(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406503
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】除塵装置および除塵装置の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
E02B 5/08 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
E02B5/08 102Z
E02B5/08 102A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-144460(P2014-144460)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-20583(P2016-20583A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】村川 幸雄
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−222834(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/002604(WO,A1)
【文献】
特開2013−160041(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0206706(US,A1)
【文献】
特開2008−038506(JP,A)
【文献】
特開2008−063890(JP,A)
【文献】
実開昭49−126964(JP,U)
【文献】
実開平04−022519(JP,U)
【文献】
実開昭52−002948(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
E02B 9/04
E03F 1/00−11/00
B01D 23/02
B01D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水路への浸漬と引き上げが繰り返されるスクリーンと、前記スクリーンに付着した塵芥を除去する洗浄手段と、を備える除塵装置であって、
洗浄水を噴出させる噴出口を有し、同じ容量の洗浄水が供給される第1スプレイバーと、第2スプレイバーを備え、
前記第1スプレイバーに形成されている前記噴出口の開口部の面積の総和を、前記第2スプレイバーに形成されている前記噴出口の開口部の面積の総和よりも大きくしたことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記第1スプレイバーと前記第2スプレイバーは、それぞれ別個のポンプに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
前記第1スプレイバーと前記第2スプレイバーは、分岐管を介して単一のポンプに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項4】
流水路への浸漬と引き上げが繰り返されるスクリーンと、前記スクリーンに付着した塵芥を除去する洗浄手段と、を備える除塵装置の前記スクリーンを洗浄する方法であって、
前記洗浄手段から噴出される洗浄水の基準水量と基準噴出圧力を予め定め、
前記基準水量よりも水量が多く、前記基準噴出圧力よりも圧力を低くした洗浄水を噴出する第1洗浄工程と、
前記第1洗浄工程の後、前記基準水量よりも水量が少なく、前記基準噴出圧力よりも圧力を高くした洗浄水を噴出する第2洗浄工程と、を有することを特徴とする除塵装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵装置、およびこの除塵装置を洗浄する方法に係り、特に、回動式のスクリーンを備え、このスクリーンに多量の塵芥が付着する場合に好適な除塵装置、および除塵装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対を成す無端チェーンにかけ渡されたスクリーンを備える除塵装置では、スクリーンに塵芥や海洋性生物が付着するので、スプレイバーに設けられた複数の噴射ノズルから洗浄水を噴出する洗浄手段が設けられている。なお、ここでいうスクリーンとは、バケットタイプの除塵装置や、レーキタイプの除塵装置をも含むものとする。
【0003】
洗浄手段は、スクリーンが水中から水上へ上昇し、塵芥排出位置に来た際に、その背面や前面から洗浄水を吹き付け、塵芥を除去する役割を担う。このような洗浄手段は、例えば特許文献1〜4に開示されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−63890号公報
【特許文献2】特開2001−32239号公報
【特許文献3】特開平8−209657号公報
【特許文献4】実開昭51−137831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示されているような洗浄手段を備えた除塵装置では、スクリーンに付着する塵芥の量が多い場合には、その剥離を効率良く行うことが困難であるという課題がある。例えば、細かな塵芥のみが付着している場合には、噴射ノズルから噴出させる洗浄水を高圧にすることで、その殆どを除去することができる。しかし、クラゲのように、付着面積が広く、重量のある塵芥には、水圧だけでなく、水量を多くして流し落とすという手法が必要となる。このため、スクリーンに対して大小様々な塵芥が多量に付着した場合には、塵芥を洗浄するために、高い水圧で、かつ多量の洗浄水を供給する必要が生じることとなる。
【0006】
しかしながら、この場合、洗浄手段に用いるポンプに大容量なものを採用する必要があり、装置価格の高騰を招くと共に、使用電力の消費量も増大することとなってしまい、現実的ではないという実状がある。
【0007】
そこで本発明では、高圧で多量の洗浄水を噴出するためのポンプを採用するよりも経済性が良好で、かつスクリーンの洗浄を効果的に行うことのできる除塵装置、および除塵装置の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の除塵装置は、流水路への浸漬と引き上げが繰り返されるスクリーンと、前記スクリーンに付着した塵芥を除去する洗浄手段と、を備える除塵装置であって、洗浄水を噴出させる複数の噴出口を有し、洗浄水が供給される第1スプレイバーと、第2スプレイバーを備え、前記第1スプレイバーに形成されている前記噴出口の開口部の面積の総和を、前記第2スプレイバーに形成されている前記噴出口の開口部の面積の総和よりも大きくしたことを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する除塵装置において、前記第1スプレイバーと前記第2スプレイバーは、それぞれ別個のポンプに接続されているようにすることができる。2つのスプレイバーを別個のポンプに接続する構成とすることで、各スプレイバーに供給する洗浄水の容量制御が容易となる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する除塵装置において、前記第1スプレイバーと前記第2スプレイバーは、分岐管を介して単一のポンプに接続されているようにすることもできる。2つのスプレイバーを単一のポンプに接続する構成とすることで、ポンプの設置スペースを抑制することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明の除塵装置の洗浄方法は、流水路への浸漬と引き上げが繰り返されるスクリーンと、前記スクリーンに付着した塵芥を除去する洗浄手段と、を備える除塵装置の前記スクリーンを洗浄する方法であって、前記洗浄手段から噴出される洗浄水の基準水量と基準噴出圧力を予め定め、前記基準水量よりも水量が多く、前記基準噴出圧力よりも圧力を低くした洗浄水を噴出する第1洗浄工程と、前記第1洗浄工程の後、
前記基準水量よりも水量が少なく、前記基準噴出圧力よりも圧力を高くした洗浄水を噴出する第2洗浄工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する除塵装置、および除塵装置の洗浄方法によれば、高圧で多量の洗浄水を噴出するためのポンプを採用するよりも経済性が良好で、かつスクリーンの洗浄を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る除塵装置の構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係るスプレイバーとスクリーンの関係を示す図である。
【
図3】第2の実施形態に係る除塵装置の構成を示す図である。
【
図4】第2の実施形態に係る除塵装置における洗浄装置の配管構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の除塵装置および除塵装置の洗浄方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して、実施形態に係る除塵装置の一例について説明する。
【0015】
除塵装置10は、一般的な構成のもので良く、例えばリンクチェーン12とスプロケット(駆動スプロケット14、従動スプロケット16,18)、及びスクリーン20(
図2参照)を基本として構成され、洗浄手段24が付帯されているものであれば良い。リンクチェーン12は、複数のリンクを無端状に連結されたチェーンである。このような構成のリンクチェーン12は、取水用の水路の幅方向に一対、駆動スプロケット14と、少なくとも1つ(
図1に示す例では2つ)の従動スプロケット16,18に掛け回されるようにして配置されている。
【0016】
実施形態に係る除塵装置10では、リンクチェーン12を介して回動可能とされる複数のスクリーン20(
図2参照)のうちの一部が、水上に引き上げられ、塵芥を取り除かれた後、再び水中に引き込まれるように構成されている。このため、駆動スプロケット14と従動スプロケット16に関しては、例えば、駆動スプロケット14が水路の上部(水上)に配置され、従動スプロケット16が水路の下部(水中)に配置されている。
また、駆動スプロケット14には、これを回転させるためのモータ等のアクチュエータを備えた駆動ユニット22が接続されている。
【0017】
洗浄手段24は、水上へ引き上げられたスクリーン20に対して所定の水圧の洗浄水を吹き付け、スクリーン20に付着した塵芥を剥離除去する手段である。実施形態に係る洗浄手段24は、少なくとも、第1洗浄ポンプ26と第2洗浄ポンプ28、第1スプレイバー30、第2スプレイバー32、およびトラフ34が備えられている。第1洗浄ポンプ26、および第2洗浄ポンプ28は、除塵装置10の下流側の水路に設けられ、水路から吸い上げた水をそれぞれ、第1スプレイバー30、および第2スプレイバー32へと圧送する。なお、第1洗浄ポンプ26と第2洗浄ポンプ28の容量、揚程は、同じものとすれば良い。
【0018】
第1スプレイバー30、第2スプレイバー32は、それぞれ
図2に示すように、スクリーン20における塵芥が付着する面(水路上流側に対向することとなる面)の裏側から洗浄水を噴射できるように配置される。
図2に示す例は、網型のスクリーンを採用した場合を想定したものであり、スクリーン20の裏側から洗浄水を当てることで、表面に付着した塵芥の除去率を高めることができるからである。なお、
図2に示す例では、説明の理解を助けるために、第1スプレイバー30、第2スプレイバー32と、スクリーン20との縮尺比をデフォルメしている。
【0019】
第1スプレイバー30と、第2スプレイバー32の構成上の違いは、噴射ノズルを構成する孔30a,32aの直径にある。すなわち、第1スプレイバー30における噴射ノズルを構成する孔30aの直径φ1は、第2スプレイバー32における噴射ノズルを構成する孔32aの直径φ2よりも大きくなるように構成されている。このような構成とすることにより、第1スプレイバー30から噴出される洗浄水は、噴出圧は低めだが、流量を多くすることができる。このため、クラゲなどの接地面積が大きく、重量の重いゴミなどを効果的に洗い落すことが可能となる。
【0020】
一方、第2スプレイバー32における噴射ノズルを構成する孔32aの直径φ2は、第1スプレイバー30における噴射ノズルを構成する孔30aの直径よりも小さくなるように構成されている。この場合において、第1スプレイバー30と噴射ノズルを構成する孔の数が同じであるとすると、第2スプレイバー32から噴出される洗浄水は、第1スプレイバー30からの洗浄水に比べ、流量は少ないが、噴出圧が高いものとなる。この場合、細かな塵芥を洗い流す際に高い効果を発揮することとなる。
【0021】
また、洗浄対象物を限定した2つのスプレイバー(第1スプレイバー30、第2スプレイバー32)を設ける構成とすることにより、流水量が多く噴出圧力が高い2つのスプレイバーを設ける場合よりも、使用するポンプの総容量を小さく抑えることが可能となる。このため、高圧で多量の洗浄水を噴出するためのポンプを採用するよりも経済性が良好で、かつスクリーン20の洗浄を効果的に行うことが可能となる。
【0022】
トラフ34は、第1スプレイバー30、および第2スプレイバー32による洗浄位置よりも下側に配置され、第1スプレイバー30、第2スプレイバー32からの洗浄水により剥離除去された塵芥を回収する。なお、回収された塵芥は、除塵装置10の外部へと搬送された後に処理される。
【0023】
上述したように、本実施形態に係る除塵装置10は、塵芥が付着したスクリーン20の洗浄(スクリーン20からの塵芥の除去)を2段階で行うようにしている。具体的には、第1スプレイバー30を介した第1洗浄工程と、第2スプレイバー32を介した第2洗浄工程である。ここで、第1洗浄工程と第2洗浄工程とでは、噴出させる洗浄水の噴出量、および噴出圧力を異ならせるようにしており、両者の平均値をそれぞれ、基準水量、基準噴出圧力と定めることとする。
【0024】
第1洗浄工程では、洗浄水の噴出量を基準水量よりも多くし、噴出圧力を基準噴出圧力よりも低くしている。このような手段を採ることで、定められた吐出容量のポンプにて、多くの洗浄水を噴出させることができる。よって、スクリーン20に付着したクラゲなどの接地面積が大きく、重量の重いゴミを効果的に洗い落すことが可能となる。一方、第2洗浄工程では、洗浄水の噴出量を基準水量よりも少なくし、噴出圧力を基準噴出圧力よりも高くしている。このような手段を採ることで、定められた吐出容量のポンプにて、洗浄水を高い圧力で噴出させることができる。よって、スクリーン20に付着した細かな塵芥を効果的に洗い落すことが可能となる。
【0025】
このように、洗浄水の容量を優先した第1洗浄工程と、噴出圧力を優先した第2洗浄工程とを順次行うようにすることで、スクリーン20に対して、大小様々な塵芥が混在した状態で多量に付着している場合であっても、効率的に除去することができる。また、洗浄に使用するポンプの総容量は、洗浄水の噴出量を大量とし、かつ高圧力とする場合に比べ、小さなものとすることができ、経済的である。
【0026】
次に、
図3を参照して第2の実施形態に係る除塵装置について、説明する。
本実施形態に係る除塵装置10Aは、その殆どの構成を上述した第1の実施形態に係る除塵装置10と同一としている。よって、その機能を同一とする箇所には図面に同一符号を付して、その詳細な説明は省略することとする。
【0027】
本実施形態に係る除塵装置10Aは、第1の実施形態において、第1スプレイバー30と第2スプレイバー32に対してそれぞれ個別に接続されていたポンプ(第1洗浄ポンプ26、第2洗浄ポンプ28)を、2つのポンプの容量を賄うことのできる単一の洗浄ポンプ36としたことを特徴とする。
【0028】
ここで、第1スプレイバー30と第2スプレイバー32にて洗浄ポンプ36を共有した場合、単純に配管を分岐させただけでは、噴出時の抵抗が少ない第1スプレイバー30側への洗浄水の流入割合が多くなってしまい、第2スプレイバー32の噴出圧力を上昇させることが困難となってしまう。
【0029】
このため、本実施形態では
図4に示すように、第1スプレイバー30への分岐管に、第2スプレイバー32の噴出抵抗と同じ通過抵抗を持つように調節可能な流量調整弁38を配置し、流量調整弁38の下流側に、小容量のバッファタンク40を備えるようにしている。このような構成とすることで、第2スプレイバー32から噴出させる洗浄水の噴出圧力を高く保つことができる。また、バッファタンク40を備えるようにすることで、第1スプレイバー30から噴出させる洗浄水の流量を安定させることが可能となる。
【0030】
このような構成とした場合であっても、上述した第1の実施形態に係る除塵装置10と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
10,10A………除塵装置、12………リンクチェーン、14………駆動スプロケット、16………従動スプロケット、18………従動スプロケット、20………スクリーン、22………駆動ユニット、24………洗浄手段、26………第1洗浄ポンプ、28………第2洗浄ポンプ、30………第1スプレイバー、32………第2スプレイバー、34………トラフ、36………洗浄ポンプ、38………流量調整弁、40………バッファタンク。