特許第6406612号(P6406612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406612
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】超電導線材の臨界電流測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   G01N27/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-150534(P2014-150534)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-24152(P2016-24152A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】小西 昌也
(72)【発明者】
【氏名】山口 高史
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−504748(JP,A)
【文献】 特開2009−270916(JP,A)
【文献】 特開2007−178340(JP,A)
【文献】 米国特許第06841988(US,B1)
【文献】 特開昭64−059169(JP,A)
【文献】 特開2007−287396(JP,A)
【文献】 米国特許第06034527(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/10
27/14−27/24
H01B 12/00−12/16
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材の臨界電流を4端子法により測定する超電導線材の臨界電流測定装置であって、
液体冷媒が貯蔵されている冷却槽と、
前記冷却槽の前記液体冷媒中に位置する前記超電導線材の電圧を測定するための1対の電圧電極と、
前記1対の電圧電極より外側に設けられ、前記超電導線材に電流を流すための1対の電流電極と、
前記超電導線材を、前記冷却槽の上方から前記液体冷媒内に搬入し、水平方向に方向転換させて搬送した後、上方に方向転換させて前記冷却槽から搬出する搬送機構と
を備え、
前記冷却槽内から立ち上った搬入パイプが設けられており、
前記搬送機構が、前記超電導線材を前記搬入パイプ内部に通過させて前記冷却槽内に搬入するように構成されており、
さらに、前記搬入パイプ内の上部における前記超電導線材の温度が、その周囲雰囲気の露点よりも高い温度に維持されるように構成されている超電導線材の臨界電流測定装置。
【請求項2】
前記搬入パイプ内の上部における前記超電導線材の温度が、その周囲雰囲気の露点よりも高い温度に維持されるように、前記搬入パイプの内部を加熱するパイプ加熱ヒーターを備えている請求項1に記載の超電導線材の臨界電流測定装置。
【請求項3】
前記冷却槽内から立ち上った搬出パイプがさらに設けられており、
前記搬送機構が、前記超電導線材を前記搬出パイプ内部に通過させて前記冷却槽内から搬出されるように構成されている請求項1または2に記載の超電導線材の臨界電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材の臨界電流を測定する超電導線材の臨界電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材における臨界電流Icの測定方法としては、通常、4端子法が採用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図2は、4端子法によるIcの測定に際して使用される従来の超電導線材の臨界電流測定装置21を模式的に示す図である。
【0004】
図2において、8はテープ状の超電導線材であり、24は超電導線材8の送り出し機構であり、25は巻取り機構である。そして、26は送り出し側のプーリーであり、27は巻取り側のプーリーである。また、2は冷却槽であり、液体冷媒である液体窒素9aが貯蔵されている。
【0005】
また、3a、4aは超電導線材8に電流を流すために電源(図示せず)と接続して設けられた送り出し側および巻取り側の電流電極であり、5a、6aは超電導線材8の電圧を測定するための電圧電極である。
【0006】
以上のような構成の下、送り出し機構24から巻き出されてプーリー26を通って水平方向に搬送された超電導線材8は、冷却槽2の液体窒素9aに浸漬されたまま電流電極3aおよび電圧電極5a、電圧電極6aおよび電流電極4aの順に搬送された後、プーリー27を通って上方に搬送され巻取り機構25で巻き取られるようになっている。
【0007】
次に、上記した超電導線材の臨界電流測定装置を用いたIcの測定方法につき説明する。
【0008】
まず、送り出し機構24、巻取り機構25、さらには送り出し側のプーリー26、巻取り側のプーリー27を所定量回転させて、超電導線材8の測定対象箇所を、送り出し側の電流電極3a、電圧電極5a、巻取り側の電流電極4a、電圧電極6aの下方に位置させる。
【0009】
この状態で、超電導線材8と各電極3a、5a、4a、6aの間の導通を取り、送り出し側の電流電極3aから巻取り側の電流電極4aに電流を流し、徐々に電流を上げていく。そして、電圧電極5a、6aで発生する電圧を電圧計によりモニタし、予め設定した閾値を超えたところで、電流を流すことを停止する。そして、事前に定義した臨界電流における発生電圧から臨界電流値を求める。
【0010】
当該箇所の測定が終了すると、送り出し機構24、巻取り機構25、送り出し側のプーリー26、巻取り側のプーリー27を再び所定量回転させて超電導線材8を送り出し、次の測定対象の箇所で、上記と同様の操作を繰り返して測定を行う。
【0011】
しかしながら、電流電極3a、4aと超電導線材8との間には接触抵抗(以下、単に「抵抗」ともいう)があり、超電導線材8が平坦でない場合や、特に、低温の液体窒素を用いることにより形成された氷粒などが電流電極3a、4aと超電導線材8との間に挟まった場合などには、電流電極3a、4aと超電導線材8との接触が不十分となり、電流電極3a、4aと超電導線材8との間の抵抗が大きくなる。
【0012】
電流電極3a、4aと超電導線材8との間の抵抗が大きい状態で、そのままIc測定のための電流を電流電極3a、4a間に流すと、抵抗により発熱が起こり、電流電極3a、4aや、電流電極3a、4aに接する箇所の超電導線材8などが温度上昇する。
【0013】
温度が上昇すると、電流電極3a、4aに接する箇所で超電導線材8のIcが低下して、超電導線材8の電流電極3a、4aに接する箇所にも抵抗が生じる。この新たに生じた抵抗によりさらに発熱が起こり、前記した電流電極3a、4aや、電流電極3a、4aに接する箇所の超電導線材8などの温度上昇が加速される。その結果、電流電極3a、4aに接する箇所における超電導線材8のIcの低下がさらに加速される。
【0014】
このような、抵抗の発生に伴う発熱による温度の上昇、温度の上昇に伴うIcの低下、Icの低下に伴う抵抗の発生という悪循環が繰り返されると、最後には、電流電極3a、4aと接する超電導線材8が溶断してしまう場合もあり、Icの測定が不可能となる。このような超電導線材8の温度上昇を抑制する方法として、電流電極と線材間の抵抗の上昇を検知して電流を遮断することが考えられるが、不確実な上に、Ic到達前に電流を遮断するため該当箇所のIcを測定することが不可能となる。
【0015】
そこで、電流電極3a、4aのサイズや超電導線材8に対する電流電極3a、4aの押圧力、また電流電極3a、4aと超電導線材8との平行度などを適宜設定して、抵抗を小さくすることがなされている。特に、前記した電流電極3a、4aと超電導線材8との間における氷粒の混入による影響を抑制するため、臨界電流測定装置21全体を容器の中に設置して容器内を乾燥ガス雰囲気にするなどの工夫が種々提案されている(例えば、特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−239260号公報
【特許文献2】特開2009−270916号公報
【特許文献3】特開2011−102752号公報
【特許文献4】特開2010−133815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、超電導線材のIc測定は液体窒素中で行われているため、雰囲気中の僅かな残留水分によって氷が形成され、前記した電流電極3a、4aと超電導線材8との間における氷粒の混入を防止することが困難であり、従来の種々の工夫によっても、前記の問題を十分に解決できているとは未だ言えず、安定したIc測定が行なうことが困難であった。
【0018】
そこで、本発明は、4端子法により超電導線材のIc測定を行うに際して、氷粒の混入を適切に防止して、安定したIc測定を行なうことができる超電導線材の臨界電流測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様に係る超電導線材の臨界電流測定装置は、
超電導線材の臨界電流を4端子法により測定する超電導線材の臨界電流測定装置であって、
液体冷媒が貯蔵されている冷却槽と、
前記冷却槽の前記液体冷媒中に位置する前記超電導線材の電圧を測定するための1対の電圧電極と、
前記1対の電圧電極より外側に設けられ、前記超電導線材に電流を流すための1対の電流電極と、
前記超電導線材を、前記冷却槽の上方から前記液体冷媒内に搬入し、水平方向に方向転換させて搬送した後、上方に方向転換させて前記冷却槽から搬出する搬送機構と
を備え、
前記冷却槽内から立ち上った搬入パイプが設けられており、
前記搬送機構が、前記超電導線材を前記搬入パイプ内部に通過させて前記冷却槽内に搬入するように構成されており、
さらに、前記搬入パイプ内の上部における前記超電導線材の温度が、その周囲雰囲気の露点よりも高い温度に維持されるように構成されている超電導線材の臨界電流測定装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、4端子法により超電導線材のIc測定を行うに際して、氷粒の混入を適切に防止して、安定したIc測定を行なうことができる超電導線材の臨界電流測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態に係る超電導線材の臨界電流測定装置を模式的に示す図である。
図2】従来の超電導線材の臨界電流測定装置を模式的に示す図である。
図3】従来の超電導線材の臨界電流測定装置において、氷粒が付着した状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0025】
(1)本発明の一態様に係る超電導線材の臨界電流測定装置は、
超電導線材の臨界電流を4端子法により測定する超電導線材の臨界電流測定装置であって、
液体冷媒が貯蔵されている冷却槽と、
前記冷却槽の前記液体冷媒中に位置する前記超電導線材の電圧を測定するための1対の電圧電極と、
前記1対の電圧電極より外側に設けられ、前記超電導線材に電流を流すための1対の電流電極と、
前記超電導線材を、前記冷却槽の上方から前記液体冷媒内に搬入し、水平方向に方向転換させて搬送した後、上方に方向転換させて前記冷却槽から搬出する搬送機構と
を備え、
前記冷却槽内から立ち上った搬入パイプが設けられており、
前記搬送機構が、前記超電導線材を前記搬入パイプ内部に通過させて前記冷却槽内に搬入するように構成されており、
さらに、前記搬入パイプ内の上部における前記超電導線材の温度が、その周囲雰囲気の露点よりも高い温度に維持されるように構成されている超電導線材の臨界電流測定装置である。
【0026】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討する中で、超電導線材の臨界電流の測定の様子を観察した結果、図3に示すように、符号Aで示す氷粒は、冷却槽2の上縁付近に位置する部材、具体的には、冷却槽2、電流電極3a、4a、電圧電極5a、6a、プーリー26、27、超電導線材8などの冷却槽2の上縁付近に付着し易いことを確認した。
【0027】
即ち、一般に氷粒は最も冷たい場所に付着しやすく、臨界電流測定装置においては、最も冷たい液体冷媒の液体窒素9aおよび各部材の液体窒素9aに接する部分に氷粒が付着しやすく、液体窒素9aから離れた場所の方が氷粒の付着量が少なくなるはずであるが、実際には、最も冷たいはずの冷却槽2の上縁よりも下側の領域には氷粒が付着しておらず、液体窒素9aから離れた冷却槽2の上縁付近の部材に氷粒が付着しやすいという結果が得られた。なお、図3は従来の超電導線材の臨界電流測定装置に氷粒が付着した状態を模式的に示す図である。
【0028】
このような状態で氷粒が付着する理由は次のように考えられる。即ち、臨界電流測定装置の冷却槽2内では、液体窒素9aが蒸発した窒素ガスが多量に発生している。この窒素ガスは、冷やされて空気よりも重くなり冷却槽2内に留まろうとするため、冷却槽2内から水蒸気を含む空気が追い出されて冷却槽2内が窒素ガスで満たされる。この結果、臨界電流測定装置の冷却槽2内の液体窒素9a付近では、氷結する水分が非常に希薄となるため、氷粒が発生しにくく、比較的に多くの水分が残っている冷却槽2の上縁付近に氷粒が付着しやすくなると考えられる。
【0029】
本発明者は、かかる知見に基づき、上記した超電導線材の臨界電流測定装置に至った。
【0030】
具体的には、本態様に係る超電導線材の臨界電流測定装置では、冷却槽内に搬入される前の超電導線材に氷粒が付着することを防止するために、冷却槽内から立ち上がった筒状の搬入パイプが設けられている。この搬入パイプ内は、冷却槽内と同様に、液体冷媒の蒸発ガスが満たされて水分が希薄な状態になるため、この搬入パイプ内に超電導線材を通過させながら冷却槽内に搬入することにより、冷却槽に搬入される前の超電導線材に氷粒が付着することを適切に防止して、超電導線材と電流電極との間に氷粒が挟まることによる抵抗の上昇を適切に防止することができる。
【0031】
なお、搬入パイプ内に入る前の超電導線材に氷粒が付着することを防止するためには、搬入パイプ内の上部の超電導線材の温度が露点よりも高い温度に維持されている必要があり、例えば、搬入パイプを延長して上部と液体冷媒との間に充分な距離を設けるという方法などを用いることができる。
【0032】
(2)そして、前記超電導線材の臨界電流測定装置は、
前記搬入パイプ内の上部における前記超電導線材の温度が、その周囲雰囲気の露点よりも高い温度に維持されるように、前記搬入パイプの内部を加熱するパイプ加熱ヒーターを備えていることが好ましい。
【0033】
本態様では、パイプ加熱ヒーターにより搬入パイプの内部を加熱することにより、搬入パイプ内の上部における超電導線材の温度が露点よりも高い温度に容易に維持することができる。このため、搬入パイプの上部と液体冷媒との間に充分な距離を設けない場合でも搬入パイプ内に入る前の超電導線材に氷粒が付着することを適切に防止することができる。
【0034】
(3)また、前記超電導線材の臨界電流測定装置は、
前記冷却槽内から立ち上った搬出パイプがさらに設けられており、
前記搬送機構が、前記超電導線材を前記搬出パイプ内部に通過させて前記冷却槽内から搬出されるように構成されていることが好ましい。
【0035】
従来の臨界電流測定装置において、冷却槽内から超電導線材を搬出する際に超電導線材に氷粒が付着し、付着した氷粒が冷却槽内に落下することがあった。このような場合、冷却槽内に落下した氷粒が液体窒素内を漂い、電流電極と超電導線材との間に挟まる恐れがある。
【0036】
本態様では、冷却槽内から立ち上った搬出パイプを設け、上記した搬入パイプと同様に、冷却槽内から超電導線材を搬出する場合についても、超電導線材をパイプ内に通過させることにより、冷却槽内から搬出される超電導線材に氷粒が付着することを適切に防止することができる。これにより、搬出される超電導線材に付着した氷粒が冷却槽に落下して、電流電極と超電導線材との間に挟まれることを防止することができる。
【0037】
また、前記超電導線材の臨界電流測定装置は、
超電導線材の臨界電流を4端子法により測定する超電導線材の臨界電流測定装置であって、
液体冷媒が貯蔵されている冷却槽と、
前記冷却槽の前記液体冷媒中に位置する前記超電導線材の電圧を測定するための1対の電圧電極と、
前記1対の電圧電極より外側に設けられ、前記超電導線材に電流を流すための1対の電流電極と、
前記超電導線材を、前記冷却槽の上方から前記液体冷媒内に搬入し、プーリーを用いて水平方向に方向転換させて搬送した後、上方に方向転換させて前記冷却槽から搬出する搬送機構と
を備え、
前記プーリーの全体が、前記冷却槽内に収納されている超電導線材の臨界電流測定装置であることが好ましい。
【0038】
本態様に係る超電導線材の臨界電流測定装置は、超電導線材を方向転換させるプーリーに氷粒が付着することを防止するための臨界電流測定装置である。
【0039】
図3に示すように、従来の臨界電流測定装置21においては、搬送中の超電導線材8を方向転換させるプーリー26、27の一部が冷却槽2の上縁から露出しており、この露出した部分の付近に氷粒が付着しやすくなっていたため、プーリー26、27を介して超電導線材8に氷粒が付着することがあった。
【0040】
これに対して、本態様に係る臨界電流測定装置では、プーリーの一部が冷却槽の上縁から露出しないように冷却槽内にプーリーの全体が収納されている。上記した通り、冷却槽内は、氷結する水分が非常に希薄な状態であるため、プーリーに氷粒が付着することを適切に防止することができ、プーリーを介して超電導線材に氷粒が付着することを防止することができる。
【0041】
)また、本発明の他の態様に係る超電導線材の臨界電流測定装置は、
超電導線材の臨界電流を4端子法により測定する超電導線材の臨界電流測定装置であって、
液体冷媒が貯蔵されている冷却槽と、
前記冷却槽の前記液体冷媒中に位置する前記超電導線材の電圧を測定するための1対の電圧電極と、
前記1対の電圧電極より外側に設けられ、前記超電導線材に電流を流すための1対の電流電極と、
前記超電導線材を、前記冷却槽の上方から前記液体冷媒内に搬入し、水平方向に方向転換させて搬送した後、上方に方向転換させて前記冷却槽から搬出する搬送機構と
を備え、
前記冷却槽内の前記液体冷媒を加熱するための冷媒加熱ヒーターが設けられている超電導線材の臨界電流測定装置である。
【0042】
本態様に係る超電導線材の臨界電流測定装置においては、冷媒加熱ヒーターが設けられている。この冷媒加熱ヒーターにより冷却槽内の液体冷媒を加熱して、液体冷媒の蒸発量を増加させることにより、冷却槽内に水分が侵入することをより適切に防止することができるため、氷粒の付着量を従来よりも少なくすることができる。
【0043】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係る超電導線材の臨界電流測定装置の具体例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0044】
図1は、本実施の形態に係る超電導線材の臨界電流測定装置を模式的に示す図である。
【0045】
(1)基本的構成
本実施の形態に係る超電導線材の臨界電流測定装置1は、従来の臨界電流測定装置と同様に、液体冷媒として液体窒素9aが貯蔵されている冷却槽2と、冷却槽2の液体窒素9a中に位置する超電導線材8の電圧を測定するための1対の電圧電極5a、6aと、超電導線材8に電流を流すための1対の電流電極3a、4aとを備えている。
【0046】
この臨界電流測定装置において、超電導線材8は、送り出し機構24によって冷却槽2の上方から液体窒素9a内に搬入され、プーリー26により水平方向に方向転換されて搬送された後、プーリー27により上方に方向転換されて冷却槽2から搬出された後に巻取り機構25に巻き取られる。
【0047】
本実施の形態に係る超電導線材の臨界電流測定装置1は、以下の第1〜第3の特徴を備えている。なお、図1には、第1〜第3の特徴を全て備えた臨界電流測定装置が記載されているが、これらの特徴はそれぞれ単独で用いることができ、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0048】
(2)第1の特徴
図1に示すように、本実施の形態に係る臨界電流測定装置1は、冷却槽2内から立ち上がった搬入パイプP1が設けられている点が従来の臨界電流測定装置と異なる。
【0049】
搬入パイプP1の下端は、冷却槽2に貯蔵された液体窒素9a内に浸漬されており、液体窒素9aが蒸発することにより生じた窒素ガスが搬入パイプP1内に満たされている。なお、図1では搬入パイプP1の下端が液体窒素9aに浸漬されているが、冷却槽2の液体窒素9aの上方に位置されていてもよい。
【0050】
また、搬入パイプP1の途中には、搬入パイプP1内部を加熱するパイプ加熱ヒーターH1が取り付けられており、搬入パイプP1内の上部における超電導線材の温度が露点よりも高温になるように搬入パイプP1が加熱されている。
【0051】
本実施の形態に係る臨界電流測定装置1では、送り出し機構24から送り出された超電導線材8が搬入パイプP1内を通過して冷却槽2内に搬入される。このとき、上記したように、搬入パイプP1内は窒素ガスが満たされており、水分が非常に希薄な状態になっているため、この搬入パイプP1内を通過させて超電導線材8を冷却槽2内に搬入することにより、冷却槽2に搬入する前の超電導線材8に氷粒が付着することを適切に防止することができる。
【0052】
そして、搬入パイプP1内の上部の超電導線材の温度が露点よりも高温になるように搬入パイプP1が加熱されているため、搬入パイプP1内に入る前の超電導線材8に氷粒が付着することを適切に防止することができる。
【0053】
なお、本実施の形態においては、搬出側に冷却槽2内から立ち上がった搬出パイプP2が設けられており、冷却槽2から搬出される超電導線材8に氷粒が付着することを適切に防止することができる。また、搬入パイプP1と同様に、搬出パイプP2の途中にもパイプ加熱ヒーターH2が取り付けられており、搬出パイプP2内の上部における超電導線材の温度が露点よりも高い温度に維持されている。
【0054】
また、本実施の形態では、上記したように、搬入パイプP1や搬出パイプP2内の上部の超電導線材の温度を露点よりも高い温度に維持するために、搬入パイプP1や搬出パイプP2の途中にパイプ加熱ヒーターH1、H2が取り付けられているが、搬入パイプP1や搬出パイプP2を上方に延長させて、パイプの上部と液体窒素との間に充分な距離を設けるという方法などを用いることもできる。
【0055】
(3)第2の特徴
また、本実施の形態に係る臨界電流測定装置1は、プーリー26、27の全体が、冷却槽2内に収納されている点において従来の臨界電流測定装置と異なる。
【0056】
具体的には、本実施の形態に係る臨界電流測定装置1では、プーリー26、27が冷却槽2の上縁よりも下方に配置されるように、冷却槽2の側壁が従来よりも高く形成されている。
【0057】
このように、氷結する水分が非常に希薄な状態である冷却槽2内にプーリー26、27の全体が収納されているため、プーリー26、27に氷粒が付着することを適切に防止することができる。
【0058】
これにより、冷却槽2内を搬送される超電導線材8がプーリー26、27によって方向転換される際に、プーリー26、27を介して超電導線材8に氷粒が付着して電流電極3a、4aとの間に氷粒が混入することを抑制することができる。
【0059】
(4)第3の特徴
さらに、本実施の形態に係る臨界電流測定装置1は、冷却槽2内の液体窒素9aを加熱するための冷媒加熱ヒーターH3が設けられている点において従来の臨界電流測定装置と異なる。
【0060】
本実施の形態においては、冷媒加熱ヒーターH3が冷却槽2内に配置されており、冷却槽2内に貯蔵された液体窒素9aを加熱する。なお、冷媒加熱ヒーターH3は、臨界電流の測定に影響を与えないように、その位置や加熱温度等が設定される。
【0061】
このように、冷媒加熱ヒーターH3により液体窒素9aを加熱させ、液体窒素9aの蒸発量を増加させることにより、冷却槽内に水分が侵入することをより適切に防止することができるため、氷粒の付着量を従来よりも少なくすることができる。
【0062】
なお、冷媒加熱ヒーターH3を冷却槽2の底部に設けることにより、測定終了後に液体窒素9aを残らず蒸発させることができるため清掃作業を容易にすることができる。
【0063】
また、上記した第1の特徴のように、冷却槽2内から立ち上がった搬入パイプP1や搬出パイプP2を設ける場合には、このパイプP1、P2内に窒素ガスを十分に満たすことができるため、超電導線材8に氷粒が付着することをより適切に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の超電導線材の臨界電流測定装置によれば、4端子法により超電導線材のIc測定を行うに際して、氷粒の混入を適切に防止して、安定したIc測定を遂行することができるため、より性能が高い超電導線材を市場に搬入することに貢献することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、21 超電導線材の臨界電流測定装置
2 冷却槽
3a、4a 電流電極
5a、6a 電圧電極
8 超電導線材
9a 液体窒素
24 送り出し機構
25 巻取り機構
26、27 プーリー
A 氷粒
H1、H2 パイプ加熱ヒーター
H3 冷媒加熱ヒーター
P1 搬入パイプ
P2 搬出パイプ
図1
図2
図3