(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記表面実装型シールド部材のうち所定の表面実装型シールド部材において、前記シールド電極には、前記厚み方向に直交する方向に沿って延在するスリットが設けられており、
前記所定の表面実装型シールド部材は、前記複数の電子部品のうち他の電子部品よりも電磁波を放射しやすい一の電子部品に近接して配置されている、
請求項9〜12のいずれか1項に記載の回路モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導電部材を仕切りとして用いる従来の構成では、十分なシールド効果が得られない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、汎用性を高めつつシールド効果を高めることができる表面実装型シールド部材及び回路モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る表面実装型シールド部材は、表面実装型シールド部材であって、厚み方向に直交して延在する磁性体層を有する板状部材と、前記板状部材が回路基板に立設するように前記表面実装型シールド部材を実装するための実装用の電極であって、前記厚み方向に平行な面である第1端面に設けられた第1表面電極と、前記厚み方向に見て前記板状部材の実質的に全面に設けられ、前記第1表面電極に接続されているシールド電極と、を有
し、前記板状部材は、前記厚み方向に積層された複数の前記磁性体層を有する積層素体であり、前記シールド電極は、複数の前記磁性体層の間に設けられている。
【0009】
このように、板状部材が回路基板に立設するように設けられた第1表面電極を有することにより、回路基板への実装位置等を適宜調整することができる。すなわち、高い汎用性を有する表面実装型シールド部材が実現される。また、磁性体層を有する板状部材の実質的に全面に設けられたシールド電極を有することにより、回路基板に実装された状態で、シールド電極及び磁性体層が並んで立設することになる。このため、シールド電極から漏れ出したノイズを磁性体層のビーズ効果によってシールドすることができるので、シールド効果を高めることができる。すなわち、本態様に係る表面実装型シールド部材によれば、汎用性を高めつつシールド効果を高めることができる。
【0011】
また、シールド電極が複数の磁性体層の間に設けられていることにより、表面実装型シールド部材の一方主面側からのノイズ及び他方主面側からのノイズのいずれについても、シールド効果を発揮することができる。したがって、表面実装型シールド部材を実装する工程においてノイズ源に対して表面実装型シールド部材の向きを調整する必要がなくなるため、実装作業のハンドリングが簡素化される。
【0012】
また、前記厚み方向に積層された複数の前記シールド電極を有することにしてもよい。
【0013】
このように、複数のシールド電極を有することにより、シールド効果をさらに高めることができる。
【0014】
また、前記板状部材は、さらに、前記磁性体層より透磁率が低く、かつ、複数の前記シールド電極の間に設けられた低透磁率磁性体層を有することにしてもよい。
【0015】
このように、複数のシールド電極の間に低透磁率磁性体層を設けることにより、複数のシールド電極それぞれのインダクタンス成分の増加を抑制することができる。具体的には、複数のシールド電極を設けた場合、各シールド電極のみを周回する磁束(いわゆるマイナーループ)によって、各シールド電極のインダクタンス成分が増加する場合がある。このようなインダクタンス成分の増加は、シールド電極を介して回路基板にノイズを逃がす際の阻害要因となり得る。そこで、複数のシールド電極の間に低透磁率磁性体層を設けることにより、マイナーループを抑制してインダクタンス成分の増加を抑制することができるので、シールド効果をさらに高めることができる。
【0016】
また、
本発明の一態様に係る表面実装型シールド部材は、表面実装型シールド部材であって、厚み方向に直交して延在する磁性体層を有する板状部材と、前記板状部材が回路基板に立設するように前記表面実装型シールド部材を実装するための実装用の電極であって、前記厚み方向に平行な面である第1端面に設けられた第1表面電極と、前記厚み方向に見て前記板状部材の実質的に全面に設けられ、前記第1表面電極に接続されているシールド電極と、を有し、前記シールド電極には、前記厚み方向に直交する方向に沿って延在するスリットが設けられてい
る。
【0017】
このように、シールド電極にスリットが設けられていることにより、シールド電極から第1表面電極に向かうノイズの経路を囲むように磁性体層が配置されることになる。これにより、磁性体層がフェライトビーズとして機能することになり、回路基板に逃げるノイズを抑制することができる。よって、回路基板のグランド(安定電位面)の電気的変動を抑制することができるため、表面実装型シールド部材が搭載された部品の電気的特性の劣化を抑制することができる。
また、本発明の一態様に係る表面実装型シールド部材は、表面実装型シールド部材であって、厚み方向に直交して延在する磁性体層を有する板状部材と、前記板状部材が回路基板に立設するように前記表面実装型シールド部材を実装するための実装用の電極であって、前記厚み方向に平行な面である第1端面に設けられた第1表面電極と、前記厚み方向に見て前記板状部材の実質的に全面に設けられ、前記第1表面電極に接続されているシールド電極と、前記第1端面に対向する第2端面に設けられた第2表面電極と、を有し、前記板状部材は、さらに、前記厚み方向の両側に設けられた一対のセラミック非磁性体層を有する。
このように、板状部材の厚み方向の両側に一対のセラミック非磁性体層が設けられることにより、板状部材の全体的な強度、さらには表面実装型シールド部材の全体的な強度を高めることができる。
【0018】
また、前記表面実装型シールド部材は、さらに、前記第1端面に対向する第2端面に設けられた第2表面電極を有し、前記シールド電極は、さらに、前記第2表面電極に接続されていることにしてもよい。
【0019】
これにより、シールド電極が表面実装型シールド部材の実装面から反対側の面まで設けられているため、シールド効果を高めることができる。また、当該反対側の面には第2表面電極が設けられている。このため、当該反対側の面にシールドケース等の導電部材が当接された場合に、当該導電部材とシールド電極とを電気的に接続することができる。よって、当該導電部材を伝搬したノイズを、シールド電極を介して回路基板に逃がすことができる。これにより、シールド効果をさらに高めることができる。
【0020】
また、
本発明の一態様に係る表面実装型シールド部材は、厚み方向に直交して延在する磁性体層を有する板状部材と、前記板状部材が回路基板に立設するように前記表面実装型シールド部材を実装するための実装用の電極であって、前記厚み方向に平行な面である第1端面に設けられた第1表面電極と、前記厚み方向に見て前記板状部材の実質的に全面に設けられ、前記第1表面電極に接続されているシールド電極と、前記第1端面に対向する第2端面に設けられた第2表面電極と、を有し、前記シールド電極は、さらに、前記第2表面電極に接続されており、前記第2端面には、前記厚み方向に沿って延在し、前記シールド電極が露出する切り欠きが設けられ、前記第2表面電極は、前記切り欠きに設けられた導電性接合材であ
る。
【0021】
このように、第2表面電極が導電性接合材であることにより、表面実装型シールド部材とシールドケース等の導電部材との電気的及び構造的な接続を容易にとることができる。
【0022】
また、前記磁性体層はセラミック磁性体層であることにしてもよい。
【0023】
このように、磁性体層がセラミック磁性体層であることにより、磁性体層を焼成により一体の焼結体として得ることができる。さらに、板状部材が主にセラミックを基材とする場合、シールド電極と板状部材とを焼結により一体の焼結体として得ることができる。
【0026】
また、本発明は、このような表面実装型シールド部材を備える回路モジュールとしても実現できる。すなわち、回路モジュールは、グランドを有する回路基板と、前記回路基板に実装された複数の電子部品と、前記複数の電子部品の間に位置するように前記回路基板に実装された表面実装型シールド部材と、を備え、前記表面実装型シールド部材は、
上述した表面実装型シールド部材のうちのいずれか1つであり、前記
表面実装型シールド部材の第1表面電極は前記グランドに接続されている。
【0027】
このように、複数の電子部品の間に
上述した表面実装型シールド部材が実装されていることにより、
上述した効果が得られることに加えて、複数の電子部品の間の電磁干渉が低減される。つまり、一方の電子部品から他方の電子部品へのノイズをシールドすることができる。また、回路基板のサイズや電子部品のレイアウトに変更に合わせて、表面実装型シールド部材の配置位置を適宜調整することができる。
【0028】
また、さらに、前記複数の電子部品及び前記表面実装型シールド部材を覆うように前記回路基板に設けられたシールドケースを備え、前記表面実装型シールド部材は、前記回路基板と反対側の端部が前記シールドケースの内壁に当接することにしてもよい。
【0029】
このように、表面実装型シールド部材がシールドケースの内壁に当接することにより、シールドケースに伝搬したノイズを、表面実装型シールド部材を介して回路基板に逃がすことができる。これにより、シールドケースのシールド効果を高めることができる。
【0030】
また、前記回路基板と前記シールドケースとで囲まれる空間を仕切る複数の前記表面実装型シールド部材を備えることにしてもよい。
【0031】
これにより、回路基板のサイズや電子部品のレイアウトの変更に合わせて、複数の表面実装型シールド部材で構成される壁全体の形状を自由に変更できる。
【0032】
また、複数の前記表面実装型シールド部材のうち所定の表面実装型シールド部材において、前記シールド電極には、前記所定方向に沿って延在するスリットが設けられており、前記所定の表面実装型シールド部材は、前記複数の電子部品のうち他の電子部品よりも電磁波を放射しやすい一の電子部品に近接して配置されていることにしてもよい。
【0033】
このように、スリットが設けられたシールド電極を有する表面実装型シールド部材が電磁波を放射しやすい一の電子部品に近接して配置されていることにより、回路基板のグランドの電気的変動を抑制することができる。このため、回路モジュールの電気的特性の劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る表面実装型シールド部材等によれば、汎用性を高めつつシールド効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る表面実装型シールド部材及び回路モジュールについて説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造プロセス、及び、製造プロセスの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0037】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31を有する回路モジュール1の斜視図である。なお、同図では、シールドケース40を他の部材から分離した状態で図示している。
【0038】
同図では、回路モジュール1の厚さ方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直かつ互いに直交する方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向として説明し、Z軸方向プラス側を回路モジュール1の天面(上面)側として説明する。しかし、実際の使用態様においては、回路モジュール1の厚さ方向が上下方向とはならない場合もある。このため、実際の使用態様においては、回路モジュール1の天面側は上面側には限定されない。
【0039】
回路モジュール1は、携帯電話等の携帯端末機器に搭載され、電源回路、及び、この電源回路から電源が供給されるRF(Radio Frequency)回路等の、所定の回路を構成するモジュール部品である。
図1に示すように、回路モジュール1は、回路基板10と、回路基板10に実装された複数の電子部品20と、複数の電子部品20の間に位置するように回路基板10に立設されたシールド壁30とを備える。また、本実施の形態では、回路モジュール1はさらに、複数の電子部品20及びシールド壁30を覆うように回路基板10に設けられたシールドケース40を備える。
【0040】
以下、回路モジュール1の各構成要素について、さらに
図2A及び
図2Bを用いて説明する。
図2Aは、回路モジュール1の上面図である。
図2Bは、回路モジュール1の断面構造を概念的に示す図であり、具体的には、
図2AのIIB−IIB線における回路モジュール1の断面図である。なお、
図2Aでは、簡明のため、シールドケース40について図示を省略している。また、
図2Bでは、簡明のため、後述する第1電子部品21及び第2電子部品22については、側面視で示している。
【0041】
回路基板10は、複数の電子部品20とともに所定の回路を構成する配線等が設けられた、例えばプリント配線板である。例えば、回路基板10は、
図2Bに示すように、複数の電子部品20が実装された上面から下面まで貫通するビア導体11と、下面に設けられてビア導体11に接続されたグランド電極12とを有する。ここで、グランド電極12は、回路モジュール1によって構成される所定の回路のグランド(安定電位面)を構成する。
【0042】
複数の電子部品20は、上記の所定の回路の第1機能ブロックを構成する第1電子部品21、及び、第1機能ブロックとは異なる機能を果たす第2機能ブロックを構成する第2電子部品22を含む。ここで、機能ブロックとは、上記の所定の回路のうち、果たされる機能ごとに区分けされた部分を意味する。本実施の形態では、第1機能ブロックは、電源機能を果たす電源回路ブロックであり、第2機能ブロックは、RF信号処理機能を果たすRF回路ブロックである。具体的には、第1電子部品21は、電源回路としてDCDCコンバータ回路を構成するスイッチングIC(Integrated Circuit)等の電源IC20Pを含み、第2電子部品22は、RF回路を構成するRFIC20RFを含む。
【0043】
シールド壁30は、回路基板10とシールドケース40とで囲まれる空間を仕切る間仕切りであり、本実施の形態では、複数(ここでは7つ)の表面実装型シールド部材31が並んで配置されることにより構成されている。
【0044】
これら複数の表面実装型シールド部材31のそれぞれは、回路基板10に立設するように表面実装され、回路基板10と反対側の端部がシールドケース40の内壁に当接する。これにより、表面実装型シールド部材31とシールドケース40とは電気的に接続されることになる。また、表面実装型シールド部材31の回路基板10側の端部は、ビア導体11を介してグランド電極12に接続されている。したがって、シールドケース40は、表面実装型シールド部材31を介してグランド電極12に接続されることになる。なお、表面実装型シールド部材31の詳細な構成については、後述する。
【0045】
シールドケース40は、例えば金属等の導電部材により形成され、回路基板10に立設して複数の電子部品20を囲む壁部と、この壁部に蓋するように設けられた天面部とを有する。天面部の内壁は、例えば半田等の導電性接合材によって、シールド壁30の上側端部(すなわち表面実装型シールド部材31の上側端部)に、電気的及び構造的に接続している。
【0046】
次に、表面実装型シールド部材31の詳細な構成について説明する。
【0047】
図3は、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31の構成を示す図であり、具体的には、同図の(a)は外観斜視図であり、同図の(b)は(a)のIIIb−IIIb線における断面図であり、同図の(c)は(a)のIIIc−IIIc線における断面図である。
【0048】
同図に示すように、表面実装型シールド部材31は、表面実装型のチップ部品であり、積層素体110、第1表面電極121、第2表面電極122、及び、シールド電極131を有する。本実施の形態では、表面実装型シールド部材31は、厚み方向に積層された複数(ここでは2つ)のシールド電極131を有する。
【0049】
積層素体110は、厚み方向に直交して延在する磁性体層111を有する板状部材である。具体的には、積層素体110は、複数(本実施の形態では2つ)の磁性体層111を含み、シールド電極131は、複数の磁性体層111の間に設けられている。また、本実施の形態では、積層素体110は、さらに、磁性体層111より透磁率が低く、かつ、複数(ここでは2つ)のシールド電極131の間に設けられた非磁性体層112を有する。すなわち、本実施の形態では、積層素体110は、第1の磁性体層111と非磁性体層112と第2の磁性体層111とが、積層方向に順次積層された構造を有する。
【0050】
磁性体層111は、具体的には、シールド電極131の積層方向両側に設けられ、表面実装型シールド部材31が回路基板10に実装されることにより、シールド電極131を挟んだ状態で回路基板10に立設する。
【0051】
非磁性体層112は、具体的には、積層方向両側から2つのシールド電極131で挟まれ、表面実装型シールド部材31が回路基板10に実装されることにより、2つのシールド電極131で挟まれた状態で回路基板10に立設する。
【0052】
このような積層素体110は、積層方向に平行な端面が面一に形成されている。
【0053】
第1表面電極121は、板状部材(ここでは積層素体110)が回路基板10に立設するように表面実装型シールド部材31を実装するための実装用の電極であって、板状部材の厚み方向(すなわち積層素体110の積層方向)に平行な第1端面S1に設けられた、例えば平面電極である。具体的には、第1端面S1は、表面実装型シールド部材31の実装面である。このため、第1表面電極121は、表面実装型シールド部材31が回路基板10に実装されることにより、回路基板10のビア導体11を介してグランド電極12に接続される。
【0054】
第2表面電極122は、上記の第1端面S1に対向する第2端面S2に設けられた、例えば平面電極である。具体的には、第2端面S2は、表面実装型シールド部材31の実装面と反対側の面である。このため、第2表面電極122は、表面実装型シールド部材31がシールドケース40で覆われることにより、シールドケース40の内壁に当接される。
【0055】
シールド電極131は、積層素体110の厚み方向(すなわち積層方向)に見て積層素体110の実質的に全面に設けられ、第1表面電極121に接続されている。つまり、シールド電極131は、積層素体110の実装面側の第1端面S1、及び、第1端面S1に対向する第2端面S2に、両端部がそれぞれ露出する、いわゆるベタパターン導体である。
【0056】
ここで、実質的に全面とは、完全に全面であることだけでなく、ほぼ全面であることも含まれる。つまり、積層素体110の実質的に全面に設けられるとは、積層素体110の例えば80パーセント以上に設けられていればよい。なお、積層方向に見て積層素体110に対するシールド電極131の面積比を大きくするほど、表面実装型シールド部材31のシールド効果は高まるものの、積層素体110のシールド電極131を挟み込む層同士の接合強度が弱くなるという別の問題が発生し得る。このため、上記の面積比は、特に限定されず、表面実装型シールド部材31に要求されるシールド効果及び機械的強度等を考慮して適宜決定されるものとする。
【0057】
本実施の形態では、シールド電極131は、
図3の(c)に示すように積層素体110の紙面左右方向の両端部を除く全面に設けられ、
図3の(b)及び(c)に示すように第1表面電極121及び第2表面電極122に接続されている。これにより、シールド電極131は、表面実装型シールド部材31が回路基板10に実装されることにより、第1表面電極121とともに、回路基板10のビア導体11を介してグランド電極12に接続される。
【0058】
このような表面実装型シールド部材31において、本実施の形態では、磁性体層111はセラミック磁性体層であり、例えば、磁性フェライトセラミックが用いられる。この磁性フェライトセラミックとしては、具体的には、酸化鉄を主成分とし、亜鉛、ニッケル及び銅のうち少なくとも1つ以上を含むフェライトが用いられる。
【0059】
また、非磁性体層112は、本実施の形態では、セラミック非磁性体層であり、例えば、非磁性フェライトセラミックやアルミナ及びガラスを主成分とする絶縁性ガラスセラミックが用いられる。
【0060】
また、シールド電極131ならびに第1表面電極121及び第2表面電極122としては、例えば、銅を主成分とする金属または合金が用いられる。なお、第1表面電極121及び第2表面電極122としては、例えば、ニッケル、パラジウムまたは金によるめっきが施されていてもよい。
【0061】
なお、磁性体層111及び非磁性体層112を構成するセラミックとしては、焼成温度が銀の融点以下であるLTCCセラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics)を用いてもよい。これにより、シールド電極131を銀を用いて構成することが可能になる。抵抗率の低い銀を用いてシールド電極131を構成することで、シールド効果に優れた表面実装型シールド部材31が形成される。また、シールド電極131に銀を用いることで、例えば大気などの酸化性雰囲気下で表面実装型シールド部材31を焼成できる。
【0062】
以上のように構成された表面実装型シールド部材31は、例えば次のようにして製造することができる。
図4は、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31の積層方向における構成を示す図である。具体的には、同図の(a)は表面実装型シールド部材31を要部ごとに分離して示す斜視図であり、同図の(b)は(a)に示す一部の構成をさらに分離して示す斜視図である。なお、これらの図では、第1表面電極121及び第2表面電極122について図示を省略し、主に積層素体110及びシールド電極131からなる積層構造体について図示している。
【0063】
まず、積層素体110となるセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、磁性体層111となるセラミックグリーンシートは、磁性体セラミック粉末を含んだスラリーをシート成形することによって作製される。非磁性体層112となるセラミックグリーンシートは、非磁性体セラミック粉末を含んだスラリーをシート成形することによって作製される。
【0064】
次いで、
図4の(a)に示すように、セラミックグリーンシートの特定の位置に銀を主成分とする導体ペーストを印刷してシールド電極131となる導体ペーストを形成する。
【0065】
次いで、導体ペーストが配置されたセラミックグリーンシートを、位置合わせをして積層、圧着し、未焼成の積層体ブロックに一体化する。その後、未焼成の積層体ブロックを一括して焼成する。
【0066】
これにより、積層素体110及びシールド電極131が板状の焼結体ブロックとして一体に形成される。
【0067】
次いで、焼結体ブロックの互いに対向する一対の端面に、第1表面電極121及び第2表面電極122をめっき等により形成することにより、
図3に示す表面実装型シールド部材31が得られる。なお、第1表面電極121及び第2表面電極122はめっきに限らず、例えば転写によって形成されてもかまわない。
【0068】
ここで、本実施の形態では、
図4の(b)に示すように、磁性体層111は、複数の磁性体層111aにより構成されている。上述した導体ペーストを形成する工程では、この複数の磁性体層111aを形成する複数のセラミックグリーンシートのうち、シールド電極131となる導体ペーストを形成したセラミックグリーンシートとは異なるセラミックグリーンシートの両端部に導体ペーストを印刷して、第1表面電極121または第2表面電極122と接続される端部電極132となる導体ペーストを形成する。なお、非磁性体層112についても、磁性体層111と同様に、複数のセラミックグリーンシートにより構成され、端部電極132となる導体ペーストを形成してもかまわない。
【0069】
このような端部電極132となる導体ペーストを形成することにより、第1表面電極121及び第2表面電極122をめっきにより容易に形成することができる。これについて、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31の端部の構成を示す図であり、同図の(b)は(a)の要部を拡大した断面斜視図である。なお、同図の(b)では、第2表面電極122を透視して示している。
【0070】
ここで、表面実装型シールド部材31は、第1表面電極121側の構成と第2表面電極122側の構成とでは、第1表面電極121及び第2表面電極122を除いて同様の構成を有する。このため、以下では、第2表面電極122側の構成について説明し、第1表面電極121側の構成については、説明を省略する。
【0071】
同図に示すように、導体ペーストにより形成された端部電極132は、積層素体110の端面110aから露出する。これにより、第2表面電極122が形成される位置には、シールド電極131の端部、及び、端部電極132の端部が、例えばスジ状に複数露出することになる。これにより、第2表面電極122をめっきにより形成する工程において、第2表面電極122となる金属を容易に成長させることができるとともに、第2表面電極122と積層素体110との密着性を高めることができる。
【0072】
なお、磁性体層111及び非磁性体層112の各々は、1つのセラミックグリーンシートにより形成されていてもかまわない。つまり、表面実装型シールド部材31には、端部電極132が設けられていなくてもかまわない。
【0073】
以下、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31及び回路モジュール1によって奏される効果について、本実施の形態の比較例と対比して説明する。
【0074】
図6Aは、比較例に係る表面実装型シールド部材91単体でのシールド効果を示す図である。具体的には、同図には、表面実装型シールド部材91によって仕切られた空間の一方にノイズ源NSが配置された状態での、他方の空間に漏れ出したノイズの強度分布が示されている。
【0075】
ここで、表面実装型シールド部材91としては、金属部材のみで形成された板状部材を用いた。また、ノイズ源NSとしては、スイッチングIC等に接続されて
図6Aの紙面奥行き方向に延在する配線を用いた。また、表面実装型シールド部材91の紙面下方端部は、グランド(安定電位面)に接続されているものとした。
【0076】
同図に示すように、比較例に係る表面実装型シールド部材91では、ノイズ源NS側の空間と仕切られた空間に対して、ノイズが漏れ出してしまう場合がある。このことは、特に、グランドが理想的なグランドでない場合に顕著となる。また、例えば、磁気ノイズが大きくなる場合、すなわちノイズ源NSで発生したノイズの周波数成分が低い場合に顕著となる。
【0077】
図6Bは、比較例に係る表面実装型シールド部材91とシールドケース40との組み合わせによるシールド効果を模式的に示す図である。具体的には、同図には、実施の形態に係る表面実装型シールド部材31に代わり比較例に係る表面実装型シールド部材91を備える回路モジュール901において、ノイズが伝搬する様子が模式的に示されている。
【0078】
同図に示すように、第1電子部品21で発生したノイズは、シールドケース40の天面に伝搬し、表面実装型シールド部材91を介してグランドを構成するグランド電極12へと流れる。このとき、金属部材のみで形成された表面実装型シールド部材91をノイズが流れることにより、表面実装型シールド部材91からノイズが漏れ出してしまう場合がある。このことは、特に、グランドが理想的なグランドでない場合に顕著となる。
【0079】
これに対し、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、第1表面電極121が磁性体層111を有する板状部材(本実施の形態では積層素体110)に設けられていることにより、ノイズの漏れを抑制する(シールドする)ことができる。
【0080】
図7Aは、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によるシールド効果を示す図である。具体的には、同図には、表面実装型シールド部材31によって仕切られた空間の一方にノイズ源NSが配置された状態での、他方の空間に漏れ出したノイズの強度分布が示されている。なお、
図7Aでのシミュレーション条件は、比較例に係る表面実装型シールド部材91に代わり実施の形態に係る表面実装型シールド部材31を用いた点を除いて、
図6Aと同様である。
【0081】
図7Aと
図6Aとを比較すると明らかなように、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、比較例に係る表面実装型シールド部材91に比べて、ノイズ源NS側の空間と仕切られた空間に漏れ出すノイズが顕著に抑制されている。これは、グランドが理想的なグランドでない場合であっても、シールド電極131から漏れ出したノイズを磁性体層111のビーズ効果(熱変換)によってシールドされることにより、表面実装型シールド部材31の外部に漏れ出しにくくなるためである。また、例えば、磁性体層111が磁気シールドとして機能することで、シールド電極131による静電シールドに加え磁気シールドを施すことになり、シールド効果が高められるためである。
【0082】
図7Bは、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31とシールドケース40との組み合わせによるシールド効果を模式的に示す図である。具体的には、同図には、実施の形態に係る回路モジュール1において、ノイズが伝搬する様子が模式的に示されている。
【0083】
図6Bと
図7Bとを比較してわかるように、本実施の形態であっても、比較例と同様に、第1電子部品21で発生したノイズは、シールドケース40の天面に伝搬し、表面実装型シールド部材31を介してグランドを構成するグランド電極12へと流れる。このとき、本実施の形態では、表面実装型シールド部材31のシールド電極131をノイズが流れることにより、シールド電極131から漏れ出したノイズが磁性体層111のビーズ効果(熱変換)によってシールドされて、表面実装型シールド部材31の外部に漏れ出しにくくなる。これにより、表面実装型シールド部材31によってノイズ源である第1電子部品21と仕切られた空間には、第1電子部品21からのノイズが漏れ出しにくくなる。つまり、第1電子部品21によって構成される第1機能ブロックと第2電子部品22によって構成される第2機能ブロックとのアイソレーションを高めることができる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、板状部材(本実施の形態では積層素体110)が回路基板10に立設するように設けられた第1表面電極121を有することにより、回路基板10への実装位置等を適宜調整することができる。すなわち、高い汎用性を有する表面実装型シールド部材31が実現される。また、磁性体層111を有する板状部材の実質的に全面に設けられたシールド電極131を有することにより、回路基板10に実装された状態で、シールド電極131及び磁性体層111が並んで立設することになる。このため、シールド電極131から漏れ出したノイズを磁性体層111のビーズ効果によってシールドすることができるので、シールド効果を高めることができる。すなわち、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、汎用性を高めつつシールド効果を高めることができる。
【0085】
また、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、シールド電極131が複数の磁性体層(本実施の形態では2つの磁性体層111)の間に設けられていることにより、表面実装型シールド部材31の一方主面側からのノイズ及び他方主面側からのノイズのいずれについても、シールド効果を発揮することができる。
【0086】
具体的には、1つのシールド電極131と1つの磁性体層111とを有する表面実装型シールド部材では、シールド電極131側からのノイズに対してシールド効果を発揮することができるものの、磁性体層111側からのノイズに対してはシールド効果を発揮できない場合がある。これに対して、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、一方主面側から他方主面側に向かう第一方向と当該第一方向と逆の第二方向のいずれについても、シールド電極131と少なくとも1つの磁性体層111とがこの順で立設することになる。このため、表面実装型シールド部材31は、一方主面側からのノイズ及び他方主面側からのノイズのいずれについても、シールド効果を発揮することができる。
【0087】
したがって、表面実装型シールド部材31を実装する工程においてノイズ源に対して表面実装型シールド部材31の向きを調整する必要がなくなるため、実装作業のハンドリングが簡素化される。
【0088】
また、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、複数のシールド電極131を有することにより、シールド効果をさらに高めることができる。
【0089】
また、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、複数のシールド電極131の間に低透磁率磁性体層(本実施の形態では非磁性体層112)を設けることにより、複数のシールド電極131それぞれのインダクタンス成分の増加を抑制することができる。具体的には、複数のシールド電極131を設けた場合、各シールド電極131のみを周回する磁束(いわゆるマイナーループ)によって、各シールド電極131のインダクタンス成分が増加する場合がある。このようなインダクタンス成分の増加は、シールド電極131を介して回路基板10にノイズを逃がす際の阻害要因となり得る。そこで、複数のシールド電極131の間に低透磁率磁性体層を設けることにより、マイナーループを抑制してインダクタンス成分の増加を抑制することができるので、シールド効果をさらに高めることができる。このような構成は、特に、シールド電極131のインダクタンス成分の増加が抵抗成分の増加に繋がりやすい高周波ノイズに対して有効である。
【0090】
また、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、第1表面電極121が設けられた第1端面S1に対向する第2端面S2に第2表面電極122が設けられ、シールド電極131が第2表面電極122に接続されている。すなわち、シールド電極131が表面実装型シールド部材31の実装面から反対側の面まで設けられているため、シールド効果を高めることができる。また、当該反対側の面には第2表面電極122が設けられている。このため、当該反対側の面にシールドケース40等の導電部材が当接された場合に、当該導電部材とシールド電極131とを電気的に接続することができる。よって、当該導電部材を伝搬したノイズを、シールド電極131を介して回路基板に逃がすことができる。これにより、シールド効果をさらに高めることができる。
【0091】
また、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、磁性体層111がセラミック磁性体層であることにより、磁性体層111を焼成により一体の焼結体として得ることができる。さらに、板状部材が主にセラミックを基材とする場合、シールド電極131と板状部材とを焼結により一体の焼結体として得ることができる。
【0092】
また、本実施の形態に係る表面実装型シールド部材31によれば、実装面側から見て、シールド電極131が表面実装型シールド部材31から露出せずに磁性体層111で囲まれている。これにより、シールド電極131から漏れたノイズが表面実装型シールド部材31の外部に漏れ出しにくくなり、シールド効果をさらに高めることができる。
【0093】
また、本実施の形態に係る回路モジュール1によれば、複数の電子部品20の間(本実施の形態では第1電子部品21と第2電子部品22との間)に表面実装型シールド部材31が実装されていることにより、複数の電子部品20の間の電磁干渉が低減される。つまり、一方の電子部品20(本実施の形態では第1電子部品21)から他方の電子部品20(本実施の形態では第2電子部品22)へのノイズをシールドすることができる。また、回路基板10のサイズや電子部品20のレイアウトに変更に合わせて、表面実装型シールド部材31の配置位置を適宜調整することができる。
【0094】
また、本実施の形態に係る回路モジュール1によれば、表面実装型シールド部材31がシールドケース40の内壁に当接することにより、シールドケース40に伝搬したノイズを、表面実装型シールド部材31を介して回路基板10に逃がすことができる。これにより、シールドケース40のシールド効果を高めることができる。
【0095】
また、本実施の形態に係る回路モジュール1によれば、複数の表面実装型シールド部材31を備えることにより、回路基板10のサイズや電子部品20のレイアウトの変更に合わせて、複数の表面実装型シールド部材31で構成されるシールド壁30全体の形状を自由に変更できる。
【0096】
なお、表面実装型シールド部材の構成は、上記実施の形態に限定されない。そこで、以下、変形例1〜変形例5として、表面実装型シールド部材の各種の変形例について説明する。また、以下では、上記実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0097】
(変形例1)
図8は、実施の形態の変形例1に係る表面実装型シールド部材32の構成を示す図であり、具体的には、同図の(a)は外観斜視図であり、同図の(b)は(a)のVIIIb−VIIIb線における断面図であり、同図の(c)は(a)のVIIIc−VIIIc線における断面図である。
【0098】
同図に示す表面実装型シールド部材32は、
図3に示した表面実装型シールド部材31と比べて、積層素体110に代わり積層素体210を有する。積層素体210は、積層素体110の積層方向の両側に一対の非磁性体層213が設けられた構成である。この非磁性体層213は、非磁性体層112と同様に、セラミック非磁性体層である。つまり、積層素体210は、厚み方向の両側(積層方向の両側)に設けられた一対のセラミック非磁性体層を有する。
【0099】
このような表面実装型シールド部材32によれば、シールド電極131及び磁性体層111を有することにより、実施の形態に係る表面実装型シールド部材31と同様の効果が奏される。
【0100】
また、一般的に、非磁性体層は磁性体層と比べて機械的な強度が大きい。そこで、本変形例に係る表面実装型シールド部材32によれば、積層素体210の厚み方向の両側に一対のセラミック非磁性体層(本変形例では非磁性体層213)が設けられることにより、積層素体210の全体的な強度、さらには表面実装型シールド部材32の全体的な強度を高めることができる。
【0101】
このような表面実装型シールド部材32は、例えば次のようにして製造することができる。
図9は、本変形例に係る表面実装型シールド部材32の積層方向における構成を示す図である。具体的には、同図は表面実装型シールド部材32を要部ごとに分離して示す斜視図である。なお、同図では、第1表面電極121及び第2表面電極122について図示を省略し、主に積層素体210及びシールド電極131からなる積層構造体について図示している。
【0102】
同図に示すように、本変形例に係る表面実装型シールド部材32の製造工程では、実施の形態の製造工程に比べて、セラミックグリーンシートを準備する工程において、さらに非磁性体層213となるセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、非磁性体層213となるセラミックグリーンシートは、非磁性体層112となるセラミックグリーンシートと同様に、非磁性体セラミック粉末を含んだスラリーをシート成形することによって作製される。なお、非磁性体層213となるセラミックグリーンシートと非磁性体層112となるセラミックグリーンシートとは、同等のセラミック材料の成分及び成分の配合比であってもよいし、異なる成分及び成分の配合比であってもよい。以降、実施の形態と同様の工程を経て、
図8に示す表面実装型シールド部材32が得られる。
【0103】
(変形例2)
図10は、実施の形態の変形例2に係る表面実装型シールド部材33の構成を示す図であり、具体的には、同図の(a)は外観斜視図であり、同図の(b)は(a)のXb−Xb線における断面図であり、同図の(c)は(a)のXc−Xc線における断面図である。
【0104】
同図に示す表面実装型シールド部材33は、
図3に示した表面実装型シールド部材31と比べて、積層素体110に代わり積層素体310を有し、第1表面電極121及び第2表面電極122に代わり島状の複数の第1表面電極321及び複数の第2表面電極322を有する。また、2層のシールド電極131に代わり3層のシールド電極331を有し、さらにシールド電極331同士を接続するビア導体314を有する。
【0105】
積層素体310は、積層素体110に比べて、2層の非磁性体層112を有する。具体的には、本変形例では、積層素体310は、第1の磁性体層111と2層の非磁性体層112と第2の磁性体層111とが、積層方向に順次積層された構造を有する。
【0106】
第1表面電極321及び第2表面電極322は、
図3に示した第1表面電極121及び第2表面電極122が複数の島状(ここでは3つの島状)に分離された形状である。なお、第1表面電極321及び第2表面電極322それぞれの個数は特に限定されず、2または4以上であってもかまわない。また、第1表面電極321と第2表面電極322とは同じ個数に限らず、異なる個数であってもかまわない。
【0107】
シールド電極331は、
図3に示したシールド電極131と比べて、第1表面電極321及び第2表面電極322が島状に設けられていることに伴い、形状が異なる。具体的には、シールド電極331は、実装面側の端部(第1端面S1側の端部)及びその反対側の端部(第2端面S2側の端部)では、第1表面電極321及び第2表面電極322が設けられる部分のみに設けられている。つまり、シールド電極331は、表面実装型シールド部材33から露出せずに第1表面電極321及び第2表面電極322と接続されている。このため、シールド電極331から漏れたノイズが表面実装型シールド部材33の外部に漏れ出しにくくなり、シールド効果をさらに高めることができる。
【0108】
ビア導体314は、非磁性体層112を積層方向に貫通して、シールド電極331同士を電気的に接続する。このようなビア導体314により、シールド電極331の電位の安定化が図られるため、シールド効果をさらに高めることができる。
【0109】
このような表面実装型シールド部材33によれば、シールド電極331及び磁性体層111を有することにより、実施の形態に係る表面実装型シールド部材31と同様の効果が奏される。
【0110】
なお、シールド電極331の個数は特に限定されず、3以上であってもかまわない。
【0111】
(変形例3)
図11は、実施の形態の変形例3に係る表面実装型シールド部材34の構成を示す図であり、具体的には、同図の(a)は外観斜視図であり、同図の(b)は(a)のXIb−XIb線における断面図であり、同図の(c)は(a)のXIc−XIc線における断面図である。
【0112】
同図に示す表面実装型シールド部材34は、
図10に示した表面実装型シールド部材33と比べて、積層素体310に代わり積層素体410を有し、第2表面電極122に代わり第2表面電極422を有する。
【0113】
同図に示すように、本変形例に係る表面実装型シールド部材34の第2端面S2には、厚み方向(すなわち積層方向)に沿って延在し、シールド電極331が露出する切り欠き410a(いわゆる端面スルーホール)が設けられている。具体的には、この切り欠き410aは積層素体410の第2端面S2側の端部に設けられている。つまり、本変形例における積層素体410は、
図10に示した積層素体310に比べて、切り欠き410aが設けられている点が異なる。なお、本変形例では、3つの切り欠き410aが設けられているが、切り欠き410aの個数は特に限定されない。
【0114】
第2表面電極422は、切り欠き410aに設けられた導電性接合材であり、例えば、半田材、導電性接着ペースト(SCP)、導電性接着フィルム(SCF)、または、異方性導電フィルム(ACF)を用いることができる。第2表面電極422は、本変形例では略球形状である。
【0115】
本変形例では、第2表面電極422は、積層素体410の第2端面S2側の端面の中央部を除く部分に設けられており、具体的には3つの切り欠き410aのうち中央の切り欠き410aを除く2つの切り欠き410aに設けられている。これにより、表面実装型シールド部材34の実装面側と反対側の面である第2端面S2について、第2表面電極422を設けることによる平坦性の劣化を抑制することができる。したがって、表面実装型シールド部材34を実装する工程において、例えば、チップマウンター等の電子部品実装機器の吸着ノズルによって、表面実装型シールド部材34を吸着することができる。つまり、一般的なチップ部品と同様に、電子部品実装機器を用いて表面実装型シールド部材34を回路基板10に実装することができる。
【0116】
このような表面実装型シールド部材34によれば、シールド電極331及び磁性体層111を有することにより、実施の形態に係る表面実装型シールド部材31と同様の効果が奏される。
【0117】
また、第2表面電極422が導電性接合材であることにより、表面実装型シールド部材34とシールドケース40との電気的及び構造的な接続を容易にとることができる。具体的には、表面実装型シールド部材34を回路基板10に実装した後にシールドケース40を設けることにより、第2表面電極422がシールドケース40と積層素体410とで押圧される。これにより、シールドケース40、表面実装型シールド部材34及び回路基板10が接続されることになる。
【0118】
(変形例4)
図12は、実施の形態の変形例4に係る表面実装型シールド部材35の構成を示す図であり、具体的には、同図の(a)は外観斜視図であり、同図の(b)は(a)のXIIb−XIIb線における断面図であり、同図の(c)は(a)のXIIc−XIIc線における断面図である。なお、同図の(c)では、説明の都合上、紙面手前側の貫通孔531Ba(後述する)についても図示している。
【0119】
同図に示す表面実装型シールド部材35は、
図3に示した表面実装型シールド部材31と比べて、シールド電極131に代わりシールド電極531(シールド電極531A、531B)を有する。
【0120】
シールド電極531は、
図3に示したシールド電極131と比べて形状が異なり、具体的には、
図12の(c)に示すように紙面左右方向の両端部まで設けられている。このため、
図12の(a)に示すように、本変形例では、シールド電極531が表面実装型シールド部材35から露出することになる。
【0121】
また、シールド電極531には貫通孔が形成されており、具体的には、シールド電極531Aには貫通孔531Aaが形成されており、シールド電極531Bには貫通孔531Baが形成されている。これにより、積層素体110のシールド電極531を挟み込む層同士(本変形例では、磁性体層111と非磁性体層112)の接合強度の低下を抑制してクラック等の発生を抑制できる。
【0122】
また、本変形例では、2層のシールド電極531の一方のシールド電極531Aに形成された貫通孔531Aaと、他方のシールド電極531Bに形成された貫通孔531Baとが、積層方向に見て互いに異なる位置に配置されている。これにより、表面実装型シールド部材35を厚み方向に見て、シールド電極531が全体にわたって設けられていることになる。これにより、表面実装型シールド部材35のシールド効果を高めることができる。
【0123】
このような表面実装型シールド部材35によれば、シールド電極531及び磁性体層111を有することにより、実施の形態に係る表面実装型シールド部材31と同様の効果が奏される。
【0124】
(変形例5)
図13は、実施の形態の変形例5に係る表面実装型シールド部材36の構成を示す図であり、具体的には、同図の(a)は外観斜視図であり、同図の(b)は(a)のXIIIb−XIIIb線における断面図であり、同図の(c)は(a)のXIIIc−XIIIc線における断面図である。
【0125】
同図に示す表面実装型シールド部材36は、
図3に示した表面実装型シールド部材31と比べて、積層素体110に代わり積層素体610を有し、2層のシールド電極131に代わり1層のシールド電極631を有する。
【0126】
積層素体610は、積層素体110に比べて、非磁性体層112を有さずに、2層の磁性体層111が積層された構造を有する。
【0127】
シールド電極631には、
図3に示したシールド電極131と比べて、所定方向(
図13の紙面上下方向)に沿って延在するスリット631sが設けられている。スリット631sは厚み方向に直交する方向に沿って延在している。本変形例では、シールド電極631には、所定方向に貫通する4つのスリット631sが設けられている。つまり、シールド電極631は、5つの導体に分割されている。
【0128】
このシールド電極631は、2つの磁性体層111の界面に設けられている。つまり、シールド電極631は、第1表面電極121及び第2表面電極122と接続される部分を除いて、磁性体層111によって囲まれている。このため、シールド電極631は、表面実装型シールド部材36から外部に露出しないことになる。
【0129】
このような表面実装型シールド部材36によれば、シールド電極631及び磁性体層111を有することにより、実施の形態に係る表面実装型シールド部材31と同様の効果が奏される。
【0130】
また、本変形例に係る表面実装型シールド部材36によれば、シールド電極631にスリット631sが設けられていることにより、シールド電極631から第1表面電極121に向かうノイズの経路を囲むように磁性体層111が配置されることになる。これにより、磁性体層111がフェライトビーズとして機能することになり、回路基板10に逃げるノイズを抑制することができる。よって、回路基板10のグランドの電気的変動を抑制することができるため、表面実装型シールド部材36が搭載された部品(例えば回路モジュール1)の電気的特性の劣化を抑制することができる。
【0131】
なお、スリット631sは、所定方向に貫通する形状に限らず、所定方向に沿って延在する切り欠き形状であってもかまわないし、所定方向に沿って延在する開口形状であってもかまわない。また、スリット631sの個数は4つに限定されない。よって、スリット631sの形状及び個数は、表面実装型シールド部材36に要求されるシールド効果またはビーズ効果等に応じて、適宜決定されるものとする。
【0132】
このような表面実装型シールド部材36は、特に、DCDCコンバータ回路を構成するスイッチングIC等の比較的大きなノイズを発生する部品に近しい位置に配置される表面実装型シールド部材として有用である。
【0133】
図14は、本変形例に係る表面実装型シールド部材36を有する回路モジュール6の上面図である。
【0134】
同図に示す回路モジュール6は、
図2Aに示した表面実装型シールド部材31のみによって構成されるシールド壁30に代わり、表面実装型シールド部材36及び表面実装型シールド部材31によって構成されるシールド壁30Aを備える。シールド壁30Aは、本変形例では、3つの表面実装型シールド部材36及び4つの表面実装型シールド部材31が並んで配置されることにより構成されている。
【0135】
表面実装型シールド部材36は、複数の電子部品20のうち他の電子部品20よりも電磁波を放射しやすい一の電子部品20に近接して配置されており、本実施の形態では、電源IC20Pに近接して配置されている。具体的には、表面実装型シールド部材36は、他の電子部品20よりも電磁波を放射しやすい電源IC20Pと他の電子部品20よりもノイズに弱いRFIC20RFとの間に配置されている。
【0136】
このような回路モジュール6によれば、回路基板10に実装された表面実装型シールド部材31、36を備えることにより、実施の形態に係る回路モジュール1と同様の効果が奏される。
【0137】
また、本変形例に係る回路モジュール6によれば、スリット631sが設けられたシールド電極631を有する表面実装型シールド部材36が電磁波を放射しやすい一の電子部品20(本変形例では電源IC20P)に近接して配置されていることにより、回路基板10のグランドの電気的変動を抑制することができる。このため、回路モジュール6の電気的特性の劣化を抑制することができる。
【0138】
ここで、シールド電極631をフェライトビーズとして機能させることは、回路基板10のグランドの電気的変動を抑制できるものの、シールド電極631のインダクタンス成分の増加に繋がるためシールドケース40から回路基板10に逃げるノイズを妨げる要因となり得る。
【0139】
そこで、本変形例に係る回路モジュール6によれば、シールド壁30Aが表面実装型シールド部材36及び表面実装型シールド部材31によって構成されている。具体的には、グランドを大きく変動させる要因となる一の電子部品20(本変形例では電源IC20P)に近接した位置には表面実装型シールド部材36が配置され、他の位置には表面実装型シールド部材31が配置されている。これにより、回路モジュール6全体としては、シールドケース40から回路基板10にノイズを逃がしつつ、回路基板10のグランドの電気的変動を抑制することができる。
【0140】
なお、このような回路モジュール6は、表面実装型シールド部材31に代わり、表面実装型シールド部材32〜35を用いた構成であっても、同様の効果が奏される。
【0141】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及び変形例に係る表面実装型シールド部材及び回路モジュールについて説明したが、本発明は、個々の実施の形態及び変形例には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態及びその変形例に施したものや、異なる実施の形態及びその変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0142】
例えば、板状部材は、積層素体に限らず、単層であってもかまわない。つまり、表面実装型シールド部材は、板状の磁性体層、及び、当該磁性体層に設けられたシールド電極を有する構成であってもかまわない。
【0143】
ここで、シールド電極は、磁性体層に直接設けられていることが好ましい。つまり、シールド電極は、接着剤等により磁性体層と貼り合わせられた構成ではなく、例えば、磁性体層上に導体ペーストを印刷する、磁性体層上の導体をエッチングする、あるいは、磁性体層上に導体を析出することにより形成されていることが好ましい。
【0144】
また、上記実施の形態及び変形例1〜4では、シールド電極は、複数層設けられているとしたが、1層のみ設けられていてもかまわない。一方、上記変形例5では、シールド電極631は、1層のみ設けられているとしたが、複数層設けられていてもかまわない。
【0145】
また、上記実施の形態及び変形例1〜4では、複数のシールド電極の間には非磁性体層112が設けられているとしたが、非磁性体層112に限らず、磁性体層111より透磁率が低い低透磁率磁性体層が設けられていればよい。
【0146】
また、表面実装型シールド部材は、第2表面電極を有さなくてもよく、例えば、第1表面電極が設けられた第1端面S1に対向する第2端面S2には、全体に積層素体が露出していてもかまわない。
【0147】
また、磁性体層111は、セラミック磁性体層に限定されず、例えば磁性体フィラーを含有する樹脂層であってもかまわない。また、非磁性体層112,213は、セラミック非磁性体層に限定されず、例えば樹脂層であってもかまわない。
【0148】
また、回路モジュールはシールドケース40を備えなくてもよい。つまり、表面実装型シールド部材は、回路基板10とシールドケース40とで囲まれる空間を仕切らなくてもよく、複数の電子部品20の間に配置されていればよい。また、シールド壁を構成する表面実装型シールド部材の個数は複数に限らず、1つであってもかまわない。
【0149】
なお、本発明では、表面実装型シールド部材の各層の厚みや形状などの各種の寸法値は、特には限定されない。また、板状部材(上記説明では積層素体)の各層を構成するセラミック材料の成分及び成分の配合比、透磁率などの物性値、複合部品内の導体等に用いられる材料の成分及び成分の配合比、導電率などの物性値も特には限定されない。これらの数値は、表面実装型シールド部材に要求されるシールド効果及びビーズ効果等の各種の電気的特性、あるいは、機械的強度等を勘案して適宜決定されるものとする。