(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<1.コントロールバルブ装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るコントロールバルブ装置1の概略断面図である。このコントロールバルブ装置1は、自動車などの輸送機器に搭載され、輸送機機内の自動変速機2にオイル(オートマチック・トランスミッション・フルード、ATF)を供給することにより、自動変速機2の駆動を制御する装置である。
図1に示すように、コントロールバルブ装置1は、アルミダイカスト等で形成されたバルブボディ11と、電磁弁20とを有する。
【0012】
バルブボディ11の内部には、オイルの流路となる複数の油路12が形成されている。複数の油路12は、バルブボディ11の内部において、複雑に入り組んでいる。ただし、
図1では、理解を容易とするために、複数の油路12のうちの一部のみを、概念的に図示している。
図1の例では、自動変速機2の下面側に、コントロールバルブ装置1が取り付けられている。油路12は、バルブボディ11の下面に設けられたオイル導入口13と、バルブボディ11の上面に設けられたオイル受渡口14との間に、形成されている。
【0013】
本実施形態の電磁弁20は、後述するスプール42を備えた、いわゆるスプール弁である。電磁弁20は、本体部21とノズル部22とを有する。ノズル部22は、本体部21から下方へ向けて、略円筒状に突出する。ノズル部22の側面には、オイル入力ポート411およびオイル出力ポート412が設けられている。電磁弁20は、ノズル部22内に配置されたスプール42を動作させることにより、オイル入力ポート411とオイル出力ポート412との連通状態を切り替える。
【0014】
電磁弁20のノズル部22は、バルブボディ11内において、油路12の経路途中に介挿される。以下では、油路12のうち、ノズル部22よりも入力側の部分を、第1油路121と称する。また、油路12のうち、ノズル部22よりも出力側の部分を、第2油路122と称する。第1油路121は、バルブボディ11のオイル導入口13と、ノズル部22のオイル入力ポート411とを繋ぐ。第2油路122は、ノズル部22のオイル出力ポート412と、バルブボディ11のオイル受渡口14とを繋ぐ。
【0015】
コントロールバルブ装置1の使用時には、図示しないオイルポンプによって加圧されたオイルが、オイル導入口13から第1油路121内へ導入される。また、第2油路122と自動変速機2との間で、オイル受渡口14を介してオイルが流動する。
【0016】
また、このコントロールバルブ装置1は、オイルの圧力および温度を計測するセンサ15を有する。センサ15は、電磁弁20のノズル部22よりも出力側の第2油路122内において、オイルの圧力および温度を計測する。本実施形態では、オイルの圧力とオイルの温度とが、ユニット化された単一のセンサ15で計測される。ただし、オイルの圧力を計測するセンサと、オイルの温度を計測するセンサとが、別々に設けられていてもよい。
【0017】
<2.電磁弁の構成>
続いて、電磁弁20の構造について、より詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜のため、電磁弁20の中心軸9と平行な方向を「軸方向」、電磁弁20の中心軸9に直交する方向を「径方向」、電磁弁20の中心軸9を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。
【0018】
図2は、電磁弁20の断面図である。この電磁弁20は、ソレノイド32に供給される駆動電流に応じて、開度を連続的に変化させることができる、いわゆる比例電磁弁である。上述の通り、本実施形態の電磁弁20は、本体部21とノズル部22とを有する。
【0019】
図2に示すように、本体部21は、ケーシング31、ソレノイド32、コア33、プランジャ34、およびロッド35を有する。ケーシング31は、略円筒形状の外壁部311を有する。ソレノイド32、コア33、プランジャ34およびロッド35は、当該外壁部311の内側に収容される。
【0020】
ソレノイド32は、中心軸9の周囲に巻き回された導線により構成される。コア33の少なくとも一部分、プランジャ34、およびロッド35は、ソレノイド32の径方向内側に位置する。プランジャ34は、コア33の上方に配置されている。コア33の上面とプランジャ34の下面とは、軸方向に対向する。また、コア33およびプランジャ34の材料には、鉄などの磁性体が用いられる。
【0021】
ロッド35は、中心軸9に沿って延びる略円柱状の部材である。プランジャ34とロッド35とは、互いに固定されている。また、ロッド35は、プランジャ34の上下に配置された一対の軸受36に支持されている。このため、プランジャ34およびロッド35は、一体として、軸方向に移動可能となっている。
【0022】
ノズル部22は、スリーブ41、スプール42、およびスプリング43を有する。スリーブ41は、中心軸9に沿って延びる略円筒状の部材である。スリーブ41の下端部は、円板状の底部材410により閉塞されている。スリーブ41には、オイル入力ポート411、オイル出力ポート412、2つのフィードバックポート413、および排出ポート414が設けられている。これら各ポート411〜414は、スリーブ41の内部空間と、スリーブ41の外部の油路とを連通する。
【0023】
スプール42は、スリーブ41の内部に収容されている。本実施形態のスプール42は、スプール軸420、第1弁体421、第2弁体422、および第3弁体423を有する。スプール軸420は、中心軸9に沿って延びる円柱状の部材である。各弁体421〜423は、それぞれ、スプール軸420の周囲に固定されるとともに、スリーブ41の内周面に接触する。
【0024】
ロッド35の下端部と、スプール42の上端部とは、互いに接触する。また、スプール42の下端部と、底部材410との間には、弾性体であるスプリング43が、軸方向に圧縮された状態で、介挿されている。したがって、スプール42およびロッド35は、スプリング43から、常に上向きの圧力を受ける。
【0025】
ソレノイド32に駆動電流が供給されていないときには、プランジャ34、ロッド35、およびスプール42は、スプリング43からの圧力によって、上側へ移動する。一方、ソレノイド32に駆動電流を供給すると、コア33が励磁されて、プランジャ34がコア33に引き付けられる。その結果、プランジャ34、ロッド35、およびスプール42が、下側へ移動する。また、ロッド35が上下に移動すると、ロッド35に固定された3つの弁体421〜423の位置も、上下に移動する。これにより、オイル入力ポート411からオイル出力ポート412へと流れるオイルの流量が変化する。
【0026】
<3.電磁弁制御装置の構成>
続いて、上記の電磁弁20を動作制御する電磁弁制御装置50について、説明する。電磁弁制御装置50は、例えば、複数の電子部品が搭載された回路基板によって、実現される。ただし、電磁弁制御装置50の機能の一部または全部を、マイクロコントローラや、汎用のコンピュータによって、実現してもよい。
【0027】
図3は、電磁弁制御装置50の構成を示したブロック図である。
図3に示すように、本実施形態の電磁弁制御装置50は、領域設定部51、マップ記憶部510、圧力データ算出部52、振動判定部53、圧力ヒステリシス算出部54、ヒステリシス判定部55、駆動周波数調整部56、および電磁弁駆動回路57を有する。
【0028】
領域設定部51は、電磁弁20の出力側において生じる油振およびヒステリシスの各事象に関して、許容範囲外となる条件を設定する。領域設定部51には、コントロールバルブ装置1および自動変速機2が搭載される自動車等の車両から、CAN(Controller Area Network)等の車内通信手段を介して、車両情報Cが入力される。車両情報Cには、例えば、車両の種類、自動変速機2の種類、エンジンの回転数等の情報が含まれる。領域設定部51は、入力された車両情報Cに基づいて、油振に関して許容できない条件の範囲である圧力データ範囲外領域S511と、ヒステリシスに関して許容できない条件の範囲である圧力ヒステリシス量範囲外領域S512と、を設定する。
【0029】
マップ記憶部510には、複数の振動マップMvと、複数のヒステリシスマップMhとが、記憶されている。振動マップMvおよびヒステリシスマップMhは、それぞれ、エンジンの回転数とオイルの温度とに対応する複数の閾値の情報を有している。具体的には、振動マップMvでは、エンジンの回転数およびオイルの温度の組み合わせに対して、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、および周期閾値T0の組み合わせが、一対一に対応付けられている。第2圧力閾値ΔP2は、第1圧力閾値ΔP1よりも大きい値である。ヒステリシスマップMhでは、エンジンの回転数およびオイルの温度の組み合わせに対して、ヒステリシス閾値Ph0が、一対一に対応付けられている。
【0030】
本実施形態では、このような振動マップMvおよびヒステリシスマップMhが、車両の種類および自動変速機2の種類に応じて、複数用意されている。領域設定部51は、外部から入力された車両情報Cを参照し、当該車両情報Cに適合する振動マップMvおよびヒステリシスマップMhを、マップ記憶部510から読み出す。
【0031】
また、領域設定部51は、センサ15からオイルの温度を示す油温情報S151を取得する。領域設定部51は、マップ記憶部510から読み出した振動マップMvおよびヒステリシスマップMhを参照し、車両情報Cに含まれるエンジンの回転数と、センサ15から取得した油温情報S151とに対応する、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、周期閾値T0、およびヒステリシス閾値Ph0を決定する。そして、領域設定部51は、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、および周期閾値T0により設定される圧力データ範囲外領域S511を、振動判定部53へ出力する。また、領域設定部51は、ヒステリシス閾値Ph0により設定される圧力ヒステリシス量範囲外領域S512を、ヒステリシス判定部55へ出力する。
【0032】
圧力データ算出部52は、センサ15から取得したオイルの圧力値S152を解析し、圧力値S152の変動幅ΔPと、圧力値S152の変動周期Tとを算出する。そして、当該変動幅ΔPおよび変動周期Tを含む圧力データS52を、振動判定部53へ出力する。
【0033】
振動判定部53は、圧力データ算出部52から入力される圧力データS52が、圧力データ範囲外領域S511に含まれるか否かを判断する。具体的には、圧力値S152の変動幅ΔPが、ΔP1<ΔPの条件を満たし、かつ、圧力値S152の変動周期Tが、T<T0の条件を満たす場合に、圧力データS52が、第1の所定範囲から外れた圧力データ範囲外領域S511に含まれると判断する。すなわち、油振が許容範囲外であると判断する。この場合、振動判定部53は、振動修正信号S53を、駆動周波数調整部56へ出力する。一方、上記の条件を満たしていなければ、振動判定部53は、油振が許容範囲内であると判断する。したがって、その場合には、駆動周波数調整部56へ振動修正信号S53を出力しない。
【0034】
圧力ヒステリシス算出部54は、センサ15から取得したオイルの圧力値S152を解析し、圧力ヒステリシス量Phを算出する。圧力ヒステリシス量Phは、例えば、オイルの圧力値S152を経時的にモニタしておき、電磁弁20への駆動電流S57の値が上昇するときのオイルの圧力値S152と、電磁弁20への駆動電流S57の値が下降するときのオイルの圧力値S152とを、同一駆動電流値において比較して、両者の差分を圧力ヒステリシス量Phとする。圧力ヒステリシス算出部54は、算出した圧力ヒステリシス量Phを、ヒステリシス判定部55へ出力する。
【0035】
なお、圧力ヒステリシス算出部54は、駆動電流値の上昇時における圧力値S152と予め設定された基準値との差分を、圧力ヒステリシス量Phとしてもよい。また、圧力ヒステリシス算出部54は、駆動電流値の下降時における圧力値S152と予め設定された基準値との差分を、圧力ヒステリシス量Phとしてもよい。
【0036】
ヒステリシス判定部55は、圧力ヒステリシス算出部54から入力される圧力ヒステリシス量Phが、圧力ヒステリシス量範囲外領域S512に含まれるか否かを判断する。具体的には、圧力ヒステリシス量Phが、Ph>Ph0の条件を満たす場合に、圧力ヒステリシス量Phが、第2の所定範囲から外れた圧力ヒステリシス量範囲外領域S512に含まれると判断する。すなわち、オイルの圧力ヒステリシスが、許容範囲外であると判断する。この場合、ヒステリシス判定部55は、ヒステリシス修正信号S55を、駆動周波数調整部56へ出力する。一方、上記の条件を満たしていなければ、ヒステリシス判定部55は、オイルの圧力ヒステリシスが許容範囲内であると判断する。したがって、その場合には、駆動周波数調整部56へヒステリシス修正信号S55を出力しない。
【0037】
駆動周波数調整部56は、振動判定部53およびヒステリシス判定部55の判定結果に基づいて、駆動電流の周波数である駆動周波数fを調整する。具体的には、振動判定部53から振動修正信号S53が入力されると、駆動周波数調整部56は、駆動周波数fを、その時点における駆動周波数fよりも大きくする。ただし、駆動周波数fは、一定の周波数上限値f1を超えない範囲で設定される。また、ヒステリシス判定部55からヒステリシス修正信号S55が入力されると、駆動周波数調整部56は、駆動周波数fを、その時点における駆動周波数fよりも小さくする。ただし、駆動周波数fは、一定の周波数下限値f2を下回らない範囲で設定される。そして、駆動周波数調整部56は、調整後の駆動周波数fの情報を含む駆動周波数指令信号S56を、電磁弁駆動回路57へ出力する。
【0038】
電磁弁駆動回路57は、駆動周波数指令信号S56に基づいて、駆動電流S57を生成する。電磁弁駆動回路57は、駆動周波数指令信号S56により指定される駆動周波数fと、別途指定される駆動電流値とに基づいて、パルス状の駆動電流(PWM信号)を生成する。そして、電磁弁駆動回路57は、生成した駆動電流S57を、電磁弁20に印加する。電磁弁20のソレノイド32に駆動電流S57が供給されると、その駆動電流値に応じて電磁弁20のスプール42が移動する。これにより、自動変速機2へ供給されるオイルの量が制御される。
【0039】
<4.駆動周波数調整処理の流れ>
続いて、上記の電磁弁制御装置50において、駆動周波数を調整する処理の流れについて説明する。
図4は、コントロールバルブ装置1の駆動開始時に行われる初動処理の流れを示したフローチャートである。
図5および
図6は、コントロールバルブ装置1の駆動中に繰り返し行われる定期処理の流れを示したフローチャートである。
【0040】
本実施形態の電磁弁制御装置50は、コントロールバルブ装置1の駆動開始時に、まず、
図4の初動処理を行う。その後、電磁弁制御装置50は、コントロールバルブ装置1の駆動中に、
図5および
図6の定期処理を、所定の間隔で繰り返し行う。定期処理の間隔は、例えば、2[msec]とすればよい。
【0041】
図4に示すように、初動処理では、まず、電磁弁制御装置50が、車内通信信号を受信する(ステップST101)。領域設定部51は、当該車内通信信号から、車両の種類、自動変速機2の種類、およびエンジンの回転数を含む車両情報Cを取得する(ステップST102)。
【0042】
次に、領域設定部51は、車両情報Cに含まれる車両の種類および自動変速機2の種類を参照し、それらに適合する振動マップMvおよびヒステリシスマップMhを、マップ記憶部510から読み出す。そして、領域設定部51は、マップ記憶部510から読み出した振動マップMvに基づいて、圧力データ範囲外領域S511を設定する(ステップST103)。圧力データ範囲外領域S511の設定の際には、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、および周期閾値T0が、それぞれ設定される。また、領域設定部51は、マップ記憶部510から読み出したヒステリシスマップMhに基づいて、圧力ヒステリシス量範囲外領域S512を設定する(ステップST104)。圧力ヒステリシス量範囲外領域S512の設定の際には、ヒステリシス閾値Ph0が設定される。
【0043】
設定された圧力データ範囲外領域S511は、領域設定部51から振動判定部53へ出力される。また、設定された圧力ヒステリシス量範囲外領域S512は、領域設定部51からヒステリシス判定部55へ出力される。
【0044】
続いて、定期処理について説明する。
図5に示すように、定期処理では、まず、コントロールバルブ装置1内のセンサ15が、第2油路122におけるオイルの圧力値を検出する。そして、電磁弁制御装置50が、センサ15から圧力値S152を受信する(ステップST201)。
【0045】
次に、電磁弁制御装置50は、圧力値S152の変動幅ΔPおよび変動周期Tを含む圧力データS52を算出する。そして、当該圧力データS52が、ステップST103において設定された圧力データ範囲外領域S511に含まれるか否かを判断する。具体的には、以下の処理を行う。
【0046】
まず、圧力データ算出部52は、ステップST201において受信した圧力値S152を解析して、圧力値S152の変動幅ΔPを算出する(ステップST202)。このステップST202では、例えば、圧力値S152の微分値がゼロとなる時点間における圧力値S152の差分を、圧力値S152の変動幅ΔPとすればよい。ただし、他の計算方法で、圧力値S152の変動幅ΔPを差出してもよい。
【0047】
続いて、振動判定部53は、圧力値S152の変動幅ΔPが、予め設定された振動閾値ΔP0よりも大きいか否かを判定する(ステップST203)。ここで、振動閾値ΔP0は、第1圧力閾値ΔP1よりも小さい閾値であり、電磁弁制御装置50内に、事前に設定される。変動幅ΔPが振動閾値ΔP0以下の場合、油振はほとんど生じていない。このため、ΔP≦ΔP0の場合には(ステップST203においてNo)、油振の有無に関する他の判断処理(ステップST204〜ST206)を省略して、
図5中の分岐Aへ進む。
【0048】
一方、ΔP>ΔP0の場合には(ステップST203においてYes)、次に、圧力データ算出部52が、ステップST201において受信した圧力値S152を解析して、圧力値S152の変動周期Tを算出する(ステップST204)。このステップST204では、例えば、圧力値S152の微分値がゼロとなる時点の時間間隔を、圧力値S152の変動周期Tとすればよい。ただし、他の計算方法で、圧力値S152の変動周期Tを差出してもよい。
【0049】
続いて、振動判定部53は、圧力値S152の変動周期Tが周期閾値T0よりも小さいか否かを判定する(ステップST205)。圧力値S152の変動周期Tが周期閾値T0以上の場合は、オイルの圧力変化が緩やかであるため、当該油振による弊害が起きにくい。このため、T≧T0の場合には(ステップST205においてNo)、圧力データS52が圧力データ範囲外領域S511に含まれないと判断する。したがって、次のステップST206の処理を省略して、
図5中の分岐Aへ進む。
【0050】
一方、T<T0の場合には(ステップST205においてYes)、次に、振動判定部53が、圧力値S152の変動幅ΔPが第1圧力閾値ΔP1よりも大きいか否かを判定する(ステップST206)。圧力値S152の変動幅ΔPが第1圧力閾値ΔP1以下の場合は、油振の振幅が小さいため、当該油振による弊害が起きにくい。このため、ΔP≦ΔP1の場合には(ステップST206においてNo)、圧力データS52が圧力データ範囲外領域S511に含まれないと判断して、
図5中の分岐Aへ進む。
【0051】
一方、ΔP>ΔP1の場合には、油振の周期が短く、かつ、油振の振幅が大きいため、油振を抑制する必要があると判断する。すなわち、圧力データS52が圧力データ範囲外領域S511に含まれると判断して、
図5中の分岐Bへ進む。
【0052】
図6に移る。分岐Bへ進んだ場合、振動判定部53は、まず、圧力値S152の変動幅ΔPが、第2圧力閾値ΔP2よりも大きいか否かを判定する(ステップST207)。圧力値S152の変動幅ΔPが、第2圧力閾値ΔP2よりも大きい場合、油振の振幅が大き過ぎるため、駆動周波数を多少大きくしても油振を抑制する効果が得られにくい。このため、ΔP>ΔP2の場合には(ステップST207においてYes)、油振が制御不能と判断する。この場合、振動判定部53は、駆動周波数調整部56に対して振動修正信号S53を入力しない。すなわち、電磁弁制御装置50は、現状の駆動周波数fを維持して、次回の定期処理を待つ。
【0053】
一方、圧力値S152の変動幅ΔPが、第2圧力閾値ΔP2以下である場合、油振は制御可能である。このため、ΔP≦ΔP2の場合には(ステップST207においてNo)、振動判定部53は、駆動周波数調整部56へ振動修正信号S53を出力する。駆動周波数調整部56は、振動修正信号S53が入力されると、目標周波数foを現在の駆動周波数fよりも大きいfo=f+Δfに変更する(ステップST208)。そして、ステップST212へと進む。なお、Δfは、駆動周波数fの変更量として、予め電磁弁制御装置50内に設定されている。
【0054】
一方、分岐Aへ進んだ場合は、次に、圧力ヒステリシス算出部54が、ステップST201において受信した圧力値S152を解析して、圧力ヒステリシス量Phを算出する(ステップST209)。そして、ヒステリシス判定部55は、圧力ヒステリシス量Phがヒステリシス閾値Ph0よりも大きいか否かを判断する(ステップST210)。
【0055】
圧力ヒステリシス量Phがヒステリシス閾値Ph0以下の場合は、オイルの圧力ヒステリシスによる弊害が起きにくい。このため、Ph≦Ph0の場合には(ステップST210においてNo)、圧力ヒステリシス量Phが圧力ヒステリシス量範囲外領域S512に含まれないと判断する。この場合、ヒステリシス判定部55は、駆動周波数調整部56に対してヒステリシス修正信号S55を入力しない。すなわち、電磁弁制御装置50は、現状の駆動周波数fを維持して、次回の定期処理を待つ。
【0056】
一方、Ph>Ph0の場合には(ステップST210においてYes)、オイルの圧力ヒステリシスを抑制する必要があると判断する。すなわち、圧力ヒステリシス量Phが圧力ヒステリシス量範囲外領域S512に含まれると判断する。この場合、ヒステリシス判定部55は、駆動周波数調整部56へヒステリシス修正信号S55を出力する。駆動周波数調整部56は、ヒステリシス修正信号S55が入力されると、目標周波数foを現在の駆動周波数fよりも小さいfo=f−Δfに変更する(ステップST211)。
【0057】
なお、本実施形態では、ステップST208における駆動周波数fの変更量Δfと、ステップST211における駆動周波数fの変更量Δfとを、同一の値としているが、ステップST208とステップST212とで、駆動周波数fの変更量を相違させてもよい。
【0058】
続いて、駆動周波数調整部56は、ステップST208またはステップST211で変更された目標周波数foが、所定の周波数上限値f1よりも大きいか否かを判断する(ステップST212)。そして、fo>f1の場合(ステップST212においてYes)、駆動周波数調整部56は、周波数上限値f1を新たな駆動周波数fとして設定し(ステップST213)、次回の定期処理を待つ。これにより、駆動周波数fが過度に高くなることを防止する。
【0059】
一方、fo≦f1の場合(ステップST212においてNo)、駆動周波数調整部56は、さらに、目標周波数foが、所定の周波数下限値f2よりも小さいか否かを判断する(ステップST214)。そして、fo<f2の場合(ステップST214においてYes)、駆動周波数調整部56は、周波数下限値f2を新たな駆動周波数fとして設定し(ステップST215)、次回の定期処理を待つ。これにより、駆動周波数fが過度に低くなることを防止する。
【0060】
また、fo≧f2の場合(ステップST214においてNo)、駆動周波数調整部56は、目標周波数foを新たな駆動周波数fとして設定し(ステップST216)、次回の定期処理を待つ。
【0061】
以上の定期処理により設定された駆動周波数fに基づいて、駆動周波数調整部56は、電磁弁駆動回路57に駆動周波数指令信号S56を出力する。そして、電磁弁駆動回路57は、駆動周波数fを有するパルス状の駆動電流S57を、電磁弁20へ出力する。
【0062】
このような定期処理を繰り返せば、制御対象となる自動変速機2の種類、車両の種類、エンジンの回転数などの環境条件に応じて、電磁弁20の出力側における油振およびヒステリシスを、ともに許容範囲内に抑えることができる。
【0063】
<5.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0064】
上記の実施形態では、ステップST203において、圧力値S152の変動幅ΔPを振動閾値ΔP0と比較し、圧力値S152の変動幅ΔPが十分小さい場合にステップST204〜ST206の処理を省略した。このようにすれば、電磁弁制御装置50における処理の効率を向上させることができる。しかしながら、ステップST203の判断処理は、省略してもよい。ステップST203を省略した場合であっても、駆動周波数fの調整結果は、ステップST203を行った場合と同一となる。
【0065】
また、上記の実施形態では、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、周期閾値T0、およびヒステリシス閾値Ph0を、いずれも初動処理において設定していた。しかしながら、これらの閾値は、定期処理において、油温情報やエンジンの回転数の変化を考慮しながら設定してもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、圧力データS52が圧力データ範囲外領域S511に含まれるか否かを判断した後に、圧力ヒステリシス量Phが圧力ヒステリシス量範囲外領域S512に含まれるか否かを判断していた。しかしながら、これらの順序は逆であってもよい。すなわち、圧力ヒステリシス量Phが圧力ヒステリシス量範囲外領域S512に含まれるか否かを判断した後に、圧力データS52が圧力データ範囲外領域S511に含まれるか否かを判断してもよい。
【0067】
また、電磁弁の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。