(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に内蔵される基板の配線電極と他の部材(電子部品や基板等)の接点電極とを直接半田付けすることなく電気的に接続するための電子部品として、基部と、基部から延出する螺旋状の弾性腕部と、弾性腕部の先端部に設けられた接点部とを備えた圧接コネクタと呼ばれるものが実用化されている。
【0003】
従来の圧接コネクタに関しては、特許文献1等が開示されている。以下、特許文献1に係る従来の圧接コネクタについて、
図10を用いて説明する。
図10は、特許文献1に係る従来の圧接コネクタである竹の子状コンタクト901の構造を示す説明図である。尚、
図10における方向は、便宜的に、弾性腕部912の螺旋の軸方向を上下方向とし、接点部913が有る側を上側として説明を進める。
【0004】
特許文献1に係る竹の子状コンタクト901(圧接コネクタ)は、
図10に示すように、基部911と、弾性腕部912と、接点部913とが一体的に形成された竹の子バネと呼ばれるバネ構造のスプリングコイル910であり、導電性と弾性とを有する金属板にプレス加工や曲げ加工等を加えて形成される。
【0005】
スプリングコイル910は、上下方向に延びる図示しない仮想線を螺旋の軸として板面が螺旋の軸と平行になるように構成され、螺旋の内周側(以下、内周側と略称)が螺旋の外周側(以下、外周側と略称)よりも上方に突出している。そして、スプリングコイル910の螺旋の最外周の部分(以下、外周部と略称)が基部911となり、外周部よりも内側の螺旋の部分が弾性腕部912となり、螺旋の内周側の端部である先端部の上側の端面が接点部913となっている。
【0006】
尚、図示しないが、特許文献1では、接点部913を上側にした状態で基部911を基板に設けられたスルーホールに挿入して基板の配線電極と電気的に接続すると共に、接点部913の上から他の部材を押し当てて接点部913と他の部材の接点電極とを圧接させることによって、基板の配線電極と他の部材の接点電極とを竹の子状コンタクト901を介して電気的に接続する方法が開示されている。また、特許文献1では開示されていないが、接点部913を上側にした状態で基部911を基板の上に載置して半田付け等の方法で基板の配線電極と電気的に接続することも可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、弾性腕部のような螺旋状のバネが螺旋の軸方向に沿って縮むように弾性変形する時には、その端部間の距離が近付くこととなるので、螺旋は径方向に広がろうとする。その結果、螺旋が巻き緩む方向に変形させる力がバネに加わるようになる。そのため、従来の圧接コネクタでは、振動などが加わり弾性腕部が上下方向に弾性変形すると、それに伴って弾性腕部が水平方向にも弾性変形し、弾性腕部の先端部が水平方向に移動する可能性が有った。そして、弾性腕部の先端部の水平方向の移動に伴って、弾性腕部の先端部に設けられた接点部が、他の部材の接点電極の酸化皮膜上に乗り上げる等の理由で、瞬間的に接触が不安定になる可能性が有った。ところで、接点圧力を高める為に、2つの竹の子バネを同心状に設けて接点部に圧力を加えることが考えられるが、この場合には上記の1つの竹の子ばねで言及した水平方向の移動が、両方の竹の子ばねで発生する事となってしまい1つの竹の子ばねの場合と同様、瞬間的に接触が不安定になる可能性が有った。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、接点部と他の部材の接点電極との接触を安定させ易い圧接コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、請求項1に記載の圧接コネクタは、基部と、前記基部の異なる位置から前記基部の上側に延出する螺旋状の一対の弾性腕部と、前記一対の弾性腕部のうちの一方の弾性腕部の先端部に設けられた接点部とを備え、前記弾性腕部が、導電性と弾性とを有する板状の部材からなり、上下方向に延びる仮想線を螺旋の軸として、板面が前記螺旋の軸と平行になるように構成された圧接コネクタであって、前記一対の弾性腕部の螺旋の巻き回し方向は、互いに逆方向となり、前記一対の弾性腕部の先端部どうしは、互いに連結されていることを特徴とする。
【0011】
この構成の圧接コネクタでは、螺旋の巻き回し方向が互いに逆方向となるように一対の弾性腕部が構成されているので、一対の弾性腕部の上下方向の弾性変形に伴って一対の弾性腕部の先端部に加わる力の水平方向成分を互いに異なる方向に向かせることができる。そして、一対の弾性腕部の先端部どうしが互いに連結されているので、一対の弾性腕部のうちの一方の弾性腕部加わる力の水平方向成分によって、他方の弾性腕部に加わる力の水平方向成分を減少或いは相殺することができる。その結果、弾性腕部の先端部の水平方向の移動を抑制し、弾性腕部の先端部に設けられた接点部と他の部材の接点電極との接触を安定させることができる。
【0012】
請求項2に記載の圧接コネクタは、前記一方の弾性腕部の先端部には、前記弾性腕部の板面に沿って上方に延出する延出部が設けられ、前記延出部の上端部が前記接点部となっていることを特徴とする。
【0013】
この構成の圧接コネクタでは、一方の弾性腕部の先端部に弾性腕部の板面に沿って上方に延出する延出部を設け、延出部の上端部を接点部とすることによって、弾性腕部と接点部とを連続して形成することができ、接点部の形成において複雑な加工が不要となる。その結果、圧接コネクタの加工が容易になる。
【0014】
請求項3に記載の圧接コネクタは、前記一対の弾性腕部の先端部どうしは、係合によって互いに連結されていることを特徴とする。
【0015】
この構成の圧接コネクタでは、一対の弾性腕部の先端部どうしを係合によって互いに連結させることによって、先端部の連結構造が簡単になり、圧接コネクタの加工が容易になる。
【0016】
請求項4に記載の圧接コネクタは、前記一対の弾性腕部の先端部どうしは、上から見て互いに直交し、前記一対の弾性腕部の先端部の少なくとも一方には、他方と係合可能な溝部が上下方向に沿って設けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成の圧接コネクタでは、弾性腕部が板状の部材からなり、弾性腕部の先端部も板状の部分となるので、一対の弾性腕部の先端部どうしを上から見て互いに直交させ、一対の弾性腕部の先端部の少なくとも一方に溝部を上下方向に沿って設けることによって、弾性腕部の先端部に複雑な係合構造を設けることなく容易に、先端部どうしを係合させることができる。
【0018】
請求項5に記載の圧接コネクタは、前記一対の弾性腕部は、互いに上下に重なるように設けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成の圧接コネクタでは、一対の弾性腕部が互いに上下に重なるように設けられているので、一対の弾性腕部を水平方向に並べて配置した場合と比較して、水平方向の大きさを小さくすることができ、圧接コネクタの実装面積を小型化することができる。
【0020】
請求項6に記載の圧接コネクタは、前記一対の弾性腕部は、前記基部の互いに対向する側部からそれぞれ延出していることを特徴とする。
【0021】
この構成の圧接コネクタでは、一対の弾性腕部が、基部の互いに対向する側部からそれぞれ延出しているので、一対の弾性腕部を離して形成することができ、基部10の一方の側部から一対の弾性腕部を隣り合うように延出させる場合と比較して、弾性腕部を形成する際のスペースを確保し易くなり、弾性腕部の形状に対する自由度を高め易くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接点部と他の部材の接点電極との接触を安定させ易い圧接コネクタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について
図1ないし
図9を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧接コネクタ1の構造を示す第1の説明図であり、圧接コネクタ1の斜視図となっている。
図2は、本発明の第1実施形態に係る圧接コネクタ1の構造を示す第2の説明図であり、
図2(a)が圧接コネクタ1の上面図となり、
図2(b)が圧接コネクタ1の正面図となっている。
図3は、本発明の第1実施形態に係る圧接コネクタ1の構造を示す第3の説明図であり、
図3(a)が圧接コネクタ1の右側面図となり、
図3(b)が
図2(a)の断面線A1−A1に対応した圧接コネクタ1の断面模式図となっている。
【0025】
図4は、本発明の第1実施形態に係る圧接コネクタ1の製造方法を示す説明図であり、圧接コネクタ1の正面図に対応した加工状態を示している。
図4(a)は、打抜体M1を形成した後の状態を示し、
図4(b)は、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを形成した後の状態を示し、
図4(c)は、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを所定の位置に移動させた後の状態を示している。
図5は、本発明の第1実施形態に係る圧接コネクタ1の使用方法を示す説明図であり、圧接コネクタ1の正面図に対応した使用状態を示している。
図5(a)は、第1の基板50の上に圧接コネクタ1を実装した後の状態を示し、
図5(b)は、圧接コネクタ1の上に第2の基板60を配置した後の状態を示している。
【0026】
図6は、本発明の第1実施形態に係る第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の挙動を示す説明図であり、圧接コネクタ1の上面図に対応した説明図となっている。
図6(a)は、第1弾性腕部20の挙動を示す説明図であり、
図6(a)における太い実線の矢印が、第1弾性腕部20の先端部22が下方に押圧された時の、第1弾性腕部20の先端部22の水平方向での移動しようとする方向(上から見た時の方向)を示している。また、
図6(b)は、第2弾性腕部30の挙動を示す説明図であり、
図6(b)における太い実線の矢印が、第2弾性腕部30の先端部32が下方に押圧された時の、第2弾性腕部30の先端部32の水平方向での移動しようとする方向(上から見た時の方向)を示している。
【0027】
図7は、本発明の第1の変形例に係る圧接コネクタ101の構造を示す説明図であり、圧接コネクタ101の斜視図となっている。
図8は、本発明の第2の変形例に係る圧接コネクタ201の構造を示す説明図であり、圧接コネクタ201の斜視図となっている。
図9は、本発明の第3の変形例に係る圧接コネクタ301の構造を示す説明図であり、圧接コネクタ301の斜視図となっている。
【0028】
尚、各図における方向は、便宜的に、X1を左、X2を右、Y1を前、Y2を後、Z1を上、Z2を下とするが、圧接コネクタ1の使用時の向きを限定するものではない。また、発明の特徴を判り易くするために、各図における部材の構造を適宜簡略化し、各図における部材の寸法を適宜変更している。
【0029】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る圧接コネクタ1の構成について、
図1ないし
図3を用いて説明する。圧接コネクタ1は、電子機器に内蔵される基板の配線電極と電子部品や基板等の他の部材の接点電極とを直接半田付けすることなく電気的に接続するための電子部品であり、所定の導電性と弾性とを有するステンレスやリン青銅等の材質でできた金属板にプレス加工や曲げ加工等を加えて一体的に形成される。
【0030】
圧接コネクタ1は、
図1に示すように、基板に取り付けられる基部10と、基部10から基部10の上側に延出する螺旋状の一対の弾性腕部である第1弾性腕部20及び第2弾性腕部30と、第1弾性腕部20の先端部22に設けられた接点部40とを備えている。
【0031】
基部10は、
図1ないし
図3に示すように、水平方向に沿って広がる略正方形の平板状の部分であり、水平方向に沿って互いに対向する一対の側部である右側部11と左側部12とを有している。
【0032】
第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とは、接点部40を弾性支持するための部分である。第1弾性腕部20は、
図1ないし
図3に示すように、基部10の右側部11から基部10の上側に螺旋状に延出する部分であり、上下方向に延びる仮想線L1を螺旋の軸として板面21が螺旋の軸と平行になるように構成され、螺旋の内周側が螺旋の外周側よりも上方に突出した竹の子バネと呼ばれるバネ構造となっている。そして、第1弾性腕部20の螺旋の巻き回し方向(外周側から内周側に向かう巻き回し方向)は、上から見て反時計方向となっている。また、第1弾性腕部20の内周側の端部が先端部22となっており、先端部22は上下方向に移動可能な自由端とっている。そして、第1弾性腕部20は、先端部22が下方に押圧されると下方に縮むように弾性変形し、弾性変形に伴って上方に弾性力(反発力)を発生させるようになっている。
【0033】
第2弾性腕部30は、
図1ないし
図3に示すように、基部10の左側部12から基部10の上側に螺旋状に延出する部分であり、上下方向に延びる仮想線L1を螺旋の軸として板面21が螺旋の軸と平行になるように構成され、螺旋の内周側が螺旋の外周側よりも上方に突出した竹の子バネと呼ばれるバネ構造となっている。そして、第2弾性腕部30の螺旋の巻き回し方向(外周側から内周側に向かう巻き方向)は、上から見て時計方向、すなわち、第1弾性腕部20の螺旋の巻き回し方向と逆の方向となっている。また、第2弾性腕部30の内周側の端部が先端部32となっており、先端部32は上下方向に移動可能な自由端とっている。そして、第2弾性腕部30は、先端部32が下方に押圧されると下方に縮むように弾性変形し、弾性変形に伴って上方に弾性力(反発力)を発生させるようになっている。
【0034】
尚、本実施形態では、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30が仮想線L1を螺旋の軸として板面21や板面31が螺旋の軸と平行になるように構成されているので、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の厚さ方向が螺旋の径方向に沿うようになり、螺旋の径方向に沿った寸法である第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の外径寸法を小型化し易くなる。また、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の上下方向の幅寸法を厚さ寸法に対して大きくできるので、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30は上下方向に対して大きな弾性力を発生させ易くなる。
【0035】
また、本実施形態では、第1弾性腕部20を上側とし第2弾性腕部30を下側として第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とが互いに上下に重なり、且つ、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とが上から見て互いに直交するように第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とが設けられている。
【0036】
また、本実施形態では、第2弾性腕部30の先端部32の上端部には、第1弾性腕部20の先端部22の下端部と係合可能な溝部33が上下方向に沿って設けられている。そして、第1弾性腕部20の先端部22の下端部と第2弾性腕部30の先端部32の溝部33との係合(以下、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32との係合と略称)によって、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とが互いに連結されて連動して移動するようになっている。
【0037】
また、本実施形態では、第1弾性腕部20の先端部22には、第1弾性腕部20の板面21に沿って上方に延出する延出部23が設けられており、延出部23の上端部が前述した接点部40となっている。接点部40は、第1弾性腕部20に弾性支持されて下方に押圧可能となっている。そして、接点部40が下方に押圧された時には、接点部40が第1弾性腕部20の先端部22や第2弾性腕部30の先端部32と共に下方に移動し、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の下方への弾性変形に伴う反発力(弾性力)によって接点部40が上方に付勢されるようになっている。
【0038】
次に、圧接コネクタ1の製造方法について、
図4を用いて説明する。圧接コネクタ1を製造する際には、まず、
図4(a)に示すように、金属板にプレス加工等を加えて所定の形状に打ち抜き、基部10に相当する第1領域R1と第1弾性腕部20に相当する第2領域R2と第2弾性腕部30に相当する第3領域R3とが一体となった平板状の部材である打抜体M1を形成する。尚、第2領域R2は、第1領域R1の右側に第1領域R1の右端部と連続して形成され、第3領域R3は、第1領域R1の左側に第1領域R1の左端部と連続して形成される。
【0039】
次に、
図4(b)に示すように、打抜体M1の第2領域R2及び第3領域R3にプレス加工や曲げ加工等を加えて第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを形成する。尚、第1弾性腕部20を形成する際には、第1弾性腕部20の先端部22に延出部23が設けられた構造とし、第2弾性腕部30を形成する際には、第2弾性腕部30の先端部32に溝部33が設けられた構造とする。
【0040】
次に、
図4(c)に示すように、打抜体M1の第1領域R1と第2領域R2との境界部分や、第1領域R1と第3領域R3との境界部分に曲げ加工を施して、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを基部10側に折り曲げると共に、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とを係合させる。そして、第1領域R1が基部10となり、第1弾性腕部20の先端部22に設けられた延出部23の上端部が接点部40となる。圧接コネクタ1は、このようにして製造される。
【0041】
次に、圧接コネクタ1の使用方法について、
図5を用いて説明する。
図5は、第1の基板50の配線電極51と、第1の基板50とは異なる他の部材である第2の基板60の接点電極61とを、圧接コネクタ1を介して電気的に接続する場合の使用方法を示している。この使用方法では、まず、
図5(a)に示すように、第1の基板50の上に圧接コネクタ1を実装し、半田付け等の方法で圧接コネクタ1の基部10と第1の基板50の配線電極51とを電気的に接続する。尚、この状態では、圧接コネクタ1の上に第2の基板60が配置されておらず、接点部40が下方に押圧可能な状態となっている。
【0042】
次に、
図5(b)に示すように、圧接コネクタ1の上に第2の基板60を配置して接点部40を下方に押圧する。そして、接点部40の下方への押圧に伴う第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の弾性力によって接点部40が上方に付勢されて、接点部40と第2の基板60の接点電極61とが圧接する。そして、接点部40と第2の基板60の接点電極61との圧接によって、第1の基板50の配線電極51と第2の基板60の接点電極61とが圧接コネクタ1を介して電気的に接続される。
【0043】
次に、本実施形態の効果について、
図6を用いて説明する。通常、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30のような螺旋状のバネが螺旋の軸方向に沿って縮むように弾性変形する時には、その端部間の距離が近付くことになるので、螺旋の径方向に広がろうとする。その結果、螺旋が巻き緩む方向に変形させる力がバネに加わるようになる。
【0044】
例えば、本実施形態では、第1弾性腕部20の先端部22が下方に押圧されて、第1弾性腕部20が下方に弾性変形する時には、
図6(a)に示すように、第1弾性腕部20の螺旋が巻き緩む方向に撓む。その結果、上から見て、螺旋の径が大きくなるので先端部22は外側に、また、先端側とは逆の方向すなわち時計方向に移動するよう第1弾性腕部20が変形しようとする。また、第2弾性腕部30の先端部32が下方に押圧されて、第2弾性腕部30が下方に弾性変形する時には、
図6(b)に示すように、第2弾性腕部30の螺旋が巻き緩む方向に撓む。その結果、上から見て、螺旋の径が大きくなるので先端部32は外側に、また、先端側とは逆の方向すなわち時計方向に移動するよう第2弾性腕部30が変形しようとする。
【0045】
このように、第1弾性腕部20の先端部22の変位方向と、第2弾性腕部30の先端部32の変位方向とは互いに直交しないため、前述したように先端部22の下端部を溝部33に入れるだけで第1弾性腕部20、第2弾性腕部30の両者を相対的に滑らず、一体的に連結することができる。そして、連結した際には、前述した接点部40は第1弾性腕部20、第2弾性腕部30の両方の挙動を反映した位置に変位する。その際、反対側の成分は相殺され、同じ方向については大きい方の成分だけ移動する。また、図示しないが、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30への押圧が解除されて弾性変形から復帰する時には、前述した方向とは逆方向に先端部22や先端部32が移動するように第1弾性腕部20や第2弾性腕部30が変形する。その結果、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の上下方向の弾性変形に伴う、第1弾性腕部20の先端部22や第2弾性腕部30の先端部32の水平方向の移動を抑制し、第1弾性腕部20の先端部22に設けられた接点部40と第2の基板60の接点電極61との接触を安定させることができるようになる。
【0046】
尚、仮に、本実施形態の圧接コネクタ1において、螺旋の巻き回し方向が互いに同じ向となるように第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とが構成されていたり、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とが互いに連結されていなかったりした場合には、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の水平方向の弾性変形を規制することができなくなり、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の上下方向の弾性変形に伴って第1弾性腕部20や第2弾性腕部30が水平方向にも弾性変形し易くなり、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の水平方向の弾性変形に伴って、第1弾性腕部20の先端部22に設けられた接点部40と第2の基板60(他の部材)の接点電極61との接触が不安定になる可能性が有った。
【0047】
すなわち、接点電極61が表面に酸化被膜等が形成され易い材質でできている場合には、第1弾性腕部20の先端部22の水平方向の移動に伴って、接点部40が通常の接触位置からずれて接点電極61の酸化被膜で覆われた部分と接触する可能性が有るので、このような場合には、酸化皮膜が接点圧力で破れる間、瞬間的に接点部40と接点電極61との接触が不安定になり易くなる。それに対して、本実施形態の圧接コネクタ1では、前述したように、螺旋の巻き回し方向が互いに逆方向となるように第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを構成し、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とを互いに連結することによって、このような課題を解消している。
【0048】
また、本実施形態の圧接コネクタ1では、第1弾性腕部20の先端部22に第1弾性腕部20の板面21に沿って上方に延出する延出部23を設け、延出部23の上端部を接点部40とすることによって、第1弾性腕部20と接点部40とを連続して形成することができ、接点部40の形成において複雑な加工が不要となる。その結果、圧接コネクタ1の加工が容易になる。
【0049】
また、本実施形態の圧接コネクタ1では、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とを係合によって互いに連結させることによって、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32との連結構造が簡単になり、圧接コネクタ1の加工が容易になる。
【0050】
また、本実施形態の圧接コネクタ1では、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30が板状の部材からなり、第1弾性腕部20の先端部22や第2弾性腕部30の先端部32も板状の部分となるので、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とを上から見て互いに直交させ、第2弾性腕部30の先端部32に溝部33を上下方向に沿って設けることによって、第1弾性腕部20の先端部22や第2弾性腕部30の先端部32に複雑な係合構造を設けることなく、容易に第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とを係合させることができる。
【0051】
尚、本実施形態では、第2弾性腕部30の先端部32に第1弾性腕部20の先端部22と係合可能な溝部33が設けられていたが、第1弾性腕部20の先端部22に第2弾性腕部30の先端部32と係合可能な溝部が設けられていても構わない。このような場合でも前述した効果と同様の効果を得ることができる。また、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32との両方に溝部を設けることによって、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32との係合をより外れ難くし、連結をより安定させることもできる。
【0052】
また、本実施形態の圧接コネクタ1では、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とが互いに上下に重なるように設けられているので、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを水平方向に並べて配置した場合と比較して、水平方向の大きさを小さくすることができ、圧接コネクタ1の実装面積を小型化することができる。
【0053】
また、本実施形態の圧接コネクタ1では、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とが、水平方向に沿って互いに対向する基部10の側部である右側部11と左側部12とからそれぞれ延出しているので、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを基部10の右側と左側とに離して形成することができ、基部10の一方の側部から第1弾性腕部20と第2弾性腕部30とを隣り合うように延出させる場合と比較して、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30を形成する際のスペースを確保し易くなり、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の形状に対する自由度を高め易くなる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更することができる。
【0055】
例えば、本発明の実施形態において、第1弾性腕部20の先端部22の下端部と、第2弾性腕部30の溝部33に入れている為、第1弾性腕部20と第2弾性腕部30は直交して配置されているが、第2弾性腕部30の先端部32を、第1弾性腕部20の先端部22の延長線上に一直線となるように溶接等して形成しても良く、その場合にはより水平方向の任意の方向に対して相殺することが容易に可能となる。また、所定の機能を実現できるのであれば、
図7ないし
図9に示す変形例のように、基部10や接点部40の形状を変更しても構わない。
図7に示す第1の変形例では、基部10が、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の外周部(螺旋の最外周の部分)と一体化した筒状の部分となっている。
図8に示す第2の変形例では、接点部40が、水平方向に広がる平板状の部分となっている。
図9に示す第3の変形例では、基部10が、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30の外周部と一体化した筒状の部分となると共に、接点部40が、水平方向に広がる平板状の部分となっている。基部10や接点部40の形状がこのような形状であっても、前述した効果と同様の効果を得ることができる。また、基部10や接点部40の形状を前述した実施形態や変形例以外の形状としても構わないし、基部10や接点部40の所定の位置に凸部や湾曲部や切欠部や開口部等を設けても構わない。
【0056】
また、図示しないが、本発明の実施形態において、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30が、上面から見て円形で一定の割合で上方に延在するような螺旋構造ではなくても構わない。例えば、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30が、上面から見て四角形状であっても良く、また、階段状に上方に延在していても良い。要は、第1弾性腕部20や第2弾性腕部30が、仮想線L1の周りを回りながら上方に延びるようなバネ構造となっていれば良い。
【0057】
また、本発明の実施形態において、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とを安定して係合させることができるのであれば、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32との係合構造を、前述した以外の係合構造としても構わない。また、第1弾性腕部20の先端部22と第2弾性腕部30の先端部32とを、嵌合や半田付けやレーザ溶着等の係合以外の方法で連結しても構わない。
【0058】
また、本発明の実施形態において、圧接コネクタ1を実装後に傾けて使用しても構わない。また、圧接コネクタ1を第1の基板50に実装する際に、基部10と第1の基板50の配線電極51とを半田付けするのではなく、導電性接着剤等を用いて電気的に接続しても構わないし、基部10と第1の基板50の配線電極51とを圧接させて電気的に接続しても構わない。また、圧接コネクタ1の上に基板ではなくIC等の電子部品を配置して接点部40と電子部品の端子電極とを圧接させても構わない。