(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記浮魚礁に接近可能に該浮魚礁の上流海域で、前記回収索が海中で前記係留索と交差する向きに配されたとき、前記第1の回収索操り具は、前記船による曳航で移動されることに代えて、前記曳航用ロープから取り外されて、該浮魚礁に向かう潮流で移動されることを特徴とする請求項1に記載の浮魚礁の回収装置。
前記牽引具の前記フロートロープには、他の牽引具の連結ロープが連結されて、該牽引具が直列に複数配されることを特徴とする請求項1〜4いずれかの項に記載の浮魚礁の回収装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、複数の作業船を使用するため、燃料費が嵩むと共に、操船等の作業人員が多く必要で、回収作業に多くのコストがかかってしまう。いずれかの作業船を移動させて回収索を係留索に掛けて取り付けるようにしているが、回収索を複数の作業船に掛け渡して海中に吊り下げている関係上、移動する作業船で回収索を引くと、係留索に掛けるための設定深度から回収索が持ち上がってしまって、回収索を係留索に適切に掛けることができない。これを避けるためには、回収索をゆっくりと引かなければならず、多大な作業時間を要することになる。
【0008】
回収索を掛け渡した複数の作業船を並走させる場合には、作業船同士の距離を適切に保って、ほぼ同じ速度で移動させる必要があって、そのためには、作業船の安全な航行のために回収作業海域を広範に確保し、かつ無線等で連絡を取り合いながら作業を進めなければならず、海上交通の妨げになりやすいと同時に、作業内容が煩雑で手間を要する。
【0009】
回収索は、係留索に取り付けられて、魚礁本体及びシンカーを含めた中層浮魚礁全体を一気に引き揚げるのに用いられる。従って、回収索は、太径で剛強な重量物である。
【0010】
特許文献1では、このような重量物である回収索を、海中に吊り下げた状態で、複数の作業船に掛け渡すようにしている。そのため、作業船を移動するときに、回収索から受ける抵抗が大きく、操船性に劣る。また、回収索を、複数の作業船に掛け渡しつつ海中に吊り下げる関係上、回収索の長さが長大で、船に搭載されているウィンチドラムへの巻き付け量が多大となり、作業性が悪いと共に、回収に長時間を要する。
【0011】
複数の作業船に回収索を掛け渡す作業は、現場海域で行われるため、作業安全性に特段の注意が必要であり、特に、天候の変化に対して対応が遅れると、危険が伴うものである。さらに、係留索に対する回収索の取り付け完了後では、複数の作業船同士が接近して回収作業を実施するため、操船やその他の作業を慎重に行う必要があって、煩雑なものである。
【0012】
さらに、係留索と回収索の巻き付け部分を固定するために束ね部材や接触用金具などの金物を用いている。これら金具に加わる負荷が係留索や回収索に加わると、これら係留索等が金具によって破断してしまうおそれもある。
【0013】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、回収作業コストが低廉で、短時間で効率的に回収作業を実施可能であると共に、作業内容の簡易化かつ重量物である回収索の取り扱いの作業軽減が可能であり、回収作業性の向上や安全性の向上を確保でき、また、回収作業海域も狭めることができ、さらに、係留索や回収索に破断が生じることも避けることが可能な浮魚礁の回収装置及び回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる浮魚礁の回収装置は、海底に沈設されているアンカーと、該アンカーに連結されている係留索と、該係留索
に連結されて該アンカーに係留され、海中に浮遊状態で設けられている魚礁体とを備える浮魚礁を、海中に配される一本の回収索を用いて引き揚げ、回収する浮魚礁の回収装置であって;上記浮魚礁に向かう潮流のある海域で移動される単一の船と;該船に曳航される一本の曳航用ロープと;該曳航用ロープに取り外し可能に連結されて上記浮魚礁の上流海域に浮かべられ上記船に曳航されるフロート及び該フロートから海中に垂らされるフロートロープを有し、上記回収索の長さ方向一端側が該フロートロープに取り外し可能に連結される第1の回収索操り具と;上記浮魚礁の上流海域に浮かべられるフロート及び該フロートから海中に垂らされるフロートロープを有し、上記回収索の長さ方向他端側が該フロートロープに取り外し可能に連結される第2の回収索操り具と;上記浮魚礁の上流海域に浮かべられるフロート、該フロートから海中に垂らされるフロートロープ、該フロートロープと上記第2の回収索操り具の上記フロートロープとを連結する連結ロープ、並びに該連結ロープに設けられ、周囲の水流を受けて該連結ロープを牽引するシーアンカーを有し、該第2の回収索操り具の漂流を制限する牽引具と;上記回収索の長さ方向両端部のうちの少なくとも一方の端部に形成され、他方の端部が挿通されて該回収索を環状形態とする輪とを備え;上記第1の回収索操り具は上記船による曳航で移動され、かつ上記第2の回収索操り具は上記牽引具による牽引作用で移動されて、これら第1及び第2の回収索操り具が、
上記回収索を、上記浮魚礁に接近可能に該浮魚礁の上流海域で、
かつ海中で上記係留索と交差する向きに配し;上記第1及び第2の回収索操り具が上記浮魚礁の下流海域に到達して上記係留索の周りに上記回収索が配されたとき、該第1及び第2の回収索操り具を介して上記船に引き揚げられる該回収索の一方の端部の上記輪に他方の端部が通されて、当該回収索が該係留索を包囲する環状形態に形成され、かつ該回収索の環状形態の径を狭めるために、該輪が該係留索に接近するように他方の端部が引かれて該回収索が該係留索に対し引き締められた状態で、該回収索が引き揚げられて該浮魚礁が該船に回収されることを特徴とする。
【0015】
前記浮魚礁に接近可能に該浮魚礁の上流海域で、前記回収索が海中で前記係留索と交差する向きに配されたとき、前記第1の回収索操り具は、前記船による曳航で移動されることに代えて、前記曳航用ロープから取り外されて、該浮魚礁に向かう潮流で移動されることを特徴とする。
【0016】
前記曳航用ロープ、前記フロートロープ及び前記連結ロープは、前記回収索よりも径が細く、軽量であることを特徴とする。
【0017】
前記輪には、重りが設けられることを特徴とする。
【0018】
前記牽引具の前記フロートロープには、他の牽引具の連結ロープが連結されて、該牽引具が直列に複数配されることを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる浮魚礁の回収方法は、海底に沈設されているアンカーと、該アンカーに連結されている係留索と、該係留索
に連結されて該アンカーに係留され、海中に浮遊状態で設けられている魚礁体とを備える浮魚礁を、海中に配される一本の回収索を用いて引き揚げ、回収する浮魚礁の回収方法であって;上記浮魚礁の回収装置を用い;まず、上記浮魚礁の上流海域に、前記船、上記回収索、前記第1及び第2の回収索操り具、並びに前記牽引具を配し;次いで、上記浮魚礁の上流海域から下流海域に向かう方向と交差する方向で、該浮魚礁に対して一方の側に上記第2の回収索操り具及び上記牽引具を配し、他方、当該交差する方向で、該浮魚礁に対し他方の側に上記船で曳航して上記第1の回収索操り具を配して、当該浮魚礁に接近可能に該浮魚礁の上流海域で、上記回収索を海中で上記係留索と交差する向きに配し;次いで、上記浮魚礁の上流海域から下流海域に向けて、上記船を移動させると共に、上記牽引具を潮流で移動させて、上記第1及び第2の回収索操り具を該浮魚礁の下流海域に到達させ、上記係留索の周りに上記回収索を配し;次いで、上記浮魚礁の下流海域で、上記第1及び第2の回収索操り具を介して上記船に引き揚げられる上記回収索の両端側から、これら第1及び第2の回収索操り具を取り外し;次いで、上記回収索の一方の端部の前記輪に他方の端部を通して、該回収索を上記係留索を包囲する環状形態に形成した後、該回収索の環状形態の径を狭めるように、該係留索に対し該回収索を引き締めた状態とし;その後、上記回収索を引き揚げて、上記係留索を含む上記浮魚礁を上記船に回収することを特徴とする。
【0020】
本発明にかかる浮魚礁の回収方法は、海底に沈設されているアンカーと、該アンカーに連結されている係留索と、該係留索
に連結されて該アンカーに係留され、海中に浮遊状態で設けられている魚礁体とを備える浮魚礁を、海中に配される一本の回収索を用いて引き揚げ、回収する浮魚礁の回収方法であって;上記浮魚礁の回収装置を用い;まず、上記浮魚礁の上流海域に、前記船、上記回収索、前記第1及び第2の回収索操り具、並びに前記牽引具を配し;次いで、上記浮魚礁の上流海域から下流海域に向かう方向と交差する方向で、該浮魚礁に対して一方の側に上記第2の回収索操り具及び上記牽引具を配し、他方、当該交差する方向で、該浮魚礁に対し他方の側に上記船で曳航して上記第1の回収索操り具を配して、当該浮魚礁に接近可能に該浮魚礁の上流海域で、上記回収索を海中で上記係留索と交差する向きに配し;次いで、上記第1の回収索操り具を、前記曳航用ロープから取り外して上記船から解除し;次いで、上記浮魚礁の上流海域から下流海域に向けて、上記第1の回収索操り具及び上記牽引具が連結された上記第2の回収索操り具を潮流で移動させて、これら第1及び第2の回収索操り具を該浮魚礁の下流海域に到達させ、上記係留索の周りに上記回収索を配し;次いで、上記浮魚礁の下流海域に予め移動させた上記船に上記第1及び第2の回収索操り具を介して引き揚げられる上記回収索の両端側から、これら第1及び第2の回収索操り具を取り外し;次いで、上記回収索の一方の端部の前記輪に他方の端部を通して、該回収索を上記係留索を包囲する環状形態に形成した後、該回収索の環状形態の径を狭めるように、該係留索に対し該回収索を引き締めた状態とし;その後、該回収索を引き揚げて、上記係留索を含む上記浮魚礁を上記船に回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる浮魚礁の回収装置及び回収方法にあっては、回収作業コストが低廉で、短時間で効率的に回収作業を実施できると共に、作業内容の簡易化かつ重量物である回収索の取り扱いの作業軽減が達成することができ、回収作業性の向上や安全性の向上を確保でき、また、回収作業海域も狭めることができ、さらに、係留索や回収索に破断が生じることも避けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる浮魚礁の回収装置及び回収方法の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、回収対象である浮魚礁の海中における設置状態を示す側面図、
図2は、本実施形態に係る浮魚礁の回収装置及び回収方法における回収索の配設状態を説明する説明図、
図3は、
図2に示した回収索の長さ方向両端部のうちの一方の端部に備えられる輪を示す図、
図4は、回収索が浮魚礁に接近する様子を示す平面図、
図5は、浮魚礁の周りに配された回収索の両端側が船に引き揚げられた様子を示す平面図、
図6は、回収索が係留索を包囲する環状形態に形成された様子を示す平面図、
図7は、回収索を環状形態にする取り扱いを説明する説明図、
図8は、係留索を回収索で引き締めた状態を説明する説明図、
図9は、回収索を係留索に対し引き締めるために、輪を係留索に接近させる様子を説明する説明図、
図10は、係留索に対する回収索の引き締め状態を確認するための確認作業を説明する説明図である。
【0024】
図1に示すように、浮魚礁1は、海底2に設置されるアンカー3と、アンカー3に一端(下端)が連結される係留索4と、係留索4の他端(上端)が連結されてアンカー3に係留される魚礁体5とから構成される。魚礁体5は例えば、FRP製で、中空籠状に形成される。
【0025】
係留索4は詳細には、下部主係留索4aと、上部主係留索4bと、複数本の副係留索4cとが下方から上方に向けて順次つながれて構成される。下部主係留索4aの下端がアンカー3に連結され、上部主係留索4bの上端から複数に分かれて延出される副係留索4cの上端が、魚礁体5の下端周縁に適宜に連結される。
【0026】
浮魚礁1は、係留索4を介してアンカー3に魚礁体5を連結して組み立てた状態で、作業船から海中へ投下され、海底2に沈設されたアンカー3に係留索4を介して係留される魚礁体5が海中の中層域に浮遊状態で設けられる。
【0027】
以下、本実施形態に係る浮魚礁の回収方法の手順を説明しつつ、それに用いる浮魚礁の回収装置について説明する。本実施形態に係る浮魚礁の回収装置は主に、単一の船6(
図4等参照)と、一本の回収索7及び回収索配設具8とから構成される。浮魚礁1は、海中に配される一本の回収索7を用いて引き揚げられ、回収される。
【0028】
回収索配設具8は
図2及び
図4に示すように、船6に一端が連結されて曳航される一本の曳航用ロープ9と、曳航用ロープ9に連結される第1の回収索操り具10と、第1の回収索操り具10と連係して回収索7を操る第2の回収索操り具11と、第2の回収索操り具11を操る牽引具12とから構成される。
【0029】
第1の回収索操り具10は、フロートf1と、フロートf1に一端(上端)が連結されて海中に垂らされるフロートロープr1から構成される。フロートロープr1は、海中に沈められる比重で形成される。あるいは、フロートロープr1の他端(下端)側に、当該フロートロープr1を安定して海中に垂らすための重りw1を設けるようにしても良い。フロートf1は、曳航用ロープ9の他端に取り外し可能に連結される。
【0030】
第1の回収索操り具10は、潮流Tが浮魚礁1側に向かって流れる海域A(以下、海域Aを「上流海域A」といい、逆に、潮流Tが浮魚礁1側から離れる方向に流れる海域Bを「下流海域B」という。)に浮かべられ、曳航用ロープ9を介して船6に曳航される。第1の回収索操り具10のフロートロープr1の他端(下端)側には、回収索7の長さ方向一端側が取り外し可能に連結される。
【0031】
第2の回収索操り具11は、第1の回収索操り具10と同様に、フロートf2と、フロートf2に一端(上端)が連結されて海中に垂らされるフロートロープr2から構成される。フロートロープr2は、海中に沈められる比重で形成される。あるいは、フロートロープr2の他端(下端)側に、当該フロートロープr2を安定して海中に垂らすための重りw2を設けるようにしても良い。
【0032】
第2の回収索操り具11も、第1の回収索操り具10と同様に、浮魚礁1の上流海域Aに浮かべられる。第2の回収索操り具11のフロートロープr2の他端(下端)側には、回収索7の長さ方向他端側が取り外し可能に連結される。
【0033】
第1及び第2の回収索操り具10,11の間に渡される回収索7が海中に配される深度は、浮魚礁1の係留索4が配されている深度とされる。
【0034】
牽引具12は、第2の回収索操り具11に隣接させて、一連につなげて配される。牽引具12は、フロートf3と、フロートf3に一端(上端)が連結されて海中に垂らされるフロートロープr3と、このフロートロープr3と第2の回収索操り具11のフロートロープr2に長さ方向両端が連結されて、これらフロートロープr2,r3同士を連結する連結ロープr4と、連結ロープr4に設けられるシーアンカー12aとから構成される。
【0035】
フロートロープr3及び連結ロープr4は、海中に沈められる比重で形成される。フロートロープr3の他端(下端)側に、当該フロートロープr3を安定して海中に垂らすための重りw3を設けるようにしても良い。従って、連結ロープr4及びシーアンカー12aは海中に配される。
【0036】
シーアンカー12aは、海水の抵抗を受けて錨のような役目を果たすもので、周囲の水流を受けて連結ロープr4を牽引する。具体的には、浮魚礁1に向かって流れる潮流Tを受けて、その潮流Tの向きに連結ロープr4を牽引したり、船6による曳航に対し周囲の水流等の抵抗を受けて、連結ロープr4を制動する向きに牽引する。シーアンカー12aの当該機能により、牽引具12は、第2の回収索操り具11の漂流を制限する。
【0037】
牽引具12も、第1及び第2の回収索操り具10,11と同様に、浮魚礁1の上流海域Aに浮かべられる。
【0038】
以上説明した曳航用ロープ9やフロートロープr1〜r3、連結ロープr4は、回収索7を海中に配する際に操るだけのものなので、浮魚礁1の引き揚げに用いる回収索7よりも径が細く、かつ軽量で、取り扱いが容易なものが用いられる。例えば、回収索7は、φ40mmで、引張強度が200kN程度であるのに対し、これらロープr1〜r4は、φ10mmで、引張強度が15kN程度のものが用いられる。
【0039】
他方、回収索7には
図3に示すように、長さ方向両端部のうちの少なくともいずれか一方の端部7aに、他方の端部7bを挿通することによって一本の回収索7を環状形態にし得る輪13が形成される。図示例にあっては、輪13は、回収索7の先端部7cを曲げ返し、この先端部7cを回収索7自体に結束体13aで結束することにより形成されている。なお、この結束体13aを用いて輪13を形成する場合には、後述する回収索7を係留索4に引き締めて結合状態にさせた際、その結合部分に結束体13aが位置しないよう輪13を大きく形成する。
【0040】
輪13の形成は、一般周知のどのような方法を用いてもよく、また、回収索7を構成する撚り線同士が編み込まれて、予め輪13が形成されたものを用いてもよいことはもちろんである。回収索7の他方の端部7bにも、輪が形成されていてもよい。
【0041】
回収作業準備として、上述した回収索配設具8と回収索7の組立体が、陸上もしくは現場海域の船6上で作製される。組立体を搭載した単一の船6は、回収作業の現場海域へ航行し、浮魚礁1に向かう潮流Tのある海域で回収作業のために移動される。
【0042】
回収作業ではまず、
図2及び
図4に示すように、現場海域の潮流Tを調査し、浮魚礁1の上流海域Aに、船6、第1及び第2の回収索操り具10,11、並びに牽引具12等を配する。すなわち、船6を上流海域Aに移動し、組立体を海に投下する。組立体を投下する際には、船6で曳航することによって、後述する回収索7と係留索4の位置関係を確保するために、浮魚礁1の上流海域Aから下流海域Bに向かう潮流Tの流れ方向と交差する方向について、浮魚礁1に対しその一方の側に寄せて、一括して組立体を投下する。
【0043】
組立体を海に投下すると、第1及び第2の回収索操り具10,11と牽引具12それぞれのフロートロープr1〜r3が海中に沈み、回収索7や連結ロープr4、シーアンカー12aが海中に配される。
【0044】
次いで、
図4に示すように、浮魚礁1の上流海域Aで船6を移動させる。船6の移動は、浮魚礁1の上流海域Aから下流海域Bに向かう方向(潮流Tの方向)と交差する方向で、組立体を投下した浮魚礁1に対する一方の側から、当該浮魚礁1に対して他方の側(反対側)に達するように行われる。この船6の移動により、第2の回収索操り具11及び牽引具12が一方の側に残され、曳航用ロープ9で曳航される第1の回収索操り具10が他方の側に配される。
【0045】
第2の回収索操り具11は、船6の曳航に抵抗するシーアンカー12aを有する牽引具12の牽引作用(制動作用)を受けつつ移動されて、一方の側に配される。すなわち、第1の回収索操り具10は船6による曳航で移動され、かつ第2の回収索操り具11は牽引具12による牽引作用で移動され、これにより、これら第1及び第2の回収索操り具10,11は、浮魚礁1に接近可能に当該浮魚礁1の上流海域Aで、回収索7を海中で係留索4と交差する向きに配する。
【0046】
なお、
図4中、14は、回収作業に直接関わらない、必要に応じて用いられる測量船である。測量船14に代えて、目印となるブイを配するようにしてもよい。
【0047】
その後、第1の回収索操り具10は、浮魚礁1の上流海域Aから下流海域Bに向けて移動される船6に曳航されて、同時に、第2の回収索操り具11及び牽引具12は、潮流Tに乗って移動されて、浮魚礁1に接近していき、回収索7も係留索4に向かって近づいていく。停船により、船6を潮流Tに乗って移動させるようにしてもよい。
【0048】
このとき、牽引具12のシーアンカー12aは、潮流Tを受けて、第2の回収索操り具11を下流海域Bへ向かって牽引する役割を果たす。これにより、第1及び第2の回収索操り具10,11は、浮魚礁1よりも下流側の下流海域Bに到達し、その結果、係留索の周りに回収索7が配される。
【0049】
次いで、
図5に示すように、船6に回収索7の両端側を引き揚げる。この引き揚げに際しては、第1の回収索操り具10側については、曳航用ロープ9を利用して、回収索7の長さ方向一端側の引き揚げを行う。
【0050】
他方、第2の回収索操り具11側については、鈎棒付きのロープなどを利用して、海上の第2の回収索操り具11自体もしくは牽引具12を引っ掛けて引き揚げることで、回収索7の長さ方向他端側の引き揚げを行う。そして、船6上で、回収索7の両端側から、第1及び第2の回収索操り具10,11を取り外す。
【0051】
次いで、
図6及び
図7に示すように、回収索7の一方の端部7aの輪13に、他方の端部7bを通す。これにより、回収索7は、係留索4をその周りから包囲する閉鎖環状形態に形成される。輪13に通された他方の端部7bを引いて手繰り寄せ、引き締めていくと、回収索7の閉鎖環状形態の径が狭められていって、
図8に示すように係留索4に対し回収索7を引き締めた状態が得られ、回収索7で係留索4を引くことが可能となる。
【0052】
回収索7で係留索4を引き締める操作を船6上から行うには、輪13もしくはその周辺に、輪13を沈降させるための重り15を設け、
図9に示すように、重り15が付けられた輪13を備える回収索7の一方の端部7aを海中に投下し、かつ回収索7の他方の端部7bを船6上で手繰り寄せ、輪13が係留索4に接近するように、回収索7の当該他方の端部7bを引き続ければよい。回収索7の当該引き締め操作により、回収索7と係留索4とは、浮魚礁1の引き揚げが可能な結合状態とされる。
【0053】
その後、
図10に示すように、必要に応じて、係留索4に対する回収索7の引き締め状態を確認するための確認作業を行う。この確認作業は、回収索7をガイドとして、ROV(remotely operated vehicle )16を操作して実施することができる。
【0054】
その後は、船6上の機材を用いて、回収索7を引き揚げる。この引き揚げ操作により、係留索4を含む浮魚礁1全体が船6に回収される。
【0055】
本実施形態に係る浮魚礁の回収装置及び回収方法にあっては、単一の船6で回収作業を実施・完了することができるので、背景技術に比べて、燃料費を低減できると共に、操船等の作業人員を削減することができ、回収作業に要するコストを低減することができる。
【0056】
回収索7の長さ方向他端側が連結される第2の回収索操り具11を、シーアンカー12aを有する牽引具12に、海中で連結ロープr4を介して連結するので、船6の移動により曳航用ロープ9を介して第1の回収索操り具10を曳航しても、回収索7が設定深度から持ち上がることを抑制でき、背景技術に比して、短い時間で回収索7を係留索4に対して配する作業を完了することができる。
【0057】
また、回収索7は、浮遊状態で融通の利く、第1及び第2の回収索操り具10,11のフロートf1,f2間に配されるので、背景技術のように作業船間に掛け渡す場合に比して、適切に設定深度に維持することができる。
【0058】
単一の船6を操船して回収作業を実施できるので、背景技術のように複数の作業船を操船するのに比して、広範な回収作業海域は不要であると共に、他の船との連絡・連係も不要であって、海上交通の妨げにならず、作業内容も簡便化することができる。
【0059】
回収索7については、必要な揚重能力のものを採用する一方で、それ以外のフロートロープr1〜r3や連結ロープr4、曳航用ロープ9は、回収索7よりも径が細く、軽量であるので、船6を移動する際の負荷が小さく、操船性を向上できる。回収索7は、単一の船6で操作されるロープ等を主体とした回収索配設具8の採用により、浮魚礁1の係留索4の深度において、その係留索4に折り返される程度の最小限の短い長さでよく、そのため、少ない巻き上げ量で作業性良好に短時間で回収作業を完了することができる。
【0060】
単一の船6による作業であって、背景技術のように、複数の作業船に回収索を掛け渡す作業も無いので、安全性が高く、また、悪天候への変化に対しても、曳航用ロープ9の取り外しだけで退避行動に移ることができ、危急対策上も好ましい。また、係留索4に対する回収索7の引き締め完了後も、単一の船6による回収作業なので、複数の作業船同士が接近してしまう背景技術に比して、操船やその他の作業を円滑にかつ容易に行うことができる。
【0061】
係留索4と回収索7とを引き締めによって結合するようにしていて、金物を一切使用しないので、回収索7等が金具によって破断するなどの事態が発生することを確実に防止できる。
【0062】
フロートロープr1〜r3の下端側に重りw1〜w3を設けるので、フロートロープr1〜r3を安定的に海中に下ろして配することができ、回収索7の設置深度を適切に確保することができる。
【0063】
輪13に重り15を設けるので、回収索7の途中で輪13が引っ掛かってしまうのを防ぐことができるなど、海中の係留索4位置に輪13を適切に送ることができ、引き締め操作による索4,7同士の結合を確実に行うことができる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る浮魚礁の回収装置及び回収方法は、回収作業コストが低廉で、短時間で効率的に回収作業を実施できると共に、作業内容の簡易化かつ重量物である回収索7の取り扱いの作業軽減を達成でき、回収作業性の向上や安全性の向上を確保できる上に、回収作業海域も狭めることができ、さらに、係留索4や回収索7に破断が生じることも避けることができるという優れた作用効果を奏する。
【0065】
図11〜
図13には、本発明に係る浮魚礁の回収装置及び回収方法の他の実施形態が示されている。
図11は、回収索を浮魚礁の上流海域に配した様子を示す平面図、
図12は、浮魚礁に接近していく回収索が浮魚礁の下流海域に到達した様子を示す平面図、
図13は、浮魚礁の周りに配された回収索の両端側が船に引き揚げられた様子を示す平面図である。
【0066】
他の実施形態は、
図11に示すように、船6の移動により、曳航用ロープ9を介して、第1の回収索操り具10を曳航することにより、浮魚礁1に接近可能に浮魚礁1の上流海域Aで、回収索7が海中で係留索4と交差する向きに配されたとき、上記実施形態において第1の回収索操り具10が、船6による曳航で浮魚礁1の下流海域Bに移動されることに代えて、
図12に示すように、当該第1の回収索操り具10が曳航用ロープ9から取り外され船6から解除されて、浮魚礁1に向かう潮流Tで移動されるようになっている。
【0067】
このようにすることで、第1の回収索操り具10及び牽引具12が連結された第2の回収索操り具11は潮流Tで、浮魚礁1の上流海域Aから下流海域Bに向けて移動される。そして、これら第1及び第2の回収索操り具10,11が浮魚礁1の下流海域Bに到達することで、係留索4の周りに回収索7が配される。この際、船6は、予め浮魚礁1の下流海域Bに移動させておく。
【0068】
次いで、浮魚礁1の下流海域Bに予め移動させた船6に、第1及び第2の回収索操り具10,11を介して、回収索7の両端側を引き揚げる。この引き揚げは、上述したように、鈎棒付きのロープなどを利用して行われる。その後、引き揚げた回収索7の両端側から、第1及び第2の回収索操り具10,11を取り外し、さらに、上記実施形態の
図6及び
図7で示したように、回収索7の一方の端部7aの輪13に、他方の端部7bを通して、その後の回収作業を続行する。
【0069】
このような他の実施形態であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。他の実施形態では、第1の回収索操り具10を船6から解除して潮流Tで移動させるため、作業現場海域の潮流Tの観測が重要となる一方で、操船を簡便化することができる。
【0070】
上記いずれの実施形態にあっても、牽引具12が一つの場合について説明したが、牽引具12のフロートロープr3に、他の牽引具12の連結ロープr4を連結するようにして、牽引具12を直列に複数配するようにしてもよい。このようにすれば、第2の回収索操り具11の漂流制限を調整できて、船6による曳航に対する抵抗作用や潮流Tで移動させる速度等を好ましく調節することができる。