特許第6406502号(P6406502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406502
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】重合性封着組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20181004BHJP
   F16B 33/06 20060101ALI20181004BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20181004BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20181004BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20181004BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C09K3/10 E
   C09K3/10 Q
   F16B33/06 C
   C09J4/06
   C09J133/06
   C08F2/44 B
   C08F220/30
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-138266(P2014-138266)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-17080(P2016-17080A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】金澤 英紀
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小野田 友弘
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58-125772(JP,A)
【文献】 特開平7-42719(JP,A)
【文献】 特開平10-130587(JP,A)
【文献】 特開平7-331187(JP,A)
【文献】 特開平5-186751(JP,A)
【文献】 特開平5-140514(JP,A)
【文献】 特開平5-17723(JP,A)
【文献】 特開平1-108284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10−3/12、
C08F2/44、
C08F220/30、
C09J1/00−5/10、
C09J9/00−201/10、
F16B33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(4)を含んで成る、重合性封着組成物。
(1)以下(a)、(b)を含むマイクロカプセル、
(a)ビスフェノール骨格を有し、分子中に(メタ)アクリル基を一つ以上有する化合物
(b)分子量が300以下であり、脂肪族鎖に直接結合した(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有し、なおかつエポキシ基を有しない化合物 前記(a)成分100質量部に対し50〜150質量部
(2)アクリル酸エステルを構成モノマーとして含む重合体よりなるバインダー成分 前記(1)のマイクロカプセル100質量部に対し、1〜75質量部
(3)前記(a)、(b)を硬化させる要素
(4)水
【請求項2】
前記(1)のマイクロカプセルが、イソシアネート化合物とメラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物との反応により殻を形成するものである、請求項1に記載の重合性封着組成物。
【請求項3】
前記(1)のマイクロカプセルに含まれる(b)成分が、炭素数が10以下の直鎖アルキレンの両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有してなる構造の化合物である、請求項1,2のいずれか1項に記載の重合性封着組成物。
【請求項4】
前記(3)の要素が、マイクロカプセルに内包された成分を含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性封着組成物。
【請求項5】
前記マイクロカプセルに内包された成分が、過酸化物を含むものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性封着組成物。
【請求項6】
前記重合性封着組成物が、さらに(5)粒径1μm以下の微粉末シリカを含むものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合性封着組成物。
【請求項7】
前記重合性封着組成物が螺合部材の締結のために用いるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性封着組成物。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の重合性封着組成物を塗布した上で、前記重合性封着組成物に含まれる揮発分を揮発してなる塗膜を有した部材。
【請求項9】
前記請求項8に記載の部材が螺合部材であり、前記塗膜が形成された部位が螺合面である、螺合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルを含んで成る組成物に関するもので、マイクロカプセルの破壊により該マイクロカプセル内に含まれる重合性成分が重合することで密着性の高い被膜を形成するものである。特にねじ、ボルト、ナット等の螺合部材の螺合面に予め塗布することで、ゆるみ止め効果や高い固着性を発現することができるのみならず、締結時の削り粉、削りカス等の発生を低減できる重合性封着組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ねじ、ボルト、ナット等の螺合部材の螺合面に予め塗布して使用する、ゆるみ止めや封入物の漏洩防止を目的とした組成物が知られている。例えば、特許文献1には、ポリアミド樹脂をバインダーに二硫化モリブデンやボロンナイトライドを含む組成物から成る、ネジのゆるみ止めに用いる組成物が開示されている。しかしながらこの様な組成物は、螺合部材を締結した際の、樹脂成分の反発力によってゆるみ止めの作用を発現するものであり、当該螺合部材の使用環境、すなわち熱、蒸気、薬品、過大な応力等の負荷が掛かった場合、容易にこの特性が失われるため、過酷な使用環境下で用いることができるものではなかった。
【0003】
この様な問題を解決するため、特許文献2ではポリアセタール樹脂から成るバインダーに、エポキシ樹脂を内包して成るマイクロカプセル、アミン系の硬化剤を含んで成る、ゆるみ止めを目的とした、水系の硬化性組成物が開示されている。この様な組成物は、マイクロカプセルが破壊されることで化学反応が開始され、エポキシ樹脂が架橋することによりこれが螺合部材と密着し、ゆるみ止め作用を発現する、というものである。これらは一般に、化学反応を伴わないものと比べ過酷な環境下での使用に耐えうる締め付け強度を発揮するものであるが、他方で螺着締結時におけるマイクロカプセルの破壊に伴い、カプセル殻由来の削り粉、削りカス等(以後、本発明中においてはこれらを「削粉」ともいう)が発生するという問題がある。特にマイクロカプセルを含む組成物が水系の場合には、耐水性の高いカプセル殻とする必要があり、この様なカプセル殻は通常膜厚を大きくする必要があることから、特に削粉の発生量が増大する、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−018808号公報
【特許文献2】特開平05−140514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、螺合部物材に適用するゆるみ止め用の組成物に於いては、特に環境負荷の小さな水系である場合、ゆるみ止め性能の向上と削粉発生の低減を両立することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記課題を解決するため鋭意検討したしたもので、以下構成の重合性封着組成物を用いることにより、水系でありながら良好なゆるみ止め性能と、削粉発生の低減を実現するものである。すなわち、
(1)以下の(a)、(b)成分を含むマイクロカプセル、
(a)ビスフェノール骨格を有し、分子中に(メタ)アクリル基を一つ以上有する化合物
(b)分子量が300以下であり、脂肪族鎖に直接結合した(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有し、なおかつエポキシ基を有しない化合物 前記(a)成分100質量部に対し50〜150質量部
(2)アクリル酸エステルを構成モノマーとして含む重合体よりなるバインダー成分 前記(1)のマイクロカプセル100質量部に対し、1〜75質量部
(3)前記(a)、(b)成分を硬化させる要素
(4)水
を含んでなる、重合性封着組成物である。
【0007】
また本発明は、以下の実施形態も包含する。すなわち、
第2の実施形態は、前記(1)のマイクロカプセルが、イソシアネート化合物とメラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物との反応により殻を形成するものである、重合性封着組成物。
第3の実施形態は、前記(1)のマイクロカプセルに含まれる(b)成分が、炭素数が10以下の直鎖アルキレンの両末端に(メタ)アクリル基を有してなる構造の化合物である、重合性封着組成物。
第4の実施形態は、前記(3)の要素が、マイクロカプセルに内包された成分を含むものである、重合性封着組成物。
第5の実施形態は、前記マイクロカプセルに内包された成分が、過酸化物を含むものである、重合性封着組成物。
第6の実施形態は、前記重合性封着組成物がさらに(5)粒径1μm以下の微粉末シリカを含むものである、重合性封着組成物。
第7の実施形態は、前記重合性封着組成物が螺合部材の締結のために用いるものである、重合性封着組成物。
【0008】
また本発明の第8の実施形態は、前記重合性封着組成物を塗布した上で、前記重合性封着組成物に含まれる揮発分を揮発してなる塗膜を有した部材に関する。
第9の実施形態は、前記部材が螺合部材であり、前記塗膜が形成された部位が螺合面である、螺合部材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合性封着組成物は、特にボルト、ナット、ニップル、プラグ、ソケット、エルボ等の螺合部を有する部材に塗布して用いることで、良好なゆるみ止め効果を発揮するとともに、螺着締結時においてマイクロカプセルに由来する削粉の発生が低減された螺合部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の重合性封着組成物は、前記構成の組成物を含んでなることにより好ましい特性を発揮することができるようになる。以下に各構成について詳説する。
【0011】
(1)マイクロカプセルを構成する成分について
本発明のマイクロカプセルは、次の(a)、(b)成分を少なくとも含むものである。すなわち、
(a)ビスフェノール骨格を有し、分子中に(メタ)アクリル基を一つ以上有する化合物
(b)分子量が300以下であり、脂肪族鎖に直接結合した(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有し、なおかつエポキシ基を有しない化合物
であり、その組成は(a)成分100質量部に対し(b)成分が50〜150質量部となる質量比である。
【0012】
ここで前記(a)成分については、ビスフェノール骨格を有し、分子中に(メタ)アクリル基を一つ以上有する化合物で有れば特に制限はない。当該(a)成分は本発明の重合性封着組成物において、基材に対する密着性を発現する主要な要素として用いるものである。即ち、当該成分を内包するマイクロカプセルが破壊された際、該カプセルの外に存在する後述の構成(3)がこれと化学的に反応し架橋を生じることにより、基材との密着性を強固なものにし、また硬化物の強度を確保するのである。なお本発明にて「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」と記載したものは、アクリルとメタクリルの両者を表すものである。
【0013】
当該(a)成分の具体例としては、ビスフェノール骨格のジグリシジルエーテル、所謂エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基を反応させ、前記エポキシ樹脂の分子末端にあるグリシジル基をエステル化することにより(メタ)アクリル基を付加して得たビスフェノール型エポキシアクリレート、あるいはビスフェノール骨格のジグリシジルエーテルにビスフェノールAを重付加した化合物に、上記と同様にして(メタ)アクリル基を付加して得たビスフェノール型エポキシアクリレート等を挙げることができる。なおこれら構造の化合物を総称して、本発明では「ビスフェノール型エポキシアクリレート」とも言う。ここで本発明においては、市販品の入手容易性や硬化物の物性への影響等の観点から、オキシアルキレン変性のビスフェノール型エポキシアクリレートが好適であり、特にエトキシ変性のビスフェノール型エポキシアクリレートが好適に用いることができる。反応性、硬化物物性等の観点から、当該ビスフェノール型エポキシアクリレートの分子量としては、300〜700の範囲にあることが好ましく、エトキシ変性のビスフェノール型エポキシアクリレートにおいては、分子内に存在するエトキシ基の数が1〜5程度であることが特に好ましい。
【0014】
当該(a)成分の市販品としては、EBECRYL600、EBECRYL3700(以上、ダイセルオルネクス社製品)、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル3000MK、エポキシエステル3000A(以上、共栄社化学社製品)、BAEA−100、BAEM−100、BAEM−50、BFEA−50(以上)、ケーエスエム社製品)、ユニディックV−5500、ユニディックV−5502(以上、DIC社製品)、A−B1206PE、ABE−300、A−BPE−10、A−BPE−20、A−BPE−30、A−BPE−4、A−BPP−3、BPE−80N、BPE−100、BPE−200、BPE−500、BPE−900、BPE−1300N(以上、新中村化学社製品)等を挙げることができる。
【0015】
前記(b)成分については、分子量が300以下であり、脂肪族鎖に直接結合した(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有し、なおかつエポキシ基を有しない化合物(以後、本発明において、「脂肪族アクリルモノマー」ともいう)であれば特に制限はない。ここでいう脂肪族鎖とは、環構造となっていない鎖状の脂肪族炭化水素構造のことであり、当該鎖状の炭化水素構造は、炭素数が5以下のアルキル基からなる側鎖を有していてもよいものである。当該(b)成分は本発明の重合性封着組成物において、これを螺合部材等の基材に塗布、乾燥した後、螺着締結等によってマイクロカプセルが破壊される際に生じる削粉の発生を削減するものである。前記マイクロカプセルが当該(b)成分を含むことに起因する、前記削粉発生のメカニズムについては明らかでは無いが、以下の機構によるものが一つの仮説として考えられる。即ち、削粉が発生するのは塗膜中のマイクロカプセルの殻材がバインダー成分と十分に密着していないため、螺着締結という外力により当該殻材が剥落することで生じるものであるが、本発明では当該成分がマイクロカプセルの殻材を構成する要素として取り込まれ、このことにより当該殻材と前記(a)成分のビスフェノール型エポキシアクリレートを相互作用させることで、これを反応系の中に取り込んで脱離しにくくさせ、結果として削粉の発生を低減する、という機構である。また、殻材に取り込まれることで、マイクロカプセル殻を強固にし、これによりマイクロカプセルの耐水性を向上させるものにもなると考えられる。
【0016】
当該(b)成分の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アタクリレート、イソブチル(メタ)アタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アタクリレート等のモノ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルプロパンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレートを挙げることができる。本発明においては、硬化反応の反応性や硬化物の物性への影響等の観点から、ジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレートが好ましく、またアルキレン鎖の両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有してなるジ(メタ)アクリレートがより好ましく、特には当該アルキレンの炭素数がC3〜C10の範囲にあるジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0017】
当該(b)成分の市販品としては、ライトエステルE、ライトエステルNB、ライトエステルIB、ライトエステルTB、ライトエステルEH、イソデシルメタクリレートID、ラウリルメタクリレートL、ライトアクリレートIAA、ライトアクリレートL−A(以上、共栄社化学社製品)、LA、AIB、TBA、NOAA、IOAA、INAA、(以上、大阪有機化学工業社製品)、A−DOD−N、A−HD−N、A−NOD−N、NOD−N、HD−N、NPG(以上、新中村化学社製品)等を挙げることができる。
【0018】
本発明における当該(b)成分は、前記(a)成分100質量部に対し50〜150質量部含むものである。(b)成分が当該組成量を超えると、硬化成分の反応性が向上し過ぎて貯蔵安定性が低下し、また硬化物の硬度が上がり、硬化塗膜が脆くなってしまい、十分な固着力を発現できない、という弊害が生じる。(b)成分が当該組成量未満であると、前述の削粉の発生を低減する作用が十分に発現することができない。
【0019】
本発明において、前記(a)、(b)成分を内包するマイクロカプセルの製法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、界面重合法、in−situ重合法、不溶化沈殿法、コアセルベーション法等を使用して製造することができるが、本発明においては特開2000−15087号公報等に記載のあるin−situ重合法が特に好適に用いることができる。
【0020】
in−situ重合法にてマイクロカプセルを作成する場合、カプセル内包物として前記(a)、(b)成分に加え、イソシアネート化合物を含んだ混合液を調製する。当該イソシアネート化合物としては公知の物質を用いることができ、例えば4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、2H−1,3,5−オキサジアジン−2,4,6−(3H,5H)−トリオン−3,5−ビス−(6−イソシアナト−ヘキサ−1−イル)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート3分子のビウレット縮合物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアネートの一方のイソシアネート部が2分子のトリレンジイソシアネートと共にイソシアヌレート体を構成し他方のイソシアネート部が2分子の他のヘキサメチレンジイソシアネートと共にイソシアヌレート体を構成するイソシアネートプレポリマー、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。本発明では、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、又はイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物の使用が好ましい。本発明における当該イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体、特にヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット縮合物を好適に用いることができる。当該イソシアネート化合物の添加量は、マイクロカプセルの内包物である前記(a)、(b)成分の合計質量100質量部に対し、1〜30質量部程度となることが好ましい。当該範囲を超過すると、硬化成分の反応性が低下し、また貯蔵安定性も悪化する。当該範囲未満であると、カプセル殻の強度を十分に保つことができない。
【0021】
然る後、前記混合液を水中で乳化剤と混合攪拌し、pHや温度、攪拌条件等を適宜調整の上、ここにメラミン−ホルマリン初期縮合物を投入してからさらに攪拌を続けることにより、前記イソシアネート化合物とメラミン−ホルマリン初期縮合物の反応物を主成分とする殻材からなるマイクロカプセルを製造することができる。ここで、前記乳化剤としてはスチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等が好適であり、当該成分の添加量は、マイクロカプセルの内包物である前記(a)、(b)成分並びにイソシアネート化合物の合計質量100質量部に対し、1〜25質量部程度となることが好ましい。
【0022】
(2)アクリル酸エステルを構成モノマーとして含む重合体よりなるバインダー成分について
本発明のバインダー成分としては、アクリル酸エステルを構成モノマーとして含む重合体よりなるバインダー成分を用いるものであり、さらに当該バインダー成分としては、アクリル酸エステル共重合体が好適である。当該構成のバインダー成分であれば、接着剤やコーティング剤等に用いられる公知の化合物を用いることができるが、特に本発明の組成物は水系であるため、当該化合物としては水溶性、エマルジョン等の水分散性または水懸濁性、若しくは予め水分散処理がなされている化合物が特に好適である。前記アクリル酸エステルを構成モノマーとして含む重合体よりなる水性バインダー成分の市販品としては、ジュリマーAC−10S(質量平均分子量約5000)、ジュリマーAS−10SH(質量平均分子量約100万)(以上、東亜合成社製品)、アクリセットARL−468(質量平均分子量約4000)、アクリセットARL−460(以上、日本触媒社製品)、ポリゾールAP−1761、ポリゾールAP−5595N、ポリゾールAP−4690N(以上、昭和電工社製品)、ニューコートSFK−1000A、ニューコートSFK−8000A(以上、新中村化学社製品)、モビニール727,モビニール7525、モビニール745(以上、日本合成化学社製品)などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0023】
本発明における当該(2)成分の添加量範囲は、前記(1)のマイクロカプセル100質量部に対し、固形分換算で1〜75質量部、より好適には5〜50質量部である。当該範囲を超過すると、螺合部材に塗工して用いた際のゆるみ止め作用が不十分なものとなり、当該範囲未満であると、基材に対する密着性が低下して、作業性が低下してしまう。
【0024】
(3)前記(a)、(b)成分を硬化させる要素について
前記(a)、(b)成分を硬化させるもので、水の存在に悪影響を受けるものでなければ特段の制約はなく、通常アクリル官能性基を硬化させる目的で用いられる公知の化合物を選択できる。例えば、光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤、嫌気重合硬化剤、マイケル付加架橋剤等から、所望の反応形態に適した材料を選択することができる。例えば本発明の重合性封着組成物が影部に用いるものであれば光ラジカル開始剤以外のもの、特に金属ネジなどの螺合部材表面に適用するものであれば、嫌気重合硬化剤が特に好適に用いることができる。なお本発明明細書中では、当該(3)を以後「硬化剤成分」ともいう。
【0025】
前記(3)が嫌気重合硬化剤である場合、公知の過酸化物と硬化促進剤の組合せよりなる硬化系の要素を好適に用いることができる。当該過酸化物の例としては、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアリルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、メチルシクロヘキサンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類等を挙げることができる。特に本発明においては、ジアシルパーオキサイド類が好適であり、中でも反応性や入手容易性の観点からベンゾイルパーオキサイドが好適である。
【0026】
嫌気重合硬化系に用いる硬化促進剤としては、o−ベンゾイックスルフィミド、所謂サッカリンと、アミン化合物、メルカプタン化合物、ヒドラジン化合物、遷移金属含有化合物等から選ばれる化合物の組合せよりなる系が公知である。当該アミン化合物の具体例としては、2−エチルヘキシルアミン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロキナルジン等の複素環第2級アミン、キノリン、メチルキノリン、キナルジン、キノキサリンフェナジン等の複素環第3級アミン、N,N−ジメチル−パラ−トルイジン、N,N−ジメチル−アニシジン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、1,2,4−トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、1,2,3−ベンゾチアジアゾール、3−メルカプトベンゾトリアゾール等のアゾール系化合物等が挙げられる。また、当該メルカプタン化合物の具体例としてはn−ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等の直鎖型メルカプタンが挙げられる。ヒドラジン化合物としては、例えば、1−アセチル−2−フェニルヒドラジン、1−アセチル−2(p−トリル)ヒドラジン、1−ベンゾイル−2−フェニルヒドラジン、1−(1’,1’,1’−トリフルオロ)アセチル−2−フェニルヒドラジン、1,5−ジフェニル−カルボヒドラジン、1−フォーミル−2−フェニルヒドラジン、1−アセチル−2−(p−ブロモフェニル) ヒドラジン、1−アセチル−2−(p−ニトロフェニル)ヒドラジン、1−アセチル−2−(2’−フェニルエチルヒドラジン)、エチルカルバネート、p−ニトロフェニルヒドラジン、p−トリスルフォニルヒドラジド等が挙げられる。遷移金属含有化合物としては、好ましくは金属キレート錯塩が使用される。例えば、ペンタジオン鉄、ペンタジオンコバルト、ペンタジオン銅、プロピレンジアミン銅、エチレンジアミン銅、鉄ナフテート、ニッケルナフテート、コバルトナフテート、銅ナフテート、銅オクテート、鉄ヘキソエート、鉄プロピオネート、アセチルアセトンバナジウム等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で使用されてもよく、又は複数併用されてもよい。これらのうち、ヒドラジン化合物、アミン化合物及び遷移金属含有化合物の混合物が、硬化促進効果が良好である故特に好適である。
【0027】
前記(3)の添加量は、前記(1)のマイクロカプセルに含まれる(a)、(b)成分の合計質量100質量部に対し0.1〜45質量部程度となることが好ましい。当該範囲を超過すると、螺合部材に塗工して用いた際のゆるみ止め作用が不十分なものとなり、当該範囲未満であると、基材に対する密着性が低下して、作業性が低下してしまう。また前記(3)が過酸化物である場合の添加量としては、前記(a)、(b)成分の合計質量100質量部に対して1〜25質量部の範囲にあることが、反応性と硬化物の物性のバランスより特に好適である。
【0028】
さらに本発明において、前記(3)はマイクロカプセルに内包された硬化剤成分を含むものであることが好ましい。具体的には、前記過酸化物をマイクロカプセルに内包したものを、硬化剤成分として用いることが特に好適である。この際、これと併用される硬化促進剤は、別途にマイクロカプセル化したものであっても、そうでないものであってもよい。ここで、前記過酸化物マクロカプセルの製法としては公知の技術を用いることができ、例えば、界面重合法、in−situ重合法、不溶化沈殿法、コアセルベーション法等を使用して製造することができるが、本発明においてはin−situ重合法により製造したマイクロカプセルが特に好適に用いることができる。
【0029】
当該マイクロカプセルの製造は、特開平04−048926号公報、特開昭53−84881号、特公昭52−18671号、特公昭44−27257号公報等に記載の、公知の定法に従って行うことができる。当該マイクロカプセルの壁材としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂等を目的に合わせ適宜選択することができる。
【0030】
また本発明の重合性封着組成物においては、上記(1)〜(4)の他に、さらに(5)粒径が1μm以下の微粉末シリカを含むことができる。当該成分を添加する目的としては、本発明の重合性封着組成物を螺合部材に適用する場合、螺着締結時にかじりを防止する作用を狙ったものである。該シリカの粒径が上記範囲にあることで、螺着締結時に削粉を生じにくく、スムーズに螺着ができると同時に、適度な抵抗を発揮するためにかじりが生じにくくなるのである。
【0031】
当該微粉末シリカとしては、粒径が上記範囲にあるものであれば特にその製法等を問うものではなく、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカのいずれを用いても良く、また表面が脂肪酸等により修飾処理されたものであっても良い。また粒径が異なる複数の種類を混合したものでもあってもよい。本発明において好適に用いることができる微粉末シリカは、ヒュームドシリカとしては日本アエロジル社製品のアエロジル50、アエロジル90G、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル200V、アエロジル200CF、アエロジルFAD、アエロジル300、アエロジル300CF、アエロジル380、アエロジルR972、アエロジルR972V、アエロジルR972CF、アエロジルR202、アエロジルR805、アエロジルR812等や、トクヤマ社製品のレオロシール等を選択でき、アモルファスシリカとしては、東ソーシリカ社製品のNipsil、富士シリシア社製品のサイリシア、サイロホービック、DSLジャパン社製品のCarplex、SIPERNAT等を目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
さらに本発明においては、発明の効果を妨げない範囲で上記の他の充填材、防錆剤、界面活性剤、可塑剤、分散剤、硬化促進剤、接着助剤、防腐剤、消泡剤、湿潤剤、着色剤、乳化剤、希釈剤、pH調整剤、粘弾性調整剤、レオロジー調整剤などの添加剤を含ませることができる。特に本発明の重合性封着組成物を螺合部材に適用する場合、適切な充填材と粘弾性調整剤を組み合わせることにより、螺着締結後のゆるみ止め作用を更に向上することができるようになる。
【0033】
以下、実施例により本発明の効果を詳説するが、これら実施例は本発明の態様の限定を意図するものでは無い。
【実施例】
【0034】
実施例にて評価検討を行った、本発明の重合性封着組成物に含まれる構成成分は、以下に示す材料を用いた。それぞれの組成は、表1,2に記載の組成比に従い調製した。なお表中に記載の数値は各成分の添加質量比である。
【0035】
・本発明の(1)マイクロカプセルに包含される(a)成分及びその比較成分は、以下のものを用いた
(a−1):BPE−80N 新中村化学社製品、エトキシ変性(2.3)ビスフェノールA型エポキシジメタクリレート 分子量約452
(a’−1):U−4HA 新中村化学社製品、四官能ウレタン(メタ)アクリレート 分子量約600
(a’−2):A−DCP 新中村化学社製品、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 分子量約304
・本発明の(1)マイクロカプセルに包含される(b)成分及びその比較成分は、以下のものを用いた
(b−1):ライトアクリレート1.6HX−A 共栄社化学社製品、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 分子量約226
(b’−1):IBXA 大阪有機化学社製品、イソボルニルアクリレート 分子量約208
(b’−2):ブレンマーG 日油社製品、グリシジルメタクリレート 分子量約142
(b’−3):BPE−100 新中村化学社製品、エトキシ変性(2.6)ビスフェノールA型エポキシアクリレート、分子量約478
(b’−4):CADURA E10P 三菱化学社製品、ネオデカン酸グリシジルエステル、分子量約228
【0036】
・本発明の(2)バインダー成分及びその比較成分は、以下のものを用いた
(2−1)ニューコートSFK−1000A 新中村化学社製品、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン 固形分約45%、水分約55%
(2’−1)エスレックKW−10 積水化学社製品、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール水溶液 固形分25%、水分約75%、25℃での粘度約4000mPa・s
・本発明の(3)硬化剤成分は、過酸化ベンゾイルの70%水溶液を内容物として含み、尿素−レゾルシン−ホルムアルデヒド反応生成物から成る壁材を殻として10質量%含んでなるマイクロカプセルを用いた
・本発明の(4)水は、イオン交換水を用いた
・本発明の(5)粒径1μm以下の微粉末シリカは、アエロジル200V(日本アエロジル社製品、平均粒径約12nm、比表面積約200m/g(BET法)、親水性のヒュームドシリカ)を用いた
【0037】
上記の各材料は、次の処方によりそれぞれ混合攪拌することで重合性封着組成物を製造した。
[マイクロカプセル(1)の製造方法]
前記(a)、(b)成分及びその比較成分に相当する材料を、表1の各実施例、比較例に記載の質量比で混合し、該混合物90質量部に対しマイクロカプセルの壁材となるメチレンジイソシアネートのビューレット変性体(住友バイエルウレタン社製品、デスモジュールN3200)を10質量部加え混合、攪拌を行った。この混合物を、イソブチレン−マレイン酸共重合体の10%水溶液100質量部中に50質量部添加して混合することで分散させ、酸性条件下攪拌を行い、ここにメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物(日本カーバイド社製品、ニカレヂン)の60%水溶液を滴下、混合攪拌を続けることで(a)、(b)成分を包含するマイクロカプセル(1)を製造した。
【0038】
[ベース液の製造方法]
前記により製造したマイクロカプセルを分散させるためのベースとなる液(以後、本発明中では「ベース液」ともいう)として、分散媒であるイオン交換水(4)中に前記(2)のバインダー成分を20質量部、硬化促進剤としてサッカリンを1.5質量部、チオサリチル酸を3.5質量部、改質剤として前記(5)の微粉末シリカを0.2質量部、レオロジーコントロール剤としてSNシックナーA−803を0.5質量部、それぞれ添加して、ベース液全体が100質量部となるようイオン交換水の質量を調整し、混合攪拌を行った。
【0039】
[重合性封着組成物の製造方法]
前記方法により製造した、(1)の(a)、(b)成分を含むマイクロカプセル100質量部と、前記(3)の硬化剤成分10質量部を、前記ベース液180質量部中に添加し、均一に混合攪拌することで、実施例、比較例での評価に用いるための重合性封着組成物(以後、「組成物」ともいう)を製造した。
【0040】
[重合性封着組成物を塗工した螺合部材の作成方法]
JIS B 1180に適合したSS41製六角ボルト(M10×P1.5)の螺合面を、前記の各組成物液中に浸した後、当該螺合面の先端部のみを清浄な水で洗い、然る後当該ボルトの頭部を上側に保持した状態にて常温で1時間静置し、余分な組成物液を落下させた。これをさらに80℃の恒温槽にて20分間静置することで揮発成分を揮散、乾燥させることにより、螺合面に組成物の被膜を形成したボルト(以後、「被膜形成ボルト」ともいう)を作成した。
【0041】
上記方法により作成した被膜形成ボルトは、以下の試験方法によりその特性を評価した。
[固着力]
前記被膜形成ボルトに平座金(JIS B 1256相当品、M10)を通し、さらにこれに適合するナット(JIS B 1181に適合したSS41製のナット、M10)を30N・mの締付トルクで締結することで、マイクロカプセルの破壊とそれに伴う硬化反応を起こさせ、常温で24時間静置して固着力評価のための試験片を作成した。この試験片のボルト頭部を、ねじ締付け測定機(NST−100NM、日本計測システム社製品)にセットし、ナットをゆるめる方向に回転させ、ナットが初めて動き出した時点のトルク(破壊トルク)を固着力として測定、評価を行った。評価基準は以下の通り。
○:破壊トルクが35N・m以上の値であるものを合格として表記
×:破壊トルクが35N・m未満の値であるものを不合格として表記
【0042】
[耐熱性]
前記固着力評価のための試験片と同様の方法で試験片を作成し、これを100℃の恒温槽に投入した。当該試験片は30日経過後に恒温槽より取り出し、各試験片について固着力を測定することにより評価を行った。評価基準は以下の通り。
○:初期値の80%以上の値であるものを合格として表記
×:初期値の80%に満たないものを不合格として表記
【0043】
[削粉発生]
前記固着力評価で評価を行った各試験片よりナットを取り外し、当該試験片のボルト及びナットの螺合面をそれぞれ目視で観察し、削粉の発生状況を評価した。評価基準は以下の通り。
○:ボルトの螺合面に残存している組成物の被膜の見かけの表面積が初期状態の90%以上である、またはナットの螺合面に付着している組成物の被膜の見かけの表面積が、螺合面全体の10%未満であるものを合格として表記
×:ボルト及びナットの螺合面が上記の状態でないものを不合格として表記
【0044】
[貯蔵安定性]
前記製法により製造した各組成物液を90℃の恒温槽に4時間投入し、これらを常温に戻してからガラス棒で攪拌した後、沈殿凝集物の有無について目視で観察することにより評価を行った。評価基準は以下の通り。
○:沈殿凝集物の発生が認められないものを合格として表記
×:沈殿凝集物の発生が認められたものを不合格として表記
【0045】
前記(a)、(b)成分の種類や組成量比等の影響を見る目的で、当該成分を各種振ることで得たマイクロカプセルを用いて製造した、組成物の特性について評価を行った。各組成物に含まれる(a)、(b)成分ならびにこれらの比較成分の種類、質量比及びこれを含んでなる組成物の特性評価結果は表1に記載した。なお各組成物に用いたベース液に含まれる(2)成分は、前記(2−1)を用いた。
【0046】
【表1】
【0047】
前記成分(2)バインダー成分の影響を見る目的で、当該成分の種類、組成量を各種振って得たベース液を用いて製造した組成物の特性について評価を行った。各組成物に用いたベース液に含まれる(2)成分の種類、固形分の質量比(wt%で表記)、及びこれを含んでなる重合性封着組成物の特性評価結果は表2に記載した。なお各組成物に含まれる(1)マイクロカプセルは、実施例1の組成のものを用いた。
【0048】
【表2】
【0049】
上記実施例に記載の通り、本発明に含まれる重合性封着組成物はその螺着特性において極めて良好な結果を示すことが確認できた。一方で本発明に含まれない重合性封着組成物は、螺着に求められる特性を十分に備えていないことが認められる。例えば比較例1に示した通り、(b)成分の組成量が所定範囲未満のものでは、削粉の発生量が多くなっており、他方同成分の組成量が所定範囲を超過したものでは固着力や耐熱性といった基本的な特性が不十分となってしまう。また(b)成分において所定の化学構造を備えていないものを用いた場合には、比較例3〜6に示した通り、いずれも固着力、耐熱性と削粉低減の両立を達成できなかった。さらに(a)成分に関しても、比較例7,8に示した通り、その組成量が所定範囲内にないもの及び所定の化学構造を備えていないものでは、螺着に求められる特性を発現できず、さらに削粉の発生も低減できないものとなってしまうことが確認でされた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の重合性封着組成物は、使用環境に対する負荷の少ない水系の組成物でありながら、上記実施例に記載の通り良好な螺合封着特性を有し、併せて螺着時に生じる削り粉の少ないものであり、ボルト、ナット、ニップル、プラグ、ソケット、プラグ、エルボ等の螺合部を有する部材に適用することで、封入された油脂、ガス、水等の流体の漏洩を防ぐことができる有用なものである。