【実施例】
【0019】
本発明に係るガス抜き機構20を設けたコンデンサ1につき、
図1から
図5を参照して説明する。
図1に示されるように、コンデンサ1は、蓄電素子であるコンデンサ素子2と、このコンデンサ素子2および電解液を収納する外装ケース3と、この外装ケース3の開口部を封止する
封口体4とこの
封口体4に設けられたガス抜き機構20から主としてなる。
【0020】
図1に示すように、外装ケース3は、例えばアルミニウムなどの金属板を有底筒状に成形されたものであり、内部に収納するコンデンサ素子2の形状に合わせ、円形、楕円形、長円形、あるいは矩形に成形される。コンデンサ素子2は、陽極側及び陰極側の電極箔がセパレータを介して積層または捲回された構造となっており、円形、楕円形、長円形、あるいは矩形に形成される。コンデンサ素子2の端部からは、引出部6が導出され、
封口体4に一体成形された外部端子5と接続されている。
【0021】
コンデンサ素子2は、詳細は特に図示しないが、分極性電極を有する集電体を、セパレータを介在させて対極させ複数層積層させたものである。分極性電極は、活性炭シートからなる2枚の分極性電極をアルミニウム箔からなる集電体を挟んで対極させた構造のものである。
【0022】
図1から
図5に示されるように、
封口体4は、外装ケース3の開口部に合致する形状に樹脂材などの気密性を有する材料によって成形されており、開口部の形状に応じて円形板等の形状を成し、外装ケース3の開口部を加締めことで密封状に封止している。この
封口体4には、外部端子5がインサート成形されるとともに、ガス抜き弁10を含むガス抜き機構20が設けられている。本実施例において、ガス抜き機構20は、貫通孔7、凸部8、ガス抜き弁10、緩衝部材17、固定部材18からなる。
【0023】
封口体4は、硬質絶縁体であり、たとえば、硬質合成樹脂板で形成されている。
図2(a)に示すように、
封口体4のコンデンサ素子2側には、
封口体4から円柱状の凸部8が
封口体4の表面から突出して
封口体4と一体に形成されている。
封口体4には、
封口体4を貫通する貫通孔7が形成されており、凸部8の頂部8bには
図2(b)に示すようにこの貫通孔7の開口部7aが形成されている。つまり、貫通孔7によって、外装ケース3の内部で発生したガスの外部への放出経路が形成されている。
【0024】
凸部8には、その側面および頂部8bに渡って連設した溝部8aが形成されており、この溝部8bは、この溝部8aは、貫通孔7の開口部7aに達している。つまり、溝部8aと貫通孔7によって、ガスの放出経路が形成されている。
【0025】
凸部8の周囲には、凸部8を包囲する環状溝部9が形成されている。環状溝部9の開口側には、
封口体4の表面に向かって、漸次径大となるテーパ部19が形成されている。
【0026】
図3に示されるように、本実施例のガス抜き弁10は、凸部8に被せる有底筒状のシリコン等の弾性ゴムから一体成型され、筒胴部を成す側壁部12と、筒底部を成す底部11と、側壁部12の開口端に拡径形成され環状溝部9に係合する鍔部16と、から主として構成されている。側壁部12の内径(内壁部13)は、凸部8の外径より小さく形成されている。そのため、凸部8に係合され、固定される。内壁部13には、凸部8の側面と当接する円環状のリブ14が複数形成され、また環状溝部9には、底部9aと当接する円環状のリブ14が形成されている。詳細は後述するが、内圧上昇しても、リブ14により密封性が維持される。このガス抜き弁10は、コンデンサ1内で各種ガスが発生し内部圧力が高まった場合に、底部11や側壁部12を透過し、貫通孔7を通じて外部に適宜ガス抜きすることで、コンデンサ1の内部圧力を下げる機能を有している。ガス抜き弁10の底部11には、その中心部分に周囲の底部11より薄い薄肉部15が形成されており、この薄肉部15によって、ガス透過性が高まる。なお、この薄肉部15は、貫通孔7の開口部7aと同等の大きさに設定されている。また、コンデンサ1の内部圧力が急激に上昇した場合においては、底部11の薄肉部15が破裂することで、内部圧力を開放し、コンデンサ1の破裂を防止する。
【0027】
次に、取り付け方法について説明する。
図4は、コンデンサ1のガス抜き機構20を分解して示している。まず、ガス抜き弁10の鍔部16を
封口体4の環状溝部9に嵌合して、ガス抜き弁10を凸部8に取り付ける。凸部8にガス抜き弁10を取り付けると、凸部8に形成した溝部8aはガス抜き弁10の側壁部12および底部11によって覆われ、特に凸部8に形成した開口部7aはガス抜き弁10の底部11の薄肉部15によって覆われる。その後、鍔部16の上に紙製やゴム材などで形成された緩衝部材17を配置する。この緩衝部材17には、環状部17bとその中央に円孔17aが形成された環状体であり、この円孔17aからガス抜き弁10の側壁部12を貫通させる。緩衝部材17を配置した後、固定部材18を環状溝部9に嵌入して、環状溝部9の底部9aに鍔部16を押し付けて密着させることによってガス抜き弁10を
封口体4に固定する。環状溝部9の開口部にテーパ部19を設けてあるため、ガス抜き弁10、緩衝部材17、固定部材18の挿入が簡易となる。
【0028】
固定部材18は、環状のばね板部18bとその中央に円孔18aが形成された環状体であり、この円孔18aからガス抜き弁10を貫通させる。ばね板部18bは、円孔18aから固定部材18の外縁に向かって直径が大きくなるように鈍角状に折り曲げられている。固定部材18は、環状溝部9に圧入され、緩衝部材17と鍔部16を介して底部9aまで移動すると、鈍角状に折り曲げられたばね板部18bが固定部材18の直径が広がるように変形し、ばね板部18bの外縁が環状溝部9の側面に当接し嵌合する。つまり、固定部材18が備える弾性により、ばね板部18bが環状溝部9の側面に押し付けられ、その状態でガス抜き弁10が環状溝部9に強固に維持される。斯かる構成によれば、ガス抜き弁10が凸部8から外れるのを防止できる。
【0029】
なお、固定部材18の円孔18aとガス抜き弁10の側壁部12との間に隙間を設けてもよい。このようにすることで、固定部材18によって側壁部12が損傷することを防止できる。
【0030】
また、緩衝部材17はゴムや樹脂、紙などで成型されている。緩衝部材17を鍔部16と固定部材18との間に配置することで、鍔部16が損傷することを防止する。つまり、緩衝部材17の環状部17bをガス抜き弁10の鍔部16と固定部材18のばね板部18bの間に配置することで、固定部材18を鍔部16に押し付けたときの加重により鍔部16が損傷することを防止する。
【0031】
図5は、ガス抜き弁10、緩衝部材17、固定部材18を
封口体4に取り付けた状態を示している。ガス抜き弁10の底部11は、
封口体4の表面から突出している。このように、ガス抜き弁10の底部11は、電解液等の水分が滞留する凹部内に配置されない構造であるため、ガス透過部である底部11や側壁部12に電解液が継続的に付着することがない。このため、電解液等の水分によってガス透過機能が阻害されることを防止できる。
【0032】
また、
封口体4から突出した凸部8の側面に形成された溝部8aを覆うようにガス抜き弁10の側壁部12が配置されている。このような構造とすることで、溝部8aとガス抜き弁10の内壁部13との間に隙間を形成する。内壁部13のうち溝部8aを覆う部分は、凸部8の側面と接触していないので、ガスはガス抜き弁10の側壁部12から透過し、開口部7から外部へ排出させることができる。
【0033】
ガス抜き弁10を凸部8に取り付けるとガス抜き弁10の底部11によって貫通孔7は塞がれる。凸部8の頂部8bとガス抜き弁10の底部11の内面は接触して配置されているので、凸部8の頂部8bに形成された溝部8aが隙間を形成する。側壁部12から透過したガスは溝部8aによって、開口部7aまで流れ、開口部7aから貫通孔7に排出され、外部へ放出される。つまり、該溝部8aが本実施例における排出経路形成手段である。
【0034】
ガス透過部を底部11と側壁部12とすることで、ガスの透過量を向上させることができる。ガスの透過量は、ガス抜き弁10の厚みとガスが透過する面積によって規定される。本実施例では、溝部8aによって、貫通孔7の開口部7aを塞ぐガス抜き弁10の底部11のみならず、ガス抜き弁10の側壁部12からもガスの透過を可能し、より多くのガスを透過できる。また、溝部8aの数や大きさを変更することで、ガス透過量を調節することが可能となり、ガス抜き弁10の大きさを変更することなく、所望のガス透過量を得ることができる。
【0035】
また、コンデンサ1を横置きや
封口体4を下に斜めに設置した場合、気化した電解液や外装ケース3内に封入した電解液が
封口体4側に溜まることがある。凸部8の開口部7aが溜まった電解液で塞がれた場合でも、本発明では、
封口体4から突出した凸部8の頂部8aに加えその側面からもガスを透過させることができるので、ガスを外部へ放出できる。つまり、ガスの透過面が複数(ガス抜き弁の底部11の面と側壁部12の面)あるため、電解液が付着しにくい面を経由してガスを透過させることができる。
【0036】
本実施例のガス抜き弁10は、前述したように内壁部13や鍔部16に、リブ14が形成されている。外装ケース3の内部で発生したガスは、ガス抜き弁10に対して、凸部8に向かう圧力が生じる。リブ14は、内圧が上昇した場合の圧力に対応する位置に形成されている。内圧が上昇すると、図示矢印Xのように、ガス抜き弁10の鍔部16及び側壁部12に圧力が加わり、該鍔部16及び側壁部12にそれぞれ形成されたリブ14がより強固に環状溝部9の底部9aや凸部8の側面に密着し、封止性を維持できる。
【0037】
この
封口体4の外側には、貫通孔7に連通する筒部21が形成されている。この筒部21には、有底筒状のゴム製の防湿弁23が配置される。筒部21の周囲部には、溝が設けられている。この溝を挟んで立壁部22が形成されている。この立壁部22は、筒部21より高く、筒部21に被せられた防湿弁23よりも高く設定されている。これにより、防湿弁23が立壁部22により防護される。防湿弁23は上方から座金24により押圧された状態で固定される。
【0038】
外装ケース3の内部にガスが充満し、ガス抜き弁10を通してガスが貫通孔7に流れ、貫通孔7内の内圧が上昇すると、そのガスは筒部21に形成された切り欠き部21aを通して防湿弁23の側壁部23aに作用し、側壁部23aを筒部21から引き離す。これにより、ガス排出経路が形成される。外装ケース3内のガスは、貫通孔7から切り欠き部21aに流れ、外気に開放される。この結果、防爆機能が得られる。つまり、外装ケース3内に充満するガスを外装ケース3内の内圧上昇に応じて排出でき、外装ケース3内の圧力上昇を抑制でき、コンデンサ1の変形を防ぐことができる。また、外装ケース3の内圧をガス排出により抑制できるので、外装ケース3内にガスが溜まらず、コンデンサ1の寿命を延ばすことができる。なお、急激にガスが発生して、外装ケース3内の圧力が急激に上昇した場合には、防湿弁23が開弁する。
【0039】
座金24は、環状の本体部を備えたばね板である。この座金24は防湿弁23の圧接部材の一例である。防湿弁23を押圧する本体部の周縁には、一定の間隔で突片24aが本体と一体に形成されている。各突片24aは、本体部に対して鈍角状に折り曲げられている。鈍角に折り曲げられた突片24aを含む座金24の直径は、立壁部22の上面部の開口部の直径より大きく形成されている。座金24は、立壁部22に圧入させ、立壁面に係止させた突片24aにより
封口体4に取り付けられている。つまり、座金24の複数の突片24aが備える弾性および剛性により、防湿弁23が筒部21に押し付けられ、その状態で防湿弁23が筒部21上に強固に維持される。このような構成にすれば、筒部21から防湿弁23が外れるのを防止できる。
【0040】
このように防湿弁23を配置することによって、貫通孔7を通して外部から浸入する水分を防止することができる。また、コンデンサ1内の水分濃度は、外部の空気雰囲気中の水分濃度より低い。そのため、外部の水分がコンデンサ1内に浸入しやすくなり、ガス抜き弁10の気液分離の作用が低下する場合がある。そこで、ガス抜き弁10の外側に防湿弁23を配置することで、ガス抜き弁10と外部の空気雰囲気との接触を防止し、水分の浸入をより防ぐことができる。また、ガスを放出して外装ケース3内の内圧が低下すると、貫通孔7を通して外圧がガス抜き弁10の底部11に加わり、凸部8からガス抜き弁10が離脱するおそれがある。しかし、防湿弁23を配置して貫通孔7の
封口体4の外部側を塞ぐことで、貫通孔7を通してガス抜き弁10の底部11に加わる外圧を防ぎ、ガス抜き弁10の固定力を維持できる。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
上記実施例では、凸部8を環状溝部9から突出して形成したが、少なくともガス抜き弁10の底部11が凸部を形成する
封口体4の表面から突出する高さであればよい。このようにすることによって、ガス抜き弁10の底部11が電解液等の水滴が滞留してガス透過性が阻害されることを防ぎつつ、封口体を低背化し、総じてコンデンサ1の低背化を実現できる。
【0043】
上記実施例では、ガスの排出経路形成手段として、凸部8の側面に溝部8aを形成したが、これに限らない。たとえば、凸部8の側面に複数の突起部を形成して、ガス抜き弁10の内壁部13と凸部8の側面との間に隙間を形成する構造としてもよい。また、溝部8aは、凸部8の側面全体に形成してもよいが、開口部7a近傍のみに形成してもよい。側壁部12の鍔部16近傍に対向する凸部8の側面にガスの排気経路を形成しないことで、内壁部13と凸部8の接触面積が増え、固定力が向上する。
【0044】
また、凸部8の側面に放射状に切り込みや孔を形成して、ガス抜き弁10の側壁部12にガス透過部分を形成してもよく、貫通孔7とガス抜き弁10の側壁部12との間にガスの放出経路があればよい。たとえば、
図6に示すように、凸部8の側面に放射状のスリット25を形成し、ガス抜き弁10の側壁部12で覆う構造としてもよい。スリット25は、切り込みの一例である。このような構造とすることで、スリット25を介して、ガス抜き弁10の側壁部12からガスを透過することができる。
【0045】
ガスの透過量は貫通孔7に接するガス抜き弁10の面積に比例するので、所望のガス透過量に応じて、凸部8の側面に形成する孔や切り込み等のガスの排気経路形成手段の数や大きさを適宜設定すればよい。
【0046】
また、前記実施例では、ガス抜き弁10の材質として、シリコンを用いたがこれに限らず、気液分離性があって且つガス透過性がある材料であれば適用可能である。
【0047】
また、前記実施例では、ガス抜き弁10を底部11と側壁部12の一体成型により形成したが、これに限らず、底部を側壁部12とは異なる部材で形成してもよい。例えば、
図7(a)に示すように、シート状の気液分離性のシート26を筒状の側壁部12のコンデンサ素子2側の開口部を覆うように配置して底部としてもよい。側壁部12とシート26は接着剤や熱融着等によって一体に形成すればよい。また、
図7(b)に示すように、筒状の側壁部12の開口部を覆う有底筒状の気液分離性の蓋27を配置して底部としてもよい。この場合、筒状の側壁部12の開口部を蓋27に嵌入させて固定し、側壁部12と蓋27を一体してもよいし、シート26同様に、接着剤や熱融着等を利用して一体としてもよい。シート26や蓋27としては、例えばポリテトラフルオロエチレンやフッ素樹脂等の気液分離性のシートや蓋材であればよく、部材ごとに有するガス透過性を基に適宜選択すればよい。このような構成にすることにより、発生するガスの種類や予測されるガスの発生量によって、シート26や蓋27の材質を変え、所望のガス透過量に設定することが可能となる。
【0048】
また、ガス抜き弁10の側壁部12を鍔部16側から底部11に向かって漸次径小になるように形成してもよい。このように側壁部12を鍔部16側から底部11に向かって傾斜とすることによって、電解液等の水分が側壁部12に付着しても排水しやすくなり、側壁部12からのガス透過が阻害されることを防止できる。
【0049】
また、凸部8の周囲部の環状溝部9を、環状溝部9の開口部から環状溝部9の底部9aに向かって漸次径大になるように形成してもよい。このようにすることで、ガス抜き弁10の鍔部16や緩衝部材17、固定部材18がより強く嵌合するので、抜け落ちることをより防止できる。また、環状溝部9の側面に突起部を形成してもよい。このようにすることで、ガス抜き弁10や緩衝部材17、固定部材18が抜け落ちることを防止できる。
【0050】
また、前記実施例では、ガス抜き弁10が設けられた
封口体4が電気二重層コンデンサに適用されているが、本発明に係る
封口体4が適用される対象となる蓄電デバイスの種類は、必ずしも電気二重層コンデンサ1に限られず、例えば電解コンデンサでもよいし、内部で水素や一酸化炭素等の多種・大量のガスを発生する種々のコンデンサや電池に適用可能である。