(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406658
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】量子ドットディスプレイおよびそれを用いたディスプレイ表示方法
(51)【国際特許分類】
H04N 13/39 20180101AFI20181004BHJP
【FI】
H04N13/39
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-39972(P2014-39972)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-165611(P2015-165611A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智義
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】平山 竜士
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘敬
(72)【発明者】
【氏名】角江 崇
【審査官】
益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−134581(JP,A)
【文献】
特開2000−338900(JP,A)
【文献】
特開2013−037165(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/082825(WO,A1)
【文献】
特表2009−535665(JP,A)
【文献】
特開2001−095015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00
H04N 5/66−5/74
H04N 9/12
G02B 27/22
G09G 3/00−5/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体結晶からなる量子ドットを含む量子ドットブロックが、三次元的に複数組み合わされており、更に、
前記量子ドットブロックに紫外線の光を照射する光源を有する量子ドットディスプレイであって、
前記紫外線が入射される側に近い位置の前記量子ドットブロックに含まれる前記量子ドットの量が、前記紫外線が入射される側から遠い位置の前記量子ドットブロックに含まれる前記量子ドットの量よりも少なくなっていくよう、配列方向に沿って徐々に減少している量子ドットディスプレイ。
【請求項2】
複数の前記量子ドットブロックは、前記量子ドットブロックを含まない仕切部材を介して組み合わせられてなる請求項1記載の量子ドットディスプレイ。
【請求項3】
隣接する量子ドットブロック同士における発光の色が異なっている請求項1記載の量子ドットディスプレイ。
【請求項4】
半導体結晶からなる量子ドットを含む量子ドットブロックが、三次元的に複数組み合わされており、更に、前記量子ドットブロックに紫外線の光を照射する光源を有し、かつ、前記紫外線が入射される側に近い位置の前記量子ドットブロックに含まれる前記量子ドットの量が、前記紫外線が入射される側から遠い位置の前記量子ドットブロックに含まれる前記量子ドットの量よりも少なくなっていくよう、配列方向に沿って徐々に減少している量子ドットディスプレイに、前記量子ドットブロックに含まれる前記量子ドットを発光させるための前記紫外線の光を照射するディスプレイ表示方法。
【請求項5】
複数の前記量子ドットブロックごとに光を照射する請求項4記載のディスプレイ表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は量子ドットディスプレイ及びそれを用いたディスプレイ表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元的な情報を含む立体画像は、観測する位置によって異なる情報を取得することができるようになる等、二次元的情報からなる平面画像に比べ多くの情報を含ませることが可能である。
【0003】
一般的に、立体画像は特定の立体物を複製するようにして作成される。具体的には、実存する立体物をトレースしてその表面の位置情報を取得し、又は、コンピュータ上で仮想的な立体的形状を作成しつつその表面の位置情報を取得し、この位置情報を媒体中に再現することで立体画像とできる。
【0004】
しかしながら、特定の立体物を複製するだけでなく、独立した複数の情報を組み合わせ、観測者が観測する角度を変えた場合に上記のいずれかの情報を観測者に取得させるような立体画像を作成することができれば、立体画像の用途は大きく広がる。
【0005】
例えば上記技術の公知例として、下記特許文献1には、観測者が複数の方向から見た場合に異なる画像を認識することのできるように、複数の二次元情報から三次元立体画像データを作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−084095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1には、具体的な表示装置(ディスプレイ)の一例として、クリスタルガラス等の例が開示されている。クリスタルガラス等は保存性に優れるものの、一度記録した後はその記録状態が保持されてしまうため、他の手段を併用すれば不可能ではないものの、当該表示装置に対し、一度記録された表示を観測者が観測できないようにする(非表示とする)ことは容易ではない。また、カラー化が不可能という課題を有する。また、同様の理由により、動画像表示といった動的な表示にも課題が残る。すなわち、情報の表示及び非表示を行うことのできるディスプレイを実現化することで、当該技術だけでなく立体画像の用途の可能性が格段に広がると考えられる。
【0008】
一方、上記特許文献1の技術を使用し、LED等の発光部品を画素として採用し、これを三次元的に立体的に配置し、立体画像情報に対応させた位置の画素を発光させて立体的に画像を表示させるという技術が可能であるが、この場合、配線数が膨大となり、また、LEDや配線等が重複することで奥側のLED等が観測者に見えなくなってしまうといった課題(オクルージョン)が発生してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、配線数の低減、オクルージョンの防止を行いつつ、立体画像の表示及び非表示を行うことのできるディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一の観点に係る量子ドットディスプレイは、量子ドットブロックを三次元的に複数組み合わせてなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の一観点に係るディスプレイ表示方法は、量子ドットブロックを三次元的に複数組み合わせてなる量子ドットディスプレイに、前記量子ドットブロックに含まれる量子ドットを発光させるための光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、配線数の低減、オクルージョンの防止を行いつつ、立体画像の表示及び不表示を行うことのできるディスプレイ及びこれを用いたディスプレイ表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る量子ドットディスプレイの概略図である。
【
図2】実施形態に係る量子ドットブロックの一例の概略図である。
【
図3】実施形態に係る量子ドットブロックの一例の概略図である。
【
図4】量子ドットディスプレイを構成する場合の一例に関する概略図である。
【
図5】発光する場所が定まっている場合における量子ドットディスプレイの一例の概略図である。
【
図6】走査することにより量子ドットディスプレイを表示させる場合のイメージ図である。
【
図7】実施例に係る量子ドットブロックの図(写真代用)である。
【
図8】実施例に係るディスプレイの図(写真代用)である。
【
図9】実施例に係るディスプレイの図(写真代用)である。
【
図10】実施例に係るディスプレイの図(写真代用)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態によって実施可能であり、以下に示す具体的な実施形態、実施例の例示にのみ限定されるわけではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る量子ドットディスプレイ(以下「本ディスプレイ」という。)1の概略を示す図である。本ディスプレイ1は、量子ドットブロック2を三次元的に複数組み合わせてなる。
【0016】
本実施形態において、量子ドットブロック2とは、量子ドットを含み一定の体積を占めた物体である。量子ドットブロック2は、量子ドットと、この量子ドットを分散又は溶解させて保持する媒体と、を少なくとも含んでいる。量子ドットブロック2は、後に詳述するが、量子ドットは紫外線を照射することで可視領域の光を発することのできるものである。本ディスプレイは、複数の量子ドットブロックを立体的に組み合わせることで立体表示が可能となるものであり、量子ドットブロック一つ一つが画素となる。
【0017】
量子ドットブロックの組み合わせ形態としては、組み合わせることでディスプレイとして機能し、立体画像を観測者に認識させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、三次元的であることから、本図で示すように、まず二次元的に量子ドットブロックを組み合わせ、さらに垂直方向に量子ドットブロックを積み重ねた三次元形状、さらに具体的には直交する三軸(x、y、z)方向にブロックを等間隔で配置した形態であることが発光位置を設計しやすくする観点から好ましい。
【0018】
また本実施形態において、量子ドットブロックの数としては特に限定されない。画素数を少なくした立体画像の場合は、各軸方向に対して3〜4個程度(合計27〜64個程度の画素数)であってもよく、一般的なディスプレイのように各軸方向に1000個程度(三原色でカラー化した場合はさらにこの3倍程度)並べる構成としてもよく、更にはこれ以上の2k、4kに対応する大規模の画素数に対応させることとしてもよい。もちろん、この中間の範囲とすることも可能である。本実施形態では、量子ブロックを用いることでドット間をワイヤレスにすることができ、しかも高い透過率を維持することが可能であり、ディスプレイを大きくすることに対する制限は他のディスプレイよりも少ない。
【0019】
また、本実施形態において、量子ドットブロック2の形状としては、複数立体的に組み合わせることが可能であれば特に限定されないが、多面体であることが好ましく、具体的には立方体や直方体が好ましいが、デザインの観点から錐体であってもよく、更には球体等の曲面を有する形態であってもよい。
【0020】
また本実施形態において、量子ドットブロックの大きさも特に制限はされず、表示したい立体画像の解像度や本ディスプレイ全体大きさに応じて適宜調整可能である。具体的な大きさは限定されるわけではないが、立方体の場合一辺が3μm以上10cm以下であることが好ましいが適宜調整可能である。
【0021】
また、本ディスプレイにおいて、発光させない位置が決まっている場合、その位置には量子ドットブロックを配置せず、量子ドットを含まないブロック(以下「非発光ブロック」という。)を配置しておくことが好ましい。非発光ブロックを配置することで、紫外線が当たっても吸収されにくく、発光しないため透過するのみの画素となる一方、本ディスプレイにおける量子ドットブロックの配置位置関係を調整しやすくなるといった利点がある。非発光ブロックは、限定されるわけではないが、量子ドットを除去した以外は量子ドットブロックと同様の材質を採用することができる。このようにすることで非発光ブロックと量子ドットブロックとの間の屈折率の差を近づけることができ紫外線等の入射される光の不要な散乱、屈折等を抑えることができる。
【0022】
なお本ディスプレイにおいて、発光させない位置、発光させる位置が明確に定まっている場合、例えば上記特許文献1に記載の技術を用いて、又は、上記立体形状の表面に対応した部分のみに量子ドットブロックを配置しておくことが好ましい。一方、動画表示を行いたい場合や、発光させる位置等が定まっていない場合は、全ての量子ドットブロックを三次元的に組み合わせた上で、後述の方法に従い光を照射し、発光させる量子ドットブロックを選択して発光させることが好ましい。
【0023】
また、本実施形態において「量子ドット」とは、数ナノから数十ナノメートル程度の粒径からなる半導体結晶であって、紫外線を入射することでこれとは異なる特定の波長の光を発することのできるものをいう。量子ドット自体は市販されているものを使用することができるが、ディスプレイとしての用途として、紫外線の入射を受けた後人間が認知することのできる可視領域の光を発することができるものであることが好ましく、より好ましくは赤(R:波長625〜740nm)、緑(G:波長500〜560nm)、青(B:445nm〜485nm)といった原色に相当する波長範囲の光を発することができるものであることが好ましい。原色に相当する波長範囲の光を発するようにすることで、複数の量子ドットブロックを設け、それぞれにおいていずれかの原色を発光させるように配置し、カラー表示を行うことができるようになる。
【0024】
本実施形態において、量子ドットを保持する媒体は、量子ドットの機能を妨げないよう量子ドットと化学的な反応を起こさず、可視領域の光、量子ドットを発光させるための入射光を吸収しない透明性なものであれば特に限定されず様々なものを採用することができる。たとえば、アセトン、トルエン等の有機溶媒のほか、水といった液体の溶媒、シリコーンエラストマー等の透過性のある樹脂を例示することができるがこれに限定されない。液体の溶媒を用いる場合は均一な量子ドット分布を容易に実現することができる点において好ましく、樹脂等の場合は量子ドットブロック2がそれ自体でブロック体としての構造を維持することができるといった観点から好ましい。もちろん、これらを混合して用いることは両者の利点を得ることができる観点において好ましい。なお、液体の溶媒の場合は、これを自立させるため、透明な樹脂等の部材で枠を形成し、この枠内に注入する構成としておくことが好ましい。なお枠部材を用いる場合、量子ドット一つ一つを独立して囲う構成としてもよいが、仕切部材を用いこれを枠として機能させる構成としてもよい。
図2は、自立することができるよう樹脂等に量子ドットを含ませた量子ドットブロックの概略図を、
図3は、液体にして樹脂等の枠部材に封入した状態の量子ドットブロックの一断面図をそれぞれ示す。
【0025】
本実施形態において、量子ドットを含ませる量としては、含ませる量子ドットの種類、発光効率、所望の発光強度に基づき適宜調整可能であるため特に限定されるわけではない。
【0026】
また、後述の記載と関連するが、量子ドットブロックに含まれる量子ドットの量は、量子ドットブロックの配列方向に沿って徐々に増加又は減少させておくことも好ましい。量子ドットにより紫外線が可視領域の光に変換されていくとともに、媒体によっても紫外線が少しずつ吸収又は散乱されていくことから、量子ドットブロックを多数配置しこれに紫外線を外部から照射していくこととすると光量の減少が無視できなくなる。そこで、紫外線が入射される側に近い位置の量子ドットブロックは遠い位置の量子ドットブロックよりも含まれる量子ドットの量が少なくなっていることで、発光強度を均一に確保することができるようになる。
【0027】
また、本実施形態において、複数の量子ドットブロック2は、量子ドットを含まない仕切部材を介して組み合わせられてなることが好ましい。仕切部材を介することで、量子ドットブロック同士を仕切り、発光領域を明確に仕切ることができるようになる。なお、仕切部材としては、外部から照射される紫外線等の入射光をさえぎらないよう、紫外線領域および可視領域の光を吸収しない透明な部材であることが好ましい。これは上記量子ドットブロックにおいて同様である。具体的な仕切部材としては、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、いわゆるプラスチックであることが好ましく、より具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニール、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、エポキシ等を例示することができるがこれに限定されない。なお、上記量子ドットブロックにおいて、媒体が液体である場合、各量子ドットブロックを枠部材で封入することにより自立する構成について言及しているが、この仕切部材自体を、複数の穴を平面状に複数有する構成とし、このそれぞれの穴に量子ドット及び液体の媒体を注入していくことで量子ドットブロックを形成することができる。そしてこれらを積み重ねていくことで、三次元的組み合わせを達成できる。この例を例えば
図4に示しておく。
【0028】
なお、本ディスプレイは複数の量子ドットブロック2のいずれもが同じ色の光を発するものであってもよいが、隣接する量子ドットブロック2同士における発光の色が異なるよう配置することも好ましい一形態である。異なる色の量子ドットブロックを隣接して配置することで、カラー表示を可能とすることができる。具体的に説明すると、異なる色を発する複数の量子ドットブロックを一つの表示単位として纏め、そのそれぞれの発光強度を調整することで各表示単位において所望の色を表現することができ、カラー化を達成することができるようにある。さらに具体例を挙げて説明すると、R、G、Bそれぞれの色を発する量子ドットブロックを一つの表示単位として纏め、これらR、G、Bそれぞれの色の発光強度を調整することでカラー化を図ることが可能となる。
【0029】
以上、本ディスプレイの構造について説明したが、ここで本ディスプレイを用いたディスプレイ表示方法(以下「本方法」という。)について説明する。本方法を用いることで、立体画像を表示することができるようになる。
【0030】
まず本方法は、量子ドットブロック2を三次元的に複数組み合わせてなる本ディスプレイ1に、量子ドットブロック2に含まれる量子ドットを発光させるための光を照射する。
【0031】
ここで、量子ドットを発光させるための光は、上記のとおり、紫外線であることが好ましい。これは、紫外線は波長が10〜400nm程度であって、可視領域の波長よりも短く、通常観測者は紫外線の光の色を認識することができない一方で、量子ドットに紫外線が当たると可視領域の光が発せられることとなるため、観測者は可視領域の光を発した量子ドットブロックのみを認識することができる。この結果、量子ドットブロックの集合が立体画像となり、これを表示しているディスプレイが実現できる。
【0032】
本ディスプレイに照射する紫外線の光の進行方向に沿った断面で切断した場合の形状は、量子ドットディスプレイ全体を覆う程度の広い面積を有する円形又は四角等の多角形状のものであってもよく、また、量子ドットブロック一つ分以下の面積程度しかないほぼ点状となっているものであってもよい。もちろん、これらの中間の面積である状態も可能である。
【0033】
本ディスプレイ全体を覆うことができる程度の広い断面を備えた紫外線の場合は、本ディスプレイ全体を一度に光らせることが可能となるといった利点がある。これは、発光させる量子ドットブロックの位置が定まっている場合に非常に有用である。この場合のイメージ図を
図5に示しておく。
【0034】
また、量子ドットブロック一つ分の面積の場合は、発光させる量子ドットブロックの列を選択的に発光させることができ、これを面上において移動、走査させていくことで任意の位置を選択的に発光させていくことができる。これは、発光させる量子ドットブロックの位置が定まっておらず、組み合わせたすべてのブロックが量子ドットを含む量子ドットブロックである場合に有用である。この場合のイメージ図を
図6に示しておく。
【0035】
なおこの場合において、量子ドット毎に、励起するための最低エネルギー(光の周波数)を異ならせることとしてもよい。これにより、発光する量子ドットブロックの選択性を実現することができる。
【0036】
また、「共焦点」の方式で光を照射することによって、特定の深さ、特定の点の量子ドットのみに集中して光を供給するという方式を用いてもよい。この場合。「一つの列全体を選択してしまう」という問題は起こらず「一つのブロックのみを選択する」ということが可能となる。
【0037】
以上、本実施形態により、配線数の低減、オクルージョンの防止を行いつつ、立体画像の表示及び不表示を行うことのできるディスプレイ及びこれを用いたディスプレイ表示方法を提供することができる。
【実施例】
【0038】
ここで、実際に量子ドットブロックを組み合わせたディスプレイについて作製を行い、本発明の効果について確認を行った。
【0039】
まず、緑色に発光する量子ドットを含むトルエン溶液にシリコーンエラストマーを加えて十分に撹拌した後3mm角の立方体に成型、加熱することによって作製された量子ドットブロックを複数個準備した。この量子ドットブロックを
図7に示しておく。なお本図における量子ドットブロックには紫外線は照射されていない。
【0040】
次いで、この複数の量子ドットのうち数個を4×4のマトリクス上において発光させたい所望の位置に配置し、その周囲を枠材で囲み、シリコーンエラストマーを流し込み、120℃で10時間程度加熱し、第一層を形成した。そしてこの第一層の上に第一層と同様に、発光させたい所望の位置に量子ドットを配置し、枠材で設けた後にシリコーンエラストマーを流し込んで第二層にした。また上記と同様、第三層、第四層を作製し、結果として4×4×4のディスプレイとした。なお、発光した状態で正面図では四角型、側面からは市松模様となるよう、観測する方向によって異なる形状が見えるように構成した。
【0041】
その後、ペンライトとLEDを用いて紫外線をディスプレイ全体に照射することで量子ドットブロックを発光させ、ディスプレイとしての表示を行った。ここで、LEDは波長が390nmの光を使用した。この結果、紫外線の照射がない状態ではいずれの方向から見た場合でも違いがなく一様な透明のディスプレイである一方、紫外線の照射がある場合は、上記のように観測する方向によって異なる形状が見えるディスプレイとなった。紫外線を照射した場合のディスプレイを
図8乃至
図10に示しておく。
【0042】
以上、本実施例によると、量子ドットを含む量子ドットブロックを複数準備し、これを組み合わせることにより立体画像を表示させることのできるディスプレイを実現でき、更に、紫外線を照射することで表示と非表示の状態双方を達成することができることを確認した。特に、本例でも明らかなように、本ディスプレイは配線等が不要であり、オクルージョンの防止も可能であるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明はディスプレイおよびそれを用いたディスプレイ表示方法として産業上の利用可能性がある。