜I)の壁面(122)に対して、永久磁石(14,14A,14B,14C)を隙間なく面接触させること(即ち面で押し付けること)が容易となる。即ち、接着層(16,16A乃至16I)を形成する接着剤の加熱時の膨張(複数のカプセル体(92)の膨張)を利用して、第1側の壁面とは逆側(第2側)の磁石穴部(120、120B〜I)の壁面に対して永久磁石(14,14A,14B,14C)を確実に接触させること(押し付けて接触させること)ができる。これにより、細条部材を用いずに磁石穴部(120、120B〜I)に対して永久磁石(14,14A,14B,14C)が少なくとも径方向で位置決めされたロータ(10,10A乃至10I)を得ることができる。
(2)
磁石穴部(120、120F)の第2側の壁面は、周方向両側の壁面(123,124)に繋がるテーパ面(125,126)を含み、
永久磁石(14)は、磁石穴部(120)のテーパ面(125,126)に面接触するテーパ面(145,146)を有し、
接着層(16,16F)は、磁石穴部(120)の4方の壁面(121乃至124:121F,122乃至144)のうちの、第1側の壁面のみに対して設けられる、(1)に記載の回転電機用のロータ(10,10A,10F)。
(2)に記載の構成によれば、接着層(16,16F)を形成する接着剤の加熱時の膨張を利用して、第1側の壁面とは逆側(第2側)の磁石穴部(120、120F)の壁面に対して、永久磁石(14)を隙間なく面接触させることが容易となる。接着層(16,16F)を形成する接着剤の加熱時の膨張の際、磁石穴部(120、120F)のテーパ面(125,126)に永久磁石(14)のテーパ面(145,146)が面接触するようにガイドされるので、径方向のみならず周方向の位置決めが可能となる。
(3)
磁石穴部(120B,120G)は、V字状に配置された第1磁石穴(121B,121G)及び第2磁石穴(122B,122G)を含み、
第1磁石穴(121B,121G)に係る接着層(161B,161G)は、第1磁石穴(121B,121G)の径方向の内側の壁面(131A)及び外側の壁面(132A)のうちの、第1側の壁面と、第1磁石穴(121B,121G)の周方向両側の壁面(133A、134A)のうちの一方側の壁面のみに対して設けられ、
第2磁石穴(122B,122G)に係る接着層(162B,162G)は、第2磁石穴(122B,122G)の径方向の内側の壁面(131B)及び外側の壁面(132B)のうちの、第1側の壁面と、第2磁石穴(122B,122G)の周方向両側の壁面(133B、134B)のうちのいずれか一方側の壁面のみに対して設けられる、(1)に記載の回転電機用のロータ(10B,10G)。
(3)に記載の構成によれば、接着層(16)を形成する接着剤の加熱時の膨張を利用して、第1側の壁面とは逆側(第2側)の各磁石穴(121B、122B:121G、122G)の壁面に対して、永久磁石(14A,14B)を隙間なく面接触させることが容易となる。また、接着層(161B,161G)は、第1磁石穴(121B,121G)の周方向両側の壁面(133A、134A)のうちの一方側の壁面のみに対して設けられので、第1磁石穴(121B,121G)に対する永久磁石(14A)の周方向の位置決めも可能となる。同様に、接着層(162B,162G)は、第2磁石穴(122B,122G)の周方向両側の壁面(133B、134B)のうちのいずれか一方側の壁面のみに対して設けられるので、第2磁石穴(122B,122G)に対する永久磁石(14B)の周方向の位置決めも可能となる。
(4)
磁石穴部(120C,120H,120I)の第2側の壁面は、周方向両側の壁面(133C、134C)にテーパ面を介さずに繋がり、
接着層(16C〜16E,16H,16I)は、磁石穴部(120C,120H,120I)の4方の壁面(131C乃至134C,131H,132C乃至134C)のうちの、第1側の壁面と、周方向両側の壁面(133C、134C)のうちの少なくともいずれか一方側の壁面のみに対して設けられる、(1)に記載の回転電機用のロータ(10C,10E,10H,10I)。
(4)に記載の構成によれば、接着層(16C〜16E,16H,16I)を形成する接着剤の加熱時の膨張を利用して、第1側の壁面とは逆側(第2側)の磁石穴部(120C,120H,120I)の壁面に対して、永久磁石(14C)を隙間なく面接触させることが容易となる。
(5)
接着層(16A)は、磁石穴部(120)の径方向の内側の壁面(121)及び外側の壁面(122)のうち、径方向内側の壁面(121)のみに対して設けられ、
径方向内側の壁面(121)に対して設けられる接着層(16A)は、永久磁石(14)の周方向の両端間に、周方向の両側が閉塞された油路(70)であって、ロータコア(12)の軸方向の両端で開口する油路(70)を形成する、(1)〜(4)のうちのいずれか1項に記載の回転電機用のロータ(10A)。
(5)に記載の構成によれば、接着層(16A)を形成する接着剤の加熱時の膨張を利用して、磁石穴部(120)の、第1側の壁面とは逆側である径方向外側の壁面(122)に対して、永久磁石(14)を隙間なく面接触させることが容易となる。また、接着層(16A)の周方向の両端間に、周方向の両側が閉塞された油路(70)を形成でき、永久磁石(14)の冷却が可能となる。また、油路(70)の径方向外側は永久磁石(14)により形成されるので、油路(70)の径方向外側が積層鋼板のロータコアで形成される場合に生じうる油も漏れを低減できる。
(6)
ロータコア(12F〜12I)は、第1側の壁面に、永久磁石(14,14A,14B,14C)の周方向の中央部に向けて径方向に突出する突出部(128F〜128I)を有し、
第1側の壁面に設けられる接着層(16F乃至16I)は、突出部(128F〜128I)よりも周方向の外側に位置する、(1)〜(4)のうちのいずれか1項に記載の回転電機用のロータ(10F乃至10I)。
(6)に記載の構成によれば、ロータコア(12F〜12I)は、磁石穴部(120F〜120I)の第1側の壁面に突出部(128F〜128I)が形成される。従って、突出部(128F〜128I)が形成されない場合に比べて、磁気抵抗を低減し、回転電機のトルク特性を改善できる。ところで、磁石穴部(120F〜120I)の周方向の端部は、磁気飽和が生じやすく、磁石穴部(120F〜120I)の周方向の端部に、同様の突出部を形成しても、磁気抵抗を効率的に低減できない。この点を考慮し、(6)に記載の構成によれば、第1側の壁面に設けられる接着層(16F乃至16I)は、突出部(128F〜128I)よりも周方向の外側、即ち、磁石穴部(120F〜120I)の周方向の端部に位置する。このように、磁気飽和が生じやすい領域には接着層(16F乃至16I)を設けつつ、磁気飽和が生じ難い領域に突出部(128F〜128I)を設けることで、接着層(16F乃至16I)による上述の効果を享受しつつ、磁気抵抗を効率的に低減できる。
(7)
径方向で突出部(128F〜128I)と永久磁石(14,14A,14B,14C)との間に隙間を有する、(6)に記載の回転電機用のロータ(10F乃至10I)。
【0084】
(7)に記載の構成によれば、永久磁石(14,14A,14B,14C)の磁石穴部120(128F〜128I)への組み付け性を良好に維持しつつ、突出部(128F〜128I)により磁気抵抗を効率的に低減できる。
(8)
回転電機用のロータ(10,10A乃至10I)の製造方法であって、
ロータコア(12,12B,12C)の磁石穴部(120、120B〜I)に永久磁石(14,14A,14B,14C)を挿入する工程と、
磁石穴部(120、120B〜I)の径方向の内側の壁面(121,121F,131A乃至C、131H,131I、1311A,1311B)及び外側の壁面(122,132A乃至C、132I)のうちの、いずれか一方側である第1側の壁面に、又は、永久磁石(14,14A,14B,14C)における第1側の壁面に対向する表面に、複数のカプセル体(92)を内部に含む接着剤(90)を塗布する塗布工程と、
接着剤(90)を加熱して接着層(16,16A乃至16I)を形成する工程と、を含む製造方法。
【0085】
(8)に記載の製造方法によれば、例えば上記の(1)に記載のロータ(10,10A乃至10I)を得ることができる。
(9)
磁石穴部(120、120F)における径方向の第1側とは逆側の第2側の壁面は、周方向両側の壁面(123,124)に繋がるテーパ面(125,126)を含み、永久磁石(14)は、磁石穴部(120、120F)のテーパ面(125,126)に面接触するテーパ面(145,146)を有し、
塗布工程は、磁石穴部の4方の壁面(121乃至124:121F,122乃至144)のうちの、第1側の壁面に、又は、永久磁石(14)における該第1側の壁面に対向する表面に、接着剤(90)を塗布することを含む、(8)に記載の製造方法。
【0086】
(9)に記載の製造方法によれば、例えば上記の(2)に記載のロータ(10,10A,10F)を得ることができる。
(10)
磁石穴部(120B,120G)は、V字状に配置された第1磁石穴(121B,121G)及び第2磁石穴(122B,122G)を含み、
塗布工程は、第1磁石穴(121B,121G)の径方向の内側の壁面(131A)及び外側の壁面(132A)のうちの、第1側の壁面と、第1磁石穴(121B,121G)の周方向両側の壁面(133A、134A)のうちの一方側の壁面に、又は、永久磁石(14A,14B)における該第1側の壁面に対向する表面に、接着剤(90)を塗布すること、及び、第2磁石穴(122B,122G)に係る接着層(162B,162G)は、第2磁石穴(122B,122G)の径方向の内側の壁面(131B)及び外側の壁面(132B)のうちの、第1側の壁面と、第2磁石穴(122B,122G)の周方向両側の壁面(133B、134B)のうちのいずれか一方側の壁面、又は、永久磁石(14A,14B)における該一方側の壁面に対向する表面とに接着剤(90)を塗布することを含む、(8)に記載の製造方法。
【0087】
(10)に記載の製造方法によれば、例えば上記の(3)に記載のロータ(10B,10G)を得ることができる。
(11)
磁石穴部(120C,120H,120I)における径方向の第1側とは逆側の第2側の壁面は、周方向両側の壁面(133C、134C)にテーパ面を介さずに繋がり、
塗布工程は、磁石穴部(120C,120H,120I)の4方の壁面(131C乃至134C,131H,132C乃至134C)のうちの、第1側の壁面と、周方向両側の壁面(133C、134C)のうちの少なくともいずれか一方側の壁面、又は、永久磁石(14C)における該一方側の壁面に対向する表面とに接着剤(90)を塗布することを含む、(8)に記載の製造方法。
【0088】
(11)に記載の製造方法によれば、例えば上記の(4)に記載のロータ(10C,10E,10H,10I)を得ることができる。
(12)
塗布工程は、磁石穴部(120)の径方向の内側の壁面(121)及び外側の壁面(122)のうち、径方向内側の壁面(121)に、又は、永久磁石(14)における該径方向内側の壁面に対向する表面に、接着剤(90)を塗布することを含み、
径方向内側の壁面に形成される接着層(16A)は、永久磁石(14)の周方向の両端間に、周方向の両側が閉塞された油路(70)であって、ロータコア(12)の軸方向の両端で開口する油路(70)を形成する、(8)〜(11)のうちのいずれか1項に記載の製造方法。
【0089】
(12)に記載の製造方法によれば、例えば上記の(5)に記載のロータ(10A)を得ることができる。
【0090】
なお、本国際出願は、2015年3月18日に出願した日本国特許出願2015−055062号、及び、2015年9月3日に出願した日本国特許出願2015−173748号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。