(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記連結手段の上記リンク機構は、上記回動アームの上記第一回動軸と、上記回動アームと上記第一継手とを回転自在に連結する第二回動軸と、上記第一継手と上記第二継手とを回転自在に連結する第三回動軸と、上記第二継手と上記スロート管とを回転自在に連結する第四回動軸とを有し、
上記第一回動軸、上記第二回動軸、上記第三回動軸及び上記第四回動軸は、上記第一回動軸と上記第二回動軸とを結んだ仮想直線の長さと上記第三回動軸と上記第四回動軸とを結んだ仮想直線の長さとがほぼ同じ長さとなるように配置され、さらに、上記第二回動軸と上記第三回動軸とを結んだ仮想直線の長さと上記第四回動軸と上記第一回動軸とを結んだ仮想直線の長さとがほぼ同じ長さとなるように配置されている請求項1記載の水洗大便器装置。
上記連結手段の上記リンク機構は、上記フロートが配置される上記第一継手が、上記第四回動軸と上記第一回動軸とを結んだ仮想直線に対してほぼ平行に移動するように構成されている請求項2記載の水洗大便器装置。
上記調整機構は、上記フロートを取付け且つ上記第一継手に回転可能に支持される螺子部材を備え、この螺子部材を回転させることにより、上記フロートの取付け高さを上下方向に調整することができる請求項4記載の水洗大便器装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態による水洗大便器装置を説明する。
まず、
図1及び
図2により、本発明の一実施形態による水洗大便器装置の基本構造を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水洗大便器装置を示す平面図であり、
図2は、
図1のII−II線に沿って見た断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器装置1は、便器本体2と、この便器本体2に洗浄水を供給する洗浄水タンク装置4を備えている。水洗大便器装置1は、例えば、3.8リットル乃至5.2リットルの洗浄水で洗浄する、節水型の洗い落とし式の水洗大便器である。
便器本体2は、その前方側に設けられたボウル部6と、ボウル部6の上縁に形成されたリム部8と、このリム部8の内周に形成された棚部10と、を備えている。
また、便器本体2のボウル部6の底部には、トラップ排水路12の入口12aが開口し、このトラップ排水路12は、上方に延びる上昇管12bと、下方に延びる下降管12cを備えている。このトラップ排水路12の形状から分かるように、本実施形態による水洗大便器装置1は、高さ方向の落差により汚物を排出する洗い落とし式便器である。
なお、本実施形態においては、洗い落とし式便器に適用した形態について説明するが、このような形態に限定されず、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式便器の形態等、他の水洗大便器の形態についても適用可能である。
【0018】
つぎに、便器本体2は、洗浄水タンク装置4の排水口14から排出される洗浄水が流入する導水路16と、棚部10の前方から見て左側中央に形成された第1リム吐水口18と、前方から見て右側後方に形成された第2リム吐水口20とを備えている。
また、導水路16は、下流に向かって第1通水路22と第2通水路24に分岐し、導水路16の洗浄水が第1通水路22を経て第1リム吐水口18に到達する一方、第2通水路24を経て第2リム吐水口20に到達し、洗浄水が、それぞれ、第1リム吐水口18及び第2リム吐水口20から吐水され、ボウル部6を洗浄し、汚物をトラップ排水路12から排出するようになっている。
【0019】
つぎに、
図3〜
図7により、洗浄水タンク装置4について詳細に説明する。
図3は、本発明の一実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンク装置の内部構造を示す平面図であり、
図4は、本発明の一実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンク装置の内部構造を示す正面図であり、
図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンク装置の内部構造を示す背面図であり、
図6は、
図3のVI−VI線に沿って見た断面図である。さらに、
図7は、本発明の一実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンク装置を示す概念図であり、
図8は、本発明の一実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンク装置においてジェットポンプユニット内の流路の断面を示す概略断面図である。
なお、
図7において、便宜上、
図3及び
図4に示す洗浄水タンク装置のジェットポンプユニットの内部構造の一部を省略すると共に、各構造のいくつかの配置についても、
図3乃至
図6に示されたものと異なる配置に描かれている。
【0020】
図3〜
図7に示すように、洗浄水タンク装置4は、平面視において左右方向に長い扁平形状に形成されて洗浄水を貯水する貯水タンク26と、この貯水タンク26に洗浄水を供給する給水管路28と、この給水管路28の下流端に設けられ便器本体2に洗浄水を供給するためのジェットポンプユニット32と、使用者が手動操作により洗浄水の給水を行うための手動レバー34を備えている。
貯水タンク26は、その高さがその底面部の長手方向(幅方向)の長さより短い扁平形タンクであり、節水化の観点及び/又は意匠性の観点から比較的小型の貯水タンクとして形成されることができる。
給水管路28の上流端には、外部の水道管等の給水源(図示せず)から供給される洗浄水を止水するための止水栓36が設けられている。この止水栓36は、水洗大便器装置1の据付時などに給水源(図示せず)からの給水を止水するためのものであり、通常使用時は開状態に保持されている。
【0021】
ジェットポンプユニット32は、下方から斜め上方に延びる上昇管部38aとこの上昇管部38aの上端付近から下方に延びる下降管部38bとを備えた概ね逆V字形状に形成されたスロート管38と、このスロート管38に向けて洗浄水を噴射してジェットポンプ作用を誘発させるジェットノズル40と、給水管路28に接続され、ジェットノズル40への洗浄水の供給を給止水する給水弁装置30と、ジェットノズル40から噴射される洗浄水の進行方向をスロート管38の内部方向からスロート管38の外部方向へと切り替える切替手段66と、貯水タンク内に貯水された洗浄水の水位に応じ上下動するフロート68と、フロート68と切替手段66とを連結する連結手段70と、フロート68を連結手段70に連結する取付け高さを上下方向に調整する調整機構72と、この給水弁装置30とジェットノズル40の間を連結するジェット流路74と、ジェット流路74の途中から分岐し、ジェットノズル40を経由せずに、便器本体2へ洗浄水を供給できる補給水流路76と、スロート管38の下降管部38bに隣接して上下方向に延びるオーバーフロー管80と、を備えている。
【0022】
スロート管38の上昇管部38aの上流端には吸引口38cが形成され、この吸引口38cが貯水タンク26内の下部に位置するようになっており、スロート管38の下降管部38bの下流端が便器本体2の導水路16に連通する排水口14に接続されている。
また、スロート管38の吸引口38cに対向するように、ジェットノズル40が配置され、スロート管38の吸引口38cとジェットノズル40は、常時、貯水タンク26内で水没した状態となっている。
【0023】
ジェットポンプユニット32は、貯水タンク26内において、スロート管38の吸引口38cが右側領域に配置され、スロート管38の下降管部38bが貯水タンクの左右方向中央領域に配置されている。別実施形態においては、ジェットポンプユニット32は、貯水タンク26内において、スロート管38の吸引口38cが左側領域に配置され、スロート管38の下降管部38bが貯水タンクの左右方向中央領域に配置されていてもよい。
【0024】
ジェットポンプユニット32は、ジェットノズル40からスロート管38の吸引口38cに向けて高速の洗浄水を噴射し、このとき、ジェットノズル40に近いスロート管38内の吸引口38c近傍の空間が負圧となり、この負圧によりジェットポンプ作用(エジェクタ効果)を誘発させることにより、貯水タンク26内の近傍の洗浄水を吸引し、この洗浄水とジェットノズル40から噴出される洗浄水とが一緒になり、スロート管38内を流れ、排水口14を経て、便器本体2の導水路16に供給されるようになっている。
すなわち、本明細書中に記載されている「ジェットポンプ作用」という用語については、ジェットノズルからスロート管の吸引口に向けて噴射される勢いのある洗浄水の流れ自体が、ポンプ等の他の機械要素に依存することなく、直接的にスロート管の吸引口の近傍等の周囲の洗浄水を引き込むような負圧を形成し、この負圧を利用してスロート管内に吸い込んだ貯水タンク内の洗浄水を便器本体側へ圧送する作用を意味している。
【0025】
給水管路28又はジェット流路74には、上述した給水弁装置30以外に、給水弁装置30の上流側に定流量弁42が、下流側に真空破壊弁44が設けられている。この定流量弁42は、給水弁装置30に供給される洗浄水を定流量とするためのものであり、真空破壊弁44は、外部から空気を吸入して真空破壊弁44からジェットノズル40までのジェット流路74内が負圧にならないようにするためのものである。
【0026】
給水弁装置30は、その上流側が給水管路28に接続され、給水管路28から給水され、さらに、その下流側がジェット流路74に接続され、主弁体48が開弁するとき、ジェット流路に一定流量の洗浄水を継続して供給してジェット吐水する(吐水状態となる)ようになっている。
給水弁装置30は、パイロット式ダイアフラム弁である主弁体48と、この主弁体が着座する主弁座50と、内部の圧力により主弁体48を主弁座50に対して移動させる圧力室52とを備え、主弁体48が、主弁座50に着座して止水する止水状態と主弁座50から離間して給水する給水状態とを切り換えるようになっている。
圧力室52には、この圧力室52の圧力を開放する第一穴54及び第二穴56と、上述した手動レバー34における使用者の手動操作と連動して第一穴54を開閉する第一パイロット弁58と、貯水タンク26内の洗浄水の水位に伴い上下動する給水フロート60の上下動により第二穴56を開閉する第二パイロット弁62が設けられている。
【0027】
また、主弁体48には、ブリード穴(図示せず)が設けられており、止水状態のとき、ブリード穴(図示せず)により給水管路28の一次側流路Aと圧力室52の内部とが連通するようになっている。ここで、第一穴54は、その開口面積が第二穴56の開口面積よりも大きく形成されている。また、第一穴54は、第二穴56よりも、
図7に示すように、上方位置に形成されている。
【0028】
第一パイロット弁58は、駆動軸124により手動レバー34に接続され、使用者の手動レバー34の手動操作により、第一穴54を開閉するようになっている。ここで、手動レバー34は、
図4において、手前側(一方向)に回動操作させた場合には後述する大洗浄がなされ、奥側(他方向)に回動操作させた場合には小洗浄がなされるようになっている。
【0029】
この給水弁装置30は、通常は止水状態であり、止水状態では、第一穴54及び第二穴56は共に塞がれており、且つ、給水管路28の一次側流路Aは圧力室52とブリード穴(図示せず)を通じて連通しているため、一次側流路Aと圧力室52の水圧は同じ水圧(一次側流路圧力α)、また二次側流路Bは大気開放となり、主弁体48に水圧が作用する面積の方が一次側流路Aの面積よりも大であるので、主弁体48は主弁座50に押付けられ閉じられている。
【0030】
給水弁装置30において、第一穴54及び/又は第二穴56が、第一パイロット弁58及び/又は第二パイロット弁62により開放されると、圧力室52から洗浄水が流出し、圧力室52内の圧力が低下し、主弁体48が主弁座50から離れるように移動し、開弁し、吐水状態となるようになっている。
【0031】
給水弁装置30において、第一穴54及び第二穴56が第一パイロット弁58及び第二パイロット弁62により閉じられると、再度圧力室52の圧力が一次側流路圧力αとなり、主弁体48が主弁座50に向けて移動し、最終的に閉弁された状態(止水状態)となる。
なお、このとき、一次側流路Aの洗浄水が、圧力室52内へブリード穴から少しずつ注入されるため、第一穴54及び第二穴56を塞いでから、所定時間遅れて、主弁体48が閉弁状態(止水状態)となるようになっている。
【0032】
つぎに、
図9〜
図13により、切替手段66、フロート68及び連結手段70について詳細に説明する。
図9は本発明の一実施形態による水洗大便器装置のジェットポンプユニットの一部を示す平面図であり、
図10は本発明の一実施形態による水洗大便器装置のジェットポンプユニットの一部の中央断面を示す正面図であり、
図11は本発明の一実施形態による水洗大便器装置のジェットポンプユニットの切替手段を示す側面図であり、
図12は本発明の一実施形態による水洗大便器装置のジェットポンプユニットの切替手段を上面から見た平面図であり、
図13(a)は本発明の一実施形態による水洗大便器装置においてフロート及び連結手段と連結された切替手段の切替弁がジェットノズルの正面より外側にある状態を示す図であり、
図13(b)は本発明の一実施形態による水洗大便器装置においてフロート及び連結手段と連結された切替手段の切替弁がジェットノズルの外側から正面に移動している途中の状態を示す図であり、
図13(c)は本発明の一実施形態による水洗大便器装置においてフロート及び連結手段と連結された切替手段の切替弁がジェットノズルの正面に移動した状態を示す図である。
【0033】
切替手段66は、スロート管38の下端近傍に配置されている。切替手段66は、ジェットノズル40から噴射された洗浄水の進行方向を切り替える切替弁96と、この切替弁96と接続される回動アーム98とを備えている。切替弁96及び回動アーム98がこの回動アーム98に設けられた第一回動軸100を中心として回転自在に構成されている。
切替弁96は、配管の屈曲部のような円弧形状の曲り面を形成する湾曲部96aと、半円形の流路断面を形成しながら直線的に延びる流出部96bとを備えている。切替弁96が作動状態において湾曲部96aがジェットノズル40の正面前方に覆い被さるように配置され、ジェットノズル40から噴射された洗浄水が湾曲部96aから流出部96bに導かれるようになっている。また別の言い方によれば、切替弁96が作動状態において、湾曲部96aがジェットノズル40から噴射される洗浄水を遮断するように配置され、洗浄水が湾曲部96aによって跳ね返されるように流出部96bに向かって流れるようになっている。
【0034】
回動アーム98は、切替弁96の手前側に固定された第1回動アーム98aと、切替弁の奥側に固定された第2回動アーム98bを有している。第1回動アーム98a及び第2回動アーム98bは、それぞれ板状の部材であり、第一回動軸100を中心に切替弁96を支持している支持アーム98cと、第1回動アーム98a及び第2回動アーム98bを後述する第一継手102と連結させて第一回動軸100を中心に回転させることができるようになっている継手アーム98dとを有している。継手アーム98dは、後述するリンク機構の一部を構成している。
継手アーム98dには、水位が上昇してフロート68が上昇される際に、継手アーム98dの回転領域を規定するストッパー部98eが形成されている。
第一回動軸100は、ジェットノズル40の外側に取付けられ、回動アーム98を回転可能に支持している。
【0035】
フロート68は、連結手段70に連結され、連結手段70が回動アーム98と連結されているので、切替手段66を動作させるようになっている。フロート68は、貯水タンク26内の水位により上下動するため、水位が低くなったときは、フロート68も下降し、それにより、切替弁96がスロート管38内の流路を塞ぐようになっている。また、水位が高くなったときは、フロート68も上昇し、それにより、切替弁96がスロート管38内の流路を開放するようになっている。
フロート68は、スロート管38の下端近傍に配置されている。フロート68は、
図10に示すように、その断面が四角形状になるように形成され、初期状態(洗浄前の待機状態)においてその上面68aがほぼ水平になるように配置され、その側面68bがほぼ垂直になるように配置されている。
また、フロート68は、
図13(b)及び(c)に示すように、洗浄中の状態においても、初期状態におけるフロート68の姿勢からほぼ一定の姿勢のまま保持された状態で移動される。すなわち、フロート68は、その上面68aがほぼ水平を保つように移動され、さらに、その側面68bがほぼ垂直を保つように移動されている。
【0036】
連結手段70は、回動アーム98の継手アーム98dと、この継手アーム98dと回転自在に連結され且つフロート68が連結される第一継手102と、この第一継手と回転自在に連結され且つスロート管とも回転自在に連結されている第二継手104と、を有するリンク機構106を備えている。
【0037】
リンク機構106は、回動アーム98の第一回動軸100と、回動アーム98の継手アーム98dと第一継手102とを回転自在に連結する第二回動軸105と、第一継手70aと第二継手104とを回転自在に連結する第三回動軸108と、第二継手104とスロート管38とを回転自在に連結する第四回動軸110とを有している。
これらの第一回動軸100、第二回動軸105、第三回動軸108及び第四回動軸110は、第一回動軸100と第二回動軸105とを結んだ仮想的な直線である仮想直線A1の長さL1と第三回動軸108と第四回動軸110とを結んだ仮想直線A2の長さL2とがほぼ同じ長さとなるように配置され、さらに、第二回動軸105と第三回動軸108とを結んだ仮想直線A3の長さL3と第四回動軸110と第一回動軸100とを結んだ仮想直線A4の長さL4とがほぼ同じ長さとなるように配置されている。
【0038】
このような構成により、リンク機構106は、フロート68が配置される第一継手102が移動される際に、仮想直線A1と仮想直線A2とがほぼ平行な関係を保ちながら移動され、仮想直線A3と仮想直線A4とがほぼ平行な関係を保ちながら移動され、仮想直線A1乃至A4が仮想的な平行四辺形の各辺を形成するような位置関係を維持しながら互いに移動されることができる。ここで、第一回動軸100はジェットノズル40に固定され、第四回動軸110はスロート管38に固定されているので、仮想直線A4は位置が固定されている。リンク機構106は、フロート68が配置される第一継手102(第一継手102は仮想直線A3と平行になるように形成されている)が、第四回動軸110と第一回動軸100とを結んだ仮想直線A4とほぼ平行な関係を保ちながら移動するように構成されている。リンク機構106を採用することにより、継手アーム98dの回転を第一継手102の上下方向の移動に変換できる。
第一継手102は、継手アーム98d及び第二継手104の傾きの変化によりほぼ上下方向に移動され、貯水タンク26の幅方向への移動(可動範囲)が抑制されている。第一継手102及びフロート68等がほぼ上下方向に移動することができるので、ほぼジェットノズル40上の領域内で移動することが可能となる、又は、幅方向の比較的狭いスペースに配置されることが可能となっている。さらに、フロート68等の可動領域を減少させることができ、貯水タンク26の幅方向の大きさを減少させることができる。
【0039】
調整機構72は、フロート68の取付け高さを上下方向に調整することができる。フロート68の取付け高さを調整することにより、フロート68が水位と連動して動作を開始し、切替弁96が作動されるタイミングが変更されるので、ジェットノズル40から便器本体2へ供給される洗浄水の量を変更することができる。調整機構72がフロート68の取付け高さを調整することにより止水水位WL1(DWL)の高さを調整でき、便器本体2に供給する洗浄水の量を調整することができる。
調整機構72は、フロート68を取付け且つ第一継手102に回転可能に支持される螺子部材112を備え、この螺子部材112を回転させることにより、螺子部材112に取付けられたフロート68の取付け高さを上下方向に調整及び/又は微調整することができる。
また、調整機構72は、螺子部材112が螺子の回転によりほぼ垂直な方向に上下移動されることにより調整されるので、螺子部材112に対してほぼ水平に取付けられているフロート68をほぼ水平の一定の姿勢に維持した状態で、フロート68の取付け高さを上下方向に調整させることが可能である。
【0040】
つぎに、
図5、
図8、
図14〜
図19により、ジェット流路74、補給水流路76について詳細に説明する。
図14は本発明の一実施形態による水洗大便器装置において、ジェットポンプユニットの一部を、補給水吐水位置切替手段のロック部材の高さにおける水平断面により切断した状態で示す平面図であり、
図15は本発明の一実施形態による水洗大便器装置において、オーバーフロー管に取付けられた補給水吐水位置切替手段を示す側面図であり、
図16は本発明の一実施形態による水洗大便器装置において、ジェット流路の途中に設けられた分岐部の流路を示す断面図であり、
図17は本発明の一実施形態による水洗大便器装置において、補給水吐水部の断面図であり、
図18は
図17のXVIII−XVIII線に沿って見た断面図であり、
図19は本発明の一実施形態による水洗大便器装置の洗浄水タンク装置において、補給水吐水位置切替手段が補給水無しモードに設定されている状態を示す平面図である。
【0041】
ジェット流路74は、貯水タンク26内において、貯水タンク26の左側端部近傍の後方側に設けられた給水弁装置30から貯水タンク26の右側端部近傍の前方側に設けられたジェットノズル40まで延びている。ジェット流路74は、給水弁装置30から下降するように延びた後、貯水タンク26の第2内側底面26bと平行にほぼ水平に延びている水平部分74aを形成し、分岐部82までほぼ水平な流路を形成し、ジェット流路74は、分岐部82を通過した後、第1内側底面26aに向かってさらに下降し、貯水タンク26の最下部である第1内側底面26a近傍にて折り返すようにしてジェットノズル40に至る流路を形成している。
【0042】
補給水流路76は、ジェットノズル40とは別に洗浄水を補給する流路を形成する補給水流路部84と、ジェット流路74の途中に設けられた分岐部82と、補給水吐水位置切替機構86とを有している。
補給水流路部84は、その上流端が分岐部82に接続され、また、その下流端部が、オーバーフロー管80の上方近傍で補給水吐水位置切替機構86に接続されている。後述する補給水吐水位置切替機構86の補給水吐水部88が補給水流路部84の吐水部を形成している。補給水流路部84は、洗浄水がジェット流路74を流れる場合には常時ジェット流路74から分岐された洗浄水を流すようになっている。
【0043】
分岐部82は、T字形状の流路を形成し、ほぼ水平に延びる横流路82aがジェット流路74の水平部分74aの一部を形成し、分岐部82のほぼ中央から垂直上方に分岐する縦流路82bが補給水流路部84と接続される。従って、分岐部82は、補給水流路部84を上方からジェット流路74に接続するように形成されている。
分岐部82は、ジェット流路74において、ジェットノズル40の位置からの所定距離上流側の位置に配置されている。ジェットノズル40の位置からの所定距離は、洗浄水が分岐部82により補給水流路部84に分岐される場合に、ジェット流路74の下流のジェットノズル40から噴出される洗浄水の流量(瞬間流量を含む)をほぼ一定に保つことができる距離である。従って、分岐部82は、ジェット流路74において、ジェットノズル40の位置から少なくとも所定距離上流側の位置に配置されていればよい。例えば、分岐部82は、第2内側底面26bのジェットノズル側端部近傍に配置されることができ、又は貯水タンク26の幅方向中央付近に配置されていてもよい。また、分岐部82は、
図15に示すように、自身の下部が貯水タンク26の第2内側底面26bに固定されている。
本実施形態においては、分岐部82は、ジェット流路74と、補給水流路部84とは別部材として形成されているが、分岐部82は、ジェット流路74と補給水流路部84と一体で形成されていてもよい。
【0044】
補給水吐水位置切替機構86は、補給水流路部84の下端で接続され、補給水流路部84から流入する洗浄水を吐水する補給水吐水部88と、補給水吐水部88を支持し、補給水吐水部88の吐水位置を切替えるように回転できる回動軸部90と、回動軸部90を内側に受け入れ、且つ回転可能に支持する支持部92と、回動軸部90を支持部92上で規定の向きに係止するロック部材94と、を備えている。
このような構成により、補給水吐水位置切替機構86は、補給水吐水部88の位置を、オーバーフロー管80の直上の位置(補給水有りモードの位置)と、オーバーフロー管80外の直上の位置(補給水無しモード)とに切替えることができる。このような構成により、便器本体2の種類によらず、便器本体2に補給水の供給が必要とされる場合には、補給水吐水位置切替機構86が補給水有りモードにされ、便器本体2に補給水の供給が必要とされない場合には、補給水吐水位置切替機構86が補給水無しモードにされることができる。
【0045】
補給水吐水部88は、回動軸部90の上部においてほぼ水平に延びる横管路88aと、横管路88aから屈曲して下方に向かう縦管路88bと、を有している。この横管路88aは、補給水流路部84が接続される横管路88aの入口部から回転軸部90に対して反対側に向かって延び、回転軸部90の上部からオーバーフロー管80の直上の位置まで到達できる長さにわたって横方向に延びている。よって、補給水流路部84から供給される補給水は、縦管路88bの位置から下方に向かって吐水される。このように補給水吐水部88は、補給水流路部84の吐水部を構成するようになっている。縦管路88bは、空中で開口されているので、洗浄水が補給水吐水部88の縦管路88bにおいて、自身の下流側に他の流路が設けられる場合に起因した流れの抵抗を受ける影響を防ぐことができる。
【0046】
回転軸部90は、補給水吐水部88の横管路88aに固定される軸部90aと、軸部90aから半径方向外側に突出する第1凸部90bと、第1凸部90bの角度位置と異なる角度位置において軸部90aから半径方向外側に突出する第2凸部90cと、第1凸部90bの下部から周方向に延びる第1止め部90dと、第2凸部90cの下部から周方向に延びる第2止め部90eとを備えている。第1凸部90b及び第2凸部90cは、軸部90aから外側に延びる薄い板状に形成されている。軸部90aから延びる第1凸部90b及び第2凸部90cの半径方向の長さは、後述する支持部開口部92a内に収まる長さにされている。第1止め部90dは、後述する突出凹部94aが第1凸部90bと係合する場合に回転軸部90が上方向に離脱しないように係合するようになっている。第2止め部90eは、後述する突出凹部94aが第2凸部90cと係合する場合に回転軸部90が上方向に離脱しないように係合するようになっている。
【0047】
支持部92は、支持部92の内側に形成される円形の支持部開口部92a内に回転軸部90の軸部90a及び第1凸部90b及び第2凸部90cを受け入れることができるようになっている。支持部92は、自身の下部がオーバーフロー管80に取付けられて固定されている。支持部92はオーバーフロー管80と一体に構成されていてもよく、オーバーフロー管80の一部として構成されていてもよい。
さらに、支持部92は、その頂部よりもわずかに下がった位置において環状部の第1側面92bと、第2側面92cと、第3側面92dとを備えている。第1側面92bには、側面開口92eが形成されている。この側面開口92eは、後述するロック部材94の突出凹部94aが挿入されることができるようになっている。第2側面92cには、側面がくぼんでいる第2側面凹部92fと、後述するロック部材94と係合する第2側面係合部92gとが形成されている。第3側面92dには、側面がくぼんでいる第3側面凹部92hと、後述するロック部材94と係合する第3側面係合部92iとが形成されている。
【0048】
ロック部材94は、コの字形状に形成され、コの字の内側中央からコの字の内側に向かって突出する突出凹部94aと、支持部92及び支持部92内に位置する回転軸部90をともに内側に抱えるように配置される第1腕部94b及び第2腕部94cとを備えている。
突出凹部94aは、二股のフォーク形状を形成し、二股の中間部分に溝部94dが形成されている。突出凹部94aの溝部94dに、第1凸部90b又は第2凸部90cが嵌合する場合に、突出凹部94aが第1凸部90b又は第2凸部90cを挟み込むように支持し、回転軸部90を動かないように係止させることができる。
第1腕部94bには、第1腕部94bの先端から内側に屈曲して突出するように形成された第1つめ部94hと、第1腕部94bの先端よりもやや内側の位置からコの字の内側に向かって緩やかに隆起した第1隆起部94eとが形成されている。
第2腕部94cには、第1腕部94bと同様に、第2腕部94cの先端から内側に屈曲して突出するように形成された第2つめ部94fと、第2腕部94cの先端よりもやや内側の位置からコの字の内側に向かって緩やかに隆起した第2隆起部94gとが形成されている。
【0049】
ロック部材94は、施工者等の使用者がロック部材94を引き出した状態のアンロック状態とロック部材94を押し込んだ状態のロック状態とを調整できるようになっている。
ロック部材94は、回転軸部90が自由に回転動作できるアンロック状態(例えば、後述する補給水有りモードと補給水無しモードとを切り替える際のアンロック状態)においては、突出凹部94aが支持部開口部92aの内側からその外側にわずかに引き出された位置に移動された状態となり、第1つめ部94hが第2側面係合部92gと係合し、第2つめ部94fが第3側面係合部92iと係合し、第1隆起部94eが第2側面凹部92fと係合し、第2隆起部94gが第3側面凹部92hと係合した状態となっており、ロック部材94が支持部92と係合した状態が維持され、ロック部材94が支持部92(すなわちオーバーフロー管)から外れて脱落することが防止する脱落防止部を構成している。このように、ロック部材94はアンロック状態においても支持部92上に安定して係止している状態となっている。
一方で、ロック部材94がアンロック状態となっているとき、ロック部材94と、回転軸部90とは係合していないので、回転軸部90はロック部材94に対して自由に回転することができ、さらに回転軸部90を支持部92から上方に移動して取り外すことも可能となっている。
【0050】
ロック部材94は、回転軸部90が回転しないように係止されているロック状態においては、
図14に示すように、突出凹部94aが側面開口92e内に挿入されて支持部開口部92aの内側まで突出され、第1隆起部94eが第2側面係合部92gと係合し、第2隆起部94gが第3側面係合部92iと係合した状態となっており、ロック部材94が支持部92と係合している状態となっている。さらに、側面開口92e内に挿入された突出凹部94aが回転軸部90の第1凸部90b又は第2凸部90cの何れかと嵌合した状態となるので、ロック部材94が回転軸部90とも係合している状態となっている。従って、ロック部材94が、回転軸部90が回転しないように係止することができる。
【0051】
上述のような構成により、補給水流路76は、支持部92の下部がオーバーフロー管80に取付けられ、ロック部材94がアンロック状態のときに、回転軸部90が支持部92内で回転され、補給水吐水部88の縦管路88bがオーバーフロー管80の真上に位置され、オーバーフロー管80内に向けられて、補給水吐水部88から吐水された洗浄水がオーバーフロー管80を介して便器本体2に供給される補給水有りモードと、ロック部材がアンロック状態のときに、回転軸部90が支持部92内で回転され、補給水吐水部88の縦管路88bがオーバーフロー管80の真上より外側に位置され、オーバーフロー管80外に向けられて、補給水吐水部88から吐水された洗浄水がオーバーフロー管80外の貯水タンク26内に向けて供給される補給水無しモードとを切替可能に形成されている。
【0052】
回転軸部90の回転と補給水吐水部88の縦管路88bの位置の関係をより具体的に説明する。
突出凹部94aが回転軸部90の第2凸部90cと嵌合している状態では、補給水吐水部88の縦管路88bがオーバーフロー管80の真上に位置している。突出凹部94aが回転軸部90の第1凸部90bと嵌合している状態では、回転軸部90が突出凹部94aに対して第2凸部90cから第1凸部90bを嵌合できるような位置まで回転されるとともに、補給水吐水部88も回転された状態となっているので、補給水吐水部88の縦管路88bがオーバーフロー管80の真上から外れた外側に位置されるようになっている。
【0053】
オーバーフロー管80は、貯水タンク26内の水位が止水水位よりも上昇してオーバーフロー管80の上端開口部(補給水口)80aの位置を上回る場合において、この上回った洗浄水が、オーバーフロー管80内に流入し、排水口14と連通しているオーバーフロー管80の下端の流出口80bから便器本体2の導水路16に補給水として供給されることができるように形成されている。また、オーバーフロー管80は、後述する補給水有りモードの場合において、上端開口部80aの上方で開口される補給水吐水部88から吐水される洗浄水が、オーバーフロー管80内に流入し、排水口14と連通しているオーバーフロー管80の下端の流出口80bから便器本体2の導水路16に補給水として供給されるように形成されている。
なお、本実施形態においては、オーバーフロー管80はジェットポンプユニット32のスロート管38と一体に形成されているが、他の実施形態において、オーバーフロー管80はジェットポンプユニット32と独立して貯水タンク26内に別個に設けられていてもよい。
【0054】
次に、再び、
図3乃至
図8を参照して、貯水タンク内の詳細な構造について説明する。
さらに、貯水タンク26内には、大洗浄及び小洗浄に必要な洗浄水量を切り換えるための大小洗浄切替機構114が設けられている。この大小洗浄切替機構114は、貯水タンク26内をジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cを取り囲む外側空間領域R1とこの外側空間領域R1よりも空間が小さい小空間領域R2との二つの空間領域R1,R2に区画する区画壁116を備えている。
より具体的に説明すると、この区画壁116は、上下方向に延びる壁面を形成し、その上方が開放されて前後方向及び左右方向の四方から取り囲んだカップ形状の小タンク118を形成している。この小タンク118は、貯水タンク26内の前方且つ左寄りに配置されており、小タンク118の内部には、小空間領域R2が平面視において貯水タンク26の左右方向に長い扁平形状となるように形成されている。
したがって、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cは、貯水タンク26を正面側から見て小タンク118及び小空間領域R2の外部右側に形成される外側空間領域R1内の前方且つ右寄りの下部に配置されている(
図3〜
図5参照)。
なお、本実施形態では、小タンク118が貯水タンク26内の前方且つ左寄りに配置されると共に、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cが、貯水タンク26を正面側から見て小タンク118及び小空間領域R2の外部右側に形成される外側空間領域R1内の前方且つ右寄りに配置されている形態について説明するが、このような形態に限られず、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cが小タンク118及び小空間領域R2に対して左右何れか一方に形成される外側空間領域R1内に配置されていればよい。
【0055】
なお、本実施形態においては、四方が区画壁116によってカップ形状に形成された小タンク118を貯水タンク26内に配置することにより、貯水タンク26内に小空間領域R2を形成するような形態について説明するが、このような形態に限られず、区画壁116を貯水タンク26内の一部に一体的に形成することにより、貯水タンク26内に小空間領域R2を形成するようにしてもよい。
【0056】
また、小タンク118の後方側の区画壁(後側区画壁)118aには、前後方向に貫くようにほぼ左右方向に長い長方形形状の開口部118bが形成されている。この開口部118bには、大小切替弁120が開閉可能に設けられており、この大小切替弁120が開口部118bを開閉することにより、ジェットポンプユニット32を通じて便器本体2へ供給する洗浄水量を変更することができ、大洗浄と小洗浄とを切り替えることができるようになっている。
【0057】
大小洗浄切替機構114の大小切替弁120は、鎖122により駆動軸124に接続されており、大洗浄を行うために、使用者により手動レバー34が一方向に回動操作された場合には、駆動軸124が回転しても、鎖122はたるむだけで、大小切替弁120は開いた状態のままとなり、大小洗浄切替機構114が大洗浄状態となるようになっている。
一方、小洗浄を行うために、使用者により手動レバー34が他方向に回動操作された場合には、鎖122により大小切替弁120が引き上げられ、大小切替弁120が開口部118bを閉じた状態となり、大小洗浄切替機構114が小洗浄状態となるようになっている。
【0058】
小タンク118の底には、小タンク118の底の表面を形成する内側底面118cと、内側底面118cの裏側において底部の裏面となる下向き面を形成し、且つ横方向に延びる外側底面118dとが形成されている。また、小タンク118の外側底面118dは、貯水タンク26の第2内側底面26bに支えリブ126によって固定されている。
【0059】
小タンク118の外側底面118dは、ほぼ水平に延びる平板状の底面を形成している。本実施形態においては、
図5及び
図6に示すように、小タンク118の外側底面118dが貯水タンク26の第2内側底面26bに対して所定間隔をあけた上方に配置されている。
外側底面118dは、貯水タンク26の左側端部近傍に位置する給水弁装置側端部118eから、貯水タンク26の中央より右側領域に位置する段部118fまで貯水タンク26の左右方向に長く形成されている第1外側底面118gと、段部118fにおいて第1外側底面118gから一段切り上がった高さにおいて、スロート管38の吸引口38c近傍に位置する吸引口側端部118hまで延びる第2外側底面118iとを形成している。
【0060】
つぎに、
図4、
図6及び
図20により、下部流水路128について詳細に説明する。
図20は便器本体に供給される洗浄水の水量と、第2内側底面から小タンク底面までの高さとの関係を示す図である。
小タンク118の外側底面118dと貯水タンク26の第2内側底面26bとの間、すなわち、第1外側底面118gと第2内側底面26bとの間、及び第2外側底面118iと第2内側底面26bとの間に下部流水路128が形成されている。このように、下部流水路128は、小タンク118の外側底面全体の下方領域に形成されている。
貯水タンク26内においては、中央近傍にスロート管38の下降管部38b及び小タンク118等が配置されているため、これらが障害物のように作用して、洗浄水が左右方向に流れる際に抵抗を受けやすくなっている。
この下部流水路128は、小タンク118の下方に形成された導水路を形成し、この下部流水路128においては、貯水タンク26の左右方向の流れの抵抗となる障害物が低減されているので、洗浄水がジェットノズルによりスロート管の吸引口に吸引されているときにおいて洗浄水を貯水タンク26の左側から右側側方のジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cに向かって滑らかに流すことができる。下部流水路128は、さらなる別部材によらず、小タンク118と貯水タンク26とにより、比較的簡単に形成される。
【0061】
なお、本実施形態においては、下部流水路128が外側底面118dの下方に設けられているが、別実施形態として、例えば、小タンクの下方部分の一部において、下部流水路が小タンクの側面から小タンクの内側に向かって横方向からコの字形状に凹むように形成されていてもよい。小タンクの側面が一部変形されることにより下部流水路の空間を形成していてもよい。この場合においては、小タンクの側面から凹むように形成された流水路が、貯水タンクの左右方向に延びるように形成されることができる。
【0062】
本実施形態においては、また、外側底面118dは、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38c側近傍(小タンク118の右側端部近傍)において、第1外側底面118gより高い高さの第2外側底面118iを形成し、下部流水路128の流路を拡大した拡大流路部128aを形成している。拡大流路部128aは、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38c側近傍において流路を拡大することにより、吸引口38cに向かう洗浄水の流れをより円滑に流すことができる。
【0063】
貯水タンク26内において、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cは小タンク118に対して左右何れか一方の領域に配置され、且つ、便器本体2の導水路16の入口に接続されるスロート管38の下降管部38bが貯水タンク26の左右方向中央領域に配置され、下部流水路128は、少なくとも貯水タンク26の左右方向中央領域近傍からジェットノズル40及び吸引口38c側の吸引口側端部118hに亘って形成されている。
【0064】
大小洗浄切替機構114が大洗浄状態となる場合、開口部118bが開とされ、小タンク118内の小空間領域R2から貯水タンク26内外側空間領域R1に向かって流出した洗浄水が、下方領域の下部流水路128に流入し、下部流水路128を流れて、スロート管38の吸引口38cに向かって円滑に流れることができる。
また、大小洗浄切替機構114が小洗浄状態となる場合には、開口部118bが閉とされ、洗浄水は小タンク118内の小空間領域R2から貯水タンク26内外側空間領域R1に向かって流出しない。このとき、貯水タンク26内外側空間領域R1に貯水された洗浄水が、下方領域の下部流水路128に流入し、下部流水路128を流れて、スロート管38の吸引口38cに向かって円滑に流れることができる。
【0065】
次に、
図4及び
図20により、第1外側底面118gの第2内側底面26bからの高さについて説明する。
本実施形態においては、第1外側底面118gが第2内側底面26bから所定高さに配置されることにより、洗浄水が下部流水路128をスムーズに流れることができ、洗浄水の下降時に貯水タンク26内の水面の幅方向の水位差が抑制されることができる。
仮に、洗浄水の下降時に貯水タンク26内の水面の幅方向の水位差が生じる場合、フロート68側の水面が早期に下降するため、フロート68が下降し、切替弁96が早期に上昇する。従って便器本体2に供給される洗浄水の水量が減少することになるという問題が生じる。
このような問題を解決するために、本発明においては、下部流水路128を形成しない場合における洗浄時の水位降下中に、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38c近傍の領域上の水面の高さとその他の領域上の水面の高さとの間に生じる上下方向の水位差h1(
図4において本実施形態の下部流水路128を形成している場合における洗浄時の水位降下中における水面がほぼ水平である状態を仮想線C1により示し、
図4において下部流水路128を形成しない場合における洗浄時の水位降下中における水面の傾きがある状態を仮想線C2により例示している)と、下部流水路128を形成した場合における下部流水路128の第1外側底面118gの第2内側底面26bからの高さh2とが、ほぼ同じ高さにされている。この第1外側底面118gの第2内側底面26bからの上下方向の高さは、5mm〜20mmの高さに形成されている。
【0066】
図20において、貯水タンク26内からジェットポンプ作用により排出されて便器本体2に供給される洗浄水の水量と、第2内側底面26bから小タンク118までの高さとの関係を測定した結果R1を示している。便器本体2に供給される洗浄水の水量が、小タンク118の高さが0mmの場合よりも、小タンク118の高さが5mm〜20mmの範囲において、より増大されている。小タンク118の下方に下部流水路128が形成され、水面の幅方向の水位差が抑制されるとき、フロート68が予定より早く下降して切替弁96が早期に上昇し、便器本体2に供給される洗浄水の水量が減ることを抑制できるためである。さらに、
図20においては、仮に貯水タンク26の大きさや設定等を変更した場合に、貯水タンク26内からジェットポンプ作用により排出されて便器本体2に供給される洗浄水の水量と、第2内側底面26bから小タンク118までの高さとの関係を測定した結果R2を示している。このように、貯水タンク26の大きさや設定等を変更した場合においても、ほとんどのタンクにおいて、R1とR2で囲まれた斜線で示すような範囲により、便器本体2に供給される洗浄水の水量が変化するため、小タンク118の高さが5mm〜20mmの範囲において、便器本体2に供給される洗浄水の水量が減ることを抑制できていることがわかる。
【0067】
なお、
図4及び
図7に示すように、貯水タンク26内の水位WLは、以下の位置となる。
まず、水位WLは、
図4及び
図7に示すように、大洗浄が終了したときの貯水タンク26内の領域R1,R2の双方の最低水位である死水水位WL1を示している。また、この水位WL1は、
図4及び
図7に示すように、小洗浄が終了したときの貯水タンク26内の領域R1のみの死水水位DWLにもなっており、これらの死水水位DWLである水位WL1は、区画壁116の開口部118bの上端よりも下方に位置している。
つぎに、
図4及び
図7に示すように、水位WL2は、小洗浄が終了したときの貯水タンク26内の領域R2の水位を示している。
また、水位WL3は、貯水タンク26内に貯水される洗浄水の初期状態における止水水位であり、且つ大洗浄又は小洗浄後に給水弁装置30により貯水タンク26内に洗浄水が給水されその後給水が停止される満水水位である。
【0068】
つぎに、
図4、
図21〜
図23を参照して、抵抗手段について詳細に説明する。
図21は本発明の一実施形態による水洗大便器装置において、貯水タンクの第1内側底面及び第1内側側面に設けられたリブ部を示す部分拡大斜視図であり、
図22は本発明の一実施形態による水洗大便器装置において、抵抗手段が設けられている場合に切替弁から貯水タンクの第1内側側面に衝突した洗浄水の流れと、従来の水洗大便器装置において抵抗手段が設けられていない場合における切替弁から貯水タンクの第1内側側面に衝突した洗浄水の流れとをそれぞれ示す概念図であり、
図23は本発明の一実施形態による水洗大便器装置において、抵抗手段が設けられている場合に切替弁から貯水タンクの第1内側側面に衝突した洗浄水の流れと、従来の水洗大便器装置において抵抗手段が設けられていない場合における切替弁から貯水タンクの第1内側側面に衝突した洗浄水の流れとをそれぞれ示す概念図である。
【0069】
貯水タンク26の第1内側側面26cには、ジェットノズル40から噴射され切替弁96によりスロート管38の外部方向へ向きを変えられた洗浄水が、貯水タンク26内面に沿って流れる流速を低減する抵抗手段130が設けられている。抵抗手段130は、貯水タンク26内壁面に沿った流れの一部の向きを変更させ及び/又は分散させるように形成されていてもよい。
この抵抗手段130は、ジェットノズル40から噴射され切替弁96によりスロート管38の外部方向へ向きを変えられた洗浄水の主流が、貯水タンク26の第1内側側面26cに衝突する衝突領域D1の下流側近傍に設けられている。
抵抗手段130は、内面に沿って流れる洗浄水の流れの流速を低減させることができるような形状を形成し、例えば、凸形状のリブの他、四角形状以外の突起部、壁、段差等によって形成されてもよい。
【0070】
抵抗手段130は、貯水タンク26の第1内側底面26aから所定高さまで上方へ突出した底面リブ部130aと、貯水タンク26の第1内側側面26cから所定高さまで内側へ突出した側面リブ部130bとを備えている。
底面リブ部130aは、第1内側側面26cの下端の中央よりやや後方側の位置に接続される一端から所定距離にわたって幅方向に延びる第1底面リブ130cと、この幅方向部の他端から屈曲して前後方向に向かって斜めに延びる第2底面リブ130dとを備えている。この第2底面リブ130dの他端は、後述する第2側面リブ130gとの間に隙間130eを形成するように、第2側面リブ130gに至る手前において終端している。
側面リブ部130bは、第1内側側面26cの下端の中央よりやや後方側の位置から衝突領域D1の高さより上方まで立ち上がるように延びている第1側面リブ130fと、第2内側側面26dにおける第1内側側面26cから所定長さだけ幅方向側の位置において第2内側側面26dの下端から衝突領域D1の高さより上方まで立ち上がるように延びている第2側面リブ130gと、を備えている。
【0071】
図21及び
図22に示すように、平面視では、衝突領域D1を取り囲むように、貯水タンク26の第1内側側面26cと、第2内側側面26dと、第1底面リブ130cと、第2底面リブ130dとが配置されて囲み領域D2を形成している。従って、衝突領域D1に衝突して第1内側側面26cに沿って主に下方向きに広がる洗浄水の流れが、矢印F11に示すように、底面の囲み領域D2内に流入し、第1底面リブ130c及び/又は第2底面リブ130dに衝突し、流速が減少され及び/又は流れの向きが底面から内方向きに変化させられる。
また、貯水タンク26の右側側方から内側を見た場合(第1内側側面26cをジェットノズル40側から見た場合)には、衝突領域D1の左右に、第1側面リブ130fと、第2側面リブ130gと、が配置されている。従って、衝突領域D1に衝突して第1内側側面26cに沿って後方向きに広がる洗浄水の流れが、第1側面リブ130fに衝突し、壁面に沿った流れが剥離され、流速が減少され及び/又は流れの向きが第1内側側面26cから内方向きに変化させられる。また、衝突領域D1に衝突して第1内側側面26cから第2内側側面26dに沿って幅方向向きに広がる洗浄水の流れが、第2側面リブ130gに衝突し、壁面に沿った流れが剥離され、流速が減少され及び/又は流れの向きが第2内側側面26dから内方向きに変化させられる。
【0072】
さらに、
図22に示すように、平面視で、囲み領域D2において、第1内側側面26cに対し、切替弁96により導かれる洗浄水の主流が斜めの向きで入射して衝突する場合に、衝突領域D1を中央として、斜めの向きで衝突した洗浄水が主に向かう一方側における第1内側側面26cと、第1底面リブ130cと、第2底面リブ130dとが取り囲む第一領域D3の面積が、他方側における第1内側側面26cと、第2内側側面26dと、第2底面リブ130dとが取り囲む第二領域D4の面積よりも小さく形成されている。
また、第2底面リブ130dは、上記斜めの向きで衝突した洗浄水が主に向かう一方側において第1内側側面26cにより近くなるように配置されている。
【0073】
図4、
図7〜
図23により、本実施形態による水洗大便器装置1による大洗浄時の動作を説明する。
まず、
図4は、大洗浄開始前の洗浄水タンク装置4を示している。この状態において、貯水タンク26内の水位は通常状態の水位WL3であり、給水弁装置30において、第一穴54及び第二穴56は何れも閉じられており、主弁体48は主弁座50上に着座し、止水状態となっている。
【0074】
大洗浄が開始されるとき、使用者が手動レバー34を一方向に手動操作すると手動レバー34に接続された駆動軸124が回転し、給水弁装置30の第一パイロット弁58が作動して、第一穴54が開く。このとき、第二穴56は閉じられたままの状態である。駆動軸124が回転しても、鎖122はたるむだけで、大小切替弁120は小タンク118の開口部118bを開いた状態のままであり、大小洗浄切替機構114が大洗浄状態となる。
【0075】
第一穴54が開くと、上述したように、給水弁装置30の主弁体48が主弁座50から離間して給水する給水状態となる。外部の給水源から供給される洗浄水は、止水栓36、定流量弁42、給水弁装置30を経て、給水管路28の下流端のジェットノズル40に到達し、ジェットノズル40からスロート管38の吸引口38cに向けて洗浄水が噴射される。スロート管38の吸引口38c付近は負圧となるので、貯水タンク26内に貯水された洗浄水もスロート管38内に吸引され、洗浄水タンク装置4により外部から供給される洗浄水と貯水タンク26内の洗浄水が一緒になってスロート管38内を流れ、便器本体2に供給され、ボウル部6の洗浄が開始される。
【0076】
図4、
図7及び
図13(a)に示すように、給水弁装置30からジェット流路74への洗浄水の供給が開始された直後においては、貯水タンク26内に洗浄水が未だ高い水位WL3近くまで貯水された状態であるので、フロート68は、上昇された状態であり、切替弁96は待機状態(切替弁96が下降されジェットノズル40の前方側を開放している状態)となっている。フロート68は、フロート68の取付けられた螺子部材112及び第一継手102とともに上昇されている。すなわち、仮想直線A1乃至A4により形成される仮想的な平行四辺形において、仮想直線A3の辺が仮想直線A4の辺に対して上昇された状態となっている。
フロート68が上昇された上昇状態にあるとき、第一継手102が引き上げられ、回動アーム98の継手アーム98dが引き上げられるので、回動アーム98は第一回動軸100を中心として回転され、切替弁96が下降されている。切替弁96の湾曲部96aのノズル側端部96cがジェットノズル40の正面より外側に配置され、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、矢印F1に示すように、スロート管38内の流路に向かって流れるようになっている。ジェットノズル40から洗浄水が噴射されることにより、貯水タンク26内に貯水された周囲の洗浄水が、矢印F2に示すように、スロート管38内に吸引されて流れるようになっている。
【0077】
図3、
図5及び
図16に示すように、給水弁装置30からジェット流路74への洗浄水の供給が開始されると、洗浄水が、矢印B1に示すように、ジェット流路74からジェットノズル40に向かって流れるとともに、矢印B2に示すように、ジェット流路74の途中に設けられた分岐部82から補給水流路部84に流れる。すなわち、給水弁装置30がジェットノズル40に洗浄水を供給している間は、常時給水弁装置30が補給水流路76に洗浄水を供給することになる。給水弁装置30はほぼ一定の流量の洗浄水を継続して供給することから、下流側の補給水流路部84及びジェットノズル40の流量の合計もほぼ一定に保たれて安定している。このように、ジェットノズル40から洗浄水が噴出されている間において、洗浄水が常に安定して補給水流路部84にも流れているので、洗浄の途中において補給水吐水部88から吐水される洗浄水量と、ジェットノズル40から噴出される洗浄水量との割合が急激に変化することを防ぎ、補給水流路76から便器本体2(又は貯水タンク26内)へ供給される洗浄水の流量が継続してほぼ一定とされるとともに、ジェットノズル40から噴出される洗浄水の流量もほぼ一定とされている。言い換えれば、給水弁装置30から供給された洗浄水が補給水流路76とジェットノズル40へと分岐して流れる分岐率(分岐される洗浄水の流量の割合)が継続してほぼ一定とされている。
ここでいう「流量がほぼ一定」とは、吐水開始直後又は止水完了直前において、流量が徐々に増加又は減少している間は除き、流量がほぼ一定となっていることを意味する。また、流量が継続して完全に一定である必要はなく、給水弁装置30から供給される洗浄水の給水圧の変化又はジェットノズル40の下流側の状態により受ける影響等で僅かに変動するものも含まれる。
【0078】
分岐部82から上方に補給水流路部84が分岐するので、補給水流路部84が下方に分岐する場合と異なり、補給水流路部84が下方に分岐する場合に洗浄水が補給水流路部84に落ちるように流れ込みやすくなることにより分岐部82近傍のジェット流路74を流れる洗浄水の流れに抵抗を生じさせる或いは流れが乱れることを抑制することができる。すなわち、矢印B3に示すように、洗浄水の流れの乱れを抑制しながら、補給水流路部84に分岐させる。
また、分岐部82がジェットノズル40の位置から所定距離上流側に配置されているために、洗浄水が分岐部82で分岐されることによる流れの乱れの影響を抑制し、ジェットノズル40近傍における洗浄水の流れがほぼ一定の流量を有する流れに整えられる。
【0079】
補給水流路部84に供給された洗浄水は、
図17において矢印B4に示すように、補給水吐水部88の縦管路88bから吐水される。このとき、
図3に示すように、補給水流路76が補給水有りモードに設定されている場合には、補給水吐水部88の縦管路88bがオーバーフロー管80の真上に位置されており、洗浄水が、オーバーフロー管80内に向けられて吐水され、オーバーフロー管80内を流下する洗浄水が便器本体2に補給水として供給される。
一方で、
図19に示すように、施工者、製造者等の切替えにより、補給水流路76が補給水無しモードに設定されている場合には、補給水吐水部88の縦管路88bがオーバーフロー管80の真上より外側に位置された状態となっており、洗浄水が、オーバーフロー管80外に向けられて吐水され、洗浄水がオーバーフロー管80外の貯水タンク26内に向けて供給される。この場合には、補給水吐水部88から吐水される洗浄水は、貯水タンク26内に補給される。補給水無しモードの場合にも、補給水吐水部88から吐水される洗浄水は流量が継続してほぼ一定であり、ジェットノズルから噴出される洗浄水の流量もほぼ一定とすることができる。
後述するように給水弁装置30が止水状態となり、ジェットノズル40から給水が終了すると、補給水流路部84への洗浄水の供給、及び補給水吐水部88の吐水も終了される。
【0080】
大洗浄が行われているとき、貯水タンク26内に貯水された洗浄水は、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cに向かう流れを形成している。
図3、
図4及び
図6等に示すように、大洗浄が開始されると、貯水タンク26内の給水弁装置30側の領域(左側領域)における洗浄水は、主に、矢印F7に示すように、外側空間領域R1から下方領域LR2に流下し、スロート管38の下降管部38b及びその他の障害物等によって流れの抵抗を受けることなく、下部流水路128を、矢印F8に示すように、スロート管38の吸引口38cに向かって円滑に流れることができる。
また、貯水タンク26内の左右方向中央領域における洗浄水は、主に、矢印F9に示すように、外側空間領域R1から下方領域LR2に流下し、スロート管38の下降管部38b及びその他の障害物等によって流れの抵抗を受けることなく、下部流水路128を円滑に流れて、スロート管38の吸引口38cに向かって流れることができる。
開口部118bから流出する洗浄水は、主に、矢印F10に示すように、外側空間領域R1から下方領域LR2に流下し、スロート管38の下降管部38b及びその他の障害物等によって流れの抵抗を受けることなく、下部流水路128を円滑に流れて、スロート管38の吸引口38cに向かって流れることができる。
【0081】
下部流水路128の下流側の拡大流路部128aにおいては、流路が拡大されているため、洗浄水がより自由にスロート管38の吸引口38cに向かって流れることができ、さらに、周囲の他の領域から吸引口38cに向かって流入する洗浄水の流れを妨げることも抑制でき、洗浄水を円滑に吸引口38cに導くことができる。
【0082】
このように、スロート管38の吸引口38c側に存在する洗浄水のみならず、給水弁装置30側の領域に存在する洗浄水も、下部流水路128を介して円滑に吸引口38cに導かれるので、貯水タンク26内のスロート管38の吸引口38c側の領域の水面の高さと、給水弁装置30側の領域の水面の高さとが、ほぼ一定にでき、左右方向の水位差を生じることが抑制される。(
図4において本実施形態の下部流水路128を形成している場合における洗浄時の水位降下中における水面がほぼ水平である状態を仮想線C1により例示している)
【0083】
大洗浄が継続されると、貯水タンク26内の水位WLがさらに低下し、給水弁装置30の給水フロート60が下降する。給水フロート60の下降が開始されると直ぐに第二パイロット弁62が作動し、これにより、第二穴56が開く。このとき、第一穴54は閉鎖状態であるが、第二穴56は、後述するように給水フロート60が再び上昇する状態まで、開状態が保持される。
【0084】
第二穴56が開くと、第一穴54の開閉状態に関係なく、給水弁装置30における給水状態が継続することになる。第二穴56が開くと、給水弁装置30における給水状態が継続し、貯水タンク26内の水位WLが、大小洗浄切替機構114の区画壁116の開口部118bの下端の水位WL1まで低下する。このとき、フロート68も水位の低下に連動して水位WL1の位置まで下降する。
【0085】
図13(a)及び
図13(b)に示すように、貯水タンク26内の洗浄水の水位が低下するにつれ、フロート68は、水位とともに下降される。フロート68は、フロート68の取付けられた螺子部材112及び第一継手102とともに下降を開始する。このとき、フロート68及び第一継手102は、仮想直線A1乃至A4により形成される仮想的な平行四辺形の関係を保つように、徐々にほぼ下向きに移動を開始する。フロート68が、従来のように第一回動軸100を中心として大きく円弧を描くように移動されないように設けられているので、フロート68自身の可動領域(移動範囲)が比較的小さくされている。
仮想直線A3及びA4が平行な関係を維持したまま第一継手102及びフロート68が徐々に下降できるので、フロート68がほぼ一定の姿勢を維持したまま下降でき、すなわち、フロート68の上面68aがほぼ水平を保ったままフロート68が下降でき、また、フロート68の側面68bがほぼ垂直を保ったままフロート68が下降できるようになっている。
このように、フロート68がほぼ下向きの方向に移動されることにより、回動アーム98の継手アーム98dが下向きに移動され、回動アーム98が回転され、反対側の切替弁96が上昇される。従って、切替弁96の湾曲部96aのノズル側端部96cがジェットノズル40の正面を横切るように上昇される。
このとき、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、その一部が、矢印F3に示すように、スロート管38内の流路に向かって流れ、その他の部分が、矢印F4に示すように、切替弁96の湾曲部96aに沿って流出部96bに向かって流れ、第1内側側面26cの衝突領域D1に向かって流出する。また、ジェットノズル40からF3の流れが噴射されることにより、貯水タンク26内に貯水された周囲の洗浄水が、矢印F5に示すように、スロート管38内に吸引されて流れている。
【0086】
さらに、貯水タンク26内の洗浄水の水位がWL1の水位まで低下した状態となると、
図13(c)に示すように、フロート68は、水位とともにさらに下降され、切替弁96が待機状態から作動状態に変化される。切替弁96が作動状態となるとき、フロート68は、フロート68の取付けられた螺子部材112及び第一継手102とともに下降された状態となっている。仮想直線A1乃至A4により形成される仮想的な平行四辺形において、仮想直線A3の辺が仮想直線A4の辺に対してほぼ同じ高さ位置まで下降された状態となっている。
フロート68が下降された下降状態にあるとき、第一継手102が引き下げられ、回動アーム98の継手アーム98dが引き下げられるので、回動アーム98は第一回動軸100を中心としてフロート側が下降するように回転され、反対側の切替弁96が上昇されている。切替弁96の湾曲部96aのノズル側端部96cがジェットノズル40の正面を横切った後、ジェットノズル端部40aとほぼ合致するように移動され、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、矢印F6に示すように、ほぼ全部が湾曲部96aから屈曲して流出部96bの方向に流出され、第1内側側面26cの衝突領域D1に向かって流出される。
【0087】
スロート管38の流路が切替弁96に遮られると、
図13(c)に示すように、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、切替弁96に衝突して、スロート管38内を流れることなく、切替弁96から跳ねかえされる。すなわち、切替弁96によってジェットノズル40から噴射される洗浄水の進行方向がスロート管38の内部方向からスロート管38の外部方向へと切り替えられる。このようにして、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、切替弁96により、約90度曲がって貯水タンク26内に向かって流れ、より具体的には、第1内側側面26cに向かって流れ、貯水タンク26内に貯水される。このとき、貯水タンク26内の水位は上昇するが、切替弁96が洗浄水の勢いにより移動できないので、フロート68も上昇することなく、その位置に保持される。また、給水弁装置30のフロート68は、水位の上昇に連動して上昇するが、第二穴56は開状態のままであり、それにより給水弁装置30による給水状態が継続されることになる。
【0088】
給水状態が継続されている間、
図23に示すように、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、切替弁96により、矢印F6に示すように、第1内側側面26cの衝突領域D1に向かって流れる。洗浄水の水流の流速が比較的高いことから、第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流が、第1内側側面26cから放射状に広がるように流れる。
【0089】
図22及び
図23においては、本発明の一実施形態による水洗大便器装置による抵抗手段が設けられている場合と、従来の水洗大便器装置において抵抗手段が設けられていない場合との洗浄水の流れの比較が図示されている。
従来においては、本発明とは異なり、
図23に破線矢印f1により示すように、底面にリブが設けられておらず、洗浄水の水流の流速が比較的高いことから、第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流が、破線矢印f1により示すように、第1内側側面26cから放射状に広がり、周囲の第1内側底面26a、第3内側側面26e等の貯水タンク26の内面に沿って流れる破線で示すような流れを形成しやすくなっていた。よって、このf1の流れが、壁面に沿ってまとまった流れとなり、下方から水面に上昇する流れを形成し、貯水タンク26内に貯水された洗浄水の水面を大きく上下に変動させてしまうという問題が生じ、洗浄水の水面が大きく上下に変動することにより、給水弁装置30の給水フロート60が満水水位WL3を正確に検知できないという不具合が生じていた。
図23においては、このような従来の水面が上下に変動している状態を破線s1により示している。
また、従来においては、本発明とは異なり、
図22に破線矢印f2により示すように、側面等にリブが設けられておらず、洗浄水の水流の流速が比較的高いことから、第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流が、第1内側側面26cから放射状に広がり、周囲の第2内側側面26d、第3内側側面26e等の貯水タンク26の内面に沿って流れる破線で示すような流れf2を形成しやすくなっていた。よってこのf2の流れが、壁面に沿ってまとまった流れとなり、水面に上昇して、貯水タンク26内に貯水された洗浄水の水面を大きく上下に変動させてしまうという課題が生じ、洗浄水の水面が大きく上下に変動することにより、給水弁装置30の給水フロート60が水位を正確に検知できないという不具合が生じていた。
図23においては、このような従来の水面が上下に変動している状態を破線s1により示している。
【0090】
これに対し、本発明においては、
図21及び
図23に示すように、抵抗手段130により貯水タンク26の内面に沿って流れる主な流れの流速を落とし及び/又は流れを分散させて、貯水タンク26内に貯水された洗浄水の水面の変動を抑制させている。
図23において、本発明における水面の上下の変動が抑制されている状態を実線s2により示している。
第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流F11のうち、主に、下方に流れる水流F12は、第1内側側面26cから第1内側底面26aに沿って流れ、第1底面リブ130c及び/又は第2底面リブ130dにおいて流速が減少され及び/又は流れの向きが底面から内方向きに変化させられる。例えば、洗浄水が第1底面リブ130cに当たる場合、第1内側底面26aに沿った流れが第1底面リブ130cの抵抗を受け、又は、第1底面リブ130cに沿って第1内側底面26aから離間する向きに方向が転換される(F12の流れ参照)。従って、流れの流速が低減され且つ流れが分散され、壁面に沿って流れる流れが抑制されて、貯水タンク26内の水面の波打ちのような変動が抑制される。
また、
図21及び
図22に示すように、第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流F11のうち、便器前後方向(衝突領域D1に対して左右横方向)に流れる向きを有する水流F13、F14は、第1内側側面26c及び/又は第2内側側面26dに沿って流れ、第1側面リブ130f及び/又は第2側面リブ130gにおいて流速が減少され及び/又は流れの向きが側面から内方向きに変化させられる(F13及びF14の流れ参照)。従って、流れの流速が低減され且つ流れが分散され、壁面に沿って流れる流れが抑制されて、貯水タンク26内の水面の波打ちのような変動が抑制される。
また、ジェットノズル40が、第1内側側面26c、第2内側側面26d及び第3内側側面26e等によって形成される比較的狭い領域によって囲まれている場合にも、第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流が壁面に沿って流速が速く且つまとまった水流を形成することを抑制することができる。
【0091】
また、
図22に示すように、第1内側側面26cに対し、切替弁96により導かれる洗浄水の主流が斜めの向きで入射して衝突する場合に、第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流F11は、斜めの向きで衝突した洗浄水が主に向かう主たる水流F14と、この水流と逆向きに向かう従たる水流F13とに分かれる(これらの水流F14及びF13は、衝突領域D1に入射する流れの鈍角側方向と鋭角側方向によって分けられ、下方向への流れも含んでいる)。
ここで、衝突領域D1に対し、第1側面リブ130fが比較的近い位置に配置され、第1内側側面26cと、第1底面リブ130cと、第2底面リブ130dとが第一領域D3を形成するように比較的近い位置に配置され、流速が依然として比較的大きく且つ流れが分散される前の状態の主たる水流F14に対して、壁面に沿った流速を低減させる能力を増加させている。第一領域D3においては、第二領域D4と比べ衝突領域D1からより近くに第1内側側面26cと、第1底面リブ130cと、第2底面リブ130dとが位置しているため、衝突後に依然として収束している流れに対する抵抗効果が比較的大きくなっている。
また、衝突領域D1に対し、第2側面リブ130gが第1側面リブ130fよりも遠い位置に配置され、第1内側側面26cと、第2内側側面26dと、第2底面リブ130dとが第一領域D3よりも大きい第二領域D4を形成するように比較的遠い位置に配置されているので、従たる水流F13に対しては、第一領域D3によるリブの流速を低減させる能力よりは、壁面に沿った流速を低減させる能力が抑えられている。第二領域D4においては、第一領域D3と比べ衝突領域D1からより遠くに第2内側側面26dと、第2底面リブ130dとが位置しているため、収束していた流れが比較的分散した状態となり、この状態の流れに対する抵抗効果が比較的小さくなっている。
従って、衝突領域D1に衝突して左右に広がる水流F14及びF13を、衝突領域D1を中央として、広がる方向による流速の偏りを抑制させ、均等な流速で分散するように広がる流れとすることができる。
【0092】
第2底面リブ130dと第2側面リブ130gとの間に隙間130eが形成されているので、第2底面リブ130dに沿った水流が、矢印F15に示すように、隙間130eから第二領域D4の外側に流出することができる。よって、第2底面リブ130dに沿った水流が、第2内側側面26d上の第2側面リブ130gまで到達し、F13の流れと衝突して、第2側面リブ130gに沿って上昇する比較的強い流れを形成することを防ぐことができる。
【0093】
つぎに、給水状態が継続され、貯水タンク26の水位が上昇し水位WL3に達すると、給水フロート60も水位WL3まで上昇し、これにより、給水弁装置30において、第二パイロット弁62が作動し、第二穴56が閉じられる。
【0094】
つぎに、給水弁装置30において、第一穴54及び第二穴56が閉じられると、上述したように、圧力室52の圧力が一次側流路圧力αとなり、主弁体48が主弁座50に向けて移動し、最終的に閉弁された状態(止水状態)となる。給水弁装置30が止水状態となり、給水が終了し、大洗浄が終了する。
【0095】
図4、
図7〜
図23により、本実施形態による水洗大便器装置1による小洗浄時の動作を説明する。小洗浄時の動作は、上述した大洗浄時の動作と異なる部分を中心に説明する。まず、
図4は、小洗浄開始前の洗浄水タンク装置4を示している。この状態において、給水弁装置30は、止水状態となっている。
【0096】
つぎに、使用者が手動レバー34を他方向に手動操作し、小洗浄が開始されたとき、手動レバー34に接続された駆動軸124が回転し、給水弁装置30の第一パイロット弁58が作動して、第一穴54が開く。このとき、第二穴56は閉じられたままの状態である。なお、小洗浄の方向に駆動軸124が回転することにより、鎖122が巻き上げられ、区画壁116内外の差圧によって大小切替弁120が小タンク118の開口部118bを閉じた状態となり、大小洗浄切替機構114は小洗浄状態となる。
【0097】
第一穴54が開くと、給水弁装置30の主弁体48が主弁座50から離間して給水する給水状態となる。このとき、貯水タンク26内に貯水された洗浄水もスロート管38内に吸引されるので、洗浄水タンク装置4により外部から供給される洗浄水と貯水タンク26内の洗浄水が一緒になってスロート管38内を流れ、便器本体2に供給され、ボウル部6の洗浄が開始される。
【0098】
小洗浄時においても、
図4、
図7及び
図13(a)に示すように、給水弁装置30からジェット流路74への洗浄水の供給が開始された直後においては、貯水タンク26内に洗浄水が未だ高い水位WL3近くまで貯水された状態であるので、フロート68は、上昇された状態であり、切替弁96は待機状態(切替弁96が下降されジェットノズル40の前方側を開放している状態)となっている。
【0099】
小洗浄時においても、
図3、
図5及び
図16に示すように、給水弁装置30からジェット流路74への洗浄水の供給が開始されると、洗浄水が、矢印B1に示すように、ジェット流路74からジェットノズル40に向かって流れるとともに、矢印B2に示すように、ジェット流路74の途中に設けられた分岐部82から補給水流路部84に流れる。すなわち、給水弁装置30がジェットノズル40に洗浄水を供給している間は、常時給水弁装置30が補給水流路76に洗浄水を供給することになる。なお、小洗浄時においては、便器本体2への洗浄水の供給量が比較的少なくなるので、給水弁装置30がジェットノズル40に洗浄水を供給する継続時間が、大洗浄時に比べて短くされている。
【0100】
小洗浄時においても、
図3に示すように、補給水流路76が補給水有りモードに設定されている場合には、洗浄水が、オーバーフロー管80内に向けられて吐水され、オーバーフロー管80内を流下する洗浄水が便器本体2に補給水として供給される。
一方で、
図19に示すように、施工者、製造者等の切替えにより、補給水流路76が補給水無しモードに設定されている場合には、洗浄水が、オーバーフロー管80外に向けられて吐水され、洗浄水がオーバーフロー管80外の貯水タンク26内に向けて供給される。
後述するように給水弁装置30が止水状態となり、ジェットノズル40から給水が終了すると、補給水流路部84への洗浄水の供給、及び補給水吐水部88の吐水も終了される。
【0101】
小洗浄が行われているとき、貯水タンク26内に貯水された洗浄水は、ジェットノズル40及びスロート管38の吸引口38cに向かう流れを形成している。
図3、
図4及び
図6等に示すように、小洗浄が開始されると、大洗浄時と同様に、貯水タンク26内の給水弁装置30側の領域(左側領域)における洗浄水は、主に、矢印F7に示すように、外側空間領域R1から下方領域LR2に流下し、下部流水路128を、矢印F8に示すように、スロート管38の吸引口38cに向かって円滑に流れることができる。
ここで、小洗浄においては、大小洗浄切替機構114の大小切替弁120は、開口部118bを閉じた閉状態とされており、小タンク118内の洗浄水は排出されずに貯水された状態を維持している。小タンク118の外側の外側空間領域R1からのみ洗浄水が排出されるので、小空間領域R2の分の洗浄水量を排出せず、すなわちこの量を低減した洗浄を行うこととなる。
外側空間領域R1からスロート管38に流入する洗浄水については、大洗浄時と同様に、矢印F9及び矢印F10に示すように、外側空間領域R1から下方領域LR2に流下し、スロート管38の下降管部38b及びその他の障害物等によって流れの抵抗を受けることなく、下部流水路128を円滑に流れて、スロート管38の吸引口38cに向かって流れることができる。
【0102】
小洗浄が継続されると、貯水タンク26内の外側空間領域R1内の水位WLが低下する。これにより、給水弁装置30の給水フロート60も下降する。給水フロート60の下降が開始されると直ぐに第二パイロット弁62が作動し、これにより、第二穴56が開く。このとき、第一穴54は閉鎖状態であるが、第二穴56は、給水フロート60が再び上昇する状態まで、開状態が保持される。
【0103】
第二穴56が開くと、第一穴54の開閉状態に関係なく、給水弁装置30における給水状態が継続する。このため、手動レバー34の操作時間とは無関係に確実に小洗浄を実行することができる。
【0104】
第二穴56が開くと、給水弁装置30における給水状態が継続し、貯水タンク26内の水位WLが、止水水位WL3から低下する。このとき、大小切替弁120が小タンク118の開口部118bを閉じた状態が維持されているため、小タンク118内の水位は、止水水位WL3よりもわずかに低い水位WL2が維持される。
また、
図4に示すように、貯水タンク26内の外側空間領域R1内の水位は、ジェットノズル40付近の水位WL1(死水水位DWL)まで低下し、フロート68も水位の低下に連動して水位WL1の位置まで下降する。
【0105】
小洗浄時においても、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、貯水タンク26内の洗浄水の水位が低下するにつれ、フロート68は、水位とともに下降される。切替手段66、フロート68及び連結手段70は、水位の下降及び上昇に伴い、大洗浄時と同様の動作を行うので詳細な説明を省略する。
【0106】
スロート管38の流路が切替弁96に遮られると、
図13(c)に示すように、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、切替弁96に衝突して、スロート管38内を流れることなく、切替弁96から跳ねかえされる。すなわち、切替弁96によってジェットノズル40から噴射される洗浄水の進行方向がスロート管38の内部方向からスロート管38の外部方向へと切り替えられる。このとき、貯水タンク26内の水位は上昇する。
【0107】
給水状態が継続されている間、
図23に示すように、ジェットノズル40から噴射される洗浄水は、切替弁96により、矢印F6に示すように、第1内側側面26cの衝突領域D1に向かって流れる。小洗浄時においても、大洗浄時と同様に、第1内側側面26cの衝突領域D1に衝突した水流が、第1内側側面26cから放射状に広がるように流れ、抵抗手段130に到達する。本発明においては、
図21及び
図23に示すように、小洗浄時においても、大洗浄時と同様に、抵抗手段130により貯水タンク26の内面に沿って流れる主な流れの流速を落とし及び/又は流れを分散させて、貯水タンク26内に貯水された洗浄水の水面の変動を抑制させている。これらの流れについても大洗浄時と同様な流れとなるので詳細な説明を省略する。
【0108】
さらに、給水状態が継続され、貯水タンク26の水位が上昇し水位WL3に達すると、給水フロート60も水位WL3まで上昇し、これにより、給水弁装置30において、第二パイロット弁62が作動し、第二穴56が閉じられる。
【0109】
つぎに、給水弁装置30において、第一穴54及び第二穴56が閉じられると、上述したように、圧力室52の圧力が一次側流路圧力αとなり、主弁体48が主弁座50に向けて移動し、最終的に閉弁された状態(止水状態)となる。給水弁装置30が止水状態となり、給水が終了し、小洗浄が終了する。
【0110】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器装置1によれば、連結手段70により、フロート68をほぼ一定の姿勢に維持した状態で、フロート68を切替手段66に近接して上下に移動させるため、従来と比べ、フロート68の可動領域を比較的小さくすることができる。そのため、フロート68の可動領域を減らした分、貯水タンク26を小型化することができる。また、貯水タンク26の外観を小さくすることができ、外観の意匠性を向上させることができる。
【0111】
また、本実施形態による水洗大便器装置1によれば、切替手段66の回動アーム98が回転されることにより、切替弁96がジェットノズル40から噴射された洗浄水の進行方向を切り替えるので、切替弁96の可動領域を比較的小さくすることができる。
【0112】
さらに、本実施形態による水洗大便器装置1によれば、回動アーム98と、この回動アーム98と回転自在に連結される第一継手102と、この第一継手102と回転自在に連結され且つスロート管38とも回転自在に連結される第二継手104と、を備えるリンク機構106により、比較的簡単な構造により、フロート68の可動領域を比較的小さくすることができる。
【0113】
また、本実施形態による水洗大便器装置1によれば、リンク機構106の第一回動軸100、第二回動軸105、第三回動軸108及び第四回動軸110が、これらを結ぶ仮想直線によりほぼ平行四辺形を形成するように配置されているので、フロート68をほぼ一定の姿勢に維持した状態で、フロート68を切替手段66に近接した領域において上下により確実に移動させることができる。
【0114】
さらに、本実施形態による水洗大便器装置1によれば、リンク機構106の第一回動軸100、第二回動軸105、第三回動軸108及び第四回動軸110がこれらを結ぶ仮想直線によりほぼ平行四辺形を形成するように配置されているので、第一継手102が第四回動軸110と第一回動軸100とを結んだ仮想直線とほぼ平行に移動でき、フロート68をほぼ一定の姿勢により確実に維持した状態で、フロート68を切替手段66に近接した領域において上下により確実に移動させることができる。
【0115】
また、本実施形態による水洗大便器装置1によれば、フロート68の取付け高さを上下方向に調整することができために、貯水タンク26からジェットポンプ作用により便器本体2に供給される洗浄水量を可変とすることができる。
【0116】
さらに、本実施形態による水洗大便器装置1によれば、螺子部材112によりフロート68の取付け高さを微調整することができるために、製造誤差等によりフロート68の取付け高さを微調整する必要が生じた場合にも対応することができる。
【0117】
さらに、本実施形態による水洗大便器装置1によれば、フロート68をほぼ一定の姿勢に保持した状態で、フロート68の取付け高さを上下方向に調整させることができるので、貯水タンク26からジェットポンプ作用により便器本体2に供給される洗浄水量をより確実に可変とすることができる。