(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406661
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】医療用ナイフ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3211 20060101AFI20181004BHJP
A61B 17/3213 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
A61B17/3211
A61B17/3213
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-121140(P2014-121140)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-115(P2016-115A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100098109
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 和幸
【審査官】
宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05100391(US,A)
【文献】
特開昭57−203437(JP,A)
【文献】
特表2013−530009(JP,A)
【文献】
米国特許第04578865(US,A)
【文献】
特開2011−167293(JP,A)
【文献】
特開2005−345420(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0015128(US,A1)
【文献】
米国特許第6887250(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3211 − 17/3213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの半割体から成るハンドルの前端から前方向へ2枚の刃体が平行に延びる医療用ナイフであって、それぞれ刃体が前記半割体に恒久的に固定された2つの刃体付き半割体で構成され、それぞれの半割体は、その前部に、側壁と、その側壁の上縁から直角方向に延びる半割上壁と、側壁の下縁から直角方向に延びる半割下壁とを有し、刃体はそれぞれの側壁の内面に固定されており、
医療用ナイフは、前記2つの刃体付き半割体が結合されたものであり、結合された2つの半割体の半割上壁により上壁が構成されており、且つ半割下壁により下壁が構成されており、これらの上壁、下壁及び前記側壁でハンドルの前部に構成された周壁により、上下左右の四面が周壁に囲まれた空洞が前部に形成されており、該空洞は前方に開口を有し、前記それぞれの側壁の内面に固定された両刃体が開口から突出し、刃体の刃先の一部が下壁で覆われていることを特徴とする医療用ナイフ。
【請求項2】
それぞれの刃体付き半割体は、それらの側壁の内面に形成された刃体の位置決め突部に、刃体に形成された長孔が嵌合されており、且つその位置決め突部に設けた刃体固定用凸部がプレスして押し潰されることにより形成されたはみ出し部によって刃体が側壁の内面に固定されている請求項1記載の医療用ナイフ。
【請求項3】
2つの半割体から成るハンドルの前端から前方向へ2枚の刃体が平行に延びる医療用ナイフの製造方法であって、
それぞれ刃体が前記半割体に恒久的に固定された2つの刃体付き半割体で構成され、それぞれの半割体は、その前部に、側壁と、その側壁の上縁から直角方向に延びる半割上壁と、側壁の下縁から直角方向に延びる半割下壁とを有し、刃体はそれぞれの側壁の内面に固定されており、
医療用ナイフは、前記2つの刃体付き半割体が結合されたものであり、結合された2つの半割体の半割上壁により上壁が構成されており、且つ半割下壁により下壁が構成されており、これらの上壁、下壁及び前記側壁でハンドルの前部に構成された周壁により、上下左右の四面が周壁に囲まれた空洞が前部に形成されており、該空洞は前方に開口を有し、前記それぞれの側壁の内面に固定された両刃体が開口から突出し、刃体の刃先の一部が下壁で覆われている医療用ナイフの製造方法であって、
熱可塑性樹脂を用いて射出成型により刃体固定用凸部が設けられた位置決め突部を側壁に有する半割体を一体成型し、次いで位置決め突部に刃体の長孔を嵌合し、刃体固定用凸部をプレスして押し潰して幅方向へのはみ出し部を形成することにより、刃体を半割体に固定して刃体付き半割体とし、次いでその刃体付き半割体同士を結合することを特徴とする医療用ナイフの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの前部に2枚の刃体が間隔を開けて平行に取り付けられた医療用ナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の刃体が間隔を開けて平行に取り付けられた2枚刃医療用ナイフは、主に、組織を所定の幅に切るのに使用されるナイフで、例えば、膝の前十字靭帯再建手術に使用され、刃体の間隔を維持したまま膝蓋腱を切り離したり、脛骨プラグや膝蓋骨プラグを採取するときにそれらの骨に切込みを入れたり、あるいは組織を所定の幅で採取するため等に使用される医療用ナイフである。
【0003】
このような2枚刃医療用ナイフは、例えば特許文献1に記載されている。この医療用ナイフは、2枚の刃体がハンドルの前側に突出する両延長部11にそれぞれ固定されている。また、両延長部の後半部に背部17すなわち上壁が形成されているが、背部に対向する下壁は形成されていない。すなわち、ハンドルの前端に刃体が固定されるべき一対の側壁を含む周壁で囲まれた空洞を有していない。したがって、取り付けられている刃体の下縁を覆うための下壁が存在せず、刃先は全長に亘って露出している。
【0004】
前述した2枚刃医療用ナイフは、刃体がハンドルに恒久的に固定された使い捨てナイフであるが、このナイフのための専用の刃体は存在せず、例えば特開平9−75363号公報に記載されているような替刃式の1枚刃医療用メスの替刃を使用している。この替刃は、特開平9−75363号公報の
図5に記載されているように、鋭利な刃先が、刃体の前端から刃体の全長の半分をやや超える位置まで形成されている。刃先がこの位置まで形成されているのは、1枚刃替刃式医療用メスを使用するときには、刃先がその前端寄りの部分のみならず刃体の中央付近に至る部分まで使用されるからである。これに対して2枚刃医療用ナイフは、前述したように膝蓋腱を切り離したり骨に切込みを入れたりするために使用されるので、比較的刃先の前端寄りの部分が使用される。したがって、本発明の2枚刃医療用ナイフでは、特許文献1のように刃先のほぼ全長を露出させる必要はなく、例えば刃先の前半部、すなわち刃先を長手方向の直線に投影した長さの半分程度露出させれば足りるのである。このようにすれば、不要な刃先は露出しないので、刃先で指などを傷付ける可能性を減じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5100391号明細書
【特許文献2】特開平9−75363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2枚の刃体がハンドルに固定された2枚刃医療用ナイフであって、刃先の前端部を含む一部、好ましくは刃先を長手方向の直線に投影した長さの半分前後露出させた2枚刃医療用ナイフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
2つの半割体から成るハンドルの前端から前方向へ2枚の刃体が平行に延びる医療用ナイフであって、それぞれ刃体が前記半割体に恒久的に固定された2つの刃体付き半割体で構成され、それぞれの半割体は、その前部に、側壁と、その側壁の上縁から直角方向に延びる半割上壁と、側壁の下縁から直角方向に延びる半割下壁とを有し、刃体はそれぞれの側壁の内面に固定されており、医療用ナイフは、前記2つの刃体付き半割体が結合されたものであり、結合された2つの半割体の半割上壁により上壁が構成されており、且つ半割下壁により下壁が構成されており、これらの上壁、下壁及び前記側壁でハンドルの前部に構成された周壁により、上下左右の四面が周壁に囲まれた空洞が前部に形成されており、該空洞は前方に開口を有し、前記それぞれの側壁の内面に固定された両刃体が開口から突出し、刃体の刃先の一部が下壁で覆われている構成である。
【0008】
請求項2記載の発明は、
それぞれの刃体付き半割体は、それらの側壁の内面に形成された刃体の位置決め突部に、刃体に形成された長孔が嵌合されており、且つその位置決め突部に設けた刃体固定用凸部がプレスして押し潰されることにより形成されたはみ出し部によって刃体が側壁の内面に固定されている構成である。
【0009】
請求項3記載の発明は、
2つの半割体から成るハンドルの前端から前方向へ2枚の刃体が平行に延びる医療用ナイフの製造方法であって、それぞれ刃体が前記半割体に恒久的に固定された2つの刃体付き半割体で構成され、それぞれの半割体は、その前部に、側壁と、その側壁の上縁から直角方向に延びる半割上壁と、側壁の下縁から直角方向に延びる半割下壁とを有し、刃体はそれぞれの側壁の内面に固定されており、医療用ナイフは、前記2つの刃体付き半割体が結合されたものであり、結合された2つの半割体の半割上壁により上壁が構成されており、且つ半割下壁により下壁が構成されており、これらの上壁、下壁及び前記側壁でハンドルの前部に構成された周壁により、上下左右の四面が周壁に囲まれた空洞が前部に形成されており、該空洞は前方に開口を有し、前記それぞれの側壁の内面に固定された両刃体が開口から突出し、刃体の刃先の一部が下壁で覆われている医療用ナイフの製造方法であって、熱可塑性樹脂を用いて射出成型により刃体固定用凸部が設けられた位置決め突部を側壁に有する半割体を一体成型し、次いで位置決め突部に刃体の長孔を嵌合し、刃体固定用凸部をプレスして押し潰して幅方向へのはみ出し部を形成することにより、刃体を半割体に固定して刃体付き半割体とし、次いでその刃体付き半割体同士を結合する構成である。
【発明の効果】
【0010】
前述したように、本発明のナイフのための専用の刃体は特に存在せず、主に、替刃式の1枚刃医療用メスの替刃が使用される。しかし、本発明の2枚刃医療用ナイフにとって、この替刃は鋭利な刃先が必要以上に長く形成されており、指を傷付ける可能性を減じるために露出する刃先の長さを、使用に支障を生じない範囲で短くすることが好ましい。請求項1記載の発明は、ハンドルの前部に空洞が形成され、この空洞は周壁に囲まれて前方に開口を有し、その周壁は上壁、下壁及び対向する一対の側壁を含み、2枚の刃体が、それらの側壁の内面にそれぞれ固定され、開口から突出している構成であるので、刃体の一部が周壁で囲まれている。これにより、必要以上に長い刃先を有する刃体を使用したときに、刃先の露出を短くすることができる。例えば、替刃式の1枚刃医療用メスの替刃を本発明の二枚刃医療用ナイフに使用したときに、二枚刃医療用ナイフにとって必要以上に長い刃先を有する一枚刃医療用メスの替刃を、二枚刃医療用ナイフに適した長さの刃先を有するものとして使用することができる。このようにして、露出する刃先の長さを短くすることにより、手術時において指を傷付ける可能性を減じることができる。さらに、2枚の刃体が、側壁の内面にそれぞれ固定されているので、使用時に指先を側壁の外面に当てたときに、指先が刃体に触れることがなく安全であり、側壁の外面に刃体を固定するための突部などが突出しないので、使用時に指が邪魔されない。
【0011】
特許文献1に記載された2枚刃医療用ナイフは、半割のハンドル部品を結合したものでなく、射出成型により一体に成型されている。本発明のように前部に開口を有するハンドルを射出成型により一体に成型することは、離型工程で困難な場合がある。そこで、
特許文献1のハンドルは前部空洞の上下左右の四面全部が周壁で囲まれておらず、底面が開放されて、刃体の下縁を全長に亘って露出させる構成としている。射出成型により一体に成型されたハンドルに空洞を設けるために、成型後にハンドルの前端から空洞を切削することもできるが、手間がかかるのでこの方法も実際には使用しにくい。さらに、空洞を設けることなく刃体の刃先の一部を覆うために、インサート成型により刃体を取り付けることも考えられるが、この場合、刃体を覆う部分が肉厚となるために、成型時にその部分が収縮を起こし,表面にヒケと呼ばれる窪みを生じたり,肉厚部の中心部には気泡が生じたりするので、実際には採用しにくい。これに対して、請求項1記載の発明は、ハンドルが2つの半割体を結合することにより構成されており、それぞれの半割体に一つの側壁並びに半割の上壁及び下壁が形成されている。したがって、半割体には周壁で囲まれた空洞が存在しないので、射出成型により各半割体を容易に成型することができ、両半割体を結合するだけで空洞を有するハンドルを容易に製造することができる。
【0012】
前述したように、本発明に使用される刃体は、主に替刃式の1枚刃医療用メスの替刃である。この替刃には長孔が形成されていて、その長孔を利用して1枚刃医療用メスのハンドルに着脱可能に取り付けることができる。
すなわち、長孔を有する刃体が固定されるべき側壁に長孔に嵌合する凸部が形成され、その凸部は刃体の厚みよりも高く形成されており、刃体の長孔から突出した凸部の突出部分を押し潰し成形加工して幅方向へのはみ出し部を形成することにより、刃体が側壁に固定される構成である。ハンドルの半割体の側壁に形成された凸部に
刃体の長孔を嵌合し、次いで凸部を押し潰し成形加工して幅方向へのはみ出し部を形成することにより刃体を固定することができる。したがって、非常に簡単な工程によって、ハンドルの側壁の内面に刃体を固定することができる。
【0013】
ハンドルを半割にせず一体に成型するときは、上下左右四面を周壁で囲まれた空洞から金型を抜くことが困難な場合があり成型しにくいという欠点がある。
請求項3記載の発明のように、ハンドルを2つのハンドル部品に分けて、あとから結合する方法であれば、全周を周壁で囲まれた空洞を形成する必要がなく、それぞれのハンドル部品に、周壁を構成する周壁構成部を形成してそれぞれのハンドル部品に空洞の半分を形成し、ハンドル部品を結合するときに、2つの周壁構成部が合わさることによりそれぞれの半分の空洞が結合して周壁で囲まれた空洞が形成される。
したがって、上下左右の四面が周壁で囲まれた空洞を成型するために、空洞から金型を抜く工程を含まないので成型が容易である。また、両ハンドル部品を結合してハンドルの前部に空洞を形成してから、そのあと空洞内に刃体を固定する方法を採用する場合には、周壁に囲まれた空洞内での作業空間に余裕がなく刃体を固定する作業が困難である。本発明では、結合前のハンドル部品の周壁構成部に刃体を固定するので作業空間に大きな余裕があり、機械を使用して刃体を容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】
図5はハンドルの一方の半割体の斜視図である。
【
図6】
図6はハンドルの他方の半割体の斜視図である。
【
図7】
図7は一方の半割体に刃体を嵌合した状態を示す半割体の内面図である。
【
図8】
図8は
図7の状態から凸部を押し潰し成形して刃体を固定した状態を示す半割体の内面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明のナイフ1は、細長いハンドル2の前端に2枚の刃体3,3が平行に突出するように固定されている。
図1に示ように、水平に置かれたハンドル2の側面視で長手方向に延びる中心線すなわちB−B線に関し、ハンドル2の外形が上下対称に形成されている。ハンドル2の上面の前端付近に指置き凹面4が形成され下面に指置き凹面5が形成されている。
【0016】
ハンドル2は一体成型で形成されたものでなく、2つの半割体6,7をそれぞれ別々に一体成型し、それらを結合して形成されている。
図5に示すように、一方の半割体6は、その側壁8の縁部から
半割上壁9、
半割下壁10及び
半割後壁11が連続するように立ち上がっている。側壁8と
半割上壁9及び
半割下壁10は半割体6のほぼ全長に亘って延びており、これにより半割体6には長手方向に延びる溝45が形成される。連続する
半割上壁9、
半割下壁10及び
半割後壁11の内面には段差面12が延在し、その段差面12に所定の数の嵌合凹部13が所定の位置に形成されている。側壁8の内面には長手方向に延びる中心線に沿って5つの嵌合突起14,15,16,17,18が形成されており、嵌合突起14,16,18の端面には嵌合穴19,20,21が形成され、嵌合突起15,17の端面には嵌合凸部22,23が形成されている。さらに、側壁8の前部内面には刃体3の位置決め突部24が形成されている。この位置決め突部24は長手方向に延びており、その両端に、刃体固定用凸部25,26が形成されている。この、刃体固定用凸部25,26は、一方の刃体固定用凸部26について記載した
図3に示すように、押し潰して幅方向へのはみ出し部53を形成することにより刃体3を恒久的に固定するためのものである。刃体固定用凸部25,26は、幅方向へのはみ出し部53を形成してそのはみ出し部53で刃体3を押さえて固定する必要があるので、刃体3の厚みよりも高く形成されている。また、刃体固定用凸部25,26の間に延びる位置決め突部24は、刃体固定用凸部25,26よりも低く形成され、刃体の厚み3と同じ又はそれよりわずかに高く形成される。
【0017】
図6に示すように、他方の半割体7は、その側壁27の縁部から
半割上壁28、
半割下壁29及び
半割後壁30が連続するように立ち上がっている。側壁27と
半割上壁28及び
半割下壁29は半割体7のほぼ全長に亘って延びており、これにより半割体7には長手方向に延びる溝46が形成される。連続する上壁28、下壁29及び後壁30の外面には段差面31が延在している。この段差面31には凸部や凹部などは形成されていない。その代わりに、連続する
半割上壁28、
半割下壁29及び
半割後壁30の縁面には、一方の半割体6の段差面12に形成された嵌合凹部13に対応する位置に嵌合突部32が形成されている。側壁27の内面には長手方向に延びる中心線に沿って5つの嵌合突起33,34,35,36,37が形成されており、嵌合突起33,35,37の端面には嵌合凸部38,39,40が形成され、組み立て時に一方の半割体6の嵌合穴19,20,21に嵌合する。また、嵌合突起34,36の端面には嵌合穴41,42が形成され、組み立て時に一方の半割体6の嵌合凸部22,23に嵌合する。さらに、側壁27の前部内面には刃体3の位置決め突部43が形成されている。この位置決め突部43の構成は、一方の位置決め突部24と同一の構成であるため説明を省略する。
【0018】
次に、一方の半割体6を例にとって刃体3を固定した半割体6の製造方法について説明する。半割体6は、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて
図5に示す形状に射出成型により成形する。次いで、
図7に示すように、刃体3の長孔44に位置決め突部24を嵌合させることにより、刃体3を位置決めした後、刃体3よりも突出している刃体固定用凸部25,26をプレスして押し潰すことにより、
図8に示すように幅方向へのはみ出し部を形成してそのはみ出し部で刃体3を押さえて固定する。したがって、
図8は刃体3が半割体6に恒久的に固定された状態である。他方の半割体7も同じ工程により刃体3が恒久的に固定される。
【0019】
それぞれ刃体3が恒久的に固定された半割体6,7が製造された後に、それらを結合してハンドル2が製造される。したがって、半割体6,7はハンドル2を構成するハンドル部品と言うことができる。次に、半割体6,7を結合する方法について説明する。本発明は医療用具であるため、結合のために接着剤を使用せず、種々の嵌合構造によって両者を結合する。そこで、前述したように、一方の半割体6の側壁8の内面には長手方向に延びる中心線に沿って5つの嵌合突起14,15,16,17,18が形成され、嵌合突起14,16,18の端面には嵌合穴19,20,21が形成され、嵌合突起15,17の端面には嵌合凸部22,23が形成されている。そして、他方の半割体7の側壁27の内面には長手方向に延びる中心線に沿って5つの嵌合突起33,34,35,36,37が形成され、嵌合突起33,35,37の端面には嵌合凸部38,39,40が形成され、双方の半割体6,7の結合時に一方の半割体6の嵌合穴19,20,21に嵌合する。さらに、嵌合突起34,36の端面には嵌合穴41,42が形成され、結合時に一方の半割体6の嵌合凸部22,23に嵌合する。この嵌合構造はハンドル2の中心部は確実に結合できるが、両半割体6,7の合わせ目の結合が不十分であるから、そのために他の結合構造も設けられている。前述したように、一方の半割体6の段差面12に所定の数の嵌合凹部13が所定の位置に形成されている。また、他方の半割体7の連続する
半割上壁28、
半割下壁29及び
半割後壁30の縁面には、一方の半割体6の段差面12に形成された嵌合凹部13に対応する位置に嵌合突部32が形成されている。したがって、両半割体6,7の結合時にこれらの嵌合凹部13と嵌合突部32を嵌合させて位置を合わせ、超音波溶着で嵌合凹部13と嵌合突部32を溶着し、半割体6,7の合わせ目を確実に結合するのである。
【0020】
両半割体6,7を結合することにより、ハンドル2が完成し、図2に示すように、一方の半割体6の半割上壁9と他方の半割体7の半割上壁28とにより上壁50が構成され、図4に示すように、一方の半割体6の半割下壁10と他方の半割体7の半割下壁29とにより下壁51が構成される。そして、両側壁8,27と上壁50と下壁51とにより、ハンドル2の前部に刃体3,3を囲う周壁47が構成される。そして、この周壁47が空洞52を上下左右の四面から囲っている。図1に示すように、ハンドル2の側面視で長手方向に延びる中心線に関し、ハンドル2の外形は上下対称に形成され、ハンドル2の前端部は三角形をなしている。そして、この三角形の下側の斜辺54は直線状に形成されているから、腱などの切断時に切断深さによってはその斜辺54が皮膚等の上を滑動してガイドとして作用する。
【0021】
次に、本実施態様のサイズについて説明する。ハンドル2の全長は約135mmであり、最大上下幅は約13mmであり、最大横幅は約17mmである。また、刃体3の全長は約45mmであり、刃体3の刃先49を長手方向の直線に投影した長さは約28mmである。平行に延びる両刃体3,3の間隔は約8mmである。刃体3,3の上縁及び下縁の一部は、周壁47の上壁50と下壁51によって上下から覆われるのであるが、
図2に示すように、
半割上壁9と
半割上壁28で構成される上壁50の端縁48は一直線をなし、ここまで刃体3,3を上から覆っている。周壁47の下壁51も上壁50と同じ長さで刃体3,3を下から覆っている。また、下壁51は刃体3の刃先49の位置まで届いてその刃先49の一部も覆っている。周壁47の上壁50及び下壁51が刃体3,3を覆う長さは約30mmである。したがって、周壁47の上壁50及び下壁51は、刃体3の後端から刃体3の全長のほぼ67%の部分を覆っている。このために、
図8に示すように、指置き凹面4,5の位置は刃体3のほぼ中央の部分と重なっている。また、刃体3の刃先49が形成されていない部分の長手方向長さは約17mmであるから、周壁47の下壁51は刃先49を長手方向の直線に投影した長さの約13mmの部分を覆っている。すなわち、刃体3の刃先49はその長手方向の直線に投影した長さの46%が下壁51で覆われている。サイズ等については以上の通りであるが、本発明がこれらの数値に限定されないことは勿論である。
【0022】
本発明は前述した構成に基づいて種々の態様や数値をとることが可能である。例えば、周壁47の上壁50、下壁51及び一対の側壁8,27のすべてが、取り付けられている刃体3の後端から刃体の全長の40%以上の部分を覆っていればよいが、50%以上でもよく、60%以上でもよいことは勿論であり、本実施形態のように67%±8%程度であることが好ましい。半割体6,7は、合わせ目がハンドル2の中心を通る場合に限定されるものでなく、許容できる範囲で合わせ目がハンドル2の中心からずれるものであっても差し支えない。空洞52は、本実施態様のようにハンドル2の全長に亘って延びるもののほか、刃体3を取り付けるために必要な最小限の長さのものであってもよい。刃体3の形状は、
図7に示したものに限定されないことは勿論であり、使用可能ないかなる形状としてもよい。2つの刃体3,3の間隔は前述した8mmに限定されるものでなく、例えば5〜15mmの範囲で1mmごとに異なるナイフを用意してもよい。その場合、刃体3,3の間隔ごとにハンドル2の色彩を異なるものにすれば、ナイフの刃体3,3の間隔を瞬時に判別することができる。半割体6,7は恒久的に結合せずに、分解可能としてもよい。ハンドル2の表面には滑り止め防止用の多数の小突起や溝を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
刃先の一部が下壁に覆われた状態で空洞の開口から刃体を突出させることにより、替刃式の1枚刃医療用メスの替刃を本発明の二枚刃医療用ナイフに使用したときに、二枚刃医療用ナイフにとって必要以上に長い刃先を有する一枚刃医療用メスの替刃を、二枚刃医療用ナイフに適した長さの刃先を有するものとして使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 ナイフ、 2 ハンドル、 3 刃体、 4 指置き凹面、 5 指置き凹面、 6 一方の半割体、 7 他方の半割体、 8 側壁、 9
半割上壁、 10
半割下壁、 11
半割後壁、 12 段差面、 13 嵌合凹部、 14 嵌合突起、 15 嵌合突起、 16 嵌合突起、 17 嵌合突起、 18 嵌合突起、 19 嵌合穴、 20 嵌合穴、 21 嵌合穴、 22 嵌合凸部、 23 嵌合凸部、 24 位置決め突部、 25 刃体固定用凸部、 26 刃体固定用凸部、 27 側壁、 28
半割上壁、 29
半割下壁、 30
半割後壁、 31 段差面、 32 嵌合突部、 33 嵌合突起、 34 嵌合突起、 35 嵌合突起、 36 嵌合突起、 37 嵌合突起、 38 嵌合凸部、 39 嵌合凸部、 40 嵌合凸部、 41 嵌合穴、 42 嵌合穴、 43 位置決め突部、 44 刃体の長孔、 45 溝、 46 溝、 47 周壁、 48 上壁の端縁、 49 刃先、 50 周壁の上壁、 51 周壁の下壁、 52 空洞、 53 はみ出し部、 54 斜辺